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2023年10月

2023年10月31日 (火)

香蘭の教育 「なぜ」「知りたい」「面白い」という気持ちを大切にする

★2024年度の首都圏中学入試で注目されている学校の1つに香蘭女学校の存在があります。朝日新聞(2023年10月28日)の「校長から受験生へ」で、校長鈴木弘先生は、今年の高校2年の大学入試から、立教大学の推薦枠が160人になり、「全入」を実現することができるようになるが、それは「学校の人気を上げるための目的ではありません。受験だけをモチベーションにした勉強をしてほしくない」と語ります。

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(今年メディアルームも完成した。写真は同校公式facebookから)

★『「なぜ」「知りたい」「面白い」という気持ちから学んで欲しいのです』と語るのです。この気持ちは、ビル・ゲイツやジョブスが憧れたノーベル物理学賞受賞者ファインマン博士も科学者として大切にする構えです。

★とはいえ、推薦されるには、英検2級以上の取得や一定以上の学業成績もクリアする必要があるとのことです。さりげなく語りますが、2級以上のレベルに160人が達するには、相当ハイレベルなグローバル教育の環境がデザインされている必要があります。

★鈴木校長は、就任してから推薦枠を80人から97人と増やし、そして160人に増やしたわけですが、それには立教大学の香蘭の教育に対する信頼性、正当性、妥当性を得る教育内容の充実という論拠があったからこそでしょう。

★立教大学にはない医学部や工学、芸術学部などに進む生徒のための準備はもちろん万端ですが、文理関係なく、「なぜ」「知りたい」「面白い」というモチベーションは共通しています。

★そのような内発的なモチベーションが生まれてくるのは、別学のメリットが大いに関係します。鈴木校長は、まだまだ日本社会はジェンダー問題がある。アンコンシャスバイアスで、無意識の抑圧や同調圧力がある社会とは全く違う開放的精神が広がっている別学だからこそ、そのようなモチベーションが生徒1人ひとりの内なる光となり得るのだと。

★そのようなモチベーションをもって大学に進み、社会に出たとき、日本社会の様々な壁を崩していく貢献を果たす役割を果たすことでしょう。ハラスメント撲滅やジェンダー問題解決へと意識が高くなっている時代だからこそ期待されるのでしょう。注目される理由がこのような本質的なものであれば、そこから社会は善なる方向に変わり始めます。

★鈴木校長の気概に続きましょう。

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令和5年度 公立学校統計調査報告書 東京都の私立中学進学率 区部と市部の差顕著 工学院がレバレッジポイントか!?

10月26日、東京都教育委員会は「令和5年度 公立学校統計調査報告書」を公開しました。それによると、都内の小6の卒業生は増え続けています。しかし、2019年は私学進学率は微減でした。首都圏の中学受験者数は増えていたにもかかわらず、東京の中学進学率は微減だったのです。

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★もちろん、東京近隣県から中学受験しますから、中学受験者数は、東京も問題なかったのですが、2014年以降、首都圏の中で東京は特に新学習指導要領や高大接続改革のムーブメントがバブル的雰囲気だったので、少ししぼんだかもしれませんね。

★ところが、パンデミックが始まると、私立学校は先陣を切ってオンライン授業を整え、学びを継続させたどころか進化させたために、ある意味新しい学びの有効性を証明してしまいました。そのため、そこから急激に増えることになった可能性が大です。

★とはいえ、東京都も広く、区部と市部では中学進学率の格差は顕著です。

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★東京の中で、都市部とそうでない差は、日本全体の都市部と地方の差の縮図のようです。

★京大と日立の協同研究によると、次期学習指導要領の改訂時期には、この都市部と地方の差はかなりのものになります。それは東京の区部と市部の差にもつながるのでしょうか。地方創生に今まで以上に力を入れるのか、全体をスマートシティー化するのか?

★都市部と地方の差をなくすデジタル田園都市構想は果たして実現するのでしょうか?

★八王子市の私立中学の進学率は相当低いですが、その中で工学院のような都市部でもみられない魅力的な教育を行うところが次々と出現すれば、市部でのムーブメントが起きるかもしれません。

★工学院の教育がレバレッジポイントになることは、日本全体の都市部と地方の差を高い水準で縮めるヒントになるかもしれません。

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羽田国際① 新しいグローカルシンキング教育へ

★来年4月、羽田国際高等学校が離陸します。新しいコンセプトの高等学校です。その内容について、学校長の簡野裕一郎先生が、教育学術新聞(2023年10月25日)でインタビューされています。簡野先生はわかりやすく表現していますが、そのコンセプトの背景は実に深く未来への見通しが明快です。

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★インタビューの中で、簡野先生は学祖簡野道明の言葉を引用しています。「子どもの教育にとって最も大切なのは母親であり、その母親となる女性の教育こそが教育の根本である」という考え方のもと、女子校として蒲田女子高校が創設されたということです。そしてこの考え方を引き継ぎながら、時代の精神を読み解き、母親の教育をグローカルシンキング教育と置き換えることによって共学化にし、その教育を象徴する名称変更をしたのでしょう。

★ここはさらりとグローバル化やイノベーション化、そしてグローバルの流れが世界同時的にスマートシティ化する流れを汲み取るということになっていますが、実はもう少し深いのです。簡野学園は保育園も経営しています。共稼ぎの日本社会です。その母親の心のエッセンスを体現した保育園教育を実施しているわけです。簡野先生はドイツにまで研究しにいっているぐらいです。

★ドイツ?実は、ドイツは文化人類学的にみると、大地をつまり地球を「母親」として大切にしてきた国です。この文化的背景は、日本にも似ています。互いに異なる国、つまりローカルですが相通じるものがあるわけです。この共感覚こそ母性ですが、今やそれは性別関係なく広く通じる共通性でしょう。

★実はドイツに限らずヨーロッパの国には母なる大地を大切にする国が多いですね。その証拠に、ドイツ語やイタリア語など「地球」という単語は女性名詞なのです。月や太陽は男性名詞だったり女性名詞だったりするのに、「地球」は女性名詞が多いのです。

★グローバルであり、ローカルでもある「地球」。One Earth プロジェクトとしてグローカルシンキングであり、その象徴的なWINGSプログラムの一つHANEDA留学が紹介されていました。

★各国の大学生が羽田国際を訪れ、生徒と多様な交流をしているようです。年間10回くらいとありますから、ほぼ毎月ということでしょう。

★記事の中で簡野先生が「本校でしかできない国際教育」というとき、このような背景があるのだと思います。

★新校舎もでき、平成7年からは中学も新設されます。今までにはないグローカルシンキングベースの国際教育を楽しみにしたいと思います。

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伊藤穰一さんの「AI DRIVEN AIで進化する人類の働き方 」 DAOとブリコラージュへ 教育は変わる

★伊藤穰一さんの5月に出版された「AI DRIVEN AIで進化する人類の働き方」を今更ながら読みました。伊藤さんのWeb3は前職の勤務校で何人かの先生方と読んで、ブロックチェーンのすばらしさをリアルにどれだけ活用できるか、つまりDAO(自律分散型組織)をアナログで果たせるか盛り上がっていました。しかし、伊藤さんがさらにAIというのは、5月段階では私自身がもう少し生成AIを使ってからと放置していました。

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★最近、Bingをプロジェクトメンバーの一人として活用しているので、ヨーシ読もうと。

★で、驚きました。私が活用している範囲と7割は重なっていました。

★教育の範囲では、スマートコントラクトなどはまだ先だし、私自身はプログラミングを作成してもらうことはないので、そういうところはこれから学ばなくてはと。

★それにしても、伊藤さんもプロンプトエンジニアリングについてページ数を割いています。

★人類は、プロンプトという問い作りと生成AIの提案を再びチューニングしながらアクションを起こしていくという流れ。

★誰に指図される必要もなくなるわけです。もちろん、プロジェクトチームこそ重要です。

★しかし、ふとAIは、問いについては提案してあげるけど、やるのは君だよとは。。。結局コンサルタントAIじゃん(汗)。

★人類は賢くならなくては!その拠点を私立学校が当面担うしかないでしょう。

 

 

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2023年10月30日 (月)

孫泰蔵さんの「冒険の書」 思想家の考え方を教育現場に流し込む巧みさ 教育は変わる

★最近仲間たちと対話するときBing(生成AI)と共に行っています。Bingはもはや仲間の一人です。プレゼン用のスライドを創るとき、かつてなら結構クリエイティブな作業でした。しかし、今は発想と検証方法の喧々諤々の共感的対話とその対話の中身の検証方法ばかりに集中し、Bingでシミュレーションして、その結果をペタっと張り付けていくだけです。多少デザインは考えますが、いずれそれも生成AIがやってくれることでしょう。

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★そんなとき今年2月に出版された孫さんの「冒険の書」を見つけました。成功した起業家のAI論かなとアンコンシャスバイアスがあって、9か月も放置していたわけです。また学校の先生方からもあまり話題になっていなかったので。

★しかし、私学の系譜を大切にしている私が敬愛する内村鑑三を孫さんが最高だぜといっていることを知り、いったいAIと内村鑑三がどうつながるのか?

★というわけで、先ほどkindleで購入。ななんとルソーは出てるわ、イリイチはでてくるわ、フーコはでてくるわ・・・私が敬愛する思想家がずらりとならび、彼らの思想を通して現代の教育をクリティカルしているなるほど冒険の書でした。

★そして、終章が内村鑑三が出てくるのです。

★彼らは思想家としては有名人ですが、近代社会を構築する側から見たらもしかしたら嫌がられる人々です。

★しかし、なぜ嫌がられるのか?それは不都合な真実がそこにはあるからですね。

★ところが、AI時代、その真実を誰もが知ることができるようになってしまうわけです。

★思想家たちの考え方を現場に流し込むことによって、浄化し、現場を変えて行く。つまり新たな教育現場の冒険が始まるやがて大きな波を創っていく可能性があります。

★問いと行動の連鎖。それを支えるビッグデータ処理をAIがサポート。

★孫さんが批判している学校は、実はすでに動き始めている可能性があります。私の学校の仲間は、まさに問いと行動のプロジェクト。同調圧力の払しょくを行っているからです。

★素敵な学校は、孫泰蔵さんのこの本を鵜吞みにせずちゃんとメタ認知して自分の新しいビジョンを進めているでしょう。

★偏差値序列のメリトクラシーではなく、新しい尺度を創っていますからね。

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2023年10月29日 (日)

八雲学園 世界を魅了するグローバル教育

10月27日(金)、GLICC Weekly EDU 第149回「八雲学園の多様な留学プログラム」が開催されました。副校長近藤隆平先生がご登壇。ノイタキュード代表北岡優希さんもゲストコメンテーターとして参加。同校が、多様なグローバルプログラムを実施しているのは有名です。今回は、その中で今年実施した9カ月プログラムの学習と生徒の成長にフォーカスした話になりました。

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★9カ月プログラムを体験した生徒は、ラウンドスクエアの国際会議でも活躍するなど、同校の目標であるグローバルリーダーの意味をカタチづくる貢献を果たします。そのグローバルな知性や感性が育つ学びの具体的な状況が詳しく説明されるのは、おそらく本邦初でしょう。

★ある意味企業秘密なのですが、これをそのまま導入しようとしても、UCサンタバーバラの大学の先生複数を用意することはそう簡単なことではないですし、ラウンドスクエア校になるのもそう簡単ではありません。またサンタバーバラにリゾートホテル並みのレジデンスを所有することなどほとんど無理に近いでしょう。

★このような有形無形の教育資産を歴代の理事長が先生方と創ってきた結晶体ですから、近藤隆平先生は、公開するのに躊躇はなかったのだと思います。

★同じくラウンドスクエア校である姉妹校ケートスクールとのプログラムもこの9カ月プログラムと並行実施されているわけですが、そこらへんのことは次回菅原先生に語っていただくことにします。

★今回もう一つ6月初旬に行われたイエール大学との音楽交流会の具体的な様子について、カメラが入り、北岡さんが編集した動画も見ることができます。近藤先生の用意された動画と合わせると、今回4本の動画を見ることもできます。あまりにも具体的な状況がわかる今回のGWEでした。

★なるほど、世界のエスタブリッシュスクールの生徒が、八雲学園の教育に魅了されて、各国から月替わりに交換留学しに来るはずです。

学校の教育を、受験市場の中で偏差値比較優位競争の目で見るのか、世界市場でグローバルリーダーを育てる教育環境をフォーカスする目で見るのか、本当に大切なことを考えさせられる近藤先生のお話でした。

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広尾学園 未来の流れを創る教師と生徒そしてハイレベルなグローバル組織

10月13日(金)、GLICC Weekly EDU 第147回「広尾学園が牽引するこれからの日本の教育」が開催されました。池田理事長・校長、金子副校長、植松教頭がご登壇。生徒の活躍を中心にいかにそのような活躍があふれ出るのかその教育環境デザインの現状と進化する教育についての語りを聴くことができました。偏差値などの指標でも高いのは、周知の事実なのですが、それ以上に生徒1人ひとりのモチベーションのレベルの高さ、学び方のレベルの高さは、圧巻でした。そのような具体的状況を教師が日々創り、日々アップデートしていいける組織作りは、池田理事長をはじめとする3人の先生方のポジティブで子どもの未来を常に考えるメンタルモデルとアクティブなグローバルな視座に象徴されていました。

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そして、ご視聴していただければすぐにわかりますが、3人のチームワークの卓越性が伝わってきます。このチームワークの卓越性は、もちろん教師陣、生徒の皆さんに浸透しているのだということは、ご視聴していただけると明快だし感銘を受けます。

★APが12講座もあるということからも、ハイレベルな大学レベルの研究的文化が根付いているということもわかります。基本的に3人の先生方は謙虚に語られるというか謙遜されるので、植松先生がAPを大学の1年生くらいのレベル講座だと語った時、ああそうだと聞き流してはもったいないのです。

★それはこれらの講座から海外の大学にケタが違う進学実績を出している同校の枠組の話なのだと思い起こしてお聞きいただきたいのです。どういうことかというと、日本の大学の教養レベルという意味ではないということなのです。海外大学、特に世界大学ランキング100位以内の大学1年生のレベルということです。

★日本の大学1年に入学するのとそのよううな海外大学の1年に入学するのとすぐにわかる違いは、日本語で行われるか英語で行われるかの違いがあります。そして、講義する大学の教師は、自分の書いたテキストをベースにしますが、海外では多くの研究者の論文をベースに複眼的に思考するのかの違いもあります。さらに、日本の大学1年生は、机上の学びが多いですが、海外大学は、思考実験やフィールドワークなどプロジェクトベースの学びが必ずセットされています。

★そのような海外大学の大学1年生レベルの授業が学内に12講座(もちろんオールイングリッシュです)もあるのです。しかも外注ではなく、学内の教師が実践しているのです。その講座に携わっていない教師にも影響があるのは、推して知るべしです。

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★医サイのクラスの順天堂医学部での学び(研究といったほうがしっくりきます)も半端ではありません。実際に医学部の先生方と手術に立ち会ったり、病理診断のミーティングにも参加するのです。自らのキャリアデザインへの内発的モティベーションが内燃し続けるこれらの教育デザイン。

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★しかも医サイの生徒がそのように学んだ医学の知見をAGコースの生徒に英語で講義をする機会もあるわけです。金子先生は、そのようなことができるのは、中学から高校に進級する時、コースを柔軟に選び直すことができるからだといいます。AGから医サイにシフトした生徒が、理系と文系の知見を融合して学内に還元していくというアクティブなメカニズムは、広尾独自の学びです。そう簡単に他の学校でデザインできる環境ではないでしょう。

★このように柔軟でハイレベルな学びが日々進化するのはなぜでしょう?池田理事長・校長は、生徒が発案したり望んだりするプログラムに対応する教師の努力が日々あるからなのだと目を細めて語ります。そのように教師が活動できる環境を経営陣が作っているということでしょう。ただし、前提条件としての高い好奇心と世界の研究の成果にアンテナを張り巡らする広い知的視野、質の高い問いを自走できる学びの構えを教師も生徒も共有しているからなのです。

いずれにしても、広尾学園の教育の進化の速度や魅力、教育の質の豊かさについてここでは全く語り尽くせません。ご視聴いただくことをおススメいたします。

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2023年10月27日 (金)

中学入試コミュニケーション(08)探究型の学びと一般選抜対策解答力の合力が、学校の魅力を生み出す。

★中学入試において各私立学校が生徒募集を成功させるためにいろいろな創意工夫がなされています。しかし、いずれにしても教育内容の魅力がなければ生徒募集が成功しないのは今や明らかです。

★かつては、入試要項、進学実績がポイントでした。しかし、入試要項の革新は、どこも行ってきてそれほど大きなインパクトはなくなってきました。それでも毎年少しでも変えることは意外と大事なのですが。

 

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(合力が、結果的に偏差値を右にシフトさせる)

★進学実績は今も大きなポイントですが、総合型選抜や英語の資格試験のスコアなどでも、いわゆる偏差値に関係なく合格できるようになってきたため、中学入試時の卒業時の偏差値の相関はかなりフラットになってきました。

★しかし、大学受験業界はそれでは市場が縮小するので、大学の偏差値ランキングなどのくくりで中高のランキングを出したりやはり創意工夫しています。

★そんな状況の中、3年間じっくり探究型タイプの学びを行うことで生徒の好奇心・開放的精神・問いづくりの自走ができるようになる学びの環境をつくって、少しずつ一般選抜対策型の解答力を強化する授業をしていく学校が増えてきました。

★不思議なもので、生徒は急に伸びるのです。一般選抜対策の解答力を鍛えているだけでは、好奇心や意欲というものがすべての生徒の内面に湧き上がってくるわけではありません。一見この対策は合理的で効率が良いようですが、オール学校の勢いというものがうまれにくいのは経験済みです。

★先に探究型の学びで好奇心や興味・関心がわき上げる体験や対話ができる開放的精神が広がり、自分で問いを生み出していく状況ができると、不思議にも一般選抜対策を自走していくようになるようです。もちろん、そおまま総合型選抜でチャレンジする生徒もたくさんいます。

★こうして、3年くらいじっくり2つの軸を行い、合力としてのベクトルを生み出していくとその学校の魅力がにじみでてきます。

★一方で、ふしぎなことに探究型タイプの学びだけやっていても、意外とそうならないのです。ユートピアとディストピアの弁証法が生み出すプロトピアが生まれるとき、オール学校で人間力の多様な魅力があふれ出るようです。どんな学校がそうなのか?

