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2023年8月10日 (木)

阿部先生と対話 通信制でここまで本質的な学びに集中してカリキュラムマネジメントをするのかと感動

★先月までに、文科省は「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」のミーティングを6回終えています。その議題の一つに、通信制の望ましいあり方について議論されています。望ましくないことがあるからそれを是正するというのがメインなのでしょうが、制度的整備は必要ですが、通信制のウェルビーイング教育の実践をリサーチしていないのが残念です。その実践にこそ、通信制だけではなく現代日本の教育の希望があるのですが。

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(イラストはBingが作成)

★聖パウロ学園高等学校は、全日制と通信制エンカレッジコースが併存しています。校長は小島綾子先生。全日の良さとエンカレッジの良さを統合してパウロらしい教育の精神を共有しています。

★そして、その精神を現場で実践しながら広げ深めている教師の1人に阿部先生がいます。エンカレッジの生徒の身体知にねむる自分らしさを覚醒し、最終的には言語化へアウフヘーベンすることを実践しています。体育科の教師であると同時に、フッサールやメルロポンティの哲学の研究者でもあります。この秋学会で発表することになっているようです。

★おもしろいのは、デジタルを生徒と共に使いながら、自己に向き合い、他者との関係をつくるかけがえのない存在の気づきを生み出していきます。身体知を覚醒するには、アルティメット、園芸、農業など自然や社会の種の領域で生徒と共に活動します。農作物を使って食育もやっています。

★もちろん、阿部先生一人でやっているのではありません。エンカレッジの先生方は、学会で自分の論文を発表したりするほど、通信制のエキスパート教師です。ただ、阿部先生はエンカレの頭脳とみんなから呼ばれ、コンサルテーションも得意です。身体知を覚醒できるチャンスとしてハンドベルクワイア―の活動もあります。顧問の先生方のサポートは絶大で八王子エリアでは、ハンドベルクワイアーは大活躍しています。その響きは老若男女の心をしみじみとした感動に導いているという感想をたくさんもらっているほどです。

★アフターコロナというのもあって、キャンプも行っています。パウロの森という自然の中で活動をして自然の息吹に呼応して睡眠にはいるわけです。ビフォー・アフターの輝きは他の活動と同様です。

★かつて、私が同校校長だった時代に、阿部先生とは、ペットボトルに水やコーラーをいれて、心に見立てて、自分を見つめる、他者を見つめる、心理学的というか哲学的なコペルニクス的転回授業を行い、感情の起伏をグラフに表す、身体知を可視化するワークショップをいっしょにやりました。かけがえのあに存在の実感。そこにいまここ存在しているのは、自分でしかないという実感。阿部先生とはそんな対話が事前事後にできました。

★その後、社会科の先生とコラボして阿部先生は、倫理の時間に自分と他者の関係を哲学的考察をするワークショップを行い、いよいよ言語化への挑戦をしていました。強烈に興味深い授業でした。

★こう書いていると、阿部先生が中心になってエンカレッジは動いているように思われるかもしれませんが、以上のような教育活動は実にフラットなのです。それぞれの持ち味を生かしながら、対話が充満し、阿吽の呼吸で動いているのです。

★エンカレの経営は小島校長ー竹内教頭の垂直構造のラインの秩序が美しいですね。その周りをフラットに上昇気流に乗って教育活動がダイナミックに動いています。

★その機運は、対話が充満していることですね。しかし、この対話のシステムがいわゆる全日ではなかなか遂行されていない対話の構造なのです。哲学や心理学、文化人類学、社会学、自然科学的思考など、それぞれの教師の持ち味が化学変化を起こして生まれている対話の構造です。

★この解明を学会で発表していくのが阿部先生をはじめエンカレの先生方ですね。こんなことができるのは、進学実績競争など他者との比較をする環境とは無縁だからということもあるでしょう。このような通信制の役割は、学歴社会を修正する望ましい姿でもあるかもしれませんね。

★ともあれ、教師は研究者であって、研究者は教師である。そしてアントレプレナーである。阿部先生もこんなザ・教師です。このような若き教師がいるのは、日本の教育にも希望があるのですよ。

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