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2023年8月

2023年8月30日 (水)

めちゃくちゃおもしろいサイエンスコミュニケーションWS!

8月28日(月)10:30~15:30、立教池袋中学校・高等学校4階 地学実験室で、理数系教科研究会(理科・生物)の「実践研修会・講演会」がありました。テーマは『カーボンニュートラルを通じて科学と社会の繋がりを考える』。昼食を挟んでの一日がかりの研修会でしたが、めちゃくちゃおもしろいサイエンスコミュニケーションのワークショップ(WS)でした。時間は快速。あっという間でした。

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★講師は、古澤 輝由先生(立教大学 理学部 共通教育推進室(SCOLA)特任准教授 サイエンスコミュニケーター)と高橋 良子先生(立教大学 理学部 共通教育推進室(SCOLA)教育研究コーディネーター)。

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(古澤先生と高橋先生の講義と授業を融合するとこんな感じか?)

★古澤先生のサイエンスコミュニケーションとは何かというゲームをしながらの興味深い講義と実際に立教大学の街路樹の木々のCO2吸収量を計測するフィールドワーク(調査)とその結果分析という授業がDNAのように結合しておもしろい研修会となったのです。

★高橋先生の授業は、立教池袋の中3の授業で実際に行われた事例でもありました。10時間のプログラムで、同校の教諭であり、この委員会の委員である吉井佑介先生とコラボもしていました。

★高橋先生は、その事例を3時間くらいでコンパクトに行いつつレクチャーも行ったわけです。立教大学はキャンパスに、エコシステムを導入しています。まさにSDGsキャンパスですが、生徒はふと立教大学の街路樹の木々はどのくらいCO2を吸収し、炭素を固定化するのだろうと思うわけです。

★そこで、どのくらいカーボンニュートラルになるのだろうと。高橋先生と街路樹のCO2吸収量を測定するわけです。木々の胴回り、高さを計測し、その数値を入力すると、その量がわかる海外の無料のサイトに入力して出すのです。英語のサイトです。

★意外やまったく追いつかないことをしり、CO2削減のために木々を植えようとただ唱えるだけでは効果がないことに気づくのです。身の回りに課題があると実感するには、このような実測してそれからスコアに変換するシミュレーション方程式が必要なわけです。

★そのような方程式は、どのようにして専門家は作ったのかも学んでいきます。自分たちがデータを蓄積することが、その方程式の精度を上げる貢献をしているということもわかります。協働作業の意味も実感できます。

★この一連の調査は、サイエンスコミュニケーションにおいては、ゲームなのだと古澤先生は語ります。

★ゲームを通して、課題を発見する。ワクワクしながら切迫した課題を発見する。深刻だけれど、その課題を発見するモチベーションは好奇心なのだと。

★哲学対話や共感的コミュニケーションも、専門家と素人みたいな差をなくし、フラットな双方向なコミュニケーションという意味では、サイエンスコミュニケーションと共通しているとも古澤先生は語ります。

★ただ、ゲームを通して、深刻さの度合いを冷静に受け止める点では違うかなと。哲学的感動と科学的感動の違いと共通点。それは何でしょう。ワクワクしながらもディープな世界に導かれました。

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生徒と共に学びも学校も創るプロジェクトの成果➌ 対話の7つのシーンが変幻自在に現れた

★21会のSGTも生徒も、生徒が主語で学んでいきたいと語りながら、成果発表の会を行っていました。プレゼンを見て終わりではなく、自分たちのモチベーションや関心がどこからきたのか、リサーチする際にどんな難関があったかなども互いに振り返りながら会は進みました。SGTも第三者として参加した先生方も、意味付けというフィードバックや2チームのテーマの違いではなく、もっと決定的な違いは何か問いかけたり。。。

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★対話が充満していました。そのベースの心理的安全性や共感的コミュニケーションが広がっていたのはいうまでもありません。そこには、コンフィデンスという互いの信頼と自己へのメンタルモデルへの信頼という自信がありました。

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★そして、おもしろいことに、この雰囲気をサイエンスコミュニケーションとか哲学的対話などと呼ばれるような対話のシーンが生まれていたのです。よく観察していると、対話の7つのシーンが変幻自在に結合されていました。

1)ブレスト

2)リサーチ

3)リフレクション

4)フィードバック

5)ブレイクスルー

6)ディコンストラクション

7)メタローグ

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★いろいろな学校でも対話をベースにした授業は行われていますが、2)3)4)が中心で、他の4つの対話のシーンはあまり前面に出てきません。課題が最初から設定されていますから、他の対話のシーンはあまり機能しなくてよいからです。それは教科の授業としてはとてもすばらしいものです。

★一方、このような7つのシーンが自在に結合する対話は、グローバルアントレプレナーシップを発揮したりチェンジメーキングするときには、現れてきますね。

★もちろん、時間の制約もあるので、すべての7つのシーンが全開だったわけではありません。強弱はあります。ただ、すべて現れていたのには驚愕でした。

★そして、この7つのシーンが自在に現れてくるには、シンプルな創造的思考とか数学的思考の思考のコンセプとレンズとそのレンズの中で機能している9つの発想のスキルを掘りあてる二重構造になっている創造的思考=数学的思考が機能しているのです。

★もちろん、現段階では、生徒はそれは暗黙知として育っている過程ではありますが、この7つのシーンを自在に組み合わせる対話の環境を持続可能にしていくとそれは暗黙知として豊かに育っていきます。機能的になるといったほうがよいかもしれません。

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2023年8月29日 (火)

生徒と共に学びも学校も創るプロジェクトの成果➋ 決定的!5つのシステムの結合を生成する対話環境

★工学院、聖学院、文化学園大学杉並、和洋九段女子(五十音順)の生徒が協働して行った1年がかりの探究活動が生み出したものは何でしょうか?

★それは、究極のシステム同士の化学反応です。教科横断とか学際的というのかもしれませんが、もっとそのプロトタイプで、市民科学者と専門家をつなぐ関係態です。

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★世界は「自然×社会×精神」の循環を1972年以降希求してきました。「成長の限界」のメイン執筆者であるドネラ・メドウズが考案して教育に浸透させた「システム思考」とその中のメンタルモデルは「SEL」として発展しました。今。システム思考とSELは、言葉を使っていないとしても、探究やPBLの中には盛り込まれています。

★そして、今回の4校の生徒のみなさんの活動は、このシステム思考とSElを発展させ、「One Earth」「Society」「Innovation」「Mind」「New Liberal Arts」という5つのシステムを結合して、この5つのシステムがつながらないために起こっている課題を解決するシステムや提案を道具化する実装までに至っています。

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★この5システム結合生成の探究活動は、今後、世界の学校も求めるロールモデルになるでしょう。そして、この結合活動(すでにイノベーションですね)を生成する対話=Dialogueのシステムも、今回のイベントの流れそのものに部分的に可視化されていました。説明するのはちょっと難しいですが、いずれチャレンジしたいと思います。

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2023年8月28日 (月)

生徒と共に学びも学校も創るプロジェクトの成果❶ 21世紀型教育機構 SGT教育プロジェクト

★昨日、和洋九段女子FUTURE ROOMで、「SGT教育 プロジェクト 総括発表会2023」(21世紀型教育機構 教育研究センター)が行われました。教育研究センターの主席研究員の児浦先生、主任研究員の新井先生が、ナビゲートしながら会はワールドカフェ風に対話を深める会となりました。生徒が中心なのですが、生徒と共に学びを創って来た各校のSGT(スーパーグローバルティーチャー)も対話に参加するシームレスな壁のない対話でした。私は午前中別のイベントがあり、終了後参加したので、少し遅れてしまいましたが、全体の居心地のよい雰囲気を感じることができました。

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★このプロジェクトは、1年前からじっくり進行してきました。21世紀型教育機構の加盟校は、すべてPBLを実施しているので、このような探究活動はすんなりいくはずなのですが、今回は、4校の生徒が参加して実施するプロジェクトですから、それぞれのPBLの作法が違うので、調整をするワークショップから始めたようです。またチェンジメーカーがキーワードでもあったので、マインドセットを十分にしてからジャンプしていたようです。

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★そして、A、Bの2つのチームに分かれて実施されました。Aチームは、フードロスをテーマとして設定したようです。その設定にいたるまでには、Zoomなどで、幾度かミーティングも重ねたようです。そして、千葉県木更津にあるクルックフィールズにフィールドワークに行ったようです。Bチームは、フィールドワークを学校にしました。3校が参加していたので、互いの学校を見学・観察・ワールドカフェを行いながら、自分たちで学校をどう創っていけるのかがテーマになったようです。土曜の午後を活用しながら、フィールドワークをしたので、互いのスケジュールを調整したり、それぞれの学校に許可をもらうためのコンサルテーションの必要性などに気づきながらのプロジェクト活動だったようです。

★マインドセット、フィールドワークなどベクトルのすり合わせや多角的な観察ができる対話の環境デザインなど生徒と教師が創意工夫するその過程は、すさまじかったと思います。

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★そのようなすさまじい学びの過程の中で、生徒は、多角的に観察したデータを分析する対話を通して、構造やシステムを再構築したり、新たなシステムを構築したりしていたことがわかるプレゼンでした。

★複数の学校の生徒と教師が協働して探究の活動を行っていったため、社会課題解決実装にまでいきついたその成果はパワフルでした。

★そして、さらにこの会では、互いにフィードバックするワールドカフェ風の対話空間に自在に変容していました。(つづく)

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2023年8月26日 (土)

2023年東京都私立学校展⑧東京私学集結の意味 探究の進化が止まらない

★私立学校展で、成立学園の宇田川先生にお会いしました。いつも生徒といっしょに未来を創っている成立学園の先生方の姿について熱く語ってくれます。ブースの背景には、2010年に中学が創設されたときから変わらぬ氷山モデルの絵でした。2025年には、中学創設15年を迎えますが、創設以来未来型教育を行ってきた同校のシンボルマークです。

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★サイトにもある、この氷山モデル。ナショナルジオグラフィックを活用する同校ならではのいわばロゴです。創設当初は「見える学力×見えない学力」は、わかりやすいだけに、期待感は高かったのですが、何せ実績はまだまだだったのは当然です。ですから、それまで行ってきた農業体験プログラムなどが見えない学力の例でしたが、今では、農業体験というローカルアクションに、アースプロジェクトというグローバルアクションが加わり、ナショジオによるグローバルシンキングが深みを帯びています。まさに<Think globally, Act locally. Think locally, Act globally>です。

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(GLICC Weekly EDU 第129回「成立学園ー『探究!見えない学力』ー」)