★実は偏差値レンジに関係なく、それを行うと魅力があふれでます。すでにみなさんは説明会に行ってそれを感じられているはずです。私が例を挙げるまでもないでしょう。

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中学入試コミュニケーション(07)成長曲線の新しい考え方 首都模試の山下さんと北さんとの対話から

★昨日、首都圏模試センターの神田オフィスで、同センター代表取締役山下一さんと同取締役教育研究所長北一成さんと教育関係者の方々がミーティングしている場に同席させていただきました。山下さんと北さんの対話から多くの気づきがありました。その中で、受験生・保護者が感じる魅力は何か?という話がありました。

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★受験生・保護者は、たしかに現状の偏差値を考慮して、合格圏内や挑戦圏内から自分にとって魅力を感じる学校を選択するでしょう。その魅力は、第1ステージの中学の教育内容や第2ステージの高校の内容や第3ステージの大学入学あるいは社会に出た時点での子供の成長のイメージへの期待感で魅力を感じるわけです。

★参加していた教育関係者の方々は、そのイメージに各校が対応するには、結局、第3ステージからバックキャストして第1ステージ、第2ステージの教育内容をデザインしていくことが肝要だとなったのですが、そこでふと、そのときの成長の指標は、ステージごとに変容していくのではないかと。

★おおそうだと、私は思い、上記のようなグラフをまずイメージして、最初は偏差値で第1ステージ、第2、第3と進むにつれ、実は方程式も変わって、合体していただけなのだと気づきました。

★F1やF2のような偏差値指標だけで行くと、大学入学時は中学受験時点での偏差値そのものの算出の仕方が違いますし、社会に出たときには偏差値そのものがないわけですから、それを頼りにしていた生徒は困難にすぐぶち当たるでしょう。

★しかし、実はそういう私立学校はほとんどなく、F!やF2のような成長直線は、浅薄なフィクションに過ぎないのだと。

★実際には、最初の入口は偏差値でも、それぞれのステージで成長する方程式は、各学校が生徒1人ひとりを総合的にみて、最終的には、大学入学時や社会に出たときに、各分野でリーダーシップを発揮し社会貢献する豊かな人的資本を活用することになるわけです。

★それぞれの受験生・保護者は、合格圏内・挑戦圏内の中で、そのような第3ステージからやはりイメージし、それが実現できる第1。第2ステージの教育の内容が自分にとってマッチングしているかどうかで選ぶわけです。

★最初の入り口はたしかに偏差値的な軸が幅を利かせますが、結果的にA、B、Cのような曲線を描くわけです。

★新タイプ入試の意味を浸透させている北さん、思考コードで子どもの成長を複眼的な眼差しで見つめるシステム開発をしている山下さんならではの発想と現実化力だなと改めて感じ入りました。

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2023年10月26日 (木)

学校AI時代本格化 株式会社メイツ副社長伊藤さんとの対話から

★2016年衝撃的な出会いがありました。その年の11月ごろだったと思いますが、高田馬場の「個別指導塾WAYS」と「進学塾メイツ」を訪ね、両方とも経営している株式会社メイツの代表取締役の遠藤尚範さんと副社長COOの伊藤史弥さんにお会いしたのです。両方とも早稲田大学出身で、仲間と起業したICT塾です。背景に早稲田大学出身者を中心とするエンジニア集団がありました。

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(当時のお二人。左から伊東さん、遠藤さん)

★2015年から21世紀型教育機構のバージョンアップを考えていた私にとっては、ここで確信をいただきました。これからの学校にとってC1英語、PBL、ICTは三種の神器だと。それから特に伊藤さんには、グーグルフォームで、生徒の成長や状況をアンケート分析する探究をコラボしました。3年間くらいお世話になりました。

★その後、私の拠点が大阪と京都に移って、帰京後、すぐパンデミックでしたし、勤務校が高尾だったこともあり、会えていませんでした。しかし、メイツからの衝撃は、21世紀型教育機構の加盟校では具体化が進んだので、オンライン授業もいちはやくスムーズに実行することができました。

★三種の神器は、海外大学進学にも共感的コミュニケーション型PBLなどに拡大する武器として有効だったことが証明されました。

★そして、今春から私が市ヶ谷に勤務するようになると、時代は急にAIの日常化に突入しました。研修会でもAIのワークショップが頻繁です。しかし、まだ教科学習におけるドリル的なところが現状です。

★ところが、先進的な学校の校長に呼ばれて対話する機会が急に増え、合言葉はグローバルとAIだねという話になっています。

★AIを学校はいかに活用していくのか、私と一般財団法人日本私学教育研究所の伊東竜さんとも仕事帰りにパソコンを広げて生成AIの実験を行う対話が繰り広げられるようになっています。

★そんなとき、メイツだったら、すでにAIを活用する事業を展開しているだろうなと思っていたら、以心伝心(?)なのか、メイツの伊藤さんと合う日程がすぐに決まったのです。そして、思った通り、メイツは、塾の方は順調に拡大しているだけではなく、AIで日本の教育をアップデートする事業展開を行っていました。

★伊藤さんから話を聴いて、やはりグローバル×AIを学校で速く構築しなければとまたも確信しました。

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2023年10月25日 (水)

伊東さんと生成AIと私とで対話

★昨夜は、伊東竜さん(一般財団法人日本私学教育研究所)と夏に福島でコラボした研修のリフレクションを生成AIを交えて行いました。福島で行ったときのテーマは教科と探究をつなぐということがメインでした。

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(イラストはBing作成)

★つなぎ方は、テーマでつないだり、探究的な手続きを共有したり、PBL的なプロセスを共有したり、思考回路を共有したり多様です。

★テーマや探究的な手続きでいくとカリキュラムマネジメントが俄然必要になるし、PBL的なプロセスだと学内研修が必要になります。ところが、思考回路でつなぐと、普段の何気ない対話の中にヒントがあるので、仕事という感じではなくなります。

★しかも、思考回路は手順というより、3種類の問いを回すことです。クロスクエスチョンとサブジェクトクエスチョンとソーシアルイシュークエスチョンです。そして、その3つの問いの循環をまわす思考のコンセプトレンズが生徒の内面に身につけばよいと私たちは仮説を立てています。

★実際にパウロで共にプロジェクトをやったときに手ごたえを感じていたので、そのワークショップを福島で行いました。

★今回は、その思考のコンセプトレンズがどれくらい有効かという対話をしたのですが、そこに生成AIも入ってもらってやったんですが、5次元+1次元で分析しながら対話しました。生成AIを活用しないと、とてつもない時間がかかり、とても3時間くらいの対話ではできません。

★互いの問いを生成AIのプロンプトエンジニアリングで問い直すわけです。設定した情報をプロンプトエンジニアリングするわけですから、余計な情報は加わらないので安心です。もちろん、本当はどうなのか問い続けていくと、あれッと思うような回答が返ってきて、そこはどうなのかと反論の問いを投げかけていくと、最終的には生成AIが「話題を変えましょう」となって終了します。

★伊東さんと私ともう一人いる感じの対話になって、実におもしろかったのです。もちろん、気づきもありましたし、自動化するにはおそらく資金がいるだろうから、プロンプトエンジニアリングのうち基本的な問いの立て方2段階くらいで大学受験はなんとかなるかなと。

★ただ、まだ小論レベルの話で、理数系はこれからだねと。

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2023年10月24日 (火)

富士見丘学園と池田学園 WWL/SSHプレゼン交流 グローバル教育とスーパーサイエンス教育の交流

★本日午前中、富士見丘学園と鹿児島の池田学園は、WWL/SSHプレゼン交流を行いました。池田学園がLIVE配信した動画を拝見しました(すべては見ることができず残念でしたが)が、両校の生徒とも高1とは思えない探究と研究の成果をプレゼンしていました。

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★富士見丘の理事長補佐・校長補佐吉田成利先生によると、同校の高校1年生が月曜日から全員鹿児島を訪れ、池田学園の高校1年生と交流をしているということです。富士見丘は、SGH(スーパーグローバルハイスクール)認定校で、池田学園はSSH(スーパーサイエンスハイスクール)認定校です。成利先生によると新しい文理融合の見通しが立つ交流であるということです。

★実際、その通りで、社会課題を解決しようというベクトルは同じでありながらアプローチの違いが明快で今回の動画がアーカイブとして公開されるとインパクトがあるのではないかと感じました。

★富士見丘の生徒は、ロジカルシンキングとクリティカルシンキングを使っています。これは池田学園の生徒も同じですが、富士見丘の生徒はそのうえで、フィールドワークや検索、文献リサーチを通して、仮説的推理をしながら問題を探り当て、解決案やアクションプランを立てます。

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★池田学園は、好奇心旺盛に、不思議だなと思う現象のシステムを明らかにするために仮説検証的な手法をつかってまるで研究するかのように仮説を証明していきます。仮説検証をするために、多様な科学の学説モデルを使ったり、古文書の記述から、気象庁が持っていない江戸時代の気候現象をグラフ化したりしていました。

★そして大変興味深かったのは、互いのプレゼンに対する活発な質問です。

★池田学園の生徒は、富士見丘の仮説推理の検証に対し、具体的な例とか根拠の背景になる論拠を問うていました。

★富士見丘の生徒は、池田学園の生徒の研究プレゼンに対して、その研究がどのような社会課題を解決することにつながるのか、根本的なところまで聞いているのです。もし~だったら、こんなことができるはずだと仮説的推理を投げかけていました。

★探究と研究の推理の方法の違いが、明快になっていました。

★探究と研究はどうやらきちんと区別をして統合することができると気づきました。視聴していた私にとって大変な学びになりました。

★いすれにしても、両校とも一つの問題や現象を多角的に分析やアプローチをして、対症療法にならないように根本的なところに突き進むそのシステム思考もまた共通していました。

★「成長の限界」の主執筆者だったドネラ・メドウズは、SDGsのいわば生みの親でもあり、優秀な科学者でもあり、同時にシステム思考とメンタルモデルを世に広めたジャーナリストの側面も持っていました。彼女自身文理融合的な活躍をしたのですが、今回のWWL/SSHのプレゼン交流は、ドネラのような人材を生み出す拠点となると思います。

※富士見丘の説明→WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業は、イノベーティブなグローバル人材を育成するため、高等学校等と国内外の大学、企業、国際機関等が協働してより高度な学びを提供する体制をつくることを目指しています。
先進的なグローバル教育を実践する全国の高校から28校(2019年度:10校、2020年度:12校、2021年度6校)がカリキュラム開発拠点校に選定され、本校は2020年度より拠点校として文部科学省の指定を受けました。

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聖学院の目に見えない魅力③生徒の才能が開花する多様な方法&ツール

★聖学院の先生方は10年以上前から対話をする機会をいただいています。結構多くの先生方からお話をお聞きしていると思います。それぞれの先生方がいろいろな学びの方法論やツールを創意工夫し、情報共有しています。また、今回も新刊「シリーズ学びとビーイング3」で同校の先生方3人が執筆されています。その中で日野田教頭は、「魂の問い」を先生方が生徒と共有しているとまとめています。広い視野と深まりゆく視座のヴァージョンアップに驚きました。

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★私が思いつく範囲で、それらの多様な方法とツールを並べてみました。

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★体験→多様な方法論とツールを介した対話型の学び→生徒の成長と才能の開花→Only One for Others。その結果として、国内外の様々な大学進路。大学進路については、受験雑誌で伸びている学校のランキングによく掲載されてもいます。

★体験は目に見えます。進路先も目に見えます。しかし、そのプロセスはなかなか目で見ることはできません。

★しかし、聖学院の先生方は学内で最善の学びの環境をつくる創意工夫を共にしているし、そのことについて書籍で著す先生方もいます。

★広報部長の早川先生が、そのような仲間を信頼し誇りに思っています。そして、上記の多様な方法論やツールをインテグレーとして語ってくれるのです。方法論については詳しくはここでは述べませんが、多くの人がどこかで目にしたり一度はセミナーなどで触れてみたことでしょう。先生方が実に研究熱心であるか了解できると思います。このことが聖学院の魅力を創っている大きなポイントです。

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学校は国民がつくる学びのコミュニティ  国家が支配する機関ではない

★東近江市長のフリースクールを巡る発言が問題になっています。自治体のリーダーの発言の背景に、無意識なのでしょうが、明治近代国家時代の国家観や学校観が残っているのでしょう。そして、おそらく今回のように発言をしたからそのことが明らかになっただけで、同じような感覚の人は、自治体リーダーに限らず、いると考えた方がよいかもしれません。

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(イラストはBing作成)

★学校は公立学校であれ私立学校であれ、教育関連法規に定められているからと言って、国家に支配される機関ではありません。国民というか市民の税金をはじめボランティア協力によって成り立っているわけです。それは国家が学校を支配するためではありません。子どもの未来を守ることが国という生活圏をみんなで豊かにしてくことだからです。

★国民や市民が税金だけ払って直接かかわっていないから、学校づくりに参加していないわけではないのです。子どもの未来を考え、賛同する学びのコミュニティを選び託しているということは協力する行為です。

★ですから、公立学校のようにスタンダードが我が子に合わないことがわかれば、選択肢が、私立学校だけではなく、他のコミュニティが多様にあってよいのです。

★国や自治体は、それらのすべてのコミュティをコントロールするのではなく、憲法と教育基本法の枠をはみ出ないようにリスクマネジメントするだけです。

★コミュニティを創るには、共感的コミュニケーションを心の底から行えるように自治体リーダーはトレーニングしなくてはならないし、そもそも抑圧的コミュニケーションや同調圧力型コミュニケーションをする市長や議員を選んではいけないのです。

★国民であると同時にグローバル市民であるためには、私たち大人も共感的コミュニケーションを学ぶ必要があります。

★子供たちが不安や心配でガラスの心を震わせるような状況をつくる抑圧的な組織は共感的コミュニケーションにシフトしなくては。学力不振という言葉もそもそも抑圧的です。学力を土壌とスキルにきちんと整理し、土壌が身につければそれでまずよいわけです。たとえば微分と積分の考え方やその考え方が社会課題解決につながることがわかればもう十分な土壌が開拓されたわけです。そのうえに超難問を解けるスキルを組み立てたいという興味関心がある子供は、その道を選べばよいし、そうでない子は、自分の興味関心ある土壌を耕し、その上に優れたスキルを創っていけばよいのです。そのような学びの環境が大切です。

★学校の教育課程の見直しとは、時間割とか単元の充実とかもありますが、国民や市民がみな土壌を耕せる環境をつくればよいのです。その方法は、今や体験やワークショップ、プロジェクト活動などたくさん花開いています。

★嫌でも何でも国民の義務なんだから学校は行かせなくてはならないではなく、安心安全で好奇心が溢れるような環境を創ることが前提で初めて義務なわけです。

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2023年10月23日 (月)

富士見丘 中高一貫校レバレッジ度総合ランキング「富士見丘がトップ」

★「週刊ダイヤモンド2023年10月28日号」の特集は「わが子が成長する中高一貫校&塾」。その中で、「2024年度入試 全国中高一貫校314校 レバレッジ度ランキング」というページがあります。首都圏の中高一貫校レバレッジ度総合ランキングのページのタイトルは、「富士見丘がトップ奪還」とあります。

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★直近の入学時と卒業時の偏差値の回帰分析による「学力伸長度」を算出して出されているようです。いずれにしtも、富士見丘の今春の卒業生数は102人。早稲田6人、上智19人、理科大2人、GMARCH+津田塾52人。同誌には記載項目はありませんが、海外の世界大学ランキング100位以内の大学の進学者数なども考慮すると、この結果は十分に実感があります。

★早慶上理科大のレバレッジ度でも、富士見丘は6位、MARCHのレバレッジ度では8位、MARCHの現役進学率では17位になっています。

★富士見丘は、大学進学実績や偏差値を挙げることを目的にした教育は行っていないことは説明するまでもありません。海外の帰国生から人気があるのが何よりその証拠です。帰国生は世界に通用する教育環境があるかどうかをまず選択判断基準にします。

★彼らは、選択の自由や議論の自由、アクションの自由があったうえで、進学実績も優れている学校を選択する傾向になります。その意味で富士見丘は評判をよんでいるのですが、それがこのような進学実績に焦点をあてたランキングでもズレがないということが証明されて、在校生は改めていい学校だと確信を深めていることでしょう。

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学校づくり委員会 AI脅威論は近代の無意識「心身二元論」に帰因?

