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2023年6月

2023年6月30日 (金)

筑波大学の入試改革の影響①教科授業と探究の機能の意味が現場で明快になる

★毎日新聞 2023/6/29 20:30の記事「筑波大学が入試改革 面接や小論文重視に変更へ」は今後の中高現場の教科授業と探究の両機能の意味が現場で明快になる意味があります。もちろん、これが理想だとは私は個人的にはまだ思っていませんが、まずは学びの環境の善き方向への大きな一歩だと思います。

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★記事にはこうあります。「筑波大の永田恭介学長は29日、5年後をめどに入試改革を行い、個別試験を面接や小論文中心に変更する方針を表明した。今年度中に改革案をまとめる。」なるほど、2030年の次期学習指導要領改訂を見据え、先駆けようということですね。

★同記事の中で、永田学長は「基本的な学力は共通テストで分かるので筆記試験をやっても仕方がない。個別試験を変えて、これまで見つけられていなかった才能を見いだしたい」とも語っています。

★ということで、中高現場の「教科授業」と「探究」の学びの機能が明快になる可能性がでてきたわけです。すでに、多くの学校で、教科の授業は、思考コードでいうA1A2B1B2の領域を生徒と共に学び、「探究の時間」で、B2B3C2C3の領域で共に学んでいるのですが、その機能の明快な違いが広まるといういことでしょう。

★この2つの機能の役割分担は、総合型選抜の拡張に伴い進められてきたわけですが、まだまだ総合型選抜の定員が少ないので、どちらかというと、A1A2B1B2の教科学習が中心でした。ただ、新学習指導要領以前ののようにA1A2の領域だけにとどまるということがなくなっただけでも大進歩です。

★また、A1A2B1B2の領域を「教える」のではなく「共に学ぶ」とシフトしつつあるのは、アクティブラーニングとかPBLといった「主体的・対話的で深い学び」の新学習指導要領のビジョンが反映しつつあるということでしょう。

★共に学ぶ必要があるのはなぜかというと、定期試験の機能が変わったからです。定期試験を無くそうという学校もありますが、そのような学校は、現場は実際にはA1A2の領域をやっているので、それならミニテストの集積でよいということなのです。

★しかし、B1B2までアクティブラーニングなどでやらなくてはならないのは、ロジカルシンキングは、対話をしたりディスカッションをしたりしないと、鍛錬ができないからです。論理の一貫性や問いの深さなど、話し合うことによってそのズレをリフレクションしながら修正していけるからです。

★ICTの浸透により、互いの小論文をデバイス上で共有しながら、話しながら、編集していける時代です。柔軟で強いロジカルシンキングを鍛えるにはこういった共に学び、教師から有効なフィードバックをもらうのがいいわけです。

★前任校の聖パウロ学園では、教科の授業において20%ルールというのがあって、最低限20%はB1B2の領域を共に学ぼうとなっていました。もちろん100%やってしまう教師も多いのですが。

★そして、探究ゼミで同時に総合型選抜によるキャリアデザインもするわけです。したがって、上記のような思考コードのすみ分けをしていたのです。もっとも、ロジカルシンキグは共通領域です。

★ロジカルシンキングには、三角ロジック(トルーミンモデル)を活用し、in×de×abーductionの推理法を回すわけです。

★こういった前任校のような教科授業と探究の機能の共通点と違いを意識してカリキュラムマネジメントすることが、5年後ではありますが、筑波大学のような動きを国立大学がすることによって、押し進めることになるというのは善き方向です。

★もちろん、工学院大学附属や和洋九段女子、富士見丘、文化学園大学杉並、聖学院、サレジアン国際学園、サレジアン国際学園世田谷、三田国際などのように、教科授業でもC軸領域まで行ってしまうというのは探究活動をさらに豊かにするので、理想的です。そうなると海外大学にもたくさん進学するようになり、キャリアデザインの射程がグローバルになります。実際、この8校はそうなっていますね。

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2023年6月29日 (木)

和洋九段女子 EE(Entrepreneur Exchange)Project ③ 深い対話は根っこの問いが開いていく

★和洋九段女子でビーラインドの仲野さんとえびちゃんs’、そしてteam amiが出会い、仲野さんファシリテートのもとプレイフルなグラマ体験をして対話をしました。そのあと、えびちゃんs’とteam amiが自分たちの活動をプレゼン。そして再び対話空間をつくっていきました。グラマ体験が1時間、全員で対話したのが1時間。没入と対話が短い時間のようでたっぷり充実した時間になりました。なぜか?簡単に言えば、深い対話がおこなわれたからです。

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★このときの深い対話とは何でしょう。おもしろいのは、だんだん深くなっていったわけではないのです。初めから深い対話だったのです。もちろん、最終的には本質的な普遍的なおそらくケアリングの大切さにいきついたわけですが、改めて深いとは根源的なコンテンツに行き着くだけではなく、コミュニケーションのアプローチの中にあるのだと感じました。

★どういうことかというと、思考コードなどでいうA軸の知識や理解の領域でもとても深い対話になるのです。それは体験を楽しんだり、プレゼンを傾聴しながら、具体的状況をいろいろな角度から語り合っているところは実に深いわけです。

★グラマ体験で、ふくろの中にどれくらいの重さがあるかは、手の感覚でしかわからない。この具体的状況、つまり事実に驚いている自分たちは何に驚いているのだろうかと問うわけです。

★アプリでなくてボイスメモで機能は果たせるのに、アプリをつくることの尊さは何かとか、SDGsのスゴロクを継承するということはアップデートしようというチャレンジの中にこそあるとか。

★また、授業とこのようなゲームを通して学ぶことの違いとは何だろうかとか問うわけです。

★このような問いと自分の考えを披露していく連続体としての対話。やがて、事実の中で気づいた多くのことが最終的にはある共通のケアリングクラスへの道が開けるような話になっていくわけですが、その最終的なところは、もちろん深いわけですが、そのプロセスの一つ一つの問いが生まれながら対話が続いているのがなんとも感動的でした。

★このような対話ができるのは、こうしたartifactを創ろうと思ったときのきっかけにすでに大きな問いが根っこにあり、その根っこの問いは今回のメンバーはみな持っていたわけです。それが、対話によって開かれていくわけですが、そこから振り返れば、深い対話の根っこが最初にあったからでしょう。

★体験はその根っこの問いを見出すことでもあったのかもしれません。机上の学びでは、その根っこの問いを内面に見出すことはそう簡単ではないかもしれません。ところが、今回集まったメンバーはその根っこから歩み始めたのです。ここがPBL体験者のある意味強みですね。

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チャットGPTと思考コードプロンプト

★先週の金曜日、このホンマノオト21で「生成AIにおけるプロンプトエンジニアリングと思考コード」を書きました。そんなとき神崎先生(カンザキメソッドで超有名、特に探究、リベラルアーツのワークショップ、総合型選抜対策は秀逸)から声を掛けられました。今ちょうど慶応義塾大学湘南キャンパス(SFC)の大学院で研究をしていて、思考コードの生みの親なんだから、思考コードの新しい取り組みのアイデアはないのか?と。

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★私は、研究などタイトなことはできないのですが、アイデアだけならと。そこで、まず思考コードプロンプトエンジニアリングをやってみました。ある生徒の1つの文章を、思考コードのA・B・C軸ごとに、連続してCoTプロンプティング(Chain of Thought Prompting)していきます。

★すると、A軸は素晴らしい分析をしてくれます。ところが、B軸の適用(的思考)の観点では、一つの文章では、どう適用しているかわからないから分析できないと回答してきます。論理的思考はOKです。

★C軸では、創造的思考はOKなのですが、批判的思考ではGPT自身は、批判はできないと回答します。そこで、作者はどんな批判的思考を使っているか分析してよと頼むと、それはできますと見事に分析してくれます。

★その分析が正しいかどうかは精査が必要ですが、おもしろいのは、適用は複数のデータをCoTしてよということですし、批判的思考は自分は出来ないけれど、作者の立場ならできるのだと。つまり、ここには主観性と客観性の識別(それゆえ、図のようにGPT自身と作者の立場で分ける必要があったのです)をGPTがきちんとしているということです。

★逆に今まで、主観は排除して客観性に偏ってきた学びは、それこそ主体性を生み出せない壁だったということが映し出されたわけです。

★主体性を求めるには、複眼的思考と批判的思考が育たないとということでしょう。

★「主体的・対話的で深い学び」には、複眼的思考と批判的思考必須ですね。もちろん、そのベースに、知識・理解、論理的思考は必要です。

★そうそう創造的思考は、GPTはできてしまうんですよね。これは創作物として見ることができるからでしょう。そして、そのクリエイティビティの正当性や信頼性、妥当性を支えるのは、複眼的思考や批判的思考で、その二つがあるから、批判的思考が独善的にならないのでしょう。信頼性や正当性、妥当性を生み出すのは、複雑な思考が対話によって織りなされなければならないようですね。

★対話やPBL、そしてその向こうにあるメタローグはいかに大事かということですね。

★そうそう、チャットGPTを「高倫理」のもと生徒が使うと言語能力や思考力、コミュニケーション能力を高めるツールになるかもしれません。

 

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2023年6月28日 (水)

和洋九段女子 EE(Entrepreneur Exchange)Project ② ダイアローグからメタローグへ

★昨日のEEプロジェクト。第1セッションは、ファシリテーター仲野さんによるグラマ体験。プレイフル体験の中に織り込まれた対話は深い気づきの多いダイアローグそのもの。コミュニケーションのおもしろさと自分の想いが意外にも互いに通じない。気持ちは互いにわかっているはずなのに、ズレてしまう。理解が合うまでには、幾度も調整していくコミュニケーションが大切。そんなことをえびちゃんs’とteam amiのメンバーは対話していました。

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★ボードゲーム「グラマ」は生理的視覚の話ではなく、誰もが見えないコミュニケーションの内面の重要性に気づくコミュニケーションツールとして大事な役割を果たしていることを生徒はみな実感していました。

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★仲野さんの第1セッションが終わった後、それぞれのチームが自分たちが創ったりアップデートしたりしているアプリやボードゲームについてプレゼンして共有しました。3つの創作品は、起業的にはプロダクトですが、PBLではartifact(アーティファクト)と呼びます。プロジェクト学習の肝は、このartifactの創出ですが、3者ともきちんとこれを行っているのです。

★ですから、対話は、実にフラットに、互いのartifactのすばらしさをたたえたり、共通点や違いをナチュラルに話していきます。互いのartifactにこだわるのではなく、それらの未来の可能性や意味付けに話がシフトしていきます。モノとしては確かに違うけれど、いろいろな関係性を調整したり、結びつけたりするコンセプトレンズは同じではないか。ダイアローグがメタ次元に進みます。つまりメタローグに転換しているのです。

★一般に、探究学習では、最終的にこのartifactが創出される過程で終わります。つまり深い対話はダイアローグではありますが、今回の場合は、すでに互いにartifactは出来上がっているのですから、そこからさらに深くあるいは高次元へと進むメタローグになっているのです。

★未来が地球市民の世界になるには、このメタローグによる合意形成を創造するというのが肝心なのかもしれませんね。

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和洋九段女子 EE(Entrepreneur Exchange)Project ① シン・アントレプレナーシッププログラム

★6月27日(火)16時から2時間、和洋九段女子のFUTURE ROOMで、ミニプロジェクトが行われました。大学生起業家ビーラインドの仲野想太郎さんと同校3年生のえびちゃんs’と中3のteam amiと教頭の新井先生、総勢9名が、新しい対話プロジェクトに挑戦しました。結論から言って、ものすごい濃く深く気づきのある爽やかなプロジェクトになりました。

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★仲野さんは、大学3年生で、21世紀型教育推進校のOB。その学校が21世紀型教育を本格的に開始した初年度に入学しました。したがって21世紀型教育校1期生と私は呼んでいます。その仲野さんは、同じ21世紀型教育1期生の大学生とビーラインドプロジェクトという一般社団法人を起業し、見える人も見えない人も見えにくい人も、視覚の状態に関わらずにみんなが一緒に楽しめるものを創作して多様なアンコンシャスバイアスを払拭するセミナー活動をしています。今回はその1つボードゲーム「グラマ」セミナーを行いました、

★高3の「えびちゃんs’」の二人の生徒さんは、SDGs QUEST 未来甲子園のファイナリスト。 話したいのに話せない当事者への意思表示サポートアイテムのアプリ「gimminion」を創作しました。もちろん和洋九段女子の21世紀型教育にたっぷり浸っています。

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★中3のteam amiの5名のみなさんは、今年卒業した先輩team amiの創作した「SDGsすごろく」を継承しています。初代team amiは<「SDGs探究AWARDS 2019」中高生部門で優秀賞を獲得しました。「楽しく学ぼうSDGsすごろく」をつくり、SDGsの重要性をすごろくというゲームで広める活動を開始しました。そのゲームを継承しアップデートしていこうとしているのが2代目team amiなのです。やはり21世紀型教育にたっぷり浸っています。

★というわけで、21世紀型教育体験者であり、アントレプレナーシップ旺盛な3つのチームが、仲野さんのファシリテーターのもとグラマ体験をし、そのあとアプリの意味のプレゼン、SDGsすごろくの意味やアップデートの方向性などプレゼンし合ったわけです。

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★プレイフルなグラマ体験や在校生のプレゼン体験をしたあと、自分たちが、それぞれ創出したものは違うけれど、この活動がどんな意味があるのか対話を深めていきました。もちろん、名ファシリテーター新井先生の存在は決定的です。

★このミニプロジェクトの名称は、和洋九段女子 EE(Entrepreneur Exchange)Projectです。大学生起業家ビーラインドプロジェクトの仲野さんと起業家精神旺盛な「えびちゃんs’」、「team ami」との交流を通して、互いにインスパイア―し、社会貢献につながるアイデアを出し合うプロジェクト。このようなEEプロジェクトはどこでもできるかというとなかなか難しいのですね。というのも、PBLの環境で学んできた大学生起業家と同じようにPBL教育環境に浸りながら実際に起業家精神を発揮してモノづくりをしている在校生の出会いがあったからこそなのです。

★コネクテッドスクールとして多様な連携を生み出している和洋九段女子の面目躍如なのです。そして、連携とは互いに生み出しているものが、それぞれの切実な社会問題と向き合うグローバルシチズンシップを共有しているからであることも今回改めてわかったのです。(つづく)

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2023年6月27日 (火)

