« 2023年3月 | トップページ | 2023年5月 »

2023年4月

2023年4月30日 (日)

八雲学園 今後世界が求める「バラザ思考」を学べる超学校 真のグローバルリーダーを輩出する環境。

★先週金曜日、GLICC Weekly EDU 第126回「八雲学園ー本物のグローバル体験ー」がありました。今回は、八雲学園のグローバル教育の多様なプログラムを一通り丁寧に、その内容のみならず、開発された経緯や、その中で生徒がどう成長するかなど語っていただきました。副校長菅原久平先生の社会や文化的背景の見識と副校長近藤隆平先生のご自身海外大学で学び、世界の学校の豊富なリサーチを通じての見識の両側面から語っていただきました。そして、その中で、他校にはないそれでいて国連や世界の人材開発マネジメント、G7などでも注目されている「バラザ思考」の学内浸透について語っていただきました。

Gwe_20230430192701

GLICC Weekly EDU 第126回「八雲学園ー本物のグローバル体験ー」

★60名収容できる海外の高級ホテルレベルの八雲レジデンスをサンタバーバラに所有しているというのは、まず他にない環境です。そして、中3の最後の時期に、回数を分けて、全員が参加するわけです。このように国内の多様なイベント同様、海外のプログラムも、有志の生徒だけではなく、全員が体験するところからはじまるところが八雲学園の大きな特徴です。そこからもっと英語力を生かしたいという生徒にとっては、多様なプログラムが用意されているのです。

★とにかくグローバル教育のプログラムは本当に多様で充実しているのです。したがって、海外大学に進みたいという生徒にも準備は万全で、実際に多くの生徒が海外大学に合格しているのです。

★海外大学に合格するというのは、高度な英語能力のみならず、文化や歴史などの教養と未知の問題に直面した時、その解決に立ち臨む柔軟な思考力が必要です。したがって、そのような資質・能力を身に付ける教育環境が、すべての八雲生に整っているのです。

Barazathinking

★そして、さらに八雲学園のグローバル教育の他にない特徴は「バラザ思考」を活用する機会がすべての八雲生に開かれていることです。バラザという対話システムは、八雲学園が加盟しているラウンドスクエア(RS)が開催する国際会議で重視されています。RSでは、次のように説明されています。

<バラザ(Baraza)は、アフリカのスワヒリ語で「異なる人々が集まること」を意味する古い言葉です。バラザでは、学生や社会人の代表者がディベートや自由な議論を行うことができ、全員の意見が平等に評価されます。すべての会議参加者は「バラザグループ」を割り当てられます。バラザはリッカより小さく、学生のバラザリーダーが指導します。>

★この文章の中に「リッカ」という別の対話システムがでてきますが、このリッカは、私たちがふだん活用している対話システムです。G7のように同じ想いをシェアしているメンバーが集まって、合理的に議論し解決の合意に向けてディスカッションをしますが、バラザはその前提を外して「異なる人々が集まって」自由に話すわけです。

★リッカは制約的自由がありますが、バラザは開放的自由が前提です。そしてより根源的な問題に迫っていくわけです。リッカは、課題が設定され、それを解決する目的があるのでしょう。

★このバラザが、国連などでも取り入れられているわけです。目の前の問題を解決するのが国連の常でありますが、その前に根源的な問題を掘り下げていく機会が世界の人びととシェアできることも大切なのだということでしょう。

★世界標準のカリキュラムとか教育とかよく言われますが、その多くが海外大学に合格できるという目標が決まっていて、それ以上に根源的問題があることにも目を向けるというところにまではいかないのです。そして、このことに気づいている学校は海外でもそう多くないのです。RS加盟校のような学校で展開されているぐらいかもしれません。

★IBも創設するのに尽力したクルト・ハーンですが、彼がIBはやはりリッカ的側面が強く、それではグローバルエリートを生み出すことはできるけれど、真のグローバルリーダーを生み出すことはできないと思ったのでしょう。そこでRSを創設したのだと思います。

★IBとRSの違いは、グローバルエリートを生み出すか真のグローバルリーダーを生み出すかの違いがあることに気づいている人は実は少ないのですが、クルト・ハーンが置かれたシチュエーションと同じような世界環境が迫ってきている今日、バラザ思考はとても大切なのです。ぜひご視聴ください。

|

東京私学教育研究所情報(07)4月29日 同研究所研究協力学校「中央大学附属中学校・高等学校」<行動する知性を育む>教育実践発表会

★先週4月29日(土)、中央大学附属中学校・高等学校(以降「中附」)は、東京私立中学高等学校協会・同私学教育研究所の研究協力学校として、教育実践発表会を開催しました。生徒のコンピテンシーを学年ごと経年リサーチをし、それに基づいて探究の時間である「教養総合」という新カリキュラムを改善しながら構築していったカリキュラムプロデュースの方法とコンピテンシーを計測するシステム「Chufu-compass」の実践発表が行われたのです。

Chufu

(写真は同校サイトから)

★新学習指導要領に導入された「総合的な探究の時間」をどのように作成していくかは、多くの学校で関心度が高く、それ以上に生徒の評価やその評価に基づいてカリキュラムの改善を行っていく手法への研究方法について一から知りたいというニーズは非常に大きいのです。

★したがって、多様な学校から多くの先生方が参加することになりました。当日は質問が多方面からあり、予定していた時間が延びたのも忘れて刺激的な実践発表会となりました。

プログラム概略

・挨拶 石田雄一校長

・本校の歩み「学習意欲を喚起するために」 大島誠二副校長

・研究の概要 斎藤祐 先生

・報告1「教養総合Ⅰ 新カリキュラム策定の経緯と実践」 高和正 先生

・質疑応答①

・報告2「挑戦する教養総合Ⅱ 分野の壁をの乗り越えて」 斎藤晃先生 高3生 Mさん

・報告3「支援としての学習評価 行動する知性を育むために」 斎藤祐 先生

・質疑応答②

・講評 東京私学教育研究所

★学校全体で取り組み、新しいカリキュラム作りの先生方の情熱が伝わってきました。また高3生のMさんの卓越した取り組みも発表され、中附の教育力の卓越性に参加者は大いに刺激を受けたようでした。

|

2023年4月28日 (金)

東京私学教育研究所情報(06)6月12日 私学経営研究会「新人事務職員研修会」開催

2023年6月12日(月)、アルカディア市ヶ谷(私学会館)会議室で、私学経営研究会「新人事務職員研修会」(令和5年度)が開催されます。テーマは「私学事務職員の心がけ、接遇の基本」です。私学は、教育と経営の両輪で動いています。互いに共に同じ方向に同じ速さで協力し合うことが大切なのはいうまでもありません。そして、何より両者が生徒、保護者、社会に対して、信頼関係を作っていくことは必須です。

Photo_20230428120801

基調講演は、豊田美樹先生(一般財団法人東京私立中学高等学校協会 私学経営研究会委員・明治大学付属中野八王子中学高等学校)による「私学事務職員の心がけ」です。

★建学の精神を背負い、学校の信頼を最前線で築き続ける事務職員の気概および言動について、豊かな経験から事例を交え、ダイナミックに繊細に語られます。事務職員は、外からのファーストコンタクトになりますから、とても大事な仕事なのです。

★研究所では、数多くの研修をサポートしていますが、企画運営の主体者は、多くの私学の先生方です。多忙な学校の業務が終わってから、市ヶ谷の中高協会の会議室で、大所高所から議論をして詰めていきます。その委員の顔ぶれは以下の通りです(敬称略)。

委員長 根本 欣哉(⑨専修大学附属)
委 員 相川 忠洋(①麴町学園) 野尻 富太郎(③東京女学館)
江上 亀男(⑨堀越) 豊田 美樹 (⑪明治大学付属中野八王子)
原田 茂 (⑫明星学園) 

※番号は各支部会を示しています。

|

変わる私立中高(13)私学教育とコラボする受験市場と私学教育を壊す受験市場の顕在化

★東京の私立中高一貫校は、全国の50%が集中しています。世界的に見ても稀有な知の場ができています。したがって、私学の先生方は、私学全体が21世紀型教育など共有し、世界標準どころか、世界から留学生がやってくるぐらいの私学教育を創ろうとしています。ある意味知のコモンズなのです。しかし、コモンズの悲劇というように、仲間全体が水平的多様性を持続可能にしようと信頼関係を築いているのに、ぬけがけをする人がでてきたら、信頼関係だけでなりたっていて、規制する法律がないので、そのぬけがけした一部の人間が独占してしまうのが常だといわれています。

Photo_20230428081101

★ここ2,3年急にこのような動きが受験市場にでてきています。つまり、集まればよい、集まれば偏差値が急激にあがるということを目標にまるで、学校商売をするような動きがみられるのです。市場の原理からいえば、それもありだという人もいますが、それはリバタリアン的な市場の原理です。定員の倍くらい入学者が生まれると、その学校の教育はどうなるか予想はつくと思います。しかし、一方で倫理的な市場の原理を構築しようという考え方もあるのです。

★市場の自由については、サンデル教授ではないですが、複数あるわけです。私立学校の私学教育が目指しているのは、各私学の建学の精神を尊重しながら、私学を選んだ生徒がそれぞれの学校で、世界標準の教育環境を受け、自分の才能を開花し、社会に貢献する人間の育成する知のコモンズを形成することです。

★そして、それはかなり良いペースで進んでいるのですが、リバタリアニズムを発揮する学校がそういう学校を応援するネガティブ受験市場の影響を受けて、偏差値ベースの垂直的序列主義に陥っているところもでてきています。

★私立学校全体は、そのようなことのないように、そのような学校と対話を続けています。なぜかという、基本仲間ですし、そのような垂直的序列をつくること自体、建学の精神に反することだからです。

★一つ一つの私学は小さな集団です。資金調達は明治に私学が誕生したときから苦労し、創意工夫してなんとかサバイブしてきたわけです。ですから、そういう意味では、私学教育の知のコモンズを応援し協力してくれるポジティブ受験市場は歓迎しているのです。

★ですから、いま、私立中高一貫校の生徒募集の最前線である受験市場は、上記の図のような2つの種類が顕在化しています。

★ネガティブ受験市場に所属していると不思議かもしれませんが、私学の理事長校長が額を集めて知恵を出し合う時に、その雰囲気は公平、自由、寛容(フェアー、フリー、フラタニティとすれば3Fです)のキーワードで満たされているのです。偏差値は全く関係ないのです。

★さて、みなさん、どちらの価値観を選びますか?私学全体が知のコモンズをつくって、どこの学校に行っても世界で貢献できる知恵を身に付けられる私学教育×ポジティブ受験市場か、一部の生徒が恩恵を受ける垂直的序列主義を創ることになる私学教育×ネガティブ受験市場か?

★どちらを選ぶかは私事の自己決定だし、私学教育×ポジティブ受験市場を選んでもらえるように、さらにそれぞれの私学はそれぞれの魅力を創っていけばよいわけです。そんな話を多くの私学人と話している今日この頃です。

|

2023年4月27日 (木)

変わる私立中高(12)多様なキャリアデザイン 「多様な思考型中学入試→プロジェクト型成長→多様な大学入試」 思考コードがカギか?

