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2023年3月26日 (日)

パウロモデル(01)2022年度最終理事会 パウロモデルを共有

★昨日2023年2月25日、パウロの森は、雨の中、桜は満開でした。午後13時から始まった2022年度最終の評議員会と理事会は、経営の話と教育の話の両輪について報告会以上のビジョンとその具体的実装の話になりました。生徒募集ー教育ー進路指導(トランジション)の循環について対話ができる評議員会と理事会になりましたが、これが進化する学校の1つの姿だなあと。

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(雨の日のパウロの桜)

★いかに学校現場がダイナミックに細心の注意を払いながら動いても、それを理解し認め愛する眼差しが理事会、評議員会にないと学校現場の教員も生徒もその才能を十全に発揮できないのです。やはり、システムの循環と学校の教職員と経営陣のシステム及び魂の循環共有は大切です。

★そして、そうなるためには、時代の要請と現場の要請と経営の要請が重なり合う全体システム循環モデルの提案が必要です。この循環モデルは、時代に求められるものであること、現場に求められるものであること、経営陣に求められるものであるかどうか、そして、ちょこっとさりげなく時代を先取りできるものであるかどうか、毎回の会を進めながら、試行錯誤していきます。

★そのつなぎ役になるのは、対話です。各部署の対話とその部署のリーダーが集まる校務会議と理事長・校長・事務長・副校長が集結する運営会議です。これらは毎週最低1回は行います。

★よく会議が多いのは非効率的だといわれますが、それは各会議体が循環していないからでしょう。パウロはそこは生態系よろしく循環しています。リフレクションと改善と具体的な行動計画のシナリオを描く会議は、全体の循環を良い状態にする脳神経系循環、血液循環、ホルモンの循環、筋肉や骨の動きの循環バランスを創るのと同じ働きをします。

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★そして人間の体が、実際には、その循環を促すために、臓器同士がメッセージ物質を出して対話するのと同じで、各会議体は、会議の時間以外に、各役割チームが動きながら時間の合間を見て話し合っていきます。

★この全体の流れをできるだけ1枚の図にして、運営会議で詰め、理事会・評議員会に提出していきます。その過程で、この1枚の図を教員とシェアしていきます。そのときにアイデアがまた生まれますから、それを盛り込みます。

★ピクチャ―ライティングよろしく、その一枚の絵が、それを見た仲間が、またそれぞれイメージします。そのイメージのうち共有部分が実は学校全体のアイデンティティで、各人の違いが、次のイノベーションにつながります。

★膨大な資料をなるべく1枚に集約。抽象的だけれど、仲間にとっては高感度なアクションイメージ触発装置です。いろんな図を書きました。図を書いてくれる教師もいました。意外と難しく、何度も試行錯誤・チャレンジしてデザインしてきてくれます。まさにDe-signです。

★それを集約するのが2年間は校長の役目でした。押し付けるのではなく、あくまで、現場の教職員の暗黙知を図としてDe-signする。デザイン思考のスリリングな局面ですね。

★職員会議は、毎週行うのではなく、生徒募集や各行事、成績会議、進路指導の実践など全員がかかわるアクションに合わせて、適宜行っていきます。シナリオは事前に各会議内でそして会議体同士話し合っていますから、職員会議は、目標とそれを実現するための動きの打ち合わせになります。

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★何か判断が迫られる時も、やはり職員会議を開きます。議論はあまりしません。意見を出してもらって、校務会議で方向性を出してもらって、最終判断は校長が行いますが、同時に理事長とは相談します。理事長の意向も参考にしながら、最終的には現場は校長が意思決定をします。

★1つの意志決定は、学校は循環しているので、時間割変更、スクールバスの時間変更、給食の量の変更などにまでも影響します。もちろん保護者とのシェアも重要です。そのたびに文書作成や連絡の手順を決めなくてはなりませんが、そこは各部署がどんどん決めて、校長のところにあがってきます。即決しなければ、循環に支障があります。そのためには、日ごろから情報・データ収集分析が必要だったのです。