パウロ 森の教室Project 本格的に突き進む 地域連携とか社会実装とかアントレとか 結局フロンティア精神ですね。

★聖パウロ学園高等学園は破格の探究活動がスタートしています。それは「森の教室Project」です。同校のfacebookには、こうあります。

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放課後に、Projectメンバーの生徒たちが、教室予定地の下草刈をしました。PNPのインストラクターの方々に指導いただいて、ノコギリ班と剪定ハサミ班に分かれての作業。あっと言う間にスペースが現れました。
ここにウッドデッキを設置していきます。 

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★本格的に始まりましたね。パウロの森を持続可能にしてくれるNPOのスタッフの方々が協力してくれています。ふだんパウロネーチャープログラム(PNP)でお世話になっているインストラクターの方々ですね。連携とは、このような長い時間かけて積み上げてきた信頼関係があってこそです。

★また、パウロ学園の生徒は八王子エリアで多様なボランティアで主体的に活動しています。小島校長の広く深いネットワークがあるからですが、その姿をみていて地域の工務店の方や設計士やキコリのみなさんも協力してくれるのです。

★そして、そうはいっても資金調達も必要です。アイデアと信頼と資金調達と森を開拓するフロンティア精神、そして黄金律のスクールモットーが織りなすエネルギー態が森の教室を開拓し、そこに自然と社会とデジタルと精神の循環を生み出す拠点ができあがることでしょう。ワクワクしますね。

★地域連携とかアントレとか社会実装とか空間デザインとか、すべて詰まった森の教室Project。パウロの教師と生徒のフロンティア精神の腕の見せ所です。

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★それにしても、スペースを開拓し終えたみんなの表情は、やはりすてきです。スモールステップごとの達成感の連続を生み出す学びは、パウロの教師の特技でもあります。

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2023年6月26日 (月)

益川弘如教授の探究活動の5レベルと思考コード

★先週の土曜日、サンシャインシティのコンファレンスルームで行われた研修で、益川弘如教授(聖心女子大学)が講演された資料の中に、「どこまで子供たちに活動を任せるのか 探究活動の4レベル」のスライドがありました。しかし、実際には、レベル0が設定されていますから、「探究活動の5レベル」です。資料によると、大島純教授(静岡大学), 千代西尾祐司教授(鳥取環境大学)が編者の「主体的・対話的で深い学びに導く 学習科学ガイドブック」を参考にして、益川先生が改変したということです。同書には益川先生も執筆しています。益川先生の講演のあとに本書を読んだので、理解が深まりました。探究やPBLなど「主体的・対話的で深い学び」にチャレンジしている先生方には最新の学習理論を一望できるし、痒い所に手が届く編集になっていておススメです。

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★さて、その益川先生の探究活動の5レベルですが、観て驚きました。思考コードに重なるのです。図にするとこんな感じです。

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★もちろん、益川先生が「調べる」という時、たんに文献やインターネットを調べてカット&ペーストするような調べ学習あるあるではありません。文献調査のみならず、フィールドワークやインタビューなども含め、なぜ、ほんとうにそうなのか、他にエビデンスはないのか、仮説はどうやって検証できるのかなど多角的に調べていく、いわゆるリサーチに近いものでしょう。

★ともあれ、思考コードは探究の深さの基準にも通じるということが了解できました。新たな気づきです。

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2023年6月25日 (日)

GLICC Weekly EDU 第133回「21世紀型グローバル教育の学びの環境」をつくるには帰国生・留学生・英語学習者がキー。

★先週の金曜日、GLICC Weekly EDU (GWE)第133回「21世紀型グローバル教育ー帰国生・国際生・留学生が選び、自ら切り拓く学びの環境とは」がありました。今回はGLICC代表で、この番組GWEを主宰している鈴木さんと二人で対話をしました。というのも、今やグローバル教育は、探究及びSTEAM教育と一体化する流れができていて、そのタイプも多様です。したがって、いろいろな学校を例に挙げるため、二人で対話することにしました。

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★相変わらず、あちらこちらに飛びながら対話していきました。結構、一般の学校説明会では聞けないような対話になっています。というのも、学校説明会に足を運んでも、その学校の話を詳しく聴くことはできるのですが、学校選択のためのコンパラティブスタディー(比較研究)はできないので、たまにはこのような対話もいいかなと。

★上記の図は、GWEの番組では活用しませんでした。というのも、対話の後、自分なりに鈴木さんと私の話を整理してみるとこんなイメージになるかなと思って作成したからです。

★今や探究やSTEAM、グローバル教育をやらないなんて私立学校はないんですね。ですから、帰国生、国際生、英語学習者は、その違いをどこで見出すのか。それは教科授業がどのタイプか、探究とSTEAMとグローバル教育が、縦割り(足し算)になっているか、横断的に(掛け算)つながっているのか洞察眼が必要になっていきます。

★しかし、なかなか見抜きにくいのですが、実はその学校がどんな中学入試を重視しているかと相関するのが、「授業のタイプ」と「探究、STEAM、グローバル教育の関係」なのです。

★したがって、中学入試の種類を調べると、教育環境デザインが推理できるのです。

★推理して仮説を立てて、サイト閲覧や説明会に参加して検証していく学校選択の時代になりました。

★それから、帰国生、国際生、英語学習者のそれぞれの価値の違いと共通点を整理している学校かどうかもポイントです。そして、彼らがたくさん入学する学校は、上記の3層目の思考コードでいえば、BC軸を中心としている教育環境デザインをしている学校の場合が多いですね。

★AB軸重視の学校は、「教科の授業」は、教えてから考えるパターンで、「探究、STEAM、グローバルの学び」は考えてから教えるパターンになっています。

★BC軸重視の学校は、「教科の授業」も、「探究、STEAM,グローバルの学び」も考えてから教えるパターンで、「探究、STEAM,グローバルの学び」はさらに「研究」の入口に突き進みます。

★海外のエスタブリッシュな私立学校は、BC軸重視の教育環境デザインをしているところが多いわけです。こういう整理をしてみましたが、実際に対話を聴いていただくと、具体的に学校の例もでてくるので、わかりやすいのではないかと思います。ぜひご視聴を。どの学校がランキングがよいかどうかというのではなく、自分の子どもにはどこの教育環境がマッチングするかです。

★この子は東大に行くだろうというのは、意外とわかるものです。そういう場合は、開成や桜蔭のような学校を選ぶで何ら問題はないでしょう。芸術系だとかICTとか、国際関係の仕事とというのもなんとなくわかります。考えてから教えるパターンが濃厚な学校を選ぶでもよいのです。もちろん、進路は最終的には本人が決めますから、予想ははずれることもありますが、不思議なことに予想して途中で変わっても、困ることはないのです。重要なことは、自分とは何か自分を見つめるリフレクションの機会や自分と向かい合う思考の時間がたっぷりあるかどうかということなのです。

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プレイフルで創造的な学びのデザイン 研修会最終日 ベタツールとメタツールの循環

★昨日は、サンシャインシティのコンファレンスルームで、およそ140名の私学の先生方が全国から集まって研修会を行いました。前日は豊島岡女子学園で授業など見学、実践発表、質疑応答という有意義な具体的な学びのデザインについての研修がありました。参加した先生方は、それぞれにものの見方や考え方、感じ方をリフレクションして未来の可能性に想いを馳せていました。最終日は、益川弘如教授(聖心女子大学)、上田信行名誉教授(同志社女子大学/ネオミュージアム館長)によるワークショップ付き講演でした。

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(豊島岡女子学園の研修の質疑応答セッションで質問する染谷先生)

★益川先生のテーマは「協働的な学びとICT活用による創造性を育む探究活動に向けて」で、上田先生のテーマは「Playful Learning 可能性に開かれた教室体験しよう!」でした。

★それぞれ認知科学やMITメディアラボやスタンフォードの最先端の学習理論に基づいた独自のアプローチは刺激的で、参加した先生方はインスパイヤーされていました。午前中、各90分の講演があり、ランチのあとグループに分かれて対話の時間でした。インスパイヤーしていたので、ランチからすぐにパワーランチになり、深く密度の高い対話が展開していました。

★益川先生も、上田先生も、教科の授業と探究の時間をセパレートするのではなく、一体化させる方法論と意味についてわかりやすく語ってくれました。益川先生は、ジグソー法を活用して深く密度の高い対話を生み出す足場かけのミニワークショップをしました。教えてから考えるのか考えてから教えるのか。後者の学びへのシフトの有効性を共体験したのです。そのためには駆動質問という課題設定が大事なのだと。

★上田先生は、キューブを使ったコミュニケーションワークショップと協働してモンドリアン風の絵を作成するワークショップでした。およそ140名が、ロックに合わせてリズミカルに体を動かしながらそして瞬間的に没入しながら一般的な模造紙の20倍くらい長さのロール模造紙に描いていきます。研修会場が一気にアトリエに変貌していきます。

★探究の呼吸を身体で共体験したのですが、それにしても対話の息吹がやはり重要であるだと。実感・納得感が広がる時間となりました。

★この体験を上田先生は「やって・みて・わかる」マインドセットだと言語化します。

★つまり、「体験→振り返る→意味付けする」というのが、探究の基礎であると。本気で楽しむ体験をして、振り返り、最終的に意味付けすることを何度も強調していました。

★前日の豊島岡女子学園の研修の質疑応答の時間に、文化学園大学杉並の理科主任、教務副部長、次世代リーダー育成部長の染谷先生が「生徒と教師、生徒や教師が外部団体とコミュニケーションする時どんなツールがありますか?」と質問されました。

★なかなか巧まれた質問で、ツールというのは、アプリやICTのようなベタな道具という意味でもあり、コンセプトレンズのようなメタツールという意味もあります。豊島岡女子学園の先生は、クラウド上のグループウェアも紹介されましたが、何よりリアリスティックな対面型対話が重要だと。

★さすがですね。ベタツールとメタツールというツールの両義性について回答されたのです。

★偶然にも染谷先生と研修終了後、池袋駅までいっしょに歩くことになりました。善き対話の機会でした。豊島岡女子学園の先生方及び二人の教授の話のその先をデザインしたいという話になりました。つまり、コンピテンシーとか思考スキルというようなメタツールの話が初日も最終日も出てきたのですが、その実態は何か、デザインしたいのだと。というのも、豊島岡女子学園の生徒さんとはコミュニケーションスキルギャップがある生徒がいる学校も多いし、いわゆる受験学力がある生徒でもコムニケーションスキルギャップがある場合が意外とあるものです。足場のコミュニケーションの肝であるメタ課題設定のマインドセットをしたいのだと。

★ランチタイムのときに、その点についてお二人の教授に尋ねました。今のところ、それは意味付けという抽象化を個人個人がしていけばよいし、その意味付けができる駆動質問は、その都度創意工夫することこそが探究の肝だし、そうなることがパラダイムシフトなのだと。

★染谷先生とその話を共有しながら対話散策をしたのですが、結局大学の知と現場の知をつなぐシステムは現場で創るしかないかということになりました。というわけで、やりますか!やりましょう!とエルボータッチをして別れたのでした。

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2023年6月23日 (金)

豊島岡女子学園の科学的思考ベースの探究とグローバル教育の相乗効果

★本日豊島岡女子学園で、研修会「これからの私学の学習環境デザイン~学習者主体の学びの実現と創造性の滋養に向けて」の一日目が開催されました。主催は一般財団法人日本私学教育研究所。全国私立中学高等学校 私立学校専門研修会 教育課程部会の企画運営です。日本全国から参加者は140人くらいの大盛況でした。

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(写真は、日本私学教育研究所発行の実施案内から)

★豊島岡女子学園の5,6時間目の探究を中心とする授業及び教科授業など学内を見学した後、探究とSSHの授業やプログラム、それらのシステムについて2人の先生による分厚いプレゼンテーションがあり、その後1時間熱い質疑応答がありました。

★探究もSSHも高大連携やグローバルな連携、地域との連携など、幅広く学問的に深い、そして社会実装した学びが行われていることに参加した全国の先生方は感嘆していました。

★生徒は午後5:20には下校、先生も午後5:30には退勤です。限られらた時間を有効活用するには、主体的に創意工夫しないと教科学習と破格の探究やSSHのプログラムを活力ある学びにできないでしょう。

★なぜこんなことができるのが、質問は山のようにでました。

★豊島岡女子学園の先生方は丁寧に納得のいく回答をしていました。説得力は、実際行えているわけですから、あるのは当然です。

★しかし、先生方の話を総合すると、どの先生も密度の高いコミュニケーション能力を持っていて、あふれるほどの知恵を蓄積する一方で、生徒に対して必要最小限度のアドバイスやフィードバックしかしないわけです。限られた時間のはずですが、実は余白ができるのはそういうわけです。先生が話す時間が少なくなれば、生徒の主体的な思考活動の時間が実はできるのですね。

★それから、大学並みの専門性を必要とする生徒の探究活動については、教師は大学とつないで解決する知の交渉力が巧みでパワフルです。

★しかし、なんといっても数学的思考や数理最適化、要するに、社会現象や自然現象を方程式化してエビデンスを定量的にきちんとはじき出して、質的リサーチと重ね合わせて検証していく学問の基本姿勢が6年間で養われます。それを全校で取り組んでいるのです。恐るべしです。

★しかも、長時間生徒がかけるのは、探究やSSHではないのです。教科の授業です。推薦型選抜は、全体の4%前後です。多くが一般選抜なのです。

★ここが豊島岡女子学園の強みですね。探究やSSHを総合型選抜のために行っているわけではないのです。大学受験と探究やSHHなどのいわば研究はあの二刀流なのです。受験へ立ち臨む集中力と、受験にこだわらずどこまでも自分の好奇心を研究につなげていく「考動」。

★研究につながるから、おのずとグローバル教育にもつながるわけですね。

★すばらしい豊島岡女子学園の教育は、しかしすべての学校が即真似ができるわけではありません。もちろん、本郷レベルの学校はできるでしょうし、また独自の取り組みを行うことでしょう。しかし、そうでない場合は、デフォルトモードシステムをいったん作らなければならないでしょう。

★参加された先生方は、学校に戻り、どのように豊島岡女子学園のような教育を、どのように創意工夫すればよいか議論をすることになるでしょう。同じことはできないけれど、同じような水準は目指したいと。豊島岡女子学園の先生方の教育創造力と外部ネットワークを張り巡らす知の交渉力に感服です。