★3月末から4月に入って現在に到るまで、100人以上の首都圏私立中高の先生方や教育関係者の方の話に耳を傾ける機会がありました。また毎月ガッツリ対話をさせていただく先生方も20人ほどいます。東京の私立中高の先生方は18,000人強ですから、公平中立な話であるかどうかわかりませんが、少なくともそれぞれの学校の建学の精神や文化を背負っている先生方ばかりです。私でも20人の先生方には常に対話というよりガッツリ助言を頂けるのですから、おそらく100人の先生方もそうでしょう。そうすると2,000人くらいの先生方の考えや感じ方とシンクロできているのだと推定します。

Photo_20230427095101

★ということで、やはりブログを書き続けなければというミッションが私の中に生まれてしまうのです。おっせっかいなのですが、そこは年寄りということでお許しいただきたいのです。こうやって毎月対話をしていくと、かなりの人数の先生方とシンクロした考え方や感じ方をお伝えできると思うのです。もちろん、違いは大いにありますが、それがまたよいわけです。違いの中にコアの根源的なコトを見出すことができればと。もちろん妄想だといわれるかもしれません(笑)。所詮は主観ですから。しかし、相互主観くらいであってほしいとは思います。

★さて、最近話をしていて、つくづく思うのは、プロジェクト型の学びやワークショップ(WS)は、多くの先生が自分のスタイルを身に付けているということです。しかも、それを探究の時間のみならず、教科の授業に織り込んでいるという実感を抱いています。

★もちろん、一方で従来の受験勉強も織り込むわけです。したがって、上記のグラフのようにプロジェクト型の学びだけとか受験勉強型の学びだけという極端な話はなくなってきているなあと感じます。

★同時に中学入試も、思考力ベースや英語ベースの新タイプ入試も当たり前のようになってきましたし、何より4科目の試験の中にも必ず思考型問題が出題されるようになっています。したがって、全体として多様な思考型中学入試になっていると感じます。大学入試は必ずしもすべてが思考型入試となっているわけではありませんが、国公立大学の一般選抜や各大学の総合型選抜は、思考型入試問題になっています。

★それゆえ、高大接続改革や新学習指導要領がどうのこうのという必要もなく、時代のキャリアデザインは、「多様な思考型中学入試→プロジェクト型成長→多様な大学入試」という連続体になっているのではないかと思います。

★これを前提に各学校の特色や魅力は何かを考えていけばよいですね。とはいえ、入試に関しては、入試問題を見ればその特色は一目瞭然ですが、プロジェクト型成長に関しては可視化されにくいので、やはり各学年の成長をなんらかの基準=コンセプトレンズで観る必要があります。おそらくプロジェクト型成長と受験勉強型成長は、そのバランスや比率、化合型か混合型かで、上記のグラフにおける曲線の描き方は変わるでしょう。

★ルーブリックでもよいし、コンピテンシーリサーチでもよいのですが、ちょっと大掛かりなので、コンビニエンスなのは思考コードです。これについては、和洋九段女子のプロジェクト型成長で述べていますから、もしよかったら参考にしてください。

★中央大学附属中高でも、思考コードと親和性があるコンピテンシーを計測するリサーチを本格的に行っています。おそらく、多くの学校で観点別評価の創意工夫をしてきます。そうなるとそれぞれ違うけれど、同じ点があるということを見出す通訳可能性のあるレンズがあると便利ですね。そのカギが思考コードだと思っています。

|

2023年4月26日 (水)

変わる私立中高(11)和洋九段女子の生徒のプロジェクト型成長

★先週金曜日、GWE(GLICC Weekly EDU 第125回「和洋九段女子ーThink Globally Act Locallyで生まれる生徒の主体性と協働性ー」)で和洋九段女子の先生方から同校のPBLの環境が生み出す生徒の成長曲線のお話をお聴きしました。その成長曲線は、発達心理学に基づく成長曲線というよりは、プロジェクトで生徒が成長していくそのプロセスの曲線を描いているとして、その和洋九段女子の生徒のみなさんの成長を、私が勝手に「プロジェクト型成長」と呼ぼうと本ブログで書きました。そんな折、トランジション教育や今回のプロジェクト型成長、要するに21世紀型教育における成長を果たしているスーパーロールモデルの1人として高校卒業後も対話を続けてもらっている仲野想太郎さん(成城大学3年生)からメールが届きました。

Wayo2

★仲野さんが、GWEの同上の動画を見たわけではないのでしょうが、自身が属しているゼミの境新一教授が和洋九段女子の高1の長野プログラムと高大連携しているという記事を知らせてくれたのです。それは上記の成長曲線の図の中の高1の「地方創生」のことだと思います。仲野さんは、その境ゼミでゼミ長を担っているので、私が和洋九段女子の記事を書いているのを知っていて、知らせてくれました。

※参照)GLICC Weekly EDU 第47回「総合型選抜と中高の学びの重要性ー自己変容型知性を育てる工学院附属中高ー仲野想太郎さん(成城大学1年生)との対話」

★仲野さんは高校時代、21世紀型教育を推進している工学院大学附属中学校高等学校で学びました。同校が21世紀型教育を本格的に開始した初年度に入学していますし、世の中に21世紀型教育が本格化した時期と重なります。したがって、21世紀型教育1期生なのです。そして、総合型選抜で進路を歩んでいます。ですから、プロジェクト型探究を6年間続け、進路もやはりプロジェクト型入試ともいうべき総合型選抜を選択しています。さらに、大学に入っても仲間と起業したり、成城学園経済学部のプロジェクト型活動がベースの境新一ゼミでゼミ長として活躍しているわけです。

★ある意味、プロジェクト型成長を果たしいるというか今も現在進行形です。そして、非常に興味深いのは、仲野さんの大先輩でお互いに会ったことがないはずの外資系コンサルト会社で活躍している成城大学OBの髙木生太さんも境新一ゼミで学んでいました。GWEにも出演してもらっています。髙木さんは、成城学園中高大を包括したプロジェクトを立ち上げてプロジェクトリーダーも務めています。同学園の青柳先生とコラボしてプログラムを実施ています。そこで、その斬新なプロジェクトの話をGWE(GLICC Weekly EDU 第107回「成城学園の中高大連携プログラムー卒業生と生徒と教員のネットワーク」)でお聞きしたのです。

★私はお会いしたことがないのですが、境教授が、和洋九段女子、仲野さん、髙木さんをつないでいるわけです。そしてそれはプロジェクト型探究ともいうべき学びがニューコモンズ(新次元共有地)なわけです。

同校サイトの記事によると、境教授は、和洋九段女子の高1の長野研修当日もファシリテーターとして参加していますし、事前学習で「プロデューサーの役割と思考法」について出張講義まで行っています。まさにプロジェクト型探究を想定した事前学習だったのだと思います。

★この発想法は、当然ゼミ生も共有しているでしょう。

★和洋九段女子は、PBLベースに実は多くの方々とつながって豊かな学びの時空を創っています。長野研修も飯綱・芋井の市民と成城大学の境教授が連携しているわけです。

★同校の卒業生はプロジェクト型成長をしているし、仲野さんや髙木さんも同様です。そこに境教授の存在が共通しているのです。同校はこのような仕掛けをしているため、自らをコネクティドスクールと呼んでいますが、これは、このようなPBL型学びが重要なアウトカムを生み出すことを証明している1つの大きな事例だと思います。

★それにしても学校を越境して都市や大学などとつながるには、ニューコモンズであるPBL型探究ベースが必要であるということを改めて実感しました。仲野さんいつもありがとうございます!

 

|

2023年4月25日 (火)

変わる私立中高(10)健康の考え方の変化がウェルビイングの考え方の変化も意味する それに伴い学校も学びも変わる

★當仲香さんの論文「健康の考え方の変遷とこれからの保健指導 Changes in concept of health and new development of health consultation 慶應保健研究,36( 1),073 - 077,2018」によると、1998年ころから、1946年に誕生したWHOの健康概念の変化が議論されていました。

Who

(當仲香さんの図を私なりに変えました。共通する部分を「健康」ではなく「ウェルビーイング」に置換えました)

★1946年当初、WHO憲章は、健康は、身体的、精神的、社会的な3つの要素が統合されて循環される良い状況であるとしていましたが、それだけでは、健康とはいえないのではないか。つまりウェルビーイングと言えないのではないかという議論が1998年ころから始まったというのです。ここの詳しい経緯については當仲香さんの論文を読んでいただきたいのですが、要は、主観的な個人的な想いというものは、その3つだけでは、必ずしも満たされないのだと。

★それは、今回のパンデミックやウクライナ問題や気候変動による自然災害に被る私たち一人ひとりのダメージを振り返ればわかります。

★そこで、スピリチュアリティという要素が加わり、4つの健康要素が相互に関係し合い循環して善き状況を生み出すのが健康であり、それはウェルビーイングであると。

★この4つの要素は、當仲香さんが論文を執筆した当時は、まだ提案レベルでしたが、2021年12月にジュネーブウェルビーイング憲章では、認められています。

Photo_20230425082401  

★パンデミック以降、ウェルビーイングは、名詞として前面にでてきている背景には、このような国際的な動きがあります。この話は、一見個人としての身体的な健康、精神的な健康、社会的、特に人間関係的な健康、個人としての超自然的感覚としてのスピリチュアリティのように見えますが、実はあらゆるモノやコトはうながっているのですから、身体的なものは自然に、社会的なものは、社会そのものに、精神的なものも個人を超えた精神に、スピリチュアリティは超自然的なものとして宇宙に置換えることができます。

★健康概念の変化は、学びや学校のみならず、人間の存在のあり方も変え、新たなウェルビーイングデザインが求められるようになるでしょう。

★またまた本間の妄想だよおっと思われるでしょう。確かにそうなのですが、私自身はクリエイティビティはないので、いろいろな人の考えを結び付けることしかできません。この考えも、バックミンスター・フラーが着想した「宇宙船地球号」(1963年に執筆)の影響を受けています。

★おりしも宇宙ゴミの問題は喫緊の課題で、SDGsの問題の範囲も宇宙規模に拡大しているのですから、このような発想の拡張はありかなあと思うわけです。そして、それに伴い、初等中等教育の学習指導要領は変わらざるを得ないでしょう。もちろん、すでに文科省と内閣府はムーンショット目標に向けてそれに紐づけるように動いているでしょうが、できるならば、ただ接ぎ木するのではなく、化合して時間的制約を解放して欲しいものです。ムーンショット目標1には時空を超えるとあるわけですから。

|

2023年4月24日 (月)

変わる私立中高(09)学校の問題解決姿勢と学びの問題解決姿勢の関係性 共創情報の発信へ

★予測不能な時代である、かどうかにかかわらず、私たちの周りには問題がないということはありません。生きている限り問題が起こり、それを解決しながらウェルビーイングをその都度持続可能にしていくわけです。学校も同じです。改革と標榜すれば、様々な問題が生まれます。生徒にとっての学びも同様です。学力を向上させたいとか自分を変えたいと思った瞬間に問題が立ち上がるでしょう。

Photo_20230424020801

★問いづくりは、組織の何かを変えようとか、自分の何かを変えよと思ったときに、自ずと生まれてくるものですね。変えようと思うまでは、気づかないでいたものが、顕在化されるということは多くの人が経験済みでしょう。体験学習とは、実は物事や人生を変えようとするときに生まれる問いへの対応のシミュレーションであるということかもしれません。

★さて、その生まれてきた問題をどのような姿勢で解決するのがよいでしょう。言うまでもなく、根本的問題解決の姿勢がよいわけですが、その枠組みはどうでしょう。今までの組織や自分のルーティンという規則やルールを乱さないように、その枠内で自由(「規制的自由」と呼んでおきましょう)な発想で解決しようとするのか、その枠組さえ変えてもよいという自由(「解放的自由」と呼んでおきましょう)な姿勢で臨むのか。

