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2023年11月

2023年11月29日 (水)

なぜ八雲学園か!英語でミュージカルまでやってのける。

★11月の八雲学園の文化体験は、中学生を対象に音楽座ミュージカルによる「シアターラーニング」を行ったということです。12月9日に開催される「英語祭」などにも向けて、表現力などを向上するためのワークショップ。生徒たちは体を動かしたりしながら、楽しく学んでいたようです。

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(写真は同校サイトから)

★「ミュージカルを見ているときは衣装や背景が物語に寄っていないのに情景が浮かびました。見ているだけではなく、ワークショップがあったので、インプットとアウトプットを両方でき、楽しんで学ぶことができました。」と生徒が感想を語っていますが、イギリスのAレベルのダンスの試験のような感覚です。何も具体的な背景の道具がないのに、演じることによって身体が、その背景のイメージを聴衆の頭の中にあるいは心の中に生み出すわけです。その理論だけではなく実際にアウトプットのパフォーマンスを行うことで、その醍醐味に気づく。すてきな「シアターラーニング」です。

★「声の力と表情で観客にも世界を共有するという感覚を得られた。演者と観客が一体となって良いミュージカルになるのだと思った。感動を観客に与えるには演者側も感動しなければならないと言っていたが、これを意識して英語祭の劇などで活かせることができたら良いと思った。」実にいい気づきですね。

★興味深い生徒の感想はまだまだあります。八雲学園のサイトをご覧ください。

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【速報】学校法人順天学園 学校法人北里研究所と法⼈合併に向けて協議を開始

★順天学園の副校長片倉先生から「創立 190 周年を迎える順天中学校・高等学校を設置する学校法人順天学園と、北里大学・大学院等を設置する学校法人北里研究所との法人合併を目指した協議を開始することについて、11 月 27 日に基本合意書を締結した」というお知らせをいただきました。

★下記のプレスリリース文書にもある通り、両法人は 2026 年 4 月 1 日(令和 8 年度)に合併することを目指しており、合併後、「順天中学校・高等学校は学校法人北里研究所が設置する学校となる」ことになります。

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★たしかに、両法人は学究的であり、人類のための奉仕の精神を重視していることなど、両者の建学の精神や理念における親和性は高いでしょう。また、グローバルな視野をベースに理数教育や研究に力を注いでいます。しかも順天の卒業生は、医学系に進む生徒も多いので、中高の新しい探究の環境ができることになり、画期的合併です。

★昨今ダイナミックに進んでいる高大連携の動きの中で、連携を超えた合併にまで至ったというのは驚きであり、同時に未来の有為な人材輩出を、中学・高校・大学・大学院等を通じた一貫教育によってできる可能性に大きな期待がかかります。

★設置者が改まったとしても、校名「順天」の2文字が継承され、中学高校の所在地をはじめ、教職員も継承されることになっています。国立大学や海外大学、文系・国際系などの私立他大学への進学指導も継承されるということです。

★また、令和8年度より、附属としての高校から大学への内部進学が開始される見込みのようです。北里柴三郎や福田理軒のような創設者の精神を引き継ぎながら、グローバルでイノベーティブでサイエンティフィックな新しい中高が誕生します。中学受験生にはとても希望がもてる最新情報です。

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2023年11月28日 (火)

東京家政大学附属女子中学校・高等学校 KASEIからSEKAIへ グローバルとICTと愛情

★知人の教育関係者から、東京家政大学附属女子中学・高等学校(以降「東京家政大」)が、ダイナミックに変化していると聞き及びました。検索してみると、首都圏模試のサイトに「東京家政大学附属女子中学校・高等学校2023 海外留学を充実させKASEIからSEKAIへ」という記事が掲載されていました。リード文にはこうあります。

「東京家政大学附属女子の学び140年以上の歴史を持つ東京家政大学附属女子。建学の精神「自主自律」できる女性を育てるために、生活信条「愛情・勤勉・聡明」を掲げています。2020年度からは国際バカロレアの中等教育プログラム候補校として認定され、"KASEI"から"SEKAI"へ向けて、大きな一歩を踏み出しています。」

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(写真は首都圏模試センターのサイトから)

★中等教育段階のIBのプログラムの候補校になっているというのは、たしかにすごいことです。「愛情・勤勉・聡明」とIBの10の学習者像が統合されてもいて、世界標準の教育を確立しつつあるということが予想できます。実際、記事を読んでいくとその通りです。

★しかも、生徒によるアドミッション・スタッフーチームが、中学から高校まで連綿とつながっていて、自分の学校の魅力を伝えるだけではなく、受験生や保護者の心も受けとめるおもてなしの心、つまり同校の理念の1つ「愛情」が伝わるアクションまで起こしています。

★主体的・対話的で深い学びがまずは身近な自分の学校の魅力を受験生・保護者と共有するところまで発展しています。実際、スタッフの一人の女子生徒は、将来はマーケティングをはじめ経営学を学びたいと語っています。いまここでのアドミッション・スタッフのアクションが生涯の学びにもつながる「聡明」な知恵が育っています。

★キャンパス内のビオトープもコンクールで何度も入賞を果たすほど、SDGsの根源的な課題解決に「勤勉」に立ち臨んでいるわけです。

★四季折々の自然の変化をキャンパス内で感じられるAWE体験をベースに島皮質も非認知能力を豊かにするように刺激されているでしょう。

★自然と社会と人間関係の循環は、これからの激変する社会において希求されていることです。つながりの分断が進んでいる今日ですが、その循環を生成する人材を同校は輩出するだろうと、記事を読みながら感じ入りました。

★そして、この記事は今年の5月に掲載されているので、最近の新しい情報は書かれていないのは当然です。知人によると、まだ発表はされていないので、詳しくは話せないけれど、「愛情」の育成部分にDXを融合さるらしいと。エッ!と驚きました。しかも「勤勉」「聡明」の部分はすでにそれは果たされていると。

★たしかに、新しいDXハイスクール構想が文科省からも発表されていますから、その流れを先にきちんとつかんでいるということは大いにあり得ます。東京家政大の大変貌ぶりに期待です。今後目が離せませんね。

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2023年11月27日 (月)

【研究所ブログ第6回】教科の授業と探究の接点

★東京私学教育研究所のサイトに、「【研究所ブログ第6回】教科の授業と探究の接点」が公開されています。多くの学校で、「探究」の方法を追究していますが、同時に教科の授業とどのように結合できるのか、その接点をめぐっての追究も行われています。家庭科の委員会の研修「情報活用型PBLでつくるホームプロジェクト」で行われた東北学院大学文学部・教育学科の稲垣忠教授の講義とワークショップによってその接合点のヒントが示されました。

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★探究といっても様々なタイプがあり、稲垣先生は4タイプを示しました。実におもしろいですね。たとえば、成立学園で行っている教育は、この4つがすべて入っています。富士見丘もそうですね。

★そして、たしかに、そのような4つのタイプの探究(学校は教育活動として行っていて、すべてを探究と呼んでいるわけではないのですが)すべて行っている学校の教科の授業は、プロジェクトベースだったり、ゼミ形式の場合が多いですね。

★探究のときに活用するカードなど、学びのツールは参加した先生方に酷評で、先のブログに稲垣先生のサイトのリンクが紹介されており、ゲットできるようになっています。ぜひご覧ください。

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国立大学「地域枠」6割に 都市の生活社会をどうするかも当然重要

★読売新聞(11月26日)にこんな記事。「医師偏在の解消を目的に始まった国立「地域枠」、卒業生の5%弱はルールより早く流出」。地域の医師不足、教師不足、法律家不足、地場産業のイノベーションの停滞などがある現状、優秀な人材確保のための政策のようです。2000年ごろから始まって、今や6割の国立大学で。

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(デジタルーネイチャー都市を活性化する大学のイメージ。bing作成)

★しかし、移動の自由という人権が憲法で保障されているから、一生縛るなんてことはできないし、4年以上地域で勤務などとルール化しても罰則規定は難しいでしょう。

★その大学のある都市の生活社会に魅力があればルールは機能するでしょうし、グローカルであれば、地球上どこでも世界につながっているので、むしろ余白を楽しめる幸せな地域であればどこでもよいわけです。

★しかし、静岡県議会に見られるように、そのような高い志よりも政局にもちこみ、そのような話にならない地域もあります。多かれ少なかれ、そうなのかもしれません。それは日本人の生活社会の文化的特徴なのかもしれません。

★それは東京だって同じですよね。

★AI×natureな学校を創って、それをロールモデルとして都市を創っていくしかないかなと思っているのですが、果たしてそういう学校はできるのか?で、世界にはあるのか?複雑なネットワークが絡んでいるので、なかなか見えにくいのですが、イギリスのパブリックスクールとオックスブリッジの関係はそうです。

★また、カナダのBC州などは、大学と公立の小中高がそういう関係になっています。

★GAFAとHTHもややそういう関係になっているかもしれません。

★グローバルシチズンシップ教育が背景にあるので、そうならざるを得ないし、もともとが市民社会づくりから始まっているので、そうなるのは自然だったのかもしれません。

★日本の場合は、東大と私立中高がそういう関係になっているかというと、生徒募集という点ではそうなっていますが、東大が私立学校と日本社会の市民性を育成する関係にはないでしょう。

★そのような関係だから、「地域枠」というアプローチにならざるをえないわけです。いずれ国立大学無償化にならざるを得ないでしょうが、それは前提でなくても、並行進化で都市の生活社会が見直されていくというのは必要です。

★デジタルーネイチャー都市構想。です。これについては、落合陽一さんや伊藤穣一さんや孫泰蔵さんらがそれぞれに構想を持っているので、まあ大丈夫でしょう。

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2023年11月25日 (土)

三田国際 国内外どこの学校も真似できない最高の学校 TACsコードシステム

★昨夜、GLICC Weekly EDU 第152回「三田国際学園ー本物の21世紀型教育校とは」がありました。あまりにすばらしい学校の進化ぶりに、私は「何も言えない」という状況です。ぜひご覧ください。

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(bingが作成したTACsコードシステムのイメージ)

★海外大学の進学の凄まじさは、いわゆる20世紀型中学受験市場の基準を創造的に破壊しています。その教育システムは、たとえば、イギリスのイートンを超えていま。

★外生的技術進歩と内生的技術進歩の循環は、世界のエスタブリッシュスクールは満たしているのですが、その両者の循環の内的メカニズムを「TACsコードシステム」として確立しているのは、三田国際だけです。

★このTACsをシステマチックにいかに確立したか、そして日々いかにアップデートされていくのかということについて、大橋清貫学園長がシャープに語っています。まだ7時間前の配信なのに、すでに多くの方がご視聴されています。さすがです。

★TACsコードとは何か?それはご視聴になれば、おそらくこういうメカニズムの関係総体だと気づくでしょう。いったいそれはいかなるものか?仮説推理をたてながら、ご覧いただければと思います。学校関係者の方々は、このTACsの暗号を解読するとご自身の学校がパワフルになります。受験生のみなさんは、この暗号を解読する思考を回転させることが、未来を開くカギです。三田国際の在校生は、このカギを持っていますよ。

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2023年11月24日 (金)

2025年以降は、教育力を「外生的技術進歩」と「内生的技術進歩」と「哲学シンキングなど」の3つのスコープで学校選択ができるようになる

★2025年は、次期学習指導要領の重要な準備基盤ができる年です。共通テストで情報Ⅰが入試科目として実施される年でもあり、それにめがけてデータサイエンスコースだとか学科が、中高や大学で創設されています。DXハイスクール1000校計画も進んでいるはずです。2025年には、その準備が全国に広がっているでしょう。しかも、そこに生成AIが加わります。生成AI実装が当たり前になっているでしょう。

