工学院の魅力➄ ジョサイア・コンドルの精神と感性
★久々にお会いした水川先生(国語科主任)に工学院大学附属の中学棟に御案内していただきました。すると、中学の教頭・教務主任の奥津先生がかけつけてくださって、いろいろ同校の生徒の皆さんの活躍の近況を語ってくれました。ちょうどノイタキュード代表の北岡氏が撮影に来ているところでした。
★奥津先生はFabラボのプロジェクトチームのマスコットじんべいを抱きかかえながら、STEAMを実装している生徒の様子を語るのですが、柔らかくそれでいて教務のデータマスターでもあるその緻密さにはいつも敬意を表しています。やはり、たいへん偉い方であるにもかかわらず、実ほど・・・ということわざ通りの先生です。中野校長の3Fや歩先生の共感的コミュニケションを共有されているなあと。
★そのとき、想い出したのが、このシリーズ1回目に話題にしたジョサイア・コンドルです。コンドルの精神と感性の影響を受けた(と私は妄想しています。科学的証明はできませんが)工学院大学の流れが今も続いているなあと思ったわけです。
★生成AIbingにコンドル風の煉瓦造りのイラストを作成してもらいました。そして、政府は、最初コンドルに東京計画を依頼していたのに、それをやめて、ドイツのヴィルヘルム・ベックマンに依頼したので、そのベックマン風の煉瓦造りも描いてもらいました。二人の発想がはっきり違ってみえます。
★ベックマンの建築・都市計画を進めていった明治政府。今の永田町のランドスケープは、ベックマンの発想が種になってるくらいですから、当時の発想は脈々と生きているのです。国土交通省がサイトで説明しているぐらいです。
★コンドルは、その建築発想に、イギリスのアーツ・アンド・クラフツやその影響もあるアール・ヌーヴォー、つまりウィーン世紀末の影響をうけていました。当時のウィーンはジャパノロジーも流行っていました。
★帝国主義に対する市民の時代を築こうとしていた運動です。当時の明治政府が、それに気づいてこれはどうしようと考えたのも当然です。富国強兵・殖産興業、威風堂々とした東京都市計画で、不平等契約を解消しなくてはならなかったのです。そこで、ドイツから威風堂々とした権威を誇示できるネオ・バロック様式の発想の建築士ベックマンに依頼することになったようです。
(イラストはbing作成。コンドルとベックマンの違いが分かるようにそれぞれの流儀で煉瓦造りのイメージを描いてもらいました。コンドルやベックマンが影響を受けたと思われる建築様式もイメージしてもらいました。)
★一方、解任されたコンドルに目を付けたのは、岩崎家です。これによって、丸の内駅舎から今の宮城にかけての敷地の岩崎家の開発(今の三菱地所のルーツ)や日本文化の欧米への普及に大貢献を果たすことになったのはコンドルです。今もストラスブール大学では、日本研究が盛んで、明治の文化の話題が出るたびに、ジョサイ・コンドルが欧米に伝えた日本文化のコンテンツが引用される程です。
★ベックマンとコンドルに象徴されるように、明治時代の近代化路線は、ざっくり2方向だったのです。権力主義的というか官僚主義的近代化と市民社会的近代化路線。コンドルは、後者の方向性に影響を与えたでしょう。この両ベクトルは、戦時中は、一つに極端に偏りましたが、振り子のようにいったりきたり均衡点を探りながら進んできたのが日本の近代社会づくりでしょう。その社会づくりの一端を担っている教育にも、同様に≪官学の系譜≫と≪私学の系譜≫があります。
★今の工学院大学附属は、3Fと共感的コミュニケーションが象徴するように、≪私学の系譜≫の最前線で活躍していると思います。それだからこそ、IBとラウンドスクエア形成に貢献したクルト・ハーンの理念と共感できたのだと思います。クルト・ハーンはドイツ人ですが、当時のドイツ政府に迎合しなかったために、イギリス政府の支援で、英国に亡命します。
★そして、新しい私立学校を創設する機会を得ます。1つは、ウェールズにあるIB校アトランティック・カレッジです。これが今のIBの広がりをつくったのです。またラウンドスクエアのプロトタイプの私立学校も創りました。第二次世界大戦のようなディスオピアに陥らないように、グローバル市民リーダーを生み出そうとしたわけです。
★工学院は、そのラウンドスクエアの加盟校だし、ケンブリッジインターナショナルスクールとの連携を果たしています。この2つのそもそもの原点は、オックスブリッジです。昨年の10月、オックスフォード大学でラウンドスクエアで加盟校が集結する国際会議がありました。当然、工学院の生徒も参加しています。
★優勝劣敗主義は、明治政府が教育政策の中に盛り込んだ主義で、これもまた今の時代に生きています。しかし、ラウンドスクエアは、この主義とは真逆のフラット、フェアー、フリー、フラタニティ―などの民主主義を保守しています。そのためには、グローバル言語とグローバルイノベーションをラウンドスクエア加盟校は、実装し続けます。熟慮なきイノベーションの危うさを知っているからです。同時にイノベーションなき熟慮の現実化力のなさも知っているからです。
★もう30年も前ですが、ウェールズのIB校、アトランティック・カレッジに訪れたことがあります。そのときの若者と同じ頭脳と感性を、今回の訪問で出会った工学院の生徒に感じました。(ひとまず今シリーズは終了)
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