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2024年1月

2024年1月31日 (水)

2024年中学入試(78)湘南白百合 過去最高の出願総数 その意義

★昨日、湘南白百合の出願はすべて締め切られました。帰国入試も含め総出願数は、879名。前年が822名、前々年度が536名ですから、首都圏中学入試の受験生微減という予測がされている中、爆増しています。このことの意義は、未来型教育環境と内生的技術進歩の統合教育に期待がかかっているということでしょう。

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★湘南白百合の未来型教育は、とにかく越境型の教育環境を増やし続けているという点です。

・海外大学進学準備教育

・破格の高大連携

・医学を中心とする理数教育の充実(学問のジェンダー問題の払拭へ)

・男子校、共学校など多くの他校との協働探究学習のコミュニティーの増産

・カトリック校の中では想像もつかない、学際的な宗教の授業(教科の壁を解体)

★などなど未来型の教育環境デザインがすさまじい。そして、越境こそ多様な団体を巻き込む世界が生まれてくるという醍醐味を生み出しています。

★湘南白百合の内生的技術進歩とは、自分を見つめ、自分の壁を認識し、仲間と共に次の世界を開いていく対話の機会が各授業、行事、部活、探究の時間などすべてに埋め込まれています。その過程を言語化するノートとそれを教師と共有してフィードバックやアドバイスやエールを刻みこんでいく内面の可視化。しなやかでタフで、今後ますます必要なセルレスな人間力の生成が持続可能になる内面的システムが生まれ続けています。

★世によく言われる「探究なんてやったって大学合格実績はでない」とか「対話なんてそう簡単にはできない。おしゃべりにすぎない」などのアンコンシャスバイアスを払しょくするすばらしい教育。

★このような学校はどこにあるのでしょうか。未来型教育×内生的技術進歩のスーパーロールモデルです。2030年このような学校がたくさん現れることを期待しているのですが、そのフロントランナーですね。

★そのことに同校を訪れて体験的直観を得た受験生。みな合格してほしいけれど、定員があるので、必ずしもそうはいかないかもしれない。しかし、その体験的直観は、自分自身の心のコアになり、次のステージを必ずや開くことになるでしょう。湘南白百合との出会いが生んだそのコアは貴重です。明日からぜひがんばってください!

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2024年1月30日 (火)

2024年中学入試(77)1月29日現在 出願総数前年を超える学校の特徴

★東京と神奈川エリアの中学入試の一般入試が始まる2月1日が近づくにつれて、出願総数が前年を超える学校がでてきています。いくつか並べてみます。数値は、出願総数の前年対比(首都圏模試センター出願倍率速報から)を示しています。

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(湘南白百合の高1の宗教の授業で貿易ゲームを行っているシーン。同校サイトから)

共栄学園 135.0%
佼成学園 130.6%
学習院女子 128.6%
足立学園 112.0%
八雲学園 108.3%
湘南白百合 105.0%

★いずれも、地域と世界に対して開かれていることと何より生徒に開かれている学校ですね。オープンマインドというのは、いろいろな領域や次元での人間関係の壁を解消できることです。

★学習院女子などは、2024年からアフターコロナにおいても面接を廃止しました。生徒募集の技術的な変更でもありますが、学習院女子はとても自由な校風で、生徒はパワフルです。が面接があることによって、皇室ブランド的な厳粛さを先入観でもつ受験生もいます。それが解放されたのです。文化祭などに参加すれば、そもそもそのような先入観は払しょくされます。そして、面接廃止が重なって、オープンマインドを名実ともに感じるその感覚が受験生に広がった可能性があります。

★これは湘南白百合にもあてはまります。2019円以来試験回数を2月1日と2日の複数回にし、一科目入試や英語入試など多様な資質を有している受験生に門戸が開かれています。面接も廃止されました。そのあとは、自由で活動的な、世界の痛みを主体的に受け入れ、解決しようという探究活動のインパクト教育を日々発信しています。

★このような開放的な精神とケアフルな精神の両立が、1月29日現在総出願数が前年を上回っている学校の共通した特色だと思います。

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2024年中学入試(76)憧れの順天学園 1月29日現在 出願総数前年を超える

★順天学園の総出願数は、1月29日現在前年を超えました。前年対比108.5%、前々年対比125.1%(首都圏模試センター出願倍率速報から)。2024年年明けに首都圏模試センター発刊の「2024から2025年中学入試大予測」には、同校の北里研究所との法人合併についての記事が掲載されています。

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★この記事を読めば、順天学園が今話題になっている高大連携や大学の系列校になるという繋がり方とはまったく違う方式をとったことがわかるでしょう。

★順天のグローバルな探究とケアフルなボランティア活動が、将来医療や公衆衛生、国際的な舞台での活躍、ケアの哲学や文学などにむずびつく将来への見通しが立つ環境ができたのです。

★いまここで探究に集中して学ぶことが未来の道に続く見通しが見えるという自己探究の道を仲間と共に歩いていけるのです。

この法人合併は、実は昨年11月27日に締結され、29日に突然リリースされたのです。文化や歴史、科学などの文脈が未来に向けて一挙に結実した感覚が中学受験業界に広がりました。

★今まで以上に「憧れの順天学園」がクローズアップされたのです。

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2024年1月29日 (月)

この問いを考察できるSTEAM教育を行っている学校がある。「芸術と、健康で持続可能な食料への権利のどちらが大切か。我々の農業システムは病んでいる」

★1月28日の朝日新聞の記事によると、フランスの首都パリのルーブル美術館で28日午前、2人の環境活動家がレオナルド・ダビンチの代表作「モナリザ」にスープを投げつける騒動があったようです。「芸術と、健康で持続可能な食料への権利のどちらが大切か。我々の農業システムは病んでいる」を訴えることが目的のようです。その2人は気候危機の問題をめぐって社会に変化をもたらすための「抵抗運動」を目的とした団体のメンバーということです。日本では、違法行為としてすぐに2人は起訴されるでしょうが、フランスではどうなのでしょう。法体系が日本とは違って、抵抗権という市民の権利があるらしいのです。

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★しかし、無罪放免というわけにはいかないでしょう。とはいえ、議論にはなるかもしれません。この「芸術と、健康で持続可能な食料への権利のどちらが大切か。我々の農業システムは病んでいる」という問いは、フランスのバカロレアの問題とか、イギリスのケンブリッジの口頭試問で出題される可能性大の良問です。

★ただし、スープをかけるアクションは、いろいろな思惑があったのでしょうが、選択は誤りだと思います。暴力的行為は、対話を重視する哲学の市民社会であるフランスにはそもそも妥当性はないと思います。

★日本では、STEAM教育が進んでいます。受験勉強重視主義者は、この教育に対してはネガティブだし、国策に乗るなと批判的なジャーナリストもいます。しかし、基本遊びと学びをベースにする教育観を実践しているグループは、生徒自身が関心のある問題をSTEAMそれぞれの視点から考察したり、結び付けたりする「自然と社会と精神の循環」教育をSTEAM教育を通じて行っています。

★生徒の関心のある問題が、最初から深い必要はないし、「深い」とか判断すること自体いったんモニタリングされる必要が実はあるのです。一見軽い問題でも、そこを契機に広く深い問題を発見することができるからです。そのためには、多角的な角度からリサーチし、議論し、ライティングをし、プロダクトを生み出し、プレゼンをしていくプロセス教育であるSTEAM教育は有効なのです。

★とはいえ、日本ではアート市場が一般化していないのは、なんとかしなくてはですね。このような社会課題をアートで表現するリサーチアートも現代芸術の領域では広まっていますからね。

★ともあれ、そのようなSTEAM教育とグローバル教育を統合させている私立中高一貫校はあります。その重要性が、今年の中学入試の動向に少し現れていますが、まだまだ知られていません。

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2024年1月28日 (日)

2024年中学入試(75)東京私立中学 1月27日現在 前年対比分布

★日能研倍率速報(2024年1月27日現在)から、東京の女子校、東京の男子校、東京の共学校それぞれの前年対比の分布を調べてみました。前年対比100%を超えている分布、70%以上100%未満、70%未満以下の3つのカテゴリーでそれぞれのシェアを出してみました。

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★2月11日の開成や麻布、武蔵、駒東、筑駒などの合格説明会(招集日)が終わるまで、この分布は流動的です。現状では、女子校は最終的には昨年並みになるのではないかという傾斜です。

★男子校は、昨年同様勢いがあるということかもしれません。とはいえ、開成、麻布、武蔵、海城1回などは前年対比が減少しているので、受験生は必ずしも高偏差値にチャレンジするという男子校特有の傾向は少し変わっているかもしれません。このような学校にギリギリはいらなくても、前年対比100%を超えている入試(複数回数行っているので、必ずしも総出願数ではない)を実施している芝、攻玉社、佼成学園、足立学園、聖学院などに行けば、のびのびと学園生活を受験勉強ではなく学際的に楽しみながら、行こうと思えば国公立難関私大に行け、海外大学にも行けるので、学校選択の志向性が、男子校でも変わっているのかもしれません。

★共学校は、一校当たりの入試の回数が多いので、このような傾斜になっていますが、結局昨年より少し減るけれど、定員はなんとかという学校が多くなる可能性が予想されます。

★この分布は、2月11日にまた作ってみます。おそらく今年の傾向が明らかになる大きなヒントになるでしょう。

★それから、全体的に首都圏の中学受験生は微減なのか減らないのか。結論からすると微減という予想です。

★それは首都圏の公立中高一貫校の出願数が減っているからです。3,440人減少しています。首都圏の受験生の約7%です。全員が私立中学併願者ではないですから、7%も減るとは思えませんが、私学併願者もいるので、3%くらいは減少するかもしれません。

★おそらく、これは受験業界がすでに公表している予想に対応しているのかもしれません。

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2024年1月27日 (土)

中学入試の質の変化をどうとらるのか?ネットワーク型コミュニティからメッシュワーク型コミュニティ、そしてブロックチェーン型コミュニティーへ

★主体的に、自己変容的に生きるコトが求められて久しい。というか人類誕生はその攻防戦で、主体的で自己変容的な一握りの人間と受動的で従属型の多くの人間の比率の境界線の攻防戦の歴史だったと読むこともできます。受動的で従属的な人間をその境界線から解放しようという運動が歴史だったとも置き換えることができるかもしれません。そして、今、この境界線を解消する運動態が自然と社会と精神の新たな結合を生み出している。そんな時代に立ち会っている今日この頃だと感じています。

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★首都圏の中学入試という、人口比で行けば、ざっくり1億分の5万。つまり0.05%の運動態。そこに何があるのか。東京都の年収1000万世帯は13.9%(東京都福祉局 令和3年度「都民の生活実態と意識(福祉のまちづくり等)」報告書(統計編))、国民全体だと12.6%(厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」による)。

★この比較が何を意味するかわからないですが、全国に対し0.05で12.6のパワー、つまり252倍のパワーが集積したニッチな運動態です。東京に対しては278倍。

★なぜメディアがこのニッチな世界を熱く語るのか。このわけのわからない少数の運動が250倍以上のパワーを発揮しているわけだからです。これが高校入試になるとお金の話ではなく、偏差値の話になります。65以上の6.68%の生徒が全国に影響するパワーは100に対し15倍です。

★大学入試だと、ざっくり30倍になるでしょうか。つまり、首都圏の中学入試のわけのわからないパワーがすさまじいということですね。

★このしかし、パワーの質が変わってきたという兆しが見え隠れするのがどうやら今年の中学入試の動向のような気がするのですが、どうとらえればよいのか?生成AIであるBingと語っていたら、ティム・インゴルドという文化人類学者の本を紹介してくれたのです。

★さらに、次のページも紹介してくれました。奥野克巳 教授( 立教大学・文化人類学 週刊読書人2022年1月21日号)執筆の書評<線が織り成すメッシュワークに没入し、生成の物語を語れインゴルドとともに「生きていること」を生け捕りにする>という記事です。

★ちょうどこのところ業界で信頼すべき方と話をしていて、ネットワークからメッシュワーク、そしてブロックチェーン型の生き方に、世の中が実際に動き出したねと。それと重なる論稿だったので、驚きました。引用してみます。

「生きていること」には必ず運動が伴うという点を深めるために、ギブソン、ユクスキュル、ハイデガー、ドゥルーズらを参照した上で、環境と私たちが今まさになしつつある生成に寄与する素材の流れや運動の中で、環境と一緒になる点にこそ目が向けられるべきだと論じる。関係が複雑に織り成されるさまを、ルフェーブルから借用してインゴルドは、メッシュワークと名づけている。それは線描の縺れ合いであり、点から出発するネットワークと比較されうる。彼はその二者の違いを、クモとアリを登場させながら巧みに語っている。熟練されたメッシュワークは、発達して身につけたクモの応答から構成されるのだ(第二部)。

★これなどは、外生的技術進歩のみならず、それを生み出す内生的技術進歩との絡みを自覚的に教育してはどうだろうかという今私がポール・ローマー教授の考えをヒントに発想しているコトに結びつくなあと。

学問は、外部から空間を措定する。インゴルドはそうした空間概念を破却せよという。居住者が住まう場所を取り戻し、行為者が没入する関係の場で生成する知について物語らねばならない。彼が注目するのは、動物の名前を動詞的に表現するアラスカ先住民コユコンの民族誌だ。「遠く離れたあそこに閃光が現われた」(アカギツネ)、「あなたに物事を伝える」(ミミズク)などで表されるように、全ての動物は生成の形態に他ならないという(第四部)。

★おおこれは、ブランドアクティビズムそのものではないかと。新しい私立学校の広報戦略を考えるうえで、このアクション物語をどう受験生と共有するのか、いろいろ試行錯誤した勤務校時代のことを想起しました。

さらにインゴルドは、物のかたちを再考して、想像力のうちに創造的な生を認めるべきだと議論を進めている。つくることをめぐるアリストテレス的な質料形相論的なモデルを、かたちは死であると述べたクレーを手がかりとして、素材の流動と遷移を第一の与件とする存在論に書き換えるべきだとインゴルドは主張する(第五部)。

★ああ、結局この質料形相論にむすびついてしまうのかと。この考えは関係総体主義に重なり、要素還元主義以降実証主義的には曖昧だから無視されてきたけれど、最近再び見直されているという直観がインゴルドとも響き合えるのかと嬉しくなったわけです。

★たかが中学入試。でも何か異様なパワーが生まれる場です。そこの質が、また新たな運動態を生み出しているのかもしれません。

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2024年1月26日 (金)

2024年中学入試(74)東京私立中学 新たな教育タイプシフト始まるが極めて静か 工学院、八雲、駒沢女子

★東京の私立中学の出願動向を見ていると、3つの教育タイプのうち、座標の20世紀型教育から21世紀型へのシフト途上タイプは、圧倒的に出願数の量を集めています。21世紀型教育に完全に移行しているタイプは量的には目立ちませんが、前年対比でみると着実に市場で支持されているのがわかります。しかし、まだ市場が気づいていない21世紀型教育から22世紀型教育にシフトしているタイプの学校がでてきました。もちろん、出願数の傾向にはまだ現れてきていないのです。受験生・保護者の中には、その学校に行って、肌感覚でつまり体験型直観で、もっと簡単に言うとピンときてその学校を選んでいるわけです。