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★グローバルアントレプレナーシップやライフシフトなどのダイナミズムは、「探究」のプログラムと結合して、総合型選抜にも結合していくでしょう。総合型選抜は選抜のための入試システムからキャリアガイダンス型入試に明快に移行するでしょう。そこに生成AIがさらに結合するのです。

★ですから、経済力と教育力のかなりの部分でシンクロが起こります。ここ数回、経済力を外生的技術進歩と内生的技術進歩で見てきましたが、その方程式を教育力に置換えると上の図のようになるかもしれませんね。

★学校の人的資本運営は、無形資産を生みます。生徒数は定員が決まっているところがほとんどなので、経済力のように生徒数増による教育力の質のアップは考えにくいですね。

★そうなると、外生的技術進歩と内生的技術進歩のアップデートが重要になってきます。

★外生的技術進歩は、「空からパンが降ってくる」と言われます。ですから、学校に資金力があれば、外から技術を購入してくればよいのです。

★しかし、たいていの学校は資金が潤沢ということはないので、外生的技術進歩は最小限で最大の効果を上げるDXとAIの結合したものに集中するでしょう。そして、内生的技術進歩に力を入れることでしょう。ただ、ここはその技術の背景に「哲学シンキング」あるいはそれに相当する教師や生徒の内的メカニズムをアップデートするシステムが必要になります。

★これらは、見える化されます。

★ですから、保護者は、「外生的技術進歩」「内省的技術進歩」「哲学シンキングなど」というスコープで学校を観るとよいでしょう。この3者の結合力の強さがあれば、国内外の大学進学実績も出るし、何より自分の子どもの未来を子どもが自ら開いていくスキル・マインド・コントリビューションアクションを社会実装する準備ができます。

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2023年11月23日 (木)

羽田国際② 人口減の未来に外生的技術進歩と内生的技術進歩を統合する人材輩出に期待

★来年から羽田国際高等学校として共学化し、グローカルシンキングを実装する生徒育成の新しい教育を実践していく全く新しい学園が誕生します。順次中学も開設していきますが、簡野校長は、次の学習指導要領の改訂の行方を既に読み取り、その改訂では、激しい世界の変化についていけないかもしれないと見通し、さらに未来の教育からバックキャストして新しい中高一貫校を計画しているようです。

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★GIGAスクール構想に基づいて、多くの学校が新しい学校づくりを開始していますが、すでに、そのスキルでは、生成AIの日々進化がもたらす社会の新たな変化についていけなくなっている可能性があります。文科省は、それにすでに気づいており、DXハイスクール構想を補正予算として組み、日本の1000校に1000万の助成金を用意していると言われています。

★東京都の方も同様です。すでにTOKYOスマート・スクール・プロジェクトが動いています。そしてTOKYOデジタルリーディングハイスクール事業について、都立高校の「TOKYO教育DX推進校」を指定しています。

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★上記のパンフレットも出され、学び方・教え方・働き方の3つの側面からDX化を進めようということです。このプロジェクトは、コロナ禍でプランされている<「未来の東京」戦略>の一環の動きです。その 附属資料として今年「東京の将来人口」という多角的な視点からまとめられたデータ集も出ています。その中で、中高にとってわかりやすいのは、次の人口推移です。

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★ご承知の通り、とにかく人口減なのです。自然減は止まりません。東京都外からの転入や働きやすい環境をつくって外国人を増やす「社会増」を増やす戦略が練られています。そのための環境として、一つは外生的技術進歩だというわけです。前回も日経のやさしい経済の京大佐々木教授の寄稿について紹介しましたが、人口減少の中で経済を持続可能にするには、外生的技術進歩によって一人当たりのGDPを上げるのだということでしょう。

★そのためにはDX進化は欠かせないと。

★羽田国際も、そのような社会増の環境の一環として、グローカルシンキングの育成の外生的技術進歩の準備をしています。しかし、簡野校長は、やはりさらに内生的技術進歩をいかに創り出すかなのだと構想しています。佐々木教授も内生的技術進歩の重要性についても触れています。

★外生的技術進化は、等しくすべての生徒にとって有益ですが、シンキングやケアのレベルでの個別最適化にはなりにくいし、個別最適化がリスペクトされた協働学習でないと効果的ではないわけです。1人ひとりの興味関心、モチベーションなどが湧いてくるには、思考や気持ちの状態が1人ひとり違うところに教師がチュータリングやファシリテートしていく必要があるからです。

★従来の教育DXでは、学力の3要素のうち「知識・技能」に関してはそれはできていましたが、思考力や判断力、表現力、主体性などへの「最近接発達領域」のアプローチができていませんでした。それをどうやってやるのか?簡野校長先生は、当然そこは「生成AIの形式知化実装」(この表現はまだ企業秘密として発表できないということなので、イメージとして私が勝手につけました)なのだと。

★たしかに、2027年から2032年ぐらいの間に実施されていく次期新学習指導要領では、そうなっていくでしょう。ただ、電子教材やデジタル教科書を活用するので、大きな未来の教育の枠組を構築するのは難しいかもしれません。

★国内だけで仕事ができるならば、それでよいのですが、2030年は、そのような世界ではないですし、すでにそうでないのは、ファストフード店(そばなどの和食も含めて)にいけばすぐにわかります。

★したがって、羽田国際のように、世界を牽引する教育を、独自に先進的に私学が進むことによって、その世界とのギャップをうめていく気概が重要になってくるでしょう。

※)参考→羽田国際① 新しいグローカルシンキング教育へ

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2023年11月22日 (水)

外生的技術進歩と内生的技術進歩の統合 人的資本がカギ

★ここ最近、日本経済新聞の「やさしい経済」のコーナーで、京都大学教授 佐々木啓明さんが、「人口減少時代の経済成長」という論考を寄稿しています。経済成長の1つのモデルは、ソロー・モデルですね。人口が増えることを前提にした外生的技術進歩による生産量の持続可能性が中心です。佐々木さんは、人口が減っても資本深化によっては、一人当たりのGDPが増える場合があることを語っています。

 

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★しかし、これも限界はあるので、ノーベル経済学賞受賞者ポール・ローマなどの内生的成長論も紹介しています。外生的技術進歩とは、外部的な要因によって起こるものを指します。例えば、気候や鉱物資源などの自然環境、政府の政策や法制度などの社会環境、他国の技術革新や国際貿易などの国際環境などハード面の技術の進化でしょうか。

★これに対し、内生的技術進歩とは、経済内部のメカニズムによって決定されるものを指します。例えば、研究開発や学習効果によるもの、集積の経済や誘発的技術進歩によるものなどです。ソフト面の技術の進歩ということでしょうか。

★両方ともマクロ経済学ですが、これを教育で考えると、内生的成長はミクロ経済にも関係しているように見えます。

★マクロなのかミクロなのか、専門的なことはよくわかりませんが、労働人口が減った場合でも、内生的技術進歩によって、一人5人分くらいの仕事ができれば、一人当たりのGDPは右肩上がりになります。

★しかもソフト面が進化すれば、それを形にするハード面も進化するので、外生的技術進歩もあるでしょう。要素還元的にではなく、資本深化、労働人口、外生的技術進歩、内生的技術進歩は、当然関係総体です。

★ところが今まで、企業も学校も、内生的技術に関しては読み書きそろばんレベルを整えてきただけであり、外生的技術進化は一握りの専門家に任せてきました。

★ところが、内生的技術進歩は、すべての労働者、つまり地球市民の知性を広げ豊かにする作用がある可能性があるのです。

★少なくとも、人口減少の傾向にある日本は、ソローモデルを読み替える必要があります。

★それに関しては、総務省が、すでにアイデンティティとは何か、アバターの有効性は、AIの活用の有効性はなど、内生的成長理論の新たな読み替えを開始しています。

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2023年11月20日 (月)

「学校づくり委員会」に参加して刺激を受け調べてみたら、AIと哲学のつながりの深さに驚愕

★東京私学教育研究所の実施している研修などの企画運営している委員会の一つに「学校づくり委員会」があります。先週土曜日開催されました。月に1回行われる委員会で、委員の先生方は毎回レポートを提出し、それをベースに議論していきます。今年のテーマは生成AIです。委員の先生方が、それぞれ自分の関心ある視点からアプローチするので、合わさるといろいろなアイデアが生まれ広がり深まります。

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★委員の先生方は、

1)歌曲の分析と創作を生成AIのものと比較する研究

2)言語学的アプローチ

3)哲学的アプローチ

4)学びのツールの比較研究

5)AIをめぐる各団体の政策比較研究

6)経産省、文科省など省庁が描く教育ビジョンの中でのAIの位置づけ

7)国内外のプログラムの中で成長する生徒とAIの相関研究

★など多角的なアプローチで生成AIを語り合っています。その議論の中で、人間の知性や言語の身体性を生成AIはどのように取り扱っているのか深堀していっているように感じました。結局は、人間とは何かであり、さらにおもしろいのは、この人間とは何かまで、各省庁がガイドラインを描いているのではないかということまでみえてくることです。未来の人間のマインドセットをしようということかもしれません。

★先生方の話に耳を傾けながら、かりに身体性がAIには無理だとしても、そもそも言語や知性は、個人の経験を超えた存在であり、AIは、その存在を膨大な言語のアルゴリズムを活用した取り扱うのですから、すでに言語や言語が可視化する知性の中にもしかしたら何かしらの人類の何千年という知が内包されている可能性があります。

★また、そういえば、カントがアプリオリという認識の方程式を持ち出していたのを思い出し、そもそも経験する前にあるものについては、生成AI[のほうが得意なのではないかとも思い、ゾッとしました。

★わたしたち日本人は、どちらかというとAIのイメージは鉄腕アトムに結び付きポジティブですが、欧米はどちらかというと黙示録的なネガティブなイメージに結びつきやすいような気がしていたのは、言語という記号の内包するものに対する文化的な違いがあるのだろうと。言語のアポロ的なイメージとディオニユーソス的なイメージの両義性があるとしたら、後者の部分は予想不能です。

★生成AIの論理的明快さの背景に言語のディオニューソス的なものがあるとしたら、やはり生成AIの可能性は予測不能かもしれません。

★恐ろしくなって、さらにAIと哲学でググってみたら、「人工知能 38 巻 3 号(2023 年 5 月)「AI 哲学マップ」[総論・後編]七つの哲学─人工知能コラボレーション」という論文が出てきました。三宅 陽一郎さん((株)スクウェア・エニックス、立教大学 大学院人工知能科学研究科 特任教授)、大内孝子さん(えだまつ工房)、清田陽司 さん((株)LIFULL AI 戦略室)共著の論文で、目的は「人工知能分野における哲学の役割を明示し,哲学という大地が指し示す新しい人工知能研究分野を照らし出すことである」とのことようです。

★次の7つの哲学マップそれぞれの中でのAIの役割が描かれています。

(1)知能の全体論
(2)思考,精神,身体を含む人工知能
(3)自律性と意識
(4)時間と空間の認知
(5)社会的存在としての人工知能
(6)言語と概念を操る人工知能
(7)人工知能の新しいかたちの探求

