« 2023年2月 | トップページ | 2023年4月 »

2023年3月

2023年3月31日 (金)

どこまで本音を通せるか 私立学校研究家として

★4月から、孫の未来の可能性のために、100年後を見据えつつ、いまここでをウェルビーイングにする私立学校の教育について、どこまで本音で語れるのか?それが私のおそらく最後のステージでしょう。ですから、メディアに偏ることなく、一部の学校に偏ることなく、一部の偏差値ベースの受験業界などに偏よることなく、自分の言動をいかにマネジメントできるか。4月からは、そのような足場をいただきましたので、その道を邁進していきたいと思います。私立学校研究家とは何者なのか?立ち臨みたいと思います。

Img_4210

(明日からほぼ毎朝お世話になる茶店)

★4月以降は、ほとんどがビル街で、過ごすことになります。

Takao

(山の中の喫茶店もたまにはいきます)

★もちろん、私立学校のユートピアである森の学校にも少し距離をおいてかかわっていきます。今度は、ボランティアとして。

★とにかく、今までは、わかりやすく言えと言われて、そこらへんをおもんぱかって、現場では理屈は控えていたし、多様性と言ってもインクルージョン教育をかっこにいれてきたし、PBLといっても、スピリチュアリティケアの部分をかっこにいれてきたし、生徒理解も、本当は受験の外にこそ真実があるのに、中学受験や高校受験、大学受験という枠をはめて、その中でどう乗り切るかという話に終始してきたし、<Think global, Act locally>といいながら、目の前の生活を中心に活動してきたわけです。

★宮沢賢治ではないですが、そこから自由に生きることは難しいというジレンマがあるのですが、そのジレンマをただ評論するだけではなく、どうしていったらよいのか、迷いながら進んでいこうと思います。

★中学受験にしても、果敢にここに挑んでいる教育ジャーナリストの方もいます。その方は、合法的に生徒募集を行っているけれど、それは実定法上ペナルティがないから行っているだけで、孫たちの未来を見据えれば、間違っているのだという正義を貫き通しています。

★凄いエネルギーで驚きますが、他の記事と違い、この手の記事は、スキャンダルまで行かないので、なかなか真実を伝えにくいということもあるでしょう。

★なぜこのような馬鹿げたことが中学受験で起きてしまったのか?

★実定法主義的合理主義がこの世の中の価値観だからです。

★私立学校は、建学の精神で、合法的に権力の濫用が行われるようなことのないようにするのが魂ですから、そこに立ち還ることを、ドン・キホーテのように行動するしかないと今は思っています。

★学校はオワコンだという学校の先生もいます。定期テストをやっていると保守主義だ伝統主義だという発言力の強い学校の先生もいます。それが正義かどうかだれもチェックしていません。強力なメディアが後ろ盾になって、喧伝しているわけです。

★それぞれの体験主義から生み出された貴重な話しなのですが、孫たちの未来をそれに適合していよいかどうかは、まだ議論にもなっていません。大きな声で、強力なメディアを使って、先に言ったものが勝ちだという、しかも徹底的にパクっているのにオリジナルだと自己PR戦術が巧みですね。

★もちろん、なりふりかまわないくても、合法的であればよいのです。道義上などといっているのは、マーケット主義者にとってはどうでもよいことなのす。しかし、市場の原理は、一つの理念を押し付けるよりよほどましなのです。ただ、悪玉マーケット主義者と善玉マーケット主義者をどのように見分けるのか?

★しかし、どちらも私立学校なのです。公立学校は、なんだかんだといいながら、文科省ー教育委員会のフレームをはみ出ることはできません。

★私立学校は、ある程度自由です。ですから、悪玉も善玉も包括できる教育のロジックやルールを再編集しなくてはということでしょう。悪玉と善玉という対立項を昇華するというわけです。

★教員の働き方の問題も、今語られている働き方改革だけではうまくいきません。孫たちにとっての教育の可能性は、学校のマイナーチェンジではどうしようもないでしょう。

★私たちは教員であると同時にグローバル市民で、法と道徳を自在に組み合わせるような社会システムにすることが肝要です。このことを学ぶ教科が積極的にはないのが実は問題です。リベラルアーツが必要なのはそういうことですね。法と倫理は、言語と数学と芸術の問題であるからです。

