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2023年9月

2023年9月30日 (土)

工学院の田中歩先生との対話 自然体の教育なのに質が破格

★昨日、GLICC Weekly EDU 第145回「工学院ー多様なプロジェクトで成長する生徒たち」がありました。秋の夜長、同校の教務主任の田中歩先生の静かな情熱のある対話が、心地よく響きました。工学院と言えば、ラウンドスクエアとかケンブリッジインターナショナルとか最先端をいくDX環境、豊富な高大連携プログラム、中1から高2までスキルアップと成長のDNAさながらの螺旋を描いていく探究学習、数え切れない海外研修などの話が有名なのですが、今回は夏休みのオーストラリア研修とつい先日行われた夢工祭(文化祭)について語られました。

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★工学院の生徒全員が参加している活動の中で、一人ひとりの生徒が主体的に自分で判断し選択し行動していく姿を、歩先生は具体的に語ってくれます。

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★フラットでフリーでフェアな雰囲気が広がっていることが伝わってきます。この雰囲気があるからこそ、生徒自身がコンセプチュアルな企画をたて、テクノロジーを駆使して倉庫に入っているような機械をだしてきてビッグモニターを組み立ててしまうほどです。教科の専門家である先生には、まだまだ生徒はかなわないのは当然ですが、DXやクリエイティビティに関しては、教師を超えています。

★だからこそ、フラットな関係が相乗効果を破格に生み出しています。このような雰囲気がベースに、他校にはない多様なプロジェクトがビックバーンだながらになるのでしょう。このベースを先生方がしっかりつくっているかいないかでは、同じプロジェクトをやるにしても、生徒の成長のあり方は相当違いがでてくるでしょう。そのことは外から見ているとわからない部分です。受験生の皆さんは、工学院をスタンダードにして自分の気になる学校の説明会に参加すると、学校の特徴が明快に了解できるかもしれませんね。

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★ですから、経産省の「未来ビジョン」と照らし合わせたとき、経産省が提案する目指すべき姿は、すでに工学院は果たしているということが改めてわかります。工学院は、別に経産省を意識しているのではなく、独自のグローバルな範囲での情報収集力と時代の流れや本質を見通す目を持っている先生方がいるのです。そして、意志決定したらすぐに動きます。子どもたちと未来をいっしょにつくる先生方。頼りになります。ぜひご視聴ください。

 

 

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2023年9月29日 (金)

OODAbleな3人の校長に期待!

★昨日、アルカディア市ヶ谷で、第1回理事長・校長会(一般財団法人東京私立中学高等学校協会主催)があり、これからはじまる2024年度の私立中学と高校入試の日程や要項などの確認がなされました。また、近藤会長や清水副会長からは、大阪府の私立学校に対する経営権の侵害ともいえるキャップ制度に関して、東京は私学の独自性と先進性を守るために、協力し合うことを改めて確認されました。

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(左から小島校長、土屋校長、堂本校長)

★理事会が始まる前と終了後に、私が11支部の学校に勤務していたということもあって、同支部の聖パウロ学園の小島校長、駒沢学園女子の土屋校長、桜美林の堂本校長と少し立ち話ができました。

★3人の校長は、時代の変化に振り回されることなく、むしろ先回りして時代を創っていく教育出動をしています。情報収集旺盛で、時代を鳥の目、虫の目で見つめます。大胆にして細心の注意に気遣う目を持っています。そして時代の流れをつかむ魚の目をもっています。また、新しい教育を逆転の発想で生み出すコウモリの目を持っています。何より本質的なもの、根源的なものを見通す心の目が鋭いですね。

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★そして、意思決定したら、軽やかに突き進む行動力があります。実にOODAbleだと感じ入ります。

★11支部は、東京の西側です。東京の私立学校といっても、23区とそうでない地区とではいろいろな点で違いがあるものです。それについては、ここでは述べませんが、多くのメディアで語られているので、ご承知のことと思います。

★しかし、3人の校長は、逆転の発想の持ち主です。11支部のエリアで、どんなおもしろいことが起こるのでしょうか。3人の校長が協力すれば、コレクティブインパクトは相当なものでしょう。

★対話の中で、何かが起こる気配を感じました。期待しております!

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東京在住者の私立中学校の授業料負担を軽減する制度が始まっています!

★東京都私学財団のサイトに、令和5年度私立中学校等授業料軽減助成金の申請期間の延長について告知があります。


◆申請期間(当初):令和5年9月1日(金)~9月30日(土) ※9月30日消印有効から「10月15日(日)まで延長※10月15日消印有効」

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★まだ申請していないご家庭は、焦らずにお申し込みください。

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ファシリテーターって直進的時空と内省的時熟を統合できるマエストロ 永遠の今が開かれる

★東京私学教育研究所の同僚と仕事の合間に対話をします。月に一度は気づくと5時間くらい時間が経っている戦略的内省会議があります。研修も秋の陣にはいって、夏までの回数の重量感はありませんが、それぞれの委員会の実りの豊かさが訪れますから、先に進みつつリフレクションする瞬間があります。短いけれど発見の対話ですね。

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★今年は、とにかく基本形は座学とシェアリングをワンセットでいこうという流れで、座学は座学でミニワークショップ付きの講義だったり、シェアリングも対話だったり、グループワークだったり、じっくりワークショップだったり、バリエーションが豊かでした。上田教授や古澤教授をはじめ座学とワークショップを変幻自在に展開していく多くのマエストロに出遭い感動もしました。

★この夏行われた初任者研修では、そのマエストロは大学の先生方以外に委員の先生方自身がそうでした。先生方は、このシェアリングの時間をたっぷりとっただけではなく、OST(オープン・スペース・テクノロジー)という参加者一人ひとりの興味と関心から出発し、共振し合うメンバー同士対話を深めていくという組織開発の方法を取り入れました。

★1人ひとりの興味と関心からスタートするということは、ある意味コントロールが効かないということで、一般に学校では取り入れられないし、企業だって清水の舞台から・・・という覚悟でやっています。でも、成功した時の人的資本の生まれる勢いが違ってくることも確かだと言われています。考え方の転換だけではなく、生き様の転換が生まれるわけです。

★このOSTというのは、時間と空間のデザインによって参加者の情熱に火をつけ、メラメラとなるようにアフォーダンスしていきます。あるときは直線的時空を設定したり、あるときは円環的な時間を内省的時熟にする設定をしたりします。

★このミックスによって、永遠の今がふと生まれる瞬間があります。ちょっとオカルト的な体験かもしれませんが、ひとり帰り道に星空を見て、何か大切なものをジュワッーと感じるような瞬間です。

★レッド・ツェッペリンのロックの響きを聞いたり、藤田真央オリジナルのモーツアルトのカデンツア聞いたときとか、カラヤンのマーラーの5番を聞いたときとか訪れるあの永遠の今という瞬間。

★もしPBL授業の中に、そんな時空デザインができたならすてきです。カリフォルニア州のオレンジ郡のあるチャータースクールに訪れたとき、子どもたちが先生をマエストローっ!と呼んでいたのを想いだします。もちろん、このマエストロはたんに先生の意味で使われていたのですが。どうしているかなあスーザン・マス校長は。相当高齢だったけれど、めちゃくちゃ情熱と慈愛に満ちた方でした。

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2023年9月28日 (木)

デジタル・グリーン・ワールドはプロトピア

★円を描いて、弧の上に別々の複数の点をとってみてください。そこから接線を引くと、なんて感動的ななのでしょうか。円をOne Earthに置換えるとその感動はAwe体験に拡張されます。縄文時代など古代の初期のころのイノベーションだった土器は、最初、円錐状で、頂点をひっくり返し、土の中に埋めて安定させて使っていたときがありました。

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★イノベーションと自然と世界が円の弧の一点で接していたのです。その複数の接点から延長した接線は交わるか平行かどちらかですね。人類の視座は、かくしてどこからでも交わるか無限に眺望するか。

★しかし、私たちの生活用品は、今や地べたから離れ、多くの場合テーブルの上に置かれ、いつしか自然から遠のいています。ですが、自然の中に入ると、今でもしっかり地べたに立っているではないかと気づくわけです。

★しかし、最近頻繁に、この地べたにしっかりと立つことができないコトが起こっています。気候変動と戦争と精神的眩暈。

★ですから、なんとかしちという興味と関心が沸き起こっています。しっかりと、One Earthで、人類すべたが地べたに立てるようにしたい。そんな強い想いが、あちこちから生まれて、アクションを起こしているのが、Midcenturyに向けて起こっていることです。

★この流れを教育の局面でも創っているのが、21世紀型教育です。21世紀型教育は、この自然と社会と精神の循環を持続可能にする人的資本を生み出す組織であり人間集団です。

★そのことを改めてデジタル・グリーン・ワールド=DGW循環と呼びたいと思います。デジタルは、石器時代から人類が行ってきたイノベーションの象徴であり、グリーンはOne Earthの象徴です。ワールドは、社会と人間一人ひとりの内面の両方を結ぶ象徴です。

★私がよく刺激を受けるマガジンWiredのVOL.50の巻頭言では、ユートピアでもないディストピアでもないプロトピアが紹介されています。

★トピアは場所ですね。プロは、プログレスのようですが、プロジェクトも重ねてプロトピアと私は使いたいと思います。

★21世紀型教育は、DGW循環というプロトピアを創出する拠点の1つです。

★2011年からこの想いで仲間と21世紀型教育機構を創ることにかかわってきました。今ではアクレディテーションをやっていないので機構には加盟していないけれど、独自に21世紀型教育を推進している学校が増えてきました。

★私は、3%理論と20%理論の両方を使いますが、21世紀型教育は、東京の私立学校には、おそらく40校弱生まれています。20%を超える日も近いですね。ここから、大きなウネリが始まります。MidcenturyはDGW循環を進めるプロトピアの時代になるでしょう。

★3%理論というのは、毎年3%ずつ変わっていけば、7年で20%を超えるということです。21世紀型教育機構発足から12年ですが、まだそこまでは行っていません。なぜなのか、リフレクションしてみたいと思います。コモンズの悲劇があったのかもしれません。

★あるいはルソーの語る鹿狩りの寓話であったのかもしれません。ディストピアにならないように、プロトピアへ反転させる仕掛けを作りたいと思います。

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2023年9月27日 (水)

聖パウロ デジタル・グリーン・ワールドを創る人的資本が生まれる環境着々

★聖パウロ学園高等学校は、今春、小島綾子校長が就任してからというもの、着々と人間の本質革命が進行しています。学校とか学歴とかを越境して、AI時代をデストピアにしない人的資本が生まれる環境を創っています。デジタルとパウロの森が新結合して、生徒1人ひとりの内面の世界と世界中の人々の痛みを結び付けて人間の本質を取り返す人的資本です。

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★その環境の最大の一歩は、聖パウロの在校生が半端ない主体性を発揮して探究活動(広い意味)をしていることです。部活も、行事も、生徒会活動も、地域の方々と協働してボランティアをしたり、すべて自分の内面の道を探究し、その道を共に仲間と歩みながら、今も未知の向こうにもウェルビーイングな世界を作り出す人的資本として活躍するでしょう。

★デジタルと東京ドーム五個分の森の中野キャンパスというデジタル×自然環境を自分たちの興味と関心を持って活用するうちに、教師が教えなくても、壮大な世界を生み出していくでしょう。もちろんパウロの教師は、その開かれゆく道の途中で生徒たちが悩み迷ったとき、共に考え支えるでしょう。

★しかし、生徒は自分の道を進路指導という名でコントロールされることはないのです。自由です。もちろん仲間との信頼関係が、その自由を深い概念に変容させてもいます。

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★そして、上智大学とも高大連携し、聖パウロよろしく正義と隣人愛の道をグローバルに拡張していきます。

★人間の本質は、日常生活の中では忘却されがちです。しかし、その本質をデジタル・グリーン・ワールドという精神と社会を循環するOne Earthの価値を創出し続けるという意味での人的資本を生み出していく環境デザインをしているのが、聖パウロの教師です。

★ここまでの覚悟を持っているチーム教師は、希少価値です。世の中の学歴だとか目先の利益に辟易している諸君、そんな表層的な利益に惑わされず、聖パウロで輝きながら共に自分の道を開いていきましょう。そういう気概を持って、今春、先輩方は卒業して今も取り組んでいます。ときどきそういう便りが来ます。パウロを考えている中3生、そして今進路実現に立ち臨んで卒業を迎えようとしている高3生。君たちに栄光あれ!