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★たとえば、工学院と八雲です。出願数の量や前年対比でみても、1月25日現在の段階では、圧倒的に集まっているとか、現段階で前年対比が100%超えているというわけではありません。したがって、両校が22世紀型教育にシフトしつつあるということは、気づきにくいのです。

★もともと定員が200名いかない設定ですから単純に量で比較もできないわけです。実際には実数をみなければわからないわけです。おそらく定員は満たされる動きはしています。

★両校は「ラウンドスクエア」という世界の最先端を行くプログレッシブな教育を実践すると同時に、本質的な教育の源泉を持続可能にする不易流行システムを創り出している私立学校のコミュニティの加盟校です。

★ほかにも加盟校はいくつかありますが、かかわり方と広さが格段に違います。工学院と八雲も、それぞれのアプローチをもっていて、それぞれ特徴的です。

★両校は21世紀型教育校ですが、そもそもラウンドスクエアに加盟した段階で、22世紀型教育にシフトし始めていたのです。他にも両校のような学校はあります。ラウンドスクエアに加盟していなくても、駒沢女子のように本質的な教育源泉を持続可能にする不易流行システムをもともともていて、そこに21世紀型教育を実践しているので、22世紀型教育の化学反応が起きているのです。2024年は、21世紀型教育タイプの学校から22世紀型教育へと対応シフトが始まる予感がします。

★一方、新学習指導要領があるので、ほとんどの学校が21世紀型教育へシフト途上ではあります。しかし、ここ2年間でサレジアン国際学園グループのように完全シフトするような学校は、2024年はおそらく停滞するでしょう。

★生成AIやDXハイスクール構想は大歓迎です。熟慮して活用すれば完全21世紀型教育にシフトするし、22世紀型教育にもシフトします。しかしもし効率的な側面に目が行き、現状の枠組そのものをシフトする機運は生まれにくくなるというパラドクスが起こります。その懸念がチャレンジングな意思を躊躇させるかもしれないからです。

★しかし、地政学リスク、気候変動リスク、ハラスメントリスクを解決しなければならない諸問題が爆増します。20世紀型教育がまだ残っている段階では、この回避は難しいのです。もちろん、自治体や国が気づいてなんらかの政策を打ち出せば、一気呵成に動き出すはずです。

★一部自治体では水面下で議論は進んでいますが、まだまだ水面下の動きでしょう。

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2024年中学入試(73)神奈川私立中学 1月25日現在 出願数動向 決定的なコトが見える可能性

★1月25日現在神奈川エリアの私立中学の出願動向を見てみましょう。決定的なコトが見える可能性があることは一目瞭然だと思います。説明するまでもないですが、2月10日くらいに全貌がみえますので、そのときに述べるとして、ただ言えることは前に進むしかないですね。地政学リスク、気候変動リスク、ハラスメントリスクをいかにマネジメントできる人間力を育てるか。その角度からみると、神奈川エリアの出願状況、つまり人気校のある共通した特色が見えてくるし、その影響を巻き起こしているコミュニティを生み出す学校の存在が見えます。まさにコレクティブインパクトです。

★女子校と共学校は、2月1日と2月2日の入試で出願数の多い順で20抽出し、さらにそれを出願数の前年対比で多い順で並べました。男子校は2月1日~3日の入試で10抽出して、同様に並べました。

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2024年1月25日 (木)

2024年中学入試(72)富士見丘 出願総数前年を超える 教師と生徒が共に学園をつくる

★1月24日現在首都圏模試センターの出願倍率速報によると、富士見丘の出願総数は前年対比104.0%、前々年対比135.8%。年々注目されていることがわかります。富士見丘のグローバルリーダーを育てる教育は、IBを導入するわけでも、インターナショナルコースのようなコース設定をするわけでもないのに、それらを設定する以上の生徒の才能が豊かに広がり深まり、大学合格実績もすさまじいという独自の教育が中学入試市場で支持されているからでしょう。

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(GLICC Weekly EDU 第158回「富士見丘ーグローバルリーダーが羽ばたく」)

★中1から6年間学ぶと誰もが英検2級以上の資格がとれるまでになるし、社会課題を意識し、解決策を自治体や企業などに提案したり、デザイン思考よろしく、世の中で困っている状況をつくっている壁を解消するアプリなどをつくるエンジニアリングもできるようになるわけです。

★論文やエッセイライティングのレベルも大学の卒業論文以上かもしれない才能の持ち主も現れます。

★帰国生か国内生かの区別なく深い教養をベースに海外で活躍できるグローバルリーダーの資質を備えます。海外から見ると、富士見丘がすでにインターナショナルスクールを超えたグローバルスクールになっています。インターナショナルスクールやインターナショナルコースは、国内と帰国のラインを引きますから、実は新しい世界が模索されている今グローバルではないかもしれません。

★本質的な問いを教師も生徒も問いつづけて学園づくりをしているのです。主体性の生まれる学校とは、教師と生徒が協力して学園づくりをする意志が共有共感されている場であることが本当は必要なのかもしれません。

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2024年中学入試(71)サレジアン国際 出願総数前年を超える

★1月24日現在首都圏模試センターの出願倍率速報によると、サレジアン国際学園の出願総数の前年対比101.2%、前々年対比149.1%です。年々人気は高め安定に向かっています。その理由は、グローバルな社会課題を解決する世界市民的思考力を英語と日本語という多言語的能力や異文化意識とカトリック的な世界の痛みを受け入れ社会に貢献する世界のリーダーが求める人間力を育成する真摯な21世紀型教育を実践しているからでしょう。

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★その教育の奥行きの深さについては、GLICC Weekly EDU 第154回「サレジアン国際学園ー世界市民を育成する教育環境」の番組をご覧ください。教育のすばらしさと教師の愛と情熱に共感すると思います。

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2024年1月24日 (水)

2024年中学入試(70)1月23日現在 千葉エリアの私立中学入試 出願状況 八千代松陰に風

★1月23日現在の千葉エリアの私立中学入試の出願状況をみると、出願数の多い順5つの入試は次の通りです。しかし、出願数多い順20までの入試の前年対比をみると状況は変わます。

市川 第1回 
東邦大学付属東邦 前期 
渋谷教育学園幕張 一次 
専修大学松戸 第1回 
昭和学院秀英 第1回 

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★八千代松陰 20日、二松学舎柏 総合探究第1回、千葉明徳 適性検査型、光英VERITAS 第1回、昭和学院 適性検査型が5位までを占めています。八千代松陰は21日の入試も前年対比123.5%です。

★八千代松陰をはじめこのような学校に人気が集まることは、学校選択は明らかに基準が変わってきているし、その新たな基準の教育の質の創発にこのような学校が日々チャレンジしているということを示唆しているでしょう。

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2024年1月22日 (月)

2024年中学入試(69)1月22日現在 富士見丘 総出願数急激に増える

★本日の富士見丘の中学入試の総出願数は、479人。前年対比95.8%。前々年対比125.1%(1月22現在首都圏模試センター出願倍率速報)。2月1日までに、まだ10日間あるので、前年を超えるのは確実でしょう。この人気の理由については、<GLICC Weekly EDU 第158回「富士見丘ーグローバルリーダーが羽ばたく」>という動画をご覧ください。副教頭の佐藤先生と英語科主任の田中先生が、ミッションをさわやかに胸に抱き、自信をもって富士見丘の教育の質を明快に語っています。

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(写真は同校サイトから)

★とにかく、同校の生徒のみなさんはどんどん外部のコンクールにチャレンジし、優秀賞を獲得しています。なおかつ卒業時までに、みな英検2級以上の資格を取得します。もちろん、海外大学にかなり合格するので、英検1級、準1級取得者も多いのです。

★1月19日同校のサイトには、このような記事が掲載されています。「高校1年生 ビジネスプラン・グランプリ入賞!」という記事です。内容を引用するとこうあります。

「本校高校1年の竹本さんが、1月17日(水)に早稲田大学で行われた「高校生ビジネスプラン・グランプリin TOKYO」(主催・日本政策金融公庫)に出場し、産業労働局長賞を受賞しました。このコンテストには全国で5000組以上の応募者から上位100に選ばれた東京都内の9校が参加しました。
 竹本さんは外国にルーツをもつ中学生に対する言語アプリのサービスを立ち上げ、すでに運用を始めています。今まさに起こっている社会課題を解決するビジネスプランと堂々としたプレゼンテーションが評価されました。」

★高度な英語力かつ教科横断型の英語による思考力が身につく学校。社会課題に対する高い意識とその解決に取り組む自分の人生の道も見出す探究活動の面目躍如の格好の例です。

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入試のシーズンに出会う受験生の保護者との対話 One Earth 22世紀型教育へ

★入試のシーズンになると、ときどき受験生の保護者と出会い対話になります。私は塾を経営しているわけではないので、直接受験生の保護者とつながっているわけではありません。ホンマノオト21やfacebook、GLICC Weekly EDUの動画などで興味と関心のある方から連絡をいただくわけです。受験相談というわけではありません。結果的にはなるのですが、まず共通しているのは、その保護者の方々は、学歴社会で勝ち組になっていろいろな領域で活躍されている方々です。にもかかわらず、いやだからこそなのかもしれませんが、私と会いたいという理由は、相も変わらず私が同じことばかり述べている偏差値にこだわらずとも、自分の成長物語を描ける、自己変容物語を創出できる学校はいっぱいあるのだという考えに共感するからだということのようです。

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★「2024年の能登半島地震を私たちは遠くの出来事では済まされない。1995年阪神・淡路大震災以降、震度6以上の地震は、日本で30回前後起きているはずだ。そのたびに、自然と社会が共生できないために二次災害が凄まじい。人間の身体と心と人間関係の喪失は甚大です。」

★お会いする保護者は実際にそういう社会や世界をなんとかしようと自分できるところからはじめている方も、世界に飛び立っている方もいます。医療従事者の方もいて、コロナ禍や災害時に本当に頭が下がる活動をされている方もいます。

★そのような方々が、これからの社会や世界を創っていける知性と感性と身体性と地球を丸ごとケアできる精神性を身につけられる学校はどこか、なんなら創るにはどうしたらよいかというのです。

★いわゆる御三家はリスペクトするけれど、自分の子どもたちは、One Earthとしての東京に立っているのだから、学びに国境はないのだと。そもそもイノベーティブな方々ですから、クリエイティブティやオリジナリティを生み出せる学校を求めるのは当然です。

★しかし、バックキャストする時の起点は、22世紀です。12歳の中学受験生、15歳の高校受験生は、76年後も活躍している可能性が高いのです。そのときにはさすがに高齢者ですから、22世紀の世界を創る壁になるのではなく、22世紀世界を開く智慧者(知性・感性・人間関係・身体性・精神性など全体を包括)になっていて欲しいと。

★少なくとも自分たちは、今年昭和99年(元号が変わらなければの計算)を迎える。いつまでも、20世紀型の成功体験を振り回すのはやめたい。偏差値第一主義は、まさにそれですよねと。

★22世紀型教育を準備できる21世紀型教育スクールはどこですか。それとも創りますか。議論は広く深く進みます。

★52年前に、「成長の限界」と「かけがえのない地球」という書籍が世に出ました。戦後の世界秩序が大きく変わる一撃でした。1989年まで、17年かかりました。SGDsまでに43年かかりました。そして、2024年ポーラーシフトが起きています。グローバルサウスのダイナミズム。今度こそ多次元の矛盾を解決してOne Earthをケアしなければなりません。大量消費・大量生産・大量移動から適性消費・適性生産・適性移動へ。AI時代はそういうポーラーシフトができる智慧を生み出す必要があるし、求める方々はたしかに存在していることに身が引き締まります。

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2024年1月21日 (日)

明日22日東京高校推薦入試始まる 潜在能力を見出す入試 見えない壁をぶち破る高校生活へ!

★明日22日から東京の高校では推薦入試が始まります。推薦入試は受ければ必ず合格するというわけではないのですが、合格すればその学校に進むことが前提になっていますから、高校受験生は、その学校の説明会やオープンキャンパスに足を運び、自分の思いとマッチングするか思い悩みながら最終的に選択します。自分ががんばってきた部活や芸術活動、外部検定試験やコンテストなどでの活躍なども、高校の先生にアピールしながら、高校を選んでいきます。高校は、中学の担当の先生から提示された成績や活動のポートフォリオとその生徒のアピールなどを総合して、推薦入試の結果と合わせて合格判定会議を行います。

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★学校によって確かに、合格判定のプロセスは違うでしょうが、この推薦入試は、多くの場合受験生の潜在的な能力を見出す入試でもあります。もしかしたら、このことが一般には理解されていない可能性があります。というのも、「成績」というもののメインがどうしても国語・数学・英語・理科・社会などの5段階の成績スコアが中心になっているからです。

★もちろん、学力の3観点で評価されていますから、知識・技能以外に、思考力・判断力・表現力等や学びに向かう力や人間性等総合的な評価がスコアに反映することになっています。しかし、たとえば、「計算を頑張って立ち臨んだり、計算の創意工夫をしたり、計算の正確性を増す表現力を生み出したりする能力など」は、3観点で評価しているわけですが、それは結局計算テストのスコアに換算されます。

★この「計算」を「漢字」や「社会の知識」「英単語」「理科の知識」などに置換えても同じことがいえます。学習指導要領に適った学力の3観点別評価が成立しています。

★いやいやそれでは、「思考力」はどうなっているのかと言われるかもしれません。もちろん、「知識」をつなげたり、「計算」を使って応用問題を解いたりということも含みますから、それは「思考力」だとみなすことができます。

★たしかに、多くの知識をインプットし、知識どうしをつないで、それをアウトプットすれば、そして、そのアウトプットが信頼性があるのか妥当なのかメタ認知でチェックすれば、知識・技能、思考力・判断力・表現力等を生徒は使っています。そして、真面目に取り組めば、しかも協働的に議論などして取り組めば、学びに向かう力や人間性なども評価されるでしょう。

★しかし、これは、「思・考・動コード」に照らし合わせると、A1とA2の領域だけでもできるのです。思考力・判断力・表現力といっても、限定的な領域のものを思考力などがあると評価しているにすぎないのです。多くの場合、このA1・A2領域の枠内でスコアが決定しています。受験生の皆さんは、そのことに気づいていないと思います。自分の才能は、9つの領域の組み合わせによって自分らしい才能が湧き出てくるのに、A1とA2の2つの領域に限定されて、スコアがでてきます。この2つの領域で、偏差値化されているわけです。

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★推薦入試は、高校受験生の潜在能力がA1A2を超えてどのくらい広がっているのかその可能性を診る行為なのです。ですから、たとえば、成績スコアが、3.0前後の場合、偏差値でいえば50前後ですが、それはあくまで、A1A2の領域での自分の学びの評価で、他の7つの領域については、そのスコアに反映していない場合がほとんどです。

★ですから、他の領域の潜在能力を生徒共に発見し拡大していく教育環境デザインがなされている学校を選べば、卒業時に、そのような偏差値を乗り超えてしまうことができるのです。

★上記の「思・考・動コード」に赤点線があるでしょう。これは、自分の思いの見えない壁を示しています。自分の才能をある領域に限定されていたり、無意識のうちに自分で限定して、本来もっと違う広がりを持っているにもかかわらず、その中でランキングが競われて、自分が真ん中ぐらいにいると、自分はたいしたことないと自信がないと思わされてしまって鬱屈する気持ちになるでしょう。しかし、そんな目に見えない壁はぶち破ればよいのです。潜在能力はもっと別のところにあるのだと自分を奮い立たせてください。

