変わる私立中高(41)聖学院インパクト あらゆる授業をシンプルな世界制作方法が貫く
★聖学院は過去問を公開しています。本当によく聖学院のカリキュラムを反映した問いが表現されています。PBLや探究、テクノロジー、グローバル教育が充実していることが了解できます。ぜひ同校のサイトをご覧ください。もちろんダウンロードできます。このような教育環境は、生徒が自らタラント(才能)、テクノロジー(技術)、トレランス(寛容)、トランスフォーメーション(変容)、トラスト(信頼)といった5Tを体得するようになるでしょう。アドバンスト入試や英語入試、思考力入試からいくつ問いを見てみます。
★英語入試のショートエッセイですが、生成AIが普及し始めるちょうどその時期にこのような英語で思考する問いを投げかけています。学校でコンピュータスキルをもっと学ぶべきなの?君の考えは?というのでしょう。英語で考える力ですね。もちろん、この中学入試の段階では、日本語で300字くらいで考えて、150語の英語に置換えればよいのでしょうが、ストレートに英語で考える習慣を身に付けている生徒もいるはずです。すごいですね。しかし、いずれにしても、トピック、根拠、体験というエビデンスが必要ですが、実はさらにメタ認知的には、具体と抽象という重みづけ、主張と根拠という統合、反対の考え方など、賛否のカテゴリー分けなど思考のメタスキルの発動を問うてもいます。
★社会の問題も、ふるさと納税のメリット、デメリットの両面から考える問題ですね。これもメタ認知的には、考え方のカテゴリー分けです。そしてそれぞれのカテゴリーごとに主張と根拠の関係をとうごうすればよいわけです。
★理科の問題もおもしろいですね。脱塩の方法を2つ比較して、昔ながらの方法を説明しなさいと。どう違うのかカテゴリー分けするわけですが、ここは日常の鍋で起きていること等をアナロジーとして変形するメタ思考スキルを使う資質能力があるか診ることができます。
★算数の問題。OBの補助線を引くと、急に見えますね。これはメタ思考スキルとしては削除・挿入の推理を活用するわけです。補助線を挿入するというわけです。面積や線分の変形というメタ思考スキルも使います。
★デザイン思考の問いは、このまとめにくるまでに、今まで見てきたような問いが並んでいて、この200字まとめに到ります。基本は比較して、共通点と相違点を見出していくプロセスになるわけですが、その視点が多角的です。しかし、ここでもやはり、順序づけや重みづけ、分解と統合、変形といったメタ思考スキルがフル活用されています。
★このメタ思考スキルがフル回転するのは、ものづくり思考力テストも同じですね。遊びと学び。遊びが実は人間のクオリティ・オブ・ライフを実現する道具立てやルールを作るのです。そのヒントをロジェ・カイヨワの視点を参考にするなど、創造性のレベルを急上昇させる仕掛けも巧まれています。いずれにしても、①削除・挿入、②順序づけ、③重みづけ、④分解と統合、➄変形という5つのメタ思考スキルを使えるかどうか診るわけです。
★以上のように、聖学院のすべての入試において、この5つのメタ思考スキルが発動するように作問がプランされているのです。
★この5つのシンプルなメタ思考スキルこそ、芸術哲学者であり数学哲学者であるネルソン・グッドマンの世界制作の方法なのです。湯川秀樹ではないですが、複雑な現象も、シンプルな原理によって成り立っているわけです。思考の原理とも言えます。
★理数教育の真髄は、ネルソン・グッドマンのシンプルなメタ思考スキルといコネプトレンズを生徒自身が可視化して活用していけるようになることであり、これは非認知システム認知システムでも同様です。ネルソン・グッドマンが、芸術と数学の両領域を往還していたということは、ここに通じるのだと思います。
★聖学院の思考力入試をはじめ各教科の入試が教科横断的になっているのは、この世界制作の方法というコンセプトレンズを教師が文理関係なく共有しているからでしょう。理数教育の真髄は、こうして真理は自由にするという話なのです。
★多様で複雑な社会課題に直面したとき、世界制作の方法というシンプルな真理を生徒が身に付けて、解決していく。この一貫性が聖学院のすべての授業に貫徹しているというのは、ものすごいインパクトですね!
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