★AIがすでに膨大な哲学や心理学などの知見をディープラーニングしているわけです。

★今、文化人類学や哲学が、GAFAMなどの企業で活用されているというのは、このような人工知能の出現があるからでもありましょう。そんな感じで、ググっていったら、総務省のスライドに行きつきました。総務省は欧米の人間観と日本人の人間観を文化人理学的観点から比較研究し、AI時代に日本人観の脱構築が世界をリードするレバレッジポイントだというのです。

★つまり、通時的知性の塊である言語観に対し、共時的な八百万の諸関係で成り立つ人間観は、実にコンビニエンスな学びで拡張性のある知性を形成するということでしょう。深さについては、欧米の人間観とコラボすればよいということでしょうか。

★それにしても、経産省、文科省とは違う、国の組織的枠組みだけではなく、人類の枠組みまで研究している総務省。これからの教育を考えるとき、それら全体の動きをダイナミックにみる鳥の目、細かく見ていく虫の目、流れを読む魚の目、違う観点からモニタリングしてみるコウモリの目、真実を見抜く心の目の総合力がなければ、新しいビジョンだと思っても、結局は省庁の敷いたレールの上を走ることになります。その信頼性・正当性・妥当性があれば全く問題ないのですが、そこのモニタリングは誰がどのように行うのでしょう。

★まさかそれもAIがやるということでしょうか?アポロとディオニューソスの葛藤はまだまだ続きます。

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2023年11月18日 (土)

八雲学園のシン・グローバル教育 新/真の物語が始まる

★昨日、<GLICC Weekly EDU 第151回「八雲学園のシン・グローバル教育」>で、同校副校長菅原久平先生がご登壇。ROUND SQUARE SCHOOLとしての八雲学園の理念<IDEALS>をコンセプトレンズとして、八雲学園全体の具体的な教育の機会と環境を映し出すという、どこの学校も話したことがない本邦初の物語となりました。

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★このIDEALSという理念は、<Internationalism><Democracy><Environmentalism><Adventure><Leadership><Service>のイニシャルをつなげたフレーズです。八雲学園が、この海外のエスタブリッシュな私立学校連盟であるROUND SQUAREの加盟が認定されるのに2年間ほど審査を受けました。加盟の条件は、このIDEALSの理念をすべて教育の中で実践しているということです。ですから加盟をしてからやりますでは加盟できないのです。このことが意外と受験業界では知られていないことです。

★ですから、多くの学校の国際理解教育とかグローバル教育というのは、この6つの構成要素のうちの1つである<Internatinalism>という個別解の話で、IBの生みの親クルト・ハーンが私立学校にこの理念を託してつくったのがROUND SQUAREです。いわば、国連の教育の全体の指針を支える実践の場です。その経緯は、第二次世界大戦を二度と起こさないためにと、クルト・ハーン自身の壮絶な経験の中から生まれたものです。

★世界標準のグローバル教育は、この6つの要素の関係総体でできあがっていて、その一つの<Internationalism>の軸だけで行われるものは、世界標準とはいえないのです。このことは、日本から見ているとわかりにくいですね。やはり世界から眺望してみる機会と環境がふんだんにないとなかなか見えません。そして、それが英語の教員だけでが創っていくのではなく、教科横断的にすべての教員がその海外プログラムにかかわることによって見えてきます。八雲学園は長い間、いろいろな海外のプログラムにすべての教員がかかわってきたので、それがもともと見えていたということが、ROUND SQUARE加盟認定の決め手の大きな要素だったでしょう。

★今回は、この6つの要素が、絡み合いながらですが、八雲学園の日常の教育と4つの特徴的な教育にどう反映しているのかを菅原先生が語ってくださいました。かなり具体的に抽象的なコンセプトが体現されているトータルな話です。シン・グローバル教育、つまりこれは本当に新しいグローバル教育のコンセプトだし、真のグローバル教育だということがわかります。

★中1段階で、アルファベットから学ぶ生徒が、高3段階では、CEFR段階のB2,C1、英検でいえば準一級、一級に到達する生徒がどんどん増えています。国内の段階では、CEFR基準でB1でアドバンテージをとれますから、ここまではほぼ全員が到達するでしょう。

★八雲学園は、CEFR基準でC1を目指していますから、当然そうなりますが、それはIDEALSを実現するために必要なのです。なぜなら、CEFRはいわゆる4技能に「対話」の技能もいれているからです。ROUND SQUAREの国際会議では、バラザという対話がキーパフォーマンスですから、対話の高い能力が要求されるのです。

★「対話」は、IDEALSという6つの関係総体を生み出す時のキーコンピテンシーでもあるのです。

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2023年11月17日 (金)

駒沢学園女子 自分の存在の輝きを見出す 世界が感じる魅力

★本日、駒沢学園女子中学校・駒沢学園女子高等学校(以降「駒沢学園女子」)の校長土屋登美恵先生をお訪ねしました。かつては世田谷区の弦巻に位置していましたが、1989年現在地に移転しました。今や自然豊かなキャンパスです。世田谷学園と同じ曹洞宗のミッションスクールです。

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★ですから、世田谷学園の男子の壮観な座禅同様、駒沢学園女子でも女子の壮麗な座禅が行われています。座禅は、内省しながら自らを支えている存在の光に気づく人間の根源的局面に触れる内的な世界を生み出すはずです。

★自分が一人で生きているのではなく、あらゆるつながりに支えられていることに気づき、素直にありがたいという気持ちがわいてくるでしょう。この「有り難さ」に気づくことこそ、「有る」という自分の存在のかけがえのない価値にいきつく道なのでしょう。

★この多様なものへのつながりを感じた瞬間、創造的ななにかが生まれてきます。それゆえ、このような仏教的世界観をマインドフルネスとしてアレンジして大事に取り組んでいるのが、GAFAMなどシリコンバレーの会社です。起業家集団といったほうがよいかもしれません。

★もともとシリコンバレーに集結したのはヒッピーだといわれていますが、ヒッピーの愛読書の一冊に「荒野の狼」があります。ヘルマン・ヘッセの作品です。ヘルマン・ヘッセの作品には「ブッダ」というのがあるぐらいで、ヘッセの内面の道の精神性は、米国の若者の心をゆさぶったようです。

★そんな日本の文化遺伝子の一つ仏教の精神が、駒沢学園女子にはあります。土屋先生は、この日本文化のアイデンティティと外国の文化の比較スタディーを通して探究を深めていく英語で探究というプログラムを来年4月から設置するのだと語ります。

★同校の宗教は、宗教知識を学ぶというより、人間という内面の存在に気づくプロセスを学ぶのでしょう。

★内省とかリフレクションとか、デザイン思考やアート思考、そのほかのPBLの授業などでも扱われる大切な瞬間です。この瞬間は創造的な自分を見つめる時間でもあります。

★土屋先生は、教育にとって欠かせないのは、教師の人的資本の豊かさであると語ります。豊かな自然環境と内省的な時間と探究という深い学び、CEFR基準のB1を全員が取得する学びは、人的資本を輝かせる機会と環境です。

★駒沢学園女子の生徒のみなさんのそれぞれの成長が楽しみです。

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工学院の共感的コミュニケーション 哲学シンキングと響き合う

★昨日、工学院大学附属中高の教務主任田中歩先生とゆっくり対話ができました。田中先生は、工学院の教師の人的資本を豊かにするため、共感的コミュニケーションを教師と生徒の共通ホームベースにしています。講義型とPBL型の両方の授業で、本質的な基礎学力(実は文科省は、学力の3要素を基礎学力としているから、知識・技能のみならず思考力・判断力・表現力や主体的な学に取り組むアティチュードも基礎学力に含まれる。基礎学力を知識暗記というイメージは通俗的幻想にすぎない)を生徒が自ら組み立て行けるように仕掛けを教師と生徒と共にみんなで創っています。

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★そして、中野校長は、その機会と環境をサポートしているわけです。このことは、最近経済界とか金融市場で話題になっている「人的資本経営」と重なります。同校の専任は60名強だと思いますが、そのうち20名弱は20代から30代でしょう。この年代の教師の人的資本を豊かにすることも自分の使命だと歩先生は語ります。

★ですから、定期的に歩先生がファシリテートして研修も行っているということです。共感的コミュニケーション、PBL、思考コードなどシェアリングすることが目的でしょう。もちろん、学外の研修もあります。何せ外部のスタッフとコラボしながら国内外で行う生徒の学びのプログラムが多いので、そこで同時に教師は自己マスタリー出来てしまいます。

★話を聴いていておもしろいのは、自分が引っ張っていくというより、環境デザインをして、教師も生徒も自走していくモチベーションを生み出すアフォーダンス型のファシリテーションをしていることです。

★外から見ていると、それぞれに動いているように見えるので、20世紀型教育観、大学合格実績至上主義の方が見たら、自由過ぎるとか、みなが同じ標準的なスキルを活用していないと思われることもあります。

★私は、新しい学びや生徒1人ひとりの才能を自らそして協力し合いながら磨いていく愛情を持っているかどうか、リトマス試験紙だなと思うわけです。工学院をどのように多角的に見ることができるかどうかが、教育ジャーナリズムの未来を結構決めるインパクトがあると思うわけです。

★学びをデザインする方法論は多元論です。それぞれが活用し、互いにいいとこどりし、インテグレートしていく共感的コミュニケーション環境こそ、多様なグローバルリスクに接しながら生きている教師にも生徒にも役に立つはずだと歩先生は語ります。

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★そして、田中歩先生は、もともと英語科主任で、今のケンブリッジインターナショナルスクールやラウンドスクエアとの連携の基礎を創ってきました。おもしろいのは、これらの海外のカリキュラムやプログラムには、哲学があります。またIBのTOKなどの研修などでも学び、それもやはり文化人類学的で哲学的な要素があると感じていると。

★したがって、工学院の英語の授業の中には、イギリスベースの哲学的な授業があります。ですから、私が吉田幸司さんの哲学シンキングの話を以前したら、さっそく読んで、なるほどシンクロするところがあるなあと。

★そして、研修などで、このような考え方もメタ的な視点としてプロジェクトにできるかもと語っていました。

★つまり、人的資本の1つでもある「変化に対応できるサバイバル思考の可視化」ができると。それはまさに人的資本の経営の手法だなあと。

★今年もまだ具体的な発表はできないけれど、海外の大学進学はおそらく驚きますよと、その中には医学部もいくつかありますと。国内の大学も期待していてくださいと。生徒にとって自ら見出す未来の1つの足掛かりとして大学進学のサポートももちろんしているのが工学院なのです。

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2023年11月16日 (木)

最小限の教育施設で無限の人的資本を生み出す中高スマートスクールの時代

★孫泰蔵さんの書と吉田幸司さんの書を読めば、最小限の教育施設で無限の人的資本を生み出す中高スマートスクールができあがります。

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★要するにどこに限られた物質的資源を投入し人間の存在の可能性を開くかということが、気候変動や地政学的なグローカルリスクがある時代必要となるでしょう。自分で考え、判断し、行動するという当たり前の活力、協力し合えるマインドとスキルも、文科省の学習指導要領で語られている通りです。

★しかし、それがなかなかできない。個人は変われるけれど、組織はなかなか変わらない。それはなぜ?無駄な物質的資源が蓄積して、それを維持せざるをない経済循環になっているからです。

★ですから、学校経営を考える時、まず人的資本を最小限の物資的資源で豊かにするかからアイデアを出す必要があります。

★最小限の物資的資源についてすでに孫泰蔵さんは、回答しています。孫さんのビジョンをデフォルトにして、新しいアイデアを考えていけばよいと思います。そして、その考える作業、考えてアクションする作業については、吉田幸司さんが哲学シンキングとして可視化しています。