★ぶち破らないと、君の思いは鬱屈したままで、危険です。しかし、ぶち破ればよいと気づいたとき、勇気と元気が生まれてきます。チャレンジして、ぶち破れば、開放感・解放感が生まれてきます。そのためには、領域を超える仲間と協働することもあるでしょう。まずは能動的になる必要もあります。しかし、自分がどの領域にとどまっているのか気づかなければ、能動的になかなかなれません。受動的なままです。

★その気づきは、授業の中、部活の中、行事の中、国内外の研修の中で生まれます。その学校の教師がファシリテートしたり、コーチングをしたり、プロデュースしたり見守ってくれます。気づいて、自分の潜在能力を広げれば、偏差値はいくらでも超えられます。実際そのような成長をしている高校生はたくさんいます。君自身もそうなれます。

★何せ、そのような教育環境デザインを創っている学校はたくさんあります。自分の潜在能力に気づこうとすれば、自ずと適えられます。そのような学校との出会いを信じて、明日頑張って欲しいと思います。

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2024年1月20日 (土)

2024年中学入試(68)1月19日現在 2月1日神奈川私立中学入試の出願状況からわかるコト

★1月19日の日能研倍率速報から、2月1日の女子・男子・共学校の学校で出願数の多い20の入試を抽出しました。そのうえで、出願数の前年対比を出して次のような表にしました。

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★これによって、質量ともに注目されている学校がわかります。男子校では鎌倉学園、女子校では湘南白百合、共学校では公文国際学園が今年は一番注目されているということでしょうか。2日の栄光と聖光学院を入れると、また順番は入れ替わりますが、この両校は人気があることはわかりきっているので、カッコに入れてこのような表を出すほうが何かが見えるかもしれませんね。

★いずれにしても、鎌倉学園、サレジオ学院、逗子開成の生徒は、湘南白百合の生徒と協働でプロジェクトを推進しているので、神奈川全体に新しい風が舞い上がっているかもいsレません。栄光や聖光学院も協働していますし。その風の意味は何か?しばらく様子をみましょう。聖光学院の工藤校長なら、それは~だよと即答するでしょうが(微笑)。

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2024年中学入試(67)駒沢学園女子 生徒の成長のコア これからの激変社会で自己を支え続ける

★1月19日現在の駒沢学園女子中学の出願総数は、東京全体の出願総数の動きに比べ少し速い。前々年対比では80%弱(首都圏模試センター出願倍率速報から)だから、出願動向として昨年並み以上にはいくのではないかと見守っています。私学は建学の精神が、人生を歩んでいくうえで、多様な荒波が襲い掛かってきたときにでさえ、自分を支える心のコアになります。

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(左から宗教科の中村先生、校長の土屋先生)

★同校は世田谷学園と同じ曹洞宗という禅宗が建学の精神の土台にあります。禅宗がZENという形で、現在欠かせないICT環境を生み出し続けているシリコンバレーなどで活躍するGAFAMなどで仕事をしている人々の発想に影響を与えていることは有名です。つまり、ある意味今の世界に大きな影響の根源の1つにZENは影響しているのかもしれません。

★そのZENのルーツになる禅の精神を心のコアとできるのが駒沢学園女子です。そして、その禅を米国に広めた2人の鈴木がいます。一人はジョブスに影響を与え、もう一人は西田幾多郎にも影響を与えています。

★私は彼らの深い哲学はまったく知りませんが、聞きかじりの浅薄な知識が、宗教科の中村先生と校長土屋先生の対話につながったような気がして、中村先生に、先ほどの会食での生徒さんからの問いは、まるで西田幾多郎の行為的直観に通じているみたいですねと尋ねると、もちろん西田にも通じていますね。根っこは仏教と近いものがあったと思いますよと。

★会食とは、仲間とおしゃべりをせずに、静かに食する自然と自分の関係の尊さを感じ、リスペクトして感謝をしながら自然とつながっていく心の対話の瞬間のようです。ふだん私たちは、食事をするのに、その食事の背景の多次元のつながりに気遣うことはありません。そこを自覚的に食するという行為をしながら、自然とその食をつくる社会システムとそれを食べる人間の生についての包括的なつながりを感じるという行為が会食のようです。コロナ禍の黙食とは次元が違いますね。

★この自然と社会と精神のつながりを考えずに分断してきた近代社会の弊害が現代社会に溢れています。その社会課題を見事にみてとり、いまここで自分が思考し判断し表現しアクションを起こすことが、よりよき社会への変化を生み出すという心のコアを駒沢学園女子の生徒のみなさんは共有しています。

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★すでに、進路を決めた3人の高3生と校長土屋先生との対話にも立ち会いましたが、このことが実によく映し出されていたのに驚愕しました。詳しくは、今年の「shuTOMO4月号」で書きたいと思っています。

★いずれにしても、グローバル教育と探究と教科授業が、この心のコアによって結びついているのがすてきです。

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(左から広報副部長で数学科の山口先生と校長土屋先生)

★広報副部長で数学科の山口先生は、弦楽器の名手でもあり、グローバルな探究のプログラムもデザインしています。おそらくそのデザインの核には数学的思考が響いているとお話から感じました。対話をするとき、順序づけや重みづけ、分解と統合、変換などの数学的思考の視点をめぐらして話されていたからです。それが授業やプログラムを通して生徒にも共鳴共振共感の響きとなって届くのでしょう。

★なるほど、駒沢学園女子(第2回午後[1科],英語)、駒沢学園女子(第1回午前[英語])、駒沢学園女子(第2回午後[1科],算数)の3つの入試は、すでに前年対比100%を上回っています。

★入試問題は学校の顔ですから、説明会などで、受験生は豊かな感受性で共感するのでしょう。入試の選択に駒沢学園女子の教育の特徴に対応しているのがみてとれます。もちろん、他の入試もこれから出願が増えるでしょうが、この時期だからこそ特徴的な学校の姿が受験生の出願の動向から映し出されるのは興味深いですね。

★学校の選択は、教育の中身と受験生自身が自分の関心をもっていることをベースに成長できるかどうかのマッチングが重要です。駒沢学園女子はそういう新しい学校選択の方法を導くチャレンジングな学校です。

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2024年中学入試(66)富士見丘のグローバルリーダーを生み出す教育の成果が凄い!

★昨日の1月19日現在で東京の私立中学入試の出願総数前年対比は58.4%(日能研倍率速報から)。富士見丘の出願総数前年比は87.4%、前々年比は114.1%(首都圏模試センター出願倍率速報から)です。

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 (GLICC Weekly EDU 第158回「富士見丘ーグローバルリーダーが羽ばたく」で示されたスライド)

★以下の一つ一つの入試はすでに前年対比100%を上回っています。これらの入試は同校の入試ラインナップの4割強です。他の入試も当然増えますから、総数の前年対比は早々に前年を超えるでしょう。

富士見丘(WILL入試[一般コース])
富士見丘(WILL入試[英語特別コース])
富士見丘(英語資格入試2/1PM[英語特別コース],算+英資格)
富士見丘(英語資格入試2/2AM[英語特別コース],国+英資格)
富士見丘(英語資格入試2/2AM[英語特別コース],算+英資格)
富士見丘(英語資格入試2/2PM[英語特別コース],国+英資格)
富士見丘(英語資格入試2/2PM[英語特別コース],算+英資格)
富士見丘(一般入試2/2PM[一般コース],3科選択)
富士見丘(英語資格入試2/3PM[英語特別コース],国+英資格)
富士見丘(英語資格入試2/4AM[英語特別コース],国+英資格)

★その理由の一つは、国内大学合格の成果や海外大学の成果を見れば明らかです。結局大学進学実績?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この実績は、年内に出ているわけですから、総合型選抜をはじめとする推薦型入試です。

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★この意味するところは説明するまでもないですが、暗記型受験勉強では到底歯が立たない入試なのです。海外大学の場合は言うまでもないことでしょう。かつて、大学合格実績で学校を評価することは、賛否両論でした。圧倒的に賛成派が多かったですね。しかし、暗記型受験勉強が、1995年以降の阪神・淡路大震災の惨事以降もたびたびおこり、そのたびに、そのような要素暗記型の学びが社会的に反省されてきました。中等教育の学びが社会課題に結びつかなかったからです。

★それが2011年の東日本大震災が原発にまで及び、人間の驕りについて徹底的に反省を促す結果となりました。人間作りの環境に知識暗記型の勉強は思考力・判断力・表現力・創造力という包括的な人間の知(知性・感性・身体性)を学ぶ環境に転換する流れがどっとでてきたわけです。

★この教育出動を牽引したのが21世紀型教育で、その同士校である富士見丘も思い切りパラダイム転換を実施、こうして牽引し続けているのです。その新しい学びの方向転換の成果の可視化として、大学合格実績が出ているのです。富士見丘のキャリアデザインは、生徒1人ひとりの英語力、コミュニケーションスキル、アカデミックスキル、コラボレーションスキルなどを身につける環境をデザインし、その土台の上に、学内は当然ながら学外の大学や企業、他校、海外の団体などと協働して、社会課題を解決する提案をしたり解決ツールを社会実装するにまでいたります。

★大学合格実績は、そのような学びの成果の1つです。富士見丘は、多くの雑誌メディアやNHKなどのテレビ番組などでも注目されています。

★そして、大学合格という成果の前に、生徒1人ひとりは外部の多様なコンテストにチャレンジしています。チャレンジするだけですでにものすごい体験をしているのですが、驚くべき賞を受賞する生徒もたくさんでます。

富士見丘のこのような教育環境デザインは、実は生徒1人ひとりが自分のタレントをマネジメントしていけるスキルも身につけているということです。今後の混迷した日本のいや世界の経済政治社会でサバイブするには、自らタレントマネジメントする必要があります。すでにそういう流れができてもいます。ライフシフトの時代、無形資産の時代、人的資本の時代、AI時代などと言われています。

★そのタレントのメインはクリエイティビティです。かけがえのない自分、つまりOnly One for Othersとして代替不能な価値ある人間としていかに生きていくか。そのようなコンセプトのキャリアデザインが大いに役立つのが、今後の大学入試です。

★一般選抜の入試問題も、いつまでも選択式型問題が中心ではないのです。国立大学も論理的思考をみるだけの論述式問題では終わらないのです。2025年から大きく変わるでしょう。それが生成AIの時代でもあります。

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2024年1月19日 (金)

2024年中学入試(65)1月18日現在 東京共学校 学校選択基準の多角化へ 

★前回同様、2月1日の東京共学校の中学入試において、増加率の高い順に20を並べてみました。学校選択基準の多様化がここでもはっきり。

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(写真は、サレジアン国際サイトから)

1 明星 特別選抜2回 
2 武蔵野東 AO 
3 三田国際学園 第1回(IC) 
4 文化学園大学杉並 第2回/英語特別① 
5 国士舘 第1回 
6 サレジアン国際 第1回 
7 実践学園 LA&S第1回 
8 早稲田実業学校  
9 新渡戸文化 2/1午前 
10 文化学園大学杉並 第1回/適性検査型 
11 新渡戸文化 2/1午後 
12 城西大学附属城西 第1回午前 
13 サレジアン国際 第2回 
14 郁文館 第1回GL特進選抜 
15 明星 特別選抜1回 
16 多摩大学聖ヶ丘 第1回 
17 サレジアン世田谷 第1回 
18 東京成徳大学 第1回特待選抜 
19 法政大学 第1回 
20 中央大学附属 第1回  

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2024年中学入試(64)1月18日現在 東京女子校 学校選択基準の多角化へ 

★前回同様、東京女子校の2月1日の入試の増加率多い順に20を挙げてみます。やはり学校選択基準は多種多彩ですね。

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(写真は中村のサイトから)

1 三輪田学園 第1回午前/英検利用 
2 文京学院大学女子 探究プレ/英語インタラ 
3 山脇学園 英語AL/A 
4 京華女子 第1回午後/2科・4科型 
5 中村 一般/2月1日 
6 富士見丘 WILL 
7 国本女子 第1回 
8 京華女子 第1回/適性検査型 
9 桐朋女子 Creative English 
10 中村 特待生/2月1日 
11 聖ドミニコ学園 第1回 
12 玉川聖学院 多文化共生 
13 京華女子 第1回午前/2科・4科型 
14 女子学院  
15 東洋英和女学院 A日程 
16 桐朋女子 A 
17 江戸川女子 適性検査型 
18 十文字 思考作文 
19 十文字 英検利用 
20 小石川淑徳学園 第1回スカラシップ 

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2024年中学入試(63)1月18日現在 東京男子校 学校選択基準の多角化へ 中学入試市場と中学受験市場の相違が可視化されてきた可能性大。

★1月18日現在の日能研倍率速報を見ながら、東京の男子校2月1日の入試において、前年に比べて増加率が高い学校順に10位まで並べてみると興味深いことが見えてくるなと思いました。最近は偏差値一つの基準で学校選択を考えることはなくなった。学校選択基準の多角化という傾向があるとはなんとなく了解していましたが、このように並べると教育の質を向上させる様々な取り組みをしている学校が、いわゆる御三家でなくても選択されていますね。

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(写真は聖学院サイトから)

★そのことは、前回の記事で紹介しましたが、文大杉並の染谷先生自身が語っています。同時に結果や成果が出ていますから説得力があります。このような発言は、なかなか中学受験市場ではあからさまに言われることはありません。やはり私学人が中学入試市場でしっかり語っていく必要があります。

★一般選抜が中心である限りは、偏差値が学校選択基準で幅を利かすのはしかたがないのです。そのことのメリットデメリットがあるのは否めません。私立学校が主導する中学入試市場では、私学人自らが、多角的な基準を用意する気概は大切だと思います。染谷先生のように気概のある教師が創意工夫する自由が設定されている学校は人気がでるのですから。

1 佼成学園 第1回一般/グローバル 
2 聖学院 英語特別 
3 佼成学園 第1回特別奨学生 
4 聖学院 第1回一般 
5 開成  
6 麻布  
7 武蔵  
8 足立学園 1回一般/志 
9 早稲田 第1回 
10 攻玉社 第1回 

 

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2024年中学入試(62)希望の私学「文大杉並」 1月18日現在で昨年受験者数を上回る!