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生成AIにおけるプロンプトエンジニアリングと思考コード

★生成AIは、自然言語(日常使っている言語)で指示することでコード無しでAIを操作できるので、その操作をプロンプトエンジニアリングと呼ばれています。このワードを検索すると山ほどでてきます。NHKの番組では、このプロンプトエンジニアは5000万くらい稼げるなどという話まで流していました。また最近東大の松尾教授も、プロンプトエンジニアは重要な役割を担うと日経などで語っています。

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★プロンプトエンジニアリングの手法は、ゼロショット・プロンプティング、 フューショット・プロンプティング、 チェーンオブソート・プロンプティング(CoT)、 ゼロ ショット CoT・・・などとすでに呼ばれています。

★ゼロショットとは、チャットGPTなどで問いを出す時、思考コードでいう単純な問いのことです。フューショットとは、複数のことを聴いてみることです。このフューショットの複雑性を増やしていけば、想定された回答以上の変形が起きてきます。

★また、チェーンオブソート(CoT)とは、問いかけ、回答され、それについてまた問いかけをつないでいきます。これは論理的に連鎖していくとそれなりの論述文ができあがります。

★このCoTにゼロショットなどを組み合わせてゼロショットCoTをしていくことで、どんどん論述文は広がってちょとした小論文に変形されていきます。

★プロンプトエンジニリングによって、AIの才能を開花させ、最適解を引き出すことがある程度できます。

★しかも、ある詩人の詩を提示し、この詩人のように愛について詩を作ってくださいとリクエストすると、それなりに創ってきます。クリエイティブな様相を呈してきます。さらに同じ詩人の詩を提示して、同じ質問をすると自己調整してブラッシュアップしてきます。

★幾つかの条件を提示して、これらの条件を満たす活動はどうなるのかと問うと、新たな活動案が生まれてもきます。もはや新しい知識も確率的に推論してきます。

★既存の知識を組み合わせることは、人間であっても創造と呼びます。

★しかし、枠組みを破壊して「脱獄」というプロンプトエンジニアリングもあります。これが、生成AIの危うさです。ですから思考コードC3は協働性を重視します。脱獄や破壊のリスクママネジメントするプロンプトエンジニアリングが必要になります。

★おそらく、正当性、信頼性、妥当性という条件を満たすことを最終的には問わねばならないし、その3条件を満たすエピソードも書き込まなければならないでしょう。

★もし思考コードのような発想がなければ危ういかもしれませんが、それはまさに人間と同じですね。もともと言語生成AIは人間の自然言語をモデルにしているのですから当然です。

★結局、言語生成AIにおけるプロンプトエンジニアリングは、人間の言語能力を高め、かつ正当性、信頼性、妥当性という倫理を形成していく活用ができるということなのかもしれません。それにしても、思考コード発想はここにきてさらに必要ということですね。

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2023年6月22日 (木)

文京学院大学女子 サイエンス教育とグローバル教育のクロスプログラム

★ノイタキュード代表北岡優希さんが、ご自身のfacebookにこう書き込んでいました。「先週の水曜日から1週間、文京学院大学女子高等学校の理数キャリアコースのサイエンスフェアに取材同行させていただきました。タイ王国Princess Chulabhorn Science High Shcoolと提携し、毎年1週間ほどお互いの生徒の交換留学を行っています。今回はタイから11人の生徒と4人の先生が来て、文京学院の生徒たちと楽しく有意義な時間を過ごしていました。」

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(写真は、北岡さんのfacebookから)

★ここまで、読んだ時、そういえば、文京学院大学女子は、かつてSSH認定校で、相当サイエンス教育に力をいれていることを想いだしました。サイエンスエリアを見学させて頂いたこともあり、たしかに驚いていた記憶がよみがえりました。そして、次の北岡さんの文章を読んで、同校のサイトを調べてみようというアクションにつながりました。

「今回自分は学校のご厚意により1週間毎日6限まで全てのプログラムに参加し撮影しました。これまでに培った全ての機材と技術を惜しみなく活用させることができ、また普通では絶対に見られることのない生のやり取りを見ることができ、本当に貴重な体験でした。めちゃくちゃ楽しかったです。」 

★なになに、「めちゃくちゃ楽しかった」ですと。北岡さんがそういっているなら、よほど何かあると思ったからです。

★すると、すぐに「高等学校:理数キャリアコース生徒が「ISEF」で快挙」という記事が目に入りました。同校の理数キャリアコースの高校3年生の2人が、5月に米国で開かれた「ISEF2023(国際学生科学技術フェア)」に日本代表で出場し、材料科学部門で優秀賞4等に選ばれたということです。すごいですね。

★タイの学校とのサイエンス国際交流といい、渡米して国際学生科学技術フェアに参加して受賞してくるなど、サイエンス教育とグローバル教育が一体化しているのは、魅力的な教育環境デザインといえましょう。

★そもそもサイエンスは世界共通語でもあります。グローバル教育の真骨頂ですね。

 

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2023年6月21日 (水)

帰国生の重要性 将来世代考慮の制度の必要性

★現在、多くの私立中高一貫校は帰国生を新しい考え方で迎え入れています。なぜ帰国生は大切なのでしょう。言うまでもなく、多様性の貴重な経験者であるからです。国内だけで生活していると、どうしても井の中の蛙何とかになりがちです。思い込みや先入観などいわゆるアンコンシャスバイアス払拭に刺激を与えてくれます。

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★そして、将来世代考慮の制度は、まだ独立した法律になっていませんが、いろいろな分野でその必要性が問われています。私立中高一貫校は、先見性、先進性をバックキャスティングによって発揮しています。つまり、生徒の未来を見据えているのです。

★すると、当然、現在の国家間のルール上の摩擦などの問題解決が近い将来必要になってくることがわかるのですが、グローバル教育が実施されているとはいえ、対症療法的・短期的問題解決視野になりがちです。

★ところが、帰国生は、身をもってビザの問題、二重国籍の問題など悩みどうしたら解決するのか人生をかけて調べ、考えるキャリアの学びをすでにしているのです。

★帰国生の生の声に耳を傾けると、それは帰国生は気づいているけれど、国内生は自分にとって大事なことなのに、気づいていない、見えていないということがあります。そのままにしておくと、ことはルール、制度、法律の問題ですから、近い将来、いやすでに国際的関係でおいていかれてしまっている日本で生活をしなくてはならないということになりかねません。

★帰国生の声を聴くには、海外子女文芸作品コンクールの作品集「地球に学ぶ」を読みことをおススメします。(つづく)

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足立学園 チェンジメーカーを生み出す柔軟な組織 グローバルサウスへ

★塾ジャーナル2023年5月号に、「足立学園中学校・高等学校 世界を学びにアフリカへ!志を育むグローバル教育」という記事が掲載されています。足立学園では、タンザニアで「アフリカスターディーツアー」を行っているということです。かなり驚きです。今年の秋、ラウンドスクエアが国際会議をナイロビで行います。そこに参加するか加盟校はかなり慎重に決断しています。それが、アフリカの野生の動物と暮らす人々が生活している自然の中で、自分たちもキャンプまでしてしまうスタディーツアーです。このツアーの企画を井上校長に提案したのは原先生です。

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★記事の中で井上校長は、はじめたいへん驚いたと語っていま。当然ですよね。意思決定者、決裁者としての校長は、熟慮し、リスクマネジメントができるかどうか調べ、何より建学の精神というクライテリアに沿うものであるかどうか、そして生徒の好奇心や才能、そしてグローバルリーダーとしての気概に善き影響を与えるかどうか大所高所考え抜きます。責任は自分が負うわけですから。たいていの場合、ノーという回答がでてもおかしくない案件です。

★しかし、決断したわけです。責任を引き受けたわけです。それらの条件をすべてクリアするだけではなく、生徒の志を強烈に育むビジョンが明快に見えたからでしょう。

★なぜなら、原先生は、JICAの現職教員特別参加制度を活用して、青年海外協力隊として2年間貴重な体験をしていて、その深い経験をもとに、生徒が中高段階で、これからの世界が変わる源で多角的な体験をすることが、いかに志を生み出すことになるか熱くプレゼンしたからでしょう。

★井上校長が、しっかり傾聴して、深く洞察して、意志決定をする。そんな柔軟な組織であるからこそ、このような冒険が可能になるのです。

★記事の中には、生徒がまずは自分の世界を変え、それによって他者や社会の世界を善に向かうように変える活躍をするキャリアデザインをしていっていることが語られています。

★クエストツアーではなく、スタディーツアー。このスタディーは勉強という意味ではなく、「研究」という意味なのでしょう。

★校長と教員のリレーションシップが学習する組織になっていることと生徒が切実な局面で一生ものの問いを生み出す教育環境デザインがなされているのは、同校においては、このツアープログラムだけではないでしょう。だから、今日、足立学園は飛ぶ鳥を落とす勢いの人気なのだと思います。

※今年の春の生徒募集において、足立学園が人気であったことは首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さんの分析の中ででてきます。

 

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2023年6月20日 (火)

AIの次に来るコト(1)私立中高一貫校ガイドブック<DISCOVER>とジョージ・ダイソンの本の共通点

★生成AIの話題がもの凄いのは今更言うまでもないですが、科学史家のジョージ・ダイソンが、さらにAIの次にくるものについて書いた本が最近翻訳されて発刊されています。おもしろいのは、ライプニッツの夢の30%しかAIはまだ達成していないのだという発想です。さらに私立中高一貫校のガイドブック<DISCOVER>と「AIはリベラルアーツが生み出している」という発想まで共通しているのです。

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★古典的リベラルアーツは、自由七科で、「文法、論理、修辞、算術、幾何、天文、音楽」。ジョージ・ダイソンは、AIは最初の4つしか実現していない。まだ幾何、天文、音楽は難しいと。もちろん、幾何だって、天文だって、音楽だってできてしまうけれど、それはそれらのデジタル部分で、アナログ部分は難しいのだというのです。

★新しいアナログの時代がやってくるというのがジョージ・ダイソンの発想で、DISCOVERもリベラルアーツの現代化でそれに近い発想をしています。

★すでに落合陽一さんが、デジタルネイチャーの世界を描いています。

★こうなってくると人間のあり方そのものが変わるんですよね。

★サイボーグとか端子を脳に挿入するとかというのもあるかもしれませんが、実はホルモンの質が変わることによる人間や他の生物の変化です。遺伝子が人間や生物の外観を変えずに内的変容を生み出していくいくわけです。おっと、遺伝子はデジタルレベルですが。デジタルとアナログは切り離せないということでしょう。

★いずれにしても、人新生時代の新たな生物の進化の時代がやってきたと捉えたほうがよいのかもしれません。またまた妄想ですが(汗)。

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聖パウロ学園 未来の森の学園 新しい身体知の生成スクール

★高尾の駅から、スクールバースで聖なる丘々を越境して15分。東京ドーム5個分の森の中に白い校舎が見えてきます。聖パウロ学園です。新校長小島綾子先生になって、このパウロの森を活用した探究ゼミが着々と始まっています。生徒はみなノートパソコンを持ち歩きながら新しい学びに没入し、教師と生徒は根源的な倫理=黄金律をリスペクトしながら、互いに協力して新しい身体知を生み出しています。

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★アナログの身体性を育てる近代教育をデジタル知へと転換する情報革命がおこり、パンデミックによって、学校はこの新しい動きに突入しましたが、そもそもアナログの身体性を統御していた言行一致の自然言語を解放してしまったデジタル知。SNSの中で恐ろしいことが爆増している今日。

★聖パウロ学園は、その嵐の中で、デジタルも活用しつつ、身体性をコントロールするのではなく、協働してマネジメントしていく生徒指導と学習指導の一体化を図り、今では、森の教室というデジタルとネイチャーの一体化を図る森の学園と変貌しようとしています。

★デジタルとネイチャーの一体化。新しいデジタルネイチャーを協働してマネジメントしながら未来を創る新しい身体知(身体×メンタル×社会性×スピリチュアリティ―×デジタル×自然)が生まれています。

★まるで、そのことを予言するかのように「WIRED49号」が発刊されたり、ジョージ ダイソンの著作「アナロジア AIの次に来るもの」が最近翻訳されています。

★この手の書物というのは、すでにリアルに生まれつつあるものを見通すものであり、聖パウロ学園のような新しいそれでいて気づかれていない動きを言い当てる凄さがあります。

★生成AIで世の中が騒いでいるうちに、聖パウロ学園は、その先の新しい身体知を生み出しているのです。パウロは、一方でエンカレッジという通信制の学校も有しており、そこはフッサールの哲学によってこの新しい身体知を生み出しています。全日と共通しているのは、デジタルとネイチャーの一体化の教育環境を組み立てているところですね。高校生たちのノアの箱舟であるかもしれません。

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2023年6月19日 (月)

第3回学校づくり研究会③~学校における生成AIの活用ポリシーについて

★学校づくり研究会の委員の先生方が、生成AIのリサーチを始めるや、世界各国や大学、企業でも生成AIの活用方針を社会及び各組織の中でどのようにすべきかあるいはどのようにしていくかなど議論が舞い上がりました。先日のG7でも議論になったのは記憶に新しいですね。そんな中、いちはやく岩倉高等学校の校長先生が、このポリシーについて発信したことについて、同研究会でも盛り上がりました。

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★たしかに、中高段階で、生成AIの利用ポリシーについてサイトで発信しているところはまだないのではないでしょうか。まずは、<【校長からの発信】No.7 対話型人工知能(AI)利用ポリシー>をご覧ください。お読みになれば、同校の校長の気概と明晰さが了解できます。そして、校長の考えや想いを支える教師陣が揃っているということがわかるはずです。

★私は私で、委員の先生方のお話を聴き、この利用ポリシーを読みながら、上記のような図をイメージしました。

★生成AIの利用ポリシーを考案する時、7つの層で考えるのがさしあたりよさそうかなと。そして、見えない教育力の層については、見えないので、人間がきちんと明快に明晰に了解しておく必要はあるなあと。そして、それは言語化とあえて言語化ではない別の表現方法で押さえておく必要があるのではないかと。どんな表現か?おそらくジュネーブウェルビーイング宣言で、新たに加わった健康概念がヒントになると思います。

★AIは、この見えない部分は、回答しないでしょう。しかし、恐ろしいのは、見える部分を見えない部分の接点ぎりぎりまでは迫ってくることです。そのとき、AIはそこから先は表現はしません。しかし、そこまでいくと、AIの表現を通して、人間は想像するし推理したくなります。もし、人間があらかじめそこのアイデンティティを自分のものにしておかなければ、どうなるか、妄言・妄想・妄執。。。。恐ろしいのは、AIではなく、受けとめる人間の側です。

