私立中高の広報室がIR室と同じ機能を持っている学校はサバイブできる
★2024年は大学全入時代だと警鐘が鳴らされて久しい。その危機を乗り越えるため、日本の大学は21世紀にはいってIR(Institutional Research)の重要性を論じてきました。今では、40%がIR室を設置しているというのが大学の現状のようです。IRというのは、大学の独自の創意工夫ですが、米国では学問として成立しています。その成果を活用しているのが日本ですね。
★実は1999年にNTS教育研究所を設立した時に、当時の同僚と一発目に行ったセミナーが「エンロールメントセミナー」です。2日に分けて行う程多くの学校の先生方が集まってくれました。ほとんどが当時の広報部長とか室長でしたが、今思えば、このときのエンロールメントセミナーはたんなる広報戦略セミナーではなかったですね。その証拠に、そのとき集まった広報リーダーは、その後校長、教頭にどんどん進化していったのです。
★「エンロールメントストラテジ」というのは当時米国で流行っていた広報戦略の学問だったので、今でいうTTP(徹底的にパクる)セミナーだったのかもしれません。しかし、それを東京の私学の先生方と学び、飲みながら日本流儀に落とし込んでいったのを想いだします。
★そのエンロールメントマネジメントの一環として、おそらく当時の他社のシンクタンクと違ったのは、「授業」の中身や質を広報しようということを中心にしたことでした。新しい授業、今でいうPBLを創っていこうと勉強会を先生方と結成しました。
★つまり、広報戦略は、入学の宣伝や入試問題の領域だけの話ではなく、入試は学校の顔として位置付け、入学後生徒がどんな授業を受け、どのように成長していくのか、今でいう3ポリシーのストーリーを実装する戦略を練ったわけです。
★一方生徒獲得戦略は、世界の教育情報を収集し、保護者の志向性をマイニングするマーケティングも行っていきました。今思えば、最近はやりの大学のIR室と同じような位置づけの広報戦略室がいろいろな学校に生まれた時期でした。
★ただ、エンロールメントなんて言葉を使う本間はカタカナ語が多いと揶揄もされました。しかし、今では当たり前の世界になりました。上記の4ポイントをトータルした戦略を練ることが、私立中高の広報室の役割というところが多いですね。
★ですから、広報部長や広報室長が教頭レベルの経営的視野をもった人的資本が兼ねているという場合が多いですね。
★私が、私立学校の教師は全員が経営者だよと言っているのは、上記の4ポイントの知見を磨くという意味です。特に人的資本を豊かにするのは、教師のためのみならず、それは生徒にとっても同様なのです。
★そして、その4ポイント領域に関しては、統括的なデータが創られることを望みました。校長時代普段私も授業を見て回るし、保護者と対話もします。それは、先生方が出すデータとマッチングすることによって、私なりの勘を磨くためでもありました。
★この時期から生徒募集の手ごたえが、時系列比でデータ化されていきます。進路の行方も現実的になります。さらに文化祭、修学旅行、探究活動等の教育活動が活発になります。生徒募集の時に生徒がプレゼンするときに、そこに投影される活動記録は質的データです。
★量的データと質的データとリアルな実感の勘をすり合わせて、理事会と掛け合う資料作りなどをしていきながら、学校を先生方と運営する時期です。データや資料は自分でも作りますが、それぞれ先生方が深く広く創りますから、ここはどういう状況か教えてよと聞きまくります。
★そして、各先生方が作成したデータや資料について、レクチャーを受ける対話を日々していきます。それを理事会に報告する資料に挿入していきます。そして、そのデータによるアイデアが通ると、人的資本が豊かになっていくでしょう。
★学校にとって理事会は、コンクール審査会のように使っていくと、理事会も教育に興味を持ってくるわけです。
★IR的な情報収集と分析とビジョン操作は、私立中高でも行われているわけですね。データ作りはICTシステムがとても重要なのは言うまでもありません。一元管理ができるほどのシステム化はまだまだ私立中高では遠いですが、DXの進化によってそれはやがて果たされるでしょう。
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