★1月18日午後6時現在の日能研倍率速報を眺めていて、文化学園大杉並(以降「文大杉並」)の出願数が急激に伸びているのを見て、オッ!と思っていました。2月1日午前、2月2日午前、2月3日すべての出願数の前年対比が100%を上回っていたのです。午後の入試は、2月1日以降ギリギリになって急に増えますから、出願総数は前年対比99.4%でも、はやくも受験者実数は、昨年を超えているのではないかと思ったのです。

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★すると、しばらくして、チャットに、「受験者人数昨年を超えました」と同校の次世代教育開発部部長の染谷先生から連絡が入りました。そして「肌感として、偏差値以外の物差しで学校を選ぶ保護者、受験生に注目して頂いている実感があり、何より嬉しく思っています。そのご期待に応える学校創りに、こだわりとプライドを持って取り組んで参ります。とにかく、子どもたちのおかげです。本当、子どもたちの力ってすさまじいですね!」と。

★染谷先生は、マルチプレイヤーで、広報も担当し、教務部の副部長などもしているはずです。学校の枠を超え、各種団体と連携して生徒自身が社会課題を見つけ協働して解決するアイデアを社会実装に変えていくプロジェクトを行っています。生徒が興味と関心を持った分だけプロジェクトができますから、大変だと思うのですが、各チームに生徒のプロジェクトリーダーがいて、染谷先生はプロジェクトディレクターとして、ファシリテーターをしたり、あるときはメンターになったり、またあるときはコーチになったりしているわけです。

★しかも、次世代教育開発部部長ですから、自分が行っていることは学内の先生方と研修を実施したり、いっしょにPBLを行ったりして、共有しています。教師も生徒もかけがえのない価値を持っています。そのそれぞれの価値を社会実装につなげます。そのために、それぞれの生徒が言語的あるいはテクノロジー的、あるいはエンジニアリング的、はたまたアートサイエンス的なスキルを実装していきます。

★外生的技術進歩だけではなく内生的技術進歩もあるのですが、そのエネルギーはそれぞれのかけがえのない価値です。無形資産を豊かにしていく6年間。社会が、世界が求める人的資本が生み出されていきます。

★染谷先生が、こどもたちのエネルギーがすごいというのは、いまここで学びが世界を創る・世界を変えるエネルギー態になっているのを見ているからでしょう。そして生徒の未来がイメージできる実感を抱いているからでしょう。

21世紀型教育機構でも、染谷先生はSGT(スーパーグローバルティーチャー)のリーダーです。自分の学校を越えて、同士校のいわば次世代教育開発部部長でもあります。

★知(知性×感性×身体性)のエネルギーがみなぎっている文大杉並。受験者数はまだまだ増えるでしょう。この混迷した時代、希望の私学として光を放っているのですから。

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2024年1月18日 (木)

2024年中学入試(61)工学院出願順調に推移 生徒の学びのリアリティが豊か

★東京のほとんどの私立中学が、まだまだ昨年に比べ、出願者数は少ない。出願が始まって8日目だから、そうなのですが、同日比でどのくらいなのだろうとふと思い、ときどき工学院の教務主任田中歩先生に連絡をとると、同日比では、今のところ順調に推移していますよと。見守っていてくださいねと。当事者の歩先生に、第三者の私が元気づけられています(汗)。

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★そして、歩先生によると、そのうちスペインの学校とのたいへんおもしろいプロジェクトにういてブログがアップされるので見てくださいと教えて頂いたので、オッと思い、そのうちという話でしたが、他にも面白い取り組みが載っているかもしれないとサイトにアクセスしてみました。

★すると、やはりありました。1月15日にこんな記事が掲載されていました。<「若ものを考えるつどい “働くってなんだろう“エッセイコンテスト」で入賞>。リード文にはこうあります。

<公益財団法人勤労青少年擢進会、一般財団法人日本勤労青少年団体協議会が主催する第36回「若ものを考えるつどい2023 “働くってなんだろう”エッセイ コンテスト(若者の部)」において、高校3年生 高野有さんがタイトル「私の『仕事』」で入選しました。高野さんは、10月8日、三鷹市で開催された同エッセイコンテスト上位入賞者が参加する「若者を考えるつどい2023」に招待され、表彰式や受賞者交流イベント(グループディスカッションなど)に参加しました。
 同コンテスト(若者の部)は、15歳から35歳を対象に「仕事へのチャレンジ、気づき、提言」をテーマにエッセイを募るものです。
 高校3年生の5月頃から国内のボランティアセンターで日本語に不安のある外国籍の方々に簡単な日本語を教えるというボランティアを行っていた高橋さん。エッセイはその経験から考察した内容になっています。>

★高野さんは、すでに総合型選抜などの年内入試で、進学先が決まっているようです。はじめは、そのために役に立つかなという思いもあったようですが、ボランティアセンターで外国籍のある方々に日本語を教えている自分の役割をリフレクションしてエッセイを書いているうちに、そのような感情を突き抜けたと語っています。

★工学院における学園生活は、様々なプロジェクトがあるし、骨太の探究論文を高1・2で編集する経験もしているので、本人が文章を書くのは苦手だと語っているものの、実際にはエッセイを書くことは抵抗がなかったと思います。

★何より、ボランティアという活動は、どのような領域であれ、何かに困っていたり悩んでいたりしている人とコミュニケーションをとるわけですから、多くの人が見逃しがちな内面の奥深い叫びを引き受け、自分は何ができるのだろうと問いつづけるわけです。

★入試で出題される問いとは、質的にその重さが決定的に違います。

★言葉だけの魂がこもてちない構築文章とは違う、リアリティがあるでしょう。読み手に聴き手にその場にいないのに、強烈なリアリティを想像させ、大切なことに気づかせる魅力。激動の今の社会で求められる人間的な魅力です。その魅力が工学院の学びで生徒みなさんの内面からあふれ出るのですね。

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2024年中学入試(60)1月17日現在1月20日千葉~市場で注目されている千葉の私立中高一貫校

★1月17日現在の1月20日千葉の中学入試の出願件数(日能研倍率速報から)が、前年対比100%以上の入試をリストアップ(新設入試は含まれていません)しました。

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★21日以降は、まだ締切っていないところが多いので、もう少し様子をみましょう。渋谷教育学園幕張と昭和学院秀英、昭和学院が今年も目立っています。そして八千代松陰がいよいよ存在感を現してきたという傾向でしょうか。

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2024年中学入試(59)1月17日現在神奈川~市場で注目されている神奈川の私立中高一貫校

★1月17日現在、神奈川の私立中高一貫校2月1日入試の出願件数が、前年対比100%以上の学校を挙げます。

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湘南白百合学園 1教科

聖セシリア女子 A/1次

聖セシリア女子 B/スカラシップ

北鎌倉女子学園 音楽

北鎌倉女子学園 算数①

鎌倉学園 一次

武相 第1回

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2024年1月17日 (水)

2024年中学入試(58)東京出願開始から7日経って~市場で注目されている東京男子校

★1月16日現在、2月1日東京の私立男子校の入試で前年対比100%を上回っている入試は、佼成学園第1回一般グローバル、佼成学園第2回一般です。

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(図は同校サイトから)

★佼成学園が注目されるのは、グローバル教育も大学進学教育についても緻密にダイナミックに積み上げられてきているからでしょう。ICUとの高大連携が結ばれているのも、同校のリベラルアーツ的な生徒の学びの環境のうえに、グローバル教育や探究の活動が行われているからでしょう。

★同校の教師は、学問的なレベルと現場レベルと進学教育レベルの3つの領域を実に丁寧に結びつけているところから、教育的な豊かな雰囲気がにじみでているわけですが、受験生・保護者はそれに共鳴共感共振しているのだと思われます。

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2024年中学入試(57)八雲学園 新設得意2科目入試 5倍超える

★1月15日現在首都圏模試センターの出願倍率速報によると、八雲学園が新設した第4回得意ニ科目入試は106名の出願があり、5.3倍。2月3日の午後の入試であるにもかかわらず、はやくもこれだけの出願。3日以降の出願は、前日ギリギリまで増えるから、現在の段階で、まだ様子を見られるのが一般的。5日の未来発見入試も3.1倍になっているが、それ以上なのが得意2科目入試。

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(写真は同校サイトから。部活は実はグローバルな舞台で大きな役割を果たしている。)

★得意ニ科目といっても、国語と算数の組み合わせ以外に、国語と社理、算数と社理という組み合わせ。

★1科目入試が最終日の未来発見入試にあるし、国算の2科目は今までにもある。このような社理をベースに国語か算数か得意な科目でというは、今までにない発想。

★そして、受験生の興味と関心や得意なものに対する機会を設定するというきめの細かさは、まさに同校のウェルカムの精神が反映しているといえるのではないしょうか。

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2024年中学入試(56)東京出願開始から7日経って~市場で注目されている東京共学校

★前回のつづき。2月1日の東京共学校から、前年対比100%以上の入試を挙げます。

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(写真は、同校サイトから。またも新しいプロジェクト。しかも災害の多い日本では重要なプロジェクトです。)

サレジアン国際第1回

国士館第1回

実践学園LA&S第1回

三田国際学園 第1回(IC)

早稲田実業

文化学園大学杉並 第2回英語特別①

明星特別選抜2回

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2024年中学入試(55)東京出願開始から7日経って~市場で注目されている東京女子校

★東京の私立中学の出願が始まって7日経ちました。まだ7日ですから、東京の出願総数の前年対比が52.5%(1月16日現在 日能研倍率速報集計から)というのは、なかなかいいペースなのかもしれません。まだ全体的に締め切るのは15日以上あるわけですから。そんななかで、すでに前年対比が100%を上回る入試もあります。

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(写真は京華女子女子のサイトから。広報の創意工夫もすさまじく、ルーブリックや思考コードをつくって授業の質を向上する基準を学内で共有してもいる)

★2月1日の女子校入試を見ていくと、京華女子女子の適性検査型入試と同校午後入試、桐朋女子A、同校クリエイティブイングリッシュ、三輪田第1回英検利用、山脇英語AL/A、女子学院、聖ドミニコ第1回、中村一般、同校特待、富士見丘WILL。

★この段階で、前年対比増ということは、なんらかの理由で人気があるということです。中学入試の全貌がみえてきたところで、述べたいと思います。

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2024年中学入試(54)聖ドミニコ学園➌インターナショナルコースの成果

★聖ドミニコ学園は、2019年に21世紀型教育機構に加盟し、インターナショナルコースを設置していますから、中1から学んだ1期生の成果は、現高2生が今年新高3になり卒業して最終的な成果が出ますが、現段階で、英語・数学・理科のオールイングリッシュのイマージョン教育は、その教育方法論が進化し、英語教育を超えてリベラルアーツ的な視野を生徒が着々と身につけているプロセスが可視化されています。

(現高2の英語のCEFR基準到達者分布)

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(インターナショナルコース ニュースレター 2023年12月20日号から加工)

★端的にわかりやすいのは、現高2生が受けたTEAPの結果です。C1(英検1級相当)も出ていますし、B1(英検2級相当)以上は92%です。まだ高2ですから、卒業時までに、おそらく全員がB1以上になるだろうし、C1・B2に到達する生徒もさらに増えるでしょう。

★英語だけで大学合格が決まるわけではないですが、英検2級相当以上を取得していると、現在の大学入試ではアドバンテージが高いことは周知の事実ですね。

★小規模校なので、量的には目立ちませんが、いやだからこそ質的には相当豊かなのです。教育開発の取材でも、同校のイマージョン教育につて取材されていて、その記事には、さりげないですが、極めて重要な学びの基準(私的には思考コードに相当するもの)が載っていて実に興味深いですね。

★また上智大学との法人どうしの高大連携はありませんが、インターナショナルコースのアドバイザーとして、上智大学の池田真教授と協働関係にあります。池田教授はCLIL教育の第一人者です。CLILということは、つまり教科横断的な言語教育だし、リベラ―ルアーツ的ベースが背景にあります。

★そうそう、B1以上の英語力で重要なのは、インターアクションというスピーチです。CEFRでは4技能5項目、5技能と言ってしまってもよいでしょう、対話力も測ります。チャットレベルではもちろんありません。ケンブリッジ大学の口頭試問にも耐えられる能力の1つです。

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2024年中学入試(53)筑駒 前年対比105.3% 潜在的な動き?

★筑波大学附属駒場中学の出願はすでに締め切られていて、660名出願、前年対比は105.3%。前々年対比は114.6%。この右肩上がりの意味するところは、重要です。世の中的には、中学入試の受験者数は微減だと言われ始めていますが、筑駒は増え続ける。この状況が時代の変わり目を象徴するのか、そのお変わり目に抗う動きを象徴するのか、それとも第三の動きの兆しなのか。

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★それは、2024年中学入試の全体像が見えたときに、また考えたいと思います。

★それにしても、国立だから当然かもしれなませんが、同校の募集要項には、次のような記載があります。

「<注>身体の障害等により本校の入学者の選考および入学後の修学に特別な配慮を必要とする場合は、出願前にあらかじめ本校に申し出てください。申し出に基づき、筑波大学附属学校教育局において、就学相談を実施します。」

★この記載を<注>としたのはまた解釈が分かれます。注としなくても、諸条件の1つとして書けばよかったのではないかという疑問もでてきますが、大事なことだから、あえて注で目立つように書いたと解釈もできます。

★いずれにしても、今年から、「合理的配慮」は努力義務ではなく義務になるので、明記しているわけですね。都の条例では、すでに義務化されていますが、国全体では今年からですから、そうしたのかもしれません。

★都の公立中高一貫校の場合は、「特別措置」という章を立てて、詳しく記載されています。

★合理的配慮という法律が生まれてきた背景を考えると、変わり目象徴と変わり目対抗の動きと第三の動きが混在していることは確かだと思います。

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2024年1月16日 (火)

2024年中学入試(52)聖ドミニコ学園➋教育の質を支える教師の専門性の高さ

★聖ドミニコ学園は、少人数規模の学園。中学入試の募集人員は50名。小学校から上がってくる生徒もいるので、少ないわけです。ですから、量的には目立たないのです。ただその分、教育の質がめちゃくちゃ高いわけです。リベラルアーツという言葉はうたわないですが、教師の専門性が高く、かつその豊かな専門性を現場の教育にいかにつなげるか研究がされています。実際にはリベラルアーツ学校だと思います。

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(写真は、同校サイトから)

★学問という大文字のセオリーTと高校の授業で先生方が創意工夫している小文字のセオリーtは、一般には乖離しがちですが、聖ドミニコ学園はつなげる研究をしています。越境とか横断とかいう話題は教育業界ではよくでますが、Tとtの結合という越境あるいは横断を、自覚的に学校全体で取り組んでいる聖ドミニコ学園は、実にチャレンジングです。

★大学院卒業の教師や博士課程後期で研究しながら現場で教鞭をとっている教師も複数います。そのような先生方が学内の先生方を巻き込んで、研究をし、その成果をシェアし、日々の授業に結びつけていく努力をしているのです。

★そして、研究紀要も出していますが、興味深いことに高2の生徒も本格的にアカデミックな論文、しかもというか論文ですから当たり前ですが、先生方同様、オリジナリティのあるしっかりとした論文です。

★Tとtの結合が、教師の質を向上させるだけではなく、生徒にも伝わっていく。この回路こそ、教育の質というのでしょう。

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2024年1月15日 (月)

聖パウロ学園高等学校 推薦入試出願始まる。

★東京は、中学入試の出願が10日から始まっていますが、高校も本日から推薦入試の出願が始まります。大学も共通テストも終わり、一般選抜に本格的に突入します。入試沸騰の時期がやってきました。聖パウロ学園も高校の推薦入試の出願が始まりました。昨夜は、暖冬の東京エリアだというのにパウロの森はうっすらと雪が積もったようです。清々しくも緊張感ある聖なる空間に聖パウロ学園があることに改めて気づきます。

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★聖パウロ学園は、小島綾子校長、勝俣副校長、大久保教頭、松本主幹が、長い間教育の質の種をそれぞれ植えてきたのが、2023年になって芽が出て、一斉に花開いた雰囲気です。

