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2023年11月 8日 (水)

開成学園は変わるけれど変わらない 日本経済新聞記事から②東大進学数で評価する時代は終わる?

(前回の続き)
★インタビュアーは「今年、英ケンブリッジ大に進んだ卒業生が取材に「国内外の大学全部を視野に入れて選んだ」と話していたのが印象的だった」と感じたようですが、これは開成全体でそのような雰囲気になっているのでしょう。この10年間コンスタントにケンブリッジ級の海外大学に進学しているし、そのアプリケーションの数はかなり多いですね。

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(2019年2月1日の開成入試風景。首都圏模試から)

★そのインタビュアーの「東大に限らず、海外大に進む生徒が増えたと聞く。海外進学支援に力を入れているのか。」という質問に、野水勉校長はこう語ります。

「2011年ごろから希望者に海外トップ大への進学も支援している。多様な人々との間でコミュニケーションする能力、協働しけん引できるリーダーシップが身につくからだ。23年の卒業生は準備を始める高1の時に新型コロナウイルス禍に見舞われたため2人と少ないが、17〜22年は年5〜10人が進んだ」

★たしかに、先述したように、パンデミックの時期を除いて、高3の3%くらいが海外大学に進学する状況にここ10年なってきています。しかも世界大学ランキングは東大を凌ぎます。ランキングで凌ぐというより、優れた論文の量や豊かな多様性などハイクオリティであることが凄まじすぎて実際にスタンフォーフォドとかハーバードとかMITに行ってみると驚きます。

★教授陣のコミュニケーションが実に共感的です。知的です。知性に対し、感性に対し実にリスペクトがあります。もちろん、専門的なレベルでの議論はなかなか凄まじいようです。そこには私は当然参加していないので、経験者に聞いただけですが。

★東大ももちろんレベルは高いのですが、学生全員が英語で議論するわけではないでしょう。教授陣もオープンな感じの方はどちらかというと決して多くはないかもしれません。

★名古屋大で教授をしていた野水校長は、大学の国際化に大貢献しています。動画で拝見するとその対話の雰囲気が実に共感的で威圧感がないですね。むしろ謙虚で、それでいて知性と感性の卓抜した雰囲気を感じさせます。驚嘆です。国際的なアカデミズムとはこういう感じなのですね。

★現在の開成の生徒の海外大学志向の状況について、野水校長はこう語ります。「欧米の優秀な高校生は自国にとどまらず世界のトップ大学にどんどん進む。日本の生徒はまだ世界を見ずに大学を決める傾向が強い」しかし、開成は「米有名大の夏季プログラムなどに自主参加する生徒は毎年50人ほどおり、授業や試験と重なっても欠席扱いにしない配慮をする。それらは費用もかかり誰もが参加できるわけではない。まだ私案だが米英などの高校と1カ月程度の交換留学を始めたい」と。

★さらりと、欠席扱いしないと語りますが、この決断は、現状の多くの校長にとって簡単ではないのです。そこがさらりと受け入れられるというのは、開成の学内にグローバルなビジョンベクトルの合意形成がなされているということを示唆します。

★それにしても野水校長の次の言葉はインパクトがあります。「結果として東大進学者数が2位になってもいい。海外トップ大の進学者数と合わせて見てもらえばよい」と。水野校長自身、合格数でみたらトップだが、卒業生に対する合格率でみるとそうではないのだからと。それより海外トップ大学の進学者数と合わせて見て欲しいと。

★毎年出版される週刊誌の大学合格者数高校ランキングに、海外トップ大学の数はカウントされていません。そこはそろそろ見直した方がよいかもしれません。野水校長はこうも語ります。「東大進学者数で高校を評価する文化がいつまでも続かないこともありうる」と。

★また、「英語検定試験のTOEFL(iBT)で90台後半から100の高得点が必要だ。私の頃はネーティブの英語の先生はいなかったが今は専任2人、非常勤6人がいて高3の1割の40人程度が100点に達する。近い将来、40人近くが海外大に行ってもおかしくない」とまで言い切っています。これは、40人、つまり同校高3生の10%は、海外トップ校に行くということでしょう。東大40人進学するのと、海外トップ大学40人進学するのとでは、その総合的な実力はどちらが凄まじいか、推して知るべしですね。

★そして、このことは東大進学者数で高校を評価する時代の終焉がすぐそこまで来ていることを明快に示唆しています。東大50人以上進学させる学校は全国で50校もないでしょう。10人進学するとその学校はすごいという評判になります。

★さて、最近学校の偏差値にかかわらず、その学校の生徒のみなさんが海外トップ大学にたくさん進む私立学校が増えてきています。10年後には、そのような私立学校は増え、10人は海外トップ大学に進学するようになるでしょう。そのときもはや東大進学数が絶対基準ではなくなります。

★もちろん、経済低迷の10年が続くでしょうから、行きたいからと言ってもなかなかいけません。しかし、だからこそかつてアジアの国々の富裕層が海外大学に子どもたちを留学させてように、いまもしていますが、日本もそうなっていくでしょう。

★それは将来の経済状況を考えれば、そして世界の歴史を振り返れば当然の動きです。そして、そのことがやがて日本の経済を再生するグローバルリーダーとして活躍する日本の智慧者が出現するのです。

★もっとも、そのときに日本の国さえよければよいという政治経済システムはなくなっているでしょうが。

 

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