★後者はなかなか難しいのが現実ですね。それより前者は現実的でしょう。上記の「問題解決に臨む姿勢の座標」でいけば、第Ⅱ象限になるのが現実的なのかもしれません。

★しかし、学びの場合は、第Ⅰ象限のポジショニングが必要になってきます。しかし、もし学校の雰囲気が第Ⅱ象限だと、生徒の学びや着想にブレーキをかけることに無意識のうちになることが多いですね。生徒に対し、失敗は大いにしなさいと言っていながら、もう一方でもっと現実的な解決を提案しなさいと、失敗の修正の結果、着想が縮小するわけです。

★さらに、本当のところ、現実は対症療法に迫られるのが常です。とにかく今何とかしなくてはならないという対症療法のときは、規制的自由のポジショニングで立ち臨むことが多いでしょう。もし対症療法を解放的自由のポジショニングで行ったとしたら、失敗する場合が多いでしょう。ところが、それが閃きになる場合もあります。結果的に根源的問題に行き着き、解放的自由のポジショニングにシフトする場合もあるでしょう。

★したがって、実は、問題解決の姿勢は、どれがよいかという固定的なものではなく、第Ⅰ現象のポジショニングにたどりつくまで、他の象限のポジショニングをミックスして戦略を考案する必要があるわけです。

★第Ⅱ現象にこだわれば、それは意志を貫いているように見えますが、頑迷固陋のトラディショナルあるいはコンサバ的雰囲気を生み出します。第Ⅲ現象にこだわれば、表層的な雰囲気が漂います。第Ⅳ象限にこだわれば、ギャンブル的な姿勢に見えるでしょう。かといって、第Ⅰ象限だけにこだわれば、革命的な雰囲気立ち上がってしまいます。

★学びに探究が入ってきたことは、教師にとって、相対的に対症療法的授業と根源的問題解決的授業の両方を循環させることができると考えることもできます。それは生徒にとっても同様です。もちろん、探究の時間も、調べ学習で終わってしまえば、第Ⅲ象限での学びになってしまいますが。

★先生どうしが対話する時、先生と生徒が対話する時、互いにいまここで置かれているポジショニングをメタ認知し、そのポジショニングをシフトしたいかどうか、シフトしたいという気持ちに気づくかどうかなど気遣う必要があります。

★それができる学校の雰囲気か、それができる生徒の雰囲気かどうか?雰囲気を創るのは、もちろんどちらも教職員の教育環境デザインの感性と技術とアイデアにかかっています。もし生徒が独自にできるのであれば、それはそれでよいのですが、学校は不要になるかもしれませんね。

★かといって、教師がデザインしなければ、生徒が動けないというのなら、結局規制的自由の枠内から出られないでしょう。

★そこで、よく言われている共創という了解が学校には必要になってきます。問題解決の姿勢によって、学校と学び、教師と生徒の関係に違いがでてくるわけです。

★受験生の保護者は、上の座標のような視座を意識しなくとも、結局、教師と生徒の関係を見れば、つまり共創か、教師主導か、生徒放任状態かなどの違いによって、学校の雰囲気が違うのは、説明会などに参加するとすぐに感じることができるわけです。しかし、すべての学校を視ることができるわけではないので、情報収集する時に、上記の座標のような視座(レンズ)は役立つかもしれません。

★学校のホームページやSNSを見ると、最近では共創の活動を行っている情報を発信しているところが増えてきました。変わるぞと勇ましくアテンションをあげなくても、「共創情報」を発信できる現実(実存)が、私立中高の教育の質をさらに変えていくでしょう。希望は常に幸せの青い鳥なのです。

★受験市場はアピール情報を望みますが、入試市場は幸せの青い鳥情報を重視します。どちらがよいのかではなく、それぞれの市場の特徴を考えたうえで、情報を収集できるとよいですね。

|

2023年4月23日 (日)

東京私学教育研究所情報(05)私学経営研究会(理事長・校長部会)第1回委員会開催

★先週4月21日(金)一般財団法人東京私立中学高等学校協会会議室で、私学経営研究会の第1回委員会が開催されました。同協会には。東京私学教育研究所(所長平方邦行先生)が設けられており、同協会が主催する研修会のサポートをしています。研修会は、経営領域、人材育成領域、教育課程領域などをカバーし、それぞれの研修会は、さらにその領域を細分化し、トータル55の委員会があります。研修会は、各委員会が年に2回から3回行いますから、年間の3分の1以上東京私学の先生方は(もちろん希望者ですが)研修で自己マスタリーと学校に持ち帰って教育のアップデートの議論の環を広めていくシステムになっています。私学経営研究会は、その55の委員会のうちの1つで、理事長校長部会が担い、私学の経営領域をカバーしています。

Photo_20230423063601

(理事長校長部会委員長 高橋博先生:聖パウロ学園理事長・学園長)

★同部会は、毎月のように私学の経営の未来構想をし、そこから新しい教育関連制度、私学をとりまく経済状況とそれに伴うイノベーションの環境変化、組織開発、人材開発などを議論し、その時々の喫緊のトピックを見定め、研修会の企画を策定していきます。もちろん、それらの経営をする際に、学校のリスクマネジメントの実態、とくに近時の教育法化現象のケースメソッドの情報共有もしています。

News_ind_photo

(一般財団法人東京私学教育研究所所長 平方邦行先生:工学院大学附属中学校高等学校前校長)

★同部会の委員長は高橋博先生(聖パウロ学園理事長・学園長)で、他に4名の校長と東京私学教育研究所所長の平方先生をはじめ、同協会のメンバーが5名の、全部で10名の委員で構成されています。

★昨年は、7月に小田原で宿泊研修を行いましたが、トピックは「学校におけるハラスメントについて」と「創造性を養う学びとプログラミング教育」の二本立てでした。リスクマネジメントと私学の先進性の領域の最新情報の共有をしたわけです。

★プログラムは講演&ミニWSと分科会におけるシェアリングが大きな流れです。分科会では講師の方と各委員がファシリテーターの役割を果たします。

★トピックが図で、WSとシェアリングが地ですが、ひっくりかえすとプロジェクト学習になります。参加者は理事長、校長、管理職などですが、現場の教師が行っている「主体的・対話的で深い学び」の授業も結果的に経験できるように同部会はデザインしているのです。

★私学の独自性、先見性、先進性を多角的にまた私学の知恵を結集して生み出すことを持続可能にする同部会の役割はとても大切ですね。5月21日、国際フォーラムで開催される合同説明会「Discover 私立一貫教育2023東京私立中学合同相談会」の申し込みも始まっていますが、同日比較で、1.5倍の速度で申し込みの方々が増えています。

★2023年も、私学の子どもの未来づくりのための教育インパクトは続きます。現場の教職員と理事会など経営陣のチームワークの腕の見せ所です。

|

2023年4月22日 (土)

変わる私立中高(08)和洋九段女子 成長の概念を変える 画期的!なプロジェクト型成長曲線

★和洋九段女子は21世紀型教育を本格的に推進するようになって9年目を迎えました。SDGsとルーブリック(思考コード)とPBLとグローバル教育をコアラーニングとして6か年一貫したプログラムを当初から実施しました。つまり、2015年に国連総会で採択されたのが9月25日ですから、その翌年始まる21世紀型教育の照準をSDGsにすぐに合わせたのでした。日本政府も2016年12月22日にようやく動き始めますから、同年4月から動き出した和洋九段女子は、本当に地球規模の問題にたいする繊細で大胆な共感性をもっています。当時日本社会では、SDGsとは何か、その言葉も知らない人がほとんどでしたから、Think globally, Act locally.の21世紀型教育精神がすでに伝統的にあったのでしょう。

Wayo_20230422151801

★その立ち上がり時点で、コアラーニングを開発していったリーダーは、校長の中込先生、教頭の新井先生、教頭の本多先生、主幹の水野先生ですが、今回、GLICC Weekly EDU 第125回「和洋九段女子ーThink Globally Act Locallyで生まれる生徒の主体性と協働性ー」では、新井先生、本多先生、水野先生が、そのときの事情や、実際に6年間実践してきて、生徒の成長ぶりを、学年ごとに丁寧に話されました。

★一つ一つのプログラムの話を聴いただけでも、ワクワクするのですが、6年間の連続体としての話は、圧巻でした。

★そして、対話の中でふと降りてきたのは、和洋九段女子の成長曲線は、多くの学校が起用する心理学的な発達理論の成長曲線ではないということでした。それは、理論的成長曲線が、結局は現場の生徒の成長カーブと乖離していて、説明会などで説明する道具としては便利ですが、現場ではあまり有効ではないのです。

★ところが、和洋九段の生徒の成長曲線は、プロジェクトの実践のプロセスとアウトカムの連続性を描いたものです。プロジェクト型成長曲線とでも呼んでよいと思います。

★大学や大学卒業後も社会と接続するのは、もちろん個人の心理的発達段階は大事ですが、協働するメンバーどうしで生み出していくインタラクティブなチームの成長にどれだけ貢献できるかエンパワメントできるかということも大事なのです。

★そうなると、生徒がどのようなプロジェクト型成長をしているのかそのポートフォリオこそが重要なのではないかと気づいたわけです。このプロジェクト型成長を質的評価として表現できているのは、和洋九段女子だけでしょう。ルーブリック(思考コード)で、その都度リフレクションしていますから、その集積が曲線のイメージを創っているからです。

Photo_20230426114501

上記の曲線は、私が先生方のお話を聴いて勝手に描いた図です。みなさんも実際に動画をご覧いただき、和洋九段女子の教育の斬新でこれからの生徒の未来をウェルビーイングにする新しい教育であることを発見していただきたいと思います。

|

2023年4月21日 (金)

変わる私立中高(07)変わる条件は、あらゆる関係を変える まずナレッジトランスフォーメンションからか?beへ。

★ここ数日多くの先生方や同僚と対話をしています。組織開発におけるファシリテーターとリーダーの相違点と共通点、中学入試と中学受験の相違点と共通点、教育と経営の相違点と共通点、全日制の生徒と通信制の生徒の相違点と共通点、中学入試と高校入試の相違点と共通点、知識と思考の相違点と共通点、思考コードとルーブリックの相違点と共通点。。。。ネバーエンディングストーリーです。

Img_4269

★というわけで、整理がつかないまま、今朝を迎え、市ヶ谷へと外にでたら、木の向こうに爽やかな空が見えました。ふと、木の向こうと木のこちら側を分けている自分に気づきました。あまりに当たり前なのですが、その区別は、自分がしているだけで、beingとしては一体であるなあと。

★なるほど。「と」を「即」に変える。知識と思考ではなく、知識即思考という具合に、チャットGPTに、これを英語にしてというと、シンプルに<Knowlege is thinking。>だと。つまり、結ぶものは、<be>そのものだというわけですね。

※「と」はandだけではなく、orやVSといった意味も含むような。。。。。。。

★知識即思考というのは別名知恵と置き換えることができるかもしれません。

★ナレッジトランスフォーメンションが、考え方や感じ方や組織のあり方、特に学校のあり方を変えていくかもしれませんね。小さな変化から大きな変化が起こる予感。

★ファシリテーターとリーダーは違うということも含めて、その違いを統合して、ファシリテーター即リーダーとか。あらゆるものやことを、andをbeに変えていく。これがウェルビーイングなのかもしれないと。朝から妄想をいだいているのです(汗)。

|

2023年4月20日 (木)

変わる私立中高(06)八雲学園 多様な体験とグローバルプログラム全開の要に「バラザ」

★2023年度は、八雲学園の多様な体験行事や破格のグローバルプログラムが全開となりました。この体験やグローバルプログラムが、他校とは全く違う学びの文化を創っているのですが、そのカギは「バラザ」という対話システムなのです。エッ?バラザって何?と思う方もいるでしょう。実はグローバルサウスの時代にあって、とても重要な古くて新しい民主的な対話システムなのです。