★しかし、もっとすてきなのは、そのようなプロジェクトが今や教師と生徒が創る「探究」活動に発展していることです。日本中の高校が、2022年から新学習指導要領が本格実施され、さてどうやって「探究」の授業デザインをしていくのか、苦心しているのですが、成立学園のように、新学習指導要領改訂前に、すでに独自のプロジェクト学習を始めていた学校は、東京の私立中高一貫校では多いですね。

★今回のイベントでも、「探究」の豊かな活動を、成立学園のように、熱くプレゼンしている各校の先生方の姿が目立ちました。

★そして、この私立学校展で各校がプレゼンしている「探究」は方法論というより、見えない学力という、思考・判断・表現を生み出す知のコンセプト(種)を生徒が探し当てる深い学びに進化しています。

★見えない学力を標榜してきた成立学園はその先駆者であるといえましょう。

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2023年8月25日 (金)

2023年東京都私立学校展⑦東京私学集結の意味 学問知と実践知を結合した成果がズラリ

★開演前に成城学園のブースに立ち寄った時、入試広報部長の青柳圭子先生が、声をかけてくれました。青柳先生は、この夏、東京私学教育研究所の委員会の委員のお1人で、私学の先生方との研修のファシリテーターも務められていますが、その後も学びの旅行に出かけられていて、精力的なのです。今回も、8月の後半で深い学びを体験してきます。その成果をまた学校に持ち帰ります。どんな体験かはFacebookに掲載するので、お楽しみということでした。

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★もっとお話を伺いたかったのですが、開会式が始まり、あっという間に受験生・保護者が入場し、成城学園のブースは黒山の人だかりになったので、今度ゆっくりお聞きしようと思っていました。

★すると、広報関連スタッフがちょっと案内してくれますかということで、いっしょに会場を一通り回って歩きました。おもしろいことに、成城学園のブースの前に立ち止まり、ブースの壁一面に貼ってある教育プログラムを見ていました。

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(図は同校サイトのデジタルパンフレットから)

★何か気づきましたかと尋ねると、「ハイ、縦軸の項目がおもしろいですね」と。どういうことかというと、生徒の学年ごとの発達段階が分かる項目と、その発達段階に応じて、「国際教育」と「理数教育」のプログラムが刻まれていて、その関連が分かるようになっているのがさりげないけれど、新鮮な感じを受けますと。

★生徒の「自己変容」、それをサポートする「国際教育」と「理数教育」。なるほど成城学園らしいなあと。

★その後、歩きながら、「国語教育」と「数学教育」などという項目があっても同様に関連しますよと指摘すると、そのスタッフは、紙媒体のそれは限界ですね。本間さんならきっと・・・。ですねなどなどと対話して別れました。

★彼と別れた後、場内を歩きながらセルフリフレクションしました。スマホで同校のデジタルパンフレットを見ながら、彼はたんに項目が斬新だと感じただけではないだろうと思いなおし、考えてみたのです。すると、なるほどなるほど、特に理数教育については、何をやるかというコンテンツというより何をどう考えるのか理数的な推理方法のさわりが書かれているのです。しかも、その推理方法は、発達段階に応じて成長していくというか進化していくという感じになっています。

★ああ、青柳先生が、国語における小論文は三角ロジック(トゥルーミンモデル)を活用しているという旨をお聞きしたことがあります。京大の松下佳代教授の研修会など参加して、学問的成果を授業に埋め込む作業をしているわけです。理数教育を担っている先生方も学問的成果をどこかで学び、プログラムに埋め込んでいるので、学びや推論のシステムという、外から見ていては、一般的にはわからない領域を見える化できるのではないかと。

★パンフレットで、数学の部分を読むと、武蔵や海城の数学と同様に、中学段階で幾何を通して論理的思考を学ぶとなっています。英語は、グローバルコンピテンシーとなっています。社会科は、多角的観点とか論理展開とかキーワードがでていますが、さらに「因果関係」というキーワードがでています。社会と世界を結ぶというフレーズもあるので、システム思考を想定しているのでしょう。

★学問知と実践知の統合がされているのです。ただ、それを広報媒体で正面から表現すると、さすがに見る側にはわかりにくくなります。そこを広報媒体の制約内で表現する努力がなされていたのです。

★それで、広報関連スタッフの彼が斬新だと直感したのでしょう。

★そんなことを思っていると、青柳先生のfacebookに、東京大学の栗田佳代子教授が主宰するティーチング・ポートフォリオ(TP)のチャート作成ワークショップに参加したと報告が載っていました。限定公開の掲載なので、詳しくは述べられませんが、私もある学校の研修でTP体験をしたことがあるので、それをもとに推測すると、自己の教育理念やそれに基づく活動のシステム全貌を鳥の目と虫の目で見ていくWSです。ピアインストラクトしながらジョハリの窓よろしく、相互に気づきを支援していくなかなかウェルビーイングなWSです。時間も結構たっぷりなので、ふだんここまで、長い時間自分を見つめることはありません。

★教育において、教師が自らの立ち臨み方をリフレクションする方法はいろいろありますが、TPは一つの有効な方法論だと思います。ハーバード大学のキーガン教授の「自己変容」のヒントを見出すリフレクションもTP同様たっぷり時間をとります。共通部分もあります。

★どうやら、青柳先生は、成城学園の教育のさらなるアップデートのプランを見出したのでしょう。

★そして、やはりこのように、成城学園は大学知と実践知を結合する教育プログラムをデザインし、日々アップデートしていくのでしょう。

★広報関連のスタッフと歩くことによって、複眼で見ることができました。結果として、私立学校展は、成城学園と同じように、それぞれの学校の創意工夫の過程が見える成果のプレゼンテーションであるなと新しい意味を発見することができました。

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2023年8月24日 (木)

2023年東京都私立学校展⑥東京私学集結の意味 人的資本の宝庫 内生的成長の礎

★東京の私立中学校・高等学校が集結する「私立学校展」は、人的資本が集結ているという見方もできます。あのコロナ禍の時代に、経産省が「⼈材版伊藤レポート」(2020年9月)において、人的資本経営の重要性を打ち出しています。それがもとになっているかどうかわかりませんが、今や経済界は、人的資本経営というのがトレンドになっています。付加価値を創造できる人材を確保及び教育投資をどれくらいしているかを公開し、株主や株式市場から支持を得ようという動きです。要するに人的資本は企業価値を持続可能もしくは向上させる重要なファクターというわけでしょう。

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★企業以上に教育は人的資本がものをいいます。未来を創造する子供たちの才能を開発する人的資本創造リーダーシップを発揮する教師がどれくらいいるかが、その学校の価値を決めると言っても過言ではありません。受験市場で、支持される学校は、教師力という名の人的資本は重要なファクターであることは今も昔も変わりありません。

★このイベントは、そのリアル人的資本を公開しているようなものなのです。

★ですから、最近改革の象徴として、過激なことをやってジャーナリズム受けする学校の校長が持ち上げられていますが、その校長の人的資本はあるかもしれませんが、そういう校長に限って、自分の学内の教師を変化に弱い、動かないといって、学内の人的資本がいなことをわざわざ宣伝するわけです(本当は、サイレントキラーにならざるを得ない状況を自ら招いていることに気づいていません)。教師の中には、うちの生徒はダメですよという方もいますよね。そういう教師は、自ら人的資本を創造できないという人的資本力の低さを暴露しているようなものです。

★ところが、このイベントに参加する理事長・校長・教師は、そんな人材は皆無です。自分たちの生徒がいかに人的資本を豊かにして内生的成長を果たしているか受験生・保護者と共有しようと、見事な対話力及びケア行動力を発揮しています。

★聖パウロ学園の教頭大久保圭祐先生もその1人です。自ら入試広報部長も買って出て、生徒といっしょにパウロを創る委員会を立ち上げ、毎朝8:05から行われている教職員の朝礼に、その委員会も立ち会わせ、共に学校を創っていくことをしています。

★パウロの生徒はとにかく主体的で、教師といっしょにイベントを開催したり、地域のために貢献するボランティアにも創意工夫しています。もちろん、自分のキャリア創造にも真摯に取り組んでいます。

★大久保先生は、一人ひとりの力を豊かにする対話力を新しく勤務する先生方にも共有する普段使いの対話を密にしています。それは生徒にも同様です。そして生徒も教師も、「自己組織化」できるチームに仕立て上げる天才です。

★今年の生徒募集の戦略・企画・運営においても、その力を遺憾なく発揮しているようです。どの学校のブースに行っても、このような若い力=人的資本と出会えるのが、このイベントのすばらしさです。

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2023年8月22日 (火)

2023年東京都私立学校展➄東京私学集結の意味 新機軸を教師と共に創る校長

★このイベントでは、訪れた受験生や保護者が驚き感動するシーンが意外なところにあります。入場案内で資料を配布したり、総合案内で多様な問い合わせに対応しているスタッフ(気づかない人にはそう見えるのです)は、実は各学校の校長先生なのです。妹を連れてきたお姉さんが、校長先生久しぶりです!と挨拶をするシーンはしばしばです。このイベントを主催している一般財団法人東京私立中学高等学校協会の常任理事及び理事は、当然東京の私立学校の理事長や校長先生がほとんどなのです。それゆえ、自ら最前線に立っているわけです。

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★ふだん学校では、理事長・校長は、あまり最前線にでてきません。組織上、最終意思決定者、決裁者ですから、リスクマネジメント上、偉そうにしているわけではまったくないのですが、偉い人というイメージがあります。

★しかし、この私立学校展は、自分の学校だけよければよいというのではなく、東京の私立学校が一丸となって、日本の教育の質を向上させていこう、生徒の未来をいっしょに創っていこうという心意気を抱きながらおもてなしをしようではないかという気概があります。ですから、こういうときは校長が最前線に立つのです。

★ある私学の校長などは、率先して具合が悪くなった子供たちを車いすに乗せて、待機室に連れて行っていました。その姿は、たしかに学校ではなかなか見ることはできないでしょう。学校説明会に足を運んだ受験生や保護者、OG・OBは、最前線でテキパキと活躍している校長の姿に感動の声を寄せています。

★もちろん、自分の学校の生徒募集も成功させなければなりません。自分の学校と東京の私学全体の一体化を図るにはそれぞれの私学が奮闘努力、創意工夫する必要があるのです。ですから、足立学園の井上校長のように自ら説明するためにブースに立っている学校もたくさんあるのです。

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★八雲学園の近藤理事長・校長も、東京私立中高協会の会長で、今回のイベントの総責任者ですが、ご自身の学校のブースにしばしば訪れ、受験生や保護者を迎え入れていました。