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哲学対話のコンテキストレンズ 中学入試・総合型選抜・IBのDP・Aレベル・APなどを貫く

★昨日ご紹介した土屋先生の哲学対話のワークショップ。土屋先生はWSの中でQワードカードを活用されなかったようです。資料には紹介されていたのです。おそらく、国語科の専門委員の研修だったので、使う必要がなかったのだと思います。

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Qワードカードというのは、土屋先生もかかわっている「NHKのこどものための哲学」という番組で活用されているものです。子どもたちが哲学対話をしてちょっと詰まったり、堂々巡り(ポイントレス)になったとき、ワードカードを使ってみようかということになるわけです。「もし~だったら?」どう?とか「なんで?」とか「立場をかえてみたら?」とかファシリテートするわけですね。

★国語の授業で文章読解をするとき、先生方は暗黙知としてこのQワードカードにある問いを生徒に投げかけています。試験問題を作成する時も、自動的にこのクエスチョンがでてきます。小論文を添削したり、編集の方法を指導する時もこのクエスチョンは自動化されていますね。

★もし生徒が、このクエスチョンを暗黙知化し、読解や小論文作成の時に自在に使えたら、高い言語能力を持っていると評価されるでしょう。

★そして、この11のQワードカードは、中学入試の国語にも役に立つし、総合型選抜の志望理由書や小論文でも役に立ちます。IBのDPにあるTOKや国語でもそうですね。AレベルやAPテストでも同様です。

★ただ、高校段階ですから、この11のほかに、ジレンマとパラドクス、メタファーは付け加える必要があるます。

★これを加えた14個のワードカードのことを私はコンテキストレンズと呼びたいと思います。思考のコンセプトレンズはもう少しメタなのですが、コンテキストレンズをリフレクションすることで、メタ認知的次元とベタの領域を往還できます。

★教員試験などで優秀な教師は、このコンテキストレンズを暗黙知として自在にこなせるわけですが、授業で、このレンズを生徒と共有し、生徒が自分のものにし、思考の自己組織化ができるように育成できるかどうかはまた別の問題なのですね。

★アスリートで、名プレイヤーでも、名コーチになれるかどうかは、また別問題なのと同じです。

★哲学対話を、いろいろ哲学問題で、重ねていくのは、その回答というコンテンツを作成することももちろん大事なのですが、未知の問題に対し、コンテキストレンズを自在に使えるようになるかのトレーニングでもあったのです。それと未知の体験をしてときに新たな問いを発見するトレーニングでもあったのです。

★よく教えない教師とか、ファシリテーターであることが大事だといわれることがありますが、これは教師がコンテンツについて説明し続け、それを静かに聞いている生徒という関係から、コンテンツをコンテキストレンズを使って生徒が思考や感性を豊かにしていく様子を見守り、コンテキストレンズの出来具合をエンパワーメントエバリュエーションしていく関係にシフトしようというということでしょう。

★エ~ッ!?そんな簡単なことと思われるかもしれません。しかし、このコンテキストレンズを思考コードに配置してみると、なかなかすごいでしょう。そして、意外と、ふだんの対話で、もし~だったらとか、他の立場でとか相手の立場でとかなかなか意識できていないことに気づきませんか。

★いろいろな学校のトラブルは、意外と教師と生徒の対話のコンテキストレンズの共有ができていないことによる場合が多いのだと私は思います。来年4月から合理的配慮が義務化されますね。合理的配慮は、共感的コミュニケーションをベースにした信頼関係をつくれるかどうかにかかっていると言われています。

★愛情だと思っているのが、相手の立場に立つと真逆だったりすることもあるわけです。コンテンツの共有の背景には、豊かなコンテキストレンズの成長が並行進化する必要があるのではと思っています。言うは易いですが。。。

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2023年9月26日 (火)

秋の夜長 世界を変える哲学対話の研修

★昨夜、秋の夜長、じっくり哲学対話のワークショップが、アルカディア市ヶ谷で行われました。土屋陽介先生(開智国際大学教育学部准教授)をお迎えし、文系教科研究会(国語)が「ワークショップ 哲学学対話 ―ゆっくり、じっくり考える―」を開催しました。

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委員長 畑澤 正一先生(⑦大 森 学 園)
委 員  鈴木 千穂先生(①共 立 女 子)  宇野 幸弘先生(③晃 華 学 園) 山田寛治郎先生(⑦香蘭女学 校)  駒ヶ嶺泰暁先生(⑨中央大学杉並) 沖 奈保子先生(⑫ドルトン東京学園)
東京私学教育研究所 文系教科研究会(国語)担当:松田氏・岡沢氏

★ワークショップにおいて、哲学対話の問いは、日常使っている言葉や事柄というものが、参加者が意外にも憶見やアンコンシャスバイアスで捉えられていることに気づき、その概念をそれぞれの想いから語り合うきっかけをつくるものでした。

★そして、土屋先生は、問いの立て方や選択の仕方、対話の仕方など、強制をせずに自由をベースに語り合う丁寧な手順を踏んでワークショップを行っていきました。

★とかく、時間に追われ学習項目をこなすことに追われる日々の授業です。このような哲学対話は、何かほっとするし、学校現場でも何か取り入れることができるかもしれません。

★対話を大切にしている聖パウロ学園の校長小島先生も参加していましたが、パウロでは、20%ルールというのが授業にあって、最低授業で20%はじっくり考える時間を取り入れているそうです。哲学対話はヒントになりそうだということでした。

★哲学対話の問いは、ふだん意識しないで活用している概念を、今一度立ち止まって語り合います。小中学生の時には、「親友とは?」とか「勉強とは?」とか。当たり前と思っていることを考え直すわけです。結論は出しませんが、参加した小中学生は、自分の中で思ってもみなかった新しい側面を知る可能性があります。

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★その意味で、自分の内面の世界をつくり変えることになるかもしれません。

★高校になると、少しこれらの問いに視野を広げる修飾語がつきます。たとえば、「国家同士の友情はあり得るのか?」など。すると自分の内面の世界だけではなく、地球規模の世界の話に一挙に広がります。

★哲学対話は、日常の概念を脱構築することで、地球規模の世界の概念をも変えてしまうパワーを持っていることに改めて気づき、対話のすばらしさに畏敬の念を抱きました。Awe体験ですね。

★土屋先生、参加された先生方、委員の先生方、研究所の所員の方々、本当にありがとうござした。

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2023年9月25日 (月)

続工学院の魅力 チェンジメーカーとしての成長躍動が凄い グーグルフォーム分析とメタローグ分析で

★工学院の生徒のみなさんが対話している姿を観察して、そのあとグーグルフォーム(協力:日本私学教育研究所伊東竜氏)でクロスクエスチョンと思考のレンズのアンケートに答えてもらいました。すると、非認知能力が半端ないことがわかり、チェンジメーカーの生成力が圧倒的である工学院に驚愕でした。

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★生徒の対話を観ていると、そこにはあの3F(フラット・フェアー・フリー)の雰囲気があり、共感的コミュニケーショゾーン(ECZ)を自分たちで創っているのがわかります。

★3Fは工学院の先生方が創り出す環境ですが、ECZは、自分たちで生み出さなければ自分ごとではありませんから、共感のしようがないからです。

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★なぜ、ECZを生徒自身が設定できるのでしょうか?それは、工学院の多様なプログラムが認知能力のみならず非認知能力も生み出すからです。非認知能力は、創造する意志をマインドセットしています。創造する意性は、ECZがあるがゆえに生まれてきます。にわとりが先か卵が先かわかりませんが、この創造する意志とECZはセットですね。

★こうして生まれてくる生徒の非認知能力をフォームによるアンケートで、分析させてもらいました。その結果と対話観察によって、数値化してみたのですが、ぶっちぎっていました。

★Cクエスチョンというのは、教科のクエスチョンでも探求型の社会課題でもない、つまりコンテンツベースではなく、発想が前面に出てくる思考実験型のクエスチョンです。集まってくれた生徒は、それを自分で解いてみます。200字以内で文章を書きます。その書いている際に、自分自身でリフレクションしながら作業しているのは見ていてわかります。

★そして、書いたら、その回答を自分はどんな思考レンズを使って考えたか選択します。これもまたリフレクションです。

★次に、自分たちの考え方について対話します。これもまたリフレクションになっています。

★最後に、自分たちの発想や考え方は、どんな社会課題に転用できるのかまたリフレクションします。

★このリフレクションのプロセスを分析するのがメタローグ分析です。

★対話で見逃されるのは、このリアリスティックリフレクションのループです。このループがぐるぐる次元をあげていくと非認知能力が豊かになっているというコトを示唆するでしょう。

★実は、今回の1時間くらいの対話と10分くらいのフォーム回答で、そのループの次元が上がっているのが見えました。今回の対話とフォームは、実際には工学院の教科や探究の授業の中でぐるぐる回転しています。

★工学院の生徒がチェンジメーカーとしての圧倒的な成長躍動を形作るのは、こうした非認知能力の成長をサポートする教育環境と生徒自身がECZを生み出す内面の泉をこんこんと生み出しているからです。

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Awe体験のタイプ=Awe体験コード 幼児期の身体知体験が大事な訳がわかる

★ここのところ多くの先生方とリアルにあるいは動画番組やSNS上で対話をしてきて、学びの多様な局面にAwe体験があることを見つけてきました。島皮質を刺激し、非認知能力を豊かにする。仮に幼児期にあまり体験してこなかったとしても、大脳皮質は成長し続けるならば希望はあると仮説を立てているわけですが、下記のように図式化してみると、なんと幼児期のAwe体験がとても重要なことが改めてわかってしまったのです。

【Awe体験コード】

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★モンテッソーリ教育とかレッジョエミリアの教育などは、自然体験やもの作りを幼児期にしっかりやっています。なんとなんと、中高の学びの中で最もAwe体験度が高い体験をしています。まだシミュレーション段階ではないとはいうものの、実は幼児教育は身体知を養うプログラムが歴史的にも長い積み重ねがあります。それゆえ、国際的に行われたり紹介されたりもしてきました。

★ただ、リフレクションとか内省的なものは、言語によるものが多いため、中高の教育とは違いますが、感覚のズレの調整や身体とリズムを合わせる楽しさとか、リフレクションを言語ではなく、身体で感じ取る基盤を生成している可能性大です。

★この基盤(つまり身体知と呼んでいます)が、大きくしっかりできていると、小中高と自分の才能を言語を含め多角的な知で豊かにしていけるでしょう。

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★仮に、この基盤が小さくても、知識は拡大できますから、並行進化で非認知能力と認知能力を豊かにしていけばよいのです。

★そうはいっても、この基盤を幼児期のうちに豊かにしていると、おそらく成人した時に、何かかなわないなあと多くの人に感じられる人、しかも美徳も備えた人物に成長する可能性があると思います。それはそのような人物の幼児期をたどる研究がやがて証明することになるでしょう。

★私自身、3歳になったばかりの孫と休日いっしょに過ごすと、モンテッソーリもレッジョエミリアの学びなどはできませんが、いっしょにいろいろな体験をします。夜寝る前に、いっしょに散歩して、星や月を一緒に見ると、二語文をようやく話せるので、顔を夜空に向け、指をさしてなんか言っています。私は、そうだね、いいね、すごいねぐらいしか反応しませんが、彼はその反応に自分の反応を重ねてきます。その反応の掛け合いが永遠続きます。

★隠れん坊など簡単なゲームでは、順序付けや重みづけを身体で感じ取っているようです。順序を変えるとAwe体験し、今度は自分がそれをまねてきます。ミラーニューロンが発達してきたといえばそれまでですが、ポジティブなメンタルモデルを形成しておくことは大事だなと思いつつ、娘の時とは違いまったく叱る気持ちがわいてこないのが不思議です。娘の時にもっとこういう知識があったらなあと、反省しつつ、孫との生活を楽しんでいる今日この頃です。

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2023年9月24日 (日)

工学院の魅力➄ ジョサイア・コンドルの精神と感性

★久々にお会いした水川先生(国語科主任)に工学院大学附属の中学棟に御案内していただきました。すると、中学の教頭・教務主任の奥津先生がかけつけてくださって、いろいろ同校の生徒の皆さんの活躍の近況を語ってくれました。ちょうどノイタキュード代表の北岡氏が撮影に来ているところでした。

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★奥津先生はFabラボのプロジェクトチームのマスコットじんべいを抱きかかえながら、STEAMを実装している生徒の様子を語るのですが、柔らかくそれでいて教務のデータマスターでもあるその緻密さにはいつも敬意を表しています。やはり、たいへん偉い方であるにもかかわらず、実ほど・・・ということわざ通りの先生です。中野校長の3Fや歩先生の共感的コミュニケションを共有されているなあと。

★そのとき、想い出したのが、このシリーズ1回目に話題にしたジョサイア・コンドルです。コンドルの精神と感性の影響を受けた(と私は妄想しています。科学的証明はできませんが)工学院大学の流れが今も続いているなあと思ったわけです。

★生成AIbingにコンドル風の煉瓦造りのイラストを作成してもらいました。そして、政府は、最初コンドルに東京計画を依頼していたのに、それをやめて、ドイツのヴィルヘルム・ベックマンに依頼したので、そのベックマン風の煉瓦造りも描いてもらいました。二人の発想がはっきり違ってみえます。

★ベックマンの建築・都市計画を進めていった明治政府。今の永田町のランドスケープは、ベックマンの発想が種になってるくらいですから、当時の発想は脈々と生きているのです。国土交通省がサイトで説明しているぐらいです。

★コンドルは、その建築発想に、イギリスのアーツ・アンド・クラフツやその影響もあるアール・ヌーヴォー、つまりウィーン世紀末の影響をうけていました。当時のウィーンはジャパノロジーも流行っていました。

★帝国主義に対する市民の時代を築こうとしていた運動です。当時の明治政府が、それに気づいてこれはどうしようと考えたのも当然です。富国強兵・殖産興業、威風堂々とした東京都市計画で、不平等契約を解消しなくてはならなかったのです。そこで、ドイツから威風堂々とした権威を誇示できるネオ・バロック様式の発想の建築士ベックマンに依頼することになったようです。

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(イラストはbing作成。コンドルとベックマンの違いが分かるようにそれぞれの流儀で煉瓦造りのイメージを描いてもらいました。コンドルやベックマンが影響を受けたと思われる建築様式もイメージしてもらいました。)

★一方、解任されたコンドルに目を付けたのは、岩崎家です。これによって、丸の内駅舎から今の宮城にかけての敷地の岩崎家の開発(今の三菱地所のルーツ)や日本文化の欧米への普及に大貢献を果たすことになったのはコンドルです。今もストラスブール大学では、日本研究が盛んで、明治の文化の話題が出るたびに、ジョサイ・コンドルが欧米に伝えた日本文化のコンテンツが引用される程です。

★ベックマンとコンドルに象徴されるように、明治時代の近代化路線は、ざっくり2方向だったのです。権力主義的というか官僚主義的近代化と市民社会的近代化路線。コンドルは、後者の方向性に影響を与えたでしょう。この両ベクトルは、戦時中は、一つに極端に偏りましたが、振り子のようにいったりきたり均衡点を探りながら進んできたのが日本の近代社会づくりでしょう。その社会づくりの一端を担っている教育にも、同様に≪官学の系譜≫と≪私学の系譜≫があります。

★今の工学院大学附属は、3Fと共感的コミュニケーションが象徴するように、≪私学の系譜≫の最前線で活躍していると思います。それだからこそ、IBとラウンドスクエア形成に貢献したクルト・ハーンの理念と共感できたのだと思います。クルト・ハーンはドイツ人ですが、当時のドイツ政府に迎合しなかったために、イギリス政府の支援で、英国に亡命します。

★そして、新しい私立学校を創設する機会を得ます。1つは、ウェールズにあるIB校アトランティック・カレッジです。これが今のIBの広がりをつくったのです。またラウンドスクエアのプロトタイプの私立学校も創りました。第二次世界大戦のようなディスオピアに陥らないように、グローバル市民リーダーを生み出そうとしたわけです。

★工学院は、そのラウンドスクエアの加盟校だし、ケンブリッジインターナショナルスクールとの連携を果たしています。この2つのそもそもの原点は、オックスブリッジです。昨年の10月、オックスフォード大学でラウンドスクエアで加盟校が集結する国際会議がありました。当然、工学院の生徒も参加しています。

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★優勝劣敗主義は、明治政府が教育政策の中に盛り込んだ主義で、これもまた今の時代に生きています。しかし、ラウンドスクエアは、この主義とは真逆のフラット、フェアー、フリー、フラタニティ―などの民主主義を保守しています。そのためには、グローバル言語とグローバルイノベーションをラウンドスクエア加盟校は、実装し続けます。熟慮なきイノベーションの危うさを知っているからです。同時にイノベーションなき熟慮の現実化力のなさも知っているからです。

