私立学校の役割 社会を変えるコレクティブインパクトを創る越境をデザイン
★森の中で、ひさびさザッピング読みをしました。ルソーの人間不平等起源論と西研さんのルソーのエミール論。起源論は、鹿狩りの寓話が掲載されている章を、西研さんのは、たぶん最終章。エミールが22歳になって、ルソーが社会契約論で描いている理想の国がどこにあるか旅をする箇所。いずれも、ドネラのクマのブラックジョークに通じる話で、私立学校が明治から立ち上がった時、ルソーにも影響を受けていたのはしっくり。もちろん、ロックやアダム・スミスにも影響をうけています。
★だから、ご承知の通り、啓蒙思想といっても、ルソーのようにコミュタリアニズム傾向とロックやアダム・スミスのようにリバタリアニズム傾向といろいろあるため、簡単には論じられないけれど、教育と経営の両輪の私立学校は、それらを独自の発想で建学の精神として統合していた感じですね。
★そして、その当時の私立学校って、社会を変えるコレクティブインパクトを生み出すデザインをしていたのだと想いを馳せました。明治は何せ民主主義や近代国家を作り出そうとしていました。それは政治だけではなく、経済も然り、教育も然りで、総がかりでやっていたわけです。元祖コレクティブインパクトを生み出していたということでしょう。
★だから学校が変わるだけでは、社会は変わらないのは、今もそうなのです。今の多くの私立学校が外部団体と連携しているのは、まさに社会を変えるコレクティブインパクトを生み出す教育デザインをしていることになります。
★ルソー的には「一般意志」を構築する一つの役割を担っているわけですが、それには外部団体と越境して協力態を形成するということですね。
★電通報2023年7月7日の井口理さんの記事<社会を変える「コレクティブインパクト」の担い手は誰か?~予算とノウハウで勝る大企業、目的とビジョンに集う草の根運動の差~>というのは、まるで現代版啓蒙思想ですね。ルソー的でもあるし、ロックやアダム・スミス的でもある発想を融合した感じの動きがでています。
★井口さんはこう語っています。
「コレクティブインパクト」とは、特定の社会課題について、行政や企業、NPO、基金、市民などが組織を超えて協力し、解決に向けて取り組むこと。この概念をベースとすれば、先にも述べたように、その取り組みのそれぞれの役割に最適なスキル・ノウハウを提供できる存在が参画することが重要だ。そして、その参画への後押しになるのが“共感”であり、すなわち人はビジネスプランではなく思いやビジョンに対し集まるということを理解する必要がある。この思いやビジョンに人は引かれ、ついたぐり寄せられてしまう。
本カンファレンスで頻発するキーワードに「越境」というものがあったが、あらゆる垣根を超えた人の思いが、そしてつながりが、社会課題解決を促進する大きな原動力になるのは間違いない。そしてそれは個々の人の思いがつながることがベースであり、その意味でこれまで言われていたような「草の根運動」の実行力は、一昔前のそれとは桁違いに強くなっているのを感じた。一方で、初期段階から企業が参画するには微細な領域もあるようだ。そこをきちんと発見し、顕在化させ、社会に問うていく、そのスタンスは草の根だからこそできることでもあるだろう。
ただし、企業がそのスキル・ノウハウで大きなサポートを提供してくれることももちろん大歓迎なのだという話は各所で頻出した。
★草の根運動の生み出す「共感」が大事な媒介項なのですが、大企業もそれを支えることができる。むしろ支えて欲しい。越境と共感。
★ルソーは、「憐みの情」と訳されている「共感」をめちゃくちゃ大切にしています。また「一般意志」は、階級や男女、民族などの差を越境して対話関係をつくることなのだと西研さんはご自身のエミール論で語っています。
★3.11の経験を通して、東浩紀さんは「一般意志2.0」を書いています。おそらく、AI時代の今日はこの流れが具体的な活動になっていくのでしょう。コレクティブインパクトの活動も一つの分水嶺をたどる流れでしょう。やがて、それは他の分水嶺をくだってくる流れと合流し新たな大海を作り出すのでしょう。
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