探究と教科授業の結合って、遊びと科学の結合ということ?❷自分事になるにはラインを取り払う
★探究と教科授業が結合されないと、つまりそのようなラインがあると、今はやりの言葉「自分事」に生徒がならないというようなことを無意識のうちに先生方が語っているのに遭遇します。その先生は無意識かもしれないけれど、ラインを越境すると生徒が「自分事」として知識を活用し始めることに気づいています。このような先生と会うと感動します。この感動の機会が増えていることにまたまた感動する日々です。
★自分事というのは当事者意識にも置き換えられますが、要は、自分が直面した知識、事柄、現象、課題などが、自分にかかわっているというコトに悲喜こもごもの感情が生まれてくることでしょう。
★エッ?知識が自分事?そうなのです。思考と知識を分ける人がいます。知識がなければ思考ができないという方もいます。知識は干物になって思考液が乾燥したものにすぎません。思考液を取り戻せば、知識は生きた関係性を生み出す「考動」を動かしはじめます。知識と思考はルビのツボさながらなのです。
★つまり、トリックアートのような遊びを科学することで、好奇心は生まれてきます。あらゆるコトが自分と他者と社会と自然と関係があることが自分の内外に見えた時、自分事になっているでしょう。
★知識を学ぶ余白とは、思考液を知識がたっぷり含む時空をデザインするということでしょう。
★ファインマンさんは、その天才だったわけですね。もちろん、ファインマンのように〇〇劇場で研究論文を書こうという激しいロックン・ロール魂を真似しようというわけではありません(汗)。
★ともあれ、考える余白といわれるものは、遊び心ですよね。それがある探究は思考液というか泉がコンコンとわいてくるのです。でもですよ。それだけでは、流れてしまうでしょう。枯れてしまうかもしれません。知識というカプセルあるいは細胞が必要になります。
★体験が必要なのは、つまり遊びが必要なんですが、なんだかよくわからないけれどおもしろいし、頭が回転するわけです。でもそれを知識というカプセルや細胞に格納しないとせっかくのアイデアも忘却の彼方です。
★調べて自分のアイデアを格納する知識がないときは?新しく知識を創るわけです。あとから、すでに誰かが言っていたというコトになっても、その段階では大興奮ですよね。そして、あとから落胆するかもしれないけれど、そうやって創造は生まれてきます。この創造の過程こそが「自分事」だと思います。
★「自分事」という言葉は、実はとても深刻な局面で使われる場合が多いのです。それは差別に気づかずに、意気揚々と生きている場合、「他人事」から「自分事」に転換できるかというとても大切な問題だからですね。
★そして、探究と教科の分断は、実は、そのような差別を生み出す発想に陥っていることに気づかないケースが多いのです。探究やっているといい大学に入れないともしも思った瞬間、そこにはアンコンシャスバイアスがありますよね。学歴社会にはそんな格差のアンコンシャスバイアスがあるんです。
★逆に授業なんて知識を詰め込むだけだという場合も同じように差別を生み出す発想があるかもしれません。そこをチェックする「自分事」。これはもう科学の出番です。
★フッサールの次の言葉。認識を思考体験と置き換え、対象を知識と置き換えると、遊びと科学が一体となっている内省的仕組みの理解のヒントになるかもしれません。
「認識は(一面においては) 自然の一事実であり、認識する有機体の体験であり、心理学的な一事実である。従って他のあらゆる心理学的事実と同じように、認識についてもその種類や関連形式を記述し、その発生状態を究明することができる。しかし別の面からみれば、認識は本質的に対象の認識である。しかもこれは認識自身の内在的意味によることであり、認識はこの内在的意味によって対象性に関係するのである。」 (『 理念』 H. II, 19)エトムント・フッサール. フッサール・セレクション (平凡社ライブラリー659)
★こんなことを書きたくなったのは、I.N大高等学校のY校長とあって、フッサールの研究者で生徒理解を現象学的に解き明かしている土屋教授が、共通の知り合いであったことを知りその延長線上の教育の問題について語り合えたからです(笑み)。
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