★学校づくり委員会(東京私学教育研究所が実施する研修を創る委員会。25委員会あるうちその一つが本委員会)は、毎月1回土曜日に行われています。4時間くらい対話をする委員会で、毎回委員の先生方がレジュメとかレポートを提出してディスカッションをするわけです。私も参与的オブザーバーとして参加させていただきます。毎年世の中が注目しているテーマについて、その背景にある真実は何かを追究しているというのが私にもわかってきました。

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★文科省や各大学が、世の中のAI脅威論に対し対応する生成AIのガイドラインを出しているわけですが、その信頼性や妥当性以外に、正当性を語り合っています。

★もともと委員長の梶取先生(現大妻校長・前武蔵校長)は、身体と言葉の関係性を体系化したり整理をしてきました。それと生成AIの関係をどうするのか、新たな思考を繰り広げているのです。そして、委員の先生方も、その考えに共感しながら、それぞれの切り口でアプローチしています。

★自分たちが創ってきた教育に生成AIはどうつながっていくのか、独りよがりにならないために、世の中の研究やセミナーに参加し、情報を収集しています。また、政財界官の資料やデータを分析もしてもいます。そして、そもそも近代とは何かから、AI脅威論がどうしてうまれてきたのか、その原因を近代の無意識であるデカルトに影響を受けた心身二元論にあるのではないかというところまで詰めて行っています。

★哲学や社会学、心理学などの学問的分野では、近代を徹底的にフィールドワーク。解読、解釈するフレームやレンズを生み出し、心身二元論のアポリアを掘り起こしていますが、ポピュリズムに代表されるような状況に至る近代世界が生み出した無意識は、まだまだ心身二元論が根付いています。

★梶取先生は、そのような学問的成果をすでにご自身で教育現場で感じ、その心身二元論を超える教育活動を行ってきたわけです。したがって、AI脅威論を支える無意識の二元論を露にして、そのアンコンシャスバイアスを払拭する教育出動をすれば、AIの人間を超える優秀性を活用しながら進めるのではないかと考えているような気がします。ご自身はまだまだ追究の途上だと語るので、結論を急ぐ必要はないのですが、私はどうもせっかちですね(汗)。

★ガイドラインも、対症療法的な作り方から、アップデートしながら、その根本的な問題に気づき組み立てていけばよいのですが、この心身二元論のパラダイム転換をすることは、実は結構社会のあり方を変えるインパクトがあるので、果たしてどうなるやら。ここはやはり私立学校ならではの発想の自由の余白が有効かもしれません。

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聖学院の目に見えない魅力②多様な才能が開花する土壌と早川先生の観察力×洞察力

★早川先生のお話をお聴きしていると、高校新クラスとして設定されたGICも今年一期生が卒業年を迎えていて、すでに総合型選抜など推薦入試型選抜で結果を出し始めていて、手ごたえを感じていることがわかります。と同時に、中学から高校にシフトする時に、大学入試の方法の種類や超難関大学と難関大学の区別でコース分けをしているのではないけれど、それ以外の生徒の内面の豊かさや1人ひとりの才能を開花する条件でコース分けしているということは、目に見えないので、表現するのが難しいと静かな情熱をもって語ります。確かに見える化は難しいけれど、説明会に参加すると多くの受験生・保護者にはしっかりと伝わるというのが、目に見えない内面的豊さの共振力です。

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(正門からスロープを歩き階段を上っていくと生徒の才能・賜物があふれているシンボルが目に飛び込んできます)

★共振力があるのは、聖学院の人気をみればそれでわかるので、それでいいのではないかと思うのですが、早川先生は、理科の教師でもあり、MITメディアラボの考え方をレゴの認定ファシリテータとして受け継いでいますから、大切な想いや才能の豊かさをビジュアライズ(可視化)したいのだと語るわけです。

★ビル・ゲイツやジョブスが憧れたノーベル賞受賞したファインマン博士は、たしかに好奇心・開放的精神・問い生成のループは科学者の基本的能力だと語っています。早川先生がそのようなファインマンの眼差しとシンクロしているのは偶然ではないでしょう。

★というわけで、早川先生の考える「その大切な中学から高校にシフトする際の生徒1人ひとりの才能開花の方法の違い」とは何でしょう。私の能力では追いつけないのですが、聖学院の先生方と今まで対話してきたことを思い起こしながら、考えてみたいと思います。

★早川先生は、先輩教師の考え方やものの見方感じ方を多角的に観察し、洞察してきた結果、それらを統合する考え方をしているようです。伝統と革新の統合の生成する過程とはこういうことなのだと感動しました。

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2023年10月22日 (日)

聖学院の目に見えない魅力①レゴの意味

★先日、聖学院で広報部長早川太脩先生にお会いできました。早川先生は、LEGOⓇSERIOUS PLAYⓇメソッド教材活用トレーニング認定ファシリテータでもあります。つまり、聖学院と言えば、思考力入試やレゴキングですが、その企画運営の中心的なメンバーでもあるわけです。このことはとても重要な意味があります。

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★レゴというのは、実はMITメディアラボの故シーモア・パパート教授やレズニック教授などのデジタルネーティブである子どもたちの創造的思考力をファシリテートしたいというコンセプトに共鳴したレゴ社が教授たちと協働して遊びと学びのツールとして転換して世に広まったものです。

★早川先生が理科教諭ということもあり、このMITメディアラボのPBLの理論と実践を学んだのが、この認定ファシリテータとして結実しているのです。その背景があっての思考力入試やレゴキングです。また、高校から3つのコースがあるのは、思考力の背景にある8つの知のバランスに応じて生徒の才能を開発し、それぞれの知の発達に応じたキャリアデザインのコンセプトがあるからです。

★実に深い生徒と教師の対話が生みだす、Only One for Othertsの才能。その生成過程は実に魅力的で、海外では、スタンフォードやハーバード、MITメディアラボなどで深く研究が進んでいる分野です。残念ながら、日本の教育学会は、その外国の研究を紹介するものが多く、独自の研究は聖学院のような中高においてなされているのです。

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★ですから、そこは海外から見たらたいへん魅力的なところです。昨今はAI時代です。ますます、このデジタルとリアルな学びの環境をアップデートしている探究型教育を行っている聖学院の教育は世界から見たら超魅力的です。

★しかし、日本では、そこはまだまだ目に見えないと言われる部分です。目に見えない。だからこそ魅力的だと思うのですが、世界の教育の質を見抜く目が受験業界では熟していません。

★とはいえ、気づくひとたちは増えてきています。偏差値以外の基準で教育の魅力をとらえようとする傾向がでてきています。

★聖学院を選択するというのは、そういう多角的な複眼思考の持ち主、つまり子供の未来を考える方々だということを示唆してもいます。

★そして、その目に見えない生徒1人ひとりの才能の開花が可視化されパフォーマンス化される機会が11/2(木)・3(金祝)第117回創立記念祭(文化祭)です。まずは参加してみてはいかがでしょうか!

 

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2023年10月21日 (土)

【研究所ブログ第4回】は初任者研修の新しい仕掛けについて紹介

「【研究所ブログ第4回】初任者研修の新しい仕掛け」では、私立学校の初任者研修で、先輩である委員の先生方が、自分たちと同じような複眼思考ができる柔軟性と、その柔軟性を持続可能にする時空の余白がデザインできるようにという思いが反映されているWS体験を行ったことについて紹介されています。

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★複眼思考を持つには、テーマを自分で選択したり作ったりする必要があります。そして、創るには、時間的空間的余白のデザインが欠かせません。開放的精神がないところに好奇心も創造力もわいてきません。

★それを実現するために、マクロ、メゾ、ミクロの多面的なフェーズに分けたテーマを設定しました。そこから2つを自由に選択して受講し、気づきの中からでてきた探究したいとテーマを一人一人が書き出し、共有。仲間をつくって対話をして、また全体と共有するという流れでした。

★このWSはOST(オープン・ステージ・テクノロジー)というワールドカフェを組織開発に応用できるようにしたハリソン・オーエンの開発したものを委員の先生方は活用しました。

★仲間づくりや対話の方法をコントロールしないので、果たしてどうなるか不安もあったようですが、やはり深く自分を見つめる参加した先生方。そしてそれに共感することで絆も広がるという成果が生まれました。

★研究所ブログでは、参加した先生方のアンケート回答を紹介しているため、先生方の気持ちがしみじみと伝わってきます。

★このOSTは、他の委員会(東京私学教育研究所のサポートする委員会は25あります)の先生方にも興味と関心を喚起しています。OSTのおもしろいのは、シンプルなコンセプトルールは共有しますが、それ以外は委員の先生方が、創意工夫することが肝要で、プログラムデザインをする過程も複眼思考を柔軟に活用し対話をする仕掛けになっているのです。

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東京私立学校が世界戦略の流れに対応し転換し始める~鈴木裕之さんがロンドンからみて語る

★GLICC代表鈴木裕之さんが、コロナ後久々にロンドンでセミナーを開催して帰国。鈴木さんは、ロンドンからみて、改めて日本の教育がヤバイと感じたと同時に、そのディストピア的ヤバさを希望のヤバさに転換する東京私立学校の動きがあることにやはり改めて気づいたということです。そのことについて、対話しました。それで、少しいつもと違う次のようなタイトルになっています。GLICC Weekly EDU 第148回「ロンドンから見た日本の<ヤバイ>教育の2つの意味」

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★このGLICC Weekly EDUという番組は、まず時間が長いし、一般ウケするような話題はしていないので、何週間かして200人を超えるとまあいいかなぐらいに構えているのですが、さきほど(配信17時間後)見ると、149人ご視聴してくださる方がいました。ちょっと驚きです。

★私立学校のグローバル教育やICTの教育を、ロンドンから見ると、受験市場の中で私立学校が互いの魅力を競い合っている場合でないことがわかります。陰謀説とかではなく、イギリスが市民革命、産業革命以降とってきた世界戦略が、パワーシフトしながら脈々と継承されていて、その掌で日本の教育はVUCAだとか言いながら騒いでいても、どうなのだろう?という問いを鈴木さんは投げかけているわけです。

★そして、そのことに気づき始めた東京の私立学校が、世界戦略の流れに便乗するだけではなく、飲み込まれないようにするために、世界が魅力を感じてくれる独自のそれでいて世界的規模の魅力を創ろうとしているわけです。一般の受験業界では、あまり語られない切り口で鈴木さんは語っています。ぜひご視聴ください。

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2023年10月20日 (金)

2024年中学入試はレバレッジポイント(01)文杉の場合

★昨日、文化学園大学杉並(以降「文杉」)の校長松谷先生、副校長青井先生、次世代教育開発部長染谷先生と対話ができました。DD(ダブルディプロマ)ですでに有名な学園ですが、さらに次に進んでいるというのです。その具体的なプランは2024年度に公開されますが、その準備が多様なプロジェクトで展開しています。その辺りは、1月号でまとめてみたいと思います。

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★松谷校長は、一般財団法人東京私立中学高等学校協会の常任理事でもあって、東京私学全体のビジョンを考えつつ、その最前線で学園が貢献しなければという強い意志を持っています。それゆえ、2024年からは、大きな転換点だと。感動教育をひごろから行っていますが、それは世界の子どもたちも感動できる教育であってほしいと。つまり、世界が文杉の教育に魅力を感じるように教育環境をデザインししているし、もっとしたいのだと。

★そのミッションをうけ、この夏青井副校長は30人ずつ生徒といっしょにインドとドバイに研修旅行に行ってきました。青井先生は、今のDDコースを構築しているキーパーソンでもあります。

★そして若手教員たちのスーパーロールモデルで教育界で注目を浴びている若き俊英の染谷先生は、シンガポールに教育リサーチに行ってきました。

★DDのカナダ、インド、ドバイ、シンガポール。これをぐるっとみてくると、あることに気づきます。小さなイギリスが、実は世界の人口の25%をシェアする人口(コモンウェルス機構として)を持っているのだと。そしてその国々は軍事、経済などで協力ができる体制になってもいるし、何よりシェークスピアやニュートン、ターナーなど以来の教育や学問という世界知を共有しているのです。その世界知の泉がオックスブリッジをはじめとするイギリスの大学です。

★先生方のお話をお聴きしながら、近代的民主主義と産業革命の両方を世界で最初に確立したイギリスの世界戦略が今もこうして続いていることに気づき驚きです。

★アルビン・トフラーも言ったように、軍事力→経済力→知の力とパワーシフトしているその世界戦略。しかしその戦略の光と影のうちの影の部分が色濃くなってきたので、カナダを筆頭にOne Earth Projectが発動し、ディストピアからプロトピアに転換する時代がやってきたというのが、世界の動きだというのを、文杉の先生方は感じているのです。

★そのために自分たちはどうするのか?それは受験市場で教育の魅力の比較優位を競うようなことをしてはいけないのだと。世界が魅力を感じるような教育出動をしようではないかという未来創りなのだと。

★文杉は、DDコースのコンセプトが学内全体に浸透しています。地球市民のマインドとスキルが浸透しているわけです。もちろん、AIや英語という道具を使うハイパフォーマンスは言うに及ばずです。このハイパフォーマンスを生み出すコンセプチュアルな学びの場が確立しているのです。

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2023年10月18日 (水)

鈴木裕之さんとの対話 世界戦略自動装置をOne Earth Peaceに転換できるか

★今週の金曜日、鈴木裕之さんと対話をします。GLICC Weekly EDU 第148回「ロンドンから見た日本の<ヤバイ>教育の2つの意味」という題目自体がヤバイ感じです(汗)。

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(作成はBing)

★パンデミックで、しばらくロンドンにいっていなかったGLICC代表鈴木さんが、先日ロンドンで日本のグローバル教育を行っている学校を紹介しに渡航していました。ロンドン支社も出すという革新的な活動も行っています。

★なぜそんな社会貢献的起業活動をしているのか?聞いてみたいと思います。

★鈴木さんは、今日本でロンドンで見ている先進的グローバル教育には2つのヤバイ意味があるということに気づいています。

★その一つは、最大のアンコンシャスバイアスである世界戦略に乗り遅れてはいけないのだという流れとそれを何とかしなくてはという流れの二つです。ディストピアかユートピアあるいはプロトピアか?

★アルビン・トフラーが21世紀は教育の世紀だと言った意味は、何だったのか。100年前にケインズが孫のために2030年以降について予言したことはなんだったのか?秋の夜長いつものようにウダウダ対話します。

★オックスビレッジのビジョンに迫ることになると思います。

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2023年10月17日 (火)

聖パウロ学園高等学校 小島綾子校長 新しいリーダー像に挑戦

★現在、日本のいや世界の学校は制度上の困難や組織上の困難や生徒の成長発達段階の個別最適化による人手不足の困難にぶち当たっています。全ての学校で大小の違いはあれ、日々このような困難に直面しているのです。おそらく、それは学校だけではなく、組織であれば同じく直面する困難でしょう。実際に日本の1人当たりのGDPは激減です。全体のGDPは何せ少子高齢化とはいえ、シンガポールに比べるとわかるようにものすごく多いのですから、あたかも経済大国であるかのように見えますが、ミクロ経済では火を噴いています。

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★中学入試は、5年以内にころがるように小学生の人口は減ります。人口が減ること事態は、中学入試の定員からみれば、あまり影響がないかのように見えますが、今の日本経済は、人口と経済成長を結び付けていますから、ここから経済システムが変わらなければ、ますます経済力は衰退していきます。

★高校入試もおしてしるべしですが、東京23区はしばらく横ばいが続くので、見た目は緊急事態はないようにみえます。しかし、この世間の不安定さと繊細に連動してしまう環境や状況にある生徒が通信制に流れていますから、今でもその影響はでています。

★小島綾子校長と彼女が丹念に生徒と共に創った「森の教室」でそんなことについて対話をしました。すると、小島校長は地域の高校と比較優位の魅力を打ち出しているだけでは、やがて地域ともども沈んでしまうという危機感を持っていることがわかりました。この「森の教室」は聖パウロ学園が地域の方々と共にボランティアによってなんとか活性化してく共創象徴だというのです。

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★そして、森に立っていると、直接私たちはOne Earthにつながっていることを実感するのだと。まさにグローバル教育の真骨頂はここにあると。世界の子どもたちが、一度はここに立ち寄りたいという学校の魅力を生み出すことが今後のパウロの道なのだと。

★そのためには、教師も生徒も共に創るマインドとスキルと黄金律に裏付けられた人類愛が大切だと。

★そして、そのような組織はどうしていったらよいのか。トップダウンとボトムアップ。このことばはビジネス用語ですが、あるいはナノテクノロジーの制作過程の時などに用いられますが、もともとは、ネオプラトニズムの発想です。1なるものは多であり、多なるものは1である。この発想とカトリック神学が中世頃からインテグレイトされていきました。

★そしてその中世神学は、今の資本主義(神学者は理想的資本主義を考えていたと思いますが、歴史は神なき資本主義が大展開してしまいましたが)の萌芽の時期でした。ですからビジネス用語の発想につながるのもそう不自然ではないようです。

★それはともかく、1なるものは1でいくか、多なるものは多なるものであるでいくか、1なるものは多であるでいくのか、多であるものは1であるでいくのか?

★小島校長は、カトリック神学的には、1なるものは多であると多であるものは1であるの両方を往還できるような組織マネジメントに挑戦しようという話を打ち明けてくれました。

★そうなると、どこまで多であるのか、多なるものを1にする方法は?と当然なります。そんなことにすぐ回答がでたらリーダーシップ論や組織開発論の無限に出版されている現在の状況はありません。

★それは、小島綾子校長が、勝俣副校長、大久保教頭、松本主幹と今のように対話をしながら複雑適応系の自己組織化をマネジメントしていく挑戦です。

★私が校長になった正当性は、外部からひょこっと就任したのですから、理事会が決定したという合法的正当性しかありません。この合法的正当性を否定すると、そもそも校務分掌が成立しません。しかし、ただ合法的正当性だけの校長はあまり機能しないのです。

★パンデミックの2年間、オンライン授業にしたり、休みをどうするか、だれにとっても未経験だったので、過去の経験を参考にできません。ですから、合法的正当性のある決裁者が決定することでみな一丸となって進んだわけです。感謝しています。

★しかし、新型コロナウィルスが5類になるや、元に戻るべきものは元に戻り、新しく生まれるものは新しく生まれるタイミングで、私は40年間以上パウロでみなと学校を創ってきた小島校長に還しました。カエサルのものはカエサルに、神のものは神に。毎朝職員室に私は最初に入るのですが、たいてい次に松本先生がやってきますが、それまでの間一人でいる時に、いつも聖パウロと対話をしていました。そのとき今の言葉が聖パウロから伝えられたののです。ちょっとオカルト的かもしれませんが(笑)。

★そんなわけで、小島校長は、もちろん理事会決定ですから合法的正当性を背景にしていますが、私の場合と決定的に違うのは、カリスマ性が彼女の校長の正当性でもあるのです。

★カリスマ性とは、権力を振るうという意味ではありません。真理を語り真理を行う魅力があふれていることを意味します。

★このカリスマをパウロの組織が全体で輝かすのです。1なるものは多であり、多であるものは1であるを往還するエコシステム組織マンジメントに小島校長はチャレンジしている。森の教室からパウロの森を眺めたとき、そう感じたのです。

 

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2023年10月16日 (月)

中学入試コミュニケーション(06)新タイプ入試 探究的手続きで知識を自ら創る聖学院の思考力入試問題に学ぶ

★2013年以降、新タイプ入試が、2科4科以外に行われ始め、今日かなり増えています。おそらく述べですが、首都圏中学入試においては1万人くらい受験生がいます。大学入試でいえば「総合型選抜」に相当すると言われています。知識を知っているかどうかではなく、知識を活用できるかどうか、さらには聖学院の思考力入試のように新たな知識を創ってしまうほどのものもあります。

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★受験においてしばしば知識は、名称と辞書的なあるいは用語集的な意味としてのコンテクストを覚える成果物として捉えられています。ですから、暗記すればよいと思われがちです。実際受験と暗記はセットでしたね。

★しかし、もともと知識は、辞書や用語集に格納される前には、先人が考えたり感じたりしたもののうち客観性や公共性を付与された成果物として創られたものです。いちいち考えや感じたコンテクストや具体的状況、それらを認識したり振り返るプロセスなどをひもといていたら大変です。ですからショートカットして名付けてスムーズに使えるように効率性や便宜性を備えたわけです。