★魑魅魍魎の感情が蠢く可能性があるということです。

★AIに支配される前に、その妄執や妄言という自縄自縛に陥る可能性がありますね。そして、このことはすでに昨今の感情即反応の傾向が、凄惨な事件を引き起こしていること関係があるのかもしれません。

★生成AIのトリセツを考え合うことは、やはり人間とは何かという古代からの問いを再び立ち上げることになりそうです。

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第3回学校づくり研究会②~生成AIを通して教育システムや人間存在について対話を深めている。

★学校づくり研究会は、毎年、時代の要請をリサーチしながら研究テーマを決めていきます。人間や地球の危機は時代によって違い、その危機を乗り越える時代の要請に耳を傾けながら、同研究会の研究テーマは探索されていきます。もちろん、対症療法的なテーマではなく、何か根源的な問題に向かい合うところまで対話を深めていきます。ですから、時代によって一見要請が変わっているようでありながら、果たしてどうなのかという逆発想も含めて対話は進みます。直線的な論理的発想というより、ゆらぎや響きの間の論理的な思考とでもいいたくなるような発想です。

★今年度は、今まさに話題になっている。いや今まさに人間の知のあり方や學校のあり方の転換が迫られているという認識のもと、生成AIについてリサーチし、何が問題なのか整理し、その正体は何かを突きつめつつ、生徒とどのように使っていくのか現場の具体的な文脈を変えていくかもしれない局面にまで迫っていきます。

★そして、驚くのは、委員長も委員もA4数枚の論考を書いて、その論考に基づいて対話をしていくのです。それを月一回のペースで進め、あるときはほかの委員会の研修のファシリテーターとしても参加します。

★ある意味、私学の共有地ならぬ共有知を形成しているかのような活動です。

★それぞれの教科という専門性や専門以外の自分の教養を活用して、それぞれのアプローチで論考が提出されシェアされていくのです。月に1回の対話ですが、そこに結実するまでのそしてそこからまた次が始まるというそれぞれの先生方の研究のプロセスがすさまじいエネルギー態です。

★このエネルギーが1年間蓄積され、新たなエネルギー転換が起こるとき、すばらしい成果が表れるはずです。まさに共有知の量質共に充実するでしょう。

★それぞれの先生の論考はいずれなんらかの形で公開されるでしょう。ワクワクしますね。

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第3回学校づくり研究会①~どんな研究会?

★一般財団法人東京私立中学高等学校協会は、東京私学教育研究所のメンバーがサポートする多様な委員会(理事長校長部会、教頭部会、初任者研修委員会、専門教育部会、etc.)の機会を会員校の先生方と創出しています。その委員会の1つ学校づくり研究会が先週土曜日3回目を開催しました。前回までは、今年のテーマについて大所高所からかつ生徒との関係性の課題などから議論していました。大所高所とか生徒との関係性の課題とかから考えるというイメージは次のような感じです。

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★同研究会は、現状や時代の学校現象をしっかり見つめつつ、その現象に互いに影響する教育現象や世界で起こっている現象などまで幅広く対話します。そして、その背景にそれらを生成するシステムを分析統合していくわけです。そこまでは、教育を通しても見える部分です。もっともシステムについてはとても複雑で見えない部分もあります。そこを探っていくうちに、結局研究会の先生方は、時代を超えた根源的な倫理性や人間存在についても話が深まっていきます。そして、ここの部分が普遍的というわけではないことについては、委員の先生方は注意深いですね。

★それぞれ異なる教科の専門性を有している先生方が、ダイレクトに自分の教科に係る話もしますが、コンテンツベースではなく、そのコンテンツの背景にあるシステムや構造や時代性や歴史性やアート性などについてアカデミックに語り、何か一貫したものやことを見出す瞬間があります。

★哲学的でもあり、社会学的でもあり、科学的でもあり、芸術的でもあり、言語学的もであり、文化人類学的でもあり・・・。越境的対話が実に面白いですね。

★近代教育からポスト近代教育までのパースペクティブの話の広がりと、さらにその次の話にもなります。

★オープンな研究会で、委員でもなくても興味と関心があればオブザーバーで参加できる機会もあります。実際参加してくださる先生もいます。

 

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2023年6月17日 (土)

PBL 今更ながらの重要性

★PBLは今や教育業界では人口に膾炙されています。バズワードでもあるかもしれません。定義づけなどは、いろいろな方が試みているので、検索すればよいので、ここでは、意外と新たな重要性がでてきた幾つかのフェーズをメモしておきたいと思います。

1)ハラスメントに、一方通行型授業は陥りやすい。

2)メンタルヘルスを、一方通行型授業は壊すリスクが高い。

3)学習者のエージェンシーの壁に一方通行型授業は、なりやすい。

4)関係性を作らない自立を、一方通行型授業は提唱しがち。

5)生徒指導と学習指導を分離していることに、一方通行型授業は気づかない。

★PBLが、このようなアンコンシャスバイアスを払拭する重要性は再認識され始めているのかもしれません。たとえ、それが不完全だといわれても、対話やディスカッションの機会を入れることが、大切なのです。

★学習権という人権の問題が、授業の背景に横たわっていることに、グローバルな視点から観る保護者が現れてきたということです。

★私たち教育関係者は、ここは辛いかもしれませんが、リフレクションやモニタリングをしておくことは重要です。

★もちろん、行政政策や生徒募集のための、つまり経済のための手段としてPBLを推奨するのは転倒していますが

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サレジアン国際学園の生徒の才能が豊かになる教育環境デザインの緻密さと大胆さ

★昨夜、GLICC Weekly EDU 第132回「サレジアン国際学園ー21世紀に活躍できる世界市民の育成」がありました。21世紀型教育を推進して2年目を迎えている同校ですが、その充実度の速さに驚くばかりです。4つのコンパクトな動画が流されましたが、いずれも、実際の教育シーンです。まるで10年以上積み上げられてきたかのような自然体の英語の授業やPBLのシーンを見ることができます。生徒が好奇心に満ち満ちていて、それゆえ楽しいのですが、それは内面における深い楽しさであることが伝わってきます。仲間と学び合う姿も感動的です。ぜひご視聴ください。

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★今回は、本科とインターナショナルの両クラスの緻密なカリキュラムシステムについて丁寧に語っていただいています。まだ2年目とは思えない充実ぶりです。すでにこのような教育環境を創り上げていますし、さらにアップデートし続けるわけですから、受験生・保護者が気になる卒業時の結果も大丈夫です。というのも、すでに多くの21世紀型教育推進校が成果を出していますから、その点は安心です。

★しかも、サレジアン国際は、97か国のサレジアンシスタースクールと国際交流をすることができます。大胆で画期的なプロジェクトも企画しているとのことです。

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★そして、こうした大胆で緻密なカリキュラムマネジメントをしている層の厚い教師陣がいることと10人以上の外国人教師がいることは、何より心強いことです。AI時代とはいえ、教育はやはり教師の情熱と知恵が土台です。

★本番組の特徴として、説明会では少し難しくなり、限られた時間ではなかなか語られない深イイ話をお聞きすることができます。今回も随所にそのような話をお聴きすることができる機会がありました。ありがとうございました。

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2023年6月16日 (金)

変わる私立中高(47)共立女子大、日本女子大「建築とデザイン」の学部相次ぎ開設 中高への影響大

★朝日新聞(2023年6月7日 5時00分)の記事「女子大に「建築」学部、時代見すえ 共立女子大・日本女子大、相次ぎ開設」は保存版です。共立女子大は今年「建築・デザイン学部」を開設、日本女子大は来年「建築デザイン学部」と大学院に「建築デザイン研究科」の両方を同時開設。私立中高一貫校で「理数教育」にしっかり取り組んでいるところは、かなり人気が高いあるいは安定しています。

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(写真は、共立女子大学のサイトから)

★両大学の付属中高から、割合の違いこそあれ、それぞれ附属の大学に進学することも考える中学受験生はいます。受験生の中には、この情報をキャッチして、両校を選ぶこともあるでしょう。実際に、今年の共立女子中学の出願総数は前年比100% を超えています。

★そして、この動きは、両校だけの問題ではなく、女子の受験生に理系への道への希望を掻き立てるものでもあります。

★建築デザインは、もちろん建物を最終的に形にできるようにするでしょうが、空間デザインやインテリアデザインなど生活の内面を豊かにするアフォーダンスプランニングをすることになるし、当然SDGsの意識も高いですね。環境と生活が循環する新しいスマートシティデザインは今後必須です。

★家政学から連綿と続いている女性の生活感こそ、今後政治経済文化で重要な役割を果たすことは間違いがありません。

★その女性の感性を、性別関係なく、シンボル化したのが、ある意味、19世紀末の美術や建築です。

★明治近代化を推し進める当時の政府は、せっかく、この流れをくむジョサイヤ・コンドルを招いたのに、弱弱しいと切り捨てました。威風堂々とした権威を見せつける建築方法に切り替えたのです。

★しかし、岩崎家と渋沢家と慶応大学は、すかさずジョサイヤ・コンドルのその未来のデザイン発想を受けとめます。さすが私学人たちですね。日本のもう一つの近代化は、土建国家と化したハコモノ建築とは違う道をこうしてつないできたのです。それがいよいよ女子大で再び花開きます。

★これからの建築は、身体にやさしく、心にやさしく、人間関係にやさしく、争いをなくす貢献をアフォードする時空デザインを目指すでしょう。今後の影響の広がりに期待します。

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変わる私立中高(46)教科の探究化 夢のある大学入試問題を活用 東京学芸大・高校探究プロジェクト 理科の場合

★内外教育(2023年5月23日号)に、「大学入試問題、新フェーズに突入か?」という記事が掲載されています。東京学芸大・高校探究プロジェクトの生物のオンラインセミナーが紹介されていました。紹介されていたのは、生物の授業を探究的な学びをベースに行う取り組みです。その際、大学入試問題を活用して行うことにより、「探究的学習活動と受験対策の一石二鳥を狙った授業を一つの目標にしているというのです。

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写真は、東京学芸大学サイトから

★なんだ今までだってやってきたことではないかと思われる方もいるかもしれません。しかし、ここでは、探究につながる大学入試問題を探してジョイントしようということです。

★つまり、これができるのは、大学入試問題が変わってきたからというわけです。必ずしも教科書にあるわけではない内容を、仮説を立てながら推理していく、もちろん論理的に考えていく問題が、小論文などではなく、今までのペーパーテストの中に設定されるようになってきたということです。

★このプロジェクトに参加しているZ会の勝又真佐子氏は、このような問題を「夢のある入試問題」と称しています。

★勝又氏が選んだ九州大学2022年度の生物の入試問題は、<「宇宙船地球号」に見立てた国際宇宙ステーション(ISS)がエネルギー源を太陽電池パネルによって太陽光から得ていることや宇宙飛行士が排せつした汗や尿は装置によって再利用される一方、食料は地上から補給され、固形排せつ物は専用器に詰めて船外に放出されている――といった、実際のISSをもとにした情報が盛り込まれた問題文を提示し>、<「ISSを生態系として考えた場合、次の(a)から(e)の説明から正しいものすべて選びなさい>というものだったといいます。

★内外教育の記事には、その選択肢は列挙されていませんが、「すべて選びなさい」ですから、正答率はそう高くなかったでしょう。

★しかも、もし選択肢ではなく、記述や論述だったらどうでしょう。ISSの生態系としての機能を説明し、これからの生態系を持続可能にする仕組みをISSを使って説明できるか、できない場合は、それによって生態系を持続するにはどうしたらよいかなど考えるきっかけにすればよいが、どんなところが問題なのかなどなど、生徒自身が問いを作成してみる授業にすると、教科の中での探究化というのが、探究の糸口を見出す重要な役割を果たすことでもあることがわかります。

★このような夢のような入試問題がほかにも紹介されています。つまり、どんどん増えてきたということでしょう。

★探究の学びと「夢のある入試問題」を結びつけることによって、受験勉強の価値の転換が起こるかもしれませんね。

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八雲学園 姉妹校Cate School来校!第10回Cate in Japan Program実施される。

★八雲学園に、同校姉妹校であるアメリカのCate Schoolから、生徒14名・先生2名が1週間にわたってやってきました。3月の海外研修で交流した生徒も多く、久しぶりの再会となり、大いに盛り上がったようです。随分前から姉妹校になっているわけですが、ケイトスクールが,交換留学以外にJapan Programとして行っているのは10回目のようです。

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写真は同校サイトから

★ケイトスクールは、八雲学園同様ラウンドスクエアの加盟校ですから、姉妹校としてかつラウンドスクエア加盟校同士として交換留学も盛んなのです。

★期間中は、ケイトの生徒は、八雲学園の生徒の家にホームステイをしながら、毎日一緒に登下校し、様々なプログラムを体験しました。同校サイトにはこうあります。「授業では創作俳句や数学などを学ぶとともに、書道などの体験もしました。また、八雲生とともに調理実習や清掃、ホームルームにも参加しました。八雲生との交流の中で、Cate Schoolの学生は日本語を、八雲生は日ごろ学んでいる英語を駆使してコミュニケーションをとっていました。Cate Schoolの生徒たちは皆意欲的で、学ぶ姿勢は八雲生の刺激にもなったようです。1週間はあっという間でしたが、中学3年生は来年の海外研修での再会を楽しみにしています」と。

★生徒14名が突然やってきても、ホームステイ環境を提供する八雲生のご家族はすぐにみな手をあげてくださったと副校長の菅原先生は八雲の保護者のおもてなしの心と気概に感動していました。八雲学園全体で、ラウンドスクエアスクールとして、こういうのは当然であるという誇りと文化ができているのですね。

★それにしても、ケイトスクールが訪れるつい3日前には、イエール大学の学生が音楽国際交流をしに八雲学園を訪れています。そして、八雲学園の多くの生徒は、同時期に中期留学に渡米もするのです。

★菅原先生は、「世界でいろいろな紛争や争いが起きているが、どう解決するか?結局互いに尊敬する関係性をone earthの感覚で築いていく八雲のようなグローバルな活動や交流は一役担うことになると思います。グローバルリーダーとはこの関係性を築ける人間力が大切です」と。

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2023年6月15日 (木)

工学院大学 映像祭入賞、Honorable Mention受賞の盾が届く。生徒の喜びの声がいい。

★工学院大学附属中学校・高等学校の高年生が制作した映像作品が、アメリカ、ニューヨークの映像祭で入賞し、その受賞を示す盾が学校に届いたとのことです。すごいですね。そして、何より生徒の喜びの声が感動的です。ぜひサイトをご覧ください。

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★その作品は「貧困の中の子供たちにできること」をテーマにし、アフリカのスザプライマリースクールを取材したものも織り込んだといいます。そこで貧困撲滅に向けたアイディアが提案されたようです。このような取材によって切実感ある問題に導かれたことでしょう。また、長崎で開催された平和映像祭でもファイナリスト入り、プロの監督から多くのアドバイスを得たということです。

★ラウンドスクエア加盟校というグローバルなレバリッジポイントを使い、世界の根源的な深層にダイブすることで、世界と日本の共通した問いを見つけていく。まさにThink globally, act locallyの姿勢で臨んでいますね。

★ですから、その喜びの声は、メンバーや指導者、保護者、マラウィの人々、映像祭で出会った人々に感謝の意を表し、チームメンバーにも感謝の気持ちを述べるという形になっていたのです。グローバルシチズンシップとはどういうことなのか、リアリティのある活動をする工学院生です。

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【速報】 JCB・TBT Lab・和洋九段「メタスクール体験プロジェクト」を開始!