★グローバル教育もスポーツをベースにした健康教育、経験と思考の化学反応が次々と生まれている探究。これらが一体となって相乗効果が生まれています。

★パウロの森を拠点に、身体の健康、心の健康、人間関係の健康が形成され、それをベースに自然と社会と精神が分断されたときに生まれる社会課題を解決する方法を深く考える授業と探究活動が出来上がってきています。

★それは説明会の時に体験授業に参加して共感の輪を広めています。

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★しかも、授業で頭の中で構築するだけではなく、数多くのボランティアや国際的な交流でアクションすることによって、最初考えていた自分たちの考えがまだまだリアリティがなかったことに気づき、内省を広げ深めていく体験が1年中あるわけです。

★結果的にそれは総合型選抜などの新しい大学入試制度にもマッチし、それぞれが大学へと羽ばたいていきます。

★自然というのは、人間がどんなに考えや想い広げても、その努力をし続けないと、まだまだだと覆し、その惨事が凄まじいことになるのを今年私たちは再び思い知らされました。国や自治体に任せるだけではなく、私たちの想いや考え、行動を持続可能にすることが肝心だということでしょう。

★自然と社会と精神が結合する知恵を学び続け体得し続けることがSDGs達成年2030年までに必須です。もちろん、その後も同様です。

★ここに向かっていかなければ、今の高校生が100歳になった時、22世紀の未来はwell-bingになっていないでしょう。聖パウロ学園の都心から・人里から離れた森のキャンパスで成し遂げるミッションは、八王子の東京の首都圏の日本の世界の、そしてやがて宇宙の核たるミッションとなるでしょう。

★身近なところからのパウロの思考型教育。その向こうにはこんな人類のもっとも重要な使命を果たす知恵を生み出す地平があるのです。

★そんな教育の前に、偏差値という辺境の島国だけに通じる尺度は、何も測ることができないのです。

★しかし、そのことに気づく感受性の豊かな生徒はまだまだ少ないですね。だから定員80名という少人数規模の学校なのです。量より質を大事に、個別最適化と協働的な学びが完全に一体化しているのです。そうそう今週から教師も生徒も生成AIの使い方研修があhじまるということです。パウロ受験生のみなさん、君の想いと考えと行動が、近い将来とても大事なことだと注目されることになるでしょう。共にパウロですてきな自分物語を書きましょう。

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2024年中学入試(51)フェリスの出願締め切る

★フェリス女学院の中学入試の出願は昨日締め切られました。同校サイトによると431名だそうです。前年対比95.8%で、19名減少しただけです。隔年現象として、同校としては全く問題ないという認識だと思いますし、たしかにそうだと思います。

★ただ、今年横浜雙葉は、入試日を、1日と2日の2回入試にし、1回目の定員を90名から60名に絞っています。ですから、その30名分は、どこにシフトするのかと関心があったのですが、フェリスにという動きはそれほどないということでしょうか。60名に絞ったわけですから、手堅く決めようとする上位の生徒は、横浜雙葉ファンであれば、ますますフェリスにシフトすることはないわけです。

★では、他にどこへ?湘南白百合は1教科入試で、やはり湘南白百合ファンが受験します。しかも、湘南白百合の理数系や医学部に力を入れた魅力的な多様な高大連携のプログラムや複数の男子校とのコラボプログラムなどは、理数系に興味のある女子が1日算数を選択して湘南白百合にチャレンジする受験生が多いと聞き及んでいます。

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(冬休みの湘南白百合の探究のシーン。フィンランド大使館とコラボ。鎌倉学園の男子生徒も参加。ジェンダーという社会課題やテクノロジーのイノベーティブなトピクも盛りだくさんだったようです)

★リベラルアーツや文系イメージのフェリスや横浜雙葉を選ぶかどうかは迷うでしょう。

★では、従来のフェリス志望者が洗足や桜蔭にシフトしたのか?それもなさそうですね。

★隔年現象ということなのでしょうが、やはり中学入試の受験生の数が微減というのが本当のところかもしれません。

★それから、優勝劣敗あるいは加熱な競争主義の価値観シェアが減りつつあるという価値の転換もジュワーっと現れてきたのでしょう。

★私立中高一貫校であれば、東大はともかくとして(寡占状態ですからね)、東大以上の海外大学への道も、国内でもMARCH以上の大学の道は開かれていて、大学進学実績の多寡が、大きな選択の指標にならなくなってきているということでしょう。

★受験生にとってwell-beingな状態を生み出してくれる価値ある学校はどこか?それが問題だという価値観に移行しつつあるのでしょう。

★私立中高一貫校にとっては、倍率が上がることは諦めはしませんが、定員確保が第一の目標になってきたことも確かです。学校の生徒募集戦略という経営手法が、より丁寧に質を磨き上げ、それを発信するというより、受験生の共感を得るアクションが中心になっていくでしょう。

★まだまだ締め切りは先なので、即断せずに、もう少し様子を見ていきたいと思います。

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2024年1月14日 (日)

2024年中学入試(50)共通テストと探究の結合点 聖学院の思考力入試はすでに強烈

★今行われている共通テストについて、産経新聞の記事(2023年1月13日)「私大専願者に共通テスト離れ 出願率底上げが課題」で、こう書かれています。「今回の共通テストは現役生の出願率が45・2%(前年度比0・1ポイント増)とほぼ横ばい。年々上昇を続け、6割に迫る大学進学率と比べて伸び悩みが目立つ。共通テストの導入は、高校の授業を暗記中心から思考力の育成に転換させることも目的の一つ。授業改革を加速させるためにも、出願率向上を目指す工夫は大学入試改革の課題となる。」

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★思考力をベースにしたいというビジョンはすてきです。学習指導要領のパーパースを実現する共通テストになっているかというと、まだ発展途上です。中学入試の問題は、栄東の問題を例に、そのパーパスに先行的に進めていることを、前回述べました。

★昨日の共通テストの国語の現代文の問題をみると、たとえば、論説文を読んで、新たな課題に記述する問題を生徒が論述したという設定で、その論述文を推敲したら、つまりメタ認知したらどうなるかという問題が3問出ているわけです。

★これは、思考コードでいえば、B2の領域まで求めている問題ですが、これを単純に情報処理を的確に処理する思考問題と世間が評価していることに対して、もう少し突っ込んでいるのだよということを文科省やセンターで説明したほうがよいでしょう。

★この問題は、京大の松下佳代教授を中心に探究と論文を接合する教育活動が展開されていて、高校現場ですでに知られている方法論が公開されています。トウールミンモデルという方法論ですが、これはトウールミンという分析哲学者が、哲学的多角的な問いをシステム化した手法で、骨太の思考力を鍛える手法でもあります。

★共通テストの自分の論述を推敲する視点は、まさにトウールミンモデルや三角ロジックという思考力に通じています。ただ、選択肢問題であるのが、そのような背景を見えづらくしています。

★その点、聖学院の思考力入試は、トウールミンモデルを遺憾なく発揮する記述式の問題が出題されています。もちろん、中学入試の一般入試で、200字の論述がせいぜいですから、聖学院のように新タイプ入試を設定しているところでしか、このトウールミンモデルの活用を可視化する問題は出題されてはいません。

★それだけに、聖学院の多様な思考力入試もまた革新的知の開発問題として強烈です。ここ数日本ブログのかつての聖学院の記事のアクセスが増えているのは、中学入試市場が、このような流れに気づく高感度なアンテナが立ち始めているということなのかもしれません。

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2024年中学入試(49)栄東の社会 共通テストの思考力の質を上回っている

★前回の続きで、社会の入試問題をみてみましょう。昨日行われた大学入学共通テストの日本史Bの問題と同じような問いが出題されていました。しかし、同じように思考力を要するのですが、思考力の質が違うのです。両方とも、時代を超えて経済的な発想を結び付けているので、学習指導要領の教科横断的な観点が入っています。なるほど思考力を要します。

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★共通テストは、信長時代の2つの資料を読ませて、その資料が語っている楽市楽座関連の経済政策について読解という理解思考を問うています。

★これに対し、栄東は、米将軍徳川吉宗が、当時お貨幣経済の流れと米価の需要供給関係と今でいう為替相場の原理を関連付けた政策について思考する問題を出題しました。資料を理解思考する点では共通テストと同じですが、その理解を経済政策や市場の原理と結び受ける適用・応用思考も要します。

★わかりやすくいうと、共通テストは思考の一段階、栄東は思考の2段階を要します。さらに、共通テストは選択式問題ですが、栄東は記述式です。具体的な資料を抽象化し、江戸時代と現代社会の経済政策の共通点をメタ的に表現する思考力も要します。結局3段階の思考力が栄東です。

★思考コード的には、共通テストはA2レベル栄東はB2レベルです。

★共通テストは情報を的確に処理する思考力を図る傾向になっているとよく言われます。まさにA2レベルです。思考力は思考コードでは9つの領域で考えることができますが、A1もC3も区別なく思考力と理解していると、共通テストと栄東の入試問題の違いが分からない可能性があります。

★NHKで「ニュー試」という番組があります。ケンブリッジなど海外の大学の入試問題をタレントが挑戦する問題です。第1段階では、選択式の問題ですが、思考のレベルはB2です。第2段階の口頭試問では、思考力は9つの領域すべてを活用します。

★思考コードを知らなくても、共通テストとNHKの番組を比較するだけで、同じ思考力でも質が違うということはすぐにわかると思います。

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2024年中学入試(48)栄東の算数 アルゴリズムの図形化

★今年の栄東の東大特待Ⅰの出願数は微減と言えども、1497名と人気は変わらない。算数の問題を見て、ただ難しい問題を出しているのではなく、新しいルールを見つけながらも、基本的な既習知識を結合して考える問題を出しているのは、さすがだなと。正六角形の一頂点から内部に向けて出た光がまたどこかの頂点にもどっと来る反射回転数を追跡する問題。対話形式で、どうやって考えていくのか話し合っている文章を読みながら、ルールを見つけて、正六角形の辺や内角、対角線などの基本的な条件知識を結び付ければできる問題。

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★与えられた一つ正六角形の内部をぐるぐるやっているとわからなくなるから、図のように六角形を外に書き足して展開図を書くように考えていくわけです。これは空間図形の問題でも学んでいるので、同入試を受験する生徒は既習済みですが、平面にその適用ができるかは、数学的思考の「変形・置換」などの重要な視点です。入学後、この視点を数学の授業の中で形式知化し、6年間で暗黙知化していく学びの方法の深みがあることが推察できます。

★また、二点間の最短距離、最短時間を求めるアルゴリズムをダイクストラ法的に図式して、速度を最短距離に置換える思考作業もするのも単に問題ができればよいというものではないという同校数学科のコンセプトであることがわかります。たんに論理的思考というのではなく、ある論理を位相転換できるかどうかというロジカルシンキングはクリエイティビティを育てる数学のあり方でもありましょう。

★(2)は、最初の光がBCをとおるときのBC上の点をGとして、BG:GDを求める問題ですが、先ほども言いましたが、これは正三角形が組み合わさっていると考える正六角形の既存知識を結合すれば、見た目ですぐに解答できます。

★中1で、二点間の最短距離を求める作図を学ぶのでしょうが、中学入試の算数では、すでにその発想を使うし、中1の数学の教科書以上に、いろいろな発想を新結合する問題が中学入試の算数です。

★いいわるいは括弧にいれて申し上げますが、このようなクリエイティブな数学的思考を小学生時代に学んでいるかどうかは、若い人材を育てるうえで、重要になってきます。文科省は、私立学校の教育の頭脳を中学入試で調べることはいくらでも可能です。

★そのエッセンスを具体的に小学校のカリキュラムに埋め込めば、少子化と言えども、つまり1学年70万人時代になったとしても、シンガポールやフィンランドの全人口が600万いかないことを考慮すれば、日本のソフト開発能力を豊かにできると思います。

★そういう教科書をつくれば、おのずと現場の教師は学びますから、自己研修もでき、日本の将来は明るいはずです。シンプルに、教師も生徒も革新性を学べる思考の書を創ったほうがよいでしょう。

★制度改革も大切です。一方で知的革新をお願いしたいですね。とはいえ、なかなかできないので、私立学校が先行するしかないわけですが。

★知の革新なんて難しく、一部の私立学校でしかできないのは、公平ではないと考えるだけではなく、その難しさの壁を解消する方法を考えたり実践しながら、あるいはシン最近接発達領域の開発を個別最適化システムで進めていくことによって、私立公立かかわらず、すべての生徒にその機会を作るという公平性を考える時代がやってきたのでは。

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2024年1月13日 (土)

2024年中学入試(47)聖学院 男子生徒が想像を超えて成長する

★1月11日、一般財団法人東京私立中学高等学校協会の総会「理事長・校長会」で、聖学院の校長伊藤大輔先生と副校長の清水広幸先生にお会いしました。この時期、聖学院の記事が本ブログでアクセス数が多くなっていることもあり、やはり保護者から入学時に想像した以上に息子が成長する体験が語り継がれていて、そこが注目されているのは、本来的な学校選択で嬉しいですねと口火を切ると、伊藤校長が、間髪入れずに、「生徒は自由にやりたい学びをやっていますからね」と。そして清水校長は「本間先生のよくご存じの伊藤豊先生のようなベテランばかりか若い先生も本当によく生徒が自由にできる学びの環境を創ってくれているのですよ」と。

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(聖学院の有名な糸魚川農村体験。自然と社会と精神の循環共生に気づき、脳の島皮質が刺激を受けAWE体験をするシーンの1つ)

★「自由」がこれほどキーワードになっている男子校は、他に麻布が有名ですが、両方ともこの「自由」はプロテスタンティズムの流れを汲む「自由」。もちろん、麻布は建学時はプロテスタントの色は濃かったけれど、当時の国が宗教学校に圧力をかけたために、そこからは外れざるを得なかった。しかし、私学は不易流行で、建学の精神そのものは受け継がれます。

★その点、聖学院は、そのような国の圧力を跳ね返し、今に至るから、「自由」は筋金入りなのでしょう。毎朝全校生徒が講堂に集まり礼拝に臨むところから始まります。伊藤校長や清水副校長が語る「自由」は、ポピュリズム的な意味ではありません。Only One for Othersという理念を実行するからこそ自由なのです。自由はかけがえのない自分という存在を他者と共に他者が困らないように働きかけることができるという意味なのでしょう。他者が困るということは何らかの壁や拘束があるわけです。それを解除したりそこから解放する思考と判断と行動をフル回転するのが聖学院の生徒なんです。

★お二人から、そんな熱い思いをインスパイアーされて感動していたのですが、昨日その感動がさらに大きくなりました。それはGLICC代表鈴木裕之さんが主催する≪GLICC Weekly EDU 第157回「聖学院の魅力ー生徒が大きく成長する」≫広報部長早川太脩先生の熱いトークを聞いたからです。

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★清水副校長がベテランだけではなく若き教師が生徒が自由に学べる環境を創ってくれているという意味がよくよくわかりました。その環境デザイン力や仕掛けづくりが、確かにデザイン思考やアート思考などPBLの新しい手法であるアートプロデュース的なスキルを大いに発揮しています。

★不易流行とはまさにこのことだなと。つまりOnly One for Othersの意味やそれを大切にして授業をしてきたベテランの潜在的なタラント(暗黙知)を顕在化し、形式知化し、システム化する知見を同校の先生方は遺憾なく発揮しているという話を詳細に早川先生は語ってくれています。

