中学入試コミュニケーション(04)社会の中学入試問題 極めて重要な役割を果たす時代 麻布・武蔵・開成の問いのデザインの意味
★私たちにとって大切なのは興味と関心、好奇心です。これは子供も大人も必要なものです。特に社会科における問いは、「関心」という世界の重大問題が自分事であるということに気づく大切なチャンスです。そのことに気づくのは小学生だからまだ早いなどと言えないことは、日々ひしひしと感じるともすればタイタニック号化している日本を含む世界の現象である事態を「5つの目」で見れば、わかることです。
(イラストはBing)
★マザー・テレサが「愛」の反対語は「無関心」と語ったことはあまりにも有名ですが、今この言葉は、誰にでも大切な重みを感じる言葉でしょう。ですから、社会科でいう「関心」と同意語は「愛」なのです。
★社会科というと暗記ということがすぐ思い浮かびます。暗記は無意味だという方も最近多くなってきましたね。たしかにそういう側面はありますが、どうしてでしょう。それは暗記と記憶の違いを考えてみるとわかります。私たちの中に、記憶を否定する人はいないでしょう。記憶は無意味だという人はそうはいないと思います。記憶がなければ私たちは、過去のことを想いだせないどころか、こう書いている間も意味を捉えることができないで困ってしまいます。
★それほど大事な脳神経作用です。暗記と記憶は共通点もありますが、いまここで私は暗記しているわけではないですね。記憶はしています。ですから、無理矢理生きる事態とかかわりを持たずに暗記することは苦痛だとなるわけです。
★つまり、社会科の知識は、私たちの生きる事態にかかわるようにしていけば記憶はできるのです。
★日本の自然や風土を知ることの重要性は、日々気象レーダーをみていると私たちの生きる事態にめちゃくちゃ関係してきます。気候変動に関心を持つことは、自然と社会の関係を知り、癒しと同時に痛みもしる「関心」を持つことになるでしょう。
★自然と風土がわかれば、産業構造についてもわかるし、産業構造を変える情報産業の特徴もわかります。そして、日本史を振り返った時、産業構造が変わることが何を意味しているかは、昔の話で終わるのではなく、今との関係で理解を深めることになるし、未来を考える「関心」にも広がります。
★5つの目がフル回転するのが社会科の「関心」の広がりと深さですね。
★今や社会科は、日本の国の話だけではありません。だからといって、世界史や世界地理の知識をというわけではないのです。「5つの目」をもって日本の歴史・地理・政治経済から推理することはできるのです。
★大げさかもしれませんが、地政学的な視点や地経学的な視点を学ぶ機会でもあるのです。グーグルマップのストリートビューで「虫の目」を活用して世界中をバーチャルツアーよろしく散策することができます。もちろん「鳥の目」で全体を見渡すこともできます。ぜひプロジェクターで映し出しながら大画面でみてください。Awe体験もできます。そのうちメタバースで手軽にできるようになるでしょう。
★このような5つの目を使う社会科の問題は、麻布と武蔵と開成の問題を考えることで養われます。開成の問題を解答しようというのではなく、どのように問いが作られているかを子どもといっしょに考えると、実は背景に複眼思考が働いていることがわかります。東大の地理の問題はなかなか」傑出しているのですが、ちょっと同じ感覚です。
★武蔵はまさにこの社会現象を複眼思考で考えていくプロセスそのものです。解答ができるかどうかではなく、この複眼思考を学ぶことを目的に味わってください。
★そして、なんといっても複眼思考を自分事の心の目を通して考える境地に至る問いのデザインがされているのが麻布の社会科の問題です。
★麻布や武蔵の2024年度の入試問題は、ストレートにウクライナやイスラエルの問題とか昨今の人権の問題、AIの問題を扱わないでしょうが、これらの実際の問題の背景にある人間の本来性の構造を問う問題は出題されるでしょう。そして、自分ならどうするというのを麻布は問うてくるでしょう。
★麻布や武蔵や開成を受験しないから関係ないやではないのです。これらの学校の問題をベースに「5つの目」あるいは複眼思考を自分の内面に開くきっかけにしてもらいたいものです。
★「探究」とはどうやるのか?など迷っている方も、中学入試関係ないからではなく。ぜひこれらの問いのデザインをリサーチしてもらえればと思います。中学受験熱が過熱だとかいうのもわかりますが、まずは麻布や武蔵の社会の問題を見てから、さてどうするか考えてみて欲しいものです。
★中学入試をポピュリズム的にとらえるのか、人間本来のあり方への入口としてとらえるのか。つまり、中学入試問題は、その学校の教師の考える人間の生き様構築ための問いが反映したものとみるのか。ジャーナリズムはどうしたらよいのでしょうかね。ポピュリズム的視野で書いているジャーナリストもたまにいますよね。しかもなぜか声が大きい。できれば、「問い」の意味をぜひ考えて頂きたい。これが中学入試コミュニケーションの一側面です。
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