★もう30年も前ですが、ウェールズのIB校、アトランティック・カレッジに訪れたことがあります。そのときの若者と同じ頭脳と感性を、今回の訪問で出会った工学院の生徒に感じました。(ひとまず今シリーズは終了)

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工学院の魅力④ 生成AIの研修会も続けている

★工学院の生徒の共感的コミュニケーションと論理的コミュニケーションと創造的コミュニケーションの内的システムについては、いずれ述べますが、そのような3つのコミュニケーションを統合するコンセプトレンズを形成している環境の大きな一つに

ICT環境があります。

もう一つはグローバル教育です。

そして多様なPBL環境があります。

さらにラウンドスクエアとかケンブリッジインターナショナルなどとのエスタブリッシュな海外教育との強い絆を持っているということもあります。

★私が訪問させていただいた当日、帰り際に田中歩先生から、これから希望者が集うICTの研修会があるけれど、見学してみませんかと誘われたので、もちろんですと参加させていただきました。

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★希望者と言いながら、ほとんどの先生方が参加していました。もともとICTを担当する委員会というかプロジェクトチームがあって、そこで毎週のように戦略と先生方が実装できる仕掛けを創っているのは知っていました。ですからあのパンデミック下で、どこよりもはやくオンライン授業を開設できたのは、各メディアで紹介され記憶に新しいところです。

★しかも、頻繁にいろいろなSNSツールで教師も生徒もやり取りしていて、授業などで使って便利だと思うアプリやサイトの情報は速やかに共有されています。データベースの一元管理も進んでいます。もちろんセキュリティはしっかりしています。

★ここはさすが中野校長の采配はすごいなあと感心しています。フラット、フェアー、フリーという3F雰囲気は、それを完遂するICT環境が大きく影響するのは、GAFAM以降の世界的な流れです。

★ただし、この環境を中高で整備しているところは、ほとんどないでしょう。しかもこの恩恵に浴することができるのは、教師のみならずもちろん生徒もです。ですから、集まってもらった生徒にフォームで問いを出したときも、宮井先生がすぐに生徒にURLやQRコードを送り、ある生徒はPCで、ある生徒はスマホで対応しました。まったく日常化しています。

★教師も生徒もスマホとタブレット型PCを自在に使っている学校です。ですから、対面でこんなに集まって何を研修するというのだろうと興味津々だったのです。

★するとChatGPTスペシャルな研修だったのです。講師は安藤昇先生。教育業界でも有名な方です。さすがは中野校長のネットワークだなと。安藤先生はスタディサプリでも講座を持っています。同サイトでは、次のようなプロフィール紹介がされています。

「青山学院中等部講師。情報科教育、プログラミング、AI活用などの授業・講演実績多数。プライベートスタジオを持つ、映像授業制作のプロフェッショナル。ICT技術を活用した新時代の授業は、受講希望者が殺到するほど大人気」

★大人気の訳は、スピーチを聞いてすぐに了解できました。生成AIを弾丸トークに合わせながら瞬時に実演しながら行っていくのです。歯に衣着せぬ未来を目の前で切り拓いている教師像がそこにあるわけです。話しながら校長ともフラットなコミュニケーションをとったり、とにかく形式レス・権威レスなトークが痛快でした。

★そして何よりスピーチのコンテンツですが、なるほど!と思わせる重要な内容だったのです。生成AIをよく、テスト作成の仕方だとか保護者への案内文の書き方だとか、生徒が作文などAIで書いてくるときの防止対策だとかいう話が、教育業界では多いのですが、そんな話ではなかったのです。

★教育業界の外では、プロンプトエンジニアリングの話が満載(これで5000万稼ぐ人がいるとNHKでも報道されています)です。コード無しのプログラミングを自在に使うことによって、ドラえもんではないですが、何十人もの分身の術が使えてしまうのです。しかもクリエイティブな仕事もOKです。

★ケインズの孫のための未来のあの予言はどうやらあたりだなと感じながらお聞きしていました。

★ICT業界の仕事の基本はデフォルトです。たとえば、100段階の難しい仕事をこなすとき、今までだったら、1から何年もかけて修行をしてこなしてきたわけですが、30段階まではデフォルトとして、ICTを活用すれば、31段階目からできたわけです。しかもそこから先は多くのステークホルダーと連携しながら。ところが、生成AIの出現で、99段階までは、デフォルトできてしまうのです。最後の1段階はオリジナリティと性能の差別化です。そこはまだ生成AIではできないので、その段階は、優れた同僚とステークホルダーと創造ミーティングをすればよいわけです。

★そんな時代を目の前で安藤先生が実演しているのです。あっという間に時間は過ぎ、先生方は個別に質問しに安藤先生のもとに集まっていました。安藤先生は、ICTのプロジェクトチームともかかわっているので、いつでも会えるのですが、間髪入れずにコミュニケーションをとりたいという工学院の先生。最先端の授業や進路指導、部活へのモチベーションの高さが了解できました。

★田中歩先生が、送ってくださるというので、正面玄関で待っていると、安藤先生と校長先生がお二人でいるのに遭遇しました。非常ににこやかで、フランクなトークのお二人。グローバル人材とは、こうでなくてはと思いつつ、大いに興味深かったのは、中野校長先生はヘルメットをかぶり、クロスバイクで颯爽と校門を立ち去り、安藤先生はマイカーで、風を切って帰られたその姿です。工学院大学が隣接しているので、中高というより大学という感じがしました。スタンフォード大学とかで教授や学生がそんないで立ちで、キャンパスから出ていく姿を見たのを想いだしました。

★熟慮するまでもなく、そもそもICTはグローバルだったのです。

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2023年9月23日 (土)

成立学園 見えない学力で非認知能力が豊かに育つ 見える学力で認知能力も万全

★成立学園の人気はここ数年右肩上がり。入学生も定員を少し上回っているので、自ずと生徒のレベルも上がってしまいます。しかし、認知能力だけではなく非認知能力でチャレンジできる入試も設定しています。そして、すべての入試で英語の資格スコアが加点されるといういわば見えない英語入試も行われています。実によく考えられた入試制度を構築しています。つまり、IQや認知能力だけで競争勝利主義的な入試に偏ることなく、非認知能力や生徒の才能でチャレンジできる多様性を受容する入試制度なのです。なぜそのような制度を構築できたのでしょうか?

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 (GLICC Weekly EDU 第144回「成立学園ー見えない学力の仕掛け」)

★その理由が、昨夜のGWE(GLICC Weekly EDU)で、宇田川先生が丁寧に詳しく語ってくれました。つまり、中学開設してやがて15年になろうとしています。中高全体では100年を迎えようとしています。この歴史の中で積み上げてきた「見えない学力」の壮大な教育環境デザインと細心の注意を先生方が気遣った生徒の脳内思考と感情を豊かにする内的学びのシステムの構築が、成果を出し続けているからです。

★進学実績が右肩上がりというのは、その成果の1つのエビデンスです、最高の成果は口だけの理論家ではなく、経験の中で気づいた課題を解決する社会貢献をする人間力とその成果をローカルからグローバルにつなげていく世界的アクションを起こせる地球市民力が育っているということだと、宇田川先生のお話から感じ入りました。

★見えない学力を生成する仕掛けは、代表的には3つの大きなプログラムがあります。それ以外に伝統の中で積み上げられてきた建学の精神という世界精神もあります。何より教師力、先輩後輩の同窓力、同学年の仲間力など豊かな人間関係が非認知能力を生み続けるという心理的安全性というものもあると思います。

★これらのはすべて具体的に実践されていますから、一体どういうものなのか、ぜひご視聴ください。

★そうそう、世界のエスタブリッシュな私立学校は、どこも見えない学力を生み出す自然体験やアドベンチャープログラムがあります。つまり、成立学園と同じということです。世界の教育を見渡して、日本の私立学校を観ると、また私立学校の選択の方法が変わると思います。世界のエスタブリッシュな私立学校は、年間の学費が500万から1000万かかります。

★それと同質あるいはそれ以上の私立学校に、その10分の1から5分の1の年間の学費で行けるとしたら、みなさんはどんな選択判断をするでしょう。秋を迎えるにあたり、私学の選択の視点を新しく加えてみてはいかがでしょうか。

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2023年9月22日 (金)

文教大学付属中学校オシの友人から

★最近、文教大学付属中学校オシの友人から、本間さんは最近Awe体験についてコメントしているから、文教大付属のサイトを見るとよいですよと薦められました。早速開くと、なるほど感動しました。まずすぐに飛び込んでくるアイキャッチ画像のメッセージがすてきです。

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(写真は同校サイトから)

★「ここへ来て、深呼吸が増えた気がする」「強さとは力じゃない、絆だと思う」「今日のランチは『おいしい』と『たのしい』のセットです」「読書というより、夢を追いかけている」などこのメッセージにマッチした画像が重ねあわされています。なかでも「誰もいない休日の教室って、どんな顔をしているのだろう」(上記社員)は、私のお気に入りです。

★どのメッセージからも、いろいろな美しい意味があふれています。創造性、好奇心、勇敢さ、熱意、愛情、チームワーク、希望などが思い浮かびます。これらの言葉は、同校の生徒の皆さんの強みでありメンタルモデルでしょう。

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’(写真は、同校サイトから)

★また、上記写真の木々の葉は、サイトを開いてみてください。そのページでそよ風に揺れているのです。シネマグラフの技術が使われている、つまりAI技術がさりげなく使われているわけです。テクノロジーによって、豊かな感性を覚醒してくれるそんな仕掛けが織り込まれているのでしょう。

★認知能力と非認知能力の両方に、同校の学びの場が開かれているのが、こういうところからも了解できます。先生方のすてきな心意気が気持ち良いですね。

★それから、先週理事長クラスの方々数人とミーティングをしていたのですが、ブレイクの時に、ある理事長が、孫が〇〇大学でがんばっているよと満面笑みで語ってくださったのです。お互い孫の自慢話をするオールドクラスのミーティングですが、そういえば、お孫さん文教大学付属高校でしたよねと尋ねると、そうそう、非常に丁寧な教育を先生方がまじめに実施してくれている学校でね、孫も楽しいし進学に向けてチャレンジする指導も丁寧に行ってくれると言っていたなあと。教育は教師の対話力を介しての思考型教育だよ、そう思うだろうと誇らしげに語ってくれたのです。

★たしかに、その理事長の学校もそこを大事にしています。

★こんなふうに、わずか2週間の間に、ポジティブな意味で話題になる学校は、すてきです。教育や学校は、ネガティブなニュースばかりか流される昨今、このような希望が持てる同校のエピソードには、どこかホッとするものがあります。なるほど、マインドフルネスな学校です。「人生のステージは、美しいに決まっている」サイトからこのメッセージを皆様に贈ります。

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工学院の魅力➂ 生徒は体験とリフレクションとメタローグの次元を往還する

★明日23日(土)から2日間、工学院は夢工祭。正面玄関にあるビッグモニター(一般には中高にはない代物ですね)で生徒が自ら躍動感あふれるPR動画を作成して流しています。さすがSTEAM教育が日常化・自分ごとになっている工学院。その夢工祭に向けて準備をしている超忙しい中、5人の生徒が入れ代わり立ち代わり対話撮影のためにMAKE ROOMにやってきていました。

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★その5人は、21世紀型教育研究センターが主催した3校合同プロジェクトのメンバーです。工学院と聖学院、和洋九段女子の生徒がお互いに学校フィールドワークをして、感じたことや発見したことについて対話し、共に居心地の良い学校を創るアイデアを出し合っています。そのプロジェクトのリフレクションの対話をしていました。

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★場所はやはりMAKE ROOMで、3F(フラット・フェアー・フリー)な雰囲気をアフォードしてくれる環境でした。話を聞いていて、グローバルなエッセイライティングの基本ができているなあと。それぞれが気になった各校の空間のファクトについて語りながら、それに対する素直な自分の感情を語っていきます。当たり前のように思うかもしれませんが、自分の気持ちをさらけ出すということは、自分の価値観やメンタルモデルを公開することですから、実は意外と臆病になるものです。それがまったくないのです。もちろん、カメラが5台くらい囲んでいたので、最初はそれに対して少し緊張はしていました。しかし、これは人間当然です。

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★おもしろかったのは、八王子の学校と都心の男子校と女子校の違いを意識していたアンコンシャスバイアスを互いに対話し、それぞれの良さを受け入れながら、自分たちの学校の良さに改めて気づいたという展開です。

★ほかの2校の生徒が、工学院の校舎の吹き抜けを見てAwe体験している姿に、この空間の機能の良さに改めて気づいたのだと。教師と先生の距離が居心地の良いのは、このような吹き抜けのオープンスペースが関係しているのではないかと。たしかに、反対側の廊下を歩いている先生に、「いまいいですか」と声をかけても通じてしまうわけです。グーグルクラスルームと同じような機能のソフトに慣れている生徒ですが、リアルに声を掛け合うことができるこの空間の大切さに気付いていたのです。

★中野校長が、うちの生徒はメタ認知ができるようになっていますからねと語っていたのを思い出しました。工学院のキャンパスもAwe体験できる大自然をシミュレーションした空間があったのです。

★ファクトーオピニオンーリフレクションーアウェアネスという一連の対話が、新たな問いを共に開いてく工学院の生徒。体験とメタ認知の循環。いったいそれはいかにして可能なのだろうか?実は5分間くらいのアンケートにフォームで回答してもらったときに、その秘密が顔をのぞかせたのです。ダイアローグとメタローグを往還できる教育環境デザインのなせる業だったのです。(つづく)

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2023年9月21日 (木)

工学院の魅力② 信頼は非認知能力が豊かに育成されるから

★工学院の魅力の大きなベースは、教師と教師、教師と生徒、生徒と生徒、教師と保護者、保護者と保護者、学校と卒業生などまずは学内に信頼関係が広がっていることです。そんなことはどこの学校でも当たり前ではないかと言われるかもしれません。たしかに、そうであってほしいのですが、そうでないことは昨今のニュースを見聞きすれば明らかです。学内全体に信頼関係が広がるのは、言うは易く行うは難しなのは、受験生・保護者もわかっているはずです。ですから、自分にとって信頼できる、そして自分を信頼してくれる教育環境を探しているのです。

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★中野校長先生と田中歩先生(高校教務主任)の対話を聞いていて、それを身に染みて感じました。そもそも校長と学校の先生方のフラットな対話を公開するということ自体、レアケースでしょう。どこの学校も校長が前面に出て話したり、インタビューを受ける動画はよく見ますが、インタビュアーなしで、自由にのびのびと1時間もなごやかにそれでいて未来を共に創るにはどうしたらよいか対話するのです。