Photo_20230420081701

★国連でも注目されている対話システムです。国連はバラザについて、次のように語っています。

「バラザとは、スワヒリ語で「公開会議」を意味し、意識を高め、コミュニティに影響を与える問題に対応し、重要な情報を共有し、市民に懸念事項を特定し解決策を提案する機会を提供するプラットフォームとして使用されます。また、コミュニティへの情報発信の手段であり、コミュニティに影響を与える重要な問題についてのフィードバックを得るための迅速な手段でもあります。」

★また、組織開発におけるミーティングの手法としてOST(オープン・ステージ・テクノロジー)を開発したハリソン・オーウェンは、アフリカに参加したカンファレンス体験に着想を得ていると語っていますが、そのカンファレンスは、OSTとの共通点が多いことから言ってバラザだったと予想します。

★現代の時間がかかり大掛かりな民主主義体制や変化に対応しづらくなった組織などを活性化するヒントとしてアフリカ(特にインド洋沿岸)のバラザという水平的多様な関係の中で意思決定が俊敏でかつ共有速度がはやい対話システムは、グローバルサウスの重要性が強まれば強まるほど注目されていくでしょう。

★八雲学園が加盟しているラウンドスクエアでは、国際会議で、このバラザを活用しているのです。およそ50か国から180校強の私立学校が集まるコミュニティです。バラザには、異なる人々が集まるという意味もあります。

★まさに世界各国の私立学校の生徒が集い、12人前後のチームをベースに1週間ほどのプログラムを体験していきます。バラザが採用されるのはなるほどだし、世界の時代精神とシンクロしているラウンドスクエアの先見性には驚くばかりです。

★八雲学園は、この国際会議に参加した代表生徒が、八雲にバラザをと学内に浸透させました。この動きも、八雲生のケアの精神と主体的精神が見事に発揮された一例です。八雲のバラザについては、いずれご紹介したいと思います。

|

2023年4月19日 (水)

変わる私立中高(05)家庭科 探究学習のエンジン 田園調布学園の学園長西村弘子先生の思想に触れて

★田園調布学園の学園長西村弘子先生のお話をお聴きする機会を頂きました。西村先生は、校長時代から中高で多様なプロジェクトチームを先生方が生み出す環境を創ってきました。ご自身の礼法の時間でも、人間関係をウェルビーイングにするマインドセットという精神的環境づくりをWSを活用しながら行ってきました。今では、探究と教科横断型授業が学内に浸透しています。

Photo_20230419080501

(写真は、同校サイトから。教科横断型授業のシーン)

★しかしながら、特段新しいとか革新的だとかいう気負いは、西村先生にはありません。それは、家庭科において、すでにホームプロジェクトがなされ、まさに探究学習のルーツの1つが、すでにおこなわれていたからです。

★西村先生は、家庭科のカバーする領域はとても広いのですと。世界をまるごと相手にしているようなものなのだという覚悟を感じました。最近行われるようになった金融教育やライフシフトを見据えたキャリア教育などは、時代の変化の中で、あるいは荒波の中で、協力しながら乗り切るにしても、自走できる生きる力を自分のなかに持っていなければならないのだという信念があるように感じました。

★お話を聴きながら、有形資産をどうつくるかその知識や情報はたしかに必要だけれど、最終的には内面にどれだけ無形資産を創出し蓄積できる自分という存在を生徒自身が作っていくかであるということでしょう。

★そのためには、よき環境、それはもちろん物質的にも精神的にもということですが、その環境を教師も生徒もデザインできる知恵を生み出すことなのだと。それには、体験や対話など相互の知のシナジー効果をうまく取り込むことでしょう。

★その一つの大きなエンジンが家庭科なのではないかと改めて感じました。

★西村先生の周りにはそのようなビジョンを共にする多くの学校の家庭科の先生がいます。ここから、学校はまた変わりますね。

|

2023年4月18日 (火)

変わる私立中高(04)芸術系大学に多数進学する中高一貫校 女子美1位、吉祥女子が2位、桐朋女子が4位、鴎友が6位、共立女子が9位、フェリスが11位、女子校が強い意味。

★「中高一貫校&塾&小学校(週刊ダイヤモンド 2023年4/15・22合併号」の特集『わが子が伸びる中高一貫校&塾&小学校』(全29回)には、「過去3年間の芸術系大学の合格実績」を集計してランキング化されています。1位が女子美(内部進学は含んでいない)、2位が吉祥女子、4位が桐朋女子、6位が鴎友学園女子、9位が共立女子、11がフェリス女学院。詳しくは同誌を見て頂ければと思います。

619i1uyftl

★興味をもったのは、女子校が強いという印象を受けることです。スポーツは男子で、芸術は女子というようなジェンダーに関することについていいたいのではありません。むしろ、理系も女子が増えている中、女子校が芸術系大学に行くことの意味は何かということに興味があります。

★理系に女子志望者が増えているというのは、国や各大学が応募政策や戦略を創意工夫しているからというのもありますが、STEAM教育、SDGs教育の広がりの影響が大きいのではないかということです。

★海外の大学では、工学部の中にファインアートを学ぶ学部や学科があります。日本では、まだまだですね。ところがSTEAMというのは、国際的な動きですから、当然理系と芸術系は交差するわけです。そこに日本の生徒も気づいてきたということでしょう。

★また、SDGsでは、多くはデザイン思考型のプロジェクト学習になっています。SDGsの根底にはデモクラシーの理念があります。表現の自由や、ゴールデンゴールズでも課題にしている格差問題の解決に興味をもつ生徒は多いですね。特に女性のエンパワーメントの問題意識はSDGsや国連の国際会議では重要ですから、女子校の生徒がそこにフォーカスするのは必然かもしれません。

★それゆえ、理系や芸術系に進路を決めるというのかもしれませんね。

★それから、もう一つグローバル教育については、女子校はかなり進んでいます。女子校から共学校になったところもそのまま破格のグローバル教育を展開しています。

★グローバル教育は英語と実は芸術なのです。それは国連やユネスコなどに訪れればすぐにわかります。英語はその中では、公用語の1つで、コミュニケーションをとるのにディスカッションをするのに必要ですが、それらの建物の壁は、平和を訴える芸術作品が陳列されていて平和ミュージアムさながらです。

★美大に限らずですが、美大も英語が必要だし、工学部も芸術が必要だという時代なのです。

★大学に行ってから途中で、あるいは卒業して留学する学生もいます。むしろ、これからはどんどん多くなるでしょう。岸田政権も50万人を留学させたいといっているぐらいです。50万人というのは、毎年の大学の受験生の数に匹敵するわけです。

★英語は言語です。言語と数学と芸術と天文は、リベラルアーツに重なります。STEAMと哲学が今私立中高一貫校で注目されています。理系は当然宇宙が旬ですから、時代はリベラルアーツの現代化に突入しているのでしょう。

★女子校は、もともとその素養を大切にして教育していますから、結果的に芸術系の大学進学者が多くなったのかもしれませんね。

★そうそう、同記事には、次のような記載もありました。こういうところからも芸術系大学の人気もでてくるかもしれません。

「今年3月下旬、その難関を突破して話題になったのが、人気アイドルグループ、乃木坂46の池田瑛紗さんだ。藝大を目指して浪人中に乃木坂のオーディションに合格し、芸能活動を行いながら藝大入試を突破したという。しかも出身高校は、私立中高一貫校の女子御三家の一角を占め、「JG」の愛称で知られる女子学院だと言われている。」

|

2023年4月17日 (月)

変わる私立中高(03)海外大学進学準備教育広まる

★広島で行われるG7を前に、いろいろなことが動いています。4月4日に9回目となる教育未来創造会議が開催されたのも間接的かもしれませんが、その一つでしょう。今年3月17日というアフターコロナの兆しのある中で、岸田文雄首相は教育未来創造会議で、2033年までの留学生に関する目標を示しました。外国人留学生を40万人受け入れ、日本人留学生を50万人送り出すというのです。今回の同会議でも、その破格の目標実現のためのエビデンスや根拠が示されました。とはいえ、最も重要な点は明快にはまだ明快には語られていませんでした。

Photo_20230417081501

★軽井沢で行われたG7外相会議をみていても、新たな地政学的関係をグローバルサウスとどうつくるかが争点だったと思います。つまり、AI社会に突入する時、その背景にある膨大な資金協力関係をどうつくっていくか。その知恵が必要だし、世界的なネットワークをどうつくるかがベースにはあります。

★知の新しい経済社会をつくるのが、岸田政権の目論見でもありますから、高等教育をベースに知のインバウンド、アウトバウンド政策を進める必要は当然あるわけです。つまり、地政学のみならず、地経学の新たな展開ですね。

★財源はどうなるかわかりませんが、産官学協力してやらねばという緊張感が資料から読み取れます。

★これを実現するには、財源は大事ですが、それ以前に、中高時代から海外大学準備教育を中心としつつ、海外からの留学生受けいれも行っていく必要があるでしょう。しかし、実はその動きは、私立中高一貫校の21世紀型教育推進やグローバル教育推進の中で、行われているのです。

★2013年に、開成が世界大学ランキング100位以内の海外大学に多くの生徒を進学させて以来、開成のみならず、多くの私立高校からその動きは広まっています。

★また、ラウンドスクエアやダブルディプロマコミュニティなどとのネットワークを各私学が自前でつないでいく活動も広がっています。

★もちろん、私立中高一貫校の生徒は、地政学、地経学的な時代の動きをキャッチしているだけではなく、自らの興味と関心を、研究や起業につなげようという自己マスタリーの道をまずは重視しています。その結果、地政学や地経学におけるウェルビーイングな世界を創っていくことになればよいというわけです。効果的利他主義ということでしょうか。

★ですから、直接国益のためにというわけではないでしょう。私立中高一貫校と国の高等教育政策は、共通するところもありますが、このような相違点もあります。

★国と私立中高一貫校の違いは、未来に対する展望に違いがあります。もちろん、それが明らかになるのは、これからでしょうが。

|

2023年4月16日 (日)

21世紀型教育(01)完全21世紀型教育校「三田国際」の成果 教育即経営!

