二田貴広先生のイノベーティブな「古典探究」
★日本教育新聞2023年12月18・25日号を眺めていたら、「学び深める授業<7> 古典探究 生徒の意見を深めあう授業デザイン」という記事が飛び込んできました。オッと思いどなたが執筆?と思ったら、二田貴広先生(奈良女子大学附属中等教育学校主幹)でした。教育界では、有名な先生で、とにかくチャレンジャーで本質を極める真摯な姿勢にいつも感服しているのですが、実はお会いしたことはありませんから、こうして二田先生の文章に出合える機会があるのはハッピーです。二田先生の言葉は息吹で生き様そのものですから。
★それにしても、すごいのは、「置き換え」というトランスフォーメーション能力です。学習指導要領の解説で、古典探究の目標に次のように触れている箇所があります。
「古典に表れている,人間,社会,自然などに対する,ものの見方,感じ方,考え方には,現代と共通するものや,現代とは異なる古文特有,あるいは漢文特有のものもある。古典の学習を通して古典の豊かな世界に触れるとともに,古典についての解説や評論なども必要に応じて参考にしながら,それらの様々なものの見方,感じ方,考え方に,主体的に関わることを通して,思考力や想像力を伸ばし,豊かな感性や情緒をはぐくむことで,社会人としての資質の形成に資することをねらいとしている。このような力を育成して,生徒が自分の思いや考えを広げたり深めたりすることを目指している。」
★この箇所はだらだらしているし、何か慮ぱかってというか気遣って書かれているので読みにくいのですが、二田先生は、ズバッとこう置き換えます。
「古典探究」の目標について「古典に表れている、人間、社会、自然などに対するものの見方、感じ方、考え方」は現代と比較することで、社会人としての資質を形成するといった記載がある。古典を学ぶことを通して、「日本」や「現代」に対する多元的視点を持ち、批判的・分析的に捉え直し、思考を深めたり伝え合ったりする態度と力を伸ばすことが目的とされている。
★めちゃくちゃ腑に落ちます。そのために、二田先生は、講義と双方向的な対話、おそらく教師と生徒のみならず、生徒と生徒のピアインストラクションなどの授業デザインを行っていくのだと。
★それによって、古典探究の道の生徒それぞれの最近接発達領域が伸び縮みするので理解は深まると。とはいえ、古典探究は、超時空と共時空の往還で、身の回りの環境から想像力の翼を広げるのに限界はあるわけです。
★ピアインストラクションは、たしかに最近接発達領域を見出し、それぞれのギャップを埋めていきますが、知識を超えた様々な情報や条件、リアリティがやはり必要です。
★ピアインストラクションという学びのツールやロールには限界もあります。その限界を突破するには、超時空の疑似体験があると有効だと。それが360度動画の活用だと。
★もちろん、現代の目から見ているアンコンシャスバイアスはあります。しかし、その存在に気づくことこそ探究の扉を開放していくでしょう。古典探究の古典をカッコにいれると、「探究」が残ります。
★二田先生の授業デザインは、「探究」そのものであるのではないかと。この記事は(上)となっていますから、続編が楽しみです。
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