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★すでにいろいろな流儀でコンサルやファシリテートしてきた方々は、読むとピンと来ると思います。吉田さんは、哲学博士であると同時に哲学コンサルタントとして会社も経営し、企業や官庁、学校などにもかかわっていますから、実績も十分です。

★ただ、まだまだ学校経営者や管理職は、そこは従来型の外部コンサルタントや現場の教師に任せていますから、なかなかその発想が湧いてきません。

★まずは、学校経営も「人的資本経営」の重要性を認識し直すところからはじめると、最小限必要な物資的施設は何か、そこから発想を5つの目で見出すにはどうしたらよいか思考回路が動き始めると思う今日この頃です。

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2023年11月15日 (水)

高等学校DXハイスクール 令和5年度補正予算額100億

★<全国1000校超「DXハイスクール」に デジタル教育拠点>(日本経済新聞2023年10月26日)という記事がでて、今月になって数日前に閣議決定されたようです。すでに文科省は、昨年GIGAスクール構想の一環としてDXリーディングスクール事業を実施しています。東京都は都立高校に対しDXリーディング指定校を認定して事業を展開しています。

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★小中学校は、昨年段階で90%強は、一人一台体制になったということですから、いよいよ高校も加速させようということでしょう。日経によると、大学における理工系学部の増設などデジタル分野の高度人材を育成する流れに高校がうまく接続するようにという意図がありそうです。

★DXというワードがトレンドだからGIGAではなく、DXになったのでしょうが、実はGIGA」は「Global and Innovation Gateway for All(全ての児童・生徒のための世界につながる革新的な扉)」の略です。どうやらDXはたしかにWEBにつながればグローバルな世界につながりますから、あえてグローバルというコトを取り上げる必要はないのかもしれません。

★しかし、ちょっともったいないような気がします。グローバルとイノベーションの合力がどのように設計されているのか、あるいは設計するのか、哲学シンキングする必要がありそうですが、ともあれ1000校に1000万の補助金がでるのですから、それは各学校が考えればよいのかもしれません。要するにDXハイスクールは、むしろ物質的なDX環境に特化していると明快にし、その背景のGIGAのコンセプトがはっきりすればなあと。

★タックスペイヤーとしては、そこのところがなんとかなってほしいなあと。少なくともたとえば、こんな感じで生成AIに尋ねてみて、でてきた回答に対し、GIGA構想はどれくらい対応しているのか、対応しない場合どう脱構築するのかなど哲学シンキングしてもらえる委員会があるといいですね。bingに問うてみました。

 「グローバルマインドとイノベーティブな発想の合力はどんな感じですか?」


グローバルマインドとイノベーティブな発想が合わさると、非常に強力な結果を生むことができます。グローバルマインドは、異なる文化、価値観、視点を理解し、それらを尊重する能力を指します。一方、イノベーティブな発想は、新しいアイデアや解決策を生み出す能力を指します。これら二つが組み合わさると、以下のような効果が期待できます:

多様性の活用:異なる背景や視点からのアイデアを受け入れ、それを新たな解決策に結びつけることができます。
創造性の向上:異なる文化や視点から刺激を受け、新たなアイデアを生み出すことができます。
問題解決能力の強化:グローバルな視野を持つことで、地域や国を超えた問題解決が可能になります。
したがって、グローバルマインドとイノベーティブな発想は、個々の強みを最大限に活用し、より広範で効果的な解決策を生み出すための重要な要素と言えます。これらのスキルを持つ人々は、ビジネス、科学、芸術など、あらゆる分野で価値を創造することができます。

「哲学シンキングはどんなかかわりを持ちますか?」


哲学的思考は、我々が世界を理解し、問題を解決する方法に深い影響を与えます。哲学的思考は、以下のような特性を持つことが一般的です:

批判的思考:哲学的思考は、情報を分析し、論理的な結論を導き出す能力を強化します。これは、事実と意見を区別し、偏見や誤解を排除するのに役立ちます。

問いの探求:哲学的思考は、深い問いを立て、それに対する答えを探求することを奨励します。これは、新たな視点や理解を開くのに役立ちます。

倫理的判断:哲学的思考は、倫理的な問題に対する洞察力を深め、より良い道徳的判断を下すのに役立ちます。

これらの要素は、グローバルマインドやイノベーティブな発想と組み合わせることで、より深い理解と洞察を得るのに役立ちます。例えば、哲学的思考は、異なる文化や価値観を理解し、それらを尊重するグローバルマインドを深めるのに役立つかもしれません。また、哲学的思考は、新しいアイデアや解決策を生み出すイノベーティブな発想を刺激するかもしれません。

したがって、哲学的思考は、我々が世界を理解し、問題を解決するための重要なツールとなります。これらのスキルを持つ人々は、ビジネス、科学、芸術など、あらゆる分野で価値を創造することができます。

★もしGIGAスクール構想が、bingが回答した点をすべて網羅しているのであれば、たしかに日本の教育は変わるし、未来をつくる子供たちの成長に希望があるでしょう。

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哲学シンキングの希望

★長い間生きていると、いろいろな方々とネットワークができます。そのネットワークの中でもいくつかのグループはそれぞれ独立しているのですが、私の中では比較的強く(相手はそうは思っていないかもしれませんが・・・汗)つながっています。もしこれらのグループがつながれば、大げさに言えば人類の希望の光が生み出されるなあとずっとモヤモヤしていたわけです。

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(オレンジは、基本書やセミナーなどで習得したスキルを組み替えて活用している。黄色は、原典から紐解いて独自のアイデアを生み出している。)

★そんなとき、「哲学思考」という吉田幸司さんによる新刊に出遭いました。ずっと以前に購入していた「哲学シンキング」を読んだ時は、多様な思考の型の1つとしてリスペクトしていましたが、あえて「哲学思考」とタイトルがつけられているので、なにゆえ?と思い、吉田さんの出版記念セミナーに参加させていただきました。そこで哲学シンキングのWS型セッションを体験できたわけです。

★そこで、確信!が降りてきました。私の知り合いのグループ(濃い絆もあるし数度対話した程度のものもありますが)は、互いにまだ結びついていませんし、これからも融合や統合はないかもしれませんが、「哲学シンキング」の世界にダイブすることはできる方々です。

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★ダイブしたり、掘ったりしながら、内的メッシュワークができればまずはそれが第一段階だなと思うわけです。

★今学校の現場では、教育課程に余白がないために、教科授業と探究の接点をみつけると、そこに余白ができるなあとか、そもそもどうつなげるのか、教科横断型的発想とは何かなど日本全国の先生方がモヤモヤしているわけです。

そこを突破するのは、「哲学シンキング」なのだと。本を媒介に内的メッシュワークでつながり、次の段階で顕在化したメッシュワークに転換していくということになるでしょう。

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2023年11月13日 (月)

哲学シンキング 多様な思考様式のメタコンセプト やっと出会えた

★11/12(日)渋谷スペースで、<出版記念セミナー『 本質を突き詰め、考え抜く 哲学思考 』著者から学べる!体験できる!質問できる!哲学シンキング>がありました。定員10名のところ15人くらい集まっていたでしょうか。著書の吉田幸司さん(クロス・フィロソフィーズ株式会社代表取締役社長。博士(哲学)。哲学シンキング研究所センター長、上智大学非常勤講師、『BIZPHILO』編集長、日本ホワイトヘッド・プロセス学会理事)によるファシリテートで、ミニ講義と対話(サークルになって)を楽しみました。

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★3時間の予定が30分延びるほど、みなで「面白い」を哲学シンキング対話をして時間を忘れました。吉田さんは、簡潔に講義をしたり、フィードバックをしたり、しかも絶妙に「面白い」のは、自分の考えを熱く語るのではなく、普遍的な本質的な世界を形成して、そこでみなが自由に話しているうちに、その普遍的な世界に結びつく知の時空が広がっていくのです。

★いろいろな思考の流儀をもった方も参加していたのですが、どの流儀に偏ることもなく、それぞれの流儀の得意なところがうまく生きるようにファシリテートしていきます。参加した人にとっても、著書にも、多様な思考の流儀や方法を補完する役割が哲学シンキングだということになっていましたが、私が感じた哲学シンキングは、根源的な世界に、それぞれの思考方法が生きるように結びつける、ですから要素還元主義的なネットワークではなく、関係総体主義的なメッシュワークがそこに広がているのを感じました。そのメッシュワークそのものの広がりが哲学シンキング世界かなと。

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★おそらく吉田さんの中では、すでにそういう位置づけなのだと思いますが、哲学コンサルタントですから、そこはまずはみなの理解をそのままにして、やがて哲学シンキングが深まれば、各人の中で転換するだろうという哲学シンキング成長論なのかなと勝手に感じています。

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★それぞれの流儀は、専門家に依存することがあって、それについていくのには、ある程度いわゆる基礎学力が必要なのですが、哲学シンキングはファシリテーターは吉田さんのような専門家ですが、だれでもが参加できる普遍性があります。

★哲学対話もそうなのですが、それは哲学シンキングの一部の領域でした。

★ようやく普遍的な時空に結びつく道に出遭えました。教育の中にどのように結びつけるか、これから私の新たなプロジェクトとどう結びつけるかワクワクしています。

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2023年11月12日 (日)

上田信行先生 学びはロックンロール

★全国私学教育研究集会香川大会の2日目は、各部会に分かれて研修会が開催されました。私は、教育課程部会に少し参加しました。上田信行先生(同志社女子大学名誉教授・ネオミュージアム館長)が基調講演を行い、3人の先生方が実践発表やワークショップを行いました。実践発表は、これからの授業のビジョンをすでに先進的に実践している貴重なものでした。そして、上田先生のミニワークショップ型講演は、その3人の先生方のような教師がたくさん誕生するための学びはロックンロールだをテーマに、ワクワクとドップリ、非真面目と真面目、遊びと学びなどを往還して統合できるプログラムデザインをする大前提のマインドとスキルをワークショップをしながら展開していきました。

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★いつまでも若々しい上田先生の高速回転としっとりた余白のバランスのあるワークショップは、私たちの善きお手本です。

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★この部会をサポートしながら上田先生にいつも学び、自らもワークショップのファシリテーターを行っている一般財団法人日本私学教育研究所の伊東竜さんもかいがいしくそしてダイナミックに動いていました。

★東京の私立学校の先生方が企画運営する年間80本くらいの研修をサポートしている東京私学教育研究所のメンバーも参加し、研修のアップデートのヒントを探索していました。

★全国の私学の先生方(定員500名を超えました)が香川に集まり、こうして自己マスタリーの研鑽を積みながら、各学校の「学習する組織」を創っているのです。日本の教育の未来は明るいと感じ入りました。

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2023年11月10日 (金)

吉田会長 平方所長 未来に向けてラディカルなプラン報告

★松尾豊教授のキーノートスピーチの後は、日本私立中学高等学校連合会会長吉田晋先生と一般財団法人日本私学教育研究所所長の平方邦行先生から私立学校をとりまく国の教育行政と自治体の教育行政の動向、様々な壁を乗り越える教育現場の授業の新たな挑戦の実態の報告がなされました。いずれもラディカルなビジョンとコンテンツとスキルの話でした。