和洋九段女子は、 JCB・TBT Lab・和洋九段とコラボする「メタスクール体験プロジェクト」を開始することを発表しました。メタバースを活用した教育環境デザインは、学校だけでできるものではありません。さすがコネクティッドスクールを標榜している和洋九段女子のなせる業です。

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(写真は、同校のfacebookから)

★同校のサイトによると、「このたび本校は、株式会社ジェーシービー・TBT Lab株式会社のご協力をいただきながら、2社と生徒とのディスカッションを通じて学校向けメタバースの構築を行う取り組み「メタスクール体験プロジェクト」を開始しました。生徒たちのクリエイティブな視点を生かす新しいチャレンジの機会をいただきました。今週末から高1・高2の約30名がプロジェクトに参画し、ディスカッションが始まります。」とあります。

★プレスリリースの記事のほうには、こうあります。

 「メタスクール体験プロジェクト」とは
生徒主体でのディスカッションを通じ、学校におけるコンテンツを用いたメタバース空間の構築を進めます。
2023 年度の活動は以下を予定しております。
① 修学旅行や体験学習・留学での経験を
「PEGASUS WORLD KIT」(※1)を用いメタバース空間に構築、アーカイブとして保存
② 本取組を 9 月開催の文化祭にてコンテンツ紹介

★このメタバース空間を形成するとどんなすてきなことがうまれてくるのでしょう。同記事にはこうあります。

 ・メタバース空間での疑似体験学習
・和洋九段女子中学校高等学校の特色・強みである Problem Based Learning(PBL)授業でのデ
ィスカッション結果をメタバース上に構築できる「UX 授業コンテンツ」
・18 歳成人を控えた中高生向けに、メタバース空間ならではの「仮想現実」を生かし契約行為や決済な
どの成功/失敗体験を安全に経験できるツール

★すごいですね。和洋九段女子は、多くの体験プロジェクトがあります。国内外実際広い範囲で動き回ります、それだけに事前の準備、事後のリフレクションも丁寧に行っていきます。その事前事後で、メタバース空間を活用してシミュレーションやリフレクションができるのですからワクワクしてきます。

★授業も金融教育もバーチャルな空間を活用しながらパラレルワールドのような環境になるわけです。暗黙知としての思考の視野が広く深くなっているその成長の実感をできるようにもなります。

★思考がリアルとバーチャルの両方の空間を往還することで、実は客観的思考と主観的思考の差異が了解できます。もちろんセパレートするのではなく、化学変化が起こるようにするのでしょう。

★新しい知が和洋九段女子から生まれてくる予感がします。和洋九段女子は、デュアルグローバル教育にシフトしていくでしょう。

 

 

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2023年6月14日 (水)

ケアリングクラスの時代(01)メイヤロフの「ケアの本質-生きることの意味」

★新型コロナウイルス感染拡大の3年間、私たちは「ケアリング」の重要性を医療従事者の方々の凄まじい姿から学びました。そして、このケアリングは医療従事者の方々だけが想い行うのではなく、多くの市民が共有すべき重要なコンセプトとアクションであることは説明する必要はないでしょう。

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★哲学者メイヤロフの「ケアの本質」の原題は、"On Caring"です。どうやらケアとケアリングは微妙な違いがあるようです。

★読んでみたいと思います。ケアリングクラスが、AI時代には重要な役割を果たすのではないかと予感がするからです。

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2023年6月13日 (火)

奈須正裕教授の「子どものための授業づくり第26回 良い授業の2つの要件」をヒントに 何が問題か考える

★奈須正裕教授(上智大学総合人間科学部教育学科)は、タイトルにある記事を「内外教育5月23日号」に寄稿しています。非常にわかりやすく良い授業づくりの2つの要件を抽出しています。次の部分を引用してみます。

「授業は、活動と内容という二つの要素で構成されており、常に活動を通して内容を実現するという筋道で機能している。ここで悩ましいのは、活動は主に子供の都合、内容は主に教師や大人の都合によって、その望ましい在り方が規定されていることである。しかし、工夫次第で両者の間に折り合いをつけることは可能であり、そこにこそ、授業づくりの妙があるとさえいえる。

良い授業とは、子供にとって意味のある活動を通して、教師から見ても価値のある内容を実現する授業である。そして、活動が子供にとってより楽しく、切実であればあるほど、また、実現される内容の深まり、広がり、定着度が増せば増すほど、良い授業だと考えたい。」

★子供にとっては楽しく意味ある活動だけれど、教師にとってはまだまだ物足りない内容だというあるあるの授業体験。そこをなんとかしようと奈須先生は論じているのです。奈須先生は、内容というか素材を教科書で提示されたものに限る必要はなくそれ以外の素材を活用することもよいのではと論じています。コンテンツベースではなく要はどんな能力を身に着けるかに着目すると、授業における活動と内容の循環はうまくいくと。その通りだと思います。

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★授業を内容と活動と分けるだけではなく、それぞれ種類があるので、たとえば、上記の図のようにAパターン、Bパターン、Cパターンに分類してみます。工夫ということはreflectionすることですから、それもプラスしてみました。

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★この3つのパターンは相互に関係しあっています。Aパターンの時、内容理解がうまくいかない場合、子供の活動は停滞します。教師はこんな価値ある素材を理解できないのはもったいないと途方にくれます。そんなとき、同じ構造や文脈の内容を持ち出し、互いの内容にその構造や文脈を適用させる活動を子供と共にします。

★そして、その構造や文脈を使って、新しい内容を子供が自分で創造してみます。そのうえで、Aの内容に戻った時、理解活動が進む可能性が大ですね。

★ところが、授業時間数が足りないから、Aパターンで無理やりレクチャーし、子供は聞くという活動だけで理解します。しかし、応用は効かないということはあるあるでしょう。

★じゃあどうするか、プロジェクト型の学びにして、子供同士教えあったり、ともに考えたりすることで、突破口が見つかるかもしれないのです。それでもうまくいかないときはどうしたらよいのでしょう?

★奈須先生は、おもしろくて切実であるということを語っています。実は活動をもう少し大きな体験にします。するとそこでは子供たちは切実な壁にぶち当たります。不思議なことにそこから子供たちは突破口を自ら開いていく可能性が大です。

★もちろん、解決はしない場合も多いのですが、切実さは、不思議なことに同じような文脈や構造をその切実な体験をアナロジーとして理解をしていくきっかけになる可能性が高いのです。

★あくまで可能性の話ですが、創意工夫とはこの可能性を大きくする体験を仕掛けることでもあります。

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変わる私立中高(45)帰国生・インター生の学校選択の新たな流れか?

★帰国生及びインター生の我が子の教育環境選びが変わってきたかもしれません。帰国生もインター生も、本物の学びを求めています。本物の学び?それは、いわゆる受験勉強ではないのです。従来の帰国生やインター生は、英語でコミュニケーションし続ける環境があれば、受験勉強もきっちりやる高偏差値校でがまんできたのです。

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(写真は、私立中高一貫校ガイドブック“DISCOVER”から)

★ところが、現在、どうやらそのようながまんはできなくなりつつあるのでしょう。

★勉強をやりたくないのでも、長時間机に向かいたくないわけでもないのです。そのような勉強が自分にとって意味があれば、何もがまんせずとも、没入できます。

★しかし、AI時代にあって、グローバルな視野をもってしまった帰国生やインター生にとって、一般選抜のための受験勉強に長時間かけることの意味は、自分にはないのではないかと気づき始めているのです。

★がまんしなくても、英語で話し続け、考え続け、活動もできてしまう私立中高一貫校が増えてきたこととそこから海外の大学も行けてしまう実績も積み上げってきたということもあるでしょう。

★つまりゆったりと本物の学びをし続け、かつ海外大学や国内の有名大学にも確実には入れるならば、いわゆる中学受験業界の高偏差値の学校に向けてガツガツ勉強する必要はないのではないか。むしろ英語で対話したり思考したりエッセイを書いたりといった勉強をして合格でき、入学後、先述した本物の学びと成果を出せる学校を選んだほうが良いのではないかと。

★そして、極めて重要なことは、日本の教育におけるケアの精神が魅力的だということなのです。

★日本の中にいると、教師は自分たちのケアの精神がかけがえなのない価値だと気づきにくいものです。したがって、合理的な学びを遂行しているといつのまにかその大事な日本流儀のケアの精神が消失してしまうことがあります。

★茶道とか武道とか、「道」の精神や芸術的な感性を大事にするケアの精神。

★海外では、意外とこういったことは学校の中ではなく、地域だったり外のクラブだったり、通いたい子供が通うというケースが一般的なのかもしれませんね。

★日本では、教育の一環として行われてきたことでした。

★英語の授業というのではなく、インターナショナルな学園生活そのものがあると同時にこのような日本的なケアの両方があるところ。ガツガツ受験勉強するところには、たしかにそういう学園生活はおくれないでしょう。

★マインドフルネスの重要性が、GAFAMなどで注目されているのは、帰国生やインター生と同じ欲求なのかもしれませんね。

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東京私学教育研究所情報(10)私立中高一貫校のガイドブック“DISCOVER”公開。

5月21日(日)開催された「Discover私立一貫教育 東京私立中学合同相談会」告知のページに、当日配布された私立中高一貫校のガイドブック“DISCOVER”が公開されました。pdfで見ることができます。一般財団法人東京私立中高協会/東京私学教育研究所が発行しているので、具体的な学校の話はでてきませんが、東京の私立中高一貫校が目指している方向性やビジョンについて編集されています。保護者の方が私立中学受験を考える際のものの見方や考え方・感じ方をつくるときに参考になると思います。ぜひご覧ください。

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★私立中高一貫校の教育をみるとき、「建学の精神」「先見性」「先進性」「独自性」というのは広く受験市場で支持されています。この項目について詳しく具体的に説明されているものは、なかなかありません。そこで同協会/同研究所はそこにチャレンジしています。

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★また、現実的な話として、中学入試の多様性について、思考コードをベースに分類して説明しているページもあります。さらに変わる大学入試に中学入試がどう連動しているのかまで説明がなされています。

★子供たちが、中学受験の準備をすると、それが6年後大学入試に立ち臨むときに大いに効果的だということが説明されています。受験勉強として役立つことは言うまでもありませんが、それよりも大事なことは、今や受験は全人的に成長する学びの場であり、未来を見据えた自分を形作るのに大切な条件でもあるということが説明されています。

★もちろん、未来を見据えた自分を形作る条件は、私立中高一貫校の教育だけではありませんが、より多くの子供たちの才能・技術・心が全人的に成長できる最大限有意な環境であることは間違いがありません。

★ぜひご覧いただき、我が子にあった教育環境を探すコンパスとしてご活用ください。

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変わる私立中高(44)もし中学受験生をお持ちの保護者が学校選択で迷っていたらこの本を眺めてはいかがでしょう。学校選択の基準が明確になる可能性大です。

★今多くの学校で、なんとか卓越的な探究のプログラムを創ろうとしています。そして、そのような学校は、今は仮に偏差値が思わしくなくても、必ず伸びてきます。しかし問題は、その探究の取り組みが卓越的なのかたんなる調べ学習なのか教師が与えた課題を解決するだけなのか、結局受験勉強の時間に置き換えているだけなのかなど見抜くことは、説明会などで話を聞くだけでは難しいものです。わからない場合、体験学習会やセミナー、オープンスクールに参加するのも大事ですが、それでもなかなか。別に卓越的な探究をやる必要などないではないかと思われる方もいるかもしれません。

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★しかし、多くの学校が取り組んでいるのです。多くと言っても、50%ぐらいです。なぜやるか?生徒募集のためでしょうと思う方もいるでしょう。

★しかし、世界がそれを必要としています。AI時代は、AIをマネジメントできる才能とテクノロジーと高次思考力が必要なのはいうまでもないでしょう。その能力を身に付けるには、未知の問いをAIに先回りして見出して、解決していくプランニングをしてプログラミングないしは指令しなくてはなりませんね。

★一般選抜の受験勉強ではそんな能力はつかないのは本当は誰もが知っているのです。しかし、採点処理の問題や採点基準の問題などにより、まだまだ壁はあります。ですから、一般選抜で受かればよいという一見合理的な考え方で受験勉強すると大学に入ってからが大変です。

★最近では、一般選抜と総合型選抜の二刀流が主流になってきたのは、どの入試を選ぶかと卓越した探究やプロジェクト学習をすることは全く矛盾しないととらえる学校が増えたからです。

★驚くべきことにいや嬉しいことに、理事長。校長クラスが、その重要性に気づき、ワークショップ型の研修を年2回ほど実施し始めていることです。

★現場の教員だけではなく、経営陣にもその影響の輪が広まっているのです。中高が変わるというのは、このような理事会と現場の変革への意志の共有とアクションが必須ですが、このような学校が増えていくコレクティブインパクトが今起きようとしています。まだ過冷却状態かもしれませんが。

★卓越的な探究の取り組みを行っている学校組織の雰囲気を感じ取るには、上記の表紙の本が役立つかもしれません。

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2023年6月11日 (日)

GLICC Weekly EDU 第131回 佐野先生と金井先生の大事な手法=NVC(観察・感情・ニーズ・リクエスト)をベースにした探究(SEL×システム思考) 「存在と学び」の新しい地平が見えます。