★しかも、校長室とかではなく、Make RoomというSTEAMの拠点の一つ(学内に幾つかある)を選ぶのが校長らしい選択です。中野校長自信がICT関連教育の第一人者です。ICTというグローバルイノベーションは、フラットでフェアーでフリーという3Fに象徴されます。このことはご自身の発想そのものです。ですから、学校組織の人間関係もその3Fを自ずと体現しています。

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★この3Fは、田中歩先生ともシンクロします。同校のグローバルな教育の総合力を先生方と共に生徒と共に創っていますが、その真価/進化が止まりません。それはやはり互いに信頼しあい、自分たちのやりたいことを英語とイノベーションとで形にしているからです。

★しかも人間関係を豊かにするもその反対にしてしまうのも、言語の使い方次第です。それはICTの使い方次第と同じですね。人間関係を豊かにする使い方ができているのが工学院です。

★つまり、信頼関係をつくるのに、言語教育とICT教育が相乗効果を生み出し、工学院の魅力を増幅しています。

★それにしても中野校長先生と田中歩先生の対話は、互いにリスペクトし、気遣い、相手の立場に立って思考をめぐらす共感的コミュニケーションが展開していました。

★つまり、言語もICTも専門的な認知能力が必要ですが、大前提として相手の立場に立って具体的な状況や文脈に対するイマジネーションを膨らませて語り合えるかどうか、すなわち「非認知能力」を豊かにできる環境が必要です。

★その環境の条件が3Fであることは間違いないでしょう。

★この共感的なセンス。実はイギリスの文化にも根付いているコモンセンスとアダム・スミスが語っている公平な観察者を心の中に生み出すことなのですが、この感覚を持っていた人が、工学院の道を開いたジョサイア・コンドルだったのです。

★ジョサイア・コンドルは英国人で建築家であり、実はイマジネーション豊かな若きアーティストでした。すでに3Fはジョサイア・コンドルの生きざまに重なるのです。

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工学院の魅力① 先進的教育のベースに開国当時の素晴らしい精神性が今も流れている

★鹿鳴館時代、イギリスから若き建築家というかアーティストがやってきました。ジョサイア・コンドルがその人です。開国まもないころ明治政府が招聘しました。コンドルは、今の東大工学部のルーツの工部大学校で、日本初の建築士を育てた人です。その弟子たちが創設にかかわったのが工学院大学です。

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★その創設にかかわった辰野金吾の設計が今復元されている東京駅の丸の内駅舎です。赤レンガでなかなか壮観でありそれでいて風情もあり、観光客の人気のスポットです。そこから歩いて10分くらいのところにこれも復元されて赤レンガ造りの建物があります。三菱1号館で今は美術館として使われていますが、コンドルとその弟子との多分共作でしょう。

★この地は、当時の政府と岩崎家と渋沢家の巧妙なというか絶妙な競争的共在関係が繰り広げられた地で、本人は意識していたかどうかは知らないですが、コンドルも巻き込まれていました。

★いずれにしても、まさかと思われるかもしれないですが、このコンドルの精神が、工学院大学附属中高に美しく輝いているのです。もちろん、私の妄想かもしれません。

★しかし、昨日、中野校長と田中歩先生(高校教務主任)のお二人が対話するシーンに立ち会ったり、21世紀型教育研究センターの学校越境プロジェクトに参加した生徒のリフレクション対話に立ち会ったりして、そう感じたのです。その生徒の対話を見守っている宮井先生(数学科教諭)の話に耳を傾けてそう感じたのです。

★そして、奥津先生(中学校教頭・教務主任)と久しぶりにお会いすることができ対話をしてそう感じたのです。

★さらに、OBの仲野想太郎さんと少しでしたが対話をしてそう感じたのです。仲野さんは後輩の学びをサポートするファシリテーターとしてきていました。ふだんは、仲野さんがもう一人の同期生など仲間と起業している活動の中で、対話をしていますが、そこでもやはりそう感じているのです。(つづく)

 

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2023年9月20日 (水)

八雲学園 シン・グローバル活動

★八雲学園のサイトにこんな記事が掲載されています。「吹奏楽部、氷川神社例大祭にてミニステージ!」

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(写真は同校サイトから)

★サイトの記事内容をご紹介します。

「八雲学園の近くにある氷川神社で行われた例大祭にて、吹奏楽部が演奏を行いました。氷川神社の例大祭は、4年ぶりに御神輿渡御が復活し、活気溢れる雰囲気の中、吹奏楽部としては初めて、神楽殿での発表の場を頂きました。ステージに上がれる人数が限られた中、普段とは違った緊張感を味わいつつも、たくさんの方々から温かい手拍子、ご声援をいただき、充実した本番となりました。10月の文化祭でも演奏を披露しますので、ぜひお越しください。」

★各地で、アフターコロナとあって、お祭りが繰り広げられています。外国人も参加し始めています。その姿を見て、お祭りは国を超えて何か共通する胸を打つものがあるし、ある意味異次元へのアドベンチャーなのではないかと感じました。

★八雲の生徒の皆さんは、国内外の異次元の境界線を越えて挑戦します。ある意味この活動は越境するシン・グローバルな活動として再発見されてもよいのかもしれません。

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2023年9月19日 (火)

探究とか総合型選抜とか~「経験する自己」と「物語る自己」の接点を見つける

★探究とか総合型選抜とか、極めて重要な学びの活動であるにもかかわらず、疑問を持つ人も少なくないですね。この疑問を持っている人は、必ずしも知識詰込み型教育オシの方ばかりではない。一般選抜オシの方ばかりでもないのです。この疑問に応えられるかどうかはわからないのですが、ユヴァル・ノア・ハラリの「ホモ・デウス」に書かれている「経験する自己」と「物語る自己」という2つの自己の関係の着想はそのヒントになると思います。

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★もちろん、私の理解は、ハラリの意味するところとは違うかもしれません。あくまで、ハラリの着想を自分なりに転用して話をしたいと思います。物語る自己とは、端的に言うと事実から離れて物語という幻想を創り出す自己です。神話などは物語る自己によるものでしょう。また、ハラリは、ダニエル・カーネマン教授のピーク・エンドの法則も持ち出しています。

★たとえば、行列ができるラーメン屋。行列ができるからと高揚感をもって並ぶわけです。並ぶのは結構つらいですよね。しかし、終わり良ければ総て良しという言葉もあります。並んだすえについにおいしいラーメンにありつけた。その最後の喜びがいいわけです、並んだ時の経験は忘れ、ピークの高揚感とエンドの喜びが、そのラーメン屋の物語を生み出すのです。

★しかし、そもそもそんな行列に並ぶことよりも、自分でおいしいラーメンをつくる経験で十分幸せという人もいます。こちらを「経験する自己」と呼びましょう。ハラリがそう考えているかどうかは、ちょっと不明ですが、私は、「物語る自己」と対照的に「経験する自己」という位置づけにしました。

★「物語る自己」は、成長し続ける神話を生み出します。成長が崩れそうになるとカンフル剤を打ち続けます。要するに対症療法になりがちです。「経験する自己」は自分の経験という事実から物事を積み上げていきます。ですから、そのような対症療法にはならない可能性が大ですが、物語る力がないと組織を生み出すことができません。市場を創ることができません。

★根本的な問題を発見していながら、解決できないで時間は過ぎていきます。

 

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★やはり、社会課題は協働して根本問題を発見し、改善していかなければ、やがて社会は悪化し、衰退していくでしょう。「物語る自己」と「経験する自己」が協力し合うことが大切だということになりそうです。

★探究や総合型選抜がどこか疑わしいと懸念する人がいるのは、経験する自己のない物語る自己だけが活動したり論文を描いたり志望理由書を描いたりするケースを心配してのことでしょう。

★では、経験をすればよいかというと、物語る自己は、ピークエンドの法則が作動することが多いのです。この経験ああおもしろかったとなるわけですね。

★経験も、世界と自分が切実に結びつくAwe体験のようなものが必要だということでしょう。そのとき、経験する自己は、リフレクションし、いったい自分が経験したことは世界にとってどう転用できるのか抽象化することになります。つまり、物語る自己にシフトするわけです。

★このとき、探究や総合型選抜は、ようやく意味のあるものになるでしょう。

★しかし、これは探究や総合型選抜だけの話ではないのです。あらゆる政治、経済、制度などの枠組みも同じことが言えるのです。経験する自己と物語る自己は2つであって1つであるというコトですね。なんかオチが平和すぎますかね。

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2023年9月18日 (月)

学校づくり委員会の対話

★東京私学教育研究所のスタッフがサポートする研修委員会は、たくさんあります。各学校から有志の先生方が集い委員会を形成しています。どの委員会も最新の教育関連情報や最前線の私立学校の授業ケースにアンテナを張り巡らし、東京の私学の先生方が共に学ぶ有意義な機会を作っています。

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(イラストはBingが作成)

★その中で、学校づくり委員会という委員会があります。毎月一回土曜日に集い、対話を行っています。8月は、初任者研修の委員の先生方と協力しながら、その前後で対話をしています。

★興味深いのは、私立学校の教育の本質的な部分を、最新の情報から見たり、その本質的な部分から最新の情報を見通したりする対話が行われていることです。

★教育は、政治や経済、行政、国際情勢とは無縁ではありません。第一、学校現場の制度の中で最も幅を利かしている学習指導要領自体が、世界の教育のリサーチを経て、日本流儀になじませる形で作成されています。そのルーツを調べないで、学習指導要領の文言だけを正確に読み取ろうとして解釈や理解をしているだけでは、芯がわからないので、梯子の推論になりかねません。

★そこで、教育社会学、教育心理学、言語学、法哲学、文化人類学、リベラルアーツ、プログラミングなど多角的な角度から文献リサーチと現場での実験や多くの学校の先生方及び大学の先生方と対話をして自分たちの実践している教育を常に検証しているわけです。

★自分たちの教育への問いかけやジレンマは、どこかからきているのか、その正当性、信頼性、妥当性についていつもぐるぐるリフレクションしているのですが、そのリフレクションダイアローグが学際的に行われているのが学校づくり委員会の存在意義だと時々参加して感じ入ります。

★委員の先生方は、月に一度集まるために、互いにSNSなどで連絡し合いながら、密に対話をしています。その過程の中で毎月の個々人のミニテーマを見出して、小論文よろしくペーパーを書いて、それを対面で集まったときに、議論するわけです。

★1つのテーマを1年追究していくというわけではなく、それぞれのテーマがやがて一つのテーマを生み出すというプロセスをたどっているようです。

★それぞれの委員の先生方は、それぞれの現場での体験をベースに抽象化して世界との接点を見出す見識を持っていて、学校づくりとは、流行を取り入れることではなく、本質を時代の精神とどのように折り合いをつけて再現再生するのかという方向性のような気がします。つまり、人間の根本的で日常の中で忘却されてしまいがちな大切なものが新しい時代のツールや考え方と出会って、再び覚醒するかのような対話システムが成り立っています。

★本質はつかもうとしてもつかめません。常に何かのモノやコトの背景にあるシークレットライフのようなものです。

★この学校づくり委員会の先生方の対話に立ち会う度に、まるでランディ・パウシュ教授のような頭の回転、視野の広さ、ユーモアに満ちたあり方、ダイレクトな考え方にインダイレクトな考え方を担保しておく余白を持つ余裕を想い浮かべます。しかし、ランディ・パウシュ教授を支えているのは、TEDで公開して皆初めて気づくわけですが、壮絶なものです。この劇的な生き様をかくもウィットに富んだ生き方として表現する教授のあり方にいつも畏敬の念を抱きます。

★私立学校の先生方は、概ねこのような生き様をしているのに気づき、まさにこれこそAwe体験なのだと思う今日この頃です。

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2023年9月16日 (土)

湘南白百合 圧倒的教育の密度

★昨日、GLICC Weekly EDU 第143回「湘南白百合のシン・グローバル教育」において水尾教頭先生が出演されました。5月に出演されたとき、今年度の同校の新たな教育活動及び新しい高大連携の予告がある意味語られたのですが、それが予告を上回る勢いで進化していたのです。多様なプログラムが湘南白百合のキャンパスの中で高密度の教育の質を生み出しています。

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★そのキャンパスも、受験生が訪れたとき、中庭から眺望する光景に思わずウワーアッという感嘆の声がでるほどなのです。在校生は、毎日壮大な自然の中でAwe体験をしています。この体験の重要性が、昨今脳科学で注目されています。

★その大切なキャンパス空間の中で、濃密な多様な教育プログラムが行われ、しかもそのプログラムの特徴は、私が気づいただけでも次のような点が見出されます。

1)各プログラムが相互に影響し合うようにデザインされている

2)在校生自身が探究の授業などデザインする真正な主体的教育活動が生成されている

3)中高大連携が、探究活動を研究活動にシフトするレバレッジポイントになっている

4)セルフレスに社会課題解決に取り組む「愛」に溢れている

5)多くの男子校、共学校と越境的な協働的学びをデザインしている

6)新しい論理的思考が展開している(トウールミンモデル)

7)医学部や海外大学の進路は、世界と自分の切実な接点を見出してそれをエネルギーとして切り拓いている

8)卒業生チュータが大学の学びの講座を多数開設している。

9)教師ー生徒、生徒—生徒、先輩―後輩、在校生ーOG、中高ー大学・企業、自然ー超自然など多元的で越境的な結びつき=信頼関係を築き、そのうえに中高の学びも越境する学問的な領域で探究活動をしている

ご視聴されたみなさんは、もっと湘南白百合の教育の特徴を見出せるでしょう。圧倒的な教育だからこそ、これからの教育について受験生・保護者、そして教育関係者も学ぶことができると感じ入りました。水尾先生、ありがとうございました。

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2023年9月15日 (金)

本日湘南白百合の水尾教頭と対話 湘南白百合のシン・グローバル教育について

★本日いつもの金曜日21時にGLICC代表鈴木裕之さん主宰のGLICC Weekly EDUがあります。出演者は湘南白百合の水尾教頭です。テーマは「湘南白百合のシン・グローバル教育」です。同校からは、ハーバード大学をはじめ国内外の難しいと言われている大学、特に医学部にたくさん進学しているのはご承知の通りです。しかし、それは単純に受験知を養っているわけではないのです。

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★ではどんな教育環境デザインが描かれ実装されているのでしょう。それが「シン・グローバル教育」ということなのでしょう。グローバル教育と、インターナショナルのような高度な言語教育がなされているとか、IBのTOKのような探究活動をやっているとか、思われがちです。湘南白百合は、当然それらのような教育をデザインしていますが、もっと本質的なベースの上にone of themとしてそれらを実施しているのです。

★では、そのベースは何か?そのベースの上にどんな多様なプログラムが展開しているのか?

