探究とか総合型選抜とか~「経験する自己」と「物語る自己」の接点を見つける
★探究とか総合型選抜とか、極めて重要な学びの活動であるにもかかわらず、疑問を持つ人も少なくないですね。この疑問を持っている人は、必ずしも知識詰込み型教育オシの方ばかりではない。一般選抜オシの方ばかりでもないのです。この疑問に応えられるかどうかはわからないのですが、ユヴァル・ノア・ハラリの「ホモ・デウス」に書かれている「経験する自己」と「物語る自己」という2つの自己の関係の着想はそのヒントになると思います。
★もちろん、私の理解は、ハラリの意味するところとは違うかもしれません。あくまで、ハラリの着想を自分なりに転用して話をしたいと思います。物語る自己とは、端的に言うと事実から離れて物語という幻想を創り出す自己です。神話などは物語る自己によるものでしょう。また、ハラリは、ダニエル・カーネマン教授のピーク・エンドの法則も持ち出しています。
★たとえば、行列ができるラーメン屋。行列ができるからと高揚感をもって並ぶわけです。並ぶのは結構つらいですよね。しかし、終わり良ければ総て良しという言葉もあります。並んだすえについにおいしいラーメンにありつけた。その最後の喜びがいいわけです、並んだ時の経験は忘れ、ピークの高揚感とエンドの喜びが、そのラーメン屋の物語を生み出すのです。
★しかし、そもそもそんな行列に並ぶことよりも、自分でおいしいラーメンをつくる経験で十分幸せという人もいます。こちらを「経験する自己」と呼びましょう。ハラリがそう考えているかどうかは、ちょっと不明ですが、私は、「物語る自己」と対照的に「経験する自己」という位置づけにしました。
★「物語る自己」は、成長し続ける神話を生み出します。成長が崩れそうになるとカンフル剤を打ち続けます。要するに対症療法になりがちです。「経験する自己」は自分の経験という事実から物事を積み上げていきます。ですから、そのような対症療法にはならない可能性が大ですが、物語る力がないと組織を生み出すことができません。市場を創ることができません。
★根本的な問題を発見していながら、解決できないで時間は過ぎていきます。
★やはり、社会課題は協働して根本問題を発見し、改善していかなければ、やがて社会は悪化し、衰退していくでしょう。「物語る自己」と「経験する自己」が協力し合うことが大切だということになりそうです。
★探究や総合型選抜がどこか疑わしいと懸念する人がいるのは、経験する自己のない物語る自己だけが活動したり論文を描いたり志望理由書を描いたりするケースを心配してのことでしょう。
★では、経験をすればよいかというと、物語る自己は、ピークエンドの法則が作動することが多いのです。この経験ああおもしろかったとなるわけですね。
★経験も、世界と自分が切実に結びつくAwe体験のようなものが必要だということでしょう。そのとき、経験する自己は、リフレクションし、いったい自分が経験したことは世界にとってどう転用できるのか抽象化することになります。つまり、物語る自己にシフトするわけです。
★このとき、探究や総合型選抜は、ようやく意味のあるものになるでしょう。
★しかし、これは探究や総合型選抜だけの話ではないのです。あらゆる政治、経済、制度などの枠組みも同じことが言えるのです。経験する自己と物語る自己は2つであって1つであるというコトですね。なんかオチが平和すぎますかね。
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