奈須正裕教授の「子どものための授業づくり第26回 良い授業の2つの要件」をヒントに 何が問題か考える
★奈須正裕教授(上智大学総合人間科学部教育学科)は、タイトルにある記事を「内外教育5月23日号」に寄稿しています。非常にわかりやすく良い授業づくりの2つの要件を抽出しています。次の部分を引用してみます。
「授業は、活動と内容という二つの要素で構成されており、常に活動を通して内容を実現するという筋道で機能している。ここで悩ましいのは、活動は主に子供の都合、内容は主に教師や大人の都合によって、その望ましい在り方が規定されていることである。しかし、工夫次第で両者の間に折り合いをつけることは可能であり、そこにこそ、授業づくりの妙があるとさえいえる。
良い授業とは、子供にとって意味のある活動を通して、教師から見ても価値のある内容を実現する授業である。そして、活動が子供にとってより楽しく、切実であればあるほど、また、実現される内容の深まり、広がり、定着度が増せば増すほど、良い授業だと考えたい。」
★子供にとっては楽しく意味ある活動だけれど、教師にとってはまだまだ物足りない内容だというあるあるの授業体験。そこをなんとかしようと奈須先生は論じているのです。奈須先生は、内容というか素材を教科書で提示されたものに限る必要はなくそれ以外の素材を活用することもよいのではと論じています。コンテンツベースではなく要はどんな能力を身に着けるかに着目すると、授業における活動と内容の循環はうまくいくと。その通りだと思います。
★授業を内容と活動と分けるだけではなく、それぞれ種類があるので、たとえば、上記の図のようにAパターン、Bパターン、Cパターンに分類してみます。工夫ということはreflectionすることですから、それもプラスしてみました。
★この3つのパターンは相互に関係しあっています。Aパターンの時、内容理解がうまくいかない場合、子供の活動は停滞します。教師はこんな価値ある素材を理解できないのはもったいないと途方にくれます。そんなとき、同じ構造や文脈の内容を持ち出し、互いの内容にその構造や文脈を適用させる活動を子供と共にします。
★そして、その構造や文脈を使って、新しい内容を子供が自分で創造してみます。そのうえで、Aの内容に戻った時、理解活動が進む可能性が大ですね。
★ところが、授業時間数が足りないから、Aパターンで無理やりレクチャーし、子供は聞くという活動だけで理解します。しかし、応用は効かないということはあるあるでしょう。
★じゃあどうするか、プロジェクト型の学びにして、子供同士教えあったり、ともに考えたりすることで、突破口が見つかるかもしれないのです。それでもうまくいかないときはどうしたらよいのでしょう?
★奈須先生は、おもしろくて切実であるということを語っています。実は活動をもう少し大きな体験にします。するとそこでは子供たちは切実な壁にぶち当たります。不思議なことにそこから子供たちは突破口を自ら開いていく可能性が大です。
★もちろん、解決はしない場合も多いのですが、切実さは、不思議なことに同じような文脈や構造をその切実な体験をアナロジーとして理解をしていくきっかけになる可能性が高いのです。
★あくまで可能性の話ですが、創意工夫とはこの可能性を大きくする体験を仕掛けることでもあります。
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