文科省の理系学部拡充の意図と世間の捉え方のズレ 大学入試動向や生成AI活用に影響か
★文科省は、7月21日に「大学・高専機能強化支援事業に3002億円」の補正予算を組んだと発表しました。機能強化とは、気候変動の凄惨さやAI時代が到来してしまったのに、日本の高等教育機関は、デジタル・グリーンに対する高度専門人材を思うように輩出できていないからなんとかしたいという想いがあるようです。
★これに対し、メディアはどう反応しているでしょうか?たとえば、7月21日の読売新聞「理系学部拡充へ文科省が118校支援、62校が学部・学科新設…デジタル人材の育成後押し」と題し、次のようなリード文を掲載しています。
文部科学省は21日、3000億円の基金を活用して大学の理工農系分野を拡充する支援事業に、国公私立の大学・高専延べ118校を選んだと発表した。公立と私立大の計62校が理系の学部や学科を新設する計画で、大学の理系転換への動きが一気に加速しそうだ。
★デジタルに注目を特化し、「グリーン」はデジタル化に包摂されていると考えているのか、その言葉はここではでてきていません。また、大学の理系転換への動きが一気に加速するとさりげなく評価されてもいます。文理融合とかではなく、いわゆる理系。。。
★これでは、大学入試は、理系の一般選抜が圧倒的に増え、生成AIを濫用されるのは困るから、総合型選抜は理系では使わない。大事なのは、理数系の基礎学力で、英語も英検2級くらいでよい、あとは大学に入ってから、一気に高度専門人材を育成するからよいのだとなりがちです。
★ですから、この領域で世界に後れをとっている。デジタル近代化に向けてデジタル殖産興業だあ!とまるで明治維新の時と同じように動き始める。。。のでしょうか。静かに富国強兵みたいな動きもありますよね。それも台湾有事に対処するために必要なんだと。
★まさかね。しかし、この方向にブレーキをかけるジャーナリズムは、今の日本では期待がもてるのか。期待したいですね。20世紀の2つの世界大戦でもメディアは、チェック機能は果たせなくて、デマゴーグ側に回っていたのは歴史的事実ですから、今度こそお願いしたいと。
★さて、教育では何が。2019年から経産省は「数理資本主義」を宣言していますから、今回の流れは、当然文科省は織り込み済みだったのでしょう。そんな流れの中で教育でできることは、大きく2つありますね。
★1つは、グローバル教育を拡充し、世界の多様な見識のシャワーを生徒たちが浴びられる環境を創ることです。生徒のグローバル判断フレームを形成することです。もっとディスカッションする機会をつくりたいですね。もっとも日本語でもできていない可能性があるので、そこは改善。
★2つ目は、リベラルアーツとしての言語処理と数理処理を文系理系かかわらず授業の中に織り込む、シン・リベラルアーツベースの教科学習の開発です。正直、現状の探究の時間は理数系学部拡充の動きには役に立たない。いわゆる文系には役に立つでしょうが。。。
★ですから、教科学習の中に埋め込み、知のパワーアップを図ることが優先です。
★リベラルアーツなき英語授業ではなく、リベラルアーツあり英語授業が必要です。それは国語でも数学でも理科でも社会でも大事です。体育はスポーツ科学を入れればすぐにそれはできるし、すでに行っている学校もあります。
★家庭科や技術、美術、音楽はもっとアーティスティックに。アート思考という形などでシン・リベラルアーツを。
★大学は、いきなり高度専門人材形成ができるように。つまり、今までの大学の1,2年で行われる相当部分を高校で行っていく。
★これによって、熟慮思考なき高度専門人材になるのを回避できます。
★しかし、ここまで初等中等教育が進化したら、今の大学のシステムはどうなるのでしょう。学部の再編や理系学部の定員増加でなんとかなるとはさすがに考えていないとは思いますが。。。
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