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★女子美の石川校長も同様です。本間さん、娘さんも奥様も女子美大のOGなんですってと声をかけられ、パンフレット一式のはいったアーティスティックなトートバックを手渡してくださいました。さすが大人気の女子美を先生方と生徒といっしょに形づくっている石川校長だと改めて感じました。

★STEAMの時代です。日本の工学系の大学は、MITのように芸術学部をもっていないので、東工大と女子美が連携してイベントをやったりしています。昨年、女子美術大学は、バンドン工科大学と連携もしています。たまたまインドネシアと日本を往復しながらアート活動をしている娘は間接的にですがそのかかわりもあり、インドネシア大使ご夫妻と女子美の美術展で交流していました。娘の展示を杉並の小さな女子美のギャラリーで行ったときのことです。

★娘のグローバルなアート活動は、女子美の大学での活動とその活動をベースにイギリス留学をした中で生まれてきましたが、リサーチアートという分野を開拓していて、グローバル教育とプロジェクトとICTは、彼女にとっても三種の神器です。女子美の中高大の教育のベースが反映しています。

★娘は、大学からですから、中学から入学していればもっと花開いていたなあと、パンフレットをみてニコニコしながら語っていました。ここは親バカですが、娘の活動は日経新聞や美手帖でも取り上げられ始めています。女子美の卒業生の活躍の一例にはなるでしょう。女子美の中高生は、そのほとんどが女子美大に進むので、娘の例はあたらずといえども遠からずでしょう(笑)。

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2023年8月21日 (月)

2023年東京都私立学校展④東京私学集結の意味 パスカル生誕400年を記念して講座を行える私学

★海城学園のブースは時間を決めてポスターセッション方式で学校説明。海城と言えば、ドラマエデュケーション、プロジェクトアドベンチャー、コミュニケーションWS、社会科卒業論文編集などなど。もちろん、グローバル教育も絶品だし、ICTの研究室みたいなカッコイイ空間もわすれてはいけません。やはり三種の神器はあたり前のようにあります。

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★では、その土台の上には何があるのだろう?それはあまりに多様で驚くばかりの学校。なぜなら、先生方1人ひとりが、大学の研究レベルの授業を中高生にわかるように(といっても下駄をはかせたりはしない)その構造を共有するからです。土台の上に先生の人数分の突出した学びが広がっているわけです。

★今年パスカル生誕400年。となれば、それを記念してリレー講座をやってのける教師がズラリ。

★それはいつもの授業の話ではなく、特別な講座でしょうと思われる方もいるかもしれません。ところが、ポスターセッションでは、中学での幾何の授業が普段使いで展開しているとおいうのです。しかも、その幾何を通してロジカルシンキングを養うのだと。生物だったら、仮説的推論の思考を学ぶ授業が展開しているようです(ここは私の推測。そのような独自教材があったので。それにそういうことは織り込み済みの先生方が海城の教師なので)。

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★理数に力を入れるにしても、パスカルのリレー講座を行っているというのですから、リベラルアーツ的な数理の格式の在る学びでしょう。AIは、リベラルアーツのうち幾何は、まだまだ人間には追いつけないと語る学者がいます。もちろん、受験数学のほうも遠の昔から当たり前の授業が展開しています。

★とにもかくにも、海城の教育は、このようなAIの影響(こういうことを本当は生成AIのリスクマネジメントにおいて考える必要がある)までちゃんと考えられていると感心しました。

★2027年の新学習指導要領は、数理資本主義を念頭に置いた改訂がなされるという学者もいます。AIの進化を見れば、それはあり得るなあと。海城学園の今までの改革の歴史を見れば、常に時代の精神の先を歩いてきたのですから、それもまた当然織り込み済みでしょう。

★東京中の私学が集結した時、各私学の経営陣は、他校の教育の魅力を観察しながら、明日の日本の教育を洞察しているのでしょう。

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2023年東京都私立学校展③東京私学集結の意味 三種の神器を統合した新しい教育

★駒沢女子中高のブースをのぞいたら、オーっと。高校から「探究×英語 Komajo Qwest English」を行うのだとありました。中高で、ハイレベルの英語教育、探究、ICTの三種の神器はすでに確立されています。ですから、その次は何か?生徒獲得戦略というより、生徒の言語的な発達理論にのっとって、当然生徒の才能開花への意欲を感じ取る先生方がいるわけです。

★ブースで女性の先生が明朗な説明をしているシーンに出合いました。幸せはうつると慶応大学教授の前野先生は語っていますが、なるほど説明を聞いていると、生徒たが語り合う中で、言語的理解を広げ深めていくウェルビ―イングな姿が思い浮かびました。

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★その先生は、土屋校長によると国語の教師です。そして土屋校長は英語が専門です。

★同校では受験国語や受験英語ももちろん指導していますが、そこに探究を掛け算することによって、駒沢女子の言語教育はリベラルアーツ的な様相を呈してくるなあと、土屋校長のお話をお聞きしているうちに感じました。

★中学の段階では、このような言語的素養を身に着け、高校からは英語で探究を行っていく。この成長曲線はおそらく指数関数的な弧を描くことになるでしょう。

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(図は同校英語クラスリーフレットから)

★当面は英語クラスで実施していくということのようですが、そのエッセンスは必ず学内全体に浸透していくことでしょう。そして、その影響は、中学にもやがてにじみ出てくることでしょう。

★幸せはうつるのですから。その兆候は、高校の人気同様に、中学もこの3年間膨らみ続けているというところい見え隠れしています。今後の駒沢女子の進化が楽しみです。

★やはり東京中の私立学校が集結すると、どこまでが共通する先進的教育かが見通せ、だからこそそれぞれの私立学校の新しいチャレンジングな教育かが見えてきます。

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2023年東京都私立学校展②東京私学集結の意味 新たな三種の神器へ

★イベント自体は10時から開演ですが、私学の先生方は早朝から準備に忙しいのです。東京中の先生方が集結し、すでに早朝からウォームアップどころからヒートアップしています。

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★富士見丘(女子校)もその一つですが、3人の女性の先生方の背景が目にとまりました。世界で活躍する「自信」を育てるとあるではないですか?自信とは信頼と表裏一体の強烈な言葉です。信頼のない自信は過信になってしまうからです。ともかく、女性の教師がズラリ、そして「自信」、さらに一面桃あるいは桜の花弁をイメージさせる背景の色彩。

★すごいなあと感動しました!

★富士見丘は、今や世界(オール国内外)の中高生に注目されている私立女子校です。なぜなら、高3卒業する時には、ほとんどの生徒が英検2級は取得しているし、高3の30%は準1級以上です。それだけで、進路については開かれるアドバンテージがあるのです。実際目覚ましい大学進学実績で受験塾も注目しています。

★しかしだからといって、世界の中高生が注目しているのではないのです。中学から徹底した探究学習がベースで、中3以降は、高大連携、海外の大学生・大学院生との連携により、PBLが行われていきます。ここで大事なことは、対話や議論をするということですね。対話や議論は、自由な心的知的な環境がデザインされていないとできないのです。先生方がファシリテーターだけでは、実はこれはできません。エッと思った方もいるでしょう。PBLというとファシリテーションだろうと。それはそうなのですが、これだけの連携の環境をデザインするには、心理的コンサルテーション(心理的とあえて付与したのはビジネスコンサルと違うよというサインのためにすぎません)のエキスパートでなければならないのです。

★さらに、ノートパソコンはコロナ前から一人一台でしたから、いわゆるSTEAMはシンキングルーチンのツールになっています。

★かくして、「高度な英語力育成」「探究プロジェクト」「STEAM」という21世紀型教育の三種の神器は、ハイレベルの水準に達しています。

★それゆえ、富士見丘の教育は三種の神器を目標にするのではなく、土台となっています。ですから、その土台の上に新しい三種の神器が生まれつつあるのです。

★それは何でしょう。まだ未分化状態ですが、女性の先生方がシンボルですが、本当の意味でのグローバル教育が1つあります。そのグローバルは「愛=ケア」にうながります。実は、フランス革命以降、民主主義のシンボルは「自由」「平等」「博愛」と呼ばれてきましたが、「博愛」に関してはまだまだ革命的な事態は生まれていないのです。これはおそらく教育の今後のもっとも中心的なテーマでしょう。富士見丘はこれが染みわたっている学園です。

★そして、PBLは教育業界で知らない人はいませんが、実はそこで行われるディスカッションの実態は誰もまだ解明していないのです。

★このディスカッションの質によって、「愛」も「グローバル」も相互に関連し上昇して拡大していきます。

★今回の私立学校展では、富士見丘の例のように、三種の神器を達成しようという動きがメインではなく、それはすでに土台になったから、さらに新しい三種の神器にシフトしていこうという転換点であることを示唆する学校のプレゼンが多かったのです。

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2023年8月20日 (日)

2023年東京都私立学校展①東京私学集結の意味

★8月19日(土)・20日(日)、東京国際フォーラムで「2023東京都私立学校展」が開催されました。熱中症や交通混雑を避けるため、人数制限がなされていましたがおよそ30,000人が参加。東京私学の人気が証明されました。

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(主催/一般財団法人東京私立中学高等学校協会・公益財団法人東京都私学財団)

★今回の私立学校展は、さらなる私立学校の教育の質の充実が、各学校のブースで発信されていました。同時に新しい動きが生まれているということも伝わってきました。新しいというのは、幾つかあるのですが、その一つが、参加者である受験者・保護者のニーズの変化に合わせたプレゼンが行われていたことです。

★新学習指導要領の議論がはじまった2015年ごろは、まだ多くの保護者のニーズが、〇〇大学に進学させるために役立つ学校はどこかというものでした。しかし、新学習指導要領が実施されはじめ、昨年高校の本格実施に到る過程で、自分の子どもの才能を開花し、その才能が発揮できるキャリアデザインを行っている学校を探すようにシフトしてきています。

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★その未来は、グローバルでイノベーティブで多くの仲間と協力して未来を切り拓けるプロジェクトによって可能だというのは、もはや当たり前になっています。

★したがって、英語教育をベースにグローバルな活躍ができるようになる教育はどのようなものか、1人1台のパソコン環境をどのようにデザインしているか、探究を中心にどのようなプロジェクト学習をしているのか、について各学校の特色あるカリキュラムやプログラムについて語られていました。もちろん、その結果として進路実績の話も欠かせません。