★その知識に到る過程こそが思考であり探究なわけです。知識を学ぶとき、このような探究的な手続きをすることで記憶格納庫である海馬を活性化したりするわけですね。この探究的手続きをカットして名称と意味を覚えることを暗記というわけです。意味はわからなくても、空欄補充の前後の文脈で条件反射的に名称がでてくるような暗記をしている場合も結構あります。

★そのような暗記による知識の学び方ではなく、探究的な手続きを経て知識を記憶し、活用できるかどうか、つまり思考力を豊かにしてきたかどうかを思考力入試ではみるわけです。ですから知識ではなく思考としての探究をという二元論は脳科学や認識論的には世俗化したものの見方です。

★レゴなどをつかって、自分の気持ちを表現する、問題意識を表現する、解決策を表現することは、知識を生成する思考過程です。探究的な手続きができると評価されます。知識と思考や探究は一体なのです。当たり前ですよね。それなのに、知識と思考を分けてきた。不思議ですね。

★ともあれ、その新たな知識は、入試段階では生徒1人ひとりの主観ですが、聖学院は試験の中で振り返るピアインストラクションもあります。そこでリスペクトし合ったり、理解されるることによって、インター主観が形成されます。それが公共性を帯びれば客観性へと発展します。

★そのような知識生成力を持っていれば、先人たちが創ってきて辞書や用語集に収められるている知識を再現しながら再発見して記憶していけるでしょう。

★知識を暗記するのは不得意でも、思考力入試で、知識を生成する探究的手続きを冒険できる生徒は、当然合格するわけですが、入学後、知識を再現し再発見し記憶し活用し、さらに新たな知識を生成し創り上げることができるわけです。自ずと成績優秀者になるわけです。

★聖学院の思考力入試は、知識が再現と再発見と新生成による新発見と創造によって社会をアップデートしてきたことそしてアップデートしていく作用があることを明らかにした画期的な試験です。

★中学入試段階で、「再現と再発見」と「新生成による新発見と創造」の作用両方が得意な生徒もいるし、どちらかしか得意でない生徒がいます。それは個々人発達段階がちがうからです。この発達段階の違い(最近接発達領域の差異ということでしょう)に対応する多様な入試が重要なのは言うまでもないですね。生徒の才能が開花するには、この多様性を受容できる入試制度が今求められているのです。

★今後は、既存の知識を「再現」「再発見」をショートカットして活用するのは、AIに任せ、「再現と再発見」「新生成による新発見と創造」の力と実は新たに創ったものの名づけは、まだ人間の手に残るとよいですね。

★人類は、しかしAIに始まったことではなく、イノベーションするたびに、次なる新発見や創造をしてきました。この微妙なズレがなくなったとき、人類はもはやAIに太刀打ちできなくなります。さて、今後は人類はどんな進化をしていくのでしょうか。怖くもあり期待感も高鳴りますね。

★いずれにしても、中学入試コミュニケーションの真骨頂は、受験生が探究的な手続きによって知識を記憶しさらに新しい知識を創造する創造的対話ができることなのです。

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中学入試コミュニケーション(05)理科の中学入試問題 科学的眼差しは子どもの時から 本郷の理科に学ぶ

★中学入試における理科の入試問題の意味は、子どものころから科学的なものの見方や考え方・感じ方を身につけるのに大いに役立ちます。イギリスでは古くからニュートン時代からすでにあったと思いますが、専門家だけが科学の眼差しをもつのではなく、市民も共有できるように、サイエンスコミュうニケーションが行われていたといいます。日本では21世紀になってこの存在が東大の講座になったりしてようやく認識されるようになってきました。今では、立教大学の古澤教授のようにサイエンスコミュニケーターが学問的裏付けを持ちながら活躍しています。

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★この役割と同じ働きをするのが理科の中学入試問題です。ここのところ日食や月食などだけではなく、金星食など他の惑星にも同じような現象が起こることが話題になっていますが、そのさまざな天体ショーをいっぺんに扱って問いをデザインしているのが本郷の今春の理科の問題でした。

★天体の問題なんて、なんて壮大なんだろうと、まったく身近ではないと思いますか?夜空を見あげて何も感じない人はあまりいないでしょう。人によっていろいろ感じ方は違いますが、天体は大昔から人間の生活にとって身近な話でした。

★たしかに、本郷の天体の問題は、他の問題に比べ、受験生にとってはハードだったようです。でも基本は、三角形の概念と時間の移り変わりをうまく活用すればできるので、時間があれば大丈夫なすてきな問題でした。天体ワークショップで生徒とシミュレーション体験ができるとおもしろいですね。

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★いずれにしても、それぞれの星との関係を考えたとしても、その基本原理や仕掛けは同じなのですから、これぞ科学の眼差しですよね。同時に分解と統合と変形という数学的思考も活用していますから、広く深い学びができます。

★ほかにも、レールに隙間があるのはなぜだろうという、これも踏切などでよくでくわす事物ですね。

★好奇心、そしてなぜだろう?という問いを素直に言える関係(開放的精神)をつくるのが、ジョブスやビルゲイツが憧れたノーベル賞受賞者のファインマン博士の語る科学者の基本的な眼差しです。

★基礎学力は必要です。でも、それは無理矢理暗記することを推奨しているのではないことは、今更言うまでもないと思います。好奇心となぜだろうという疑問と調べたり訪ねたり教え合ったりできる開放的精神があれば、知識を調べたり活用したりしますから、基礎学力は身につきます。基礎学力は、こういう探究的な手続きをして身につける方が楽しいですよね。

★答えのない問いが大事だと大げさに提唱されがちなのは、わからないわけでもないです。PRのときには必要です。しかし、子供にとって、大人にとって知り過ぎていることでも、最初は未知の冒険なのです。一つ一つ探究の手続きを通してその未知の冒険をし続けられる環境が学校です。よく学校はオワコンだという方がいます。

★ウクライナやイスラエル、パレスチナ、アフガンをはじめとする惨事が起きている場所で、「学校はオワコン」だと言えるものですか?本郷の入試問題を通して、学校の先生方が取り組んでいる壮大な未知の冒険プロジェクト作りの様子をイメージしてください。そんなことも中学入試コミュニケーションの役割です。

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2023年10月14日 (土)

中学入試コミュニケーション(04)社会の中学入試問題 極めて重要な役割を果たす時代 麻布・武蔵・開成の問いのデザインの意味

★私たちにとって大切なのは興味と関心、好奇心です。これは子供も大人も必要なものです。特に社会科における問いは、「関心」という世界の重大問題が自分事であるということに気づく大切なチャンスです。そのことに気づくのは小学生だからまだ早いなどと言えないことは、日々ひしひしと感じるともすればタイタニック号化している日本を含む世界の現象である事態を「5つの目」で見れば、わかることです。

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(イラストはBing)

★マザー・テレサが「愛」の反対語は「無関心」と語ったことはあまりにも有名ですが、今この言葉は、誰にでも大切な重みを感じる言葉でしょう。ですから、社会科でいう「関心」と同意語は「愛」なのです。

★社会科というと暗記ということがすぐ思い浮かびます。暗記は無意味だという方も最近多くなってきましたね。たしかにそういう側面はありますが、どうしてでしょう。それは暗記と記憶の違いを考えてみるとわかります。私たちの中に、記憶を否定する人はいないでしょう。記憶は無意味だという人はそうはいないと思います。記憶がなければ私たちは、過去のことを想いだせないどころか、こう書いている間も意味を捉えることができないで困ってしまいます。

★それほど大事な脳神経作用です。暗記と記憶は共通点もありますが、いまここで私は暗記しているわけではないですね。記憶はしています。ですから、無理矢理生きる事態とかかわりを持たずに暗記することは苦痛だとなるわけです。

★つまり、社会科の知識は、私たちの生きる事態にかかわるようにしていけば記憶はできるのです。

★日本の自然や風土を知ることの重要性は、日々気象レーダーをみていると私たちの生きる事態にめちゃくちゃ関係してきます。気候変動に関心を持つことは、自然と社会の関係を知り、癒しと同時に痛みもしる「関心」を持つことになるでしょう。

★自然と風土がわかれば、産業構造についてもわかるし、産業構造を変える情報産業の特徴もわかります。そして、日本史を振り返った時、産業構造が変わることが何を意味しているかは、昔の話で終わるのではなく、今との関係で理解を深めることになるし、未来を考える「関心」にも広がります。

★5つの目がフル回転するのが社会科の「関心」の広がりと深さですね。

★今や社会科は、日本の国の話だけではありません。だからといって、世界史や世界地理の知識をというわけではないのです。「5つの目」をもって日本の歴史・地理・政治経済から推理することはできるのです。

★大げさかもしれませんが、地政学的な視点や地経学的な視点を学ぶ機会でもあるのです。グーグルマップのストリートビューで「虫の目」を活用して世界中をバーチャルツアーよろしく散策することができます。もちろん「鳥の目」で全体を見渡すこともできます。ぜひプロジェクターで映し出しながら大画面でみてください。Awe体験もできます。そのうちメタバースで手軽にできるようになるでしょう。

★このような5つの目を使う社会科の問題は、麻布と武蔵と開成の問題を考えることで養われます。開成の問題を解答しようというのではなく、どのように問いが作られているかを子どもといっしょに考えると、実は背景に複眼思考が働いていることがわかります。東大の地理の問題はなかなか」傑出しているのですが、ちょっと同じ感覚です。

★武蔵はまさにこの社会現象を複眼思考で考えていくプロセスそのものです。解答ができるかどうかではなく、この複眼思考を学ぶことを目的に味わってください。

★そして、なんといっても複眼思考を自分事の心の目を通して考える境地に至る問いのデザインがされているのが麻布の社会科の問題です。

★麻布や武蔵の2024年度の入試問題は、ストレートにウクライナやイスラエルの問題とか昨今の人権の問題、AIの問題を扱わないでしょうが、これらの実際の問題の背景にある人間の本来性の構造を問う問題は出題されるでしょう。そして、自分ならどうするというのを麻布は問うてくるでしょう。

★麻布や武蔵や開成を受験しないから関係ないやではないのです。これらの学校の問題をベースに「5つの目」あるいは複眼思考を自分の内面に開くきっかけにしてもらいたいものです。

★「探究」とはどうやるのか?など迷っている方も、中学入試関係ないからではなく。ぜひこれらの問いのデザインをリサーチしてもらえればと思います。中学受験熱が過熱だとかいうのもわかりますが、まずは麻布や武蔵の社会の問題を見てから、さてどうするか考えてみて欲しいものです。

★中学入試をポピュリズム的にとらえるのか、人間本来のあり方への入口としてとらえるのか。つまり、中学入試問題は、その学校の教師の考える人間の生き様構築ための問いが反映したものとみるのか。ジャーナリズムはどうしたらよいのでしょうかね。ポピュリズム的視野で書いているジャーナリストもたまにいますよね。しかもなぜか声が大きい。できれば、「問い」の意味をぜひ考えて頂きたい。これが中学入試コミュニケーションの一側面です。

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聖パウロ学園エンカレッジコースの阿部滉先生 大学地域連携学会第3回大会登壇 生徒が開く地域の人々との本来的な関係性

★今月21日(土)、日本大学文理学部で、「大学地域連携学会第3回大会」が開催されます。9:00~15:30ごろまで行われる大掛かりな大会です。その学会で聖パウロ学園のエンカレッジコース(通信制)の阿部滉先生が発表します。タイトルは「聖パウロ学園における地域連携の実践事例」となっていますが、とても大切なのは、事例とその背景の本来的人間のあり方がきちんと結合した発表になることです。

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★聖パウロ学園高等学校は、全日制と通信制の両方がある学校です。阿部先生は通信制の体育を中心として身体性の機能を豊かにすることを通して、認知能力と非認知能力を豊かにしていく環境を設定し、その中で生徒の反応の意味を生徒共に互いに理解し合う対話をしています。それは体育に限らず、倫理の先生との協働プログラムや農業のプログラムなどでも同じ構造のプログラムを実践しています。

★生徒自身が本来的なあり方に気づくことによって人間関係性の中でもっとも大事な関係性とは何かを考えはじめ、作る行為につながっていくすばらしい教育を行っています。もちろん、このような関係性に気づき、つくっていくことは、そう簡単ではありません。でも、それが本来的な人間の関係性なのです。

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★なぜ、同じ構造なのに、体育の授業や倫理の授業、農業の実践など行うのでしょうか。それはエンカレッジの生徒は、繊細で自ら心が開かれていくには、その生徒1人ひとりに合った環境が必要だからです。それは何かは、環境や道具が違うことによる反応の違いを生徒と共に丁寧にリフレクションしていくことによって見つかっていきます。

★少人数でないとできないし、その生徒を色々な角度から見ることができる教師同士の対話が頻繁でないとできません。それから阿部先生はICTのパワーを活用して、鳥の目と虫の目を駆使しています。ICTは生徒理解において欠かせませんね。

★一部の通信制のやりたい放題の教育活動によって、通信制に対して文科省は厳しい眼差しで見ています。全日制に比べ、助成金もそれほど多くないのです。でも、通信制をまじめにやっているところには、このような繊細なまるでガラスの心の持ち主のような生徒と理解し合えるスキルをもったエキスパートを養成する機関やそのための助成金は必要なはずです。

★聖パウロ学園のエンカレッジの先生方は、幸い同学会を運営している日大文理の教授・准教授・大学院生・学部生の応援をもらって、エキスパート集団になっています。

★その中で、阿部先生は実践と理論を統合する複眼を持っていて、聖パウロのエンカレッジの先生方のメンター的な存在でもありましょう。しかし、私から見れば、すべての通信制高校のメンター的な存在だと思います。

★3年前に同校の校長に就任した私(2年で校長は退任しましたが)はそもそも民間人でしたから、全日制も通信制も素人校長です。にもかかわらず、受け入れてくれた先生方には感謝です。通信制については、本当に右も左も知らず、私のメンターに30以上も歳が違う若い阿部先生がなってくれました。出会う前は、互いにそれとそれの関係性でしたが、パウロの地で会った瞬間から我と汝の本来的な関係性を織ってくれたのです。

★面倒を見るのは生徒で手いっぱいで、ともすれば老害になりかねない面倒な老人の対話に付き合うのは大変だったと思います。今も時々阿知波に付き合ってくれているのですから、本当にありがたいのです。

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(3年ぶりのパウロ祭で)

★当日の学会では、通信制と全日の生徒共同で結成しているハンドベル部(阿部先生をはじめ多くの先生方がかかわっている)の生徒の活躍を通して、生徒がいかに我と汝の関係を地域の人々と共につくっていくのか、身体と心をつなぐ「響き」の機能というかシステムについて語ってくれるでしょう(あくまで私の予想です。本当のところは当日聞いてみなくては分かりません)。

★当日は他にも多くの発表があります。生徒理解を通して、人間理解の境地に立つ発想満載です。楽しみですね。

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中学入試コミュニケーション(03)算数の入試問題を通して

★算数の入試問題は、楽しい!と思っていただきたいのですが、現実はそうもいかないところもありますね。算数の基本も応用も、言うまでもなく「計算」なのです。たいていの計算は、式が与えられていて、様々な四則演算記号のルールを順序良く活用する操作ですが、この操作を、いろいろな現象に自分で「適用」させられるようになると楽しくなるわけです。

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★旅人算とかつる亀算とかは、実は方程式を使えばできてしまうし、ニュートン算はまさにニュートンですから将来微積でOKなわけです。今できなくてもあまり問題ないのです。もちろん、合格するには、それぞれの文章問題の(1)くらいは解けることは戦略的には必要です。

★方程式を使わずに解くということになっていますが、それは実は本当ではないですよね。ニュートンの力作「プリンキピア」を開くと、そこには数式がないんです。幾何ばかりがあるのです。ご承知の通り、この本は微積を説明するための本です。当時は微積の方程式が定型化されていなかったし、まだ幾何学が数学の王道みたいなところがありました。

★それで、ニュートンは、みんなが親しんでいる幾何で解き明かしていくのですが、線上の点が移動する時間については、頭の中で描かなくてはならないので、完全に可視化されているわけではなく、読んでて挫折してしまします。微積の方程式はやっぱりすばらしいとなります。ニュートンはまさかそんなことを目論んでいたのでしょうか。彼ならあり得ますね。

★それはともかく、旅人算とかつるかめ算など考える時に、図にしてみようなんて話になるでしょう。エッ!?それって方程式を幾何化しただけですよね。ニュートンがそうしたように。

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★つまり、方程式という式を使うか、図という箱を使うかの違いはあっても、時間や空間と人の行動や数合わせなどの関係性を最終的に式にして計算するわけです。要は、関数という概念を算数であれ数学であれ学んでいるわけです。

★だから、計算はその関係性を式に変形してそれから例の四則演算ルールを操作していくわけです。算数が楽しくになるには、まずは関係性を体験することだったのです。そこから式に変形するわけです。そして操作する。できるだけ美しく解くには創意工夫が必要です。楽しいではありませんか。

★こうして考えると、算数は、物事を関数化する心の目を開くトレーニングができます。そして、これってデータサイエンスにつながるわけでしょう。

★この関数化するときに、実は前回ご紹介した、言語の5つのルールと重なる思考のレンズを使います。あの5つを、「分解と統合」「変形」という2つに絞れますが。操作的には「削除・挿入」「順序づけ」「重みづけ」が加わります。

★物質の現象や社会の現象の構造は、湯川秀樹ではないですが、根本はシンプルです。それは大人でなくても子供でも理解できるようになんとかしなくてはねと。算数は、難問を解くことより、この基本的な構造を見破る「心の目」を開くことです。

★ヴィゴツキーなら「最近接発達領域」を共有しようといったかもしれません。ブルーナーなら、科学の最前線もその基本構造は子供が理解できるような教育をというかもしれません。古澤教授ならサイエンスコミュケーションでそれはなんとかなるよと♪いうでしょう。

★というわけで、場合の数や規則性を自分で見つける問題や幾何も変形したり補助線を見つければ突破口が発見できる問題の出題が増えてきたのではないでしょうか。まずは関係性を関数化する体験をしてから操作していくということですね。算数は楽しいんですよ♪

★(▢+〇)÷2なんて式で愛の関係性を語れるかもしれません。あまりモテる様な気はしませんね。やはり、(▢+△)×2のほうがポジティブですかね^^;。

 

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2023年10月13日 (金)

中学入試コミュニケーション(02)国語の入試問題を通して

★私立中学における国語の入試問題は、各学校の建学の精神と言語の学びの土台が反映しています。入試問題を学ぶとき、漢字などの言葉の知識問題、文の組み立てや文法問題、物語の読解問題、説明的文章の読解問題などが取捨選択されて組み立てられています。