★21世紀型教育は、21世紀型教育機構の加盟校をはじめ、多くの学校(たとえば、サレジアン国際グループ)に普及しています。その中で同機構加盟校の「三田国際」は、完全21世紀型教育校です。そして、その成果は目を見張ります。同校が21世紀型教育をはじめて、今年2023年の春3期生が卒業しました。その大学進学実績をまずは見てください。驚愕すると思います。もちろん、同校自身は、進学実績について、よくあるように、ホームページトップで騒ぐことはありません。「キャリア教育」というカテゴリーを開くと、そこで公開されているだけです。それは麻布や桜蔭と同じですね。

Mitas

(写真は首都圏模試の記事から。「世界標準の教育を実践する三田国際学園の第2ステージが始動!」

★京都大学をはじめ、国公立大学は、19名(既卒者5名)、早稲田24(2)、慶應19(1)、上智31(4)、理科大12(1)、ICU6、GMARCH160(16)です。これらの大学の総数は、265名で、その内訳は、現役生が236名で、既卒生が、29名です。卒業生が163名ですから、現役生のこれらの大学合格実績のパワーは、236÷163×100=144.8%です。

★3期生の段階で、このような成果につながったわけですから、驚愕しないわけにはいきません。

★もちろん、これ以外の大学にも入っています。たとえば、医学部には、13名(2)合格しています。

★また、2020年~2022年までの海外大学合格者数は109名です。そのうち、UCバークレイをはじめとする世界大学ランキング100位以内の海外大学合格は21名です。200位以内にまで広げると43名です。日本の大学は、東大、京大、東北大学が200位内にようやく入っているぐらいですから、この成果は凄まじいわけです。

★2023年の卒業生の結果は、夏までには明らかになりますから、さらに驚きの結果となるでしょう。

★三田国際は、大学合格のためのいわゆる20世紀型受験勉強をしているのではないのは、もはや説明するまでもないでしょう。言語能力、思考力、イノベーション力、社会貢献力など、いわゆるコンピテンシーを育成する教育をベースに、中高時代に研究者や起業家、グローバルリーダーの素養を大学で即戦力になるほど豊かなウェルビーイング教育がなされています。

★なぜこのような教育が成り立ったのでしょう。それは組織開発と教育開発の経営と教育のシステムが一体化した他に類例がない教育経営戦略がとられたからだと思います。たとえば、MECEというロジカルシンキングの手法を、教育開発にも組織開発にもシェアした。そうすることによって、教育即経営という組織になっているのだと思います。

★トップダウンでもボトムアップでもなく、要はAI(Appreciative Inquiry)という最高の教育を教職員がイメージし続ける研修を行う。そのときにOSTを活用して、最高の教育を生み出す環境を、おそらく生徒も巻き込んで、トルネードクリエーションの風を起こす。

★これを授業では、PBLの中に埋め込む。こうして教育即経営になるのだと思います。もちろん、研修を拝見したわけではないですから、あくまでも、私の個人的な21世紀型教育成功方程式眼鏡で見ているだけですが(汗)。

★いずれ、21世紀型教育経営についてセミナーとかカンファレンスを21世紀型教育機構は行うでしょうから、そのときにまた明らかになるでしょう。2023年の21世紀型教育の動きは、いよいよ新次元に突入です。三田国際はその最高のロールモデルでしょう。

|

2023年4月15日 (土)

東京私学教育研究所情報(04)令和5年5月8日(月)初任者研修「令和5年度 全体研修会」 私学教員の“ウェルビーイング” 講師:世田谷学園中学高等学校校長山本慈訓先生

令和5年5月8日(月)初任者研修「令和5年度 全体研修会」が開催されます。テーマは「私学教員の“ウェルビーイング”」。講師は、世田谷学園中学高等学校校長の山本慈訓先生です。山本先生は、一般財団法人東京私立中学高等学校協会文化部長も務め、東京私学全体の文化や芸術に関する教育環境をサポートしています。豊かな文化・芸術の環境こそウェルビーイングを生み出します。そして、その活力の源は、各私学の教員や生徒です。今回は、その教員とくに初任者対象に「私学教員の“ウェルビーイング”」について語られます。

Photo_20230415140801

(資料はこちら)

★ウェルビーイングについては、山本校長が語られる予定の「OECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」で最上位の目標とされ、そのための生徒のエージェンシーや自己変容などについて、世界各国、もちろん日本でも議論され、実践されてきています。

★また、SDGsの文脈においても当然でてきていて、SDGsのルーツであるローマクラブの「成長の限界」出版50周年を迎えた昨年、ローマクラブが「成長の限界」をアップデートしたレポートを発刊し、ウェルビーイングは、その中でも中核的なコンセプトになっています。

★そして、今回のパンデミックで、WHOが健康概念の変容を、多くの世界の公衆衛生や保健体育関係の見識者と議論を積み上げてきました。その際、目標として前面にでてきた考え方がウェルビーイングです。

★Z世代は、ウェルビーイングについて取り組んでいる企業に好感をもち、就職先の参照情報としているぐらいです。

★私学がウェルビーイングについてどう感じ、どう考え、実践しているのか、世田谷学園と私学全体とさらに世界への複合的な眼差しをお持ちの山本慈訓先生のお話を傾聴して、またご報告します。

★なお、この初任者研修を運営している委員の私学の先生方をお知らせします。このような企画を多くの私学の先生方が、ご自身の学校の業務でお忙しいにもかかわらず、私学の気概を生み出しています。

【委員名(学校名)※委員は支部順】
委員長 更科 幸一(自由学園)
委 員 星野 真人(國學院) 風見 加菜恵(関東第一)
鷲尾 真樹(田園調布学園) 石井 克己(成蹊)

★委員会の企画会議に参加しましたが、いずれの先生も情熱というマインドと組織開発・人材開発・教育開発のスキルを自然体で発揮している様子に立ち会うことができました。それぞれ独自の建学の精神をベースにしながら、普遍的な私学スピリットを生み出しているのに感銘しました。

|

GLICC Weekly EDU 第124回 現実的な学習観の変化を見据えた新しい学びの環境GLICC編

★2011年冬、私立学校は21世紀型教育を創発して、予測不能な時代に子どもたちが自ら未来を創っていけるようにしたいという強烈な意志の力が働きました。そのとき、その先生方の意志を実現すべく、鈴木さんと私は事務局を立ち上げたわけです。今では、21世紀型教育は一般名詞になっていますが、塾などの学びの環境では、必ずしも広がっているわけではありません。鈴木さんは、中学受験市場などでも21世紀型学びを浸透させる必要があると思い立ち、強い信念でGLICCを桜新町に立ち上げ、今では広尾教室も展開しています。私は、直接経営にかかわっていませんが、私立学校のつくる中学入試市場と塾がつくる中学受験市場は、共通する部分もあるで、私学を支えながら、中学受験市場の21世紀型学びへのシフトをしたいという関係者の応援もしています。

3x

(GLICC Weekly EDU 第124回「小3・小4・小5・小6これからの英語と国語の学び方-GLICC編」)

★子供の環境全てが来るべき2050年、2100年からバックキャストしたとき、21世紀型教育や学びにシフトしていくことをサポートすることは、鈴木さんも私にも孫ができ、ますます孫の未来に想いを馳せたとき、私たちの強いミッションとして再び確認する時がきたわけです。

★そんなわけで、GLICC創設当時の、子どもの言語体験をどのようにデザインするかというコンセプトに還って対話をしました。

★幼小中高大そして社会、世界へと、その都度子どもが自分たちの未来を創る時に、どのような言語体験をし続けることが可能なのか?生成AIが出現している今だからこそ、改めて意識化する機会となりました。ぜひご視聴いただければ幸いです。

|

2023年4月14日 (金)

変わる私立中高(02)女子校と男子校のインターエンパワーメントの時代

★2023年の東京の中学入試では、男子校が全般に出願数を集めました。女子校も、ここ数年徐々に全体的な冬の時代を乗り越え、応募者をきっちり集める女子校が増えてきました。この動きは、もちろん、社会構造的なジェンダー問題がありますから、保護者の方は、自分たちなりにそれを乗り越えようと、女性のエンパワーメントを実現する教育環境があるところを求めているということもあるでしょう。

Cfe7ecff3993f07d1f82cb7ff6b86e79

(写真は、首都圏模試センターから。)

★一方で、シングルスクールは、ある意味共学校で起こる幾つかの問題をめぐる規制がない分、相対的に自由だという感覚もあるでしょう。その規制をどう乗り越えるかということは、共学ならではの重要な問題だし、それもまた成長につながります。つまり、シングルスクールかコースクールで成長のストーリー作りは違いがでてくるのは当然なのです。

★ですから、女子校と男子校の存在意義のベースには、社会構造的な問題以外に、成長のストーリーの作り方の選択多様性というものがあります。女子校、男子校、共学校という子供の成長ストーリー類型があるというのが東京の私立中高一貫校の特徴です。

★そして、昨今、男子校と女子校のジェンダー問題に関する協働プロジェクトが増えてきてもいます。桐朋女子と桐朋、昭和女子大学と駒場東邦、品川女子と芝のプロジェクトなどはその典型ですね。

※参照)首都圏模試センターの最新記事「品川女子×芝 男子校で女子校生徒が生理の授業」

★この動きは、1972年のローマクラブが報告した「成長の限界」のテーマでもありました。昨年同書の発刊50周年をうけて、ローマクラブは、当時の2100年までの経済社会の変動予想world3モデルをアップデートしてEarth for Allモデルで、2100年予想をしました。

★そして予想される悲惨なシナリオをウェルビーイングシナリオにするために、5つのトピックをすべてつなげ循環するようにする具体的な提案がなされています。その5つのトピックの1つが「エンパワーメント」です。特に女性のエンパワーメントを取り扱っていますが、この活動が、男性のエンパワーメントがおろそかにならないようにという視点も入っています。

★ですから、女子校と男子校の共創的なジェンダー問題解決のプロジェクトは時代精神とシンクロしています。

★そしてこの時代精神は、万人のための地球、つまりEarth for Allというグローバル市民自身の生活世界の中から生まれてきているものです。

★受験生の保護者も、もちろんその一員です。ですから、このような女子校と男子校のインターエンパワーメントの動きがあるところには、アンテナが敏感に反応するのでしょう。

★もちろん、時代精神は、生活世界の中で万人が意識しているわけではありません。このような私立中高一貫校の財政出動ならぬ教育出動があってこそ気づくものです。

★私立中高一貫校の教育活動は、私たちの生活世界でふだんあまり目に見えないものをパフォーマンスというカタチで可視化してくれています。同時にそれが見えた人の目には、魅力的な教育として映るでしょう。Think global, Act locally.というビジョン体現者が、中学入試を考える保護者でもあるのかもしれません。

|

2023年4月13日 (木)

東京私学教育研究所情報(03)令和5年5月1日(月)研究協力学校「啓明学園中学校高等学校 発表会」

★令和5年5月1日(月)、研究協力学校の啓明学園中学校高等学校の発表会があります。

Photo_20230413104501

★同校は、一昨年より、「総合的な探究の時間」における教科横断的な学びと探究学習の要素を組み込んだ授業実践の研究・開発を行っています。創立以来、同校は、「国際生と一般生が共にお互いから学ぶ場」「キリストの教えを基盤とする他者を思いやる心を育てる教育」という、建学の精神にもとづく教育方針に加え、現在の教育に求められている、資質・能力(コンピテンシー)の育成及び Global Citizenship教育
の要素を加味した独自の教育実践の研究・開発をしています。

★今回は、これまでの研究・開発の成果及び今後の課題について報告がなされなます。高校1年生及び2年生での授業実践の見学とその後の授業検討会というのがプログラムの流れになっています。

★高校1年生は、「平和」とは何か/この授業を学ぶ意義とは何か、を考える授業。高校2年生は、グループでの探究学習の授業になっています。

★「平和」をテーマに具体的に学び、その具体的な学びを探究学習としてほかのテーマについてもトランスフォームしていくステップを踏んでいるのかもしれませんね。参加終了後、またご報告します。

|

変わる私立中高(01)組織開発の技術浸透する 組織と授業の並行進化

★東京私学教育研究所に勤務して実感したのは、各研修プロジェクトの委員である学校の先生方もその先生方を支える所員も、組織開発の技術を自然に使って創発会議やコミュニケーションをとっているということです。

41wrlyn4p5l

★2011年ころから私立学校の中にPBL(プロジェクト学習)というセミナーが少しずつ始まった時、同時に組織開発を学校でも行おうという機運とシンクロしていました。

★この二つの動きは、MITメディアラボのシーモア・パパート教授の影響やMITのピーター・センゲの影響を受けるものと社会心理学者ケネス・J・ガーゲンの社会構成主義の影響を受けるものがありました。

★シーモア・パパートの系譜は、レゴを使ったWSが印象的です。ピーター・センゲはドネラ・メドウズの流れを汲む、システム思考やメンタルモデルがわかりやすいキーワードでしょう。ガーゲンはそのものずばり社会構成主義です。もちろん、デューイの系譜は当然ながらずっと以前からあります。