★しかし、世の人は、システムとか形式知化というと、そんな機械的なという先入観でとらえるかもしれませんね。ところが、中学3年間、生徒は毎日日々あったことをリフレクションし明日からどうしていくかという言語化ノートと自宅で自学した証のノートを提出するのです。それを最終HRの時間に返却できるように担任の先生をはじめ学年団の先生方はフィードバックを書き込むのです。

★その詳細な具体的な話が、同動画で見ることができます。3年間中学担当の先生は毎日それを回していきます。このシステムのあり方を知ったら機械的だとか言えないことは明白です。

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★しかし、これだけではないのです。授業と行事、プロジェクトなどがらせん状につながっていて、そこには多様なPBLが稼働しているのです。PBLとは、教師と生徒、生徒と生徒、教師と教師が「自由」な発想を生み出す環境を創ることでもあります。

★熱い想いや愛情があふれた男子校だということがわかります。ぜひ動画をご覧ください。勝ち組負け組といった競争主義に疲れたら、そんな優勝劣敗主義の明治国家の政策に真っ向から立ち向かった聖学院の初校長石川角三の建学の精神が今も伝統と革新のダイナミズムが続いている聖学院の門をたたいてみることをおススメします。

★中学受験生が卒業する時期はちょうど2030年です。もはや競争主義的発想は黄昏時になっているはずですよ。

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2024年1月12日 (金)

2024年中学入試(46)工学院 今年も人気 第一志望増加か

★ラウンドスクエア加盟やケンブリッジイナターナショナルスクール認定校など破格のグローバル教育を行っている工学院。IBのDPのように一部の優秀生だけが学ぶのではなく、全生徒が学べるグローバル教育。高2では、グローバルプロジェクトという他の学校の修学旅行を強烈にしたプログラムがあります。もちろん全員がチームを組んで、それぞれの国や地域でPBLやアントレプレナーシッププログラムを行います。まだまだこの稀有なプログラムのことについて周知にはいたっていませんが、結果的に大学実績を出していることもあり、だいぶ知れ渡ってきました。

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(高2グローバルプロジェクト スリランカ編)

★それゆえ、今年も工学院の中学入試出願の勢いはよい。同校教務主任田中歩先生によると、2021年から2022年にシフトする段階で、出願初日の人数の対比は175.7%で急激に増えた。昨年と比べると多少減っているが、2021年に比べると182.2%で、勢いは持続しているようです。

★また、隔年現象ですが、第一志望者が増えた可能性がありますということです。

★定員充足に向けて十分な出願者数という量が確保され、何より選択する受験生・保護者が教育の質に注目している姿が思い浮かびます。OBの大学生が起業して、母校の教員研修を実施もするなど、横のつながり縦のつながりが共振しながら交差しています。

工学院の在校生も母校愛を誇らしく語ります。校長と教師と生徒がみなフラットでフローでフェアーです。そんな組織は、受験生にとって、とても魅力的です。

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2024年中学入試(45)首都圏中学入試 盛り上がり方が今までと違うワケ 本来的自己を大事にする傾向

★首都圏中学入試の出願が本格的になっているのですが、どうも例年と違う感じです。埼玉エリアの私立中学の出願件数は昨年を早くも超えているのに、東京、神奈川、千葉・茨城はゆっくり動いています。最終的には定員はなんとかなるのでしょうが、倍率は横ばいか微減かとなるという感じでしょうか。従来なら、どのエリアも同時並行的に盛り上がていたような。。。

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★これは、東京の私立学校の価値意識の変化が起きているのが大きいと思います。今東京の私立学校は、世の中の事象や現象を脳内の中でロジカルに構築されたものだと考えなくなってきているということですね。もちろん、構築主義は、人間の存在のあり方の1つですから、これを否定しようというのではないのです。

★しかし、要素還元主義ではだめなんだという言い方を先生方はするようになっています。簡単に言うと知識を暗記するだけではダメなんだと。それで、PBLのような自然と社会と精神の循環共生を生み出す学び、つまり関係総体主義的な自己を見つめる学びをを始めようと。簡単に言えば探究を追究しようと。

★ところが、ここにきて、人間って両方を行ったり来たりするということに現場の先生方は気づいてしまったわけです。マインドフルネスとかリフレクションとか内省とかを大事にする先生方が増えてきました。

★だから東大ランキングなんてダメなんだと声高には言いません。現状研究費がいっぱい支援されていて、叡智が集まっている大学なんだから、行きたければ応援するよと。しかし、構築主義だけなら、自然と社会と精神が分断されていてもケアの精神が機能しないから、東大に行っても関係総体主義的な発想をもっていてねと。

★それに東大でなくても、構築主義的なランキングにこだわらず、関係総体主義的な価値創造の道もあるのだと。

★人間はこの両方をいったりきたりしながら、自分のこだわりから解放される本来的自己に立ち還る時空を自ら創出するスキル=本来的自己追究スキルも身につけようねと。

★このような本来的自己と構築主義と関係総体主義をグルグル回る価値意識が芽生えているんです。

★大げさに言えば、現代思想の終焉がやってきたのです。それが昭和の終わり、20世紀の終結ということでしょう。

★ただ、今の学校の環境では、つまり国の教育行政では、この知のトリニティを生み出す学びのテクノロジーが確立していません。これに気づいて、なんとか創ろうとしているのが21世紀型教育の大きな意味ですが、完成させるには、現状の教育行政が変わり、都市と大学と初等中等教育の関係がかなり変わらなければなりません。

★この点については、順天の長塚校長と意気投合して対話ができ、やはり22世紀に向け色々な領域で動いているのだという予感がするわけです。

★この動きに対応しているのではないかという感覚的なものが、埼玉エリアの複数の学校にあり、東京からドッと埼玉入試に参入が偏ったのではないかと。

★もちろん、まだまだオンリー構築主義的な発想は20%シェアですから、東大にたくさん入れる学校に受験生は集まるという現象は続くでしょう。

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学校とステークホルダーの関係 良好であるか 重要

★最近、ある保護者に、本間さん〇〇学校の〇〇先生知っていますか?いや個々の先生まではさすがにわからないですよ。何かありましたかと尋ねると、いやご存じなければよいのですけど、ただ本間さんが書いているその学校のイメージと真逆だったのでと。具体的状況がわからないので、その話の真偽のほどはわかりません。ただ、次のような趣旨の話をしてみました。

★たしかに、学校全体が創り出すイメージと個々の先生のイメージのギャップが意外と複雑に影響しますね。学校全体が創り出す一丸となっている素敵な雰囲気がパワフルだと、個人の教師のネガティブなイメージは吸収されて目立たなくなります。

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(ハートフルな人間関係とチームワークをイメージにしてとBingに描いてもらいました)

★しかし、学校全体のイメージが雰囲気ではなく、スコア的なもので表現されている場合、教師の個人のネガティブなイメージは吸収されずに前面に出てきます。するとその学校の評判に少なからず影響がでてきます。

★学校も組織ですから、いろいろな教師がいます。そこは他の団体の組織と基本同じです。ですから研修や対話型の短い会議の機会を作ったりして、パーパスを共有し、チームビルディングをし、アンコンシャスバイアスの壁を相互に協力して粉砕していくのです。それがジュワーッと良い雰囲気をだします。それでも、みなが一定水準以上のクオリティ教師になるとは限らないので、組織はクオリティがまだ不足している教師を排除するのではなく、なんとかしようとします。

★その段階で、そのクオリティ途上の教師に出遭ったら、イメージは一瞬不快指数を高めますが、全体でカバーできる場合もありますね。

★もちろん、そのような不快な思いを生まないように徹底的に言動がケアフルになるよう人材開発はしたほうがよいのです。保護者や広告代理店や模擬会社のスタッフ、インフラ整備のスタッフの方々などのステークホルダーとの関係を良好に保つこと、つまりおもてなしは大事です。たとえば、YやK、S、Bなどの学校は多くの塾関係者やステークホルダーからの評判はいいと思います。

★その保護者の方は、本間さんならそうおっしゃると思いましたが。。。頭の中ではわかりますがと。その学校の名誉にかけて、全体の雰囲気は大丈夫だと思いますがと回答すると。第一志望なので、本間さんの愛を信じて、願書出しますが、合格させてくれるかどうかはまた別の問題なので、がんばるように励まします。子どものほうは気にしていないようでしたしと。

★ハラスメント、ポリコレに世の中が敏感になってきています。これは実は健全なことです。もちろん、暴走することもあります。それもまた問題なのですが、基本このくらいは大丈夫だろうと経営陣や管理職が思っていると事態はひどくなる可能性大です。

★そんなことを考えていたら、何も言えないし行えない、萎縮してしまうと言われるかもしれません。だから、萎縮しないように、組織マネジメントやチームワークに目配り気配りすることが大切です。その意味で有効な研修は重要です。

★こう言っている私自身も自戒をこめて、今書いています。そうならないように気を付けつつ、できるだけ本質的なことや本来的なことを問い続け表現しようと。岡本太郎ではないですが、壁は自分だ!ですね。

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2024年1月11日 (木)

2024年中学入試(44)首都圏中学入試本番モードに~湘南白百合と横浜雙葉が鮮明にするコト

★昨日から東京の私立中高一貫校の中学入試の出願が開始。これによって、首都圏は本格的に中学入試本番モードに切り替わりました。各団体で倍率速報が公開されているので、その移り変わりを見ていくことによって、今後の学校の進化の方向や受験生・保護者の価値志向性が推測できます。この時期だと、湘南白百合と横浜雙葉に注目すると色々なコトが鮮明になってきます。

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(写真は湘南白百合のサイトから)

★というのも、湘南白百合と横浜雙葉は、入試を2月1日と2日に行っているからです。横浜雙葉は今年からなので、このラインナップが神奈川の中学受験市場でどのような変化をもたらすか注目されています。

★現状で倍率速報を見ている限り、大きく互いにマイナスの影響を与えているということはなく、むしろ湘南白百合を選択する受験生・保護者と横浜雙葉を選択する受験生・保護者が別々に存在し、その数は十分にいるということです。

★4科目試験で、1日の場合、倍率が3倍あれば実質受験率を考慮してもいわゆる選抜入試が成立します。2日目であれば6倍あれば、3日目だと9倍あればとなりますか(ここら辺の方程式は受験業界人が詳しくて、私のは単なる勘です)。そういう観点からすれば、両校を志向する受験生・保護者の価値意識は異なるということでしょう。

★ここにフェリスと横浜共立も加わりますが、湘南白百合のここ数年の活躍によって、かつて、神奈川の女子校と言えば、フェリス、横浜雙葉、横浜共立というポジショニングだったのですが、今はここに湘南白百合が別角度からドーンと割り込んできたのです。

★この別角度が横浜雙葉の2回入試実施によってはっきりしてくるでしょう。

★なぜこの4校かというと、偏差値や大学進学実績の外生的な比較も受験業界では行っていますが、教育という観点からは、また別の見方ができます。それは、4つの学校の入試問題が極めて特徴的だということに現れてきます。入試問題はアドミッションポリシーの可視化ですから、その学校の教育の特徴、特に生徒の才能の開花の方法や組織的取り組みの違いが見えてくるのです。

★この辺は、横浜雙葉が2回目にどのような入試を行うかをみてから述べましょう。

★ここでは、次の1点を書くにとどめておきます。湘南白百合が別角度から3校のポジショニングを脅かしたというのは、何を意味するのかというコトです。

★それは、3校は、神奈川の優秀生のニーズに照準を合わせて教育を行っているが、湘南白百合は世界の優秀生のニーズに照準を合わせて教育を行っているし、今もその内生的技術進歩が止まらないのです。カトリックはもともと普遍的な世界視野をもてちるので、学校当局は、カトリック精神を大切にして行っているだけだというでしょう。かっこよすぎますね!

★しかし、ここまで考えて教育を実行しているカトリック学校の女子校は他に幾つかしかありません。パッと思いつくのは、雙葉、カリタスでしょうか。他にもあるでしょうから、今後そういう視点で探したいと思います。

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2024年1月10日 (水)

2024年中学入試(43)この時期の中学入試関連記事アクセスランキング50

★2023年12月1日から2024年1月10日午前までの間の本ブログ記事のアクセスランキング50位までを公開します。中学入試関連記事に絞って並べます。やはり、1位の順天と発行法人北里研究所の法人合併の話題は、衝撃的でした。6位の「2022年教育動向(12)聖学院の人気の理由の質が変わった」の記事は、2022年の記事にもかかわらずアクセスされています。1月13日に入試対策説明会があるので、ネットサーチされている可能性が大です。いずれにしても人気というコトでしょう。

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(聖学院のタイ研修・同校サイトから:YAYO COFFEEは、生産者が育てたコーヒーを精製し、選別し、自家焙煎をして消費者に届けています。山々を見晴らす最高のロケーションと広々としたカフェは、コーヒーの付加価値をいっそう高めています。私たちはここでコーヒーの実が多くの過程を経て1杯のコーヒーになるまでを見ることができました。大切な豆をおいしくドリップするコツを学び、生徒たちの関心は農業に少し近くなりました。)

1:【速報】学校法人順天学園 学校法人北里研究所と法人合併に向けて協議を開始...
2:変わる私立中高(04)芸術系大学に多数進学する中高一貫校 女子美1位、吉...
3:2024年中学入試(20)栄東受験者総数 はやくも10,000人超える:...
4:2024年中学入試(05)小泉信三賞が認める富士見丘の高校生活
5:2024年中学入試(39)開智所沢が明らかにする私立中高一貫校の4つのタ...
6:2022年教育動向(12)聖学院の人気の理由の質が変わった
7:2024年中学入試(32)困難の中の中学入試大予測 2024~2025年...
8:2024年中学入試(25)三田国際学園 さらなる進化/深化①: ホンマノ...
9:2024年中学入試(03)昭和女子大学附属中学校・高等学校 どこよりも進...
10:2024年中学入試(04)サレジアン国際学園世田谷 画期的な「国際学園」...
11:2024年中学入試(27)三田国際学園 さらなる進化/深化? 新たな教育...
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13:2024年中学入試(26)三田国際学園 さらなる進化/深化② ちょっと深...
14:2024年中学入試(02)富士見丘 中学説明会 参加者大幅増!
15:2024年中学入試(17)順天堂大学と高大連携を結ぶ学校
16:2024年中学入試(08)サレジアン国際学園 ドン・ボスコの精神と21世...
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20:2023年首都圏中学入試動向(24)かえつ有明 人気高め安定の意味 成熟...
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26:2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(15)成城学園 ...
27:2024年中学入試(12)shuTOMO12月号「親子で見直す中学受験の...
28:2024年首都圏中学受験動向 北一成さんインタビューで
29:2024年中学入試(22)文化大学杉並 生成AI活用授業のインパクト: ...
30:2024年中学入試(24)大妻中野 今年も帰国生から注目される
31:2024年中学入試(36)海城学園 昨日帰国生入試 教師も生徒も魅力的 ...
32:2024年中学入試(01)國學院久我山中 理科の入試問題 骨太に進化: ...
33:2024年中学入試(16)成立学園 人気の密度が高くなっている
34:2024年中学入試(30)大妻の生徒 模擬国連を企画運営する
35:2024年中学入試(28)桜美林の深いグローバル教育 多様なアンコンシャ...
36:2024年中学入試(10)共立女子 海外帰国生入試 今年も人気
37:2024年中学入試(37)淑徳与野医進コース特別入試 倍率20.9
38:【速報】富士見丘 第1位 6年間で伸びる進学校ランキング
39:2023年度東京の高校入試(04)国学院久我山 生徒が新しいイメージを生...
40:思考コードがつくる社会(17)神奈川女子の良心 フェリスと横浜雙葉: ホ...
41:成城学園の社会科の入試問題から見える 成城学園の複眼思考力を育成する教育...
42:2024年中学入試(21)和洋九段女子のブランドアクティビズム
43:富士見丘 中高一貫校レバレッジ度総合ランキング「富士見丘がトップ」
44:2024年中学入試(14)フェリスの国語と教養科 shuTOMO12月号...
45:なぜ八雲学園か!英語でミュージカルまでやってのける。
46:2024年中学入試(34)成城学園 アート・プロデューサーが生まれる学校...
47:建学の精神の重要性(02)たとえば大妻学院の校訓「恥を知れ」②
48:2024年中学入試(18)八雲学園 6年間でグローバルリーダーに育つ破格...
49:洗足学園 今年も人気 その理由の向こうに見える時代のウネリ。
50:2024年中学入試(15)駒沢女子 内なる世界を形にする

