変わりゆく世界(02)東大の入試問題と文科省の新しい対応がさりげなく真のグローバル教育を生成する
★東大の入試問題といっても、一般選抜ではなく、「外国学校卒業学生特別選考」の入試問題。留学生や帰国生を対象とする入学試験問題の話です。たとえば、2023年の文科二類の問題をみてみましょう。
「グローバル化が各国内の経済格差を拡大させることはしばしば指摘されてきた。では、グローバル化が経済格差を広げる経路としては、どのようなものが考えられるだろうか。可能な限り具体例を挙げながら説明しなさい。また、「グローバル化が各国内の経済格差を拡大する」という主張それ自体の妥当性についても、あなたの考えを述べなさい。」
★正解が1つではない問題ですね。東大の一般選抜には、このような問題は出題されません。グローバル化の現実的な問題点は多くの国内高校生でも大丈夫でしょう。しかしながら、「グローバル化が各国内の経済格差を拡大させる」というのは、一つのメンタルモデルであって、それをひっくり返すことは可能かもしれないという発想は、なかなか生まれてこないでしょう。
★なぜなら、国内に目を向けているだけでは、持てる者はどんどんリッチになり、持たざるものは、自分のもっているものまで奪われるという発想は、マタイ効果とまで言われていて、なかなかひっくり返すのは困難なように見えます。
★しかし、グローバル教育を受けている生徒は、マタイ効果がすでに聖書とは真逆の話を言っていることの先入観を疑う思考力を身につけています。この問題、「持てる者」の意味を読み替えるだけで、必ずしも妥当ではないと語ることができます。と同時にそれが難しい理由もみえてきます。そこの兼ね合いは、様々ですから、正解が1つではない問いとして、古典的であるけれど、現代性のある問いなのです。
★つまり、リベラルアーツや哲学の学びを、現代の問題に適用し、新しい考え方を生み出す思考力を問う問題です。
★知識・技能の適用ということはそういうことでしょう。このような学びのスタイルを体験している帰国生や留学生だから、このような問題を出題しているわけで、このような学びのスタイルを体験していない国内生には、知識・技能の適用ではなく、活用方法までしか問わないのが一般選抜です。
★しかし、東大当局は、それでは、困るのです。この外国学校卒業学生特別選考」で入ってくる生徒は、1%ぐらいだからです。このような力が必要なのに、1%では少なすぎます。
★そのことをよくよく知っている文科省は、考えました。一般選抜は変えなくても、入ってから戦力になればよいのだから、高校のふだんの授業を「主体的・対話的で深い学び」にシフトし、「探究」もいれてしまおうと。実際、ここでは、総合型選抜というのもあるから、東大の上記のような問いを思考する機会がどんどん増えているのです。
★その結果、海外大学に挑戦してしまう生徒も出てきました。とはいっても、たとえば、開成でも1%から3%の生徒の話ですから、まだまだ普段の授業や探究が大切な機会となるのです。
★また、文科省は、国連や世界経済フォーラムから、日本の教育がインクルーシブ教育やエンパワーメント教育をやっていないではないかと指摘され、昨年からこれらの教育を見直しています。
★そして、このような動きはいずれにしても世界標準の話ですから、英語が必要になります。これもすでに、小5、6年で英語の教科化が実施されています。
★これらは全部、真のグロバール教育の構成要素です。しかしながら、一つ一つバラバラに発信されているので、まさか日本の社会が真のグローバル社会に向かっているのだとは、なかなか気づかないのです。
★しかし、2050年を超えたころから、今のままでは、日本人はサバイブできまない状況が目の前に広がります。そもそも日本語を話す人口が少なくなるのです。文化遺産として保存しなくてはならないぐらいになるでしょう。
★東大も文科省も、そのときのために、静かにさりげなく動いているのです。大きくかじを取ってみようとしたときもありましたが、現場からはさんざんでした。分散して統治するのが効果的ということでしょう。
★いずれにしても、着々と日本の教育は世界標準になっています。
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