筑波大学の入試改革の影響①教科授業と探究の機能の意味が現場で明快になる
★毎日新聞 2023/6/29 20:30の記事「筑波大学が入試改革 面接や小論文重視に変更へ」は今後の中高現場の教科授業と探究の両機能の意味が現場で明快になる意味があります。もちろん、これが理想だとは私は個人的にはまだ思っていませんが、まずは学びの環境の善き方向への大きな一歩だと思います。
★記事にはこうあります。「筑波大の永田恭介学長は29日、5年後をめどに入試改革を行い、個別試験を面接や小論文中心に変更する方針を表明した。今年度中に改革案をまとめる。」なるほど、2030年の次期学習指導要領改訂を見据え、先駆けようということですね。
★同記事の中で、永田学長は「基本的な学力は共通テストで分かるので筆記試験をやっても仕方がない。個別試験を変えて、これまで見つけられていなかった才能を見いだしたい」とも語っています。
★ということで、中高現場の「教科授業」と「探究」の学びの機能が明快になる可能性がでてきたわけです。すでに、多くの学校で、教科の授業は、思考コードでいうA1A2B1B2の領域を生徒と共に学び、「探究の時間」で、B2B3C2C3の領域で共に学んでいるのですが、その機能の明快な違いが広まるといういことでしょう。
★この2つの機能の役割分担は、総合型選抜の拡張に伴い進められてきたわけですが、まだまだ総合型選抜の定員が少ないので、どちらかというと、A1A2B1B2の教科学習が中心でした。ただ、新学習指導要領以前ののようにA1A2の領域だけにとどまるということがなくなっただけでも大進歩です。
★また、A1A2B1B2の領域を「教える」のではなく「共に学ぶ」とシフトしつつあるのは、アクティブラーニングとかPBLといった「主体的・対話的で深い学び」の新学習指導要領のビジョンが反映しつつあるということでしょう。
★共に学ぶ必要があるのはなぜかというと、定期試験の機能が変わったからです。定期試験を無くそうという学校もありますが、そのような学校は、現場は実際にはA1A2の領域をやっているので、それならミニテストの集積でよいということなのです。
★しかし、B1B2までアクティブラーニングなどでやらなくてはならないのは、ロジカルシンキングは、対話をしたりディスカッションをしたりしないと、鍛錬ができないからです。論理の一貫性や問いの深さなど、話し合うことによってそのズレをリフレクションしながら修正していけるからです。
★ICTの浸透により、互いの小論文をデバイス上で共有しながら、話しながら、編集していける時代です。柔軟で強いロジカルシンキングを鍛えるにはこういった共に学び、教師から有効なフィードバックをもらうのがいいわけです。
★前任校の聖パウロ学園では、教科の授業において20%ルールというのがあって、最低限20%はB1B2の領域を共に学ぼうとなっていました。もちろん100%やってしまう教師も多いのですが。
★そして、探究ゼミで同時に総合型選抜によるキャリアデザインもするわけです。したがって、上記のような思考コードのすみ分けをしていたのです。もっとも、ロジカルシンキグは共通領域です。
★ロジカルシンキングには、三角ロジック(トルーミンモデル)を活用し、in×de×abーductionの推理法を回すわけです。
★こういった前任校のような教科授業と探究の機能の共通点と違いを意識してカリキュラムマネジメントすることが、5年後ではありますが、筑波大学のような動きを国立大学がすることによって、押し進めることになるというのは善き方向です。
★もちろん、工学院大学附属や和洋九段女子、富士見丘、文化学園大学杉並、聖学院、サレジアン国際学園、サレジアン国際学園世田谷、三田国際などのように、教科授業でもC軸領域まで行ってしまうというのは探究活動をさらに豊かにするので、理想的です。そうなると海外大学にもたくさん進学するようになり、キャリアデザインの射程がグローバルになります。実際、この8校はそうなっていますね。
| 固定リンク
« 和洋九段女子 EE(Entrepreneur Exchange)Project ③ 深い対話は根っこの問いが開いていく | トップページ | 筑波大学の入試改革の影響②果たして大学入学スケジュールを変更できるのか?学生広報活動ではなく学生募集戦略という学問的視点へ。 »
「創造的才能」カテゴリの記事
- 2025年中学入試動向(13)和洋九段女子 生徒の才能が豊かになる生成AIの使い方勉強会はじまる(2024.11.24)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