★先日、GLICC Weekly EDU 第131回「かえつ有明ー「共感・対話・探究の思考」」がありました。佐野先生と金井先生には、今までもこのGWEには何度も出演していただきました。そこではお二人が日々かえつ有明で先生方といっしょに創り上げている世界についてお話をしていただきました。今回は、その世界をお二人が外部団体とコラボして広げている活動を中心にお話をしていただきました。そして、その活動が再びかえつに還流される循環についても伺うことができました。学校が変わるというのは教師と生徒、保護者などが変わることでありますが、佐野先生と金井先生は、その変容を外部団体にも影響を与えています。

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★結果的に、学校が変わると、社会が変わるという実感を抱くことができた時間でした。

★今回は、「探究」を始める前の参加者やステークホルダーの関係づくりの大切さについて及びその手法についてたっぷり語っていただいています。探究を始める前と今言いましたが、実はそこから「探究」は始まります。これはたとえば演劇、コーラス、コンサート、研究など多くの場合にも同じことが言えます。つまり、ここでは、自分と自分の関係性、自分と他者との関係性、自分と自然との関係性、自分と社会との関係性などを互いに大切にできる心理的時空をつくるということでしょう。

★それには、互いの息吹を観察し、その感情の意味を感じ取り、自分が本当に何を欲しているのか、自分とは何か洞察していく時空です。そして、その自分のニーズが他者とのニーズとの関係性でどうなるのか。そこでその関係性に愛が満たされながら自分の想いを実現できる意思決定ができるリクエストが生まれてきます。

★ようやく、そのとき自分の「探究」したい「問い」が生まれてくるというのが、佐野先生と金井先生が活動してきたことです。このNVCの過程なしの「探究」は、たんなる問題を解いていく従来の勉強と実は変わらないのだと改めて気づきました。一見すると正解のない問いを扱っているので、従来の学びとは確かに違うのですが、それだけでは、そこに自分と自分、自分と他者、自分と社会、自分と自然の根源的な深いところにまでダイブしないまま学びが終わってしまう可能性があるということでしょう。ある意味、存在を無視した学びです。

★佐野先生と金井先生の実践してきた「探究」とは存在と学びの関係の親密さが深まっていく過程だったのです。

★今回もまた深い気づきを頂きました。「存在と学び」について新たな地平が見えてきました。ぜひご視聴ください。

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2023年6月10日 (土)

サレジアン国際学園 中学校高等学校 すでに世界学校だったことが明かされる過程

★サレジアン国際学園。赤羽駅から10分ほどスロープを歩いていくと小高い丘にパッと開ける私立中高。正門の向こうにある校舎からは、まるで両腕を広げて、柔らかく温かく包み込んでくれるかのうような愛情が伝わってきます。キャンパスの中にはいると、その空間もゆったりとしたスペースが広がっています。廊下は木でフローリングされ、生徒たちは自然の中の道を歩いているかのようです。その仲間と歩いている姿に心地よさを感じるのです。

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★しかも、iPadを抱えながらみな教室間を歩いています。インターナショナルクラスでは、オールイングリッシュで、数学や理科、社会の授業も行われていました。トリガークエスチョンにピアレビューしながらあるいはディスカッションしながら、同時に調べながらというプロジェクト学習が行われていました。別の時間に立ち寄るとプレゼンの準備にヒートアップしていました。

★本科クラスは、ちょうどゼミナールが実施されていました。プロジェクト学習であることはインターナショナルクラスと同様で、いわゆるPBLが貫徹した21世紀型教育がナチュラルに展開していたのには驚きました。

★理論物理の「輪講」を行っていたり、非線形方程式の周期解をもとめる関数変換を生徒がプレゼンしていました。福山雅治さん主演の「ガリレオ」で数式を書いている福山さんの様子さながら。カッコイイ!と感じました。同校の姉妹校であるサレジオ高専の先生方(大学教授)とも連携してしているロボティクスのゼミナールは超人気で参加者は溢れていました。プログラミングの書き込みに没入している生徒たちもいました。

★グローバル教育や外国語教育以外に理数教育にも受験勉強をはるかに超える本格的かつ専門的な活動に取り組まれているのには、衝撃的でした。

★ネーティブスピーカーの先生方は12人前後いるようでした。その中の1人である主任の先生が声をかけてくださったのですが、サレジアン国際で行われているロジカルシンキグについて、表層的な話ではなく、瞬間でしたが深い説明をいただきました。また思考コードベースのルーブリックとシラバスの関係についても、深い知見をお聞きすることができました。やはり人材の豊かさだなと。

★また、今回案内してくださったのは同校の募集広報部部長の尾崎正靖先生でした。尾崎先生は、本科コース推進部部長でもありますから、学びについてその理論と何より生徒の反応や成長について表層ではなく深層にダイブしながら語ってくださったのです。

★SDGsの話になったとき、サレジアン国際学園のSDGsは、教皇フランシスコが語る公式文書「ラウダート・シ」に沿うもので、他校で実践しているSDGsの取り組みとは少し違うのですと。たしかに、教皇フランシスコは、2015年にSDGsが採択されたとき、国連で共にこのゴールを達成していこうとエールを世界に贈っていました。しかし、その意味は、とても深いものです。

★というのも、教皇フランシスコは、あのアッシジの聖フランシスコを意識されているのは、その名前から明らかです。中世の聖人フランシスコは、エコロジストの守護神です。小動物と対話ができたというエピソードがあるほどですが、技術的にエコロジストであるだけでは足りないものがあるのです。教皇フランシスコにとってSDGsが達成されたとなるには、自然と経済が循環するだけではなく、自然と社会と精神が循環するための隣人愛が満ち溢れなくてはならないのでしょう。

★SDGsは2015年に採択されたわけですが、その精神はカトリックの聖人フランシスコ及びサレジアンの創立者ドン・ボスコの精神に結びついているものなのだと尾崎先生は語るわけですね。

★サレジアン国際学園は世界市民の育成を目標にしていますが、この世界市民は、自然と社会と精神をぶどうの木のように循環する愛と平和を導く使命を引き受けるのでしょう。英語ができること、ICTが使えること、才能を発揮すること、ディスカッションやプレゼンができることなどは確かに21世紀型教育のベースではありますが、それはサレジアン国際学園にとっては氷山の一角であり、その水面下には、もともとサレジアン国際の教育が世界学校であることが根付いていたのでした。

★21世紀型教育はその目では見えないサレジアン国際学園の心の部分を世に照射することに役立っているのにすぎないのかもしれません。世界のサレジアン学校が連携し、予測不能で混迷している国際社会、凄惨な事件が起きている身の回りの社会、そんな中で凍てついたガラスの心に震えている人間を、良き社会、良き市民へ導いていくことになるのではないかと感じながら同校を後にしました。

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2023年6月 9日 (金)

東京私学教育研究所情報(09)初任者研修 「宿泊研修会」申し込み開始 教員養成の画期的研修

初任者研修の「宿泊研修会」の申し込みがスタートしました。令和5年8月22日(火)~24日(木)の3日間、かずさアカデミアホール・オークラアカデミアパークホテルで実施します。実施の内容については東京私学教育研究所のサイトをご覧ください。ここでは、今回の研修の意義は、教師のなりて不足という風潮を吹き飛ばす大切な研修であることを強調しておきたいと思います。教師は実は未来のクリエイティブクラスです。強欲資本主義から倫理的資本主義(NHK的パラダイムですが)に移行する未来にあって、ファーストクラスになるための垂直的序列主義がクリエイティブクラスがけん引する水平的多様性に移行します。そのようなクリエイティブクラスが活躍する時代がやってきたのであり、そのロールモデルが私学の教師です。

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★3日間ですから、3ステージの講師、OSTベースのワークショップ、フリーな懇親会などのストリーが次の委員の先生方によって作成されています。番号は支部の番号です。東京の私立学校は全部の12の支部に分かれています。

委員長

更科 幸一(⑩自由学園)

委 員

星野 真人(③國學院) 風見 加菜恵(⑥関東第一)
鷲尾 真樹(⑦田園調布学園) 石井 克己 (⑫成蹊)
東京私学教育研究所・初任者研修担当:岡沢・今村

★東京の私立学校、多くの委員会がありますが、それぞれの委員会のコンセプト、研修プログラムデザインは、各私学から有志の先生方が集結して作成してくれているのです。

★研修は、同教育研究所のサイトをご覧いただければおわかりいただけると思いますが、毎月のように実施されています。私学の教員コミュニティは、私学同士の協働によって成り立ち、私学全体が生徒の未来に責任をもち活動するのをサポートするためにダイナミックに動いています。

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2023年6月 8日 (木)

ZEN大学 2025年開校予定。別次元設定による大学受験比率高まる可能性大。

★こどもとIT(2023年6月7日 12:18)によると、「一般社団法人日本財団ドワンゴ学園準備会は6月6日、2025年4月開学予定のオンライン大学「ZEN大学」(仮称)(設置構想中)のカリキュラム、課外プログラム、教員予定者などを発表した。学長には九州大学名誉教授、JST/CRDS上席フェロー、NTT基礎数学研究プリンシパル 若山正人氏が就任予定とした。」というおとです。

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★「ZEN大学は株式会社ドワンゴと公益財団法人日本財団が提携、一般社団法人日本財団ドワンゴ学園準備会を設置して開学を進めているオンライン大学」です。したがって、今ままでの大学のシステムとは、様相が違います。設置学部は「知能情報社会学部」1つで、初年度入学定員は5000人、1年間あたりの授業料は38万円の予定らしいですね。経済格差を突き抜けるわけです。しかもこの学部はおそらく文理融合で、AI時代に必要なテクノロジーを実装するでしょうから、グローバル領域で活躍する人材や起業家が輩出されるので、人気がでるでしょう。

★とはいえ、今の大学受験生を対象とするより、まだまだ大学受験をしていない層をターゲットに充てているでしょう。そういう意味では、既存の大学の受験市場を荒らすわけではないので、一見インパクトはありません。

★しかし、高校卒業生の40%は大学に進まないので、そこをZEN大学市場として創発すれば、学歴社会の構造には打撃を与える可能性はあるので、要注目ではあります。

★ただ、生徒にとっては、歓迎すべきことかもしれません。立ち上がりの時の教授陣は、松尾さんとか東さんとか加藤さんなど、めちゃくちゃ尖った人ばかりですよね。ある意味、完全に次の世界の着想を語り実践してきた人物です。

★オンライン大学は、2050年には実現するであろう内閣府のムーンショット目標にも対応しています。時空を超える研究や貧困をなくす運動がまずはそれに対応するでしょう。

★加藤さんではないですが、複素平面のような正則構造が成り立っている中での大学システムではなく、もう一つの正則構造をつくってそこで新たな大学システムの脱構築を行うのですから、たしかに他に影響をあまり与えないのかもしれませんね。

★とはいえ、生成AIの動きを止めることはできませんし、メタバースの世界は着々と増殖しています。

★既存のシステムは変わらざるを得ないことも確かです。それがZEN大学のようになるのかどうかはわかりません。Z大学は実験施設に巨額の資金を積み込む必要はありませんが、医療や建築など巨額の資金が必要です。

★ミネルバ大学、iU、42TOKYOなどやはり同じようなインパクトがありました。これらと同じような進取の精神を実現する尖った大学機関の1つになるのか、社会構造を変化させるインパクトを与えるのか。

★既存の大学も対応するでしょうから、結果的に社会全体が動き出すきっかけを与えたというコトになるのかもしれませんね。

 

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2023年6月 7日 (水)

変わる私立中高(43)富士見丘さらなる高みへ

★先日の21世紀型教育機構の定例総会で、佐藤副教頭はこう語っていました。「コロナが落ち着いてきたので、海外留学や海外フィールドワークといったプログラムが復活しました。募集も順調です。若い教員が入ってきたことで雰囲気をさらに良くしています。WWLの指定が去年で終了し、今後はこれまでのWWLで培ってきた活動を独自に発展させていきます」とウェルビーイングな組織とさらなる発展に自信を持っていました。

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★すでに4カ月前に、「GLICC Weekly EDU 第111回「2023年中学入試を読む~富士見丘の生徒像に見る未来の教育」で、佐藤副教頭先生は、グローバル教育、探究の進化/深化、STEAM教育、大学進学実績の飛躍について自信を抱いていましたが、4カ月たって、新しい年度が進むにつれてさらなる進化の手ごたえを感じているようです。

★そして、先日福岡の研修から東京に戻ってきた吉田理事長校長は、ある女子校の視察を通して、何かインスパイアーされたようでした。さらなる富士見丘の教育の進化について新たに決めたことがあるという気概が伝わってきました。

★ますます富士見丘の教育の今後の展開に注目ですね。

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変わる私立中高(42)人気校の不易流行の作り方

★ここのところ6つの教育のうち4つ以上に取り組んでいる学校は人気が高い可能性があるという話をしています。すると、独自性とかなくなるのではないかと思う方もいるようです。たしかに、その4つだけを教育していたならみな似たり寄ったりの学校になるでしょうね。しかし、私立学校は、建学の精神に基づいたコンセプトXが6つの教育に浸透していくわけです。その建学の精神に基づいたコンセプトXは独自のものでしょうから、同じ衣装を装着しても人が違えば、それぞれユニークなのは変わりがないのと同じです。

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★建学の精神は、不易ですが、Xの部分(何がXかは学校によって時代によって違う)や力を入れる6つの教育は時代によって変わるものです。したがって、私立学校の教育は独自のそして先見性、先進性ある不易流行の組織を持続可能にしています。変わらぬものと変わるものとのバランス、伝統と革新の統合などという表現がなされるものそういうわけです。

★それにしても、この真ん中に建学の精神に基づいたSDGs教育を設定して、実践しているすばらしい学校があるのですが、そこの学校長が、SDGsなんていっているのは古いと言われてしまったと苦笑いしていました。もちろん、だからといって、その学校長が動揺していたなどということはありません。対処療法的なうけねらいの方がいるのは世の常で、私たちは根源的な問いを共有し、それを生徒といっしょに解決すべく学んでいくのだという気概を示されていました。すばらしいですね。

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★ちなみに、SDGsはご存じの通り、突然採択されたわけではありません。1972年の「成長の限界」のWorld3というシステムダイナミクスによるシミュレーション予想にルーツがあります。そこから環境問題をone earthとしてとらえ、国連などを中心に国際会議を重ねて採択されるに至っています。

★それなのに、SDGsは古いとか決めつけてしまうのは、もったいないですね。しかも、そういう方に限って、システム思考がどうのこうのとか氷山モデルがどうのこうのとか口角泡を飛ばして熱く語るのです。