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★吉田会長は、日本全体と各地域の人口動態と経済動向と私学の経営の危機とチャンスについて膨大なデータを通して明快に論じていました。人口動態と経済危機はカップリングされていて、それを乗り越えるには、グローバルな世界との連携こそが重要で、教育においては「外国人日本人」を受け入れ育成することであると。そのために、英語と日本語の両方を学校の中で学べる状況を創ることが重要で、そのために私立学校はもちろん挑戦するが、公立もそうなるように法整備をするように文科省と対話をしているというその経緯を大胆に話されていました。

★それは夢物語ではなく、実際吉田会長のご自身の学校である富士見丘は実践済みであると。大学進学実績も入学者も右肩上がりの効果が上がってもいます。特にC1英語の取得率は高3卒業生の2割はいます。そのため国内外の視野の広い大学進路を生徒は見定めます。大胆な政策であると同時に現場の実態を知っている吉田会長ならではの政策案です。ALTの導入など、吉田先生の文科省や都に対する働きかけが、実現し、自分の学校だけではなく、全国の私学のために国や自治体を動かすそのエネルギーは凄まじいと改めて感じ入りました。

★また今後閣議決定でどうなるかわかりませんが、新しい提案も投げかけているという実にすばらしいプランにも言及。詳しくはもちろん話せないのでしょうが、実に日本の未来に勇気がでる私学人吉田会長の教育出動です。

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★平方所長は、教育基本法にある高等学校における創造性の育成についてもはや待ったなしであることを生成AIの教育現場での未来の使われ方を紹介しながら論じていました。部活や行事における創造性育成はあるが、大切なのは、授業の中における創造性なのだと。

★すでに松尾教授が、そのような能力と教科授業の相関はないことを大胆に証明していたので、平方先生の話は、ますます説得力がありました。

★松尾教授も、AIは既存のものを組み合わせる創造性は発揮できるが、真の創造ともいうべき能力はまだないと語っていました。平方先生はだからこそその真のクリエイティビティを生み出す場として授業を私立学校は生み出してこうと。未来はクリエイティブクラスのグローバルリーダーにかかっているのだから。

★教育の現場における授業という身近なところから未来を変えるビジョンを高らかに謳っていました。平方先生自身、聖学院で校務部長、工学院で校長を経験し、そのような学校づくりをしてきました。すでに実現済みなのです。

★先ほど、平方先生とは、そのような真のクリエイティビティを生み出す授業を生成AIを相棒にしながら支援していくプロジェクトを実験的に始め、再来年以降組織として旅立てるようにプランしようと意気投合しました。すでにその片鱗は「しゅとも12月号」で発表しますので、お楽しみに。

★まずは、平方所長(日本だけではなく東京の所長でもある)からも承諾をいただいたので、東京私学教育研究所の副所長の私と仲間たちで、来年からその実験を本格的に始めていきます。乞うご期待。

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松尾豊教授 教育課程でこれからの人材の能力は育つのか相関を生成AIで示す あまりに衝撃的な

★全国私学教育研究集会香川大会の1日目が昨日開催。キーノートスピーチは、東京大学の松尾豊教授。今や超過密スケージュールで活躍している先生ですが、香川県出身で次世代才能児育成のエコシステムも創っています。そのため、全国私立学校にもその門戸を開くことができるという思いもあり、ご登壇されたのでしょう。いくつも衝撃が走り、やはり生のトークは感動的でした。

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★ChatGPT4のパラメーターは1兆個ほどあるというわけです。入力と出力の間のニューラルネットワークなどの計算式変数のことだと思います。その重みづけの数の多さに、そんな多角的な視点でテキストや画像を生成してくるのかと思うと、しかも瞬時にです。かなわないなあと思ってはいましたが、しみじみ。

★しかし、人間の脳のパラメーターは生成AIどころではないのだと。エッー!小論文で思考する時、たしかに根拠と論拠と背景と反駁根拠と反駁論拠くらいまでは重みづけするけれど、1兆もの視点では考えない。人間はどうやら、ロジカルというけれど、相当直感的にパラメーターを選択してというかデフォルトモードで思考しているのだなと。だからこそフェイクとアイデンティティ、つまり真偽の間を埋めるには、ああでもないこうでもないと喧々諤々とか熟議とか。所詮はあたりを付けて主張し合っているということなのかと。

★CPU獲得競争がおきているのは、そりゃあそれだけのパラメーターで変換を瞬時に行っていくには容量が莫大だろうなあと。人間も考えすぎると知恵熱がでるなんて言われるのと同じで、いよいよAIサイボーグの時代かあと。

★そんな熟議の人間の速度なんて遅いものだから、テスラを例にとって、アップデートの速度をあげることで、利益率を上げなくても指数関数的に増えていくのだと。複利方程式のrではなくtに注目すべきだというのです。

★それだけで、変化の時間が長い学校教育ではテスラを生み出すような人材は無理だろうと思っていると、松尾研の人材育成エコシステムに参加している中高生から、そんな人材が生まれている例やスタートアップでどんどん成功するのはなぜかまで情報提供。オオイ!わたしたち学校はどうする?

★と途方に暮れるま間も与えられず、教育課程の各教科では起業家精神とか変化する側に立つ能力などが育たないという生成AIによるデータを魅せられいやいや見せられてこれまた衝撃。

★PDCAをゆっくり回している場合ではないんですね(汗)。そんなカリキュラムマネジメントを推奨する文科省は、松尾豊先生の話にもっと耳を傾けたほうが。いやすでに傾聴してことを進めているでしょう。だから、ここのところ予想している2030年前後に行われる新学習指導要領の改訂座標は結構イケルじゃんと衝撃をうけました。所詮独断と偏見の予想ですが、松尾先生もabduction能力大事ですよこれこれからの人材にはと言ってますし。

★めちゃくちゃ具体的かつミクロの高度人材の育成過程が、実はダイナミズムを生み出す知の量子力学みたいなキーノートスピーチ。イサムノグチのゆかりの地香川で満喫できました。名刺交換もできたし(微笑)。開催した委員の先生方、日本私学教育研究所の皆様ありがとうございました。

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2023年11月 9日 (木)

成城学園 文化人類学的体験を通して哲学する

★前回は、C1英語の学びは日本の教育を変えるレバレッジポイントになると話しました。なぜなら、無意識のうちに英米の哲学的シンキングが身につくからです。東大の松尾豊教授や千葉工大の伊藤穰一学長のように、AIも人間も多言語であれば能力の精度は上がるのだと語るのも、メタ哲学とかメタ思考が互いに相互補完するからです。実はこのメタ思考の相互補完が大事であれば、C1英語に限らずいろいろあるのです。

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 GLICC Weekly EDU 第146回「成城学園中高 つながる体験学習ー自然体験、海外体験の意味」

★たとえば、成城学園の教育が格好の例です。相互補完する教育プログラムが多すぎて、最近GWE(GLICC Weekly EDU)で、同校の青柳先生のお話は、一つのテーマを深堀するのがルーチンになってきました。説明会では概要の話にならざるを得ないのでしょうが、動画では1つのテーマを深堀することができます。

★最近では、成城学園の6年間通しての体験プログラムのデザインについてお聴きできました。すると、なるほどこれは文化人類学的な体験だなと感心してしまいました。ロジカルシンキングはもちろん大切だし、ふだんから成城学園は実施しています。

★しかし、そのような「科学的思考」ではとらえきれない、レヴィ・ストロースが見出した「野生の思考」を体験の中で開発していくのだということがわかりました。「野生の思考」とは最近のフレーズでいえば「非認知能力の思考」ということでしょう。

★レヴィ・ストロースは、「科学的思考」と「野生の思考」のバランスを考えていたと思います。まさに両思考様式の相互補完ですね。

★実は、別のGWEの回では、青柳先生は、国語の授業の中でトウールミンモデルを活用しているとお話しくださったことがあります。京大の松下佳代教授も「探究」の中で、推奨している手法ですね。松下教授の中でも「探究文化」と「受験文化」の相互補完の話が出てくると思いますが、要は相互補完ですね。それがあるから一つの方向性に固執しない「訂正する力」が東浩紀さんではないですが作動するのでしょう。

★それはともあれ、トゥールミンモデルも、イギリスの分析哲学者トウールミンの開発したモデルです。まさに哲学シンキングそのものなのです。

★ですからC1英語ではなくても、青柳先生のようなC1日本語をトレーニングする授業があれば、メタ哲学が作動して、体験とメタ哲学が相互補完し合うわけです。このC1日本語をもってして、生徒が他教科を学ぶと自己組織化された教科横断が生徒の内面で作動するのです。

★おそらくそのような生徒は多言語に関心を持つでしょう。大正自由教育から今もその燈を燃やし続けている成城学園の日本の教育における歴史的意義はこういうめちゃくちゃ具体的状況に生きているのです。この具体的状況という生の中に浸って教育を創り続けている教師の存在。これこそ、具体的生の中で、教師や生徒という仲間と共に生を創り上げる文化人類学的所業であり、そしてその中で哲学する姿です。今、シリコンバレーで文化人理学的なアクションとその中で思考する哲学シンキングが重要だとされていますが、成城学園はすでに大正時代から行っていたのです。

★なんといっても、100年前に生まれた文化人類学は、デューイと相互補完関係にあったのですから当然です。

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開成学園は変わるけれど変わらない 日本経済新聞記事から➂英語がではなくC1英語が日本の教育を大きく変えるレバレッジポイント

「開成学園は変わるけれど変わらない 日本経済新聞記事から②東大進学数で評価する時代は終わる?」の続き

★同記事の中で、インタビュアーは、「海外トップ大が求める高い英語力をどう鍛えるかが課題だ。」と質問しています。開成の野水校長は次のように回答しています。

「英語検定試験のTOEFL(iBT)で90台後半から100の高得点が必要だ。私の頃はネーティブの英語の先生はいなかったが今は専任2人、非常勤6人がいて高3の1割の40人程度が100点に達する。近い将来、40人近くが海外大に行ってもおかしくない」

★ある意味驚くべきことで、同時にこの方向性は日本の教育を大きく変えます。TOEFL(iBT)のこのスコアは、CEFR基準でC1です。英検でいうと1級、IELTSでいうと8ぐらい(9点満点)でしょうか。いずれにしてももの凄いレベルです。しかし、何がものすごいのでしょう。

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★ご承知の通り、国内大学入試での英語のアドバンテージは、B1です。つまり英検2級です。たとえば、富士見丘は高3の段階で、ほぼ全員が2級以上です。20%は英検準1級以上です。ですから、大学進学の実績が目覚ましく、受験雑誌などで中学入学時の偏差値に比較して伸び率№1という位置づけになっています。同校のネイティブスピーカーの教師の数は、開成の30%弱の高3生数で、開成以上の多さです。東大こそでていませんが、海外トップ大学にはたくさん進学しています。実は開成と富士見丘の教育力は互角なのです。

★何を本間は言っているのだと思うかもしれません。CEFRというのは、ベルリンの壁崩壊後、東欧からどっと押し寄せてきた市民のための言語教育を西ヨーロッパがどのように体制作りをするのか取り組んだときの言語能力の基準なのです。欧州評議会で作成されました。

★欧州評議会はストラスブールにあり、その背後にはEU議会があるEUの政治体制を組み立てる拠点です。EUの経済拠点はフランクフルトにあります。たしかにベルギーなどに本部のような機能はあるのですが、フランスとドイツが中心というのはあまりよろしくないので、そこは考慮されたのでしょう。イギリスは明らかにおもしろくなかったでしょうね(汗)。

★でも、このCEFRに関しては、IELTSの本場イギリスは大いに関与したでしょう。TOEFLや英検を作成する組織が中心だったわけではないと思います。いずれにしても、欧州評議会の大きな目的は世界の民主主義の根幹である人権を保守する拠点です。