★これらの流れが今では、たぶん統合されてAI(appreciative inquiry)という組織開発の技術も並行進化してきたわけです。それにもっと組織に影響を与える個人の能力に焦点をあてたと思われる(まだ明快に区別ができていないので仮説です)OST(Open Space Technology)などが活用されています。

★また、ミーティングの時には、Generative Scribingが生き生きと活用されています。

★そして、研究所では、ブルームのタキソノミーを換骨奪胎した「研修コード」を先生方と作成して、プログラム作りのときに頭に入れながら、最終的には参加者が最高のプロダクトや編集ができるようなシナリオをデザインしています。

★学校現場では、ここで活用したキーワードは日常出てきません。なぜなら、生徒中心の動きになっていますから、そのようなキーワードを日常あえて使わないのです。しかし、先生方も経営陣も日々学んでいるということが改めて理解できました。

★少なくとも私立の中学校や高校はトランスフォームの技術を実装している可能性が大です。Z世代の未来にシンクロするように適合されているわけです。

|

2023年4月12日 (水)

東京私学教育研究所情報(02)令和5年4月29日(土)研究協力学校「中央大学附属中学校・高等学校 発表会」 

東京私学教育研究所の研究協力指定校である中央大学附属中学校・高等学校の発表会が、令和5年4月29日(土)10:00 ~ 12:30、中央大学附属中学校・高等学校「視聴覚ホール」で開催されます。

Photo_20230412092601

★発表内容は、

・コンピテンシーベースの観点別評価体制の構築

・コンピテンシー自己評価アンケート分析結果報告

・探究学習を中心としたカリキュラムができるまで

・協働的に探究学習を進めていくために

★多くの学校において、新学習指導要領改訂に応じて、教科横断学習・探究学習をの模索が始まっています。同校では、それを見据え、先進的なカリキュラム設計に挑んでいるのだと思います。中学3年生から高校3年生まですべての年次において教科横断型授業の学校設定教科「教養総合」を設置し、大学という高等教育に向けた学びの階梯を築く新たな実践は、多くの学校にエンパワーメントすることになるでしょう。

★とりわけ、同校の在校生のみなさんの「学習意欲」を生み出している実践発表ですから興味深いですね。

★参加後、感想などまたお知らせします。

|

2024年中学入試の行方(19)成蹊の魅力 同窓力と対話力と表現力、そしてリーダーシップ

★成蹊の中学入試の総出願数は、国際学級入試と一般入試の両方を合わせると、毎年およそ1000名をキープしています。定員が確か145名ぐらいでしょうから、この総出願数の高め安定は、同校の魅力が中学入試市場で評判を呼んでいるというコトを示唆しているのでしょう。その魅力とはなんでしょう。

2019seikei001top

(写真は、首都圏模試センターのサイトから。)

★色々調べて、同窓力と対話力、表現力、そしてリーダーシップになるなあと。そのうえで、最近話題のチャットGTPはどう回答するか、「成蹊中学の魅力を教えてください」と投げかけてみました。すると例の如く瞬時に回答。しかも1183文字も。GTPは間違いもあるわけですが、たぶん実感とズレていないと感じました。ここで、その字数の文章をご紹介するのはちょっと長いので、「以上を200字以内でシンプルにまとめてください」と投げかけました。すると、こうなりました。

「成蹊中学の魅力は、高い学力と多様な教育プログラム、充実した部活動、優れた施設と環境、伝統と歴史を持つ学校であり、生徒の個性を尊重し社会的なリーダーシップやチャレンジ精神を養う教育を行っている点があります。卒業後も先輩や後輩とのつながりを大切にし、幅広い可能性を開放し、将来の成功をサポートする学びの場です。」

★なんと簡にして要を得た回答です。私が感じていた同窓力、リーダーシップはきちんととらえられていました。そして、直接文言には現れていませんが、多様な教育プログラム、チャレンジ精神、将来の成功をサポートするというところあたりの背景には、当然表現力や対話力があるはずです。

首都圏模試センターの成蹊中学校の記事「新たな景色を創造する生徒たちに共通する素直さとみずみずしさ」などは、仙田校長と在校生のみずみずしく、未来の可能性に満ちた対話が収録されていますから、ぜひお読みいただきたいのですが、たしかに表現力や対話力があることが、この記事では前面にでてきています。

★チャットGTPはファクトをベースに情報収集してくれます。首都圏模試センターは、ファクトとその背景にある教師と生徒の内面的なつながりも表現してくれます。そして圧巻なのが、<校長ブログ「百代の過客」>です。仙田校長の成蹊の教育の全体像への視座と日々の生徒の活躍への眼差しは、同校のすてきな雰囲気が伝わってきます。

★このような情報を収集しつつ、実際に学校に訪れるとさらに成蹊中学の魅力に引き込まれることでしょう。

|

2023年4月11日 (火)

2024年中高生の行方(03)進路指導はトランジション教育へ

<大学生6人のグループ「Blined Project(ビーラインド プロジェクト)」が、視覚障害者と晴眼者が一緒に楽しめるゲーム「グラマ」を開発した。おもりの重さを言葉で説明し合い、てんびんに載せてつり合ったら「成功」>。東京新聞(2022年5月23日)の記事です。記事のタイトルは<視覚障害者と晴眼者、ゲームで心一つに その名も「グラマ」 大学生グループが考案>。

Photo_20230411160601

(写真は、ビーラインドプロジェクトのサイトから)

★このプロジェクトは、現状はNPO的な起業のスタイルのようですが、やがては財団とか社団とか企業とかNGOとかいろいろな選択肢が広がっているのでしょう。

★メディア的には、自分たちの発想と活動と生産物の循環が、社会貢献という領域にしっかりつながっているのがまずはおもしろいのでしょう。わたくしも素敵だと思うし、興味深いわけです。

★教育的な側面からは、このような活動の源が中学校の時や高校の時のプロジェクトベースの体験にあったのだとしたらすてきだなと。というのは、大学受験勉強をして合格したら終了という従来型の勉強ではなく、大学に入ってから、社会に出てからも身近な気づきを共有するメンバーを巻き込み、逆に巻き込まれ見れども見えなかった世界を創っていく、言語の限界は世界の限界だという言説を逆手にとって、その限界を新たな言語をつくって、突破していくというエージェンシーとかコンピテンシーとかいわれているパワーを生み出していくトランジション教育の1つの象徴的な活動をこの6人の大学生は体現していると感じるわけです。

★このようなケースがどんどん増えれば、ますます中高はトランジション教育を進路指導やキャリアデザインに置換えていくことでしょう。もちろん、トランジションという言葉はどうでもよいのです。ただ、進路指導というより新しい感覚が伝わるかなと。立教大学の中原教授などが言っている言葉を借りてきているだけですが。

★ともあれ、このようなトランジション教育が中高で行われれば、ディストピア的なシナリオは避けられるのではないかと楽観的に思っているのです。

★それにしても、このプロジェクトのネーミングがすでに、新しい世界を可視化しています。Blinedということばは、Blindという視覚が不自由という言葉を解消する造語になっていると思いませんか。Bとeを差し込んでいるのです。つまり、Be。blindというのは、感覚としての目以外にも心の壁として目が見えないという意味がありますね。マスクをかけるとか真実が見えないとか。

★つまり、視覚障害者には難しいと思わせていたアンコンシャスバイアスというブラインドを開いてしまう存在の光という意味が加わっていて感動的です。もちろん、私の勝手な主観で妄想にすぎません。それでも、新聞記事の意図からはそう外れていないのではないかと。

★そして、このゲームのネーミングも洒落ています。フランスの哲学者デリダのグラマトロジーのグラマにかぶる意図があるのではないかと。この哲学者もまた「存在」について思い巡らしました。私は哲学は門外漢なので、詳しいことはわかりませんが、存在するようにするものと存在するようにされているものとか、見えるようにするものと見えるようにされているものなどの差異をめぐって展開するコンテクストがあった時代の人だと推測します。

★そして、ここのパラドクスは存在するようにするものも見えるようにするものも、気づかなかったり見えなかったりするということです。ここにアンコンシャスバイアスが広がる理由があるのでしょう。

★しかし、それに気づくのは五感であるから、気づかなかったり、見えなかったりするのだけれど、関係性の中では、それは気づくことができたり見ることができたりするのでしょう。

★デリダがそういう感じだったかどうかは、私はわかりません。たんなる妄想です。

★しかし、このような妄想をこんこんと湧かせる衝撃が、このプロジェクトや作品にはあります。ケアリングだったり、哲学的だったり、作品と参加者のつくるダイナミクス空間というパフォーマンス全体の息吹を生成するインスタレーション的だったり。

★このビーラインドプロジェクト(記事には6人とあるが、今では8人)のメンバーは中高時代、あるいは大学に入ってからかもしれませんが、マルチプルインテリジェンシーズをフルに生かす体験をしてきたのではと。

★ともあれ、このようなZ世代の新しい動きは、今までのスタートアップやアントレなどとこれまで注目されてきたものとはどこか違う動きだと思います。どこが違うのか?それはこれから多くの人がかかわることで、時代が明確にするでしょう。

★ここに書いたものは、私のあくまで妄想です。刺激を受けて書きたくなっただけです。6人の大学生がどう考えているのかということとは無関係です。ご了承いただければ幸いです。

|

東京私学教育研究所情報(01)初任者研修委員会のWSミーティング

★東京私学教育研究所は、多様な研修を実施しています。初任者研修、中堅現職研修、事務職員研修会、学校づくり研究会、各教科研究会など年間かなりの数の研修を行っているのです。

★研修の企画運営のために委員会が作られます。各学校の先生方がメンバーですが、学校で授業や行事を行った後、研究所のあるアルカディアのオフィスなどで、委員会を開きます。本当に頭が下がります。また、所属校の協力もあってのことですから、本当にい私学はゆるやかな理念共同体です。

41iwzfnstl_sx376_bo1204203200_

★委員会と研修を合わせると年間の3分の1以上は、何かしらの委員のメンバーが集まっていることになります。そして、それをサポートしているのが、教育研究所の所員です。東京エリアには、私立中学と私立高校を合わせると、400以上ありますから、このように闊達な動きになるのは当然といえば当然です。

★受験生の保護者の方々は、中学受験市場を形成している塾などの受験産業から私立学校を見ているので、私立中学市場を形成している私立学校の動きをなかなか知る機会がないのは当然です。ですから、このブログでは、お知らせできる情報については、発信していきたいと思います。何かのお役に立てるかもしれません。

★中学受験市場は70%(30%は多様な基準を活用しています)は、偏差値による垂直的序列型の競争市場です。中学入試市場は、100%水平的多様性の私学教育共創市場です。同じものを見ていても違う側面はあるものです。どちらも否定することはできませんから、できれだけ多面的に見ることができるのが望ましいでしょう。そのための情報共有です。おせっかいながら。

51trgg7rcgl

★たとえば、昨日10日の18時から行われた「初任者研修の委員会」ですが、いずれ先生方の名簿が発表されるので、そのときにまたお知らせしますが、5人の先生方が企画を立ててくれています。自由学園、國學院久我山、関東第一、田園調布学園、成蹊の5校の先生方です。

★企画を立てるとき、それぞれ企画案をプレゼンし、OST(Open Space Technology)というスピリットを生み出す技術で、対話空間を作りながら行っていました。その際、心理的安全性を生み出すためなのか、クラフトロール紙を使いながら、generative scribingというU理論的な可視化もしながら展開されていました。