★学校でありながら、気候変動の影響をダイレクトにうけます。行事や入試の日程変更もそうです。新型コロナのみならずインフルなどの感染症の影響もダイレクトにうけます。生徒指導部と養護教諭が判断ができる健康観察や生徒の行動の観察データを日々サーチし、判断の時に役立てるようにしています。

★広報もそうですね。生徒募集状況や外部の情報を収集分析し、年度初めに決めていた募集方法の軌道修正をしていきます。その軌道修正は、理事会でも共有します。何せ、ここは経済変動や人口動態がダイレクトに影響するからです。

★進路指導も同様です。大学の出願方法のリサーチを進路指導部と学年で共有します。生徒1人ひとりの状況は、実は思考コードが氷山モデルの水面下にあって、その見える化が定期テストや成績のコメントデータとして形になり、めちゃくちゃ参考になります。基礎知識、思考のレベル、行動力のレベル、発想のインパクト、社会貢献への素養などすべて毎回の定期テストの成績判定会議でシェアします。したがって、進路指導は進路指導部と学年の協働が欠かせないのです。

★毎回の定期的なテストやミニテストで、その都度状況がわかれば、当然、次の生徒の成長促進のために学年と教科の教師の動きは変容します。テストの機会は、創意工夫次第で、授業も活性化するし、生徒の人間力もエンパワーメントするエネルギー態になります。定期テスト無用論は、そういうテストを創意工夫していない場合、正解です。でもそれは、何を目標とするかが重要であり、テストの有無が問題なのではありません。

★それはともあれ、この流れはパウロの頭脳教務部長がマネジメントしている教務システムが循環していますから、校長は見守っているだけでよいのですが、大事なところは、担任が毎学期成績スコア以外に書くメッセージコメントをすべて読むということです。

★チェックするわけではないのです。それはある意味生徒に対する形成的評価であると同時に生徒と教師の信頼関係の度合いを肌身で感じることができるセンサーです。コメントが歯に衣着せぬアドバイスをしているか、同時にケアフルであるか、現実的なアクションプランを生徒自身が立てられるアドバイスか、何よりインスパイアーされ主体的に変貌する可能性としてのメッセージになっているかどうか。2年間それを続けてきた結果、担任の言葉は、キリスト教的にはロゴスとなっていることに気づきました。日本文化的には言霊になっていることに気づきました。

★私的には、言葉は存在そのものであるという実感でしょうか。

★もちろん、こんな理屈は先生方と共有しません。先生方が創り上げる、成績表に添付するコメント以外に、多くのコメントがあふれているのが、学校現場です。それを拾って、あの言葉がいいねと共感するだけです。授業を見に行って、あのときの眼差しがよかったとか。成績のコメントも、生徒1人ひとりに語っていることばをマーカーで塗るだけです。本当に1人ひとりの特徴をつかんでいるということがそのマーカー箇所の多さで実感できます。

★学校の循環のクオリティをあげるのは対話なんだけれど、教師一人一人のコメント力というか言霊というかロゴスというか存在の息吹というか、表現は好きなものを使えばよいのですが、エンパワーメントするメッセージ力にヒントがあるなあと。そのメッセージに力があるかどうかは、互いの信頼の絆の強さにかかわってきます。あるときは、そのメッセージは眼力であることもあります。

★そして、ICTを自在に使いこなせる教師であることが、この対話力やメッセージ力のクオリティとパワーを上げることにつながっていますね。臨機応変に動けるかどうか、変化耐性には欠かせないツールです。これは生徒も保護者も同様です。

★2040~2050年のムーンショット目標からバックキャストして、デジタル、ネイチャー、ケア、セルフトランスフォームを循環する対話ベースの教育、それから外部の多様なネットワークをいかに結びつけるかその対話力、現場が、ダイナミックにかつ細心の注意を払って動くには、柔軟な会議体の生態系が必要です。そう実感した2年間でした。

★これらをまとめてパウロモデルの図のバージョンアップをしていく2023年度になるでしょう。2年間対話を共にしてくれた教職員、そして多くの方々に感謝いたします。

★本年度最終日、職員室を出るとき、感謝の言葉をあえて言わず、いつものように「お先に」と語りかけ、「お疲れさまでした」と答えてくれたみんなに本当に感謝しています。4月からは再び新たな次元で対話していくことになります。

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