★エッ!?なぜそこでCEFR?と思われるかもしれません。人権の歴史的出発点は、ディスカッションの自由を守ることです。表現の自由と訳されていますが、それはともかく言語の問題がとても大事なのです。

★欧米は、極端かもしれませんが言語=思考ですから、CEFR基準は言語能力だけではなく思考力の基準でもあるのです。ある意味目に見えない部分を汲み取れない可能性があり、そこは?と思うかもしれませんが、最近EQとか非認知能力とか認知心理学や文化人類学、脳科学で論じられていて、その点も織り込み済みです。

★このCEFRの作成の背景にある流れは、すでにIBのTOKにあります。IBもCEFRも中心的な役割を果たしているのはオックスブリッジです。欧州で思考というとそれは哲学思考です。日本だと哲学は人生論とか思想とかのイメージが濃厚で避けられがちですが、CEFRやIBのTOKは、どちらかというと英米の分析哲学です。基本に数学があります。

★わかりやすいのは、ヴィトゲンシュタインの「哲学探究(Philosophical Invetigations)」のような思考様式だと思います。文科省が「探究」といったとき、ヴィトゲンシュタインを思い浮かべていると思います。もちろん彼ばかりでなく、ラッセルやホワイトヘッド、ポパーなどもそうです。今の官僚で東大出身者は、東大の法哲学の影響を受けていますが、当時の法哲学は、分析哲学で、ハートやポパーがよく読まれていました。そのときの助手の皆さんは、東大、一橋、慶應などの教授になり、分析哲学からロールズやハイエクなど分派していきましたが、英米系の哲学が広がっています。

★こどものための哲学が立教大学の河野先生からも広がっています。NHKでも番組として成立しています。現象学や分析哲学の流れだと思います。河野先生はいろいろな哲学を独自にインテグレートしていると思いますが。

★そんな流れはともかく、C1英語とかTOKというのは、そういう学びの場なのです。ですから、C1英語を学ぶ環境は、たんに英語を学ぶ環境ではなく、意識をしなくてもPhilosophical Investigatinsのメソッドを学んでしまうのです。ヴィトゲンシュタインの「哲学探究」は、ヴィトゲンシュタインが「哲学論考」を書いて、完璧だ!と思い込み、いったん哲学界を去るのですが、紆余曲折、人間とは何かという、今でいう文化人類学的な人生のフィールドワークをして、バッサリ考え方を転向して「哲学探究」を書いたという話は有名ですね。

★新刊「訂正する力」を書いた東浩紀さんも、ヴィトゲンシュタインの自分の哲学を「脱構築」したと評価していることでしょう。

★この「哲学探究」はメタ哲学ともよばれるゆえんですね。イギリスの大学入学前のファンデーションで必ず学ぶ「クリティカルシンキング」が明らかに、この流れです。ですから、日本人が嫌いな「批判的」という意味とはだいぶ違います。

★文科省が、「探究」という科目を設定したのは、このような流れを汲みとっているからですが、現場の先生方にこのようなそれこそInvestigationsの学びのプロセスを設定してこなかったのに、「探究」と「主体的・対話的な深い学び」「カリキュラム・マネージメント」というフレーズだけで改革しようというのはさすがに難しいですね。

★ところが、C1英語を学ぶ環境をデザインすると、Invetigationsが無意識のうちにできるし、結果的メタ認知するように生徒はなってしまうのです。

東京私学教育研究所の実施している研修の1つ<文系教科研究会(外国語)「研修会」 ~ Chat GPTなどを活用した英語の授業づくり ~」>では、Roy J. Lee先生にも数々アプリやAIを学びのツールとして活用している実践授業例を私学の先生方と共有しました。偏差値神話を払拭することに結果的になる日本の教育改革というか教育アップデートは、このような現場でグローバルな視野で動くアクションこそが必要ですね。

★今後の開成の動きに期待したいです。実は開成の国語の授業では、哲学対話も実験的に行われれいると聞き及びます。CEFRは英語のみならず、すべての言語の世界共通基準です。国語で哲学対話的なことができるということは、開成の国語の日本語はC1レベル以上ということです。

★もし、国語や社会の教師が哲学対話なんてと思っているとしたら、日本人であっても、その教師の日本語レベルがC1に達していないということを示唆してしまいます。ご注意あれ。

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2023年11月 8日 (水)

工学院大学附属中高 世の偏差値神話を無化してしまう教育

★前回まで開成の話をしていました。その中でもはや東大進学数で高校を評価する時代ではないのだという同校の野水校長の言葉を紹介しました。すでに同校の高校3年生の1割はCEFRでいうC1レベルに達しているのですから、海外トップ大学に進む力を持っているのだから、そこをもっと評価しなくてはということでした。

★つまり、国内外の大学をふくめて進学実績をみてみようと。となると、海外トップ大学は、日本国内の偏差値などは何の役にも立たないわけですから、世の偏差値神話は崩れてしまいます。たとえば、工学院大学附属中高などは格好の例です。

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(工学院は、スペイン南部、アンダルシア地方のコルドバにあるメディナ・アザハラ高校と協働プロジェクトを行っています。この協働プロジェクトは、両校の高校生が、約400年前に日本からスペインに渡った慶長使節団の軌跡を辿り、両国の歴史と友好を考えるものです。当時日本人を受け入れたセビリア貴族の子孫、マルティネス・デ・イルホ伯爵ともコミュニケーションをとっています。写真は同校サイトから)

★というのは、中学の定員は105名です。中3になると主にインターコースの生徒ですが、その段階で15人くらいはC1レベルに達っします。15%弱です。高校からは、どっと定員が広がりますが、高3卒業時には、20%弱はC1レベルに達します。

★それでなければ、ケンブリッジインターナショナルスクールやラウンドスクエアと連携できないのです。

★開成同様、海外トップ校進学可能性大の環境が出来上がっています。東大にどんと入るわけではないので、開成と比べればそんなに注目されていませんが、もし海外大学進学指導という面からみたならば、開成と互角ということになる可能性がでてきたわけです。いずれにしても、世の中の偏差値神話は、もはや工学院の生徒は誰も信じていません。そんなクビキから解放されて実にはつらつとラウンドスクエア加盟校の海外の生徒たちと交流する日々なのです!

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開成学園は変わるけれど変わらない 日本経済新聞記事から②東大進学数で評価する時代は終わる?

(前回の続き)
★インタビュアーは「今年、英ケンブリッジ大に進んだ卒業生が取材に「国内外の大学全部を視野に入れて選んだ」と話していたのが印象的だった」と感じたようですが、これは開成全体でそのような雰囲気になっているのでしょう。この10年間コンスタントにケンブリッジ級の海外大学に進学しているし、そのアプリケーションの数はかなり多いですね。

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(2019年2月1日の開成入試風景。首都圏模試から)

★そのインタビュアーの「東大に限らず、海外大に進む生徒が増えたと聞く。海外進学支援に力を入れているのか。」という質問に、野水勉校長はこう語ります。

「2011年ごろから希望者に海外トップ大への進学も支援している。多様な人々との間でコミュニケーションする能力、協働しけん引できるリーダーシップが身につくからだ。23年の卒業生は準備を始める高1の時に新型コロナウイルス禍に見舞われたため2人と少ないが、17〜22年は年5〜10人が進んだ」

★たしかに、先述したように、パンデミックの時期を除いて、高3の3%くらいが海外大学に進学する状況にここ10年なってきています。しかも世界大学ランキングは東大を凌ぎます。ランキングで凌ぐというより、優れた論文の量や豊かな多様性などハイクオリティであることが凄まじすぎて実際にスタンフォーフォドとかハーバードとかMITに行ってみると驚きます。

★教授陣のコミュニケーションが実に共感的です。知的です。知性に対し、感性に対し実にリスペクトがあります。もちろん、専門的なレベルでの議論はなかなか凄まじいようです。そこには私は当然参加していないので、経験者に聞いただけですが。

★東大ももちろんレベルは高いのですが、学生全員が英語で議論するわけではないでしょう。教授陣もオープンな感じの方はどちらかというと決して多くはないかもしれません。

★名古屋大で教授をしていた野水校長は、大学の国際化に大貢献しています。動画で拝見するとその対話の雰囲気が実に共感的で威圧感がないですね。むしろ謙虚で、それでいて知性と感性の卓抜した雰囲気を感じさせます。驚嘆です。国際的なアカデミズムとはこういう感じなのですね。

★現在の開成の生徒の海外大学志向の状況について、野水校長はこう語ります。「欧米の優秀な高校生は自国にとどまらず世界のトップ大学にどんどん進む。日本の生徒はまだ世界を見ずに大学を決める傾向が強い」しかし、開成は「米有名大の夏季プログラムなどに自主参加する生徒は毎年50人ほどおり、授業や試験と重なっても欠席扱いにしない配慮をする。それらは費用もかかり誰もが参加できるわけではない。まだ私案だが米英などの高校と1カ月程度の交換留学を始めたい」と。

★さらりと、欠席扱いしないと語りますが、この決断は、現状の多くの校長にとって簡単ではないのです。そこがさらりと受け入れられるというのは、開成の学内にグローバルなビジョンベクトルの合意形成がなされているということを示唆します。

★それにしても野水校長の次の言葉はインパクトがあります。「結果として東大進学者数が2位になってもいい。海外トップ大の進学者数と合わせて見てもらえばよい」と。水野校長自身、合格数でみたらトップだが、卒業生に対する合格率でみるとそうではないのだからと。それより海外トップ大学の進学者数と合わせて見て欲しいと。

★毎年出版される週刊誌の大学合格者数高校ランキングに、海外トップ大学の数はカウントされていません。そこはそろそろ見直した方がよいかもしれません。野水校長はこうも語ります。「東大進学者数で高校を評価する文化がいつまでも続かないこともありうる」と。

★また、「英語検定試験のTOEFL(iBT)で90台後半から100の高得点が必要だ。私の頃はネーティブの英語の先生はいなかったが今は専任2人、非常勤6人がいて高3の1割の40人程度が100点に達する。近い将来、40人近くが海外大に行ってもおかしくない」とまで言い切っています。これは、40人、つまり同校高3生の10%は、海外トップ校に行くということでしょう。東大40人進学するのと、海外トップ大学40人進学するのとでは、その総合的な実力はどちらが凄まじいか、推して知るべしですね。

★そして、このことは東大進学者数で高校を評価する時代の終焉がすぐそこまで来ていることを明快に示唆しています。東大50人以上進学させる学校は全国で50校もないでしょう。10人進学するとその学校はすごいという評判になります。

★さて、最近学校の偏差値にかかわらず、その学校の生徒のみなさんが海外トップ大学にたくさん進む私立学校が増えてきています。10年後には、そのような私立学校は増え、10人は海外トップ大学に進学するようになるでしょう。そのときもはや東大進学数が絶対基準ではなくなります。

★もちろん、経済低迷の10年が続くでしょうから、行きたいからと言ってもなかなかいけません。しかし、だからこそかつてアジアの国々の富裕層が海外大学に子どもたちを留学させてように、いまもしていますが、日本もそうなっていくでしょう。

★それは将来の経済状況を考えれば、そして世界の歴史を振り返れば当然の動きです。そして、そのことがやがて日本の経済を再生するグローバルリーダーとして活躍する日本の智慧者が出現するのです。