 

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2024年中学入試(42)埼玉エリアの中学入試 城西川越

★本日10日、埼玉エリアの中学入試がスタートしました。埼玉の私立学校は、圧倒的に共学校が多いのですが、その中で男子校城西川越は目立たたないかもしれませんが、奮闘しています。新しい教育を目指すというわけではなく、大学進学の成果を着々とアップデートしている学校です。少人数の学校なので、数字だけ見ていると目立ちませんが、進学実績は右肩上がりです。

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(首都圏模試センター 1月9日現在)

★100人くらいの定員で、そのうちの4分の1が特別選抜コースの定員です。絞り込んでいますから、手厚い進路指導で、志望大学に入れる期待が、実績と対照すると高まります。

★進学に力を入れているけれど、新しい学びをやらないかというと、そんなことはまったくないわけです。グローバル教育もICT教育も充実しています。

★21世紀型教育とは、一見ベクトルは違います。たしかにこの新しい(今では当たり前?)教育は、破格のグローバル教育とPBL、STEAM教育が三種の神器で、これを通して、大学進学実績は結果的に成果を上げているのです。

★一方城西川越は、進学実績を向上するための学びの中に、グローバル教育やICT教育を埋め込むという形式です。結果的に新しい教育ができているということなのです。

★ですから、結局20世紀型教育を乗り越えるという意味では共通しているのです。

★最終的には非常にコスパのよい22世紀型教育を見据えた超新しい学校になるのではないかと、今後を注目していきたいと思います。

★おそらく、この流れを同校が取らざるを得なかった理由もあります。城西大の系属校でありつつ、他大学の進学のニーズに応えていったという経緯があるのでしょう。とてつもない知られざる改革だったと推察します。

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2024年1月 9日 (火)

2024年中学入試(41)埼玉エリアの中学入試出願状況

★1月10日から埼玉エリアの中学入試が始まりますが、日能研の倍率速報をみると、1月8日現在で、埼玉エリアの私立中学入試の応募者総数は、53,311名、昨年の総数が48,696名となっています。つまり、まだ出願が始まった段階で、前年対比109.5%です。

★中学受験業界では、2024年度中学入試の受験生数は微減となっていますが、これはどういうことでしょうか。実は、個々に見ると、なんといっても開智所沢新設による開智グループの盛り上がりです。栄東、春日部共栄もけん引しています。

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(首都圏模試センターのサイトから)

★さらに青山学院大学の系属の浦和ルーテルも、青山学院大学の人気もあって、今年も大人気です。

★ですから、埼玉エリア全体が増えているというわけではなさそうです。

★受験生のパイが小さくなった時、どのような学校が生徒に選ばられるのか、2024年中学入試はそこが明快になる可能性がでてきました。

 

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2024年中学入試(40)和洋九段女子 内省的成長かつ内生的技術進歩が顕著 この時期受験生が気づく大事なこと

★和洋九段女子のサイトを開くと、❝Stories❞というバナーが貼ってあるのに気づくでしょう。そこをクリックすると現時点で66回もの生徒インタビュー記事が載っています。いずれも、生徒自身の内省的成長が映し出されていて、こんなに生徒は自己変容していくのだということが了解できます。

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(写真は同校サイト)

★66回目は、政府肝入りの高校生対象の「政策甲子園」で優秀賞を受賞したチーム「天才集団」のメンバー3人のインタビューです。幼いころから今に至るまで、自分がどのように成長してきたか変わってきたのか自分の物語を語っていくのですが、和洋九段女子に入ってからの内省的成長は、経済政治社会の本質部分に自分たちがどのようにかかあわり、解決に貢献するか無形資産を豊かにする技術を身につけていく過程について語っています。

★精神的な成長が、社会を持続可能にしていく内生的成長技術進歩につながっていくコネクテッドスクールならではの人的資本育成のプログラムとチャンスがたくさんあることがわかります。

★偏差値を上げる勉強は、経済政治社会では外生的技術進歩です。生産量を上げるための創意工夫で、もちろんそれも必要なのですが、SDGsを大切にするこれからの経済政治社会は、量から質に転換する内生的技術進歩が求められる時代です。

★魂がなくても外生的技術は進歩しますが、内省によって深まり豊かになる魂があってこそ内生的技術の進歩は顕著になるのです。

★和洋九段女子の生徒は、この未来を切り拓く内生的技術を身につけて大学に進学し、大学でその内生的技術を社会貢献に役立てるスキルやエンジニアリングとして磨き上げていくでしょう。

★天才集団のメンバー3人は、帰国生だったり、中学受験塾で学んできたり、公文で学んできたりと、いろいろです。

★中学入試の種類は受験生それぞれに応じた入試が開発されています。この入試直前という非日常的瞬間だからこそ、大事なことに気づくチャンスがあります。自分がやりたいこと、学びたいことは何か。それが内省の核としての問いです。そして問い続けることが内生的技術を進歩させていきます。

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2024年1月 8日 (月)

2024年中学入試(39)開智所沢が明らかにする私立中高一貫校の4つのタイプ

★1月10日、新設校開智所沢の中学入試が始まります。出願数は2,234名で、倍率は22.3倍です(1月5日現在首都圏模試センター調べ)。開智グループということもあるし、IB認定校申請もしているなど期待値が相当高いですね。同校の教育などについては、リセマム2023.12.12 Tue 16:45の記事「【中学受験2024】学校づくりは究極の「探究」…注目の開智所沢、2024年4月開校」が詳しいので、そちらをご参考ください。

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(写真は同校サイトから)

★開智グループは、開校当初から「探究」の技術的進歩をはかってきたし、開智日本橋などIB認定校も着々と増やしています。そのグループは、同記事によれば、『開智学園グループは、埼玉岩槻キャンパスにおける「開智小学校(総合部)」「開智中学・高等学校(一貫部)」「開智高等学校(高等部)」「開智高等学校 通信制課程」を中心とし、埼玉加須キャンパスには「開智未来中学・高等学校」、茨城守谷キャンパスに「開智望小学校・中等教育学校」、東京日本橋キャンパスに「開智日本橋学園中学・高等学校」、千葉柏キャンパスに「開智国際大学」、東京八王子キャンパスに「開智国際日本語学校」を展開している。』という大規模な学園です。

★日本語学校は、おそらく中国をはじめとするアジアからの留学生の日本語の学びを想定しているのでしょう。実際、開智国際大学は、アジアから留学生が多いですね。

★探究や英語に力を入れているところは、どこの私立学校も同様ですが、開智はIBのTOKを熟知していますから、必ずしもDPコースに進まない多くの生徒のために、「哲学」の講座も用意しているところが、知られざる傑出しているところです。

★「開智学園グループ」と「〇〇国際学園チーム」、「広尾学園グループ」という広がりが、首都圏全体の新しい学校の1つの姿を創っていることは事実でしょう。最初は、これらの学校は、澁谷教育学園グループをモデルにしていたでしょうが、今では独自のポジションを形成しています。国際教育という点では類似していますが、それぞれ独自のグローバルでイノベーティブなプログラムをデザインしているという点ではそれぞれ傑出しているからです。

★とはいえ、これらの学校は「国際教育」をベースにしているという点では同じかゴリーでしょう。

★したがって、中学入試市場は、御三家をモデルにする私立中高一貫校と、渋谷教育学園や洗足、頌栄などのように国際教育を充実していく私立中高一貫校と、21世紀型教育機構の学校のように、全く新しい(表現は陳腐だけれど実現は歴史的意義のある)22世紀型教育を追究する学校と、その他の独自の先進的教育を追究し続ける学校の4つくらいに分かれるでしょう。

★開智所沢は、開智グループ全体の存在を高めていくために、これらの4つの種類が明快になっていくと思います。いずれにしても、かつてあったいわゆるトラディショナルスクールは、首都圏私立中高一貫校では探すのは難しくなりそうです。4つのタイプ(個々にはみな違います)が相乗効果を生み出し、日本の教育の新たな展開を生み出していくでしょう。

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2024年中学入試(37)淑徳与野医進コース特別入試 倍率20.9

★今月10日から埼玉の一般受験生の中学入試が始まります。やはり栄東は大量に受験するということは以前紹介しました。それ以外にも幾つか新しい動きがあります。11日に行われる淑徳与野新設の医進コースの特別入試が行われるのも注目度が高いものです。1月8日9:00現在の同校の発表によると、25名定員のところ522名出願しています。倍率20.9です。もちろん1月受験ですから全部が第一志望というわけではないでしょうが、それにしても女子の医進への志望は多いということですね。

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(写真は同校サイトから)

★同入試は、算数と理科の二科目入試です。理系に興味と関心のある生徒をということでしょうが、なぜこのような一見極端に見える入試ができるかというと、入学してから、個別最適な学びと協働的な学びの一体化がなされ、自己分析、自己開示、世界的視野などの学びをどの教科にも埋め込んでバランスの良い学力が身につけられるシステムになっているからです。

★その土台のうえに、自分の興味と関心を追究していける「創作・研究」「芸術研究発表会」があります。そしてそれに「医進コース」が加わったのです。このコースが加わることによって、実は淑徳与野流儀のリベラルアーツが確立するわけです。AI時代にリベラルアーツのルネサンスがやってくるはずです。

★とはいえ、リベラルアーツをやりますよといっても、ピンとこないので、表現は受験生のニーズにマッチするようなシステムにすると。しかし、そのシステムが現実態になるには、その背景に層の厚い学びの背景が必要です。それは、しかし、実際に体験してみてはじめてわかることなので、そこは広報上それとなくしか主張してこなかったのでしょう。

★カンボジアにまで中学校をつくる本格的なグローバル教育をやっているのも、そういう広く深い学びの背景があるからです。その根源には、言うまでもなく淑徳与野の世界精神があるのですが。

★中学入試は、本質的な教育を行うための重要な市場ですが、市場の段階ではそこは深くは触れない受験市場が機能しています。中学入試市場と中学受験市場は一見パラドクスですが、ポピュリズムの世界の中で、私立学校がサバイブするには、このパラドクスをアクロバティックに乗り越える戦略が必要です。このようなプランニングを行うしたたかな戦略家が淑徳与野にはいるということでしょう。

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2024年中学入試(36)海城学園 昨日帰国生入試 教師も生徒も魅力的 それをさらに映し出す教育環境デザイン しかも授業がベース

★海城学園の帰国生入試が昨日行われました。同校の入試はA方式とB方式の二種類。国算・面接は共通で、B方式には英語のエッセイライティングの試験があります。昨日の出願数は、A方式が103名、B方式が50名(首都圏模試センター調べによる)で、倍率は5.1倍。相変わらず厳しい入試です。一般生だけなはく、帰国生にも人気があるということを示唆。その理由は、実にシンプルです。同校の教師も生徒も知的(知性感性身体性包括しています)魅力が学内に充満しているからです。

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(3年前の新しく建てられたサイエンスセンター・写真は同校サイトから)

★いわゆる御三家級の男子校で、帰国生入試を行っているところは同校以外には聖光学院くらいです。グローバル教育には学内ダイバーシティーが重要です。グローバルにオープンな道を明快に切り拓いています。もちろん、開成なども一般入試で帰国生が入っています。海城同様に海外大学進学準備教育に影響を与えているでしょうが、海城の場合は、チームグローバル教育なのです。

★生徒1人ひとりの個の才能を伸ばすだけではなく、チームとしてシナジー効果が生まれるように、各教科の授業のプログラムが創育工夫されています。

★チーム開成とかチーム麻布という文化はどこもあるでしょう。しかし、海城はチーム海城であり、さらにその中に各教科活動のチームがあるわけです。生徒のチームがあるわけです。この重層構造が教師の魅力を増幅し、同様に生徒の魅力を増幅します。

★新校舎サイエンスセンターも同様です。地学、物理、化学、生物の専用の実験室があるというのが、一般的な理科棟ですが、このサイエンスセンターは、個別の実験室以外に統合型の仕掛けがあります。しかも科学的な好奇心を旺盛に湧き出る仕掛けが、建築の中にアフォーダンス的にきめ細かく設計されています。施設そのものが教材だというコンセプトだそうです。さすがです。

★海城を志望する帰国生は、国際関係に進もうとはじめから思って受験しているわけではありません。グローバルな環境デザインもあり、理系の環境デザインもアメリカやシンガポールのエスタブリッシュスクールに負けないものがあると実感しているからです。そのシンボルがサイエンスセンターとして可視化されてもいます。

★そして、何より知的に楽しいのです。ドラマエデュケーションやプロジェクトアドベンチャーなど、世界標準のプログラムが学内で内製(もちろん外部団体とコラボして)もあるし、各教科のフィールドワークや実験、リサーチは、生徒自身の興味と関心を追究できる環境だし、その過程で好奇心が増幅していきます。

★同校のサイトを開くと、生徒を知る、教師を知る、先輩を知るという構成パーツがメインになっています。もうずいぶん前からこのコンセプトが実現されています。

★今ようやくビジネス界では、AI時代を迎えて、ヒューマンスキルが重要だとか今こそ人的資本経営だとか盛り上がっています。それは政財官学すべてにおいてそういう流れです。タレントマネジメントプラットフォームも盛んですね。

★しかし、海城は、自らの人的資本育成(もちろん有形資産というより無形資産の方が主たるねらいでしょう)の過程と成果を、生徒を知る、教師を知る、先輩を知るという表現で発信しているのです。

★このシンプルな表現の背景に目に見えない重層構造の知のネットワークが広く深く根を張っています。この不易流行のシステムは、唯一無二ですね。

★そうそう、海城の数学科の頭抜けた知はすばらしいということを添えておきます。文理を融合する流れがありますが、それは数学的思考(=哲学)がベースであり、理系が横断型のプロジェクトをどんどん開発できるのは、そういう理由もあると思っています。数学的思考は、いわゆる教科としての数学ではないのですが、それはいずれまた。

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2024年1月 7日 (日)