★モンテスキューが語っていたように、自動裁判官装置は、AIによって可能になってきました。賢い正義あるAIをプログラミングするのは、今のところ人間ですね。AIが、啓蒙主義者の書を全部読み込んで、啓蒙思想家同士の議論のぶつかり合いを整理したとしても、それは啓蒙思想家という人間に依存するわけです。

★なぜ啓蒙思想家かというと、明治の官学は、啓蒙思想を捨て、明治の私学は啓蒙思想家によって立ったからです。明治以来、二つの近代化が進んできたわけです。

★実定法か正義(自然法)か。今も脈々と日常生活の判断でジレンマに陥る問題ですね。

★さて、前に進むことにしましょう。

|

2023年3月30日 (木)

2024年中学入試の行方(16)AIミックス授業広がる 首都圏模試センター・ELSA Speak ウェビナーに参加して。

★首都圏模試センターとELSA Speakは、2023年3月に最先端テクノロジーを用いた英語教育について共同研究を進めるパートナーシップを結ぶことに合意いたしました。それを記念して、2023年3月28日(火)にウェビナーを開催。山下一氏と北一成氏、高橋一也氏が共演。時代の最先端学習の情報が集積している中学入試の動向を分析し牽引している山下氏と北氏、最先端の学習の研究と実践の一人者高橋氏の出演ですから参加しました。もはやAIミックス授業/教育であることを確信しました。そこから逆算しての英語入試が中学受験でもどんどん増えるであろうことも。

Covernwbvh4nxich756yjgefadyd45uqmbox6_1

(写真は首都圏模試サイトから。3人のプロフィールはこのサイトに詳しく紹介されています。)

★文科省が開催している「今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の在り方に関する有識者検討会」の2回目と3回目の配布資料をみると、2050年の日本社会をポジティブシナリオとネガティブシナリオで予想し、もはやAIをうまく活用しないと、ディストピア曲線をたどるということになっています。

★京都大学の広井氏はケアも射程に入れているし、慶應義塾大学の安宅氏は、GAFAMを超える次のグロバールビジネス社会を読み、それにチャレンジできる人材をいかに創るか包括的に近未来予想をたてて、初等中等教育におけるリベラルアーツの現代化の方向性を示していました。

★いずれにしてもAIミックス活用は必要だと。

★今回のウェビナーは、そのAIミックス活用の一例でしたが、実はこのAIミックス授業には、英語と思考力が欠かせないのだとということもはっきりしていました。広井氏や安宅氏の予想通りの現実がすでに実践されているわけですね。

★ELSAとは、首都圏模試サイトにはこうあります。

 ELSA(English Language Speech Assistant)は、スタンフォード大学とGoogleから支援のもと、英語をより正しく、自信を持って話せるようになるためのAIパーソナルコーチアプリです。2015年にGoogleのAI投資部門から出資を受けて以来、100カ国以上の2600万人のユーザーに利用されており、世界のAI企業100にも選ばれた独自の音声認識技術により、学習者は個人のスピーキングの弱み(発音・アクセント・イントネーション・流暢さ・語彙力・文法)を特定し、短期間で改善することができます。アプリは京都大学をはじめとした世界中の教育機関でも採用されています。

★スピーチアシスタントとありますが、発音アシスタントではありません。スピーチとは、思考力・判断力・表現力の統合的アクションです。それを包括的にコーチングしてくれるAIアプリです。

★すでに、聖光学院、栄光学院、芝国際、三田国際などが採用しているそうです。ウェビナーでは、聖光学院のELSAを活用したAIミックス授業が紹介されていました。なるほどの一言でした。

★自然と社会と精神の循環にAIミックス構想力は欠かせないということはもはや明白です。ウェルビーイングというポジティブシナリオを描くにはということです。しかしながら、ネガティブシナリオも、実はAIによるものでもありましょう。