★要するに、今回の私立学校展では、すっかり、グローバル、イノベーション、プロジェクトは三種の神器になっていたわけです。

★2015年ごろとは随分景色が変わりました。したがって、東京私学のほとんどが集結する意味は、それぞれの私学の魅力を知ることができると同時に、私学の教育のダイナミズムが見渡せるということです。

★そして、今回重要なことは、この3種の神器をどの私学も当たり前のように整えたために、それ以外の新しい動きが芽吹き始めていることも察知できるということです。

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2023年8月16日 (水)

成城学園ふるさとの森 教育の新ビジョンの泉

★8月7日、教務運営研究会「夏期研修会」終了後、研究会の委員の1人である成城学園の青柳先生が帰路につかれている時にすれ違いました。明日から北海道に飛ぶというので、お気をつけてと別れました。目的は何かまでは、お聴きしませんでしたが、お忙しい日々、リサーチに東奔西走されている先生なので、おそらくそうなんだろうと思いつつ。そして8月11日に東洋経済ONLINEの記事「高校の部活は今、なぜ「登山部」が人気なのか?」に出合い、関心のあるテーマでしたからfacebookで即共有しました。あとでじっくり読もうと。すると、すぐに青柳先生からコメントがはいりました。

※参考→教務運営研究会「夏期研修会」の実施案内

委員) 委員長 井上 実先生(足立学園) 委員 星野 稔先生(目白研心) 大山 智輝先生(獨協)、足立 満先生(かえつ有明) 尾﨑 威史先生(朋優学院)、青柳 圭子先生(成城学園) 辰見 憲先生(中央大学杉並)金子孝太郎先生(本郷) 小俣 晶平先生(吉祥女子)

★「ちょうど北海道の大雪山を旅行中に高校インターハイの様子を見学することができました。生徒さん達は体力、知力、精神力の全てが磨かれ、また仲間と協力する経験から生まれた凛々しさが滲み出ていました。」と。そしてちょうど私が日ごろ森の教育について語っていたので、記事とインターハイの精神とシンクロするのではないかとありがたいことにフィードバックをしていただいたのです。

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(GLICC Weekly EDU 第104回「成城学園中学校高等学校ー探究が開く未来」では、青柳先生による成城学園の深い本質的な教育とさらに成城学園の未来ビジョンが語られています。)

★そして、青柳先生が大雪山を登山していたということは、成城学園の自然体験を重視している教育プログラムとも共振するのではないかというメッセージを感じました。

★そんな矢先、青柳先生のfacebookに、「成城学園ふるさとの森」の教育について情報がアップされていました。珍しくシェアがセーブされていましたから、「ともだち」限定になっているのでしょう。詳しくは述べられませんが、今後のビジョンが議論されているのだなと推理できる文面でした。

★そう思っていたら、青柳先生は、今度は、ともだち限定ではなくシェアができるこんなコメントを発信していました。

「成城学園中期事業計画の策定委員になり、これは絶対に勉強しなければと2年前に参加したリーダー育英塾。高大連携を中心に教育改革への問題意識を持つ高校大学の教職員の方々と多くの対話を重ねました。
そして今回は OGとして、今年度の受講生の方々の課題解決の方策を聴かせていただきました。
現場は違っていても課題は同じ。その課題を自分事として真剣に考える人達が隣にいる。同僚の先生方との一体感も大切にしたいけれど、それとは違うこのつながりがどれほど勇気を与えてくれることか。
リーダー育英塾の素晴らしさの全てを言葉にすることは難しいので、多くの人にこの体験を味わってほしいと思います。」

★ロールモデルエフェクトとピアエフェクトの掛け算の大切さについて語られているではないですか。なるほど、成城学園の魅力がこのような人材育成とリーダー育成のDNAのようなつながりによって生まれているのだと新しい気づきを得ました。

★また対話をお願いしたいという気持ちがますます高まってきました!

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日本テレビ 八雲学園が一流・本物の教育を脈々と続ける理由を明かす

★昨夜、日本テレビは「はじめまして!一番遠い親戚さん」で、小泉孝太郎さんの親戚・ルーツをたどる番組がありました。小泉家が政治家一族で、鳩山家や宮沢家など総理大臣の系譜でもあることがわかりました。文豪夏目漱石にもつながりがあることも。そんな中で、八雲学園の理事長校長近藤彰郎先生が登場したのは衝撃的でした。7分強近藤家の系譜をたどることにもなっていたからです。

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★孝太郎さんの7親等である章久さんが近藤彰郎先生の叔父であるということです。そこから、他にも学校を経営していた親戚がいることを近藤彰郎先生が説明するシーンもあり、小泉家の系譜をたどっているのですが、近藤家から見ると、小泉家の系譜は近藤家の系譜でもあるわけです。

★近藤彰郎先生が、よく章久さんから「和顔愛語」の大切さを聴いてきたが、そのような人材を輩出するのは、八雲学園の使命でもあると同時、孝太郎さんの表情や言動もその通りだから、今後も一ファンとして、頑張って欲しいと思いますとエールまで贈っているシーンが放映されていました。

★それにしても、近藤彰郎先生の出番は7分強(孝太郎さんのシーンは25分くらいでしたから約28%シェア)でした!政治と教育の両方について語れる近藤先生だからテレビ局、そして羽鳥さんはピンとくるものがあったのだと思いました。

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★そして、イエール大学との国際交流音楽コンサートをはじめとする一流で本物の教育を脈々と続けている理由は、その背景にこのような一流の系譜につながっている八雲学園だからこそということに気づきました。

★ご長男の近藤隆平副校長は取材されたときはカリフォルニア州のサンタバーバラで、八雲学園の留学生のサポートと教鞭をとっているので、テレビには写真のみでしたが、職員室で、近藤校長の長女亜紀先生と次男嘉彦先生も八雲学園で教師をしている様子が放映され、家族の集合写真も映し出されていました。近藤家の八雲学園の系譜は途絶えることはないという安心感がテレビ越しに伝わってきました。

★八雲学園はザ・私学であることを日本テレビは明らかにしたのです。ナビゲーターの羽鳥さんと近藤先生との対話がまたよかったですね。「和顔愛語」の雰囲気が地上波にのって広がった7分でした。

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2023年8月15日 (火)

クラウス・マケラと藤田真央 シン・モーツァルト

★NHK8月6日放送「世界が注目する若手音楽家」をたまたま途中から見ました。クラウス・マケラ指揮するモーツァルトの「レクイエム」全曲と藤田真央が弾くラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」の一楽章の途中まで。録画しておけばよかったけれど、友人から電話がはいり、頭が回らなかったわけです。

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★フィンランドのクラスス・マケラは1996年生まれ、藤田真央は1998年生まれ、どちらもZ世代。2050年の世界を創るアーティスト。クラウス・マケラのレクイエムは、荘厳というよりありのままの人間存在を微笑ましく表現していて、死者のためのミサの意味の新しさにクラシックもどこか変わったなと感じました。

★私の中で、モーツアルトと言えば、クララ・ハスキルで、彼女を称える国際コンクールで藤田真央が優勝しているので、レクイエムの次はモーツアルトのソナタを期待していたのですが、ラフマニノフ。チャイコフスキー国際コンクールで2位の藤田真央。ラフマニノフを流すのは当然かと思いつつ、友人と電話ではなしているうちに、昨年、藤田真央がモーツアルトのピアノソナタ全集を出していたのを思い出しました。

★聞こうと思いつつそのままにしていたので、電話を終えた後、放送は聞かずに、CDを聞きました。相変わらず、控えめな自由奔放さが、新しいなあと。

★クラウス・マケラといい、藤田真央といい、伝統的な演奏の枠組みの中で、見事に革命的な作品に仕上げています。シン・モーツァルトだなと。

★未来をネガティブに語る人が多い中で、このような二人の演奏を聴くと、ポジティブな未来が思い浮かびますね。二人の演奏を生み出すには、多くの人が、このシン・モーツァルトを生み出す多様なサポートをしているし、そのつながりは、もちろんビジネスになっていて広がっているのです。

★このような2人の演奏の背景には、どのくらいの人が関係しているかはかり知れません。そのようなネットワークが未来を創り続けているのです。教育改革や政治経済の改革を語る人が、このような2人の演奏の重要性に気づくかどうか。ディストピアとユートピアの分岐点はそのようなところにさりげなくあるのでは。。。

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2023年8月14日 (月)

テート美術館展で歴史総合?

★今年のお盆休みは、台風の影響を考えて自宅と都内の義母の家と都心でゆっくりすることにしました。ロボットが配膳してくれる中華に行って、今度孫を連れてこようと感心しました。もっとも、人手不足を補うためと、実は料理をテーブルに並べたり、皿を返したりするのはセルフサービスですから、ロボットをサポートする側に、つまりお客であると同時に労働もする側でもあることに、合理化の静かなシステマチックなというか、アフォーダンスが埋め込まれていることに気づき、苦笑したりもしました。これを越境という名で、店側と客側のラインが曖昧になるのは、AI時代の当たり前の生活になるのだなと。

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★次の日は、国立新美術館にテート美術館展を見に行きました。テーマは“LIGHT”。ディスプレイを順番に見ていくと、産業革命時代のターナーの絵から印象派になりそれがバウハウスにも枝分かれし、そこからモダンアートになっていく歴史的なパノラマになっているのはわかりやすくかったなあと。

★“LIGHT”をどう捉え、どのよな素材で絵に転写していくのか、そこにはテクノロジーと感覚の共創があって、その変化が歴史の物語の中で変容しているのがおもしろかったですね。

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★それにしてもターナーの淡い光の広がりは、たしかに印象派に意図してか意図していないかはわかりませんが、時代順で並べられると引き継がれているようにも見えました。光と言えば、印象派ではモネですが、私は、アウマン・ギヨマンの前でしばし佇みました。モネよりもう少し輪郭がはっきりしているというか気象変動にかかわるような天候と光の絵がなんか懐かしくて、気に入りました。

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★しかし、ターナーが、透視図法を描いて実験的な方法を、学生に講義するために作成した図(写真は禁止でした)を見て、こんなに数理的な足場づくりがあってあのような光の絵になっているのが、なんだか産業革命時代という流れを感じました。もちろん。ダ・ビンチはすでに試みているので、ターナーが特にということではないのですが、サイエンスというテクノロジーがダ・ビンチ時代より明快に存在していたので、衝撃は大きかったのです。

★たしかに、モネやジョン・ブレットなどの印象派の絵に結びつくのは見ればわかるのですが、この透視図法を見なければ、バウハウスにも影響しているのかというつながりはわからないままでした。

★産業革命時代だったわけですから、モダニズムにつながるのは当然ですが、アートの世界にもあるわけですね。そして当然、テクノロジーの変化だけではなく、神話から人間、世界観から自然、自然から社会、社会から日常生活、日常生活から再構築へとコンテンポラリーアートへの変容が、その背景に18世紀以降の近代の進化なのか変容なのかわかりませんが、AI時代が生まれる前夜までのイマジネーションが妄想として広まりました。

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★テート美術館もそうですが、海外の美術館の所蔵品はとにかくたくさんあるので、時代順序でディスプレイされると、歴史の変化というか人間の認知や意識、テーマの変化を見ることができるので、おもしろいですね。

★こういう見方は、しかし美術の先生と来るとそうはならないかもしれません。もっと素材や材料やモチーフ、描写のメソッドなどについて聴くことができるかもしれません。そのメソッドの変化が歴史の変化にどのように相関しているのかミクロの眼差しを感じられるかもしれません。

★美術館というのは、企画によっては、深い学びにつながるのかもしれません。もっとも、単純に楽しければそれでよしですね!