★ぜひ知りたいですよね!ご視聴いただければ、Awe体験もできます。島皮質が豊かになります!

 

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2023年9月13日 (水)

聖学院 豊富なAwe体験学習と内省的Awe空間

★Awe体験とは、結局実るほど頭を垂れる稲穂かなというメンタリティ。大自然や天空の星々を見て、自分の存在の小ささに畏敬の念を持てる存在を感じるわけです。すると、自分は何ができるのか素直に深い内省にはいっていくという体験ですね。多くの学校でこのAwe体験ができるプロジェクトがデザインされているし、キャンパスそのものがAwe空間であるということもあります。

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★聖学院は北区中里の丘の上にあります。それゆえ、正門から坂を上り、さらに階段を登っていくキャンパス空間になっています。毎朝その階段を登り切った右手に講堂があり、そこで生徒全員が朝の礼拝に参加します。実に清々しい聖なる空間です。内省的Awe体験が毎日なされているのです。

★さらに中2では、蝶ケ岳登頂、中3では小糸川農村体験に全員がいきます。修学旅行や多様な海外研修、そして究極のタイ研修があります。外界的Awe体験とOne Earthの中で内省的Awe体験ができるのです。

★それゆえ、聖学院の生徒の島皮質は豊かになり、クリエイティビティとセルフレスなボランティアやソーシャルアントレプレナーシップも発揮します。まさにOnly One for Othersのメンタルモデルを生徒は共有しているのです。

★卒業生が社会貢献活動で活躍しているのは必然なのでしょう。

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グローバルアイランド教育 すでに私立学校は行っている

★私立学校は、グローバルと名のつく多くの教育を行っています。“Think globally, Act locally.”という精神はその通底にあるコアコンテキストですね。この精神は、実はAwe体験がベースになっています。One Earthという本来境界線のない一つの地球という大自然を感じてAwe体験をし、それなのに、政治的な分断線、経済的な分断線、身体的な分断線、メンタルな分断線、人間関係の分断線、気候変動的な分断線など多くの人間がつくった境界線が多重分断を生み出しているなんてとクリティカルシンキングを発動し、解決へと活動していくのです。

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(イラストはBongが作成)

★そして、このAwe体験は、二種類が結合していることが了解できます。One Earthという大自然、もしかしたら、その背景にある宇宙まで感じ取り、自分の小さな存在に気づき圧倒されます。しかし、そのあとに深く内省し、この小さな自分が何ができるかクリエイティブに発想するわけです。つまり、外界的Awe体験と内省的Awe体験。その結合が“Think globally, Act locally.”というメンタルモデルです。

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★この大自然と内省を結びつけるものは、しかし何でしょう。それが脳科学的には、人間の島皮質なのです。この島皮質がOne Earthと結びつき、Awe体験が起こり、内省的精神が生まれてくるわけです。

★ですから、このグローバルな島皮質をトレーニングする教育が必要です。私立学校は、上記の図のように、いろいろなグローバル教育を行っています。当然<Think globally, Act locally>のメンタルモデルはプロジェクト型の活動や探究活動になります。英語はグローバルシチズンと意思疎通をはかるには最低必要でしょう。マクルーハン的発想からはDXネットワークは当然必要です。

★そして、私立学校がこれらの様々なグローバル教育を行っているのをより効果的に、多くの生徒が自分事として活動していくには、グローバルアイランド教育を暗黙知の状況から形式知化し、多くの学校で共有することが大切ですね。

★すでにいろいろなプログラムの事例ケースの共有セミナーは頻繁に行われています。この事例ケースがどのようにグローバルアイランド教育になっているのかメタローグできるセミナーがあるとよいなあと。

★ここでいうアイランドは、“insula”で島皮質のことを言っています。島資質は、セルフレスで多くの問題をケアしようとする非認知能力が発動すると同時に、他の多重知能を生み出す大脳皮質と連合する位置にあります。

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2023年9月12日 (火)

グローバルアイランドの時代 AI地球時代を豊かに生きる

★岩崎一郎先生の本に出合って、大脳皮質に関する論文なども読んでみました。やはり島皮質は重要だなと。大脳皮質はいろいろな皮質に分類されていますが、知性と感性と倫理性などにかかわる位置にあるというか接しているのが島皮質です。ですから、セルフレスの倫理観というか謙虚な状態の中から創造性を生み出す皮質のようだということがわかりました。

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★そして岩崎先生は、島皮質を豊かにするトレーニングをいろいろ考えていますが、多くは外界からの刺激の受け方です。その中で京セラのフィロソフィーや論語を大事にしている側面もあるというコトを知りました。

★なんと内面から島皮質を磨き上げるのですね。

★森の中で大自然のシャワーを浴びながら、瞑想したり哲学したりというわけですね。

★システム思考とSELとブレークスルーなどを掛け合わせて、誰でもが内面から島皮質を豊かにする創造的思考力を養うコンセプトレンズの地図を描いてみました。この地図を自らの駆動力にするための問いのトレーニングを伊藤竜さんと福島の研修でやってきたのですが、その時にはこのような図にはまだなっていませんでした。思考コードと変形の視点をむずびつけることはまだしていなかったのです。結合することで、SELのチェンジメーキングの最終段階の規格外の領域が浮かび上がってきたのです。そう、この図を描きながら思いついたのです。

★実は、今日のランチタイムの時に伊東竜さんとチャットでほかの件でアイデアを出し合っていたら、伊東さんのレンズがこんな感じだったので、絵がイメージできたということもあります。

★新しいというより、これが今まで生徒と対話しながら、彼らが成長の翼を広げていく姿に立ち会っていたのだと。そのときの対話の仕掛けを可視化するとこんな感じというわけです。

★そうそう、グローバルアイランドのアイランドは、insulaを置き換えました。insulaといってもピンとこないので。insulaとは島皮質のことを意味します。島皮質がOne Earthと結びつくことによって、規格外のAwe体験をする。ゆえに、世界で通じるクリエイティビティを生み出せる子供たちでいっぱいになるというわけです。言語野には生成AIはめっぽう強いでしょうが、島皮質の豊かさには、まだまだ追いつけないでしょう。

★もし追いつけたなら、生成AIは人造人間にでもなっていることでしょうね。

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Awe体験ができるキャンパスが重要な訳 成城学園のキャンパス

東洋経済ONLINE2020/11/05 9:00の記事「大自然に触れた人の脳が驚くほど活性化する訳 ちっぽけな自分を感じ利他的に動きたくなる」は脳科学者岩崎 一郎先生(医学博士)が書いています。岩崎先生は、大草原や大海原、あるいは星空など、自然を前にして圧倒される経験のことをAwe(オウ)体験として紹介し、このAwe体験が人間のセルフレスや創造性を豊かにすると語っています。そして、大脳皮質のうち特に島皮質が関係していると。このAwe体験をもちろん知っている私はすぐにfacebookに投稿しました。すると同じくAwe体験を大事にしている成城学園の広報部長青柳先生は、この記事に共感を示され、コメントを書き込んでくださいました。

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(写真は成城学園のサイトから)

★青柳先生が共感されたのは、もちろんご自身生徒と共に山々を登頂する教育実践家でもあるからでしょうが、それがオール成城学園の教育の通奏低音として響き続けているからだとふと思ったのです。

★そして、サイトを検索して調べてみようと、同学園サイトを開いてみました。するとすぐに上記の写真が目に飛び込んできました。なるほど!と感動。というのも、このエントランスの階段は、大自然を呼び覚ます空間だと思ったからです。

★おそらく、階段を登らなくても、校舎に入れるようになっているはずですが、あえてこの階段を設計したわけです。このような階段や丘の上の私立学校は、登下校の時に大自然の息吹を覚醒するようにアフォーダンスされているのだと気づいたのです。

★イサム・ノグチの二つの庭園を見ればそれはわかります。1つはたとえば、パリのユネスコの日本庭園、もう一つは札幌のモエレ沼の庭園。両方ともイサム・ノグチの設計です。前者はいわゆる日本庭園風のモチーフですが、後者は完全にイサム・ノグチの彫刻で編成されています。前者は自然とイサム・ノグチのアイデアの融合ですが、後者はイサム・ノグチのアイデアが前面にでています。ピラミッドのような彫刻というか小山、プレイランドというなだらかなスロープを上り下りできる平たい広大な台形型の平原など。

★イサム・ノグチは、これらの作品は人々が歩いたり触れたりしたとき、はじめて彫刻は完成すると考えていました。多くの人のクリエイティビティが響き合うからでしょう。つまり、多くの人の島皮質が活性化する空間ということです。

★Awe体験の特徴として、岩崎先生は、アメリカ・アリゾナ州立大学のシオタ博士の研究を引用して、次のようなことを挙げています。

①マインドフルネスを行ったように、何ごともありのままに受け取ることができるようになる

②心と身体をリラックスさせる

③好奇心を引き出す

④人と心のつながりを作る

⑤利他の心を引き出す

⑥身体を健康にする

⑦創造性を引き出す

⑧希望に満ちた状態になる

⑨幸福感が高まる

⑩嫉妬心など、ネガティブな感情が少なくなる

★良いことばかりですね。もちろん、過ぎたるは及ばざるがごとしですが、基本セルフレスや創造性を生み出す島皮質に良い影響を与えるというのがAwe体験であるという脳科学の成果は、実感として合うような気がします。

★こうして考えると、リアルな自然体験の重要性が明快に科学的に裏づけられるし、Awe体験を覚醒するキャンパスの設計デザインもまた大切であるということになりそうです。

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2023年9月11日 (月)

私立中高の広報室がIR室と同じ機能を持っている学校はサバイブできる

★2024年は大学全入時代だと警鐘が鳴らされて久しい。その危機を乗り越えるため、日本の大学は21世紀にはいってIR(Institutional Research)の重要性を論じてきました。今では、40%がIR室を設置しているというのが大学の現状のようです。IRというのは、大学の独自の創意工夫ですが、米国では学問として成立しています。その成果を活用しているのが日本ですね。

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★実は1999年にNTS教育研究所を設立した時に、当時の同僚と一発目に行ったセミナーが「エンロールメントセミナー」です。2日に分けて行う程多くの学校の先生方が集まってくれました。ほとんどが当時の広報部長とか室長でしたが、今思えば、このときのエンロールメントセミナーはたんなる広報戦略セミナーではなかったですね。その証拠に、そのとき集まった広報リーダーは、その後校長、教頭にどんどん進化していったのです。

★「エンロールメントストラテジ」というのは当時米国で流行っていた広報戦略の学問だったので、今でいうTTP(徹底的にパクる)セミナーだったのかもしれません。しかし、それを東京の私学の先生方と学び、飲みながら日本流儀に落とし込んでいったのを想いだします。

★そのエンロールメントマネジメントの一環として、おそらく当時の他社のシンクタンクと違ったのは、「授業」の中身や質を広報しようということを中心にしたことでした。新しい授業、今でいうPBLを創っていこうと勉強会を先生方と結成しました。

★つまり、広報戦略は、入学の宣伝や入試問題の領域だけの話ではなく、入試は学校の顔として位置付け、入学後生徒がどんな授業を受け、どのように成長していくのか、今でいう3ポリシーのストーリーを実装する戦略を練ったわけです。

★一方生徒獲得戦略は、世界の教育情報を収集し、保護者の志向性をマイニングするマーケティングも行っていきました。今思えば、最近はやりの大学のIR室と同じような位置づけの広報戦略室がいろいろな学校に生まれた時期でした。

★ただ、エンロールメントなんて言葉を使う本間はカタカナ語が多いと揶揄もされました。しかし、今では当たり前の世界になりました。上記の4ポイントをトータルした戦略を練ることが、私立中高の広報室の役割というところが多いですね。

★ですから、広報部長や広報室長が教頭レベルの経営的視野をもった人的資本が兼ねているという場合が多いですね。

★私が、私立学校の教師は全員が経営者だよと言っているのは、上記の4ポイントの知見を磨くという意味です。特に人的資本を豊かにするのは、教師のためのみならず、それは生徒にとっても同様なのです。

★そして、その4ポイント領域に関しては、統括的なデータが創られることを望みました。校長時代普段私も授業を見て回るし、保護者と対話もします。それは、先生方が出すデータとマッチングすることによって、私なりの勘を磨くためでもありました。

★この時期から生徒募集の手ごたえが、時系列比でデータ化されていきます。進路の行方も現実的になります。さらに文化祭、修学旅行、探究活動等の教育活動が活発になります。生徒募集の時に生徒がプレゼンするときに、そこに投影される活動記録は質的データです。

★量的データと質的データとリアルな実感の勘をすり合わせて、理事会と掛け合う資料作りなどをしていきながら、学校を先生方と運営する時期です。データや資料は自分でも作りますが、それぞれ先生方が深く広く創りますから、ここはどういう状況か教えてよと聞きまくります。

★そして、各先生方が作成したデータや資料について、レクチャーを受ける対話を日々していきます。それを理事会に報告する資料に挿入していきます。そして、そのデータによるアイデアが通ると、人的資本が豊かになっていくでしょう。

★学校にとって理事会は、コンクール審査会のように使っていくと、理事会も教育に興味を持ってくるわけです。

★IR的な情報収集と分析とビジョン操作は、私立中高でも行われているわけですね。データ作りはICTシステムがとても重要なのは言うまでもありません。一元管理ができるほどのシステム化はまだまだ私立中高では遠いですが、DXの進化によってそれはやがて果たされるでしょう。

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2023年9月10日 (日)

グローバル教育とは、One Earthの循環態の思考のコンセプトレンズを共有するコトかも

★今この地球は、境界線を引かれ、さらに目に見えない分断線が身体と心と人間関係と政治や経済に引かれ、無慈悲な気候変動や貧困格差、人権無視など様々な困難や争いが起きています。これらをクリアするには、全人類、全球市民がよってたかって知恵を出し行動しなくてはという時代です。そのためにAIも大いに活用するわけです。

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★私たちの智慧は、このOne Earthが循環態としての機能を果たすような方程式を見つけることです。この方程式をOne Earth思考のコンセプトレンズとでも呼びましょうか?

