「学校づくり委員会」に参加して刺激を受け調べてみたら、AIと哲学のつながりの深さに驚愕
★東京私学教育研究所の実施している研修などの企画運営している委員会の一つに「学校づくり委員会」があります。先週土曜日開催されました。月に1回行われる委員会で、委員の先生方は毎回レポートを提出し、それをベースに議論していきます。今年のテーマは生成AIです。委員の先生方が、それぞれ自分の関心ある視点からアプローチするので、合わさるといろいろなアイデアが生まれ広がり深まります。
★委員の先生方は、
1)歌曲の分析と創作を生成AIのものと比較する研究
2)言語学的アプローチ
3)哲学的アプローチ
4)学びのツールの比較研究
5)AIをめぐる各団体の政策比較研究
6)経産省、文科省など省庁が描く教育ビジョンの中でのAIの位置づけ
7)国内外のプログラムの中で成長する生徒とAIの相関研究
★など多角的なアプローチで生成AIを語り合っています。その議論の中で、人間の知性や言語の身体性を生成AIはどのように取り扱っているのか深堀していっているように感じました。結局は、人間とは何かであり、さらにおもしろいのは、この人間とは何かまで、各省庁がガイドラインを描いているのではないかということまでみえてくることです。未来の人間のマインドセットをしようということかもしれません。
★先生方の話に耳を傾けながら、かりに身体性がAIには無理だとしても、そもそも言語や知性は、個人の経験を超えた存在であり、AIは、その存在を膨大な言語のアルゴリズムを活用した取り扱うのですから、すでに言語や言語が可視化する知性の中にもしかしたら何かしらの人類の何千年という知が内包されている可能性があります。
★また、そういえば、カントがアプリオリという認識の方程式を持ち出していたのを思い出し、そもそも経験する前にあるものについては、生成AI[のほうが得意なのではないかとも思い、ゾッとしました。
★わたしたち日本人は、どちらかというとAIのイメージは鉄腕アトムに結び付きポジティブですが、欧米はどちらかというと黙示録的なネガティブなイメージに結びつきやすいような気がしていたのは、言語という記号の内包するものに対する文化的な違いがあるのだろうと。言語のアポロ的なイメージとディオニユーソス的なイメージの両義性があるとしたら、後者の部分は予想不能です。
★生成AIの論理的明快さの背景に言語のディオニューソス的なものがあるとしたら、やはり生成AIの可能性は予測不能かもしれません。
★恐ろしくなって、さらにAIと哲学でググってみたら、「人工知能 38 巻 3 号(2023 年 5 月)「AI 哲学マップ」[総論・後編]七つの哲学─人工知能コラボレーション」という論文が出てきました。三宅 陽一郎さん((株)スクウェア・エニックス、立教大学 大学院人工知能科学研究科 特任教授)、大内孝子さん(えだまつ工房)、清田陽司 さん((株)LIFULL AI 戦略室)共著の論文で、目的は「人工知能分野における哲学の役割を明示し,哲学という大地が指し示す新しい人工知能研究分野を照らし出すことである」とのことようです。
★次の7つの哲学マップそれぞれの中でのAIの役割が描かれています。
(1)知能の全体論
(2)思考,精神,身体を含む人工知能
(3)自律性と意識
(4)時間と空間の認知
(5)社会的存在としての人工知能
(6)言語と概念を操る人工知能
(7)人工知能の新しいかたちの探求
★AIがすでに膨大な哲学や心理学などの知見をディープラーニングしているわけです。
★今、文化人類学や哲学が、GAFAMなどの企業で活用されているというのは、このような人工知能の出現があるからでもありましょう。そんな感じで、ググっていったら、総務省のスライドに行きつきました。総務省は欧米の人間観と日本人の人間観を文化人理学的観点から比較研究し、AI時代に日本人観の脱構築が世界をリードするレバレッジポイントだというのです。
★つまり、通時的知性の塊である言語観に対し、共時的な八百万の諸関係で成り立つ人間観は、実にコンビニエンスな学びで拡張性のある知性を形成するということでしょう。深さについては、欧米の人間観とコラボすればよいということでしょうか。
★それにしても、経産省、文科省とは違う、国の組織的枠組みだけではなく、人類の枠組みまで研究している総務省。これからの教育を考えるとき、それら全体の動きをダイナミックにみる鳥の目、細かく見ていく虫の目、流れを読む魚の目、違う観点からモニタリングしてみるコウモリの目、真実を見抜く心の目の総合力がなければ、新しいビジョンだと思っても、結局は省庁の敷いたレールの上を走ることになります。その信頼性・正当性・妥当性があれば全く問題ないのですが、そこのモニタリングは誰がどのように行うのでしょう。
★まさかそれもAIがやるということでしょうか?アポロとディオニューソスの葛藤はまだまだ続きます。
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