2023年東京都私立学校展⑦東京私学集結の意味 学問知と実践知を結合した成果がズラリ
★開演前に成城学園のブースに立ち寄った時、入試広報部長の青柳圭子先生が、声をかけてくれました。青柳先生は、この夏、東京私学教育研究所の委員会の委員のお1人で、私学の先生方との研修のファシリテーターも務められていますが、その後も学びの旅行に出かけられていて、精力的なのです。今回も、8月の後半で深い学びを体験してきます。その成果をまた学校に持ち帰ります。どんな体験かはFacebookに掲載するので、お楽しみということでした。
★もっとお話を伺いたかったのですが、開会式が始まり、あっという間に受験生・保護者が入場し、成城学園のブースは黒山の人だかりになったので、今度ゆっくりお聞きしようと思っていました。
★すると、広報関連スタッフがちょっと案内してくれますかということで、いっしょに会場を一通り回って歩きました。おもしろいことに、成城学園のブースの前に立ち止まり、ブースの壁一面に貼ってある教育プログラムを見ていました。
(図は同校サイトのデジタルパンフレットから)
★何か気づきましたかと尋ねると、「ハイ、縦軸の項目がおもしろいですね」と。どういうことかというと、生徒の学年ごとの発達段階が分かる項目と、その発達段階に応じて、「国際教育」と「理数教育」のプログラムが刻まれていて、その関連が分かるようになっているのがさりげないけれど、新鮮な感じを受けますと。
★生徒の「自己変容」、それをサポートする「国際教育」と「理数教育」。なるほど成城学園らしいなあと。
★その後、歩きながら、「国語教育」と「数学教育」などという項目があっても同様に関連しますよと指摘すると、そのスタッフは、紙媒体のそれは限界ですね。本間さんならきっと・・・。ですねなどなどと対話して別れました。
★彼と別れた後、場内を歩きながらセルフリフレクションしました。スマホで同校のデジタルパンフレットを見ながら、彼はたんに項目が斬新だと感じただけではないだろうと思いなおし、考えてみたのです。すると、なるほどなるほど、特に理数教育については、何をやるかというコンテンツというより何をどう考えるのか理数的な推理方法のさわりが書かれているのです。しかも、その推理方法は、発達段階に応じて成長していくというか進化していくという感じになっています。
★ああ、青柳先生が、国語における小論文は三角ロジック(トゥルーミンモデル)を活用しているという旨をお聞きしたことがあります。京大の松下佳代教授の研修会など参加して、学問的成果を授業に埋め込む作業をしているわけです。理数教育を担っている先生方も学問的成果をどこかで学び、プログラムに埋め込んでいるので、学びや推論のシステムという、外から見ていては、一般的にはわからない領域を見える化できるのではないかと。
★パンフレットで、数学の部分を読むと、武蔵や海城の数学と同様に、中学段階で幾何を通して論理的思考を学ぶとなっています。英語は、グローバルコンピテンシーとなっています。社会科は、多角的観点とか論理展開とかキーワードがでていますが、さらに「因果関係」というキーワードがでています。社会と世界を結ぶというフレーズもあるので、システム思考を想定しているのでしょう。
★学問知と実践知の統合がされているのです。ただ、それを広報媒体で正面から表現すると、さすがに見る側にはわかりにくくなります。そこを広報媒体の制約内で表現する努力がなされていたのです。
★それで、広報関連スタッフの彼が斬新だと直感したのでしょう。
★そんなことを思っていると、青柳先生のfacebookに、東京大学の栗田佳代子教授が主宰するティーチング・ポートフォリオ(TP)のチャート作成ワークショップに参加したと報告が載っていました。限定公開の掲載なので、詳しくは述べられませんが、私もある学校の研修でTP体験をしたことがあるので、それをもとに推測すると、自己の教育理念やそれに基づく活動のシステム全貌を鳥の目と虫の目で見ていくWSです。ピアインストラクトしながらジョハリの窓よろしく、相互に気づきを支援していくなかなかウェルビーイングなWSです。時間も結構たっぷりなので、ふだんここまで、長い時間自分を見つめることはありません。
★教育において、教師が自らの立ち臨み方をリフレクションする方法はいろいろありますが、TPは一つの有効な方法論だと思います。ハーバード大学のキーガン教授の「自己変容」のヒントを見出すリフレクションもTP同様たっぷり時間をとります。共通部分もあります。
★どうやら、青柳先生は、成城学園の教育のさらなるアップデートのプランを見出したのでしょう。
★そして、やはりこのように、成城学園は大学知と実践知を結合する教育プログラムをデザインし、日々アップデートしていくのでしょう。
★広報関連のスタッフと歩くことによって、複眼で見ることができました。結果として、私立学校展は、成城学園と同じように、それぞれの学校の創意工夫の過程が見える成果のプレゼンテーションであるなと新しい意味を発見することができました。
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