★この方程式の発見こそグローバル教育のミッションなのかもしれません。このミッション自体は私立学校の先生方には、個々の学校の建学の精神の背景に暗黙知として掲げられています。

★なぜ越境なのか?なぜ多様性なのか?なぜ合理的配慮なのか?それらの背景には、One Earth思考のコンセプトレンズがひそかにキラリと光っています。One Earth対話関係がその光を灯し続けるでしょう。

★私たちは、専門家ばかりではなく、この方程式を見つけるOne Earth市民サイエンティストであろうとうする時代ではないでしょうか。文理融合とは大学入試だけのことではないのです。

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対話関係を生み出す分解・統合・変形ワークショップ 伊東竜氏とコラボして➌

★不思議なのですが、伊東氏とコラボしてきたWSは3年前パウロの校長に就任した時の夏も2年目に入った時の夏もだいたい5時間でワンセットのWSだったのです。父母の会との対話WSも年間5回ですから5時間ですね。ただし、1回90分ではありましたが。福島でも5時間半ですから、WSを5回ぎりぎり回せました。大学で1セメスターの講義は15時間でしたが、たしかに3テーマはできたましたから、私たちのWSは5時間くらいであるゴール設定になんとかいけるのかもしれません。

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★自然と社会と精神の循環を生み出す思考のコンセプトレンスを掘り当てるというのが、私たちのWSのデザインの仕掛けです。いたってシンプルで、同じ構造のWSを少しずつ次元をあげて5回回します。すると、これらのWSの構造を循環させる思考の種であるコンセプトレンズを参加者一人一人が見出していくということになります。

★思考のコンセプトレンズは、一人ひとり違ってよいので、思考のコンセプトレンズとは何かから始めません。まずやってみようというWSⅠから5回、回転したところで最終ピアリフレクションをしてそれぞれに行き着くわけです。

★もちろん、私たちの仮説はプレゼンします。でも同じでなくてよいのです。One Earthという循環態に適用できるかどうかがその信頼性、正当性、妥当性を実感することになるからです。ですから、このようなWSを幾つも体験したり、自分でデザインしたりしながら、WS自体もコンセプトレンズ自体もアップデートしていくでよいと私たちは考えています。

★今回は使いませんでしたが、WSの過程で、生成AIも使うことができます。今回実は講義で使うデータ整理にはAIを使ったのですが、WSではそうしなかったのです。はじめは使おうと思ったのですが、私たちが設定したWSの問いに対し、生成AIの反応がボロボロだったので、生成AIにはできないWSをやれるのだなあと伊東氏とかえって勇気をもらえるとなったわけです。

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★ファシリテーター伊東氏とコラボしたWSについては、いずれ具体的にご紹介しようと思います。また、田中歩先生、柴谷先生、片瀬先生などとも協働してさらにアップデートしたものを紹介できると思います。

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対話関係を生み出す分解・統合・変形ワークショップ 伊東竜氏とコラボして➋

★「<教科と探究>のつなぎ方・<学習指導と生徒指導>のつなぎ方」というテーマに絞ったのは、伊東氏が日本私学教育研究所で全国の私学の先生方と話したりアンケートを整理する中で、同様に私も東京私学教育研究所で行う研修で東京の私学の先生方と対話する中で、ここは重要だと互いに思ったからです。このつなぐ媒介項は、実はマインドフルネスや心理的安全をつくるワークショップやSELのセミナーなどで行われているのですが、その媒介項それ自体は、あまり注目されてこなかったことです。主体的だとか思考力だとか判断力だとか表現力が大事なのはみなわかっています。

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GLICC Weekly EDU 第93回「聖パウロ学園:偏差値では測れない複眼思考型教育~すべての生徒が才能者」 は、伊東氏がパウロ時代に出演した動画ですが、そこですでに思考のコンセプトレンズの種の種の話に触れています。参考になると思います。そして、今のパウロ自体は、小島校長のもとでさらに次の次元に行っています。)

★しかし、どうやったら主体的になれるのか、どうやったら思考力が身につくのか、判断力は?表現力は?ということなのです。もちろん、いろいろなワーックショップを行ったり探究をデザインをすると、主体的になる生徒もいるし、思考力も身につける生徒もいるわけです。しかし、全員が自分の才能に気づいてとはならないのです。そこは、その主体的で思考力ある生徒のその暗黙知を明らかにし、共有するという作業が必要です。

★伊東氏と挑戦したのは、そこでした。いわゆる偏差値50行くか行かない生徒がどうやったら上智をはじめとするカトリック学校に合格する思考力・判断力・表現力を自ら掘り起こせるようになるのか。自ら掘り起こそうとする生徒は主体的になるのは当時生徒たちの様子から私たちは理解していました。上記の動画で伊東氏が話している時は1年前で、その成果がまだ未定でした。しかし、この春成果がでたとき、やはりそうだったんだということが了解できたわけです。

★そこから、工学院の田中歩先生と相談して、互いの学校の教育デザインを統合して新しい教育デザインを創ろうとなったわけですね。それを福島でも共有してきたわけです。

★つなぐということは対話関係をつくることです。信頼とか絆とか。それができたとき、そこには共感的コミュニケーションが広がっています。これは田中歩先生が先生方と協働して創り出すのがうまいわけです。

★パウロは、生徒が自己組織化して考えたり動いたりする態勢を生み出すのが得意です。今教頭の大久保先生はこのデザインは天才的です。

★伊東氏はその状況を数学的思考で機能を見出すのがうまいですね。私は、そういう状況すべてに起こっているシステムをメタローグに転換しようとする姿勢があります。姿勢と言ったのは、結果はどうわからないからですが(汗)。

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対話関係を生み出す分解・統合・変形ワークショップ 伊東竜氏とコラボして❶

★今年の8月23日、福島県私学教育研修会の教育課程部会で、「新学習指導要領とこれからの授業デザイン」という主題で、5時間半の講義とワークショップのスクランブル研修を行いました。今回は聖パウロ学園時代ともにこのワークショップを生徒や保護者対象に行った伊東竜氏と当時の経験をアップデートして実施しました。いただいた主題のうち私たちが行ったのは「<教科と探究のつなぎ方>・<学習指導と生徒指導>のつなぎ方~コンセプトレンズを創る>というものに絞って、このコンセプトレンズを発見するワークショップをしつこく行いました。同じテーマですが、上昇気流が生まれるように伊東氏がファシリテートしました。

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★伊東氏は、今は一般財団法人日本私学教育研究所のスタッフで、日本全体の私学の研修のコンサルテーションを行っています。私は東京私学教育研究所のメンバーですから、事務所は歩いて5分のところです。教育研究所の所長がどちらも平方邦行先生ですから、当然コラボする機会も多いのです。パウロ時代のように毎日のように企画戦略会議やブレスト会議、何より創造的対話を頻繁に行うことはできませんが、パワーランチなどで創造的対話はよく行っています。

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(聖パウロ学園勤務当時、父母と校長との対話ワークショップのファシリテーターを行っていた伊東竜氏)

★今回も情報交換をしながらテキストを創っていきました。また、このワークショップの開発コラボは工学院の田中歩先生(教務主任/英語)と柴谷先生(保健体育)、片瀬先生(家庭科)と始めていて、その実践をしたわけです。ですからこれからもっとブラッシュアップしていきます。

★伊東氏は数学の教師でもあります。受験数学だけではなく、文理融合の時に必要な数学的思考のレンズを持っています。歩先生は言語の思考のレンズをもちろん持っていてますが、俯瞰視点がものすごいですね。柴谷先生は、身体とメンタルと社会関係の循環を生み出す思考レンズを持っています。片瀬先生は、生活の中に世界の諸問題を実感できる社会構成主義的思考のレンズを持っています。

★私は、法思想・哲学がメジャーで、教員ではないので、教科とは別のアプローチで思考のレンスを探究してきました。いずれにしても、みな21世紀型教育機構でSGT(スーパーグローバルティーチャー)と言われているこれからの教師像のロールモデルの先生方です。そのSGTと新しい学びの生まれる泉を掘り当てようとしているわけです。

★ですから、今回も福島の先生方21人とその泉である分解と統合と変形という思考のコンセプトレンズを掘り当てるワークショップをしたわけです。そのコンセプトレンズを掘り当てるためのワーックショップは、同時に探究的な授業のデザインの体験でもあり、学びの道具やワークシートなどは、それぞれの学校に持ち帰ることができるとよいなあという意味も込めてご紹介もしました。(つづく)

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これからの教師像のロールモデル 21世紀型教育機構のSGT 

★先週の金曜日夜、『GLICC Weekly EDU 第142回「和洋九段女子ー PBLを支えるSGTの活動」』がありました。昨年度21世紀型教育機構におけるSGT(スーパー・グローバル・ティーチャー)アワード優秀賞を受賞した小仲井浩先生(和洋九段女子 理科)が出演されました。私はどうしてもその時間帯参加できなかったため、動画を視聴しました。そして確信しました。SGT小仲井先生は、これからの教師像のロールモデルであると。

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★初代SGTアワード優勝者染谷昌亮先生(文化学園大学杉並 理科)もそうです。つまり、21世紀型教育機構の教育研究センターが実施しているプロジェクトはSGTをある意味生成するプロジェクト環境を企画運営しているといえます。

★今回は小仲井先生が、自ら行っているPBL授業を幾つか紹介され、これからの学びのビジョンを具体的にプレゼンしています。授業の動画も活用しながら実にわかりやすいそして実践的なアウトプットです。そして、このことがこれからの教師が実装する授業イノベーションであることが示唆されています。

★これからの教師像のSGTの特徴は、ご視聴いただくと色々気づきがあると思います。私が気づいたというか感じたのは、小仲井先生は、

1)自己変容を恐れず楽しみに転換している

2)仮説を生徒が自ら立てられるシミュレーションモデルをまず生徒ができる学びのデザインをしている

3)シミュレーションをする際に身近な素材で実験道具を組み立てるブリコラージュ思考を実装している

4)生徒の仮説検証をデータを集めることによって行うサイエンスコミュケーションをデザインしている

5)このようなシミュレーション型コミュニケーションによって生徒自身が思考コードのC3の領域で発想を生み出せる学びのシステムをつくっている

6)この発想の視点は、動画を通して見え隠れしているのがオズボーンの9つのポイントが暗黙知的に使われるようにデザインしている

7)具体的な学びの過程が最終的にはサイエンスのものの見方感じ方であるコンセプトレンズに凝結する流れになっている

8)学校を越えてSGTや生徒の連携を企画する越境対話関係コンサルテーションができる 

9)アンケートで生徒の未来をデータ的に検証しながら未来の価値を創造するメンタルモデルを持っている

10)システム思考とSELの融合を体現している

★もちろん、小仲井先生は理科の専門知識や技量は十二分持っているし自己マスタリーという研鑽も日々行っています。それはご視聴していただければ、すぐにわかります。

★小仲井先生や染谷先生のようなSGTが21世紀型教育研究センターには集結しています。この教師の力は、経済的側面から見れば無形資産をどんどん豊かにしていく人的資本であるとみなすこともできます。

★日本の未来は予測不能で希望と危機が表裏一体になっていますが、小仲井先生のような人的資本が生徒の人的資本にも影響を及ぼしていきますから、希望はこのようなSGTに確かにあると元気づけられました。

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2023年9月 8日 (金)

リベラルアーツ 理数教育 探究 AP 高大連携

★昨日は一般財団法人東京私立中学高等学校の常任理事会と理事会でした。毎月2回あるのですが、8月はありませんでした。久しぶりということもありますが、各私学は、2024年度を見据えて秋の陣に進みますから、会の合間の立ち話で、臨場感ある次の計画の話題が盛り上がります。いつも研修ですれ違っているある校長と瞬間的でしたが対話ができました。AP化する高大連携から始まり、リベラルアーツや探究の学際的統合の話やそうなることによって総合型選抜というよりAP的な明確なプログラムができるとか、いわゆる受験のためではない理数教育の流れとか、ビジョンレベルではなく来年から進めていくという実装段階の話になったり、今度そのリアルなシーンを見学させてくださいとか盛り上がりました。

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★この手の話は、いつもは結構ひかれてしまうのだけれど、勇気をだしてリクエストしてみると、意気投合となったので、台風のこともあったのですが、夢の中でモヤモヤしていました。

★そんな状態で今朝目覚めてスマホをチェックすると、東洋経済ONLINE(2023年9月8日)の記事「現代の高校生がわからなくなった数学の基本問題 「p⇒(ならば)q」の否定文から考える数学教育」が目に入りました。

★研究所の同僚で数学委員会をサポートしているメンバーにすぐにシェア。すぐに同僚もこの記事を書いた芳沢 光雄先生(数学・数学教育者。東京理科大学理学部教授、桜美林大学リベラルアーツ学群教授などを歴任し現在、桜美林大学名誉教授)のほかの著作を読んでみたいとなりました。

★芹沢先生は、桜美林で、リベラルアーツ学群に所属していたので、昨日のリベラルアーツと理数教育の話と結びつきました。しかも、同記事でこう語っています。

「数学についての理解力は個人個人で大きな開きがあるので、早く進む生徒もいればゆっくり進む生徒もいてよいはずだ。横一線の教育を見直し、文系・理系を問わず、誰もが個人個人に見合った数学の教育を受けさせてあげたいと考える。それが、技術立国日本の再生につながることであろう。」

★ますます興味津々。次のような書籍も書かれていて、暗記算数や暗記数学をクリティカルシンキングされているようです。

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★今のところ生成AIはリベラルアーツの幾何などについてはまだまだ対応できないといわれています。海城や武蔵、成城学園のように、幾何を幾何として学ぶのではなく、それ以上の発想を学ぶのがリベラルアーツ的な発想でしょうから、生成AIにとっては難問かもしれませんね。

★ようやく学校教育法51条を実現する世の中になってきたようです。

 

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「教師のためのChatGPT入門」福原将之さんの新著

福原将之さんが、新著「教師のためのChatGPT入門(単行本)」を出版しました。 2023年9月15日予約販売が設定されています。福原さんは宇宙物理学が専門で、科学カフェを運営し、多くの子どもたちや先生方に、宇宙についてサイエンスコミュニケーターよろしく活躍しています。一方で、中学受験業界や学校においてICT関連のコンサルティングでも活躍しています。ご自身が私立学校出身で、東大の大学院で研究もしていましたから、中学受験生のナビゲーターも行っています。子どもたちや学校の先生方とコミュニティをつくり、コミュニケーションをとっています。そうそう元祖起業家でもあります。今では中高の教育においてもアントレプレナーシップを行うように文科省も旗を振っているぐらいですが、ずいぶん早い時期から起業しています。先見の明ありです。そんな福原さんだからこそ、未来のAI地球時代からバックキャストして、生成AIの入門書の松明を教師に手渡そうとしたのだと思います。

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 教師のためのChatGPT入門 単行本 – 2023/9/15