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2023年8月13日 (日)

「歴史総合」を大学入試という側面から考えるか世界に向き合う自分として捉えるか、両方をめざすのか?

★2022年から高校の学習指導要領は新課程になっていて、「歴史総合」などの新教科が必修科目になります。旧課程の「世界史B」など山川の教科書1冊の中に収められてきた近代から現代までの歴史が1冊として独立するわけですから、単純に知識量が激増するのは火を見るより明らかです。共通テストでは、世界史を選ぶ場合「歴史総合+歴史探究」となるわけですから、大学入試という側面から考えると、暗記ではなくコンピテンシーベースだなだといわれても、ふざけるな!となります。

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★しかしながら、第二次世界大戦後、軽視されてきた世界と向かい合う自分が世界実践をしながら生活していくものの見方や考え方を身に付ける学び方に転換すると捉えた場合、小川幸司さんの書籍にあるように極めて意義ある機会になるわけです。

★しかし、両者の考えはどちらも一理ありますよね。東洋経済education × ICT編集部2023/08/12の次のような記事「大学入試は「歴史総合」が潮目、高校授業に期待する「歴史実践」の神髄は ルーブリック採点など工夫、正解つくると危険」などは後者に偏っているので、後者の考え方をする先生にとっては我が意を得たりという感じでしょうが、前者の考え方をする先生にとっては、現場とか現実を知らなすぎるということになります。

★私は、生徒が上記の写真にあるような本を読みながら、暗記するのなら、暗記も大いに有効ではないかと考えます。そもそも暗記は思考作用の1つですから。暗記というより記憶ですね。短期記憶がなければ、生活できないでしょう。私はついに65歳を超えていますから、この短期記憶機能が落ちているのに生きることの不安を感じないわけではありません。中長期記憶も必要ですが、こちらはいわゆる論理的思考とか言われる方の記憶作用でしょう。

★脳科学からみれば、暗記というレトリックで表現されている脳の作用を行う部位は使わないと脳機能は劣化するし、思考というレトリックで表現されている部位についても同じことがいえます。

★教科書は、脳作用を効果的に使う素材や材料です。脳の作用を多角的な刺激を与えるために、教科というのがあるのでしょ。言語知、数理知、アート知、社会知、時空知。。。いろいろあるでしょう。社会科は、どちらかというと社会知や時空知かもしれません。そしてその学びの過程でツールになるのが言語知だったり、数理知だったりするのでしょう。

★脳の作用として知があり、その知は脳の作用を促す道具に転換する時もあります。

★共通テストも人間力のうちの脳の作用を多角的に刺激する機会であるというわけです。

★別に大学に行かなくても、脳の作用を刺激する機会は多様にあります。進路を考える時、大学にこだわるのは、ざっくり高校生の50%です。残りの50%の生徒は、何も歴史総合という材料をすべて活用する必要はないのでしょう。

★教育改革者や大学入試改革者は、その多くが大学出身者ですから、そうでない生徒のリアリティを見ていないのは、しかたがないことかもしれません。

★大学に行くにしても何も一般選抜でなければならないということはないのです。でも共通テストを前提にして議論される時は一般選抜の話が中心です。

★いわゆる超難関国公立私立大学を受験する高校生にとって、「歴史総合+世界史探究」などの勉強は得意不得意はあっても、実はあまり問題ではないのです。歴史観や歴史の捉え方をそもそも自ら創ってしまえる環境がありますから。新書や大学の1年くらいのテキストを読むことも苦でないわけです。先ほどの東洋経済の記事もそのような生徒を想定しているわけでしょう。

★しかし、そうでない、つまり偏差値でいえば50いかない生徒の場合はどうしたらよいのでしょう。そもそもなぜ50に手が届かないかというと、小中学校の時、あまり読書の習慣がついていなかったというだけのことなのです。でも、この習慣がないと、茶の世界史や砂糖の世界史、チョコレートの世界など「社会史」的あるいは「文化人類学」的あるいは「アナール派」的な世界史のものの見方や感じ方を読み解く忍耐力がないのです。

★でも、その能力をもっていないかというと、そんなことはないのです。ただ、新書を読む習慣が身体化していないのです。大学に行ったら、それはちょっと困りますよね。そういう場合は、「社会史」「文化人類学」「社会学」「哲学」などなどのものの見方や考え方をトレーニングするといいのです。それが文献を読んでいく足場づくりになります。

★もちろん、一般選抜に間に合わない場合があるので、総合型選抜でいくということも考慮に入れます。さて、ものの見方・考え方・感じ方をどのようにトレーニングするか。

★歴史総合は「近代化」「国際秩序の変容と大衆化」「グローバル化」の3領域を学ぶことになっています。したがって、この3領域に共通するものとその変化(パラダイム転換)について、どう考えるのかワークショップを行っていきます。

★15回×90分やれば十分ですが、その3分の1でも開花する生徒はいます。

★たとえば、15世位くらいのフィレンツェの社会状況の断片情報を出して、ラテラルシンキングの方法で対話をしていきます。大航海(世界貿易)、遠隔地商人と金融業の市場、都市の政治と教会法のぶつかり合い、マキャベリの思想の背景やマキャベリの理想の君主モデル、ルターの宗教改革おこるきっかけ、オランダとイギリスの台頭などが、集約された時代です。ダ・ビンチやラファエロ、ミケランジェロもでてきます。

★シュンペーターではないですが、13世紀から15世紀にかけて、すでに近代の世界システムが芽生えている可能性大なので、大塚史観やウェーバー、アナール派、社会史、社会学、文化人類学、哲学など持ち出さなくても、生徒なりに理論を生み出します。

★もちろん拙いものがほとんどですが、自分なりにレンズをつくるのです。仲間と対話しながら、Peer Effectは増大して、そのレンズを再構築していきます。

★1689年、1789年、1889年、1989年という100年刻みで起こることが、すでに13世紀から16世紀に蓄積されています。そう考えるのも一つのものの見方にすぎませんが、専門家になるわけではないのですから、自由なものの見方を自ら創ることが興味と関心を抱くことにつながります。

★世界に向き合う自分を見るには、そういう妄想だったり独善的だったりするレンズが必要です。ただし、対話によってそれを脱構築していくマインドセットは必要ですね。

★もちろん、歴史学者になるのなら、妄想であってはだめでしょうけど。しかし、一般選抜で暗記の方法なんていうのは、それぞれコツがあって、独自のものでしょう。なぜ思考だけが独自のものであってはいけないのでしょう。そんなことないですよね。

★ルーブリックのデメリットは、この自由を奪うことですね。正しいとかいう表現でものの見方や考え方を押し付けかねないのです。

★それなら、暗記をする学びの方がよほど自由ですよ。とはいえ、暗記も覚えたこと以上に何も生まないという場合の方が多いので、それはそれは困ったものです。

★そうそう、歴史総合において、「新しい学校のリーダーズ」という日本の4人組ダンスボーカルユニットのエンターテイメント市場の新しい意義を、そのビジネスモデルを解明しながら考えることはいかにしたら可能かから始めても面白いかもしれません。彼女たちのグローバルな活動はまさに歴史実践の1つです。グループのコンセプトは「模範的なヤツばかりが評価されるこの時代、くだらない不寛容社会から、個性と自由ではみ出していく」。そのようなことが人気を持続することが可能だとしたら、この現代の歴史をどう受けとめたらよいのでしょう。

★一遍上人の発想に、現代の盆踊りを重ねる歴史家や民俗学者がいるように、彼女たちの芸能活動が、グレタさんの活動と重なるかもしれません。アプローチは全く違うけれど。

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2023年8月12日 (土)

グローバルアントレプレナーシップというグローバル教育の時代 21世紀型教育の場合

★国際理解教育、国際教育、グローバル教育という概念は、ユネスコや米国で生まれたとされています。また、教育課程上は、「国際科」などで使われる「国際」は単位が関係する高等学校の学科の名称として使われています。高等学校設置基準とうい文科省の省令で規定されいるものです。グローバルコースといっても、あるいはインターナショナルコースといっても、それは私立学校などによる教育上の名称で、単位については全日制の枠内であることに変わりはありません。

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(図の背景はBing作成)

★したがって、言葉は同じでも、使われ方は領域によって、人によって違います。ですから、21世紀型教育を推進している学校で「グローバル教育」については、定義づけとまではいきませんが、どんな意味で使っているのか明快にしておく必要はあります。

★今、21世紀型教育を推進していると明確に標榜している学校(「以降「21校」)のグローバル教育の共通点をまとめたものを図解すると上のようになると思います。

★21校は、体験やフィールドワーク、実験などに浸ることを重視しています。言語化や可視化する前に、五感を研ぎ澄まして、身体と共振する循環を探知します。冒険やボランティアや研修プロジェクトが多様です。

★幼児期から蓄積してきた身体知をさらに豊かにしていくことを大事にしているわけです。この身体知は非認知能力などと言われれもしますが、もう少し広い意味で使われています。身体知は、常に自然と社会と精神がつながったデフォルトモードになっています。

★この身体知を初等中等教育で汲み上げないで知識偏重教育を行ってきたため、人間力形成にゆがみが生じてきてしまったのが20世紀型教育です。そのゆがみが明快になってきたのが、20世紀末から21世紀初頭で、特に日本では2011年3月11日にそれが明らかになりました。それゆえ、20世紀型教育から21世紀型教育に転換するダイナミズムが生まれました。インターナショナルという国境を前提にした教育から、国境なきOne Earthとしてのグローバル教育への転換が生まれたのでした。