★その考え方は、「成長の限界」を中心的に執筆したドネラ・メドウズの発想法です。SDGsは、いわばドネラ・プロジェクトのミームを引き継いでいるわけです。不易は氷山モデルでいえば、見えない部分ですね。流行は見える部分です。

★その両方のループの関係性を洞察するのがシステム思考だし、ドネラ・プロジェクトを引き継ぐSDGs教育です。

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変わる私立中高(41)聖学院インパクト あらゆる授業をシンプルな世界制作方法が貫く

聖学院は過去問を公開しています。本当によく聖学院のカリキュラムを反映した問いが表現されています。PBLや探究、テクノロジー、グローバル教育が充実していることが了解できます。ぜひ同校のサイトをご覧ください。もちろんダウンロードできます。このような教育環境は、生徒が自らタラント(才能)、テクノロジー(技術)、トレランス(寛容)、トランスフォーメーション(変容)、トラスト(信頼)といった5Tを体得するようになるでしょう。アドバンスト入試や英語入試、思考力入試からいくつ問いを見てみます。

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★英語入試のショートエッセイですが、生成AIが普及し始めるちょうどその時期にこのような英語で思考する問いを投げかけています。学校でコンピュータスキルをもっと学ぶべきなの?君の考えは?というのでしょう。英語で考える力ですね。もちろん、この中学入試の段階では、日本語で300字くらいで考えて、150語の英語に置換えればよいのでしょうが、ストレートに英語で考える習慣を身に付けている生徒もいるはずです。すごいですね。しかし、いずれにしても、トピック、根拠、体験というエビデンスが必要ですが、実はさらにメタ認知的には、具体と抽象という重みづけ、主張と根拠という統合、反対の考え方など、賛否のカテゴリー分けなど思考のメタスキルの発動を問うてもいます。

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★社会の問題も、ふるさと納税のメリット、デメリットの両面から考える問題ですね。これもメタ認知的には、考え方のカテゴリー分けです。そしてそれぞれのカテゴリーごとに主張と根拠の関係をとうごうすればよいわけです。

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★理科の問題もおもしろいですね。脱塩の方法を2つ比較して、昔ながらの方法を説明しなさいと。どう違うのかカテゴリー分けするわけですが、ここは日常の鍋で起きていること等をアナロジーとして変形するメタ思考スキルを使う資質能力があるか診ることができます。

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★算数の問題。OBの補助線を引くと、急に見えますね。これはメタ思考スキルとしては削除・挿入の推理を活用するわけです。補助線を挿入するというわけです。面積や線分の変形というメタ思考スキルも使います。

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★デザイン思考の問いは、このまとめにくるまでに、今まで見てきたような問いが並んでいて、この200字まとめに到ります。基本は比較して、共通点と相違点を見出していくプロセスになるわけですが、その視点が多角的です。しかし、ここでもやはり、順序づけや重みづけ、分解と統合、変形といったメタ思考スキルがフル活用されています。

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★このメタ思考スキルがフル回転するのは、ものづくり思考力テストも同じですね。遊びと学び。遊びが実は人間のクオリティ・オブ・ライフを実現する道具立てやルールを作るのです。そのヒントをロジェ・カイヨワの視点を参考にするなど、創造性のレベルを急上昇させる仕掛けも巧まれています。いずれにしても、①削除・挿入、②順序づけ、③重みづけ、④分解と統合、➄変形という5つのメタ思考スキルを使えるかどうか診るわけです。

★以上のように、聖学院のすべての入試において、この5つのメタ思考スキルが発動するように作問がプランされているのです。

★この5つのシンプルなメタ思考スキルこそ、芸術哲学者であり数学哲学者であるネルソン・グッドマンの世界制作の方法なのです。湯川秀樹ではないですが、複雑な現象も、シンプルな原理によって成り立っているわけです。思考の原理とも言えます。

★理数教育の真髄は、ネルソン・グッドマンのシンプルなメタ思考スキルといコネプトレンズを生徒自身が可視化して活用していけるようになることであり、これは非認知システム認知システムでも同様です。ネルソン・グッドマンが、芸術と数学の両領域を往還していたということは、ここに通じるのだと思います。

★聖学院の思考力入試をはじめ各教科の入試が教科横断的になっているのは、この世界制作の方法というコンセプトレンズを教師が文理関係なく共有しているからでしょう。理数教育の真髄は、こうして真理は自由にするという話なのです。

★多様で複雑な社会課題に直面したとき、世界制作の方法というシンプルな真理を生徒が身に付けて、解決していく。この一貫性が聖学院のすべての授業に貫徹しているというのは、ものすごいインパクトですね!

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2023年6月 6日 (火)

変わる私立中高(40)理数教育のインパクト

★前回、人気のある学校は、6つの教育のうち少なくとも4つの教育に力を入れていると述べました。6つの教育とは、

①グローバル人材育成

②外国語教育

③理数教育

④ICT

⑤協働学習・探究

⑥大学受験指導

★このうち4つの教育に力を注いでいるところはその多くが人気が高いのです。そして、その4つの中に理数教育が選ばれている場合、そのグループの90%以上の学校が人気校です。一方、理数教育以外の5つから4つを選んでいる学校の場合は、人気校は75%です。これは、理数教育のインパクトと言わずして何と言いましょう。

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★たとえば、典型例が世田谷学園です。土曜プログラムの美術の時間を見学しましたが、まるで理数教育でした。STEAMも意識しているということでした。もともと本科コースと理数コースが設定されていますが、ここまで理数教育が徹底していると知り感動しました。

★もちろんパソコンで動画作成をしているクラスもあり、理数教育にICTは欠かせません。首都圏模試センター2023年2月6日現在の出願倍率速報をみると、2021年からの中学入試における総出願数は次のような推移になっています。1629名(2021年)→2333名(2022年)→2854名(2023年)。すごいですね。

★とはいえ、4つの教育>理数教育がはいっている>ICT教育にも力を入れている学校は、理数教育に力を入れているところすべてではないのです。そして驚くべきことに理数教育かつICT教育充実という学校(4つの教育を選んでいる学校グループで)は、99%人気校なんです。

★なるほど、AI時代です。大学も文理問わず、データサイエンス系の学部新設ラッシュです。理数教育は欠かせません。

★ただし、ICTも活用しているところが多いので、理数教育といっても、今までのとはかなり違いがあるでしょう。

★理数と芸術、家庭科、保健体育がコラボしてSTEAM教育を生み出している学校も増えています。

★未来の学校は、先述の6つの教育に力を注ぐ学校がサバイブするということなのかもしれません。

※データは、各学校のホームページをみて独断と偏見の推察です。

 

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変わる私立中高(39)4つの教育に力を入れる学校

★人気のある学校といのは、次の6つの要素のうちいずれか4つの教育に力を入れています。もちろん全部に力を入れることができる学校もあります。しかし、いずれか4つに力を入れているところは人気を持続可能にしているようです。

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★もちろん、4つに力を注ぎ、その他は準備段階とか鋭意試行錯誤の最中というところが人気があるわけですね。

★この6つのうち4つに力を入れている学校は、東京の私立中高一貫校では、20%くらいです。

★4つだけ教育を行っているのではなく、日々の教科学習や教育活動も行っているわけですから、実はたいへんなことなのです。

★3つ以上となると、60%以上の学校が取り組んでいるとなりますから、4つと3つのたった一つの差が大きいということですね。

★データは、各学校のホームページなどを見て独断と偏見で視察していますから、ほぼ勘です(汗)。あくまで参考程度です。

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2023年6月 5日 (月)

変わる高大連携(03)湘南白百合 お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーション研究所との連携プログラム 画期的

★湘南白百合が次々と高大連携を締結していることはご存じの方も多いでしょう。今回同校サイトでこんな記事が掲載されています。「中3探究 お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーション研究所との連携プログラム」がそれですが、2つの点で驚愕です。

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★一つは中3で大学の先生方と学ぶとは!という驚きです。もう一つは、従来の高大連携とは違い、上記図のB領域とC領域にまで進む、画期的な連携だということです。従来は、C領域をサイエンスコミュニケーションによるエッセンスを大学の先生が講義をするということが多かったわけですが、中3の生徒の好奇心を研究にまで進化させる生徒と大学の先生のいわばチュータリング制の研究活動さながらの連携なのです。

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★「令和2年度の大学における教育内容等の改革状況について(令和2年5月1日:文部科学省調べ)」のデータを見てもわかるように、このような連携はおそらく初でしょう。新型コロナ感染拡大の時期が3年間続いたので、その間のデータはありませんが、今後はお茶の水女子大学ー湘南白百合のいわばAP型高大連携が増えるのではないでしょうか。

 

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変わる私立中高(38)中学入試市場の第4波シフトを促す生成AI リアルな対話以上にリアル

★中学入試市場における第4の波のシフトを促進するのは生成AIであることは間違いないでしょう。第4の波の学習観は、思考コードの9つの領域を変幻自在に経めぐるわけです。A軸から順番に学びの経路をたどる時もありますが、C軸からでもよいのです。単純にその経路の順番を計算すると3の3乗×4通りもでてきます。もちろん、これはほんの一部です。にもかかかわらず、今まで学びの経路あるいは打ち手は限られたものでした。もはや無限なのですが、そうなると評価ができないのだと。

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★だから、今まではその学びのプロセスではなく、結果をみてきたわけです。しかし、結果も過程の一部なのに、そこだけで評価をすると他のプロセスの才能の芽が見逃されてしまうわけです。それでは、イノベーションなんて起きにくいですよね。

★しかし、生成AIのおかげで、そこのプロセスが明示されるようになってきたわけです。

★よく生成AIを使うと思考停止すると懸念されます。しかし、それは人間同士の対話においても思考停止は頻繁に起きてきたわけです。結果だけの評価=サマティブ評価は、まさにその大きな原因になってきた可能性があります。

★私たちが対話する時、単純な5W1Hの問いを投げ合うと、それは挨拶や日常の会話の時にはそれでよいけれど、PBLやグループセッションのときには、それだけでは思考停止してしまいます。

★少なくとも自分の考えをお互いに200字から400字くらいの言葉の塊にしてキャッチボールしないと対話は続きません。思考は広がらないし深まらないのです。

★生成AIと対話するときも同じです。ですから、生成AIを活用するとき、倫理的配慮、法的順守以外に、三角ロジックやアブダクションという推理方法で200字から400字くらいの言葉の塊の自分の考えを投げかけ、生成AIに君ならどう考える、もっと別な考えがあるのかと問いかけ、生成AIが回答してきたら、その回答に対しフィードバックしながら対話を続けていくスキルも必要になってきます。

★すると、東大の入試問題の記述の問題くらいの思考力は、別に東大受験をしなくても身につくし、それ以上に東大の帰国生・留学生対象の正解のない小論文に対応する思考力も身についてしまいます。

★知識も、生成AIと話す段階で、君のその知識違うんじゃない、僕もおぼろげなんだけれどとか語ると、申し訳ございません、間違っていました。こうですよねと答えてきます。それも間違っている場合があるので、調べて、この本によるとこうだよと語ると、その情報はまだ私は知りませんでしたとなる場合もあるわけです。

★このような対話が、ふだんの授業で頻繁にできるでしょうか?生成AIを活用しながら授業も変容せざるを得ないでしょう。確実に第4の波はやってきています。

 

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変わる私立中高(37)中学入試市場の第4波シフトの意味 思考コードが映し出す学習観の水平的多様性への移行

「GLICC Weekly EDU 第130回「首都圏模試センター×GLICCー2024年度中学入試最新情報」北一成氏の予想」で、北氏の考え方からインスパイアーして、中学入試の第4の波へのシフトを妄想したわけです。2014年から右肩上がりの首都圏の中学入試の第3の波の大きな要因を北氏は、「学び方の変化」と指摘しています。それがゆえに、思考力入試や英語思考力入試など新タイプ入試が急激に増えてきた可能性が大だと。

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★さらに北氏は、中学入試市場を3つのゾーンに分けており、そのうちCゾーンが勢いをつけてきた流れが、この第3の波が生まれてきたこととかかわりがあるのではないかと。そこで、このそれぞれの3つのゾーンの学習観を思考コードに対応させてみました。上記の図がそれです。濃い領域がそれぞれのゾーンの学びの重点領域です。

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★大学入試が一般選抜の受験生数が総合型選抜に比べまだまだ多いので、この3つのゾーンは、まだまだ垂直的序列主義の枠組ですが、世界の情勢が、この垂直的序列主義を水平的多様性に移行させる動きが相当でてきています。もちろん、それは限定的ではあるので、ある領域ZとY領域では、垂直的序列主義型ではあるけれど、Z領域内では水平的多様性になるという入れ子型のシフトの過程をたどることにはなります。

★この過程段階を中学入試市場においては第4の波だと妄想しているわけです。水平的多様性とは、あらゆる差別を見直し、フラットにしていこうという時代の要請でもあるのだと思うわけです。そうなってくると、3つのゾーンは融合していきます。

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★すでに、この第4の学習観はイメージされています。しかし、まだ学校現場では、すべてがこうなっているわけではないのですが、どのゾーンもこの方向に動くようにアフォードするコレクティブダイナミズムが多方面で起きています。高大連携然り、探究の学び然り、英語の学び然り、大学入試の多様性然り、インクルーシブ教育の必要性然り、エンパワメントの動き然り、SDGsの動き然り、人間の安全保障についても然り、グローバル経済の倫理ベース然り、アントレの重要性然り、平和創造の問題然り、リスキリング問題然り、シンギュラリティ―の加速化然り、あらゆるところで、学習観は、中学入試における第4の波へのシフトと同期していると思えてならないのです。

★第4の波の段階では、私立中高の学習観の水平的多様性を生み出しますが、公立との関係はまだ垂直的序列主義の関係が続いています。しかし、それはやがて、水平的多様性にならざるを得ないでしょう。そうすることで、大学のみならず、中高段階でも海外の生徒が日本に留学しにやってくるのです。この動きはすでに生まれています。少子高齢化が進めば、そうならざるを得ないでしょう。この段階が中学入試市場では第5の波となるでしょう。2030年から2050年の間に、それがはっきり見えてきます。内閣府が実施しているムーンショット計画との同期が起こるからです。

★英語でも日本語でも第4波の学習観で学ぶようになると、海外の中高大の留学生がかなり訪れるようになるでしょう。この動き自体は、内閣府や文科省、経産省の政策にも同期します。政策が実現するかどうかは、法整備とその内実である学習観の整備ということに気づくはずです。そして、これによって、1930年のケインズの予言が日本で的中することになるのです。

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2023年6月 3日 (土)

変わる私立中高(36)サバイブする学校とは?