★もうずいぶん前に、福原さんとは出会い、21世紀型教育機構を創っている最中に協働してセミナーや研修を行ったものです。みなさんにとっては、福原さんのような先進的で聡明な人物ともはや老兵の僕がコラボしていたなんて信じられないかもしれません。でも確かに昔々そういうことがあったのですよ(笑)。

★ずいぶん長い間、いっしょに仕事をしていないし、頑固なアリストテレスーコミュニタリアンである私とは価値観が違うにもかかわらず、men for othersというか義理難いというか、店頭販売前に、送っていただきました。

★同書の5分の4は、入門書ですから、ChatGPTの使い方です。しかし、そこは先生方と日ごろコミュニケーションをしていますから、ビジネス的なアプローチではなく、あくまでも教師が現場でどう使えば効率的で合理的かということを丁寧に具体的にまとめています。一般的なハウウーではなく、それを現場におとしこめるのは福原さんならではですね。

★道具というのは、ユーザビリティーであることは大切です。福原さんのまとめ方は、教師にとってとてもわかりやすいユーザビリティが創意工夫されています。

★朝永博士と共にノーベル物理学賞を受賞したファインマンは、今でいうチョロQを使ってサイエンスの話をしたことがあります。チョロQをチョロQとして説明するのみならず、チョロQを通して自然界の生態系の循環と太陽エネルギーの関係を小学生ににもわかるように語ったのです。

★福原さんも科学者ですから、同じ資質を持っています。入門書ですが、生成AIを生成AIとして説明するだけではなく、生成AIを通し、未来の希望とデメリットも残りの5分の1で語っています。ここは、「応用編」として続編が出版されることになるでしょう。

★それから、なぜか教育界では、この話をすると無視されてしまうのですが、NHKでも松尾教授もこれからの最も先鋭的な生成AIの使い方が話題になっています。その大事な生成AIの使い方は、学校の働き方改革を物理量からではなく、質的な側面から変えてしまいます。ただ、相当学校の機能は変化します。そこに恐れを抱いて、現場では防衛機制が無意識のうちに作用するのでしょう。シャッターガラガラ(汗)。

★しかし、多様性の意味が拡張され深化しているので(この意味を明快に論じると現状の学校現場ではなかなか対応が難しいので興味のある方は、ご自身で文科省の最新のページをサーチしてみてください)、文科省も生成AIのガイドラインはヴァ―チョン1.0ですから、さらに次を想定しています。

★それに気づいている先見性のある先生方は結構いて、その学校の未来を創造的に破壊するキーワードを使わずに着々と授業を創意工夫しています。希望ですが、どうなるかは予測不能です。

★日本私学教育研究所も私の所属している東京私学教育研究所も、その未来の学校のユートピアとディストピアの情報を収集し、10月から始まる秋の陣の研修会で備えていきます。

★福原さんの新著も、入門書でありながら、この領域でも共振しています。ぜひ応用編、発展編でそこを書いていただき、AI地球時代を創る今の子どもたちのための、またその子どもたちを支援及びケアする教師を導いて欲しいと思います。

★AI地球時代にはもはや役に立たない頑迷固陋なアリストテレスーコミュニタリアンは、それを大いに期待しています。献本、本当にありがとうございました。

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2023年9月 6日 (水)

聖学院と昭和女子大附属昭和 タイ研修の大切な意味

★聖学院のタイ研修は長く続いていてとても重要な意味を持続可能にしています。facebookで知ったのですが、昭和女子大附属昭和もタイのチェンライで研修をしているようです。両校とも同じエリアに行っています。同じと言っても広い山岳地帯だろうし、連携している現地のNPOや財団などは違うでしょう。でも、このような地で、研修を行うのは大切な意味があると感じます。

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(聖学院では、タイ研修後のレポートやリフレクションを毎年冊子にし、11月2日、3日の記念祭で販売します。売り上げはメーコックファーム財団などに寄付されるでしょう)

★両校とも、グローバルリーダーやグローバルアントレプレナーシップを育成するというパーパス(存在理由)があると思います。大切なのは、この概念が、タイ研修では深まるということなのです。

★同じ地球ですが、東京の都会とは違い、日常が大自然の中です。人間はこの大自然を目の前にすると、謙虚になります。謙虚なもの同士が交流します。場所は違っても、地球という同じ大きな自然の中で私たちは暮らしていたのです。

★そういうことに改めて気づくわけです。衝撃的に気づくわけです。

★そして、いやそれなのに、チェンライなどの子どもたちが社会課題の中で暮らしているのを見るまで、同じ社会課題に取り囲まれている自分たちに気づかないでいたことに改めて気づき衝撃を受けるのです。

★そして、そこからグローバルリーダーとしてあるいはグローバルアントレプレナーとして、協働して行動し始めるだろう聖学院及び昭和女子大附属昭和の生徒たち。自分たちは小さな存在であることに謙虚に気づきながらも、自分たちの一見ささやかな社会課題解決のために行動することが、この一つの地球につながる実感を感じる生き方を知る大切なタイ研修。

★何もタイでなくてもよいのですが、このグローバル教育は、先進諸国のエスタブリッシュな高校留学とはまた違う大切な人間存在への視座が広がるわけです。

★聖学院も昭和女子大附属昭和ももちろん、海外留学などの研修も行っています。さらに、このような研修も行っています。「グローバル教育」とは何か?その深い本質的な意味を考えるとても重要な機会をわたしたちに与えてくれる格好の事例です。

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2023年9月 5日 (火)

教育における人的資本

★ノーベル経済学賞を受賞したゲーリー・ベッカーの「人的資本」論が、今になって企業で広まっています。1960年代に「教育投資」とか「人的資本」とかなどの概念をうくり、現実的な人間の生活を分析していったようですが、新自由主義の系譜だとか言われ、日本の学校ではあまり人気がなかったかもしれません。しかし、今や「人的資本経営」「人的資本開示」「人的資本マネジメント」とかいうキーワードで著作が山ほどでています。

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★ベッカーの研究は、私が生まれる前から行われているので、やはり同時代に提唱されたソロー・スワンモデルの延長上の内生的経済成長論を現代化したポール・ローマ(ノーベル経済学賞受賞者)の考え方にまずは興味がありました。ローマとは同世代ということもあるでしょう。

★しかし、経済学は難しく、直観的にしか理解していません。ただ、21世紀型教育における生徒の才能を生み出す教育のアイデアとシンクロするのではないかとは思っていました。

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★すると、2016年にベストセラーになった「ライフシフト」を読んで、やはりこれだなと感じたのですが、そこで語られているVICAの時代に対応する生き方「ライフシフト」はその前提に「無形資産」を大事にしろというのがあるのです。これこそ内生的成長のエネルギーかなと、これもまた直感的に感じ、21世紀型教育はこれでいこうと。

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★「無形資産」は自由で公平な議論ができる対話関係をつくりだす教育環境デザインが生み出すのだというのが、21世紀型教育の私の基本的な考え方です。かつて勤務していた学校でも、対話関係を、教師間、教師と生徒、生徒と生徒、教師と保護者・・・の間に満たしていこうとをしただけです。制度的人事とか働き方改革などはそのあとでいくらでも柔軟に生まれてきます。

★対話関係が満たされた結果、各人に「無形資産」が暗黙知的に蓄積される。それを言語化や図式化や数式化などしていくのは、各人の得意不得意があるので、得意な表現方法をいっしょに対話をする。それが基本的なキャリアデザインだと思っています。

★人的資本と言うと、自分で勉強して蓄積しろと言う自己責任論に結びつけられがちですが、対話関係が基本いないと生成できません。その阿知波関係をビジネスにしてしまうのが企業ですから、そのような誤解を生むのかもしれません。しかし、学校における対話関係は、ビジネス以上の人間存在の意義そのものにかかわるものなのです。

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女性の覚悟は世界市民の覚悟

★坂東眞理子先生(昭和女子大学総長・理事長)の「女性の覚悟」を少し読みました。50歳以上の女性のお話のようですが、前期高齢者であるd男性である私が読んでも身に染みました。感動したのは、教育界から、「無形資産」「稼げる力」が説かれていたことでした。

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★金融教育とかアントレプレナーシップとかいう言葉はまるでバズワードさながら教育界では使われるのですが、なぜか1人ひとりが「無形資産」を生み出せる教育をという言い方はあまりしません。ましてアントレと言いながら「稼げる力」を育てようと歯に衣着せぬ言い方はしませんね。

★それを坂東先生がずばりおっしゃるのですから、痛快でした。

★同書は、50歳以上の女性の本であり、万人の書です。ぜひ教育界の方々は読んで、目先の有形資産に走るだけではなく、将来を見越した無形資産(教養資産と言えば通りがいいのでしょうか?)を育成するカリキュラムデザインをするとよいのではないかと思うのです。

★人的資本とは何か?内生的成長とは何か?無形資産とは何か?ライフシフトとは何か?経済領域だけではなく、教育領域でも考え実践する時代が来たのでしょう。ぜひ坂東先生の「女性の覚悟」をみんなで読んで欲しいものです。

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2023年9月 3日 (日)

八雲学園の多様なグローバルプログラム(動画2本付き) CEFR基準で見てみる

★この夏、八雲学園は、国内では合宿、海外では多様な留学が行われていました。オーストラリアや9カ月プログラム(米国3カ月)の海外研修などは今も継続中です。

★この多様なプログラムは、通常の英語の授業と帰国生を中心とする英語が得意な生徒向けの取り出し授業とDNAのように絡み合い、英語力ではなく、英語による言語能力が、CEFR基準で最終的に多くの生徒がB1には達し、国際関係で活躍したいというモチベーションが高い生徒は、B2・C1のレベルに到達します。20名くらいはそこまで行くと思います。というのも、高3の取り出し授業にでている生徒の人数はそのくらいいるからです。

★今、英語力ではなく英語による言語能力といったのは、CEFR基準は、あらゆる国の言語力の参照基準だからです。

★わかりやすくいえば、海外大学の講義を受けたりゼミでディスカッションやレポートを書ける言語能力はC1以上です。B2あれば、海外の大学に入学してから十分に伸びるでしょう。

参照)八雲の海外研修の成果を語る生徒たちの動画


★別の言い方をすれば、探究活動を英語でできるというレベルの言語能力です。日本の高校生は、新学習指導要領で探究を学ぶことになっていますが、ここに使われる日本語は、C1以上の言語能力です。日本人であれば、すべてがC1以上かというとそうではないのですね。共通テストの国語で活用される日本語能力はB1くらいで十分だということからもわかるでしょう。

★八雲学園は、能や映画、ミュージカルなど文化体験も頻繁にあります。月に1度以上かもしれません。これは仮に日本語であっても、体験後レポートを書くので、B2以上の言語能力を養うプログラムでもあります。言葉というのは、文化を背景に包摂します。日本語や英語の学びは、文化を学ぶことでもあります。ここまでくると、言語能力はいわゆるリベラルアーツのレベルでもあります。

★イエール大学との音楽国際交流などは、英語による高い言語能力と文化教養を活用する場でもあります。

参照)イエール大学との音楽国際交流の動画

★進路指導という側面からは、国内大学の英語の力はA2からB1まであれば十分です。実際上智や立教など、英語2級、つまりB1レベルで推薦入試の資格を得られる学部もあります。CEFR基準で高い英語の言語能力を養うプログラムをデザインしているわけです。この八雲学園の英語の授業と海外研修によって学年によってCEFRレベルが向上する図を私なりに描いてみました。大学進学との関係も加えました。

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★もしかしたら、もっとすごいことになりそうなのですが、それはまた3人の副校長の先生方に聞いて修正したいと思います。今回は、あくまで私のイメージです。とにかく、上記の2つの動画を見て頂ければと思います。

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私立学校の役割 社会を変えるコレクティブインパクトを創る越境をデザイン

★森の中で、ひさびさザッピング読みをしました。ルソーの人間不平等起源論と西研さんのルソーのエミール論。起源論は、鹿狩りの寓話が掲載されている章を、西研さんのは、たぶん最終章。エミールが22歳になって、ルソーが社会契約論で描いている理想の国がどこにあるか旅をする箇所。いずれも、ドネラのクマのブラックジョークに通じる話で、私立学校が明治から立ち上がった時、ルソーにも影響を受けていたのはしっくり。もちろん、ロックやアダム・スミスにも影響をうけています。

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★だから、ご承知の通り、啓蒙思想といっても、ルソーのようにコミュタリアニズム傾向とロックやアダム・スミスのようにリバタリアニズム傾向といろいろあるため、簡単には論じられないけれど、教育と経営の両輪の私立学校は、それらを独自の発想で建学の精神として統合していた感じですね。

★そして、その当時の私立学校って、社会を変えるコレクティブインパクトを生み出すデザインをしていたのだと想いを馳せました。明治は何せ民主主義や近代国家を作り出そうとしていました。それは政治だけではなく、経済も然り、教育も然りで、総がかりでやっていたわけです。元祖コレクティブインパクトを生み出していたということでしょう。

★だから学校が変わるだけでは、社会は変わらないのは、今もそうなのです。今の多くの私立学校が外部団体と連携しているのは、まさに社会を変えるコレクティブインパクトを生み出す教育デザインをしていることになります。

★ルソー的には「一般意志」を構築する一つの役割を担っているわけですが、それには外部団体と越境して協力態を形成するということですね。

電通報2023年7月7日の井口理さんの記事<社会を変える「コレクティブインパクト」の担い手は誰か?~予算とノウハウで勝る大企業、目的とビジョンに集う草の根運動の差~>というのは、まるで現代版啓蒙思想ですね。ルソー的でもあるし、ロックやアダム・スミス的でもある発想を融合した感じの動きがでています。

★井口さんはこう語っています。

「コレクティブインパクト」とは、特定の社会課題について、行政や企業、NPO、基金、市民などが組織を超えて協力し、解決に向けて取り組むこと。この概念をベースとすれば、先にも述べたように、その取り組みのそれぞれの役割に最適なスキル・ノウハウを提供できる存在が参画することが重要だ。そして、その参画への後押しになるのが“共感”であり、すなわち人はビジネスプランではなく思いやビジョンに対し集まるということを理解する必要がある。この思いやビジョンに人は引かれ、ついたぐり寄せられてしまう。

本カンファレンスで頻発するキーワードに「越境」というものがあったが、あらゆる垣根を超えた人の思いが、そしてつながりが、社会課題解決を促進する大きな原動力になるのは間違いない。そしてそれは個々の人の思いがつながることがベースであり、その意味でこれまで言われていたような「草の根運動」の実行力は、一昔前のそれとは桁違いに強くなっているのを感じた。一方で、初期段階から企業が参画するには微細な領域もあるようだ。そこをきちんと発見し、顕在化させ、社会に問うていく、そのスタンスは草の根だからこそできることでもあるだろう。

