変わる私立中高(23)新たな学校の法化現象に対応するために メンタルモデル×アイデンティティ×トラウマ×ダイバーシティの変容の大切さ
★昨年、2010年に作成された「生徒指導提要」が12年ぶりに改訂されました。2010年ごろ、それまで保護者が学校を訴えるということは珍しかったのですが、当たり前になるフェーズが現われたのが、おそらく「生徒指導提要」を作成する理由の一つだったと思います。そのような学校の法化現象が起こるには理由があるはずで、そうならないように生徒指導をしていこうということだったのだと思います。事件が起こってから対応するクライシスコントロールの前にセーフティーネットを広げるリスクマネジメントの強化ということでしょう。
★ところが、2011年3月11日の東日本大震災の体験以降、SNSが急激に広まり、支援の輪が広がりボランティア活動を募るポジティブな効果が生まれた半面、SNSによる多様な被害も増えました。また2010年ごろは、まだエンパワーメントやインクルーシブ教育に対する意識が低かったのですが、2015年採択されたSDGs以降、マイノリティをきちんと受け入れることや困難な局面にある人々にエンパワーメントする流れが生まれてきました。すると、それに反する問題が明らかになり、2010年ごろまでメディアでもあまり取り上げられなかったハランスメントやDVなどが子どもにダメージを与えていること、ヤングケアラーの社会的問題など、それをなんとかしようとする学校や児相、警察、NPOなどを巻き込んだ教育問題も起こるようになりました。
★これらのプレイヤーがチーム学校を組織化し対応することが喫緊の課題になってきたのです。そのことが今回の改正には濃厚に反映しています。
★このチーム学校には発達心理学、精神分析学、認知心理学、カウンセリング、リーガルマインド、組織開発、人材開発、学習開発などのそれぞれの多様な手法がインテグレイトされて作成されたということになっています。
★ですから、この提要を読み進むと「学習する組織」「SEL」「コレクティブインパクト」の考え方や方法論も包摂されていることが了解できます。
★改正の提要は、学習指導と生徒指導の一体化を目指しています。現行学習指導要領では個別最適化と協働学習の一体化、教科と探究の相互作用などがねらわれています。
★明らかにシステム思考的あるいは構成主義的な学習観がベースにあります。
★そうなってくると、総合型選抜に対応する学びなどのコアになる、生徒自身が自分とは何かに気づきその部分を成長させるべく様々な体験を通していく探究活動と教科学習と発達心理学などが融合していくことになるわけです。
★ですから「自己とは何か」「未来の自分像とは何か」など自分の存在や価値をめぐる話も、発達心理学的側面だけでみていくわけでは済まなくなっています。認知心理学や精神分析、認知能力的側面、非認知的能力側面などの包括的な人間とは何かを学んでいく必要がでてきました。
★そこらへんが、多様な価値観というの名の分裂的自己のモザイク画になっているために、人間関係において自己への不安が互いに増幅し、そのモザイクのピース同士の亀裂からいろいろな問題が噴出しています。亀裂に空虚が生まれ、そこを妄想で埋めようとすると不安は増幅し、妄想ではなく、共感して埋めていくと全人的人間像が生まれてきます。したがって、なめらかにつないでいく必要があるのです。
★その試みの第一歩が、認知科学的に眺めているメンタルモデル、精神分析的に眺めているトラウマ、発達心理学的に眺めているアイデンティティの相違点と共通点と相乗効果(ポジティブでもあるしネガティブでもありますから、ポジティブのシナリオをどうするか)を考察していく必要があります。そして、実は相違点はグローバルな視野、つまりダイバーシティの受容が必要にもなります。
★このヒントは「学習する組織」「SEL」「コレクティブインパクト」「グローバル教育」の人間関係づくり組織作りなどの考え方が役に立つでしょう。
★これについては、神崎先生や内田先生、鈴木裕之先生等と対話をしてビジョンが降りてくるといいなあと考えています。よろしかたっら、お知恵をお貸しください。
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