★たしかに各学校の建学の精神や校風など考慮しなくても得点はとれます。そこは日本語を扱っている以上、どの学校の国語の教員も共通している日本語のルールが反映しています。

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(イラストはbing)

★しかし、ルールはいくつかあるのですが、学校によってそのルールの取捨選択・組み合わせは違います。漢字の組み立てであろうが、文の構成だろうが、文章の構造だろうが、次の基本的なルールの視点は共通しています。

① 比較というルールの視点
② 関係性(因果関係・相関関係・矛盾関係など)というルールの視点
③ 対照的(反対の関係・逆説の関係)というルールの視点
④ 具体と抽象のルールという視点
⑤ 置き換え(同内容・比喩・転換・変容など)というルールの視点

 

★きっちりわけられないじゃんと迷う生徒もいます。まさしくそれは言語の謎であり、言語学(ちとおおげさかな)の難問なわけです。迷う生徒はいきなり「心の目」が作動しています。

★ともあれ、これを生徒が自分なりの分け方で納得するのがトレーニングです。この5つの分け方を覚えるのではなく、漢字の熟語や文の構成、文章の構造を5つのルールで読解したり、論述したりできる自分の言語生活の関係性の基準をつくることです。

★言語と言語の関係に生活がかかわるのですから、個人によって違いますが、その違いが入試問題で影響することは10%から30%くらいです。満点がなかなかとれないのは、生徒自身の言語生活の関係性と受験する学校の言語生活との差異があるからです。

★この差異が少ないと、その学校の国語の教員と相性が良いということでしょう。しかし、合格するには70%あれば十分なので、相性が合う合わないは、あまり意識されることはないのです。

★①から⑤のルールは、実はなんてことはない、接続語(接続詞や助詞など)の種類に似ていますね。そうです。言語はアナログのようで、実はデジタルで、それをつなぐときは、つなぐ言葉が必要だし、明示されていなくても、時間順序や重みづけという、意味によるつながりというものがあります。

★このルール実は、外国語でも同じなのです。それぞれの言葉の使い方は、当然違いもありますが、リーディングの時にあるいはライティングの時に、ディスコースマーカーを参照するというのがありますが、これは上記の5つのルールに大部分重なります。

★ただ、英語の説明的文章の場合は、パラグラフの枠組みや文の配列というものや具体と抽象の関係が見えやすいので、必ずしもディスコースマーカーを注視しない方法を提唱する人もいるようですが、編集の時には、このディスコースマーカーを無視することはできないでしょう。

★さて、前回話した5つの目ですが、きっちりわけられませんが、このような分析をする目は「鳥の目」です。「比較」は「虫の目」、「関係性」は「魚の目」、「対照的」は「コウモリの目」、「具体と抽象」は、これもまた「鳥の目」、「置き換え」は「心の目」を受験生の内面に開眼します。

★この5つの目を具体的に言語のルールで開いていくことで、物事をしっかりと観察し、洞察し、問題を発見することができます。解決策を組み立てるのも、この5つのルールなのですが、5つのルールの中で、魚の目である「関係性」がなかなか厄介です。

★物語の読解で、多くは、まず人物の行動と心情連鎖を因果関係的にとらえていく問いが多いのですが、麻布のように、もちろん因果関係もありますが、その因果関係が複雑な人間関係の中で矛盾する関係にいたるところをどのように読み取るかは、なかなかの難問です。

★「置き換え」も同内容としての置換ではなく、変容の置き換えの場合は、鳥の目と実は魚の目の複眼思考で考える必要に迫られる場合があります。これも麻布の国語の問題では出題されます。それから、武蔵の国語の問題もそうですね。とはいえ、その問いができなくてもほかの問いができていれば問題ないのですが、麻布や武蔵の国語の教員の言語に対する考え方・物の見方・感じ方に対する姿勢が入試問題から見えます。

★そして、この矛盾関係や変容の置き換えなどは、建学の精神が現れるところですね。

★最近では、100字から200字くらいの問いが出題される学校が多くなってきました。ルール①からルール④を自在に使えるかどうかを確認しています。これも複眼思考が必要で、やはり建学の精神が反映される問いの場です。

★ルール①からルール⑤すべてを自在に使える要求が凝縮しているのは、筑波大附属駒場と灘の詩の問題です。

★読書の時にこんな分析をしながら読むのは、楽しくないので愚の骨頂ですが、中学入試問題のトレーニングを通して、5つの目が開くと、無意識のうちに読書は多角的視点、複眼思考で楽しめるようになります。IBの日本語は、実はこの5つの目が必要です。

★読書体験→中学入試コミュニケーション→論理的・批判的・創造的読書へと発展するとすてきですね。作文→中学入試コミュニケーション→論理的・批判的・創造的編集へも同様です。

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2023年10月12日 (木)

中学入試コミュニケーション(01)5つの目

★少子化の危機がひしひしと迫っている中、昨今首都圏の「中学受験」は、加熱しているなどとジャーナリスティックに語られています。このことを私立中学はどう受けとめるのか?生徒募集としては間違いなくウェルカムではありますが、中学受験を上手に活用できなくて保護者も子供も精神的に追い込まれるのは困ります。ジャーナリスティックには、そこを取り上げるのは、クリティカルシンキングとして素直に受け入れ、そうならないように受験生と保護者と共に「中学入試市場」を創っていっています。私立学校は、自分たちがつくる「中学入試市場」(現状の「中学受験市場」とは違います)では、そうならないためのコミュニケーションをしています。

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★どんなコミュニケーションかというと、共感的コミュニケーションです。強制的に勉強させようとか、内発的モチベーションがない生徒に、無理矢理人参をぶらさげることもしません。そのような抑圧的コミュニケーションが、生徒も実は教師も精神的負担を担わせることになるのは、現場で身に染みて理解しているからです。

★ですから、入試問題は学校の顔であるので、中学入試の問題においても、そのような共感的コミュニケーションが反映されるように創意工夫しています。

★学校説明会に行くと、学校の魅力を説明するわけですが、その魅力はこんなことをやっているどうだすごいだろうというような抑圧的なコミュニケーションはとらないわけです。説明会に参加している受験生や保護者が共感できるように、どうしてこのような魅力的な教育をつくっているのか丁寧にプレゼンします。

★その説明を聞いている受験生と保護者の内面には、その魅力的な教育が生まれてきた背景がわかります。「鳥の目」が開くのを感じるでしょう。また、建学当時から現在に到るまで、時代の流れをつかみ、変えざるものは変えないけれど変えるべきものは変えるという時代の流れをつかむ「魚の目」が開くのを感じるでしょう。

★そして、学歴社会を象徴する優勝劣敗主義や偏差値ランキング、エゴイズムなどで教育を捉えない、つまり生徒1人ひとりの才能が開き、それが社会の貢献につながっていく個別最適化と利他主義をつなげようとしている創意工夫に気づくでしょう。すなわち、逆転の発想に気づき衝撃を受ける「コウモリの目」が開くはずです。

★そして、現場に生徒1人ひとりの才能を見つめることの授業デザインがあることに気づくでしょう。「虫の目」が開かれます。

★最終的には、何より生徒の成長を大学進学実績だけで捉えずに、生徒自身の考え方や感じ方など生き様が変容していく成長の様子を温かく見守る教師の存在に感動するはずです。「心の目」が開くのです。

★「中学入試市場」では、受験生・保護者と学校側がこの「5つの目」を共有する共感的なコミュニケーションを大切にしています。

★大事なことは、この目は各人が自分の内面に開くことです。この5つの目こそ、自分自身のものの見方・考え方・感じ方の基準を作ります。その基準を互いに共有できるかどうかを選択判断するのが「中学入試市場」です。校風や建学の精神を、両者が大切にしているのは、そういうわけです。

★他者と比較してでてくる他人がつくったモノサシは、客観的といわれますが、その概念はほんとうにそうでしょうか?こどものための哲学対話を少し行ってみる(多くの私立学校が取り入れています)だけで、そうでないことがわかります。もちろん、自分の中の基準は主観ですが、それが学校の主観と共感するとき、インターサブジェクト(相互主観)が生まれます。

★これからの時代は、この相互主観を共に創り続けていく時代です。それの出発点が5つの目が開眼することです。

★この5つの目は、実は入試問題作成段階で反映しています。それをどうやって見抜いていくか、入試問題を解くというのは、その5つの目を活用していくことです。このことに気づくと生徒はめちゃくちゃモチベーションが内発的になります。目の前のものが多角的にみえてくるし、氷山モデルでいう、水面下の目に見えない部分が見えてくるのです。(つづく)

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2023年10月11日 (水)

学校の大切な役割 共感的コミュニケーションのスキルとマインドを養える場

★学校の役割は、教師も生徒も共感的コミュニケーションを養える場だと最近改めて感じています。世の中いろいろ権利侵害関連の事件が報道されています。そのような場では、抑圧的コミュニケーションが当たり前のようになっているので、被害者は声を上げにくいわけです。学校は、生徒が卒業後、そのような場に所属してしまったとき、そのコミュニケーションに気づき転換していくようなしなやかで共感的コミュニケーションを広げていくことができる人間力を養える場です。

★今回、共感的コミュニケーションと抑圧的コミュニケーションについて、生成AIであるbingに説明してもらいました。またイメージの絵も描いてもらいました。あまりに的確なので、驚きです。

「共感的コミュニケーションとは、相手の感情や考えを理解し、それに対して共感や支持を示すことです。共感的コミュニケーションでは、相手の立場や目線に立って話を聞き、自分の感情ではなく相手の感情に関心を持ちます。共感的コミュニケーションは、相手との信頼関係を築き、対話や協力を促進する効果があります。」

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「抑圧的コミュニケーションとは、相手の感情や考えを無視し、自分の意見や価値観を押し付けることです。抑圧的コミュニケーションでは、相手の立場や目線に立たず、自分の感情や利益を優先します。抑圧的コミュニケーションは、相手との関係を損ない、対立や抵抗を引き起こす可能性があります。」

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★さらに、共感的コミュニケーションと抑圧的コミュニケーションの比較を表にまとめてもらいました。すると以下のようになりました。わかりやすいですね。

共感的コミュニケーション    抑圧的コミュニケーション
相手の感情や考えを理解する  相手の感情や考えを無視する
相手に共感や支持を示す    自分の意見や価値観を押し付ける
相手の立場や目線に立つ    自分の立場や目線から離れない
相手の感情に関心を持つ    自分の感情や利益を優先する
信頼関係を築く        関係を損なう
対話や協力を促進する     対立や抵抗を引き起こす

★そして、共感的コミュニケーションも強制的な雰囲気になる同調圧力型コミュニケーションになるケースもあります。気を付ける必要があります。また表向き抑圧的コミュニケーションではなくても、それは同調圧力型コミュニケーションになっている場合がありますから、クリティカルシンキングは必要です。そういうわけで、同調圧力型コミュニケーションについてとイメージをbingに尋ねてみました。

「同調圧力型のコミュニケーションとは、自分の意見や感情を抑えて、周囲の人々に合わせるように強制されるコミュニケーションのことです。同調圧力型のコミュニケーションが作用している職場では、以下のような特徴が見られます。

上司や先輩が自分の考えを押し付ける
異なる意見や提案をすると、批判や無視をされる
仲間はずれや孤立を恐れて、自分の本音を言えない
みんなで同じ行動や服装をすることが求められる
個性や個人の能力よりも、チームワークや協調性が重視される
同調圧力型のコミュニケーションは、職場の雰囲気や生産性に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、以下のような問題が起こります。

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創造性や革新性が失われる
意思決定が遅くなる
職場のストレスや不満が高まる
モチベーションや自己肯定感が低下する
人間関係に亀裂が入る
同調圧力型のコミュニケーションから抜け出すためには、以下のような対策が有効です。

自分の考えや感情を素直に表現する
異なる意見や提案を尊重し、受け入れる
他人と比較せず、自分らしさを大切にする
多様性や個性を認め、活かす
コミュニケーションスキルや自己肯定感を高める」

★いろいろなサイトから情報を集めてまとめていますが、結構的確なので感心しています。

★そして、さらに、自分の考えや感情を素直に表現するスキルについても尋ねてみました。すると、自分の思いや考えを正直に伝えるとともに、相手の反応や意見を受け入れることができるコミュニケーションの能力です。このスキルを身につけることで、人間関係を円滑にし、仕事の効率や満足度を高めることができます。

★結局、共感的コミュニケーションのスキルだというコトになり、どこか堂々巡りです。

★やはり、最後は自分で考え抜く力が大事ですね。生成AIの限界を追及し、そこからは自分で考える。こういう時代になったのかもしれません。

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2023年10月10日 (火)

ラウンドスクエア国際会議2023 in ナイロビ 八雲学園と工学院の生徒参加 

★今年はケニアのナイロビで、ラウンドスクエア国際会議が行われています。ラウンドスクエアスクールとして八雲学園から9名、工学院から2名の生徒が参加しています。

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★第54回目となる今年の国際会議は、ナイロビにあるブルックハウス・スクールが主催しています。会議のテーマ「The New Africa」は、アフリカ大陸が21世紀においてどのように進化し、どのような地位を築こうとしているのかを探るものです。

★ブルックハウスは、アフリカの未来を切り開くリーダーシップを発揮している私立学校なのでしょう。アフリカの革新者たちに焦点を当てた基調講演とパネルディスカッションのプログラムを計画しているようです。ブルックハウスの2つのキャンパスで共同開催されているようです。
ブルックハウスの在校生の保護者がホームステイを提供し、各国から参加する学生代表団にアフリカのホスピタリティを直接体験してもらうこともねらいです。教師の代表団はホテルに宿泊しているようです。

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★先ほど八雲学園の近藤理事長・校長からお聞きしたのですが、ラウンドスクエアの加盟校として持続可能にするためにさらに組織を強化するということでした。今は榑松先生と近藤隆平副校長とボッサ先生が交代で運営していますが、米国の海外プログラムも多様になってきているので、教師力をさらに強化する必要があるということでした。今でもすさまじいパワーなのに、いったいどこまでハードルがあがっていくのでしょう。

★ラウンドスクエアをはじめ、海外のプログラムは、先生方は生徒を連れていくのが役割ではなく、現地で教育的な学びの環境をその都度作り上げていく役割をはたしているのです。

★英語力はもちろんのこと、交渉力や連携プログラムの企画力など学びのコンサルテーションが必要なのでしょう。

★工学院も同じように学びのコンサルテーションができる英語教師を増やしてきました。

★本物のグローバル教育を作り上げるには、視野の広い判断力と英語とICTのテクノロジーの実装、交渉力などを持ち備えた教師が必要だというコトです。逆に言えば、このような教師がいる学校は本物のグローバル教育を実施しているといえましょう。

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和洋九段女子のチーム名「天才集団」優秀賞を受賞!

★今年7月28日、公益社団法人日本青年会議所は若者の政治参画意識の向上を目的として全国の高校生を対象に、第一回全国高校生政策甲子園を開催しました。全国高校生から応募総数100組を超えたようです。国会議事堂で演説会を実施し、インターネット投票をもちいた国民投票形式にて優秀賞を決定したとのことです。

★その中で、和洋九段女子の高1生の3人のチーム「天才集団」が優秀賞を受賞したということです。ロールプレイゲームをつくって、シミュレーションモードと本番モードをわけて、16歳から20歳までに、日本の若者が急激に政治的有効性感覚を失ってしまうという課題を解決する提言をしたのです。

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★和洋九段女子は、SDGsを広めるためのボードゲーム「SDGsすごろく」を作成するプロジェクトや場面緘黙症などコミュニケーションのギャップを解消するアプリを作成したプロジェクトチームなど、ゲーミフィケーションを創意工夫する創造性あふれる生徒がたくさんいます。それぞれ優秀賞やファイナリストになるなど、成果もあげています。

★今回の政策甲子園【設定テーマ部門】(デジタルを駆使した新たな選挙)で最優秀賞及び優秀賞を受賞したのは、

チーム名「15歳の提言」
学校名
郁文館グローバル高等学校、白梅学園高等学校、都立三田高等学校、東洋大学京北高等学校

優秀賞を受賞したのは、和洋九段女子「天才集団」と次の
チーム名「りんりんブンブン」
学校名
茗溪学園高等学校

でした。

★いずれもICTを駆使したり、Web3.0の流れを取り入れたり、公平性を実現するおもしろいアイデアなど、Z世代の才能はあふれるほどだと感動。この才能を拡張するための学校教育とは何だろう?その回答のヒントは、それぞれのチームが所属している学校にあるということでしょう。

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共感的コミュニケーションの作り方

★私にとって多くの人との出会いが大事で、その仲間とは共感的なコミュニケーションをとれる幸せがあります。ときどきしかし、共感的ではなく抑圧的な集まりにほうりこまれると(自らは近寄らない)、驚くほど自分がそこで浮いているのを感じます。ああまだまだ抑圧的なコミュニケーションが広がっていて、オセロのようにひっくり返して共感的コミュニケーションを広げていく役割が自分には残っているなあと感じます。

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(イラストはbing作成)

★対話のプロジェクトをじつはずっと前から開始していたのだと最近つくづく思います。かつて個々に「対話」を大事にする方々とは出会っていたのですが、ここにきて、集合知が生まれてくるかのように、なぜかどんどん再開し、そのたびに彼らが新しい仲間といっしょの場に立ち会う機会が増えているのです。

★これは本格的にこのプロジェクトが偶然だけれど必然的に生まれてくる兆しだと思っています。何せその仲間と対話すると、共感的コミュニケーションの作り方やマインドなどが言語化されていたりWSというパフォーマンス化されているのです。

★直感的にEC(共感的コミュニケーション)が必要だという時期からECの作り方が了解できる時期にシフトしているなあと。

1)態度から OODAble

2)行動から 挑戦・創造・貢献

3)言語から ロジカルシンキング×クリティカルシンキング

4)数学的思考から 数学的思考コンセプトレンズ

5)問いの生成から 哲学的問いから創造的問いへ

6)組織開発から 3F

7)思考コードから 知識を智慧へ転換

8)リフレクションから マインドフルネス

9)越境知から 5T

10)探究から 3Rから3Xへ

★先日、工学院の中野校長と田中歩先生との対話に立ち会ったり、水都国際の太田先生ご夫妻との対話に立ち会ったりしながら、上記のようなリストが降りてきました。

★田中歩先生も太田先生も9年前に、工学院で出会い、対話やWSを共に創りながら、思考コードが学内に浸透していく活動をしました。やがて、太田先生は水都国際にいき、TOKとそのパフォーマンス評価基準(思考コードと別物では多分ありません)を水都国際の学内で共有する活動をしています。