ただし、企業がそのスキル・ノウハウで大きなサポートを提供してくれることももちろん大歓迎なのだという話は各所で頻出した。

★草の根運動の生み出す「共感」が大事な媒介項なのですが、大企業もそれを支えることができる。むしろ支えて欲しい。越境と共感。

★ルソーは、「憐みの情」と訳されている「共感」をめちゃくちゃ大切にしています。また「一般意志」は、階級や男女、民族などの差を越境して対話関係をつくることなのだと西研さんはご自身のエミール論で語っています。

★3.11の経験を通して、東浩紀さんは「一般意志2.0」を書いています。おそらく、AI時代の今日はこの流れが具体的な活動になっていくのでしょう。コレクティブインパクトの活動も一つの分水嶺をたどる流れでしょう。やがて、それは他の分水嶺をくだってくる流れと合流し新たな大海を作り出すのでしょう。

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2023年9月 2日 (土)

Well-Being教育=創造的才能教育~多くの若い校長・教頭が動き出している

★今、多くの学校の若い校長・教頭が中心となって、Well-Being教育=創造的才能教育を推進しています。幸せは、やはり自ら創り出したモノやコトが世の中に役立った時に生まれます。このことは誰も否定しないでしょう。

★そして、これに挑戦している若い校長(若いと言っても40代から50代ですが)・教頭(30代の教頭もたくさんいますね)の中には、自分の学校だけがそうなってもしかたがない。日本のひいては世界の学校すべてがそうならないと生徒も私たちも幸せではないだろうと。

★ドネラ・メドウズのメンタルモデルである「自分だけがなんとかなればよいのではなく、みんなで立ち向かおう。競い合うのではなくみんなで困難に立ち向かおう」が広がっているのは喜ばしいですね。SDGsの生みの親といっても過言ではないドネラのメンタルモデルは大事ですね。

★今、探究で、システム思考だとかデザイン思考だとかSELといわれている手法を使わない教師はいないでしょうが、それはドネラの発想から流れ出ているものでもありますから、着実に広がっています。

★1972年以降、ドネラは仲間の研究者たちと「成長の限界」を世に示し、警鐘を鳴らしましたが、さらに、ドネラは解決するシステムを多くの仲間と協力して創ってきたわけです。世界の小学生から高校生までの教育にも影響を与えたのはよく知られていることですね。

★日本もその影響を受け、積極的にがんばってきています。日本のローマクラブへの貢献とその功績はすばらしいものです。しかしながら、それが教育の現場に影響を与えるのは、少し遅かったかもしれません。1998年の学習指導要領から「総合的な学習の時間」が導入されました。導入時は、この世界の流れがあることを現場ではあまり意識できませんでした。必ずといっていいほど、大学入試が変わらなければ総合的学習は意味がないとなっていたのは記憶に新しいでしょう。

★実際、暮超有名大学の若手助教授も、高校時代に知識と論理的思考さえ学んできてくれれば、あとは大学で学べばよい、君はくだらないことを言っていると、そこまで厳しく言わなくてもと思った経験があります。

★当時は、ローカルというより、ドメスティックという感じだったと思います。ローカルはグローバルと表裏一体ですから。

★それでも、その辺りから、総合的学習は、創造性が必要になってきますから、教育界は「創造的才能教育」について研究し語りはじめます。そんな本も出ましたが、私も少しかかわりました。そのためもあって、私自身も「創造性」を養う教育に一挙に目覚めました。学校の先生方と「総合的学習」の授業の勉強会を定期的に行い、共著を出版したりしました。

★そして2003年から2008年にかけて学習指導要領はさらに改訂され、反ゆとりを掲げながらも「思考力・判断力・表現力などの育成のバランス」という考え方も盛り込まれました。当然、その背景には創造性が必要です。仮に思考力がロジカルシンキングに限定されていたとしても、判断力や表現力には創造性は必要だからです。

★そして、ついに2007年に学校教育法が改正され、51条第一項に創造性条項が盛り込まれたのです。文部科学省は、この創造性条項を無視するわけにはいきませんから、段階的に学習指導要領を改訂していきます。

★そして、現在施行されている新学習指導要領を議論する中で、創造的思考だとか、創造的に思考・判断・表現するコンピテンシーなどという文言が登場するようになるのです。

★ですから、多くの学校の若い校長は、俄然動きやすくなり、創造的才能教育を偏差値の高い生徒だけではなく、すべての生徒に開いたとすると、それはWell-Bing教育になるとなったわけです。

★このWell-Being教育は、実は2007年改正学校教育法の創造性条項にちゃんと含まれているのです。ですが、その文言が、Well-Beingにつながると明快になったのは、世界同時的パンデミック体験を通してでした。

★したがって、現在では、1997年ごろに教育学会で議論されていた創造的才能教育は、Well-Being教育と結合して、次のような図で描くことができると思います。

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★今でも、基礎学力が大事だと、その基礎学力=受験学力だというバイアスがかかった状態で詰込み現実主義的になりがちな促進教育(アクセラレーション教育)に偏る考えも当然あります。保守的な考え方はいつの世にもあるものです。

★一方で、知識ではない、創造性なのだと極端な牧歌的な理想主義に傾く拡張教育(エンリッチメント教育)に偏る考え方も当然あります。特に経済社会の動向を無視した理想主義的教育提唱者もまたいつの世にもいるものです。狂信的な改革者も現れるのは歴史に学べば、驚くことではありません。

★そういことを冷静に観察し洞察しすべての生徒に寄り添いながら理想と生きるすべという現実主義の両方を統合する若い校長・教頭がたくさん生まれてきています。彼らは、自分こそが改革者だとは言いません。先生方、生徒のみんな、保護者の方々と協力していっしょにやっていこうとみんなのニーズを汲み取りながら共に新しい教育を創っていっています。それに参加するメンバーはみんな創造的だし、それはWell-Beingな状況を生み出しています。

★もちろん、そのような校長・教頭だけではなく、広報部長も、教務部長も、一人ひとりの先生方も活躍しています。若い校長・教頭は、そのような自由に互いに発想を言える心理的安全性をつくりだす組織作りをしています。それは生徒においてもそうなっています。

★このような流れは、起業家がたくさんでてきた日本の経済社会全体にもいえることです。学校が変われば社会が変わるとは標語としてはいいのですが、実態は、そのような動きを学校だけではなく、いろいろな団体がしているから、社会は変わるのでしょう。

★互いにそのような起爆剤になっていく流れがうまれているのだと思います。

【学校教育法】
第五十一条 高等学校における教育は、前条に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
一 義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて、豊かな人間性、創造性及び健やかな身体を養い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。
二 社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な知識、技術及び技能を習得させること。
三 個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態度を養うこと。

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トキワ松学園の魅力 田村校長が丁寧に教師や生徒の活動を意味付け

昨夜、GLICC Weekly EDU 第141回「トキワ松学園ー 探究女子の育成」に、校長の田村直宏先生がご出演されました。柔らかいトークと強い意志が絶妙に織りなされていて、実際に動画を見て頂くと感動が伝わります。こんな校長がいる学校って凄いじゃないかと。ぜひご視聴ください。

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★視て頂くと、「職員室が仲良ければ、すべてうまくいく」という信念を貫き通すその行動力は真のリーダーだとすぐに伝わってきます。とにかく、先生方の活動、生徒たちの活動をきめ細かく観察し、一つ一つすばらしい意味があるのだということを掘り起こしていきます。こんなにすばらしい土壌がすでにあるのだと耕していくのです。

★そして、そこに思考力教育、国際力教育、美の教育を探究女子というコンセプトで全部結合していきます。もちろん、すでに結合されているのですが、そのことを言語化して、意味付けして、先生方と生徒と保護者と丁寧に共有していくわけです。

★ポジティブな化学反応が起こりますから、学内は幸せな雰囲気になります。それはPeer Effectを生みますから、結果的に様々なコンクールで生徒が優秀な成績を収め、結果的に総合型選抜などで大学合格実績も伸びるわけです。

★それに思考力も国際力も美も人々が幸せだと感じる成果を生み出しているのはすてきです。トキワ松学園の教師も生徒も保護者もそしてかかわった人々もみなwell-beingになるわけです。

★こんな学校を、日本全体に広げたいという田村校長の軽やかでそれでいて強い愛ある言動は、すでに多くの外部団体との連携に流れていっています。

★それにしても、田村校長の理数的発想は、たしかに興味深いです。社会科学系だと価値の自由でいろいろな考え方が拮抗していて、そのような学問知を現場に持ち込むとみんなが1つになるのは結構難しいものです。ところが、理数的発想は世界共通語ですから、真理は真理というシンプルな発想で行けます。

★もちろん、シンプルな発想が現場で具体化される段階では多様な手法がでてきますから選択判断や合意形成は必要です。しかし、軸があれば、迷ったら、みんなでそこに還ることができます。

★言うまでもなく、その理数的発想は、受験のための理数の技量の話ではありません。田村校長は、その技量は絶大ですが、その技量が生まれる理数発想の領域を教師と生徒と共有しているのでしょう。

★いったい、その理数発想って何でしょう?それは田村校長が、すでにトキワ松学園が形づくってきた探究、思考力、国際力、美の本質部分を変えずに組み合わせ方や拡張の仕方、新しい出会いなどとの結合の仕方などで変形しているその言動の姿に埋め込まれていると思われます。

★回を重ねてご主演頂きながら、田村校長の暗黙知を学んでいきたいと強く感じました。みなさまぜひご視聴ください。幸せはうつりますから。

 

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2023年9月 1日 (金)

工学院 多様なプロジェクトで成長する生徒たち

★先月8月は、どの学校でも夏期講習や合宿研修で大忙しだったと思います。工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)もその例外ではありません。教務主任の田中歩先生がほぼ1カ月、中3のオーストラリアの研修に同行され帰国されました。そしてメールを頂きました。間近で生徒が成長していく姿を見られるのは本当に感動的だと。

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(写真は同校特設インスタグラムから)

★工学院の公式ブログには、その他の多様なプロジェクトの記事が満載されているのですが、今回の中3のプロジェクトの記事は載っていません。そのいただいた歩先生からのメールには、インスタグラムよかったらどうぞとありました。そういえば、歩先生が出発する前に、インスタグラムに今回はアップしますからと言っていたのを想いだしました。

★これを機に、登録して覗いてみました。するとほぼ日インスタになっていました。歩先生は、見てくださいと直接は言いません。常に選択判断は相手に任せるコミュニケーションをとります。それは生徒とも同じですね。今回は私の判断が遅かったです。言われたらすぐに登録すべきだったと。リアルにチャットができたのにと。機会大損失!

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(写真は同校特設インスタグラムから)

★ブログにも載るだろうとアンコンシャスバイアスが働いてしまいました。なぜ、今回はインスタグラムだったのか?それは歩先生が生徒に密着しているので、リアルタイムでアップし、それによって生徒が目の前で成長していく軌跡を描こうとしたに違いありません。

★パンデミック以前は、中3は8月に全員オーストラリアで研修だったのすが、今回の「海外異文化体験研修2023」は、オーストラリア、シンガポール、国内研修(本校)に分かれて体験研修を行ったようです。

★担当の先生方が、日々の生徒の様子を載せていたのですね。生徒が成長するその変化を見逃さない教師の眼差し。共感的コミュニケーションが浸透している工学院の教育のベースを改めて感じ入りました。

★それにしてもこの夏、工学院の生徒は本当にいろいろな経験をしています。2023年8月、アメリカ、フロリダのタンパにあるCarrollwood Day School(CDS)で、ラウンドスクエアの交換留学生として過ごした高等学校2年生もいます。その生徒からの報告が同校ブログに掲載されています。次のような箇所は、すてきです。

「フロリダへ一人で行ったCDSでの経験はとてもいい思い出です。ホストの家族から、フロリダの歴史や伝統や文化をたくさん教えてもらい、まだこの世界のほんの一部しか知らない自分が小さく感じました。とても感謝しています。ぜひまた行ってみたいと思いました。 ありがとうございました。」

★英語の勉強をしに行ったということもあるのでしょうが、それは第一義的理由ではなかったことが推察できます。新たな世界に真摯に向き合うことで、自分というのを見つめに行っているのです。メタ認知というか自己内省的視点で、自分の今の状態を認識し、今回のようにさらにチャレンジしていくことでしょう。そのような機会をいただいたホストファミリーやこのような設定をしてくれた先生方や多くの方に心から感謝しています。これぞグローバル教育の真骨頂ですね。

★また、International Sports Collaborationも行われたようです。Round Squareに加盟するインド、バングラデシュ、ケニヤ、日本の4校が共催するスポーツイベント。「スポーツを通して、ラウンドスクエアの理念、IDEALS(Internationalism, Democracy, Environmentalism, Adventure, Leadership, Service)を達成する」と英語科主任の中川先生がコメントしています。

★グローバル教育が、英語の学習や探究的な活動のみならず、スポーツの交流を通して高い志IDEALSを呼び覚ます活動になっているわけです。凄い学校というより他になにがありましょう。

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本日のGWE トキワ松学園の校長田村直宏先生が出演

★本日9月1日、各学校においては2023年度の後半の準備に多忙な時期です。同時に前半のリフレクションを夏中にして気づいた新たなビジョンを2024年度に向けて並行進化させるあるいは、今年度のビジョンの有効性に確信をいだき、それを持続させる意志が明快になっている時期でもあります。そのような重要なポイントで、トキワ松学園中学校高等学校の校長田村直宏先生の考え方や感じ方をお聞きできるのは何かを感じないわけにはいきません。

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★同校といえば、「思考力教育」、「国際力教育」、「美の教育」、そして「探究女子」というキーワードが思い浮かびます。いろいろな媒体で紹介されています。また、田村校長自身も、発信しています。

★これらのキーワードに象徴される教育は、見事に結合しているわけです。この一貫性が何か知りたい気持ちでいっぱいです。

★個人的には、横浜市が創造都市の計画の一環として黄金町をアートでまちづくりに転換したときに、同校のグループである横浜美術大学もまたその拠点の1つとして重要な役割を果たしています。それで、ずっと気になっていたのが、同校の「美の教育」です。今回もサイトを開くと、すぐにアイキャッチされるのが、すてきなデザインの「生徒が語るトキワ松」です。

★私は、今ある山の森の中にいます。東京はまだまだ暑いですが、ここは夜になるとすでに秋の虫の音が響いています。その響きの中で、田村校長のお話に耳を傾けられるのを楽しみにしています。

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