成城学園 文化人類学的体験を通して哲学する
★前回は、C1英語の学びは日本の教育を変えるレバレッジポイントになると話しました。なぜなら、無意識のうちに英米の哲学的シンキングが身につくからです。東大の松尾豊教授や千葉工大の伊藤穰一学長のように、AIも人間も多言語であれば能力の精度は上がるのだと語るのも、メタ哲学とかメタ思考が互いに相互補完するからです。実はこのメタ思考の相互補完が大事であれば、C1英語に限らずいろいろあるのです。
GLICC Weekly EDU 第146回「成城学園中高 つながる体験学習ー自然体験、海外体験の意味」
★たとえば、成城学園の教育が格好の例です。相互補完する教育プログラムが多すぎて、最近GWE(GLICC Weekly EDU)で、同校の青柳先生のお話は、一つのテーマを深堀するのがルーチンになってきました。説明会では概要の話にならざるを得ないのでしょうが、動画では1つのテーマを深堀することができます。
★最近では、成城学園の6年間通しての体験プログラムのデザインについてお聴きできました。すると、なるほどこれは文化人類学的な体験だなと感心してしまいました。ロジカルシンキングはもちろん大切だし、ふだんから成城学園は実施しています。
★しかし、そのような「科学的思考」ではとらえきれない、レヴィ・ストロースが見出した「野生の思考」を体験の中で開発していくのだということがわかりました。「野生の思考」とは最近のフレーズでいえば「非認知能力の思考」ということでしょう。
★レヴィ・ストロースは、「科学的思考」と「野生の思考」のバランスを考えていたと思います。まさに両思考様式の相互補完ですね。
★実は、別のGWEの回では、青柳先生は、国語の授業の中でトウールミンモデルを活用しているとお話しくださったことがあります。京大の松下佳代教授も「探究」の中で、推奨している手法ですね。松下教授の中でも「探究文化」と「受験文化」の相互補完の話が出てくると思いますが、要は相互補完ですね。それがあるから一つの方向性に固執しない「訂正する力」が東浩紀さんではないですが作動するのでしょう。
★それはともあれ、トゥールミンモデルも、イギリスの分析哲学者トウールミンの開発したモデルです。まさに哲学シンキングそのものなのです。
★ですからC1英語ではなくても、青柳先生のようなC1日本語をトレーニングする授業があれば、メタ哲学が作動して、体験とメタ哲学が相互補完し合うわけです。このC1日本語をもってして、生徒が他教科を学ぶと自己組織化された教科横断が生徒の内面で作動するのです。
★おそらくそのような生徒は多言語に関心を持つでしょう。大正自由教育から今もその燈を燃やし続けている成城学園の日本の教育における歴史的意義はこういうめちゃくちゃ具体的状況に生きているのです。この具体的状況という生の中に浸って教育を創り続けている教師の存在。これこそ、具体的生の中で、教師や生徒という仲間と共に生を創り上げる文化人類学的所業であり、そしてその中で哲学する姿です。今、シリコンバレーで文化人理学的なアクションとその中で思考する哲学シンキングが重要だとされていますが、成城学園はすでに大正時代から行っていたのです。
★なんといっても、100年前に生まれた文化人類学は、デューイと相互補完関係にあったのですから当然です。
| 固定リンク
« 開成学園は変わるけれど変わらない 日本経済新聞記事から➂英語がではなくC1英語が日本の教育を大きく変えるレバレッジポイント | トップページ | 松尾豊教授 教育課程でこれからの人材の能力は育つのか相関を生成AIで示す あまりに衝撃的な »
「創造的才能」カテゴリの記事
- 2026中学入試準備(14)問いの循環思考が行われる授業 すてきです。(2025.02.18)
- 2026中学入試準備(10)富士見丘の突出型グローバル教育 チームワークと自分の言葉としての英語へ(2025.02.15)
- 2026中学入試準備(08)MiddleからCreativeへ ようやく(2025.02.13)
- 2025年中学入試動向(13)和洋九段女子 生徒の才能が豊かになる生成AIの使い方勉強会はじまる(2024.11.24)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
「中学入試」カテゴリの記事
- 2026中学入試準備(15)今年から2027年にかけて変わる慶應義塾大学の入試問題 才能創発型入試とシンクロしだす (2025.02.19)
- 2026中学入試準備(12)3Fマインドと3Tスキルを大切にする教師がいる学校を探そう(2025.02.17)
- 2026中学入試準備(06)知られざる工学院と聖学院の思考力セミナーものすごいバックボーン(2025.02.11)
- 2026中学入試準備(05)すべてが才能創出型入試の中で海外進学準備もしている学校は(2025.02.11)
- 2026中学入試準備(04)すべてが才能創出型入試へ(2025.02.11)
「創造的対話」カテゴリの記事
- 2026中学入試準備(13)東京私立中高の理数教育の教科横断性 実に深い(2025.02.17)
- 2026中学入試準備(07)東京都 本来の人間とは何かをどうとらえるか議論が進み始めている(2025.02.12)
- 2025年中学入試動向(15)日大豊山女子 新タイプ入試60%占める ルーブリックも公開(2024.11.25)
- 2025年中学入試動向(13)和洋九段女子 生徒の才能が豊かになる生成AIの使い方勉強会はじまる(2024.11.24)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
「PBL」カテゴリの記事
- 2025年中学入試動向(35)富士見丘 学習指導要領をそのままグローバル教育化としてトランスフォーメーションに成功(2024.12.15)
- 八雲学園をカリフォルニアから考える(了)英語祭の意味 グローバルSTEAM探究教育(2024.12.14)
- 八雲学園をカリフォルニアから考える(5)UCサンタバーバラで学ぶ八雲生(2024.12.12)
- 工学院(2) 田中教頭インタビュー第2弾 オープンマインドの世界に通じる意味(2024.12.12)
- 聖書・宗教の授業・礼拝 聖ドミニコ学園・聖学院・桜美林・恵泉・湘南白百合・女子学院・普連土など 自己を見つめ世界の痛みに向き合い対話し言葉を紡ぐ(2024.11.26)
「高校入試」カテゴリの記事
- 2025年中学入試動向(26)日駒 コンパクトでパワフルなカリキュラム(2024.12.03)
- 2025年中学入試動向(22)文大杉並 interactionからtransactionへ突き抜ける(2024.11.30)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
- 聖学院の教育宇宙(2)すべての教育活動をつなぐものが生まれる仕組み化(2024.11.22)
- 聖学院の教育宇宙(1)すべての教育活動がつながっている(2024.11.22)
「成城学園」カテゴリの記事
- 青柳先生の教師のあり方=Beingは構造論的実存主義(2024.04.10)
- 22世紀型教育準備へ(15)成城学園 森の小径を歩いていくと世界が開かれる 随所に茶室の仕掛け(2024.02.24)
- 2025年変化する中学入試(28)ザ・成城学園に期待(2024.02.11)
- 2024年中学入試(34)成城学園 アート・プロデューサーが生まれる学校 ガブリエルと境教授から着想を得て(2024.01.06)
- 成城学園 文化人類学的体験を通して哲学する(2023.11.09)
最近のコメント