- 聖学院の教育宇宙(2)すべての教育活動をつなぐものが生まれる仕組み化(2024.11.22)
- 聖学院の教育宇宙(1)すべての教育活動がつながっている(2024.11.22)
- 2025年中学入試動向(1)学校選択の新しい見方(2024.11.07)
「21世紀型教育」カテゴリの記事
- 次期学習指導要領議論始まる(2)スマート教育にならざるを得ない X-skills(変容スキル)の必要性(2024.12.29)
- 次期学習指導要領議論始まる(1)質の充実化へ(2024.12.27)
- 2025年中学入試動向(35)富士見丘 学習指導要領をそのままグローバル教育化としてトランスフォーメーションに成功(2024.12.15)
- 八雲学園をカリフォルニアから考える(了)英語祭の意味 グローバルSTEAM探究教育(2024.12.14)
- 八雲学園をカリフォルニアから考える(6)中学選びの考え方・価値観を変える(2024.12.12)
「中学入試」カテゴリの記事
- 2025中学入試動向(16)富士見丘 今年も人気 帰国生入試昨年対比120.0% 大学年内入試の合格も勢い(2025.01.16)
- 2025中学入試動向(15)はやくも昨年比113.6%の立教女学院、はやくも出願を締め切る女子学院(2025.01.15)
- 2025中学入試動向(14)工学院のハイクオリティで学習者中心主義の教育の成果が今年もはやくもでている(2025.01.15)
- 2025中学入試動向(13)これからの私立学校の経営は転機を迎える 親や企業が寄付したくなるような教育の質を磨く経営(2025.01.14)
- 2025中学入試動向(12)これからの学校選択のコアはグローバル教育とSTEAMと決定的な要素の融合 海城の大迫校長や日比谷の石坂元校長が示す(2025.01.13)
「創造的対話」カテゴリの記事
- 2025年中学入試動向(15)日大豊山女子 新タイプ入試60%占める ルーブリックも公開(2024.11.25)
- 2025年中学入試動向(13)和洋九段女子 生徒の才能が豊かになる生成AIの使い方勉強会はじまる(2024.11.24)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
- 聖学院の教育宇宙(2)すべての教育活動をつなぐものが生まれる仕組み化(2024.11.22)
- 聖学院の教育宇宙(1)すべての教育活動がつながっている(2024.11.22)
「思考コード」カテゴリの記事
- 筑波大学の入試改革の影響(了)影響力ある中高の学びのあり方 受験業界に影響?(2023.07.02)
- 筑波大学の入試改革の影響①教科授業と探究の機能の意味が現場で明快になる(2023.06.30)
- チャットGPTと思考コードプロンプト(2023.06.29)
- 生成AIにおけるプロンプトエンジニアリングと思考コード(2023.06.23)
- 変わる私立中高(38)中学入試市場の第4波シフトを促す生成AI リアルな対話以上にリアル(2023.06.05)
「PBL」カテゴリの記事
- 2025年中学入試動向(35)富士見丘 学習指導要領をそのままグローバル教育化としてトランスフォーメーションに成功(2024.12.15)
- 八雲学園をカリフォルニアから考える(了)英語祭の意味 グローバルSTEAM探究教育(2024.12.14)
- 八雲学園をカリフォルニアから考える(5)UCサンタバーバラで学ぶ八雲生(2024.12.12)
- 工学院(2) 田中教頭インタビュー第2弾 オープンマインドの世界に通じる意味(2024.12.12)
- 聖書・宗教の授業・礼拝 聖ドミニコ学園・聖学院・桜美林・恵泉・湘南白百合・女子学院・普連土など 自己を見つめ世界の痛みに向き合い対話し言葉を紡ぐ(2024.11.26)
「高校入試」カテゴリの記事
- 2025年中学入試動向(26)日駒 コンパクトでパワフルなカリキュラム(2024.12.03)
- 2025年中学入試動向(22)文大杉並 interactionからtransactionへ突き抜ける(2024.11.30)
- 聖学院の教育宇宙(3)すべての教育活動をつなぐ存在としての授業があった <奇跡の男子校>(2024.11.23)
- 聖学院の教育宇宙(2)すべての教育活動をつなぐものが生まれる仕組み化(2024.11.22)
- 聖学院の教育宇宙(1)すべての教育活動がつながっている(2024.11.22)
最近のコメント