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2023年5月25日 (木)

変わる私立中高(28)どうする?リバタリアン・パターナリズムとリベラル・コミュニタリアン

★本シリーズ27回目で、私立学校に対する国の政策を多様な法制度の変遷でみてみました。そのとき、当時私学撲滅法とも言われていた「私立学校令」の官学重視度がどれほどのものかをイメージしたかったわけです。しかし、その前に日本の初代文部大臣森有礼が徐々に国体主義的な法律を次々と作っているのをさらりと添えておきました。

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★列国と肩を並べるために急激な民主化を果たそうとし憲法まで発布してしまう当時ですから、森有礼の業績はすさまじいとは思います。教科書的には、今の日本の教育の枠組を形成したとあるわけです。それはそうだと思いますが、私立学校からみると、称賛ばかりはしていられません。

★森有礼は、明治憲法が発布されるその日に暗殺されます。その理由は歴史家に任せるとして、その後すぐに教育勅語がでてくるのです。これは森有礼の意志を継ぐものなのか?いやそうでもないのです。

★というのも教育勅語の起草者の1人元田永孚は、森有礼が生前の時は、その教育思想において共鳴していながらも、森のあまりのラディカルぶりに懸念を感じていたと語る学者もいます。元田は儒教主義者だし、森は最初は啓蒙思想を受容し、のちに英米訪問してスペンサーの影響を受け、社会進化論的な発想になっていくらしいのです。ともに明六社でいっしょだった東大初綜理の加藤弘之が啓蒙思想を捨て、社会的進化論に突き進み、優勝劣敗思想をベースにしたのと同期していたのかもしれません。

★ですから、森はルソーに代表される啓蒙思想はやめたのだと思います。ルソーと言えば、一般意志による社会契約です。その前提に自然状態があるのは周知の事実ですが、ルソーは、全体意志に従うなといっているわけです。

★全体意志とは、簡単に言えば独裁的権威や権力でしょう。一般意志は、いまでいうブロックチェーン的な市民全体が自らリスペクとする意志ですね。

★全体意志の中で自由を担保しようと。森は初めての契約結婚をしたで有名ですから、社会契約を全体意志によるものとみなしていったのかもしれません。

★したがって、リバタリアン・パターナリズムだったのでしょう。この真偽はわかりません。あくまで私の妄想です。ただ、明治憲法発布の時に暗殺さることにより、リバタリアン部分は完全に削除されたわけです。パターナリズムが第二次世界大戦まで続くわけです。

★そこから戦後、教育刷新会議が立ち上がり、内村鑑三、新渡戸稲造門下生、つまり私学人の多くが参加し、教育基本法を成立させました。これはリベラル・コミュニタリアン的な発想です。自由なんだけれど、あくまでそれは利他主義を持続可能にするシステムであるということです。

★実は、これがルソー的な一般意志による社会契約だと私は思っています。

★ルソーは、ちゃんと儒教の影響も受けていたので、ルソーを受容するのに、明治の私学人は抵抗はなかったのだと思います。

★もちろん、話はそう簡単ではないでしょう。ポリティカルとルサンチマンの混在した権力闘争が歴史の背景にあるからです。

★しかし、いずれにしても、パターナリズムは、現在では受容されない抑圧的なものがあります。

★現在は、この傾向や性格にものすごい社会的モニタリングがグローバルレベルで動き始めています。

★それは、歓迎すべきでありますが、歴史は少なくとも両義性で動いていますから、そこは冷静に観察・考察していく必要がありそうですね。

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