2024年中学入試(22)文化大学杉並 生成AI活用授業のインパクト
★最近幾つかの学校から、学校全体で生成AIを活用している授業に取り組んでいるケースはありますかという問い合わせが多くなってきました。大妻(千代田)で行われた生成AIのセミナーには、各学校や各企業が参加し、その方向性を探っているところが多くなったと実感しました。大妻の校長梶取先生自身も東京私学教育研究所の委員会の一つ「学校づくり委員会」の座長として生成AIの可能性を研究していますから、そのうち多くの学校で取り組むことになるだろうと予感はします。そんなことを感じていたところ、文化学園大学杉並(以降「文杉」)の松谷校長が、それはそうだと思う。うちの次世代教育開発部の部長はすでに行っているしねと声をけてくれました。
( GLICC Weekly EDU 第127回「文化学園大学杉並ーグローバル&STEAM、そしてその先へー」)
★その次世代教育開発部の部長とは、まだ30代の染谷昌亮先生のことです。すぐに電話でどんな授業デザインをしているのか尋ねました。たしかに、おもしろい試みでした。大腸菌の形質転換の高3の授業です。知識を教え込んでいくのではなく、サイエンスコミュニケーション型の授業を行っていて、その副操縦士として生成AIを生徒が活用できる環境にしているということでした。
(イメージはBing作成)
★染谷先生は、生徒の好奇心やモチベーションを大切にしています。いかにしたらモチベーションを内燃して科学的な洞察を進めていけるのか、いろいろ試行錯誤しています。新学習指導要領で、科学的用語の世界標準化による改定も行われ、サイエンスの教科はより専門的になっています。文杉の生徒は基本みなモチベーションはあります。
★しかし、難しい用語を教え込む授業だと、その火種は消えないものの勢いはなくなります。そこで、一人一台の端末を活用しながら検索エンジンで調べながら行うとそこはまた燃え上がりますが、いかんせん大腸菌の形質転換などは、調べてサイトを開いても結局は専門的です。講義をして知識を詰め込むのと実は変わらないのです。
★そこで、染谷先生は、生成AI[とプロンプトエンジニアリングのスキルを使いながら、生徒が対話をしながら全体像をつかんでいく時間を設けました。そのあと、それぞれの全体像を対話しながら、形質転換の科学的な理解を整理していくジグソー法を取り入れながら行っていったということです。
★これは、まさに新しい最近接発達領域(ヴィゴツキーの提唱した理論。子どもは自分の現在の発達水準と潜在的発達水準の間にあり、他者や文化とかかわることで成長の可能性を示す領域)を見出し、その領域を理解し、新たなステージに進む生成AIを活用したピア・インストラクションです。
★つまり、専門的知識と生徒の知識には開きがありすぎると、生徒のモチベーションは下がります。ですから、そのギャップがそれぞれ生徒によって違うので、互いに対話をすることで、そのギャップが埋まっていくというピア・インストラクションは、ハーバード大学の物理学者マズール教授が提唱して、今ではその活用は広まっています。
★しかしながら、今回のようにあまりに専門的すぎると、そのギャップが近づくにしても開きは生徒自身だけでは埋まりません。ピア・インストラクションはその開きが縮まった時に、専門家である教師がフィードバックすることによって理解を深めていく妙技ですが、その開きが大きいままだと、最初から講義をしているのと同じことになるのです。
★ですから、そこに生成AIを副操縦士にして、対話をしながら個人でもピア・インストラクションでも取り組んでいけば、最近接発達領域はかなり埋まっていきます。先生から、最終的にフィードバックをもらっても、アアナルホドとなって、モチベーションは次のステージのスプリングボードの役割に変換できます。
★このような生成AIを使ってピア・インストラクションを授業で行っていくことは、一見授業内の小さな出来事のように思われるかもしれません。本当にそうでしょうか?実は染谷先生は、生成AIというグローバルインテリジェンスをご自身の授業につなげて実施しているのです。それに気づくと、めちゃくちゃインパクトがありますね。
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