2024年中学入試(35)女子美の人気の理由 新しいデザインの社会実装への道が開かれている

★昨日世田谷美術館で開催されている「倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙 2023.11.18 - 01.28」を訪れました。土曜日であり、まだ年始休みのところも多かったということもあったのでしょう、多くの鑑賞者が集っていました。ただ、若い人が多く、作品を見ながら議論しているその姿に、いわゆる美術作品の展覧会とは雰囲気が違っていました。

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★作品の説明に倉俣さんの言葉もたくさん展示されていて、まるでコンセプチュアルアートの展示のようだなあと作品と文章を対照させながら観て回ったのですが、作品だけではなく、文章の展示の前も黒山の人だかりでした。こんなに真剣に多く鑑賞者が集まってきていて、みな考えたり、想いを馳せたり。

★なんとも不思議な感覚で、読みながら観ながら進んでいくにつれて、倉俣さんが、デザインという表現方法でアートの力を映し出すという哲学があるんんだと気づきました。

★実際、倉俣さん自身、アートや映画、哲学、音楽、建築など多くの分野を学び、その影響を受けていて、アートとデザインのどちらかではなく、デザインよりの表現をしていると語っています。

★バウハウスでも1年間学んだけれど、メンフィスのグループに参加したのが大きな影響だと。なるほど。バウハウスは機能的なアートやデザインだけれど、メンフィスは機能性を樹脂していないデザインと言われています。倉俣さん自身、商品を創っているのではなく、自分の好きなものを創ってそれが結果的に商品になるという感じなのだと。

★アートとデザインの違いをはっきりさせることが、昨今の大学入試の小論文では求められてきたけれど、そこはボーダレスだし、欲望の資本主義では区別されていたけれど、倫理資本主義では倉俣さんの言葉を使うと浮遊感という感じなのだろう。どこか曖昧というか、グラデーションというか。。。

★どうやら、デザインとアートの関係は、枠組みを砕いていくという根本的なところでは共通していて、その柔軟さこそ変わらないのだということなのだろう。倉俣さん自身、様式を変えるとか変えないとかではなくて、無意識層から自由の壁になっているものを見出してそれを打ち砕いていくということではデザインもアートも不変的。その表現方法や市場の文脈が違うということなのだろう。

★そんなことを考えながら観ていると、ふと女子美大付属中高が人気があるのはそういうわけなのだと。たしかに、ICT環境は充実しているし、ハイレベルな英語力を身につける環境もあります。人気の要因でしょうが、なんといっても、このような新しい流れのデザインの社会実装の道が開かれているということなのだと。

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★女子美付属中高から女子美大学にほとんどが進学するのですが、その学科を見ると、アート系の学科が27%で、デザイン系が73%です。女子美付属中高を受験する場合、そこまで考えているということでしょう。もちろん漠然としてでしょうが、小6の受験生は、すでになんらかのアート活動をしています。最近のアート関連の習い事教室も、アート思考やデザイン思考を導入しています。芸大、多摩美、女子美など美大出身者が専門的に子供のためのアート教室を開いていて、かなり専門的なプログラムもデザインされているようになっています。

★女子美付属中の入試は、一般入試と変わらないので、そこだけ見ていると、一般にはこの辺の事情はよくわからないかもしれません。前回、成城大学の経営学の境新一教授のアート・プロデュース論を紹介しましたが、どうやらアートやデザインは、AI時代にあって、極めて重要なコンセプチュアルなテクノロジースキルとして注目を集めそうです。

★女子美中高の人気は、その未来を見通した受験生・保護者が選んでいる可能性があります。もちろん、今のところ倉俣さんではないですが、無意識なのかもしれませんが。

 

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2024年1月 6日 (土)

2024年中学入試(34)成城学園 アート・プロデューサーが生まれる学校 ガブリエルと境教授から着想を得て

★新年になって、マルクス・ガブリエルの「アートの力: 美的実在論」を読んでいました。なんとか本文までは読みました。昨年6月に邦訳発刊されていますが、邦訳の原典は、2018年にフランス語版で出版されているものです。ガブリエルは、多言語を自由に操るといわれています。最初からドイツ語ではなく、フランス語で出版したのかもしれません。アートはやはり、パリからという発想だったのかもしれません。もちろん、私の妄想です。ガブリエルは、カント的な構築主義とはことなるアートという力の存在を想定していたので、あえてフランス語でかなと思っただけです。

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★昨年の夏、成城学園の青柳圭子先生に、キャンパスの空間や森の空間、山々の空間で生徒がどう感じるかについて対話をしました。島皮質のAWE体験で盛り上がったのですが、このAWE体験プログラムを青柳先生はアート・プロデューサーとしてデザインしていたということに、ガブリエルの同書を読んで気づいたのです。

★青柳先生は、OB・OGと協力して、生徒自身が自分の興味と関心を可視化し、追究していく探究プロジェクトを多数行っていますが、その興味と関心こそアートの力という存在の現われだったのです。アートというのは、論理的に構築されもしますが、そもそも構築を促す興味と関心は、最初から構築されているのではないはずです。

★ガブリエルは、そのことをおそらく語っているのだと思います。興味と関心という情動は、アートの力として、幼少期から今ここに到るまでの自然とのふれあい、人間とのふれあい、多様な問題との直面などなどすべてが関係して創られてきたものです。そして、それは人生をかけて豊かにされていくものです。

★成城学園は幼児期から大学院までの総合学園です。ですから、その人間が主観を廃しながら論理的に構築する産物ではなく、主観も客観も超えて、アートの力が生徒1人ひとりの人生全体の関係性から生まれてくる居郁デザインがなされているのだと思います。それが大正期から連綿と続いている大正自由教育の理念の具現化だったのかもいしれません。しかし、一般には、その力を主観的だとか恣意的だとかいう言葉で壁を創り、こじんまりとした平凡ないわゆるわかりやすいという平均的な認識が構築されてそれが生活を支える政治経済活動のルーチンが構築されてきました。

★ところが、パンデミックによって、そのような平均的な生産社会にこだわっていたのでは、乗り越えられない新しい問題がたくさん現れてきました。自然と社会と精神の関係総体をアート・プロデュースしなくては、地方と都市の格差は広がるばかりだし、都市の中でも格差は広がるばかりです。気候変動は激しくなるばかりです。なぜなら、パンデミックによって、平均的なものはすべて機能停止し、平均を超える認識と行動をしているものに富が集中しているからです。放置しておくと、自然と社会と精神の結合はどんどん分断されていきます。

★したがって、このような富の集中による格差は、全体の関係性の軽視につながり、その広く全体を結びつける力が、つまりアートの力が弱くなったとき、地政学リスクは破壊的なクライシスを生み、気候変動はますます八岐大蛇のように手に負えなくなってくるわけです。パンデミック以降、それがますます増幅しているのは、偶然ではないでしょう。

★そんなことを考えて生成AIと会話しながら検索していたら、成城大学の境 新一教授の論文「アート・プロデュース論の枠組みとその展開― デザイン思考と戦略情報の抽出に関する考察 ― 2016年」に出遭いました。少し引用します。

「アート・プロデュースの概念構成には,アートとビジネス,プロデュースとマネジメントの要素だけでなく,技術/テクノロジーが必要であり,その基礎となるのが様々な情報である。さらには,芸術,歴史,文化,思想,社会,経済という人文・社会科学分野に加えて,自然科学分野である工学の知識をも包括する,感性と知性をあわせ持つ,総合的な創造性を探求する必要がある。また,従来の分析主体の細分化,専門化した縦割り思考とは異なり,幅広い知識と個別技術を組み合わせながら,人間中心にシステムを構築する,総合・統合の思考が必要であり,そうした能力をもつ人材を育成することも求められよう。そのため,美的・機能的な側面を基本に,横断的な知識の融合と豊富な実習体験を通して,概念創造から個別の作品,商品の創造・管理まで,新しい価値を備えたシステムを創造する必要がある。 」

★もしこれを経済やビジネスという枠を外して(括弧にいれて)読んでみると、ガブリエルとも親和性があるなあと感じたのです。もちろん、哲学と経済学とのアプローチは違うでしょうが、「分析主体の細分化、専門化した縦割りの思考」という要素還元主義的な発想ではなく、「幅広い知識と個別技術的を組み合わせながら、人間中心にシステムを構築する、総合・統合の思考という関係総体主義的な発想という点で親和性があると思うのです。

★そのような関係総体主義的な発想をもつ人材を育成するために、「美的・機能的な側面を基本に,横断的な知識の融合と豊富な実習体験を通して,概念創造から個別の作品,商品の創造・管理まで,新しい価値を備えたシステムを創造する必要がある」。つまり、アート・プロデュースなのだと。

★青柳先生が共に探究プロジェクトをデザインしているOB髙木生太さん(外資系のコンサルタント)とサイバー上ですが、対話をしたことがあります。また、一般社団法人ビーラインドプロジェクト起業メンバーの一人仲野想太郎さんと和洋九段女子のミニプロジェクトを開催したことがあります。仲野さんは、成城大学3年生です。

★そして、髙木さんも仲野さんも境新一ゼミの先輩後輩の関係なのです。昨年仲野さんは和洋九段女子の地方創生のプロジェクトにも同行しています。なぜなら、このプロジェクトと境教授は連携していたため、ゼミ長としてサポートに入っていたのです。

★私は知らないうちに、成城学園のアート・プロデュースに魅了されていたということに気づき驚愕し感動しているのです。成城学園グループは、まさにアート・プロデュースできる人材が育つ教育環境をデザインしているのですね。

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2024年1月 4日 (木)

2024年中学入試(33)湘南白百合の中高大連携 中1の生徒が東京理科大で学ぶ

★2024年、湘南白百合の活動ははやくも始まっています。本日の同校のサイトに衝撃的な記事が掲載されているのです。<【生徒より】東京理科大学「中高生のための理科大探検プログラム」に参加して>という記事がそれです。同校の高大連携のプログラムが多様で多元的なことはあまりにも有名です。これほど世の中が高大連携が爆増しているきっかけを作ったのではないか思えるほど、多くの大学と連携を結び、すぐに在校生の探究活動やキャリアデザインを結合して、新しい高大連携のモデルを次々と作っています。

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(写真は、同校サイトからです)

★何が衝撃的か?それは中1が理科大で学んでいるわけです。中学受験生の皆さん!すごいことではないですか。同校の中学受験を乗り越えて、入学すると、海外という国を越境するプログラムに早速触れたり、高校を越境する大学で学べたりするダイナミックな学びが待っているのですから。

★そして、各大学にいくと、湘南白百合のOGが在籍していて、皆さんを学びの場に誘(いざな)ってくれるのです。

★さらに、感動したのは、参加した中1生が、先述したサイトで感想を述べているのです。同校のサイトには、生徒自身による編集のページもあり、学園生活そのものが、教師と生徒の協働共創活動なのです。しかも、それができるのは、自分の考えを発信しても受け入れてくれる共感的な学びの場があるからでしょう。

先述したページから中1の生徒の感想文を読んですぐにわかることは、1年間で論文の書き方を分析哲学のモデルにのっとって身につけているということです。主張を根拠と論拠で支えるかなり強度の高い感想文です。400字弱にもかかわらずです。感銘を受けました。

★実際ChatGPTで、確かめてみました。感想文であるから反証や限定詞は必要はなく、主張と根拠と論拠の強度が高い優れた感想文だという分析回答が瞬時に出てきました。私が見ても、「明快・簡明・感銘」の3拍子が揃っています。

★中1で、400字で密度の高い思考を表現できるようになる格好の例です。考えるコト、学ぶコト、議論するコト、行動するコトなどに好奇心旺盛な湘南白百合の生徒の姿が映し出されています。

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2024年1月 3日 (水)

2024年中学入試(32)困難の中の中学入試大予測 2024~2025年入試(首都圏版) 首都圏模試センターが緊急出版!

★2024年は、石川県能登半島を震源とする大きな地震発生から始まりました。この地震による甚大な被害が、石川県、富山県、新潟を含む日本海側の広範囲の地域で起こりました。被害にあわれた方々には心からお見舞い申し上げます。2日には、羽田空港での事故もありました。海保機は、新潟に救援のための物資を運ぶ予定だったということです。被害が広まらないこと、被害にあわれた方々のできるだけ早期の救援を祈ります。そして、多くの方が救援のために動いているのに頭が下がります。私自身は、今は支援金をおくることしかできませんが、自分でできることを考えていく所存です。

★そのような困難な中にあって、石川県の代表、星稜は応援団が会場に来られなかったのですが、星稜の応援席に、日大藤沢のサッカー部、岡山学芸館のサッカー部、有志の方々がかけつけました。横断幕には「がんばれ!日本の絆 今こそ強く」が掲げられていたということです。富山県の片山学園は、1月8日から中学入試を開始すると学校のサイトで公表。

★救援の絆を広げつつ、みんなで前に進む新年となりました。余震の続く中、不安でいっぱいだと思いますが、「がんばれ!日本の絆 今こそ強く」と言葉を胸に私も何ができるか考えながら、新年を1日1日進んでいきます。

★中学入試は、首都圏でも今月から本格的に始まります。私立学校も受験塾も、あらゆる局面で足元が悪い日本で、それぞれがどんなミッションをもって進むべきか考えながら、互いに勇気を分かち合いながら進めていく2024中学入試になりました。

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★首都圏模試センターは、元旦に電子書籍版「中学入試大予測 2024~2025年入試(首都圏版)」緊急出版しています。多元的な予測不能な事態において、情報不足だと不安になります。偏差値など一つの指標にこだわっていたり、現状だけ見て悩んでいたりしたら、多面的な情報は遮断されてしまいます。そこから抜け出るためにも、この電子書籍に目を通すことは役に立つと思います。

★目次は次のようになっています。

中学入試大予測 どうなる?2024~2025年入試【巻頭特集1】 
【第1章/受験者数はどうなる?】
【第2章/変化の節目に私学の教育はさらに進化する!】

緊急アンケート 中学入試大予測 2024~2025年入試【巻頭特集2】
1. 2024首都圏中学入試で人気がアップ(志願者が増加)しそうな学校は?
2. 翌2025年入試に向けて人気がでそうな学校は?
3. 目立たないけど魅力的な学校は?
4. 本物のグローバル教育校は?
5. 2024年入試の出題傾向や時事問題の注目テーマは?

どうなる!? 2024年中学入試の時事問題
【国語】【算数】【理科】【社会】

増える「高大連携」
#目立つ女子校、医療・理工系
#夢と学びのマッチング
#「探究」への関わり

爆速する高大連携から突出する動きに出た順天学園
~北里研究所と法人合併へ

進化する グローバル教育の現在

世界の学校が取り組む「SDGS」と「ウェルビーイング」

過去からこれだけ変化した 「中学入試の予想偏差値」
―注目の偏差値上昇校をピックアップ!―

★発行人は、首都圏模試センター代表取締役山下一さん、監修と巻頭特集1は同センター取締役・教育研究所長北一成さん、編集と執筆の中心は、同センタースタッフ11名、そしてコラボレーションしているのは、中学入試業界で活躍しているジャーナリストあるいはリサーチャー13名です。

★多くの専門家のそれぞれの視点から2024年から2025にかけての中学受験・中学入試の動向を俯瞰できます。この時期だからこそ、見えるコトもあります。そして緊張と不安と勇気を共有するとても重要な2024年に、小学校6年生が自分の人生を自分で考える局面を迎える瞬間でもあります。

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