★身体知は、幼少期から初等中等教育にも連続するというのは、先述したように、この身体知が、ローカルの時空に位置しながら、One Earthに開かれた知がデフォルトモードとして成長し続けるからです。21校が生徒の興味と関心を大事にするのは、この興味と関心こそOne Earthに開かれた生徒1人ひとりの個性である身体知が欲求するものであるからです。

★そして、このデフォルトモードになった身体知を刺激して言語化や可視化、その他の表現知に変換していくのが、アート知、言語知、数理知、時空知、社会知などです。当然これらを関係づける時にデジタルトランスフォーメンションは重要です。最近では特にAIですね。

★そして、これらの知が統合される行方は、グローバルアントレプレナーシップです。自然と社会と精神とデジタルが循環するのを妨げる社会解題を発見し、解決行動を行っていくプロジェクト。それからそれを実現する実務力も必要です。そして、これらを統合する発想力も。

★そうそう、ここで「知」というのは。「知=システム思考×SELが生み出す知性と感性の連合体」です。

★社会課題の解決は、対症療法ではなく、根本的な解決策が必要な時代です。対症療法の蓄積が社会課題を集積し、世界のネガティブな激動を生み出しているというのは説明するまでもないでしょう。対症療法も必要ですが、それだけでは困ります。そんな根本的な解決を果たすのがグローバルアントレプレナーシップというメンタルモデルを駆動力とした多様なプロジェクト出動なのです。

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2023年8月10日 (木)

阿部先生と対話 通信制でここまで本質的な学びに集中してカリキュラムマネジメントをするのかと感動

★先月までに、文科省は「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」のミーティングを6回終えています。その議題の一つに、通信制の望ましいあり方について議論されています。望ましくないことがあるからそれを是正するというのがメインなのでしょうが、制度的整備は必要ですが、通信制のウェルビーイング教育の実践をリサーチしていないのが残念です。その実践にこそ、通信制だけではなく現代日本の教育の希望があるのですが。

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(イラストはBingが作成)

★聖パウロ学園高等学校は、全日制と通信制エンカレッジコースが併存しています。校長は小島綾子先生。全日の良さとエンカレッジの良さを統合してパウロらしい教育の精神を共有しています。

★そして、その精神を現場で実践しながら広げ深めている教師の1人に阿部先生がいます。エンカレッジの生徒の身体知にねむる自分らしさを覚醒し、最終的には言語化へアウフヘーベンすることを実践しています。体育科の教師であると同時に、フッサールやメルロポンティの哲学の研究者でもあります。この秋学会で発表することになっているようです。

★おもしろいのは、デジタルを生徒と共に使いながら、自己に向き合い、他者との関係をつくるかけがえのない存在の気づきを生み出していきます。身体知を覚醒するには、アルティメット、園芸、農業など自然や社会の種の領域で生徒と共に活動します。農作物を使って食育もやっています。

★もちろん、阿部先生一人でやっているのではありません。エンカレッジの先生方は、学会で自分の論文を発表したりするほど、通信制のエキスパート教師です。ただ、阿部先生はエンカレの頭脳とみんなから呼ばれ、コンサルテーションも得意です。身体知を覚醒できるチャンスとしてハンドベルクワイア―の活動もあります。顧問の先生方のサポートは絶大で八王子エリアでは、ハンドベルクワイアーは大活躍しています。その響きは老若男女の心をしみじみとした感動に導いているという感想をたくさんもらっているほどです。

★アフターコロナというのもあって、キャンプも行っています。パウロの森という自然の中で活動をして自然の息吹に呼応して睡眠にはいるわけです。ビフォー・アフターの輝きは他の活動と同様です。

★かつて、私が同校校長だった時代に、阿部先生とは、ペットボトルに水やコーラーをいれて、心に見立てて、自分を見つめる、他者を見つめる、心理学的というか哲学的なコペルニクス的転回授業を行い、感情の起伏をグラフに表す、身体知を可視化するワークショップをいっしょにやりました。かけがえのあに存在の実感。そこにいまここ存在しているのは、自分でしかないという実感。阿部先生とはそんな対話が事前事後にできました。

★その後、社会科の先生とコラボして阿部先生は、倫理の時間に自分と他者の関係を哲学的考察をするワークショップを行い、いよいよ言語化への挑戦をしていました。強烈に興味深い授業でした。

★こう書いていると、阿部先生が中心になってエンカレッジは動いているように思われるかもしれませんが、以上のような教育活動は実にフラットなのです。それぞれの持ち味を生かしながら、対話が充満し、阿吽の呼吸で動いているのです。

★エンカレの経営は小島校長ー竹内教頭の垂直構造のラインの秩序が美しいですね。その周りをフラットに上昇気流に乗って教育活動がダイナミックに動いています。

★その機運は、対話が充満していることですね。しかし、この対話のシステムがいわゆる全日ではなかなか遂行されていない対話の構造なのです。哲学や心理学、文化人類学、社会学、自然科学的思考など、それぞれの教師の持ち味が化学変化を起こして生まれている対話の構造です。

★この解明を学会で発表していくのが阿部先生をはじめエンカレの先生方ですね。こんなことができるのは、進学実績競争など他者との比較をする環境とは無縁だからということもあるでしょう。このような通信制の役割は、学歴社会を修正する望ましい姿でもあるかもしれませんね。

★ともあれ、教師は研究者であって、研究者は教師である。そしてアントレプレナーである。阿部先生もこんなザ・教師です。このような若き教師がいるのは、日本の教育にも希望があるのですよ。

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2023年8月 9日 (水)

ウェルビーイング教育についてメモ「幸せはうつる」 前野隆司教授の講演から

★先日の私立学校専門研修会・法人管理事務運営部会で、前野隆司教授(慶応義塾大学)が基調講演をされました。「幸福学から紐解くウェルビーイング実現に向けた組織と職場環境づくり」が題目です。興味深かったのは、幸福を経営学、予防医学、経済学、心理学など多角的なアプローチで論じていたところでした。

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★印象的な言葉は、「幸せはうつる」でした。同時にネガティブファンタジーもまた感染していきます。幸せを学校の中に、教師の内面に、生徒の内面に生み出すのは言うまでもなく重要です。

★それにしても、経営学から見ると、人的資本の在り方に幸せがやどるようにするのが、昨今の流れだということです。学校現場では、教師や生徒のかけがえのない価値を引き出すことです。

★それには、ハラスメントや抑圧的言動は避けたいですね。

★幸福感の高い社員の創造性は3倍、生産性は31%、売り上げは37%高いということでした。

★生徒募集の時、広報のメンバーや説明会でプレゼンする生徒がウェルビーイングな様子で語る姿を見せると、まさに「幸せはうつる」で、その場でこの学校に行きたいと共感されるのはたしかにあるあるです。

★経済学のあるケースでは、年収が800万からは感情的幸福は横ばいで、それまでは相関していると。ここは経済学と教育学のちょっとした差があるかもしれません。私立学校によっては、貧しきものは幸いという精神があったりします。

★この違い、さりげないですが、近世のフィレンツエでは、大問題でした。

★このさりげない差ですが、世界に目を向けると、今でもやはり大問題ですね。

★ウェルビーイングというコトにおいても光と影があるのはしかたがないのでしょうか。人間とはなんてすさまじい劇的な存在なのでしょう。教師は、その存在のすまじさに日々向き合っています。学校におけるウェルビーイング。そう簡単ではないですね。にもかかわらず、チャレンジする。この進取の気性の精神と気概。おっせかいだとは思いますが、応援しなくては。

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私学教育の市場を多角的に考えていく時代

★私立学校の教育は、教育の魅力と教育の経営の両輪で成り立っているのは言うまでもない。したがって、助成金をもらいつつも、市場の原理を無視することはできない。公立学校の教育も、中等教育学校の適性検査や高校入試があるわけだから、相対的に動きは小さいと言えども、市場の原理を無視できない。とはいえ、市場の主導権を握れるかどうかという点では、私学と公立とでは違いがある。したがって、ここではあくまで私立学校の教育の市場に関して妄想する。

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★市場を構成するプレイヤーはたくさんあるが、ここでは、影響大の4つのプレイヤーで現状の4つのシェア関係の絵を描いてみた。「私学教育」「インターナショナル教育」「グローバル教育」「中学受験」が4つのプレイヤー。

★インターナショナル教育とグローバル教育がどう違うかは今後述べるとして、差異があるということだけここでは確認しておきたい。この差異が現状では無視されているので、受験生・保護者が学校選択の時にミスマッチングを行ってしまうことがあり得る。

★また、中学受験市場と私学教育における中学入試市場も差異があるのであるが、入試の時点でのその差異は見えない。それぐらい私学自身が中学入試市場を大胆に創出していないということである。

★それが入学後になると、中学受験市場の影響シェアは小さくなる。広告や学びのセミナーのサポート事業をするも、それはむしろインターナショナル教育市場やグローバル教育市場の学びのサポートや研修が圧倒している。

★何より、教育の中身については私学が圧倒的に主導権を握っている。

★しかし、私学の経営の資産を決定づけるのは、入試市場においてである。ここでは主導権を握っていないため、中学受験市場の煽りを受けて、その影響が教育内容に及ぶこともある。

★グローバル教育をやろうとすると、それに対し、受験市場側がベガティブな声を上げる時もある。宗教教育を行っていると、宗教をやめたほうがいいとまで圧力をかけてくるプレイヤーもかつていたぐらいだ。

★総合型選抜をやっていたり新タイプ入試をやっているとやはり同じような声が聞こえてくる。総合型選抜や新タイプ入試は、実は私学教育が主導できる市場創出ではあるので、中学受験市場にとってはうまくないということもあるので、感情的になるのであろう。

★というわけで、現状の私学を巡る市場のプレイヤーのシェアをどうするか考える時がやってきたのである。少子高齢化、日本の経済基盤のシフトなど、現状の市場がこのままでいくわけはないので、私学の教育の経営基盤をどうするか、それにともなってシン市場における魅力をいかに反映するか教育内容も変わらざるを得ない。

★教育の変化は、学内の問題というより、市場変容の問題と受け止める時代がやってきた。

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2023年8月 8日 (火)

法学部離れの意味するコト

★大学ジャーナルONLINE2023年8月7日、小林哲夫さんのこんな記事が掲載されています。「大学ランキングからはわからない大学の実力」がそれです。東大は学歴社会の頂点のポジショニングをとっていて、隆々たるものと世間では思われているけれど、中身は変化が起きていますよと。だからといって、東大のポジションが変わるわけではないのですが、東大といえば文Ⅰ、理Ⅲだけれど、文Ⅰの志望者が、文Ⅱ・Ⅲにひっくり返されそうだと。