★もっとも、そのときに日本の国さえよければよいという政治経済システムはなくなっているでしょうが。

 

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2023年11月 7日 (火)

開成学園は変わるけれど変わらない 日本経済新聞記事から①東大進学の意味は変わる

★日本経済新聞(2023年10月28日)に開成学園の野水勉校長のインタビュー記事<さらば「東大一直線」 開成、1割は海外トップ大学視野>が興味深いですね。

★「草創期は東大に入るための予備校で、今も100人超が入る。東大生輩出は開成の使命か。」というインタビュアーの質問に対し、野水校長は「初代校長の高橋是清(後に首相)は学校の名を高めるためにそうしたが、私たちが特定の大学を勧めることは一切ない。合格者数がトップなのは定員が高校で1学年400人と多いからだ。東大生に先輩が多い影響で固まる面はある」と回答しています。

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(写真は東大のサイトから)

★まず高橋是清翁の話題を出したのが興味深いですね。近代日本をつくり官学的発想から民主主義的な市民社会経済へ移行させようとしていた大蔵大臣や総理大臣も経験した高橋是清翁です。二・二六事件で倒れますが、彼の財政政策は開成出身者の岸田総理はどう思っているのかなと。それはともかく、確かに高橋是清翁は、東大にたくさん入れることを目的としましたが、それは近代日本をつくる正しく貢献する官僚をつくるためでもあったと聞き及んでいます。

★あらゆる組織は事務能力が十全であると力を発揮します。官僚とは国家組織の事務を支えていく屋台骨です。メディアに光を浴びるのは、政府や議員です。しかし、官僚という事務局がしっかりしていないと国は回らないのです。DX化は必要です。AI化は必要です。しかし、事務方はなくならないのです。むしろ政治家は、AIが判断してくれることに従うかもしれませんね。あらゆるものは目に見えない部分のシステム機能が重要です。

★しかし、一方で、そのシステムを担う人の数は確かに減るでしょう。東大生が官僚にならなくなり、金融業界で起業したりしているのは、そこが国際社会を動かくしていく事務局になるからだと思っているからでしょう。もちろん無意識でしょうが。高橋是清翁の想いは今も続いているのではと思います。社会貢献する人材育成をという。

★明治期から昭和にかけての近代国家と今の国家のシステムや意味はやはり相当変わってきています。岸田総理を昔の国家観に比べて批判してもしかたがないかもしれませんね。

★哲学者の東浩紀さんの新刊「訂正する力」からすれば、頑固だけれど変容しているところは変容しているのかもしれません。もっとも東さんは岸田さんのことを評価しているとは限りませんが。

★いずれにしても、社会が変わっているとか予測不能だと言っているわりには、国家観や国家のシステム機能の変化について語る教育改革者は少ないのですが、野水校長は大上段には構えませんが、開成から東大一直線というコンセプトが変わりつつあることは、東大も、国も変わりつつあることを示唆しています。

★塾に対しても同じです。東大に入るのは塾歴社会を推進しているあの塾に通う生徒が多いためではと尋ねられると、野水校長は塾の貢献は限定的だとばっさり。塾に通っても、大学受験対策に意味をそれほど感じなくなり、大学に入ったあとも生/活きる勉強をたくましするようになるものだと。理科や社会の大学並みの授業の例を論拠に持ち出したりもしています。

★開成の夏期講習と塾の講習は、在校生にはどちらを選択するか話題になるはずです。同校は理系が多いけれど、東大受験のために地理をとる生徒も多いのですが、東大の地理は人文地理的ではなく自然科学的な地理だったり地政学的な地理なので、そこを拡大する開成の授業はたしかに好奇心旺盛になるでしょう。

★インタビュアーは、中学受験は塾でやらされる勉強に慣れてしまっているのではと、少し塾に対して失礼なアンコンシャスバイアスを持っているようですが、これに対しても野水校長は、開成の入試問題を見れば、そんなニンジンぶら下げ型モチベーションでは解決できない思考型問題が作成されているということを語っています。塾は4年生からでいいのではとも(笑)。

★東大一直線、やらされ感満載の中学受験という先入観を静かにばっさり覆しているのがいい感じです。そして覆すことができるのは、社会貢献する人材づくり教育という学校の理念は変わっていないからです。社会貢献の方法は、時代と共に変わるのは当然ですが、相対性理論で光の速度が変わらないとそこは同じですね。

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2023年11月 6日 (月)

真下峯子校長 今だから女子校の重要性 現状の社会構造を変える役割

★日本教育新聞(2023年10月23日号)に昭和女子大学附属昭和中学校・昭和高校の真下峯子校長のインタビュー記事が掲載されています。

★3校の女子高で校長を務めていますし、共学校でも教鞭をとった経験もあるそうです。何よりご自身女子校出身、そして奈良女子大理学部生物学科卒です。

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★現状の日本の社会構造やその多大なる影響を受けている現場のジェンダー問題をリアルに公平に捉えています。中高時代は、ジェンダー問題について理解を深め、世界的な視野でリサーチして解決策を探る学びのプロセスの時期、その時期にすでに環境がジェンダーギャップ当たり前という状況であるとすると、ジェンダー問題をとらえる公平公正な目や深い問題意識が中途半端になる恐れがあるということです。

★この強烈なリアリティに説得力があるのは、真下先生の人生そのものが証だからです。

★性別の違いで、社会活動の役割が固定されてしまうことは、実は世界を狭くしてしまうことだというのが真下先生の問題意識であるようです。ですから、中高の別学と大学の別学は同じように捉えてはいないのです。

★女子高で公平公正な目を備え深い問題意識を備えても、大学に進んだとき、共学でないとさらに広く深い議論ができない可能性があると語ります。現状の社会構造では、女子大の価値もまだまだあるけれど、中高の教育次第では、大学は思考の壁をつくるようなシステムはどうなのかということでしょう。

★結局、大事なことは「男女共同参画を進めるためには、男子校でも女子高でも共学校でも、異性について学び、尊重する姿勢を養うことが欠かせません」ということです。ただし、人間は現実の環境=社会システムの影響を受けるから、意識してその影響を受けないように、つまりメタ認知することが必要なのですが、メタ認知の用意ができていない段階でそのような社会システムに入れるのは現実的ではないでしょう。

★では、男子校と女子校がよいのか?いや女子と男子では、格差をつけられる側とつける側という違いがそもそもあるので、男子校は逆にこのシステムを強化するシステムになってきた歴史があります。

★このことについては、開成の野水勉校長が、日本経済新聞(2023年10月29日オンライン)で論じています。男女共同参画を進めるために共学化も考えなければならないが、現状ではまだ機が熟していないと。現状の男子だけの居心地のよい男性社会に女子生徒をすんなり迎え入れることの危うさについて野水先生は熟慮しているのでしょう。

★男女別学か共学かの問題は、理想と現実の社会システムのギャップ問題を政策担当者が考える必要があるのですが、それがなかなかうまくいかない歴史的経緯があります。その複雑で政治力学的なところまで、一私立学校の力ではどうしようもありません。各学校が現状のシステムを良い方向に変えられる人間力を生み出す教育力をまずは強化することが優先順位として高いということなのかもしれません。

 

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中学受験 なぜ共感的コミュニケーションという国際ルールの環境が大切か

★中学受験の景色が変わりつつあります。中学受験における学びも、入学後の学びも、大学入学後の研究も、社会に出たときのプロジェクトも、みな共感的コミュニケーションをベースにするようになっています。もし共感的コミュニケーションではなく、同調圧力型コミュニケーションや抑圧的コミュニケーションが行われ続けていると、人権侵害の問題が生まれます。来年から「合理的配慮」が義務化されますが、これはその象徴です。

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★なぜエンパシーが大切かというと、相手の立場や気持ち考え方を尊重しないで、自分は良いと思って声をかけたことが人権侵害になることがあるのです。日本の言語の活用の習慣や常識化が崩れる国際ルールがグローバルシチズンシップの視角から導入されてきたわけです。民主主義を持続するにはこの流れが必須です。

★入学願書の記入欄一つをとっても、学校は、見直しています。性別を記入する欄がないのは、その一つの例です。

★不登校の増加の背景に、共感的コミュケーションが浸透していないからという理由も一つあるでしょう。

★同調圧力型や抑圧的なコミュニケーションは、ハラスメントが潜む可能性が大だからです。

★一方でメリトクラシーや学歴社会を振り回す事態もありますが、それ自体共感的コミュニケーションからほど遠いのです。

中学受験を学歴社会の拠点として捉えてしまえば、ネガティブな意味で<ヤバイ>です。中学受験を共感的コミュニケーションを生み出す拠点として捉えて、そのような世界が広がっていくのなら、ポジティブな意味で<ヤバイ>です。

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2023年11月 5日 (日)

2030年新学習指導要領をすでに実践している私立学校の例27校 思いつくまま

★学習指導要領の改訂は、だいたい10年ごとに行われます。今度は2027年から2032年の間に小中高と改訂指導要領が移行措置から順次本格実施されていくでしょう。いったいどんな感じになるのでしょうか。これはしかし、すでに大体予想がつきます。文科省は改訂時期がやってきて、突然新しくしましたということはやりません。現行学習指導要領のPDCAと現場で新しい実践が行われている情報を収集し、それらをインテグレートして改訂していきます。もちろん海外の教育情報も織り込みます。

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(GLICC Weekly EDU 第150回「ロンドンから見た<ヤバイ>中学受験の二つの意味」から少し手を入れた。)

★現行学習指導要領のPDCAにおいては、全日制の検討ばかりではなく、高専や通信制のありかたも含んでいます。何せ不登校が急増しているので、制度のあり方が見直されているわけです。どこかの市長のように、家庭の責任とか自己責任論で済まそうなんてことはもはやできません。制度のあり方を考えなくてはとなります。

★それから、国家の経済成長を支える労働力を生み出すというような近代教育の1つの目標だった話も変更されることになります。GDPがどんどんランキングを下げていく時代に突入しています。国家の経済や政治、国際関係などの平和を保つリーダーシップが求められているからです。しかもこのリーダーシップは、AI時代、Web3時代にあっては、一握りのリーダーに従うというような秩序をつくってはもたないことはわかっています。伊藤穣一さんではないですがDAO(自律分散型)秩序を生成するリーダーは、参加者全員です。

★となってくると、グローバルな視野でローカルで起業するイノベーティブでクリエイティブな価値創出リーダー育成が必要になるでしょう。

★グローバルですから多言語で多様性です。5つの目を持つ複眼思考を哲学的シンキングでトレーニングしておく必要があるでしょう。

★気候変動や国際紛争など予測不能な事態にあって、安定した教室だけではなくあらゆる場所で学びを自己組織化できる必要性にも迫られているはずです。

★今でさえ労働力不足、教師不足が問題になっています。生成AIがあらゆる道具に装着されてサポートするような技術を持つことは必要です。

★したがって、文科省や経産省は、上記の座標のような「新学習指導要領の射程」を織り込み済みです。

★そして、それはすでに現場で行われているのをリサーチして確信を持っているでしょう。

★その具体例は、思いつくまま列挙すると、たとえば、八雲、富士見丘、文杉、工学院、成城学園、香蘭女学校、湘南白百合(神奈川)、和洋九段女子、駒沢女子、豊島岡女子、武蔵、開成、栄光(神奈川)、聖光(神奈川)、聖学院、順天、海城、成立、巣鴨、世田谷学園、日本駒場工業、広尾、三田国際、聖ドミニコ学園、二つのサレジアン国際、かえつ有明、桜美林などはすぐに思い浮かびます。再来年中学を開設する羽田国際もそうです。

★このように東京の私立中高一貫校の15%強+神奈川3校がすぐに思い浮かびました。これ以外にもまだまだあるはずです。

★2030新学習指導要領を先行する私立中高一貫校がこんなにあるのです。文科省は自信を持っているでしょう。そして、これらのプログレッシブスクールは、2030年には、文科省のさらに先を本質的に実施しているでしょう。

★新しい高大連携、海外大学との連携、海外中高との連携、2050年ムーンショット計画の実効性の効用などが加わるからです。

★そのときには、世界が東京の私立中高一貫校の教育の魅力に注目するという事態が起こっているはずです。

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中学受験の二つの意味 どちらを選ぶか?