★いろいろな学校の現場の先生方や理事長・校長・教頭と対話する機会が多いのですが、すごいなあと思う学校は、どんどん質と量ともに充実しているし、たしかに質と量の両方が右肩上がりになり、高めで安定し始めています。

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(ドネラ・プロジェクトの原稿では、質量ともに充実し続ける学校のケーススタディをしています。)

★たとえば、校長と話していて、少し学びの理屈や思考の話をしてみると、すぐに意気投合する場合、なかなかいいなあと思うのですが、別の機会に、教頭が少しそれに批判的で一般選抜が大事なんだと主張する場合、組織作りが大変だろうなあと思うわけです。

★その逆の場合もありますが、それは意外とよいのです。なぜなら、その教頭は、経営的な点で校長を支え、教学部分は任せられていて、新しい学びや活動に力を注げるからです。こういう学校は、校長が変わっても教頭と現場の先生方が一丸となっていれば持続可能なわけです。よほど理事会が現場の理解がない場合を除いては。

★さらに、校長も教頭もそして現場の教師も本当に一丸となって活動し、学びの理論についても進んで学んでいる学校があります。このような学校は文句なしですね。

★昨日もある学校でいろいろ多岐にわたる話を校長先生と教頭先生と対話しましたが、ぐんぐん伸びている学校の条件を揃えています。新しいつながりにもまずはやってみうようか本間さんと校長も教頭もすぐに動きます。「好奇心ーオープンマインドー問い生成」のコンセプトレンズを互いに持っているので、響き合います。

★私の周りには、幸いにもそのような先生方がいっぱいで、この間もある学校に訪れたら、その学校の副校長先生に、「本間さんコレクティブインパクトをつくるときに共通の尺度が重要だと言っていましたよね、私も本当にそう思います。多くの海外の学校と交流していく時に、やはり暗黙知としての尺度があるのはわかっていたんですが、確かにディスカッションしながらちょっと可視化していこうと思います」と声をかけられました。

★また、これは現場の美術の先生方の授業なのですが、いわゆるアート思考やデザイン思考など当たり前で、バウハウスのようなアート的なセンスと技術を生徒と共有する学びをナチュラルに自由な感じで行っているところは、ほんとうに生徒がフロー状態でプレイフルな雰囲気に満ちています。このような美術の先生方が自由に創発できる環境を創っている教務陣や経営陣がいる学校は、たしかに伸びていますね。

★チャットGPTの使い方など、もちろんセキュリティの問題や著作権の問題の議論もしつつ、実際に校長や教頭が使いながらメリット・デメリットを検証している学校もあります。頭から否定するのではなく、多面的に洞察していく思考習慣ができていて、かつ変わることに恐れを抱かないリーダーがいる学校もたくさんあります。この間もある学校の校長先生は、自らノートパソコンを持ってきて、いっしょに使いながら議論しました。そういうことだよなあとなんか爽やかでした。

★ことさら大きな声で言わなくても、予測不能な時代は今ままでもそうだし、これからもそうなのですから、校長や教頭のみならず教師の皆さんが洞察力と行動力の達人であれば、なんら問題ありません。実にシンプルで本質的なことです。どうやってその力をつけるの?研修ですか?そういのもありですが、日々、校長、教頭、教師が対話しまくり、生徒のエージェンシーを生み出す環境づくりに試行錯誤して汗を流していれば、シンプルで根源的なものが見えてくるものです。もちろん、世界への眼差しは当然ながらその対話には織り込まれています。

★中学受験は、第3の波から第4の波にシフトします。このままいけば、その波を生み出す学校もあるでしょう。その波にうまく乗る学校もあるでしょう。飲み込まれる学校もあるでしょう。しかし、すべての私立学校が生み出す側になるように微力ながら動きたいと思っています。

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変わる高大連携(02)八雲学園のイエール大学との成長する連携②

★二日目は、めぐろのパーシモンホールで、イエール大学の<Whim’sRhythm>(アカペラの音楽チーム)とのコラボコンサートが開催されました。

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★Whim′s Rhythmは、40年以上歴史があるイエール大学のアカペラチームです。イエール大学には同じようなチームが10以上あるようですが、その中でも最高のクオリティを有していると言われているようです。

★そんなチームと八雲学園のミュージカル部<glee>と声楽部とそれぞれコラボして演奏します。もちろん、Whim's Rhyrhmのアカペラコーラスの作品が多いのですが、八雲学園のチームがいっしょに英語で歌ったり、日本語でも一緒に歌ったりと響き合うその姿にグローバルなつなりとはこうでなくてはと思わせるものがありました。

★このイエールの大学のチームメンバーは、音楽を専門にしているわけではないのです。生態学、芸術学、比較文学、mん俗学、心理学、環境学、演劇学、歴史学、データサイエンス様々な専門領域で学んでいます。多様性のチームです。

★八雲学園の生徒は、毎年このチームとの出会いを楽しみにしにしています。ウェルカムの式典とパーシモンホールでのコンサートは、全学年が参加します。1日目の交流は、中3と高2の学年が全員でもてなし交流します。それから、声楽部、glee、吹奏楽部、軽音楽部は、共に演奏を楽しみます。

★特に、声楽部とgleeは次の日のコラボ演奏の準備をします。時間はそれぞれ30分ですが、その日までに互いに練習をしてきていますから、あっという間に調整ができます。

★また、高3のEクラス(帰国生や英語の得意な生徒の英語取り出しクラス)は30人くらいて、そのうち高校から入学した生徒は、ランチの時間にone to oneで、対話をする機会を持ちます。英語をもっとうまくなるには?海外大学での暮らし方とは?今回の旅の目的は?など途切れることなく英会話を楽しむわけです。

★八雲学園は、特にイナーナショナルクラスというシステムはありませんが、それはあえて作らないのです。八雲生が全員がバイリンガルであることを目指しているからです。10人前後のネイティブスピーカーの先生もいるのです。英語科のミーティングは当然英語です。

★イエール大学の学生が去ったあと、今度は姉妹校ケイトスクールの生徒が10人八雲学園を訪れます。同校はラウンドスクエア加盟校でもありますが、他の加盟校の生徒も交換留学で毎月のように訪れます。

★また夏にかけて2クラス分の人数の生徒が、アメリカに研修旅行に出かけます。

★八雲学園の考えるグローバルリーダーとは、イエール大学の学生と同じように、いろいろな専門領域でリーダーシップを発揮するということです。つまり、結局、生徒1人ひとりの独自の才能を生かせる領域でグローバルに活躍することを目標としているということでしょう。

★たとえば、ケイトスクールにおいては、そういう教育を特別にことさらグローバル教育とは呼びません。当然のことだからです。八雲学園はラウンドスクエア加盟校として同じポジションあるいは水準に立っているということなのです。

★このことに気づいた受験生の保護者が注目するのが八雲学園なのです。近藤理事長・校長も、「これがうちの高大連携の真髄だよ」と。

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GLICC Weekly EDU 第130回「首都圏模試センター×GLICCー2024年度中学入試最新情報」北一成氏の予想

★昨夜、GLICC Weekly EDU 第130回「首都圏模試センター×GLICCー2024年度中学入試最新情報」がありました。首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成氏の市場の変化の見通しと2024年中学入試の動向予想の貴重なトークを聴くことができました。

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★北氏は1986年から中学入試の動向を見てきています。今までに3つの中学入試の波があり、それぞれの中学入試の波を生み出してきた要因を時代の変化と関係づけながら分析しています。第3の波は、2014年から始まっていて、その要因は、各私立学校の授業や教育活動における学びの環境の卓越性に受験生・保護者が着目しているからだと洞察しています。

★2013年以降、高大接続改革や学習指導要領の改正の議論が高まりましたが、それは世界の教育情勢やICTを活用した21世紀型スキルをベースにした新しい学習がGAFAMと共に世界を席巻している時代の流れと同期しています。

★私立学校はすでに2011年3・11以降、急速にこの世界の動きをキャッチし、独自の学びの視野を広げ深めてきました。それが文科省や経産省の動きと共通するところもあり、ある意味コレクティブインパクトを引き起こし続けています。

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★北氏は、同センターの代表取締役山下氏と協働し、この新しい学びを体現している新タイプ入試についての取材・インタビュー、ワークショップイベントを進めてきました。また、偏差値及び多面的評価(思考コード)という両方の共通尺度を、晶文社や声の教育社などとも協働して受験市場でシェアしてきました。

★まさにコレクティブインパクトの条件を次々とクリアしてきたわけです。そして、中学受験の第三の波が10年目を迎えることになるわけです。予想では、ここから先第4の波にシフトし始めると北氏はこれまで予想してきましたが、もうしばらく続くと上方修正っすることになるかもしれないと今回語っています。

★たしかに、北氏の考え方をお聞きするにつれ、北氏が2014年から仮説を立ててきた3つの受験市場のゾーンがどんどん実現していることがわかります。

★そして、第3の波がしばらく納まって、第4の波にシフトするというより、納まることなく右肩あがりのまますぐに第4の波にシフトするのではないかと思えてくるのです。

★というのも、第3のゾーンは、「好奇心ーオープンマインドー問い生成」を生みだせる文理融合的な才能児を発掘する新タイプ入試をやっているのですが、これは入学後の6年間のカリキュラムもそのような環境になってきていて、そこから海外大学や総合型選抜でいわゆる偏差値ではなく、成長尺度で大学に進んでいく世界ができているのです。

★今までは、AゾーンとCゾーンでは、合格する大学の難易度が違っていたわけです。2011年までは、Aソーンに行けば勝ち組になれるという意識があったことは否めないでしょう。ところが、今ではAゾーンでもBゾーンでもCゾーンでも、生徒は自分の「好奇心ーオープンマインドー問い生成」という成長度に応じて、行きたい大学に行ける時代になってしまったのです。Cゾーンから東大に行きたいと思えば、チャレンジできるようになりました。ただ、世界の大学を選択できるようになってもいるので、東大以外の世界大学ランキング100位以内の大学の道も開かれてしまっているのです。

★第3の波は、A,B、Cゾーンが垂直的序列主義的な枠組みの中でそれを崩そうという動きでしたが、第4の波は、もはやそれは崩れて水平的多様性の枠組に変容し、「好奇心ーオープンマインドー問い生成」という才能・技術・寛容性が生徒1人ひとりの個性が、独自性と社会貢献性の両方のベクトルで出来上がるようになっていきます。学校選択が、その生徒1人ひとりの個性にマッチングするかどうかになるでしょう。

★では、垂直的序列主義はなくなるのか?いいえ、日本社会全体が、まだまだその主義から抜け出せないので、私立学校が卓越的にその垂直的序列主義を超えてその上空で水平的多様性を生み出すという教育社会的構造になるでしょう。これが第4の波の本質だと。北氏の論を展開していくとそうなるなあと独断ですが思うわけです。

★それでは、結果的に私立学校と公立学校の垂直的格差はなくならないではないかと。現状ではその通りです。しかし、それは、公立学校も「好奇心ーオープンマインドー問い生成」の学びを新学習指導要領を読みことによって可能にしていけば、格差はなくなります。

★これは経済格差ではなく、学習観格差ですから、やろうと思えばできます。今はそんな馬鹿なと思う人も多いでしょうが、2025年、いよいよ21世紀型教育を全うした生徒が大学を卒業して世にデビューします。21世紀型教育ベースのZ世代は「好奇心ーオープンマインドー問いの生成」という「考動」力を持っています。第5の波は、日本の教育全体が水平的多様性の世界になるでしょう。

★以上のようなことを北氏のトークから、インスパイアーされました。ぜひご視聴いただき、それぞれに未来に視座を広げてみましょう。

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2023年6月 1日 (木)

変わる高大連携(01)八雲学園のイエール大学との成長する連携①

★八雲学園の年に一度のイエール大学との高大連携。同大学の<Whim’sRhythm>(アカペラの音楽チーム)と音楽交流をする連携ですが、もう10年続いています。この連携のかけがえないの価値ははかりしれません。何せ、日本では八雲学園とのみ行われている交流です。その交流が、コロナ明けに3年ぶりに再会しました。2日間の交流で、1日目は八雲学園で9つのプログラムが実施されます。八雲生とワークショップやパフォーマンスを行うのです。もちろん英語でです。当日は、中3と高2の学年が中心ですが、八雲生は6年間の生活の中で、全員が2度このプログラムを体験することになります。2日目は、パーシモンホールでコンサート。コラボして演奏する曲目もあります。この日は八雲生全員が会場に入場します。

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(ミュージカルクラブ<glee>と明日のコラボの音合わせ)

★八雲学園のこの高大連携は、他とはかなり違いがあります。異色の高大連携です。大学の先生が講義にくるわけでもないし、探究活動を共にするわけでもないのです。しかしながら、生徒はイエール大学の学生と交流することによって、インスパイアーされ、さまざまなキャリアデザインを自分で切り開いていきます。

★ミュージカルクラブ<glee>もその一つです。10年前にイエール大学と出会った先輩たちが、私たちもミュージカルをやりたいと立ち上げたサークルがあっという間にクラブに昇格したのです。かなり本格的ですが、それも一年に一度、そのときにイエール大学とコラボレーションできる腕を磨き上げるための活動をするのが伝統になっているのです。

★音楽をコラボして作っていくには、英語も必要です。歌詞の意味について語り合ったり、ハーモニーについて語り合ったり。

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★まず、イエール大学の学生と出会ったときに、ウェルカムミュージックとして、自分たちの歌を披露します。ミュージカルですからダンスもあるし、セリフもあります。すてきです。イエール大学の学生も大いに盛り上がります。

★そして、明日共に歌う作品を歌います。その響きは互いに感動を生むものです。明日はこれでいけるねと。

★しかし、各パートに分かれて詰めてみましょうとミーティングというか音合わせ。

★もう一度歌います。なんとこれぞビフォー・アフターの妙技ですね。さらにすばらしい歌声が響きました。わずかな時間に作品が完成する。これはgleeのメンバーが日々練習を積み上げてきているからできることです。

★最後に<Whim’sRhythm>から贈るアカペラコーラス。静かな音楽の中に燃えるような情熱の響きが、この高大連携の核心を共有することになりました。

★このプログラムはわずか30分です。次のプロラムは、軽音楽部とのセッションです。別れを惜しみながら、イエール大学の学生は次のプログラムに移動しました。もちろん、そこでもすばらしいケミストリーが起こるのです。

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