★したがって、もちろん、やがてはAIミックスではなく、AIが人間ミックス空間を形成していくことになる動きをするでしょうから、さて人間はどうするのか?シン・リベラルアーツの急務ですね。もちろん、ジュネーブウェルビーイング憲章で認められたスピリチュアリティケアの領域をいかに死守できるかという。。。もしかしたらこれもAIが優れた提案をするのかもしれませんが。

★しかし、そのときには、生物学的にも今の人間の生態ではなくなっているでしょう。彼らは、私たちがアウストラロピテクスを見るように新しいページを考古学に加えているかもしれませんね。

|

2023年3月28日 (火)

2024年中学入試の行方(15)6月6日開催 東京・神奈川私立女子中学に触れる会≪shishokukai≫

★2023年6月6日(火)、東京・神奈川私立女子中学に触れる会<shishokukai>が開催されます。場所は、新都市ホール(そごう横浜店9階)、10時から12:00、12:30~14:30、15:00~16:00の完全予約・入場3部入れ替え制です。

Photo_20230328121401

★shishokukaiは、今年で23年目というわけですから、21世紀に入って、ずっと女子校の牽引共同体だったわけですね。21世紀は女性の時代といわれながら、私たちの国などは、先進諸国でもジェンダーギャップ指数ランキングで最低レベルです。

★2021年のジュネーブウェルビーイング憲章でも、2022年にローマクラブが「成長の限界」出版50周年を節目に、新しいレポートを出していますが、そこでは、前面に、女性のエンパワーメントを重視しています。そのことが持続可能な社会を再生できるのだと。

Photo_20230328122401

(写真は、横浜女学院サイトから)

★この持続可能な開発教育(ESD)とそれを英語でも行ってきた(CLIL)のが横浜女学院です。今では、同校では、そのESDとCLILは、ICTと三位一体的な教育環境デザインになっており、時代を牽引する女子校教育を行っていると言えましょう。

★今回のリーフレットを、横浜女学院の校長平間宏一先生と教頭・広報部長の佐々木準先生から贈っていただきました。例年通り盛会になることと思います。

|

2024年中学入試の行方(14)湘南白百合 授業即探究 探究即授業

★授業か探究か?そんな議論が教育業界や受験業界で経めぐっています。しかし、その議論は、当事者がふだんどちらに軸足を置いているか、自己正当化、防衛機制などの自分の普段の理論に偏ったものが多いようです。したがって、両方実行できる教師は、そんな議論に加わることはせず、どんどん生徒と共に進んでいきます。湘南白百合の先生方もそうですね。

Photo_20230328105101

(写真は、湘南白百合サイトから)

★同校のサイトに次のような記事があります。「東大先端研リサーチツアー 聖光学院の生徒と共に」がそれです。

 「今日の探究講座では、STEAMプログラムとして、聖光学院の高校生と一緒に、東大先端研リサーチツアーを実施しました。本校では長年、中学3年生の理科の授業で東大先端研の先生にご来校いただき、講演をしていただいています。今回は生徒が実際に研究の現場に赴く機会となりました。」

★ふだんから学内で行ってきた東大との連携探究講座を、聖光学院と東大と東大キャンパスを結合して、アップデートしたプログラムということでしょう。新たに創るというより、アップデートできる教育資産がすでにあったということが強みですね。

「リサーチツアーではまず、ニュートリオミクス・腫瘍学を研究している大澤毅先生のお話を伺いました。誰も答えを知らないからこその研究の面白さについて、熱意あふれるお話をいただきました。また大学院生との座談会では、生徒から次々に質問が。進路選択から研究室への配属など、研究活動の実際を垣間見れるお話は、生徒たちにとって、大学生活を具体的に思い描ける有意義な時間になりました。小グループでの研究室訪問では、最先端の顕微鏡を見学したり、実際に研究器具を触らせてもらう時間もありました。」

★専門的な領域の研究の真実は、まだ誰も解を知らないことを研究するスリリングでワクワク感。研究のみならずビジネスも同じですね。既知の物を暗記する勉強は、そろそろやめにしなくては。ただし、記憶は大脳皮質にデフォルドモードネットワークを創るので必要ですね。