先週金曜日、GLICC Weekly EDU 第150回「ロンドンから見た<ヤバイ>中学受験の二つの意味」がありました。今回は、ロンドンにも拠点を設定したGLICC代表鈴木裕之さんに私から聞いてみたいことを中心に対話しました。「ロンドンからみた」というのはメタ認知するという意味が含まれていますが、メタ認知を同じような考え方や文化の中で作動させても見えてこないコトもあります。ですから、文化の違うロンドンという拠点からみたらどう中学受験が映るのか、また言語が違うと社会意識や文化、価値観が異なるので、英語を使用する学びから見るとどう映るのかという視点でみてみようという意味があります。

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★<ヤバイ>という言葉を使ったのは、この言葉はネガティブな意味でもポジティブな意味でも使われている現代語だからです。中学受験をネガポジでみてみるとどう映し出されるのか対話しました。

★もちろん、受験生保護者だけの目でみるかだけではなく、塾もどちらの目で見るか、私立学校も現実的にはどちらの方針なのか複合的に見ていく必要があります。

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★上記のように、組み合わせ的には8通りありますが、グラデーションで見ていくと無限になりますね。とはいえ、実際にはAタイプかBタイプかEタイプかFタイプが多いと思います。

★A・Bは結局流れを創ろうタイプに重きがあり、E・Fは乗り遅れるなタイプに重きがあるのでざっくり2つに分けることができます。それゆえ、今回の対話の段階は、そこはざっくり両極端の意味で対話していきました。

詳しくは、ぜひご視聴ください。1.5倍速で早回ししながら見て頂けるとありがたいです。何せ、お爺ちゃんお話は長いので(汗)。

★いずれにしても、今回は、5つの目を身につけられる中学受験の学びをしたいし、5つの目を身につけられる学びを体験できる学校を選びたいというのが結論です。

★5つの目は、思考力・判断力・表現力のベースです。哲学シンキングのベースです。IBでいえば、TOK的な発想のベースです。サバイバルスキルのベースでもあります。

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2023年11月 2日 (木)

C1英語の学びの環境は、哲学的シンキングが作動しているし共感的コミュニケーションが広がっている 工学院がロールモデル

★工学院は、C1英語の教育環境デザインが行われ日々アップデートしています。C1英語は、5技能のコミュニケーション能力がすさまじいのですが、暗記力では到底できません。論理的思考だけではなくSDGsだけではなく、CSV(Creative Shared Value)までが生まれる共感的コミュニケーションが必要です。

★今、シリコンバレーで哲学コンサルタントやマインドフルネスが重視されているのは、このCSVを生み出す共感的コミュニケーションの必要性が浸透しているからです。この共感的コミュニケーションは、日本ではどちらかというと心の状況のことだけをとりあげられます。ですから、マインドフルネスはよく話題になるのですが、哲学シンキングは話題にあまりのぼりません。

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★上記の本を読むと、本質的な哲学シンキングの章に進む前に、ずいぶんテクニカルなシンキングの方法が展開しています。マインドフルネスはこのスキルがないと実は持続可能にならないのですが、ここが避けられるので、同調圧力的なコミュニケーションのうえで、マインドフルネスが行われてしまう場合が、観ていると多いですね。

★IBのTOKや欧米の中高段階で哲学が行われるのは、特定の思想家の話を探究するのではなく、哲学的シンキングそのものを実践的に学ぶのです。

★C1レベルのエッセイライティングやスピーチは、哲学そのものはやりませんが、その哲学的シンキングの方法論が盛り込まれています。

★当然、このレベルの授業はICTを使いながらPBLがメインの授業展開になります。

★つまり、共感的コミュニケーションが広がることになります。

★工学院の教務主任田中歩先生は、英語科の教諭で心理学的視野が広く視線が深くまで延びています。彼自身共感的コミュニケーションの持ち主ですが、もともとの性格なのか、英語や心理学を学んだからそうなったのかは、両方だと思います。

★工学院の生徒は理系志望者が多いのですが、このような本格的な哲学的視点を持持っていることは何度も生徒の皆さんと対話して感じています。

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★私は、C1英語の学びの環境で行う共感的コミュニケーション=哲学的シンキングだと思っています。もし日本語だけの教育だと共感的コミュニケーションだけ気遣っていると、いつのまにか同調圧力型コミュニケーションになっている可能性大です。ですから同時に別に哲学的シンキング(私は専門家ではないので、哲学シンキングではなく、哲学「的」シンキングと呼びます)の授業を展開する必要があります。

★しかし、C1英語レベルの環境がないのが日本の教育です。共感的コミュニケーションは最近はやっていますが、同時に哲学的シンキングが行われているわけではないのです。倫理の授業は哲学「者」シンキングにならざるを得ないので、自分の哲学的シンキングを身に着けるのは結構厄介です。

★この現状実に「ヤバイ」のです。同時に工学院のようなロールモデルが存在することが救いです。工学院の存在はポジティブな意味で「ヤバイ」といえるでしょう。

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学校が蘇る時 学びを巡る座標と共感的コミュニケーションの剣と平和の鳩が備わった時

★ある学校の理事長の苦悩を分かち合う対話をしたとき、その理事長の学校は蘇るなと感じました。生徒が学びのスキルとして体得する環境のど真ん中にPBLはあるし、グローバルでローカルなボランティア活動や起業活動も行われているからです。もちろんその時のグローバルコミュニケ―ションのツールとしての英語力もハイレベルです。ICTも完備し、あとはAIをどのように導入するかそれを考えているチーム教師もいます。何よりその学校の伝統である哲学的対話のできる素養の在るチーム教師もいます。つまり学びを巡る環境の座標は整っています。平和はその学校の理念で、教師も生徒もみな共有しています。

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★現実的な成果としては、大学進学実績もよいのです。全く失礼な話ですが、中学受験雑誌などでは、偏差値のわりに進学実績がよいお得な学校のランキングにも上位に位置します。理事長は、いやいや失礼でも何でもないですよ、こうやって取り上げてもらえるのはありがたいです。自分たちではこんなデータを作れませんからと実に謙虚なのです。

★ここまで、揃っていて生徒募集がなかなかうまくいかないのは、広報が下手だからという結論を理事長がしたその瞬間、そこを哲学シンキングで転換すれば、その学校は蘇るなと確信しました。

★その転換は、広報チームの先生方から訪れました。広報活動は、他の学校とそれほどかわらないツールや説明会を行っているのだから、うまくはないが下手でもない。これから研鑽していくけれど、もっとほかにやるべきことがあるんですよ本間さん!

★すばらしい若きジェダイに会えました。

★彼はこう言います。「競争のための剣ではなく、共感的コミュニケーションに私自身も周りも変容させていく剣を持ちます!」と。

★必ず蘇るでしょう。どこの学校か?って(微笑)。3年以内に世に名前を知られるようになるでしょう。

★そうそう、この話をBingにしたら、上記のようなその学校のロゴを作成しました。どうやら生成AIも心の目を持っていますね。

 

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2023年11月 1日 (水)

聖ドミニコ学園の魅力 探究と教科の結合 新しい実践

★本日私学振興全国大会が、文京シビックホールでありました。終了後、聖ドミニコ学園の社会科教諭であり、広報担当の土居嗣和先生が声をかけてくださいました。非常に研究熱心で、理論と現場を結合する先生です。しかも仲間と共同研究をされていて、令和4年度公益財団法人東京都私学財団賞を受賞する研究をされています。そして、それはますます進化していて、今度その報告書を送ってくださるということでした。楽しみです。

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★その受賞研究は「探究的な学習のデザインに関する研究-教科を横断した「授業研究」に焦点をあてて-」でしたから、探究と教科の授業はどんな結合をしているのか尋ねてみました。

★すると、テーマとか探究プロセスとかも大事ですが、教科の時間は限りがあるので、どの教科にも共通する、いわば文理融合的なものの見方・考え方を先生方と共有しているというのです。

★さすがは、対話の哲学を世界に広めた聖ドミニコ会の文化遺伝子が脈々と続いているなあと感動しました。

★教科横断とか探究と教科授業の接続は、テーマを共通にするとか学びのプロセスを重ねるとかという考え方もありますが、なかなか帯に短したすきに・・・なのです。

★そこにいくと普遍文法ならぬ普遍思考方法というのは難しいですが現実的で合理的ですね。

★11月15日(水)に、同校では、中学高等学校の授業を公開します。授業公開の時間は、9時50分から14時45分まで(ただし、お昼休みは公開しません)です。また10時から10時40分まで、学校説明会も実施するそうです。参加申し込みなど詳しくは、下記URLをご覧ください。

 https://mirai-compass.net/usr/dominicj/event/evtIndex.jsf

★報告書をいただいたらまたお知らせします。

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2027年から移行措置が始まる新学習指導要領がヤバイ!?

★少子高齢化やエネルギーの転換、AI時代突入など、2027年から移行措置が始まるだろう新学習指導要領の改訂射程が次のような座標で表現できると予想します。

【学びをめぐる環境視座】

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★現状でもこの射程をビジョンに収めている私立学校はたくさんあります。しかし、もしかしたらやっているにもかかわらず、哲学なんてやっていないとか起業家精神も授業では育ててないとか、AIなんてまだこれからだとか、学びではなくまだ勉強だよなあとかいう声も聞こえます。

★確かに、まだまだ気づかれていないかもしれないし、部分的かもしれません。また文部科学省が直接このようなことをいう可能性は少ないかもしれません。

★しかし、シリコンバレーをはじめとする世界各地のイノベーションバレーが常にクリエイティブ×イノベーティブを進めるにあたり、マインドフルネスや哲学コンサルタントなどをいれているし、プロジェクトという学びは必須ですし、そもそも起業家精神であふれています。しかもThink globally, Act locallyというグローカルマインドがそれです。今やコンピューターサイエンスは生成AIをはじめとするAIイノベーションは当然の流れです。

★したがって、文科省や経産省がこの流れを無視することはないでしょう。

★まして、世界中が日本の田園都市構想にヒントを得た(そのことを日本人は知らずに軽視しているが、東急電鉄はそれを保守している)スマートシティーやエコシティーへ移行するわけです。

★上記の学びをめぐる環境視座が必要です。この視座を各学校の教育にあてはめてみて、どのくらい重なりがあるか?重なっている部分が多いほど選んだ方がよい学校です。塾も同様です。

★この視座は、孫泰蔵さんや伊藤穣一さんの考え方のレンズにも重なります。

★成城学園の青柳先生が、大学で教職教養の講義をされているようですが、そこで孫さんの「冒険の書」を紹介されたということです。素敵で過激ですね。しかし、教師志望者にとって未来の学校で教鞭をとる時は、上記の【学びをめぐる環境視座】が拡張していることでしょう。

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