★組織開発におけるトランスフォームを生み出す手法がWSに取り入れられていたり、エンカワンターやピアインストラクションなどカウンセリングマインドの足場をつくる手法も取りいれられたりしていました。初任者とまずは共有することは、コミュニケーションのマインドとスキルです。教師と生徒の理解や信頼をどう生み出していくか。

★トップダウン方式ではなく、柔らかいコミュニケーションによって参加者の内側から生まれてくるスピリットの流れ。

★そんなことを学校を超えて先生方が対話しているのです。ここに私学の希望を感じない人はいないでしょう。

|

2024年中高生の行方(02)入学式・始業式・オリエンテーション この時期つくづく感じるコト

★この時期、学校は、入学式、始業式、対面式、オリエンテーションなど立て続けに行事が行われ、並行して新しい授業や探究プログラムが始まります。一つ一つミニガイダンスが行われるようなものです。ここでマインドセットやエージェンシー、ミッションを再共有していきます。そんな忙しい時期だからこそ、再度しみじみ感じ入ることもあるし、一瞬の合間に新たなビジョン閃光が出現したりします。

Ayumi_20230411081501

(写真は同校サイトのものをアレンジしました)

★そんなときですから、へとへとだった思いますが、夕刻、落ち着いたところで、田中歩先生(工学院大学附属中学校高等学校教務主任)と電話で、情報共有しました。

★こういう新しい行事や授業が始まる時、生徒は共感的コミュニケーションやインターエンパワーメントをいつも以上に充実させるとか、生徒の主体性を生徒自らあるいは生徒同士が生み出していると様子に、良い雰囲気(ウェrビーイング)をしみじみ感じるとかそんな話がシェアできました。

★この垂直序列的関係性ではなく、水平的多様性の関係が本当にとても大事だと、私もしみじみ感じていたので、このシンクロする感性がもっと広まればよいなあと。

★そう思っていたら、結局ワークショップやPBL授業、探究プログラムなど、そのプロセスは、すでにそれぞれ先生方は独自のテンプレートを持っているから、もはやそのプロセス構築のストレスはあまりないのですが、その内実の密度をどうアップデートするかですよねと歩先生。というのも、生徒が新学期の瞬間にすでにものすごい成長をしている実感があり、クリエイティブテンションを再編集するにはいかにしたら可能か?ということを瞬間感じたからのようです。

★しかも、その仕掛けは教師のみならず生徒もいっしょにでないとねと。さて、それは何か?互いに次があったので、続きはまたということになりました。

|

2023年4月10日 (月)

2024年中高生の行方(01)インターエンパワーメントの時代

★「エンパワーメント」という言葉は、教育や福祉の領域では、かなり活用されています。ビジネスにおいてもそれは同様です。実際教育現場では、エンパワーメントプログラムとかエンパワーメント評価などという実践が行われています。「自信をつける」「権限移譲する」「勇気を与える」などという意味で使われることが多いのでしょうが、垂直的序列主義から水平的多様性にシフトする時代を象徴する言葉なのかもしれません。

Photo_20230410081501

★高校現場でも、生徒と教師の関係が互いに勇気が湧いてくる共感的コミュニケーションが行われています。雰囲気がいいわけですから、ウェルビーイングな状況が生まれます。このウェルビーイングな状況は、相互にエンパワーメントしている対話からもうまれてくるようです。

★そういう意味では、ウェルビーイングとか4つの健康概念とかエージェンシーというような文脈が溢れ出てきている今日、「インターエンパワーメントの時代」と言ってもよいかもしれません。

★学校現場では、教師は、生徒の幸せをなんとかしようとしています。そして、それがなかなかうまくいかない。押してダメならひいてみる。直接話すとひかれるような場合は、間接的に意図が通じるように仲介のためのツールや人間関係などの環境をデザインする。日々苦悩の日々ですが、やがて光が差します。生徒が突如輝き始めるのです。意識は光であるとある生物物理学者が語っていますが、その通りなのです。

★そんなとき実は教師の苦悩もまた喜びにシフトします。表情が柔らかくなり、言動に弾みがつきます。なんと教師もエンパワーメントされているのです。一度この状況が生まれると、エンパワーメントの環が広がります。学校など組織中が、エンパワーメントの循環が充満するのです。

★学校説明会の時、そのような雰囲気に触れた受験生や保護者にも伝播します。インターエンパワーメントの好循環が拡張します。人気校の誕生です。中高生にとって、ウェルビーイングな学校こそ魅力的なのは言うまでもないでしょう。

★インターエンパワーメント。それはいかにして可能なのか?生徒や大学生、多くの先生方と対話して見出していきたいと思います。

|

2023年4月 9日 (日)

GLICC Weekly EDU 第123回 2030年から2050年の社会の変化を見据えた私学の動き

先週の金曜日の<GLICC Weekly EDU 第123回「2024年に向けての学校の行方~2050年からバックキャストして」>は、2023年度各私立学校がチャレンジしていく背景について鈴木さんと対話しました。

Dwe123

★チャットGTPに代表されるAIのアプリやWebサイトの活用を試している私学が偏差値にかかわりなく行っている様子から対話は始まっています。2030年から2050年にはAIが人間の頭脳を超えるシンギュラリティ―がやってくるといわれていますが、すでにやってきていて、それを無視せずにいろいろ創意工夫が私学の現場では生まれているというのが、2023年の私学の変化です。

★そして、AIだけではなく、2050年内閣府が計画しているムーンショット目標に対応する私学の教育のチャレンジがどんどん生まれるだろうという対話をしました。

★こんな目標に向かってがんばろうではなく、すでにその目標に向かって実際に多様な活動が私学教育の中で起きています。

★大事なことは、この世界的な動きは、万人のための地球がウェルビーイングになっていくことが肝要なのだということなのです。

★したがって、2023年の私学の動きは多方面にわたり、ウェルビーイング教育環境デザインをしかけていくことになります。

★ウェルビーイングな受験勉強ができるが中学入試の仕掛けが考案される学校もふえてきます。では、ウェルビーイングな入試とかウェルビーイングな教育とは何か?とかウェルビーイングな進路指導とは何か?などについて、今年は鈴木さんと多くの学校の先生方と対話していきたいと思います。

|

2023年4月 8日 (土)

パウロモデル(02)本日入学式 多くの人々をエンパワーする新体制始まる

★本日4月8日(土)、聖パウロ学園は、静寂の中で華やかに入学式をとりおこないました。新校長小島綾子先生を中心にエージェンシー魂をもった生徒たちが大胆かつ繊細に活躍できる新体制が始動したのです。コロナ禍でできなかった、校歌斉唱も行いました。正面玄関では、先輩たちが、新入生1人ひとりに引き継ぐ鉢植えが出迎えました。「入学式」という文字も、在校生が自ら書きました。彼女は書道の領域でとても有名なんです。

Img_4261

★校長は式辞の中で、スクールモットーの「人にしてもらいたいことはなんでも人にしなさい」という黄金律(マタイの福音)について、先輩たちが新入生を迎えるこれらの準備を行ったことに生きていることをちゃんと語りました。聖なる言葉が、日常の自分たちの行動1つひとうに反映されていることがとても大切だという高らかにカトリック精神を謳うよりも、はるかに効果的に心に染みる話をしました。

★今日もアシスタントしてやってきていた在校生もその話を聴いて、内なるモチベーションをさらに生み出していたことでしょう。

★来賓として訪れていた父母の会の会長、同窓会の会長、理事の方々も、昨年の校長よりも何か力をもらえるねと、あっ本間さん前校長だったなあと(汗)、一同大笑いで、和みました。

★最後に、恒例のハンドベルクワイア―の演奏。森の梢が奏でる音と同様、f分の1の響きが心を豊かにします。

★このような森と教師と生徒が共振する雰囲気は、新校長ならではの手腕ですね。

★こうして、パウロの森の学校に立ち寄る人々みんなが内なる響きに耳を傾ける学校になりました。つまり、世界的に大事だとされる、万人へのエンパワーメントのモデルシステムをっ形成しているのでしょう。新入生のみなさん、すてきな学校にようこそ。

|

2023年4月 7日 (金)

2024年中学入試の行方(18)日本&東京私学教育研究所動き出す

★一般財団法人日本私学教育研究所、一般財団法人東京私学教育研究所の両所長は平方邦行先生です。2089年からバックキャスティングして21世紀型教育を2030年から2050年までの間にゆるやかな理念共同体である私学同士協力して広げていこうとしています。一方で、中学受験市場では、新設校が初年度から爆増して、偏差値を跳ね上げるピーキーな学校が毎年出ています。そのこと自体は、市場の原理であり、私学は市場の原理をベースにしていますからよいのですが、そのことの生徒のメンタルへのネガティブな影響がある一定の限界を超えたとしたら、それはなんらかの対応を考えるかもしれません。

Photo_20230407075901

★もちろん、何かルールを作って規制しようということではないのです。そうではなくて、中学受験市場と中学入試市場の差異を明確にしていくことなのです。それは、合同説明会など各学校がそれぞれの建学の精神を反映させている教育の質を語る機会の質を上げていくことと、啓蒙的なキーノートスピーチを動画などで発信していくことです。

★実はこのような発信は、多くの場合塾や模擬試験関連のシンクタンクが行ってきました。両市場は有益な情報を互いに共有していながら、中学入試市場からの発信は弱かったかもしれません。

★保護者が得る情報は、個々の学校と中学受験市場からの情報がメインだったでしょう。中学入試市場側からもっと発信することが必要ですね。それによって、この教育関連市場が、新自由主義的市場観から気鋭のドイツの哲学者マルクス・ガブリエルが提唱しているように倫理的市場に変容していく可能性があるわけです。

★ほかの領域ではエシックエコノミーやウェルビーイング市場は注目されています。本当は教育関連市場こそ真っ先にその方向に向かわなければならないでしょう。

★そういうわけで、その動きは、すでに生まれているのです。聖学院、世田谷学園、そして聖光学院など男子校がそれを標榜しているのです。そのことについては、またコメントしたいと思います。

|

2023年4月 6日 (木)

思考を生み出す思考の時代(02)主体性とかエージェンシーとか表現は違えども 思考コード的差異がある

★言葉の意味とは、事物を指示しているのが基本だから、表現が違えば指示しているものも違う。たいていはそうかもしれないのですが、教育言説は、そうでもないのです。たとえば、主体的とか主体性という言葉は、昔から教育現場では使われてきましたが、新学習指導要領では、その当時の意味とは違ってきています。もともとコールバーグの道徳発達理論を背景に持っていましたから、主体的という表現が指しているのは、その発達理論の2段階目の慣習段階で使われていたのです。つまり、いいこちゃんでいることを努力する主体性ですね。

Photo_20230406074901

★第1段階は、前慣習段階です。人間関係の前に、周りの事物や人と衝突を起こさないようにルールを身に付けるということですね。生理的・物理的な段階です。ものを壊さない、人に危害を加えない、何が危ないか安全なのかの身体的な感覚などですね。この段階で、萎縮して興味と関心の芽を摘むことがあるので、注意をしなくてはならないわけです。

★第2段階(詳しくは各段階2ステップになっているので、6段階ですが、ここでは大まかに)では、人間関係や知識の体系と適合させるわけです。

★従来は、ここまでの主体性でした。しかし、新学習指導要領では、予測不能な時代に直面し、その組織自体が消滅してしまう場合も多くなってきたわけで、新しいシステムの組織に対応する段階での主体性が必要になってきました。リスキリングなどという言葉もその文脈ですね。