★お二人とも、組織マネジメントと学内研修のWSもやりながら、共感的コミュニケーションを作っているわけです。あれから9年たって、今お会いしたら、豊かな有機的システムで共感的コミュニケーションが広がっているのが了解できます。

★生徒たちの、まずやってみようという体験は、実は自然や都市の中で何が起こっているのかじっくり観察する目を豊かにするところから始まっています。

★その観察眼は、やがて、鳥の目になり、虫の目になり、魚の目になり、心の目になり、ナノの目になり、宇宙の目になっていきます。

★その目は、脳神経全身体から上記の10のポイントの波動を生み出します。この多様な波動が、一つになっていくコヒーレントな感覚が仲間と共有されたとき共感的コミュニケーションが生まれるのではないかといまようやく仮説が立てられそうだと思っています。

 

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2023年10月 9日 (月)

大阪水都国際の教頭太田先生とブランチで 対話の極意聴く

★この休日、大阪水都国際の教頭太田先生が、法事のためご夫妻で東京に戻ってこられていました。今朝戻るということで、ブランチをしようということになり、ご夫妻と一緒にイタリアン。いつものように長時間は対話はできませんでしたが、お二人とも教師ですから、教育現場における教師の対話力の極意ということについてお聴きすることができました。

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(イラストはBingが作成)

★奥様の方は、数学教師であると同時に公認心理士でもあるので、その対話はカウンセリングマインドで実に心理的安全性をさっと創り出していました。

★太田先生は、TOKの授業も持っているし、管理職としてコントロールするのではなくマンジメントする対話力を構築していました。ご夫妻の両家はどちらかというと理系家族だそうです。

★理数系的発想で何が問題なのか観察し、解決の方向性を探ります。そして合意形成のときに、互いに相手の立場に身を置いて思考するこれもまた変形とか逆に置き換えるなど理数的発想のスキルを活用しています。

★非認知能力とか社会的情緒とかEQと呼ばれるものが、実は理数的な「変形」とか「転換」の発想がベースになっているのだということを実感しました。

★本質に還るとか、根本原理に立ち還るとかいうのは、まさに公理や普遍的で具体を生み出す高感度な抽象性を見通す目だったのですね。

★道徳とかルールとかは、どこかに権威が潜んでいると合理的な組織がゆがんでしまいます。その権威への忖度などしないまっすぐな本質を見る目。その目を持って人生を歩くのは、なかなか苦しいものでもあります。

★しかし、権威への忖度などから自由な場づくりができたなら、そこから創造性が豊かに生まれます。

★デビッド・ボームではないですが、レーザー光線が放たれる瞬間のコヒーレンスですね。軸というよりは、いろいろな波動が重なり合って一筋のコヒーレンスな状態を生み出すわけです。

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★1人の自分軸のような一本の筋ではなく、複数の波が重なり合い、一貫性を作る。組織も同じですよね。多様な価値観の波がぶつかり合って、一貫性が生まれてくる。初めからこれだという軸を決めると、どこか居心地の悪さが残ります。

★非認知能力とは、このような人間関係のある方向性が決まる感性ですね。誰かが決めたものをがまんして行っていくというのではないということでしょう。

★だから、一貫生とは常に変形されるものなのです。変わることが同時に一貫性。伝統と革新の関係も似た感じです。変えずして変わるというコヒーレントな感覚。感覚はめちゃくちゃ理数系的な発想で理解ができるものです。

★なぜ生物の教師である太田先生がTOKに魅惑され、TOKの授業を持っているのか、わかったような気がします。

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『学びとビーイング』が新しく開くコト

★「学び―イング・リアルライブミーティング 第1回」に参加して、感動したことを本ブログに書き込むと、安さんから丁寧なコメントが共有されました。一部引用させていただきます。

10月1日に本間さんとひさしぶりに少し長くお話をして、思い出したことがあります。本間さんと私は、30年近くまえにある企画をして一緒に本をつくったことがあります。『子どもと本 31人からのメッセージ』という児童文学、小学国語の可能性を探った本で岡田淳、山末やすえ、さとうまきこ、佐藤宗子、藤田のぼるなどの諸先生方に参加していただきました。この仕事は、いまでも私のなかに脈々と息づいています。
そして気づいたのですが、本間さんに「ほめて」いただいた『学びとビーイング』のコンセプトと30年近く前の児童文学の本には、類似点があるなあと。

★そうでした。私たちの児童文学との出会いを一つの本にしてみようという試みだったと思います。当時の私たちが所属していたあるグループ団体は、結構教育の本質について語り合う熱い組織でした。安さんはその出版部門のリーダーでした。私は教務で好き勝手なことをやらせていただいていました。

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★出版と教務ががっちり結合していたそういうグループでした。教務の方では、心理学はピアジェとコールバーグについて読書会が行われていました。児童文学の最盛期だったかもしれません。それでフィリップ・アリエスの「<子ども>の誕生」や河合隼雄さんの「子どもの宇宙」も読んでいました。

★20世紀の3大発見は「子ども」「狂人」「未開人」だと言われていたころです。心理学、精神分析、文化人類学がトレンドになっていたときだったと思います。

★そして、アルビン・トフラー夫妻が、そのグループの1つ渋谷の施設を電撃訪問し、風のように去っていったこともありました。立ち会えなかったのは残念でしたが、ちょうどそのとき、教務の仲間と、彼らの新刊「パワー・シフト」を読んでいたところでした。

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★21世紀は、軍事力から経済力、そして教育(知の)力へパワー・シフトする世紀だというのです。まだまだ途上ですがそういう気配はたしかにありますね。<子ども>の誕生から子どもの宇宙、そして子どもの世紀へ。児童文学はそのビジョンを輝かせてくれました。

★当時は子どもたちの校内暴力や引き続き学級崩壊がニュースになっていた時代です。河合隼雄さんは、それがどうして起こっているのかその宇宙を解明していました。そして変革の子どものテーマで研究は広く深まっていました。

★私は、子どもの成長をハーバーマスのコミュニケーション行為をヒントとしていました。社会学的な視座も必要だと思っていたからです。子どもに問題があるというより、子どもの才能の広がりに壁になっている環境や大人の偏見があるということを、アリエスや河合隼男さん、ハーバーマスに学びながら、それについて子ども自身が気づくコミュニケーション能力を児童文学を基盤にデザイン出来たらと思っていました。

★当時のカリキュラムコンセプトは、自己中心的コミュニケーションから創造的コミュニケーションへで、自己中心にさせるそして創造性に壁をつくる権力的コミュニケーションを払拭する言語の役割を学ぶというシンプルなものでした。

★その方向性は、今もあまり変わっていません。幼児から高校生に成長するにつれて、主体的に学校や地域、世界を「共に創る」OODAbleな能力を発揮できる環境をと。

★しかし、その環境は一つの学校や団体で完結できないことは薄々感じていましたが、今回のミーティングに参加して、それを確信しました。そして、私自身、自分のビジョンそのものがさらに変容していかざるを得ないのだろうなあと。またも未知のワクワクするような宇宙が広がる可能性が大なる安さんの智慧とアクション。楽しみです。

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2023年10月 8日 (日)

二松学舎大学附属柏中学校高等学校 柏エリアの私立中学校と相乗効果

★先週金曜日、アルカディア市ヶ谷に、全国の私立学校の初任者研修を実施した委員長が集いこの夏に行った研修プログラムの情報交換を行いました。主催は一般財団法人日本私学教育研究所です。隣の席にいらした千葉エリアの私学の初任者研修会を実施した委員長の島田達彦先生(二松学舎大学附属柏中学校高等学校副校長)と少し対話ができました。どのエリアでも講義だけの研修はもはやありません。それぞれ創意工夫をしたグループワークやワークショップがデザインされていました。その中で東京はOST(オープンステージテクノロジー)というワークショップというかパフォーマンスを挿入していたので、島田先生が同ミーティングの新米の私のことを気遣ってくださり、OSTの話題を共有してくださったのです。

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(上記図は、同校ホームページから)

★対話をしているうちに、島田先生は、自分の学校のことだけではなく、柏市の4つの私立中学校とスクラムを組んでいるようなのです。最先端の都市創りをしている柏市、東京大学や千葉大などのキャンパスがある新しい学術都市でもある柏市に居住している先端的科学の仕事やグローバルな仕事に携わっている家庭の受験生にもマッチングするような学びを提供していこうということのようなのです。たしかに、その4つの学校は、いろいろなチャレンジをしている私立中学校です。

★同校では、中学の時は、探究とグローバルを丁寧に学ぶ教育環境を創っているということです。そして高校に移行した時、自分の探究したいことを研究に延長できるようなキャリアデザインができるようなカリキュラムになっているようです。

★論語をベースにした倫理観と自問自答という論語から出てきたそれでいて欧米のリフレクションの手法とシンクロする学びを土台に6年間の教育環境をデザインしているということです。伝統と21世紀型の学びを統合しているということですが、この伝統というのは、実は、論事と啓蒙思想のスクランブルです。

★創設にかかわった先人が凄い人物ばかりで、渋沢栄一などもいます。中江兆民もいます。両者とも論語の精神が身体化されていると同時にフランス思想を取り入れた人物です。

★もともとフランス啓蒙思想は論語にも影響を受けていると聞き及んでいますから、二松学舎の伝統は、限られた歴史の伝統ではなく、連綿と続く普遍的な精神で、その普遍的な精神を、21世紀に必要なグローバル教育、ICT教育という器に入れているのでしょう。そして自問自答は、現在の「探究」においても対話とか問い作りとかリフレクションとかメタ認知などという言葉で置換えられていますが、同じ質のものです。いやもっと根本的なのかもしれません。

★同校の総出願数が、首都圏模試センターの出願倍率速報によると、過去3年間ずっと右肩上がりなのは、このような伝統と革新が統合されている新しく深く緻密に教育が構築されているからでしょう。

★今後、二松学舎大学附属柏中高の教育の進化について及び柏市の教育動向について注視していく必要があります。新しい教育の変化が生まれる拠点の1つだからです。

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聖パウロ学園高等学校 生徒1人ひとりの内面の光こそが重要であるという 新しいカトリック学校

★聖パウロ学園高等学校に入学してくる生徒は、学校説明会などに訪れたときに、自分の内面に光が灯るのを感じるはずです。パウロは、カトリック学校ですが、毎朝ミサなどはありません。先生方の朝礼に生徒(委員会がある)もいっしょに参加して、共に学校を創る内なる情熱を大切にするところから始まります。この「共に創る」というマインドとアクションそしてスキルが実に大事なことに、受験生は最初は明快にはわからないかもしれませんが、何かを感じて内面に火が灯るはずです。

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★パウロの本拠地である恩方地域の小中学校の運動会などボランティア出動するのはパウロ生です。地域も「共に創る」というわけです。八王子芸術祭でもボランティア出動します。八王子の国際交流会などでも日本語を母語としない外国人の子どもためにボランティア出動をします。フードバンク八王子でフードロス問題をなんとかしようとボランティア出動する生徒もいます。学校のみならず地域も「共に創る」というアクション。

★部活も野球部を先頭にそれぞれがパーパスを抱き突き進みます。それぞれの部活も「共に創る」のだと。チームワーク。それは「共に創る」ことです。

★体育祭もパウロ祭も同じですね。

★「共に創る」というマインドとアクション、スキルの内なる光は、思考と感情と情熱へと拡張し深くなります。そして、その意味が再び自分のマインドを豊かにしていきます。パウロが思考型教育を大事にしているのは、学校、地域、イベント、ボランティアなどその「共に創る」マインドとアクション、スキルを多くの領域に「転用」「拡張」「転換」など創造性のスキルを身につけるためでもあります。

★そして、極めつけは森の教室での学びです。この教室自体、生徒と共に創りました。

★これはまさに小島綾子校長の教育の真骨頂です。この森の教室は、パウロの生徒がダイレクトにOne Earthと接しているということに気づく拠点です。グローバルな空間に包まれたパウロのキャンパス空間であり時間です。地域を共に創ることは、地球を共に創ることです。

★この内面の発想と意志の光へと変容していくのがパウロ生です。

★ミサにしても、年に3回くらいしか行いません。しかし、大事なことは内面の光のシンボルであることが理解できることです。そのためには、「転用」「拡張」「転換」というクリエイティビティが大切ですね。

★この智慧が、探究における教科横断だとか、大学での学際的な協働的研究へと「転用」「転換」されていくのです。

★一般入試で大学へ進んでも、その「共に創る」マインドとアクションとスキルは、大学に行ってから役に立つでしょう。パウロが得意とする総合型選抜は、パウロの体験が、ダイレクトに学際的大学の研究に結びついています。

★もちろん、知識は大事ですよ。ただし、知識は智慧として「転換」できる思考型教育があってこそ大きな効力を発揮します。

★共に創るアクションの1つとしてとても大切な行為は、対話です。「共に創る」授業、行事、部活、ボランティア・・・すべてに内面の光を灯し続ける対話があるのです。

★パウロには、修道会と精神的な繋がりはありますが、直接的な経営的なつながりは切れています。それゆえ、神父もシスターも常駐していないのです。宗教の専任の先生はしっかりいます。しかし、かれは神父ではありませんから、カトリック的な祭儀は執り行うことはしません。

★でも、それでよいでのす。12使徒のトマスの生き方は、権威を嫌い、教会に頼ることなく、形式を嫌い、内なる光こそ、キリスト教の真髄だと。イエスと「共に創る」「共にいる」ことが大事なのだと。見えないものを大事にすることができるようになるときこそ、真理という道を歩いている時なのだと。

★その精神は聖パウロにもひきつがっれました。トマスは、12使徒の中では、メインで扱われることはあまりないのですが、なぜかいつもイエスの側にいて、「わからないものはわからない」と直接問いかけるのです。周りの使徒は、トマスは、主イエスを理解していないのかと。ところが、あのレオナルド・ダ・ビンチの最後の晩餐の絵にあるように、そこでは、みな理解していなかったことが明らかになる衝撃の時間が描かれるのです。それがゆえに、その後の使徒は険しいいばらの道をむしろ幸福だと思って突き進む運命となるのです。

★共に創ってきたはずの12使徒。実はみな理解できていなかったのです。トマスは、勇気を出して、「わからない」ことはわららないとイエスに説明を求めるのです。他の使徒は、そんなことは恐れ多くとまだ内面に権威なるものが邪魔をしていたのかもしれません。トマスは、最初にイエスと共にあらゆる困難を共にすると宣言もしています。理解ができなかったのではないのです。もっと理解したいという意志と問いかけを大切にしていたのです。パウロの探究とは、この道をたどることです。

★その12使徒トマスを愛したのが、欧米の思想の発露となった、今でいう探究のプロセスのマニュアルを書いた中世の大思想家トマス・アクイナスです。トマスーパウロートマス・アクイナスの系譜。フラットでフリーで、フェアでフラタニティーを愛する内面の光を自ら輝かせる主体性。それを生徒と共に教師も創り続けています。

★もちろん英語やPBL、ICTなどの学びの道具はかなり揃っています。でも大事なことは、その道具は、やがて内面化するのです。道具であるだけでは、自分事ではありません。利用する者と利用される物という関係は、フラットでもフリーでもフェアでも、フラタニティでもないのです。

★パウロの生徒は、そのような世界をよく観察(オブザーブ)し、課題を発見し、それをどうしていくのか見定め(オリエント)ます。すると自分は何をすべきか意思決定(ディシジョン)ができます。そして、その意志を貫くアクション!です。このOODAbleな内面の光が灯っている限り、地球のどこに行っても活躍できるでしょう。多くの地球市民と「共に創る」マインドとアクションとスキルを磨きながら!

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2023年10月 7日 (土)

成城学園の魅力 多様な国内外の体験学習の意味

★昨夜、GLICC Weekly EDU 第146回「成城学園中高 つながる体験学習ー自然体験、海外体験の意味」で同校の青柳圭子先生(広報部部長)のお話を聴けました。中学から高校まで、海や山の大自然の中で体験からオーストラリアやイギリス、カナダ、アメリカなど多様なプロジェクトがマルチスパイラルを描きながら深く広くなっていきます。

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★高校の修学旅行は20コースあって、選択制だし、複数参加しても構わないというのですから、生徒の主体性が豊かになったいることを示唆しています。

★海や山の体験の3つの基本要素は、高校卒業までのプロジェクトにまで共通しています。それに英語だとか多様なアドベンチャーとか意思決定とGRIT精神などが自分事として高次に内面化されていきます。

★その3つの意味や具体的にどうプロジェクトが発展していくのかについてははぜひご視聴ください。

★今回さすがだとまたまた感じ入ったのは、このプロジェクトを企画し準備し実行しリフレクションする一連の過程の中で、生徒のみならず、教師も学び成長するのだと青柳先生は語るのです。

★学校の改革とか教育の改革とかは、制度的な改革ばかり注目されがちですが、実は生徒も教師も成長するというトランスフォーメンションが持続可能であることが、学校や教育の質がアップデートしているということでしょう。

青柳先生が学内外で活躍し、経験を積みながら理論も蓄積しているので、「意味付け」という哲学的洞察力が鋭く豊かなのです。受験生・保護者だけではなく、学校の先生方も必見です!共に影響し合いましょう!