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★その理由は、日本社会における法学部離れなのだということが小林さんのたぶん眼目で、法曹界や国家公務員が手薄になると日本社会はどうなるのかという不安社会の到来がやってきたということなのかもしれません。

★確かに当面はそうですが、司法試験の受験者数は2011年ころから減少し始めています。新しい司法試験制度が問題だと騒がれてもいました。東大のシンフリの段階で、文Ⅰから法学部に進むのが90%を切るのが2012年からのようです。

★実は、このころ東京の私立学校で21世紀型教育が産声をあげ、欲望の資本主義や古い近代国家観が揺らいでいる中で、未来社会を生徒たちが将来創っていけるような知と感性とイノベーションやアントレプレナーシップなどを生み出すシンリベラルアーツシステムを創るダイナミズムが起きています。

★教育ジャーナリストの多くは、社会学や文化人類学の視点からそのような私立中高一貫校の動きを見ませんから、大学合格実績の推移や出願数の推移などのデータのみで、教育を語ります。VUCAのような社会の動きを画一的にとらえる社会の変化を表す定型的言説はかたりますが、それらのデータとの結びつきをあまり分析しません。

★数字が急激にあがったら、加熱だといってネガティブにたたくし、下がったら不安を煽ります。不安社会であることが彼らにとって大事なのかもしれません。

★わかりやすいデータを使って、推論の梯子を行ってしまうものだから、真摯に教育の質を磨いている私学の教師一人一人の努力や情熱に水をかけます。もっとも私学人はそんなことに動揺はしませんが。ただ、受験生やその保護者は不安になりますよね。だから、まずは、私立学校にダイレクトに足を運んでいただき、対話をしていただきたいのです。

★生活というのは、生きるというのは、ミクロの中に神が宿るものです。粗野な一般化されたデータは、時代の背景を読み取るには参考になりますが、生きるということは、いまここに未来を見出すことです。

★法学部離れとか、国家公務員離れというのは、今のままなんとかする対症療法ではなく、かといってゆうくりではなく、すみやかに根本的な課題を明快にして、解決していくことでしょう。しかし、制度的解決は時間がかかりすぎます。2050年に解決するには、今の中高生がそのときに活躍できるように才能を開発し、イノベーティブな道具やスキルを実装できるような教育を実行することです。

★時間がかかりすぎるではないかと思うか、わずか25年前後の速さで変わるのかと思うかは、それは考え方の違いに過ぎないでしょう。

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私立学校の教師はアントレプレナー。生徒の才能という無形資産を生み出す「ザ・教師」

★この夏は、日本私学教育研究所や東京私学教育研究所のサポートする私学の先生方で構成される多様な委員会が企画運営している研修が目白押しです。すべて参加することはできませんが、参加したり見守ったり。そして改めて気づいたことは、私立学校の教師はアントレプレナーだったということです。

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(画像はBingが作成)

★昨今、ウェルビーイング経営ということが叫ばれています。どうやたっらウェルビーイングか?その中心に人材育成というのがあります。それは以前のように、決められた業務のスキルアップやリスクリングということだけではありません。スタッフ一人一人の才能を開発し、イノベーションが生まれてくるようなクリエイティビティを大切にする育成です。

★このように育っていくスタッフのことを人的資本なんで呼ばれていますね。

★学校にはなじみがないというか、もしかしたらアレルギー反応を起こす先生方もいるかもしれませんが、生徒も人的資本として育成しているのが私立学校です。

★企業と違って、目標の有形資産を生み出すわけではありませんが、間違いなく生徒1人ひとりの才能開発は将来有形資産を生み出す無形資産を生み出しています。

★研修はそのためにどんな学びの環境をデザインするのか、その環境を運営する資金を捻出する経営を創意工夫するにはいかにしたら可能か、そのような環境に衝撃を与える危機を管理するリスクマネジメントやリーガルマインドをいかに学ぶかなどそれぞれの委員会でテーマを決めて研修が行われているのです。

★まさに私立学校の教師のアントレプレナーシップが溢れ出ている今夏です。

★このような創意工夫とリスクマネジメントで生徒を安定的に獲得していくのです。私立学校の教師は1人ひとりが経営的視点やアイデアももっているのです。アントレプレナーでありイノベーターなのです。つまり「ザ・教師」です。

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2023年8月 7日 (月)

日本私学教育研究所主催 法人管理事務運営部会 ウェルビーイング教育

今月4日、品川ビジョンセンターで、一般財団法人日本私学教育研究所主催の「法人管理事務運営部会」の研修会が開催されました。テーマは「魅力ある私学の働き方~ウェルビーイングを実現させるために~」。校長・教頭も参加していましたが事務長参加者のほうが当然多い学校の経営部門のメンバーが中心の研修です。

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★企業のウェルビーイング経営は、世界的な動きです。コロナ禍のときに、健康概念が再注目を浴び、身体的、精神的、社会的な健康のトータルな状況が良好であることが明快に要求されるようになりました。

★この「良好な状況」という英語が“well being”だったわけです。しかし、この述語が、健康を包摂する名詞「ウェルビーイング」として前面にでてきたわけです。病気を治すことが健康の状態になることだけを意味するのでhなく、身体的、精神的、社会的となると、それらを害する要因は、ウィルスとかケガ以外に、組織の中で起こることがむしろ日常です。

★身体的健康とは、血液、神経、ホルモンの循環不良や筋肉や脊髄の機能劣化などを良好な状況に回復し続けることですが、この損傷は、大きな打撃ばかりではなく、日常の生活の中で生まれます。そのほとんどが仕事とそれを共に行う人間関係の負荷からきます。

★この負荷は、精神的健康にもダメージを与え、社会的関係にもゆがみを生み出します。

★結局は人間関係です。この関係があるのは、何も企業だけではありません。組織すべてにあてはまります。集団があるところにはすべてあります。となると、家庭や学校も例外ではありません。

★いじめ防止対策推進法、ハラスメントに関する法律、LGBTQ理解増進法、働き方改革関連の法律、障害者差別解消法など、組織の人間関係を阻害する事態を抑止・予防する法律が次々と施行されているのはそういうわけです。

★そして、これらの法律適用は、学校も逃れることはできません。

★しかし、何より大事なのは、法律は訴訟にならないと機能しないのです。多くの場合は、訴訟になる前の人間関係の在り方に問題があるものです。価値観のずれが、感情のずれが、思考のずれなど、コミュニケーションで生じる小さなズレの蓄積が健康を害する大きな問題になります。

★このズレをお互いに認識し、尊重し、どう修正していくか、第三のアイデアをどう創造していくのか。それがウェルビーイングの道だなとつくづく感じ入りました。

★結局、デザイン思考だとか創造性だとかは、そのズレに気づき、それをなんらかの形で解消しないのに、どちらか一方のアイデアが優先するようなことのないようにするメタローグだったのでしょう。

★気づきの多い研修でした。

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教務運営研究会「夏期研修会」行われています。

★本日9:00~16:30まで、アルカディア市ヶ谷で、教務運営研究会「夏期研修会」が行われています。各学校の現場で生徒の未来を創る環境デザインやサポートを中心的にマネジメントしている教師が100人集結して、一日中語り合う研修会です。生徒の未来を創る仕事とは、近代の幕開け時代の大航海さながらです。あるいはケネディー大統領が断行した月へ宇宙船を飛ばすムーンショット計画さながらの偉業です。したがって、波風や嵐を乗り越えるGRIT、そして途方もない宇宙計算をするイノベーションが必要です。大航海時代は、それは羅針盤と造船技術だったでしょう。アポロ計画は、コンピュータ技術と航空工学だったでしょう。両方に共通するのは、エネルギーをどうするかということでもあったでしょう。生徒の未来を教師が一丸となってそして生徒と共に創る計画は、それら以上の冒険です。

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(写真は足立学園のサイトから)

★そんな冒険の計画について情報交換、共有、そしてアイデア出しを今まさに行っている最中です。

★その合間で、教務運営研究会委員長井上実先生(足立学園校長)のお話をお聴きする貴重な機会がありました。アフリカスタディーツアー断行の校長の意志決定の際の情報収集のあり方、意識の高い教師のモチベーションを持続可能にするための対話の方法、最終的にリスクマネジメントをどうするか、校長の使命と役割と実行力についてお聞きすることができました。

★また、私立学校の教育の質をどのように公平に教育産業の方々や受験市場に広めるか、マーケティングや新しいブランドづくりへの努力の仕方についても情報交換ができました。

★まずは、足立区で足立学園が、生徒が自ら才能を発見しそれを発揮し、未来創り技術を実装するのか、モデル校として自らが挑戦していくのだと高い志をお聞き出来ました。

★私学人はこのような高邁な精神をもち勇気をもって断行する人物だと改めて感動しました。そして、この気概と言動/原動力こそ、アントレプレナーシップの鑑ではないかと確信したのです。

★100人の先生方は、今回互いにそのような気概と言動/原動力が自分たちにあふれていることを再確認する熱い一日となるでしょう。

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海外大学進学準備はグローバルアントレプレナーシップが育成される

★先週金曜日、<GLICC Weekly EDU 第139回「世界への扉を開く!ー 小中学生からのグローバル進学準備」>ありました。本番組の主宰者鈴木裕之さんは、9月号の「shuTOMO」で、グローバル教育について斬新な記事を寄稿します。その予告編でもあり、編集する前提やその背景について鈴木さんは語っています。

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★受験業界の一般的なグローバル教育の取り扱い方は、海外大学合格実績、英検のレベル、海外研修旅行や留学についての事実の報道が中心です。学校当局は、なぜそのようなグローバル教育を行っているかその意味付けをしていますが、その意味付けについては、それほど取り扱うことはありません。扱ったとしても、その学校の担当の先生の言葉として収めてしまいます。

★しかし、時代を見据えているグローバルな政治・経済・教育全体のダイナミミズムについて語られていることは少ないのです。政治や経済の動きはVUCAのような定型的な話をして(私も使いやすいので使いはしますが)、いきなりだからグローバル教育なのだといビジョンの立て方が多いのです。

★鈴木さんは、もちろんそのような話もしますが、それが生徒の学びにどんな影響を与えているのか、あるいは学びの変化が同政治や経済に影響を与えるのかということまで語ります。

★政治や経済におけるグローバルな動きを語ることはもちろん大事ですよ。しかし、教育の現場における、もっというと生徒の学びにおけるグローバルとはどういうことなのか、その意味付けをする必要が、実はグローバルな時代におきていることなのです。

