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2023年10月16日 (月)

中学入試コミュニケーション(05)理科の中学入試問題 科学的眼差しは子どもの時から 本郷の理科に学ぶ

★中学入試における理科の入試問題の意味は、子どものころから科学的なものの見方や考え方・感じ方を身につけるのに大いに役立ちます。イギリスでは古くからニュートン時代からすでにあったと思いますが、専門家だけが科学の眼差しをもつのではなく、市民も共有できるように、サイエンスコミュうニケーションが行われていたといいます。日本では21世紀になってこの存在が東大の講座になったりしてようやく認識されるようになってきました。今では、立教大学の古澤教授のようにサイエンスコミュニケーターが学問的裏付けを持ちながら活躍しています。

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★この役割と同じ働きをするのが理科の中学入試問題です。ここのところ日食や月食などだけではなく、金星食など他の惑星にも同じような現象が起こることが話題になっていますが、そのさまざな天体ショーをいっぺんに扱って問いをデザインしているのが本郷の今春の理科の問題でした。

★天体の問題なんて、なんて壮大なんだろうと、まったく身近ではないと思いますか?夜空を見あげて何も感じない人はあまりいないでしょう。人によっていろいろ感じ方は違いますが、天体は大昔から人間の生活にとって身近な話でした。

★たしかに、本郷の天体の問題は、他の問題に比べ、受験生にとってはハードだったようです。でも基本は、三角形の概念と時間の移り変わりをうまく活用すればできるので、時間があれば大丈夫なすてきな問題でした。天体ワークショップで生徒とシミュレーション体験ができるとおもしろいですね。

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★いずれにしても、それぞれの星との関係を考えたとしても、その基本原理や仕掛けは同じなのですから、これぞ科学の眼差しですよね。同時に分解と統合と変形という数学的思考も活用していますから、広く深い学びができます。

★ほかにも、レールに隙間があるのはなぜだろうという、これも踏切などでよくでくわす事物ですね。

★好奇心、そしてなぜだろう?という問いを素直に言える関係(開放的精神)をつくるのが、ジョブスやビルゲイツが憧れたノーベル賞受賞者のファインマン博士の語る科学者の基本的な眼差しです。

★基礎学力は必要です。でも、それは無理矢理暗記することを推奨しているのではないことは、今更言うまでもないと思います。好奇心となぜだろうという疑問と調べたり訪ねたり教え合ったりできる開放的精神があれば、知識を調べたり活用したりしますから、基礎学力は身につきます。基礎学力は、こういう探究的な手続きをして身につける方が楽しいですよね。

★答えのない問いが大事だと大げさに提唱されがちなのは、わからないわけでもないです。PRのときには必要です。しかし、子供にとって、大人にとって知り過ぎていることでも、最初は未知の冒険なのです。一つ一つ探究の手続きを通してその未知の冒険をし続けられる環境が学校です。よく学校はオワコンだという方がいます。

★ウクライナやイスラエル、パレスチナ、アフガンをはじめとする惨事が起きている場所で、「学校はオワコン」だと言えるものですか?本郷の入試問題を通して、学校の先生方が取り組んでいる壮大な未知の冒険プロジェクト作りの様子をイメージしてください。そんなことも中学入試コミュニケーションの役割です。

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