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2023年10月 6日 (金)

【研究所ブログ第3回】東京私学教育研究所の研修のプログラムの仕組み 50以上の多様な研修デザインをする「研修デザインコード」

<【研究所ブログ第3回】東京私学教育研究所の研修のプログラムの仕組み>を読んで、改めて東京私学教育研究所のメンバーのプログラムデザイン力は無限の力をもっていると感動しました。東京私学の知の財産を増やすメンバーのハイパフォーマンスに今学んでいます。

【研修デザインコード】

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★というのも、同研究所に限らず、セミナーや研修というと座学とシェアリングはワンセットになっている場合が、今はほとんどですね。たしかに、それは同研究所も基本形です。しかし、その座学もミニワークショップとミックスしたり、シェアリングも対話やグループワーク、ワークショップなど様々です。

★ですから、同研究所は、大項目として「研修の基本形」と「研修のバリエーション」を分けています。このバリエーションは、同研究所が実施する研修委員会は25種類もあり、それぞれが年間最低2回は研修をデザインし実施します。年間50以上の研修を実施しているのです。その委員会の各学校の先生方は、ご自身いろいろなセミナーや研修に参加し、自分なりの手法を実践しています。

★25種類の各委員会には6人前後先生方が委員になっていますから、150人強が自分の得意とする知恵や学びのデザインを出し合いミックスしていきます。したがって、上記の同研究所の「研修デザインコード」の詳細項目は増えていくばかりです。そして、そこからテーマや目的に応じて選択され結合されて研修がデザインされていきます。

★中項目として「情報受容」「情報共有」「情報創造」というカテゴリーが思考コードに対応していることも推察できると思います。この「研修デザインコード」の詳細項目が増え、ミックスが進むということは、研修が「創造的」な次元まで求められるようになってきたことを示唆しています。

★したがって、同研究所の実施する研修は、デザイン多元論的になっていって、一つのデザイン方法だけで成り立っているわけではないのです。研修デザインの多様性や選択可能性が、委員の先生方と参加する先生方とのケミストリーをさらに生んでいくことになります。

★このようなデザイン方法多元論という広がりがでるのは、東京の各私学の先生方が協働するからです。だれか偉い先生の手法を代々引き継ぐ職人気質の研修とは違いがあります。

★そのようなセミナーや研修にもちろん参加して磨きをかけている先生もたくさんいます。

★ただ、同研究所の研修は、特別な先生にとってのセミナーではなく、私学の先生方すべてが体得できる技術や知恵を開発しているといえます。

★1つの方法を深堀していく自己マスタリーは大いに結構です。しかし、私学という学びのチームワークを横広がりにしていくのもあってよいでしょう。縦と横の深さと広がり、つまりT字型学びが拡大することがよいことであることは間違いありません。

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持続可能な社会への変革~ZPDDプロジェクト やると思います。

★まだ、名前を付けていなかったんですけれど、工学院の田中歩先生、柴谷先生、片瀬先生、宮井先生、ノイタキュード代表北岡さん、一般財団法人日本私学教育研究所の伊東さん、首都圏模試センター取締役社長山下さん、そして私本間のまずは8名で、昨年末から2050年に向けてプロジェクトを試行錯誤していました。

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★共感的コミュニケーションのアウトサイドとインサイドの往還システムを可視化したいというプロジェックトです。好奇心と開放的精神、疑問というCODがどんな言語と脳神経全身体でどうなっているのか。

★そのためには、山下さんと私が文字で表現するだけではなく、北岡さんの動画編集力と伊東さんの数学的思考とICT力が必要だと、そして何よりそれを証明する教育現場がまずは必要ということで、田中歩先生と協力することになっていました。

★みな互いに忙しいので、なかなかすり合わせができずに、チャットなどでそれぞれがまずはやって、どこかで結合しようと、タイミングというのは訪れるもので、校長ー歩先生、生徒同士、先生同士、卒業生—教師などの各レイアーでの対話が一気に揃ったのです。

★そして、初任者研修で出会ったUDLを通して、ヴィゴツキーの憧れの最近接発達領域(ZPD)が、ヴィゴツキーの想定を超えて、これから重要な対話の泉であることがわかりました。ZPDを見つけ、そこのギャップを埋めながら新たなZPDが見つかっていくというその過程における生徒の成長。まさに発達の最近接領域なのですが、学力とかいう話をはるかに拡張できるのです。

★そんな対話がなぜ可能なのか?そのフィールドワークを工学院でできたのです。

★そして、事務長研修で、名刺交換だけですが、ICTを自在にこなしている工学院の岡本事務長にお会いして、その人柄に、中野校長や歩先生に通じるところがあると共振しました。

★教務も経営もまるごと共感的コミュニケーション、3F状況ができている学校現場であると確信しました。

★ここを出発点として、学校を変えるとか教育を変えるとかではなく、一人ひとりの対話のシステムをリフレクションし、解明していくことが、持続可能な社会の変革につながり、結果的に学校も社会も変わるのだろうと。

★そういうわけで、「持続可能な社会への変革~ZPDDプロジェクト」を今後スタートしようと思います。まだ、プロジェクトメンバーにはこの名前をいっていないので、あとから変わるかもしれませんが、私がつけたというより、この間の活動の中で、この名前が沸き上がってきたという感じなのです。

★そのスタートを「12月号のしゅとも」で書いてみようと思います。まだドネラプロジェクトなのですが、ドネラとZPDは親和性があるので大丈夫です。ZPDのダイアローグということで、ZPDDなわけです。2024年もやる気がでてきました。1人で浮かれていてはいけないでのですが、Davisのマニフィカトが体中に響きわたっている感じで、ちょと高揚してしてしまっています。しかも、この高揚感をさらに増幅するできごとがあったのです。先述した対話のレイアーのほとんどが収められた動画が北岡さんから送られてきました。千葉みなとの研修から市ヶ谷の次の研修に移動している今、電車の中でそれを見て、こここれだーと北岡さんにチャットしていたところです。ですから、私の高揚主観をお許しを。

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私立学校の教育は経営システム基盤と経営コミュニケーションがレバレッジポイント 事務長の人間力が凄い

★昨日から、オークラ千葉ホテルで、私学経営研究会「令和5年度 事務長研修会」が行われています。東京私学教育研究所が同研究会の委員の先生方と実施している研修です毎年好評で、申し込み告知1週間程度で定員は満たされるほどです。教育改革や学校改革というと、教師の活躍が脚光を浴びるし、校長がスポットライトを浴びます。それはそれで大いに結構なのですが、そのような変化を生むことができるのは、実は事務長と事務スタッフの存在がしなやかで子供たちの未来のために身を粉にして貢献する人的資本が蓄積されているからです。

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委員会のメンバー(敬称略 番号は支部番号)

委員長 根本 欣哉(⑨専修大学附属)
委 員 相川 忠洋(①麴町学園) 野尻 富太郎(③東京女学館)
江上 亀男(⑨堀越) 豊田 美樹 (⑪明治大学付属中野八王子)
原田 茂 (⑫明星学園)

東京私学教育研究所 私学経営研究会  佐瀬・船江

★なぜすぐに各事務長が集結するかというと、学校会計や施設管理、労務管理、リスクマネジメントなど私立学校組織開発の学問はないので、各学校の独自の規範や基準で動いているため、社会の法改正や行政政策変更などは、その都度弁護士や会計士、税理士などと協力しながら、学校運営をしていく必要があります。

★当然、その独自の規範や基準にはDXや変形労働制、部活、教員採用など、創意工夫がされている一方で、その信頼性や正当性、妥当性は客観的に検証する必要があります。

★教育関連法規や労働関連法規も大枠は遵守するのは当然ですが、具体的なことは、ケースバイケースバイでということになります。しかし、ここが強くしなやかな基盤をもっていないと、国や都に私学が一丸となって予算要望をするときに、スムーズにいかないのです。

★おそらく、ここはほとんどの教員が認識しなくても、教育活動ができている部分です。もしそこを意識しなくても満足度の高い生活ができていると思った教員は、自分の学校の事務スタッフのおかげであるのだと思うだけではなく、全私学の事務長がスクラムを組んで、具体的な状況やノウハウの情報交換をし、しっかり基盤を形成しているからだとイマジネーションを広げてみるとよいと思います。

★来年4月から、合理的配慮の義務化が実施されます。事務長及び事務スタフの方々が、さらに人権意識を高め、具体的に互いの人権を守り合うコミュニケーションの取り方をリフレクションするのが今回の目的の1つでした。

★また、「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」を読み込み、生徒及び教職員のウェルビーイングを生み出す学校づくりの土台について語り合っています。

★今回も、学校法務関係に強い弁護士法人「名川・岡村法律事務所」の弁護士の方々に講師と分散会のアドバイザーを依頼して行っています。

★学校は、社会と世界とつながっているのは当然ですが、つながるときの直接的なルールは、道徳や校則ではないのです。それは法律なのです。ですから事務長の見識やコミュニケーションは、まずはリーガールマインドをベースにします。そのフレームがしっかりあるから、道徳や校則が機能します。

★この点は、教育ジャーナリスの中には、あえて不問に付している方もいますね。法と道徳と校則の関連を議論せずに、校則だけ変えればそれで学校改革だと前面に押し出してくるというケースがそれです。

★教育は社会とつながっているのは当然です。経済と政治と法律などと関連するのも当然ですね。学校の社会との連携は昨今広がりを見せています。アントレプレナーシッププログラムも広がっています。DXも広がっています。経済や政治、法律についての基本的な原理原則を学ぶことはとても大事です。

★そのような点において各学校の事務長が真剣に熱く情報共有している姿に、私立学校の未来はあると感じ入りました。

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2023年10月 5日 (木)

続々工学院の魅力 2つの好奇心 体験デザインの多角的視点と問い生成デザイン

★昨日、ノイタキュード代表の北岡さんが、工学院の2人の先生の対話を撮影するというので、Zoomで立ち会わせていただきました。工学院は対話に満ちているので、その雰囲気を動画編集しようというコンセプトの撮影です。すでに、本ブログでも中野校長と田中歩先生(教務主任)の対話、生徒の皆さんの対話、その様子を見守っている宮井先生、それら全体を優しい眼差しでサポートしている奥津教頭のお話は紹介しました。

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(左から片瀬先生、柴谷先生)

★今回は、家庭科の片瀬先生、保健体育科の柴谷先生との対話篇でした。以前から私もお二人の先生と対話はしていて、その時から授業において興味と関心を生徒が抱いていない場合、どのように自分事になっていくのか、その授業デザインについて話しているのをよく耳にしました。

★その問題意識は今も変わっていないのですが、興味・関心について2つのタイプがあることを明確に認識されていたこと、体験に対する考え方が深まっていたことに、そしてそれに伴い、その都度授業デザインが変幻自在に変わっていくことに喜びを感じている(生徒1人ひとりの成長が違うから)お二人の先生の対話の姿に感動しました。

★家庭科も保健体育も、身体知を豊かにする教科です。非認知能力とかEQ(IQによく対比される心の知能指数)を家庭科やスポーツ科学の知識や技術という道具を介しながら豊かにしていく教科なのだということが伝わってくる対話篇でもありました。

★体験はたしかにとても重要なのですが、教科書に書いてある実習や実技を追試するだけでは生徒の好奇心を生み出すことができないと。体験はなんでもすればよいというものではなく、生徒の内面で何が動いているのか察知しながら、その動きをさらに刺激できる体験にその都度つくり変えていく行く必要があるのだと。

★さらに、好奇心や興味はその時生まれなくても、きっとどこかで開花するなあというタイマー付きの好奇心でもよく、むしろそういう種を生徒が内面に自らまいていく体験を仕掛けることが大事なのだと。そのためには、教師として卒業生を送り出すことで、その勘が養われるのではないかということのようです。

★そして、当然その好奇心や興味・関心が生まれる時、生徒自身は問いを生み出します。初めから全員が自走できるわけではないので、片瀬先生は、ナッジする問い(たとえば、それはどう?どうするの?それもよいし?)を投げかけているようです。まるで哲学対話です。

★柴谷先生は、授業を冒頭で、身近な問いを生徒に投げかけるのですが、たとえば、先生自身が薬剤師から手渡された処方箋を見せて、何がわかるのか?と。薬から身体のどこを健康にするのかわかるし、そのためにはどんな成分が必要なのかまでわかるわけです。もちろん、処方箋の取り扱い方も重要です。なぜこの薬は食前なのか食後なのか重要な順序です。

★当然、愛する柴谷先生のことを気遣うだろうし(柴谷先生はそこはまったく仕掛けていません)、生徒自身薬を出されたときに処方箋を見るようにもなるわけです。これは好奇心や興味・関心が湧き出していることだし、自分のキャリアについていつか考える種でもあるかもしれないと。

★それから、処方箋は一つの例で、それが写真であっても、社会課題であっても、直面した物事をどう自分事として捉え思考していくのか、その方法も養われているのです。私は、これを思考のコンセプトレンズと呼んでいますが、このレンズが確かに養われています。それは生徒の皆さんの時に感じましたが、なるほどこのような授業で養われているのだとつながりましました。

★お二人の先生の対話から、体験そのものの信頼性・正当性・妥当性を考える視点を学べました。また問いにもいろいろあるし、生徒が自ら生み出すことで好奇心や興味・関心が豊かになることも。問いとは物事を知ったり、解明したりする道具であると同時に、好奇心や興味・関心そのものであるという新たな発見も出来ました。

★一回一回の授業を、生徒1人ひとりの内面を洞察しつつ、しかもそれを瞬時に共感し、生徒を変えるのではなく、生徒が自ら変わる環境を創意工夫している先生方がたくさん工学院には存在しているのだと改めて感動しました。この先生方の存在こそ工学院の大きな魅力の1つなのだ!と。

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2024年首都圏中学受験動向 北一成さんインタビューで

リセマムの記事「【中学受験2024】受験者数は横ばいか微減、とはいえ厳しい状況続く…首都圏模試センター」では、首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さんへのインタビューが丁寧にまとめられています。2024年度の首都圏中学受験の動向と未来に向けての教育の変化について見通せます。保存版です!

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★なかでも、次の北さんの見解は、たしかに注目です。

 入試要項の変更として目立つのは、まずは神奈川の横浜雙葉が2月2日に2回目入試を新設したこと。神奈川の成績上位の女子の場合、2月1日は東京の学校か、フェリス女学院、横浜雙葉、横浜共立学園のいずれかを受けて、2日は湘南白百合学園か洗足学園を受けるというパターンが多かったのですが、横浜雙葉が2回目の試験を新設したことで、1回目に残念な結果だった子が2回目も受験する、1日に別の学校を受けて合格した子が2日にチャレンジ受験するなど、女子の上位層の併願に関わってくるため今後の動向には注目です。

★的確に、湘南白百合学園と洗足学園が、市場をシフトさせていることが書かれているからです。

★この両校の生徒募集イノベーションは、複数入試日を設けているという点では共通しています。生徒の学校選択に入試日の制約を取り払い、より選択意志のモチベーションを拡大したということは、戦術的仕掛けだけではなく、受験生の立場に立つものです。つまり、伝えるから伝わる、変えるから変わる、シンパシーからエンパシーへのパラダイムシフトを促していたわけです。

★相違点は、入試科目の違いです。湘南白百合は、3種類の新タイプ入試も実施し、多様な才能の立場に立った生徒に門戸を開きました。洗足学園は、4科目入試をベースにする基礎学力を重視し、学力をまずは土台としてもち入学してから多様な才能を発揮しようという生徒に絞って募集しています。というのも、帰国生がたくさん入ってくる入試を他にやっているので、そこで多様性が担保されているからです。

★湘南白百合学園のように、土台を才能において、そのうえに専門性を並行進化で育成するタイプと洗足学園のように、基礎学力を土台にして、その上に専門性という才能を発揮させるタイプと大きく2つ創造的才能教育にはあるということが明快になってきました。

★もちろん、創造的才能教育に対する学力育成教育という学校もあります。ここらへんは、北さんが新タイプ入試や適性検査型入試のところで語っていますから、ぜひご覧ください。

★今回の横浜雙葉の動きは、入試戦術的なところももちろんあるのですが、湘南白百合型創造的才能教育か洗足型創造的才能教育かどちらを受験市場は選ぶのか実に興味深いのです。もちろん、創造的才能教育は、日本全体では一般の全日制の学校ではあまり実践されてきませんでした。どちらこというと学力育成教育でしょう。

★それが今回2タイプの創造的才能教育が市場で人気が出ているという事実が未来への教育の変化を物語っています。おそらく2タイプは、どちらかが勝利するというのではなく、相乗効果を生み出し、さらに新たな創造的才能教育を生み出すことになるでしょう。

★この流れに横浜雙葉がラディカルに動き出したのです。横浜雙葉はもともと創造的才能教育を実践していますから、新たなに教育を変えようという動きというより、積極的に市場を変えることで生徒の生き様が変わる環境を作り出そうというラディカルなアクションだと思います。

★横浜雙葉のこの動きが、中学受験動向の分析の視点を新たに変えることになります。どこの学校の生徒募集が増えたとか減ったとかというデータの読み込み方が変わるということですね。この流れは今後も注視していきたいと思います。

★北さんは、香蘭についても注目しています。同校の創造的才能教育は、2つのタイプのどちらにもいける段階なのですが、もしかしたら、第3のタイプを生み出すのではないかとそんな気がしています。こちらも注目していきたいと思います。

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2023年10月 4日 (水)

探究と教科授業の結合って、遊びと科学の結合ということ?❹深澤良彰教授の生成AIの捉え方ヒント

★月刊高校教育 2023年 10月号の巻頭インタビューは、深澤良彰教授(早稲田大学理工学術院教授)。「生成AI時代の教員像とは?(上)」というテーマで語られています。ソフトウェア工学という側面から語られているので、学校の日常の枠を少し良い意味で超えているのが面白いです。

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★プロンプトにどのような問いを投げかけるか、それは同時に人間の思考過程を生成AIと対照しながら、そのズレを認識し、さらにそのズレを明らかにしていく問いをこちら側が創っていくというコトの重要性を語っているのだと理解しました。

★ビジネス界では、よくプロンプトエンジニアリングと呼ばれている領域です。

★このプロンプトエンジニアリングの達人になるには、まずは生成AIと教師も生徒も遊んでみることです。そして、こちらが多角的に問いを見出せば見出すほど、生成AIは反応してきます。そして、最後に話題を変えませんか?と生成AIが言ってくるほどになります。そこからは、オリジナルで自分が考えるしかないわけです。

★考えたものをまた生成AIにどうだいと聞くと、話題を変えようといってきたのに、突っ込んできます。

★しかし、そもそも多角的に問いを生み出すにはどうしたらよいだろうと、興味と関心がそれほどなかったらどうしたらよいだろうと、ふと立ち止まってしまうこともあるでしょう。そんなとき、どうしたら生徒自身が問いをつくれるのか?とかそもそも興味と関心を持てていない場合どうするのか?など生成AIに問うと、一般的かもしれないけれど、なかなかよい答えが返ってきます。

★日常においてその生徒が好きなことについて、尋ねてみたり、その過程で、どうする?と選択意思決定をさせるような問いをだせばよいのではという回答は、いまさらですが、確かにと思います。

★生成AIとのこの対話は、まさに遊びと科学の結合だし、CODを養うシミュレーションにはなるなあと。深澤教授の次号の巻頭インタビューを楽しみにしています。

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探究と教科授業の結合って、遊びと科学の結合ということ?➌NVCとCOD かえつ有明の今の土台

