変わる私立中高(14)偏差値による垂直的序列主義が崩れる発想の転換が起きている。
★ここにきて、東京の私立中高の教育環境デザインの主要素7つは、すべての学校が揃えたと考えてよいかもしれない。先週土曜日中央大学附属中高(中附)で開催された研究会に参加した学校は男子校、女子校、共学校など多様で、質疑応答のシーンで、これから学びたいというよりは、同じように探究などに取り組んでいるのだが、この点はどう対応しているかなどの問いで溢れていました。
★つまり、中附の教育の主要素に関しては共通しているが、進捗状況や課題解決の方法、アウトカム等々の質の違いがあるということだと感じました。プロジェクト学習のシナリオ作りはどうしたらよいですか?ではなく、シナリオづくりのこんな点が違うのですが、その点についてコメントをいただきたいという感じです。教師がファシリテーションをするのはわかりますが、なかなかシフトできないのですが、アドバイスいただけないですか?とか。海外研修はうちも当然実施していますが、新しいアプローチはないでしょうか?とか。
★つまり、上記の図のように、
①プロジェクト型授業
②多様な体験
③AIミックス学習
④多様なグローバルプログラム
➄高度な英語力
⑥対話の質
⑦生徒の成長
★この7つの教育環境デザイン項目は、どこの学校もなんらかのカタチにしているのです。したがって、こんなプロジェクトやってますとか、こんな体験していますとか、AI使っていますとか、海外研修やってますとか、高度な英語力を身に付けるプログラムを備えていますとか、グループワークなど対話を取り入れていますとか、生徒が豊かに成長していますとかだけでは、学校選びはなかなか難しい世の中になったのです。
★どうやら、それぞれの項目の質やレベルなどの違いがわかる基準が必要になってきたようです。首都圏模試センターの「思考コード」や中附の先生方が一丸となって開発した「chufu-compass」などがヒントになると思います。
★さて、この7つの諸要素の関連が化学変化を起こすわけですが、その結果何が起こるのか、すでに起きているのですが、たとえば、大学進学実績の東大の価値が変わるのです。
★どういうことか?それはすでに確実に起きているのですが、上記の7つの諸要素の化学変化を起こす動きによって、どの学校からも世界大学ランキング100位以内の大学に進学することが可能になったということです。
★東大だけが目標だと、入学者は3000人強ですから、たしかに競争は激しく、垂直的序列ができてしまいます。ところが、どこの学校からも世界大学ランキング100位以内の大学には入れるようになっているのです。たとえば、東京だけで私立中高一貫校は180強あるわけです。それぞれから3人ぐらいは、世界大学ランキング100位内の大学に入る潜在的可能性があります。すると、東京の私学から500人以上が東大以外の世界大学ランキング100位以内にはいれるわけです。それにおそらく3人どころではないでしょう。10人くらいはいける能力が十分にある環境が揃いつつあります。すると1800人は東大レベルの大学にはいれるわけです。
★実際に受験するかどうかはわかりませんが、少なくとも東大レベルの大学にはいるチャンスが広がるわけです。
★相対的に実質的に東大偏差値の価値は低くなります。そしてこの低くなることは何も東大の価値が下がることを意味するわけではないのです。ただ垂直的序列主義の価値観を崩す発想になるということなのです。
★日本の人口は減る一方です。母語は歴史的文化的に保護しなくてはなりませんが、日本語を話す人口はますます減るのです。アフリカのスワヒリ語は1億人が使っています。アフリカの人口は増えるでしょうから、グローバルサウスの時代、少なくとも日本語よりも注目される言語になっていくでしょう。
★母語を守りながら、世界言語を学ぶのはもはや必須の時代でもあるわけです。すぐれた世界対話力が求められている時代であることは、今回のウクライナ問題で私たちは身に染みて了解しているはずです。
★垂直的序列主義から水平的多様性へシフトすることが世界の平和や安全、つまりはウェルビーイングを生み出すことにつながることになるでしょう。上記の7つの項目がつくる教育へのシフトは、学習指導要領が変わるからとか大学入試が変わるからとかという理由もあるでしょうが、どうやらその背景にある世界の価値の転換にシンクロしているのかもしれません。
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