★しかし、その変化耐性は、なかなか身につきません。チェンジメーカーとかコラボレーションとかという言葉は、この変化を乗り切るという意味が背景にあるのでしょう。

★しかし、現場の学校の半分以上(特に公立学校)は、第三段階目の主体性を認識すると、学校組織や教員組織自体が脱慣習化されるので、恐れが生まれ、反対勢力が生まれてきます。そこを明白にしてしまうと、そういう動きが高まるので、文科省は第二段階目を選ぶのか第三番目を選ぶのか、選択できる表現にしたのです。調和を大事にするために曖昧にしているということでしょう。

★エージェンシーは、OECDのラーニングコンパスが立ち上がった時から、第三段階で発揮する主体性を意味します。文科省は、当然この動きをリサーチし、先見性のある学校が、そのプロジェクトに参加できるようにしているのです。

★IB200校計画もそうですね。しかし、5000校以上ある高校のうちその10%も、そうならないわけです。反発が生まれないように小出しの戦術でいっているわけです。

★ところが、世界はエージェンシーとか自己変容とか、大胆に進めているわけです。

★どちらが、未来をウェルビーイングにするでしょう。おそらく決まっているとは思いますが、第2段階で十分だという方も世の中には、意外と多いのです。

★なぜか?思考力のレベルの差なのです。どちらが頭が良いとかそうでないのかいうことではありません。第1段階で思考トレーニングをされたきりだと、それ以上はいきませんし、第2段階で思考トレーニングをされて終わっていると、当然第3段階に飛べませんね。

★第3段階に飛ぶには、第3段階の思考レベルをトレーニングする必要があります。うまりは、思考コードの9つの領域をすべてちゃんとトレーニングすることが重要です。コールバーグの道徳発達理論は、思考コードのA軸、B軸、C軸にも重なりますね。

★ともあれ、チェンジメーカーになれ!コラボ―レーションだあ!とか叫んでいる方がは、AI技術などで、自分は第3段階の思考レベルを持っているような錯覚をしています。というのも、第三段階は、脱抑圧的コミュニケーションが前提です。自分は第三段階にいるのに、君たちはいないと平気で語っている人結構いますよね。それはほとんどルサンチマンで、その状態で道具立てが最先端なので、厄介です。

★しかし、そのような人が増えてきたということは、たしかに時代は第3段階に突入しているということでしょう。

★小出しのマイナーチェンジではなく、大胆なコンセプトと多くの人の共感を得る方策。こういうものが生まれてくる時代です。すでにローマクラブやWHOなども、その方向で動いています。内閣府だって実は動いているのです。

★マイナーチェンジかダイナミックチェンジか。どちらを選択しますか?

|

2023年4月 5日 (水)

私事ですが、2023年度が動き始めました。校長を退任し、新しい視座で。

★2023年3月31日で、聖パウロ学園高等学校の校長を退任いたしました。2年間すばらしい体験と貴重な気づきを山ほど教員と生徒の皆さんからいただきました。それからこの2年間道に迷ったときに光を照らしてくださった隣接の学校の先生をはじめとする他校の先生方、首都圏模試をはじめとする業界シンクタンク、ジャーナリストの皆様、心から感謝申し上げます。

Tgal

(4月4日のそれぞれの拠点のシーン)

★今後は、パウロの外部理事としてゴールデンルールの拠点である学園を見守ります。そして日々の拠点は、東京私学教育研究所になります。所員として、微力ながら東京の私学を支えるべく尽力いたします。もちろん、それは結果的に私学全体、そして日本の教育全体、さらにEarth for Allへ広がることをミッションとしています。

★昨日4月4日午前中は、聖パウロ学園高等学校新校長の小島綾子先生に依頼され、研修に参加しました。午後は私学の先生方の会合に参加。Think global, Act locally.の姿勢の重要性をしみじみ感じ入りました。

★外部理事として学校にかかわることによって、また新しい視座をもらいました。パウロの皆さんありがとうございます。

★そして私学の先生方からは、さまざまなジレンマやパラドクスを乗り越える時のこの学校を越えた気概生成力に驚愕しました。なるほど、これだなと。

★というわけで、今後もまた多くの方々にご助言ご指導を頂くことになります。何卒よろしくお願い致します。

|

2023年4月 3日 (月)

思考を生み出す思考の時代(01)問いを生み出す源泉は何だろう

★「総合的な探究の時間」であれ、「教科の時間」であれ、今や暗記の時代ではなく、思考の時代であるとは、多くの人が認めるようになっているでしょう。しかし、一方でやっぱり暗記は必要だよね、思考の前提だと思うという話になります。暗記か思考かというような話に常になってしまうわけです。しかし、現場では、どっちも必要で、目の前の定期テストや資格試験、大学入試などその種類によって使い分けをすることができればよいとなります。たしかに、それがよいのですが、それを認めることは現実主義ではあれ、プラグマティズムではありません。

Img_4233

★暗記も思考も体験です。その体験を通して結果を出すことが重要で、その成功体験の蓄積によって、暗記の仕方、思考の仕方について、それぞれの体験者が理論然として主張します。現場はそれでよいのだと思います。

★ところが、これをやっている限り、それらを集約した日本の優れた教育を世界に提案することはできません。もったいないですね。

★そこを体験を通して、生徒の知性や感性、身体性が成長するセオリーを見出すプラグマティックな視点は必要です。

★がしかし、そのセオリーはあくまで仮説ですから、適応しつつ修正していくことは必要だし、あるときは思い切り捨てなければならないときもあるでしょう。

★その成長について、遺伝学や心理学や脳科学などで検証していくことも、実際に行われていますが、とても大事です。AIのリスクマネジメントのためには、この分野はますます必要になるでしょう。AIの時代は、人間自身の思考成長(TX:Thinking Transformatin)の探究の時代でもあるのかもしれません。

★思考を活性化する授業やワークショップ(WS)としてアクティブラーニング(AL)やプロジェクト学習(PBL)が注目を浴び、今やだれでも行うことができるようになっています。上記の写真にあるようなプログラムを生成する構成をダイナミックに作成できるようなカードやハート&スクウェア―のような付箋は、ALやPBLを行っている人は、一度は使ったことがあると思います。

★これらは、オンライン授業の中でも活用できます。したがって、みんなが思考する・共感するなどのWSは、最小限ならだれでもできるようになっています。あとはもっと効果的なWSになるように学習ツールや学習アプリがどんどん開発され、今やAIも使うようになっているわけです。

★これらのツールは、暗記と思考の両方を補強あるいは開発してくれるので、ALやPBLを実施している教員は、暗記か思考かという二項対立になってはいませんね。

★ですが、何かが物足りないと日々思っていることも一方ではあるのです。

★それは何でしょう。それを考える段階になると、実は問いを生徒が自らつくることの重要性を実感しつつも、なぜ生徒は自ら問いを生むことができるのかと考えたくなります。なぜなら、すべての生徒が問いを立てられるわけではまだないし、その問いの質も生徒によって違いがあります。

★その違いは、生徒の個性でしょうか?

★個性の部分もありますが、問いを生み出す源泉がまだ掘り起こされていないからということもあります。もし掘り起こすことができたなら、みながハッピーになりますよね。

★では、その問いを生み出す源泉はどうやって掘り起こせるのでしょうか?個性はこの源泉がそれぞれ違うからです。掘り起こされていない段階でも、ちょろちょろ生まれていますから、そこを見逃さないようにすることが大切です。どうやって?それが問題ですね(微笑)。

|

2023年4月 1日 (土)

2024年中学入試の行方(17)海城学園の新校長に大迫弘和先生

★今日、なんだかホンマノオト21のアクセスがざわついていました。2019年の記事「New Powerの学校×教師(23) IB布教の第一人者大迫先生「教育相談事務所」開設の意味 2019年1月 5日 (土)」のアクセスが急上昇したわけです。こういうときは、何かが起きているので、大迫和弘事務所のサイトを見ました。するとなんと本日海城学園の校長に大迫先生が就任したとプロフィールで公開されていました。すぐに海城学園のサイトを開いたら、ちゃんと公開されていました。

Photo_20230401200601

★これは、いよいよ海城学園が実質的に御三家を超える決断をしたということでしょう。

★日本的学歴社会の解消ですね。とはいえ、大迫先生は、IBの伝道者であり、第一人者ですから本物としてのエリート教育は目指し続けるでしょう。

★また、ずいぶん前に一度お会いした時にお聞きしたのですが、IBにもっと日本的な文脈も注ぎたいということだったような。そういう意味では、世界標準の教育の輸入だけではなく、日本は日本で海外に輸入できる教育を創ろうということでしょう。

★それでこそ、はじめてグローバル教育で同じ土俵で切磋琢磨できるし、もしかしたら世界をone earthを牽引することができるかもしれないのです。

★21世紀の日本はハードパワーとソフトパワーの統合ができる知を輩出するようになるはずです。ハードパワーではなくソフトパワーでというのが米国などの先進諸国のIT革命以降の戦略ですから、それを凌駕するには、日本のお家芸でもあるハードパワーと東洋思想の深いところにあるソフトパワーを統合する日本の知が重視されるようになるはずなのです。

★東洋思想的知こそAIにはまだまだ追いつかない部分でしょう。いずれ追いつくとは思いますが、先回りしておくことは必要です。

★果たして大迫先生がそのようなことを考えているかどうかは、わかりませんが、大迫先生のプロフィールからアブダクションすれば、そういう仮説は立てられます。

★このハードパワーとソフトパワーの統合知については、私もずっと考え、今年度から来年度にかけて大迫先生とはまた違う領域で進めていくことになります。こういう波状的新しい動きが起こることが重要なので、それぞれ独自に進み、合流するかどうかあるいは自然淘汰されるかどうかは、市場が決めるでしょう。

★ともあれ、すてきな知らせに感動しないではいられません。

|

GLICC Weekly EDU 第122回「大妻中野ー文理融合型グローバル教育が切り拓く次なる次元ー」 諸橋先生 私学のミッションも熱く語る

GLICC Weekly EDU 第122回「大妻中野ー文理融合型グローバル教育が切り拓く次なる次元ー」で、大妻中野の諸橋先生(2022年度教頭)は、指数関数的に進化する大妻中野のグローバル教育について語ってくださいました。IELTSを基礎とする英語教育はたしかに破格なのですが、その破格の英語の力を使って、世界の痛みを、生徒の皆さんが引き受け、引き受けるからこそ、国内で解決しようとするのではなく、地球全体に眼差しを向け、グローバルリーダーとしての役割を果たそうとする本物の学びに進化しています。

Photo_20230401101101

(GLICC Weekly EDU 第122回「大妻中野ー文理融合型グローバル教育が切り拓く次なる次元ー」)

★最初にグローバル研究発表会のシーンを動画で拝見。そのレベルの高さと世界の問題に立ち臨む生徒の情熱的ミッションと気品ある姿勢に感動するとこから始まりました。審査員の先生からの英語の質問にも即答する賢い切り返し。もちろん英語でなのですが、話すという行為に、思考力、判断力、表現力、瞬発力などが込められていました。

★なぜこのような成長をするのか?動画の後、諸橋先生が解き明かしていきます。

★そして、その教育環境をデザインする先生方の、これまた私学人としての覚悟と使命感について諸橋先生が情熱的に語られたのです。なぜ私学人はこのような教育環境をデザインするのか?世界の問題を解決するグローバルリーダーを輩出するためなのだと。それが大格差社会の諸問題を解決する役割につながるのだと。

★そのような覚悟と情熱を内なる思いとしてもっている諸橋さんは、紛れもなく私学人ですね。

★そして、最後にもう一度動画を拝見。動画の各所に大事な教育の結晶が輝いているのを見つけては感動し対話を終えました。ぜひご視聴ください。

|

« 2023年3月 | トップページ | 2023年5月 »