★かえつ有明が、高校プロジェクト科1クラスを立ち上げたときに、佐野先生(現副校長)、金井先生(今は東大大学院博士後期で研究しながら同校の講師も)がその立ち上げスタッフとして勤務することになりました。もう10年くらい前の話でしょうか。そのとき、学校改革というわけではなく、アップデートをはかったのが、NVC(ノン・バイオレンス・コミュニケーション)という人間関係を創ろうというところから始まりました。

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★まだまだ客観性というのがどの学校でもベースになっていた当時でしたから、生徒1人ひとりの主観性を大切にする、つまり生徒の立場にたってコミュニケーションをするなんて抵抗もあったかもしれません。しかし、その客観性はときとしてVCになっていることに教師は気づかず生徒は委縮したり、傷ついたりしていたことに、先生方が気づき始めたのは、佐野先生と金井先生が、先生方1人ひとりと対話しながら、同時に長時間のNVCワークショップを外部の方と連携して行い続けたからでしょう。

★このNVCのワークショップは、ワールドカフェやOSTの方法にも似ています。オープンマインデッドネス(開放的精神)がベースです。ただ、佐野先生と金井先生は、強烈にエンパシーを重視していて、共感的コミュニケーションや心理的安全性そのものを生み出すことが当時は重点が置かれていました。

★ですから、問題解決をゴールにしたい教師とはしばらく議論が絶えませんでした。共感的コミュニケーションの総論は同意するのですが、目的が明快でないことに対する見解の相違というやつです。競争的受験市場にあって、現実的ではないと。

★共感的コミュニケーションとか心理的安全性、要するにNVCは、好奇心、開放的精神、疑問というCODという科学的発想の泉ですから、実は競争的受験市場でも結果的に負けはしないのだという信念と何を言っているのだ偏差値を上げることによってしか大学合格実績は出ないのだという信念のぶつかり合いはしばらく続きました。

★しかし、NVCvsVCの勝負は若い先生方を中心にNVCの広がりをつくっていきました。すべてのクラス、教科でアクティブラーニング型授業がサーッと広がってい行ったのです。そして、VC信念を持ちながらも共感的コミュニケーションは大事だとする先生方は同校を去り、なんとかえつ有明がそうだったように新しい学校で大活躍しています。

★ただ、世の中は、教育における人権の重要性が前面に出てきたので、ハラスメント撲滅は今更ながら当然の流れになっています。もはやVCは受験生・保護者には受け入れられないので、新しい学校にシフトした先生方は、共感的コミュニケーションを前面に表現しています。

★表向きでも、まずはそういう流れで学校教育全体が共感的コミュニケーションを前面に出し、その背景にかりにNVCがなくても、VCを抑止するリーガルマインドが広まれば、それはそれでベターであるということでしょう。

★しかし、できれば、共感的コミュニケーション/NVCという氷山モデルであって欲しいと思います。このEC/NVC氷山モデルは、結局CODになるからです。私は、このCODを思考コードにして偏差値も含みますが、多元的なエンパワーメント視点を首都圏模試の山下さんや工学院の田中歩先生などといっしょに創って普及していますが、佐野先生と金井先生から見ると、それはまだVCだということのようです。

★お二人とはとても仲よし(と私が思っているだけですが)ですが、システム思考に対する考え方が、お二人はSELよりだし、私はメタローグよりという違いがあります。暗黙知に対するアプローチが違うのかもしれません。暗黙知>形式知と暗黙知↶形式知という違いかもしれません。どちらに重きを置いているかという考え方と循環という考え方。ピーターセンゲとドネラ・メドウズとの違いかもしれません。

★不等号と循環記号の微差異が心地よい関係なのかもしれませんね。=なのか≠なのか≦なのか↶なのか・・・・関係性の捉え方はメンタルモデルを規定します。

★共感を得やすいのは、<という重みづけの明快な違いを示す信念です。循環はどっちつかずに思われ、受験生や保護者には不安というゆらぎが生まれるわけですね。

★さて、未来の方程式はどうなるでしょう。ラッセルの階型理論もパラドクスをア解決できたわけではないので、ロジカルシンキングだあとか言っていてもものの本質にたどりつかなそうです。。。

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2023年10月 3日 (火)

探究と教科授業の結合って、遊びと科学の結合ということ?❷自分事になるにはラインを取り払う

★探究と教科授業が結合されないと、つまりそのようなラインがあると、今はやりの言葉「自分事」に生徒がならないというようなことを無意識のうちに先生方が語っているのに遭遇します。その先生は無意識かもしれないけれど、ラインを越境すると生徒が「自分事」として知識を活用し始めることに気づいています。このような先生と会うと感動します。この感動の機会が増えていることにまたまた感動する日々です。

★自分事というのは当事者意識にも置き換えられますが、要は、自分が直面した知識、事柄、現象、課題などが、自分にかかわっているというコトに悲喜こもごもの感情が生まれてくることでしょう。

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★エッ?知識が自分事?そうなのです。思考と知識を分ける人がいます。知識がなければ思考ができないという方もいます。知識は干物になって思考液が乾燥したものにすぎません。思考液を取り戻せば、知識は生きた関係性を生み出す「考動」を動かしはじめます。知識と思考はルビのツボさながらなのです。

★つまり、トリックアートのような遊びを科学することで、好奇心は生まれてきます。あらゆるコトが自分と他者と社会と自然と関係があることが自分の内外に見えた時、自分事になっているでしょう。

★知識を学ぶ余白とは、思考液を知識がたっぷり含む時空をデザインするということでしょう。

★ファインマンさんは、その天才だったわけですね。もちろん、ファインマンのように〇〇劇場で研究論文を書こうという激しいロックン・ロール魂を真似しようというわけではありません(汗)。

★ともあれ、考える余白といわれるものは、遊び心ですよね。それがある探究は思考液というか泉がコンコンとわいてくるのです。でもですよ。それだけでは、流れてしまうでしょう。枯れてしまうかもしれません。知識というカプセルあるいは細胞が必要になります。

★体験が必要なのは、つまり遊びが必要なんですが、なんだかよくわからないけれどおもしろいし、頭が回転するわけです。でもそれを知識というカプセルや細胞に格納しないとせっかくのアイデアも忘却の彼方です。

★調べて自分のアイデアを格納する知識がないときは?新しく知識を創るわけです。あとから、すでに誰かが言っていたというコトになっても、その段階では大興奮ですよね。そして、あとから落胆するかもしれないけれど、そうやって創造は生まれてきます。この創造の過程こそが「自分事」だと思います。

★「自分事」という言葉は、実はとても深刻な局面で使われる場合が多いのです。それは差別に気づかずに、意気揚々と生きている場合、「他人事」から「自分事」に転換できるかというとても大切な問題だからですね。

★そして、探究と教科の分断は、実は、そのような差別を生み出す発想に陥っていることに気づかないケースが多いのです。探究やっているといい大学に入れないともしも思った瞬間、そこにはアンコンシャスバイアスがありますよね。学歴社会にはそんな格差のアンコンシャスバイアスがあるんです。

★逆に授業なんて知識を詰め込むだけだという場合も同じように差別を生み出す発想があるかもしれません。そこをチェックする「自分事」。これはもう科学の出番です。

★フッサールの次の言葉。認識を思考体験と置き換え、対象を知識と置き換えると、遊びと科学が一体となっている内省的仕組みの理解のヒントになるかもしれません。

「認識は(一面においては) 自然の一事実であり、認識する有機体の体験であり、心理学的な一事実である。従って他のあらゆる心理学的事実と同じように、認識についてもその種類や関連形式を記述し、その発生状態を究明することができる。しかし別の面からみれば、認識は本質的に対象の認識である。しかもこれは認識自身の内在的意味によることであり、認識はこの内在的意味によって対象性に関係するのである。」 (『 理念』 H. II, 19)エトムント・フッサール. フッサール・セレクション (平凡社ライブラリー659)

★こんなことを書きたくなったのは、I.N大高等学校のY校長とあって、フッサールの研究者で生徒理解を現象学的に解き明かしている土屋教授が、共通の知り合いであったことを知りその延長線上の教育の問題について語り合えたからです(笑み)。

 

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三田国際 ICU((国際基督教大学)と高大連携を結ぶ。

★三田国際学園が、ICUと高大連携を結んだということです。ちょうど、APUと国際教養大学が、リベラルアーツとグローバルビジネススキルを体得できるという話を耳にしていて、その勢いに驚き、でもリベラルアーツと言えば、ICUだよなあと、それがグローバルビジネススキルと結びつくのか、それともグローバルリーダーと結びつくのか、グローバルビジネスリーダーとグローバルリーダーとはどう違うのかどちらでもよいのかなどなどぐるぐる頭が回っていたところに、この連絡がはいり、なるほどICUは、包括的なグローバルリーダー、つまり第三のグローバルリーダーに道を進めているのだと感じました。

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★というのも、三田国際は、あらゆる分野でリーダーシップを発揮できる社会貢献の心とテクノロジーとロジカルシンキングの上質の学び舎ですから、ビジネスリーダーも生まれるだろうし、国際貢献をするリーダーも生まれるだろうし、イノベーティブなリーダーも生まれるだろうからです。

★であれば、わざわざICUと連携する必要はないと思われるかもしれません。しかし、破格の多様性と本物のクリティカルシンキングは、ICUと連携することによりはるかに広く深くなるという実ほど・・・という謙虚な学ぶ姿勢を三田国際の教師陣は有していることでしょう。

★AI時代に適合する新しいリベラルアーツの開発をICUはしているでしょうから、三田国際が連携することは、両者にとって、新たな経験的検証ができる機会でもありましょう。

★今や高大連携の時代です。生徒募集に困っていない大学と中高の連携は、マーケティング的な連携ではなく、事の本質を探究する接点で連携できるので、ケミストリーも期待できます。

★いったいどういうコトになるのか、具体的なコトはこれからでしょうが、子どもたちの未来にとって良いこと尽くしであることは間違いありません。

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探究と教科授業の結合って、遊びと科学の結合ということ?❶

★ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブスが憧れたからというわけではないのですが、私も科学のロックンローラーであるファインマン博士は大好きです。ファインマンの語る科学者の3要素「好奇心」「開放的精神」「疑問」(それぞれの頭文字をとってCODと呼びましょう)は、探究だとか授業とかにもあるといいなあと、1998年ころから始めた教育研究所活動(所属団体はいろいろ変わりましたし、学校の校長をやっていたときもありましたが、ずっと教育研究所的な仕事をしているわけです)の私のメンタルモデルは、そこでした。PBLをCODで!と。

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★CODの1つ「好奇心」ですが、これが旺盛な子供たちは、「自由」の概念を深める対話をするだけで、問いを自らつくる内面的な自己組織化ができています。どんどん成長していくのは高齢者ともなれば、多くの子どもたちの成長を経験済みなわけです。もちろん、高学歴の持ち主になるとかビジネスで成功するとか、国境なき医師団で活躍するとか、そういう成長もありますが、高邁な精神を抱き勇気をもって立ち臨むメンタルモデルをもち突き進む生き様という点がとても大切ですね。

★CODの2つめの「開放的精神」。これはもうGRITの精神の足場です。いろいろな困難も仲間を巻き込み巻き込まれ、七転び八起きなのですが、ワクワクするような人生に転換し、ポジティブに生きていけます。目からうろこの連続です。新しい問いは目の前に開けてきます。

★CODの3つめは、doubtで、ムムムと疑う心です。ネガティブではなく、権威や権力やアンコンシャスバイアスのとりこにならないためには、とても必要なクリティカルシンカーの視座ですね。何せファインマンは、ロックン・ローラーの精神を持っている人ですから(笑)。それに絵が大変うまかったのは知る人ぞ知るらしいです。

★じゃあこのCODをどうやって授業や探究に活用すればよいのかということですね。

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2023年10月 2日 (月)

学び―イング・リアルライブミーティング 第1回 教育の大切なコトに意識を持っている多様な人々が対話

★立命館東京キャンパスの3階の対話スペースで、「学び―イング・リアルライブミーティング 第1回」が開催。授業とは、学校とは、授業デザインとは何か、楽しく、じっくり語り合いましょうという時間が広がっていました。

★『学びとビーイング』編集委員の方々は、河口竜行さん(和洋国府台女子中学高等学校)、木村 剛さん(静岡雙葉中学校・高等学校 教諭)、法貴孝哲さん(清真学園高等学校・中学校 教諭)、皆川雅樹さん(産業能率大学経営学部 准教授)、米元洋次さん(産業能率大学経営学部 講師/合同会社Active Learners 共同代表)、安 修平さん(合同会社りょうゆう出版代表社員)。

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★かつてある団体グループでいっしょで、離れた後も問題意識を共有していた(と私は思っている)安さんが、こんなすてきなミーティングの仕掛け人の一人というコトを知って、参加してみました。

★私自身も研修をやったり、企画の手伝いをしたり、観たりしてきましたが、ほとんどが、一つの明確なテーマやモノの使い方などについての研修ばかりでした。ところが、同ミーティングは、編集委員の方々がご自身のネットワークで授業や学校についてとても重要だけれど教育行政のような目の粗い制度では、見逃されてしまう、それゆえ一般メディではあまり論じられない最も大切な教育現場でのコトを可視化する挑戦をしていました。

★したがって、教育現場で大切なコトという点では一見一つのテーマがあるようなのですが、その大切なコトは、参加者一人一人の深い思いにあり、実に多様でした。共通性と多様性は、共通性の多様性であり、多様性の通奏低音としての共通性という両面の意味合いがありそうなミーティングになっていました。

★具体的なことはかなり生々しいので、参加した執筆者が、公にできる範囲で具体的状況の中での取り組みを書くでしょう。上記の写真の本が2巻まで出版され、今月末には第3巻が出版される予定ということです。楽しみに待ちましょう。

★私自身も、多くの方々とお会いでき、いろいろなヒントをもらいました。K学園のU先生からは、生徒自身が問いづくりを自走していく探究型の授業をされている話をお聞きし、そこで確かに生徒は成長しているのですが、その成長という概念は、決して学力の定着だけにとどまっていないことに感銘を受けました。ものの見方や考え方、生きざまが自分ごとを軸に大きく変容しているのです。成長の本質に触れ感動しました。

★S先生は、相変わらず、マインドフルネスな雰囲気に包まれていましたが、その雰囲気とU先生の発想をつなげると、なんとマインドフルネス対話(MD)を授業の中で展開できると気づきました。S先生にその話をするとさっそくMDを授業や探究に埋め込むWSをデザインしようというコトになりました。

★授業と探究の接点、生徒指導と学習指導の接点は、確かに対話なのですが、その対話はMDというシステムによって一つの新しい関係性が開かれてくることになるのではないか。学びーイング。わたくしたち人間は、ハイデガーによると現存在(ダーザイン)と存在(ザイン)との関係性のようですが、存在とは学ぶ存在の在り方そのものだったのかもしれないと妄想もしたりしました。

★となると、学びーイングは、学び続けることによって人間の生きざまを変えていくことにもなります。ライフシフトとは仕事や職業が移行することですが、それは必ずしも生きざまの変容ではないかもしれません。まさに現存在と存在の関係性ですね。ライフシフトと生きざま変容の関係性は、現存在と存在の関係性に収束していくのかもしれません。

★多様性の高次元への収束性。それを見ることができる目が設定されるようになっていく学び―イングにおける対話。つまりMDはなかなかおもしろい発想だなあと。

 

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2023年10月 1日 (日)

経産省の未来人材ビジョンを超えて 岩倉高等学校 松本祐也先生の場合

★東京私学教育研究所が実施している多様な研修の1つに「学校づくり委員会」というのがあります。委員長は大妻の梶取校長、副委員長は岩倉高等学校の校長特命松本先生です。学校づくり委員会というからには、何かあっと驚くのような教育改革設計をしているのかと思われるかもしれません。実はそういうメディアが飛びつくようなことはやっていません。ただ、歴史精神は、やがてあっと驚くような発想とスキルと実践とマインドなどなどが湧き出ていることに気づくことでしょう。

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★今年の同委員会は、生成AIを通して見えることを明快にしようと月に1度同研究所の会議室に集まり対話や議論をしています。生成AIの使い方については、他の委員会の研修でも行うので、同委員会では、見通しということです。鳥の目、虫の目、魚の目、蝙蝠の目、心の目のすべての目を使って対話がなされているのは、おもしろい!です。

★先日、松本先生は、その対話の中にさりげなく、「未来人材ビジョン」の資料について提示しました。そのことについてメインで話そうというわけではないのですが、明らかに生成AIを意識した経産省の発想が織り込まれているPDFだったからです。しかし、何も、経産省の発想を鵜呑みにしようなどということではないのです。かといって否定しようというわけでもないのです。

★経産省だって、鳥の目、魚の目、蝙蝠の目は活用しています。しかし、現場のナノレベルの極めて重要な具体的状況はショートカットしているし、本質的で根源的なことはあえて見ようとしないでしょう。

★経産省の教育に提案をするスタンスは、教育制度を変更したり、学びのツールをイノベーションすることで、市場経済の発展につながるという経済原則に当然従っているからです。何も競争的資本社会を変えようなどということはなく、その閉塞状況を好転させればそれでよいのです。

★もしかしたら、公立学校はそれでよいのかもしれません。文科省や財務省、経産省などの発想に従って、ダメなところは統廃合していけばよいのです。そのことを推進する校長などは、チェンジメーカーのなせる業ということになりますから。

★こういった経済政策に対し、かつてケインズは、それでもいいのだけれど、孫の世代は、そうなっていないよ。もっと根本的で本質的なことを考えるようになる時代になるよ、さてそのとき人類はどうする?と世界恐慌の最中に100年後を見通していたのです。その予言が設定した年というのが2030年ごろなのです。

★私立学校は、岩倉高等学校のように、120年以上歴史を持っているところもあるし、70年くらいの私立学校も、当然これから100周年以降も見通して教育活動を行っています。

★ですから、経産省の発想と共通するところも見据え、ケインズの心の目も探究しながら進もうということなのでしょう。そう私は松本先生と先日お電話で対話して感じ入ったのです。またまた本間の妄想だと思われるかもしれませんが。

★松本先生は、若手研修を自校でも行い、時代が必要としているイノベーションとケインズの目の両方を共有しようとしています。そのことは次の教職員支援機構(NITS・ニッツ)の動画及び学事出版がサイトで公開している記事で知ることができます。ぜひご覧ください。

校内若手教員研修 各教員の個の育成と学校組織の強化:第2回NITS大賞活動発表会

アクティブティーチャーの挑戦 第十五回(月刊高校教育6月号) 

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