★詳しくkは、動画をぜひご覧ください。

★そうそう、私は今回目からウロコだったのは、海外大学進学準備は実はアントレプレナーシップ育成そのものだったということです。そりゃあ大学の価値が自分ごとになるわけですよ。

★おそらく大学進学が、将来の自分が政財官学など外部からどう評価されるかという価値が中心的である国内大学進学教育とは違いますね。もちろん自分ごとの価値とは、市場において支持されるかどうかですから、独断と偏見価値ではないのです。しかし、市場で支持されるような自分とは何だろうというのは、自分でマネジメントできるのです。

★ところが政財官学からの評価の視点は、自分で考えたり創造したりすることはできないのです。つまり、交渉ができないわけですね。

★総合型選抜が、その壁を崩す入試制度として定着するかどうかですね。

★それから、聖学院の伊藤先生に同校のタイ研修のすばらしさをご紹介する約束をしたのですが、それを果たすことができませんでした。お許しください。次回ご紹介いたします。

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2023年8月 3日 (木)

歴史総合の授業と探究的学びを掛け合わせた実践例

★日本教育新聞(2023年7月17日)に、2025年大学入学共通テストを見据えて、新科目の授業づくりの実践例が掲載されています。広島県立広島叡智学園中学・高校の前元功太郎教諭の「歴史総合」の授業づくりのケースもその一つです。

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(イラストはBingが作成)

★具体的な内容は、有料記事がゆえに、ここでは述べられませんが、関心のある方は、学校や図書館でお読みください。

★ここでは私の感想を書きます。

★まずこれだなと思ったのは、分量が多くて教えられないという声はよく聞くのですが、前元先生のやり方だとその心配はないなあと。ある時代ある領域の学習は、生徒中心で行っていくからです。その領域の課題を生徒自身が設定し、調べたり議論したりしていくうちに、大きなテーマの課題の全体を一刺しする小さな課題設定をするのです。小さく絞ることによって、全体が見える思考や対話が繰り広げられていくわけですね。

★これぞ、探究的な発想ですよね。

★さらに、これは教科の特性のコンセプトレンズだと思いますが、ある時代の問題を考えてくときに、通時的に分解し、共時的にも分解していきながら、通時ー共時の統合にチャレンジしていく。その鬩ぎあいで、新たな問いがまた生まれてくる。一時代の学びから近代の歴史の全貌が見えてくる仕掛けですね。

★それによって、近代といっても、未完の近代が、どう発展していくか、発展を拒むときに、どういう歴史的構造が出来上がるのかなど生徒が了解していくわけです。

★しかし、その生徒の了解は「暫定解」であって、ディスカッションによってブラッシュアップされていくのだと。

★知識を学びつつ、知識の使い方を学ぶというのを超えて、その知識が見過ごしている新しい知識を創造していく作業とその新しい知識をクリティカルに考えていく探究活動が野元先生の授業だと感じました。

★はたして、この野元先生の授業が2025年の共通テストを見据えているといえるのかどうかは、疑問です。なぜなら、共通テストでは、ここまでの学びを刺激する問いは投げかけられていないからです。むしろはるかに深いあるいははるかに高度な学びを生徒と行っているということでしょう。

★そんなうちではできないですよ。同校はIB認定校なのだから、できるんですよという声もあるかもしれません。たしかにIBはそういうところまで追求する研修が定期的になされています。しかし、やろうと思えば、日本の教育にそっても十分にできるのです。

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2023年8月 2日 (水)

文科省の理系学部拡充の意図と世間の捉え方のズレ 大学入試動向や生成AI活用に影響か

★文科省は、7月21日に「大学・高専機能強化支援事業に3002億円」の補正予算を組んだと発表しました。機能強化とは、気候変動の凄惨さやAI時代が到来してしまったのに、日本の高等教育機関は、デジタル・グリーンに対する高度専門人材を思うように輩出できていないからなんとかしたいという想いがあるようです。

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★これに対し、メディアはどう反応しているでしょうか?たとえば、7月21日の読売新聞「理系学部拡充へ文科省が118校支援、62校が学部・学科新設…デジタル人材の育成後押し」と題し、次のようなリード文を掲載しています。

文部科学省は21日、3000億円の基金を活用して大学の理工農系分野を拡充する支援事業に、国公私立の大学・高専延べ118校を選んだと発表した。公立と私立大の計62校が理系の学部や学科を新設する計画で、大学の理系転換への動きが一気に加速しそうだ。

★デジタルに注目を特化し、「グリーン」はデジタル化に包摂されていると考えているのか、その言葉はここではでてきていません。また、大学の理系転換への動きが一気に加速するとさりげなく評価されてもいます。文理融合とかではなく、いわゆる理系。。。

★これでは、大学入試は、理系の一般選抜が圧倒的に増え、生成AIを濫用されるのは困るから、総合型選抜は理系では使わない。大事なのは、理数系の基礎学力で、英語も英検2級くらいでよい、あとは大学に入ってから、一気に高度専門人材を育成するからよいのだとなりがちです。

★ですから、この領域で世界に後れをとっている。デジタル近代化に向けてデジタル殖産興業だあ!とまるで明治維新の時と同じように動き始める。。。のでしょうか。静かに富国強兵みたいな動きもありますよね。それも台湾有事に対処するために必要なんだと。

★まさかね。しかし、この方向にブレーキをかけるジャーナリズムは、今の日本では期待がもてるのか。期待したいですね。20世紀の2つの世界大戦でもメディアは、チェック機能は果たせなくて、デマゴーグ側に回っていたのは歴史的事実ですから、今度こそお願いしたいと。

★さて、教育では何が。2019年から経産省は「数理資本主義」を宣言していますから、今回の流れは、当然文科省は織り込み済みだったのでしょう。そんな流れの中で教育でできることは、大きく2つありますね。

★1つは、グローバル教育を拡充し、世界の多様な見識のシャワーを生徒たちが浴びられる環境を創ることです。生徒のグローバル判断フレームを形成することです。もっとディスカッションする機会をつくりたいですね。もっとも日本語でもできていない可能性があるので、そこは改善。

★2つ目は、リベラルアーツとしての言語処理と数理処理を文系理系かかわらず授業の中に織り込む、シン・リベラルアーツベースの教科学習の開発です。正直、現状の探究の時間は理数系学部拡充の動きには役に立たない。いわゆる文系には役に立つでしょうが。。。

★ですから、教科学習の中に埋め込み、知のパワーアップを図ることが優先です。

★リベラルアーツなき英語授業ではなく、リベラルアーツあり英語授業が必要です。それは国語でも数学でも理科でも社会でも大事です。体育はスポーツ科学を入れればすぐにそれはできるし、すでに行っている学校もあります。

★家庭科や技術、美術、音楽はもっとアーティスティックに。アート思考という形などでシン・リベラルアーツを。

★大学は、いきなり高度専門人材形成ができるように。つまり、今までの大学の1,2年で行われる相当部分を高校で行っていく。

★これによって、熟慮思考なき高度専門人材になるのを回避できます。

★しかし、ここまで初等中等教育が進化したら、今の大学のシステムはどうなるのでしょう。学部の再編や理系学部の定員増加でなんとかなるとはさすがに考えていないとは思いますが。。。

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2023年8月 1日 (火)

改革が持続可能な学校は、学内全体で「主体的・対話的で深い学び」をリフレーミングあるいはディコンストラクションしている

★昨日のつづきですが、なんであのような対話の図を描いたかというと、改革が持続可能な学校は、「主体的・対話的で深い学び」を学内で独自の意味付けを共有しているし、その意味付けは常に進化/深化しているわけです。

 

【知の循環生態】

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★主体的というのは、生徒にとっては最初は能動的とか積極的とかなどの意味でしょう。それを対話によって、しかもその対話は、協働性や多様性を包摂してますから、自分の考えや行動は、クラッシュするわけです。そこで、能動的だったり積極的なのが誰にとってなのか、何のためなのか、自分にとって、それは何か有効なのか、意味付けや重みづけを内省するようになるわけです。そこで、自分の判断フレームが主観というより独りよがりだということに気づくわけです。

★だからといって、相手のフレームに合わせると、ストレスがたまってきて、なんか違和感あるなあと感じるのですが、この違和感はどうして感じるのでしょう。それは生まれてから生成してきた、身体と感情と人間関係と自然との関りと超自然的な心性などが絡み合い、生成し続けている自分軸があるからです。この軸は地軸と同じで、物質的な棒のようなものではありません。磁場や重力、引力など宇宙のエネルギーのかかわりが持続可能にしているように条件がそうしているのです。

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(イラストはBingです)

★ですから、自分軸も地軸と同じように、上記の【知の循環生態】の図にあるように多様な要素が均衡を生み出すことによって生まれます。そして、それをつなげる引力に相当するものが、メンタルモデルとコンセプアクションの循環関係です。もちろん、科学的に説明なんできません。あくまで私の妄想です。

★主体性と呼ばれているものが、脳神経循環系呼吸器血液循環系ホルモンの循環系などの適切な統合回転態で、これを持続可能にするのがメンタルモデルとコンセプアクション(考動)の循環です。

★この循環生態が判断フレームを創るのですが、循環生態について自分自身は必ずしもすべて理解ができていないのです。そのためにはメンタルモデルとコンセプアクションの循環を軌道修正していく必要があります。

★この変形を参加者が皆行う。インタートランスフォーメーションをすると、シン知のコモンズが生まれそれが新しい判断フレームをつくります。

★これがインターサブジェクトとか言われてきたことでしょうが、ここではコレクティブフレームと呼んで起きましょう。

★このコレクティブフレームのディコンストラクションを持続可能にしていく学びが、「深い」というわけでしょう。

★こんなリフレーミングをしておくと、今のところ生成AIは、コレクティブフレームといっても、既存のある一つのコレクティブフレームで言語処理をしているだけということです。今のところリアルな循環生態を取り込んでいませんから、そのある一つのフレームでしか活用できないということです。

★しかし、生徒にとって、いや私たちにとっても、自分の判断フレームよりはるかに巨大なコレクティブフレームです。

★このコレクティブフレームをマネジメントしながら、新たなコレクティブフレームをクリエイティブしていく。これが改革が持続可能な方法の1つです。このような対話をメタローグと言い、それができる人材をメタローガーとどこかで語りました。

★また本間の妄想だと思って頂いてかまいません。カタカナ語も相変わらず多いですが、教育の世界の言説を無反省に使っていると、閉塞状態を強化していくだけですから、違う言葉で話すのもありです。

 

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