★この暗記と記憶の違いを知っているから、湘南白百合は授業即探究、探究即授業になるのですが、この辺は、4月号の「shuTOMO」に投稿しました。授業の氷山モデルの説明も少ししています。湘南白百合は、「授業即探究 探究即授業」のスーパーモデル校ですから、今後も注目していきます。

|

2024年中学入試の行方(13)高輪中高 北マケドニア共和国大使館と学ぶ

★2023年2月7日東京新聞に高輪中学校高等学校(以降「高輪」)の小さくて大きな活躍をする同好会の記事が掲載されていました。「港区の高輪高、東欧の小国学ぶ「唯一」の部活 僕らマケドニア同好会! 言語、文化… 大使と交流も」がそれです。きっかけは、コロナ禍のオンライン英会話授業。同記事によると「英語が母国語ではない講師を選ぶとマケドニア人に当たることがあり、その講師たちはみな親切だった。彼らの言動からマケドニアに興味を持った青山先生と生徒有志がサークル活動を始めた。」とあります。北マケドニアの文化からマケドニア語を学ぶまでになっているのです。多様性とは言うは易し行うは難しで、ここまで発展するのは破格でしょう。

Photo_20230328070001

大使館に北マケドニア料理を招待されたことを契機に、準備として行ったお区別課外授業のシーン。

★そして、重要ポイントは、英語という教科の授業から派生して、いわば探究活動に発展している格好のケースだということです。そもそも高輪の授業というのはそういう広がりをもっているのだということも推察できます。教科か探究かという話はよく話題にのぼりますが、勉強とか学びとかは、もともとこういう広がりをもっているもので、ことさら「探究」を持ち出す必要はないわけです。

★しかし、そうしないと広がりのない受験勉強に特殊化した授業が展開されるケースが多くなってしまったので、それを改革するために、文科省が探究パッケージを持ち出してきたということもあるかもしれません。

★もしかしたら、授業の中で探究的な広がりを持てるのなら、もっともシンプルでパワフルなわけですが、それができる教員が少なくなってきているので、半ば養成ギブス的に、装着したということなのかもしれません。

★逆に言えば、このような授業即探究という活動ができる教員がたくさんいるのが高輪ということなのでしょう。

★そして、そのような教員がいるからこそ、「探究」を学習指導要領で単位として設定されたとしても、それはますます生きてくるのです。要するに教員の力量次第です。

★そうであれば、学内の雰囲気はとてもよいですね。上記の生徒が作成した動画を見ても、それは明白です。

★雰囲気がよいというのはウェルビーイングな教育が浸透しているということです。

★たしかに、高輪の中学入試の総出願数は1974名で、前年対比119%(首都圏模試「出願倍率速報」2023年2月6日)です。このような雰囲気の結果、進学実績も凄まじい。そして、このような活動は、当然、大学入学後も同じようなアクションにつながっていくでしょう(トランジション)。高輪の人気の理由はこういうところにもあるのでしょう。

★そうそう、ここでも英語とICTはカップリングされていますね。教員の力量にこのカップリングスキルは必須ということなのかもしれません。

|

2023年3月27日 (月)

GLICC Weekly EDU 第121回「グローバルアドミッションの時代ー英語学位プログラムとはー」鈴木氏の目からウロコの視点 気づいた人の未来が開く チャットGPTとの対話

GLICC Weekly EDU 第121回「グローバルアドミッションの時代ー英語学位プログラムとはー」は、私が参加できなかったため、主宰の鈴木裕之さんは、チャットGPTー4と対話しながらのトークセッションを行いました。なんて新鮮な!

Gwe121

★最近各大学では、英語の授業だけで学位がとれるプログラムを設定しています。どんな大学を受験できるのか、10個サンプルをとチャットGPTー4に問いかけると、さらりとでてきます。サーチエンジンで人力で探すとかなりの時間がかかりますが、さすがはAIです。

★もっとも、多少出願条件など違うところがあるので、そこは鈴木さんが訂正します。

★しかし、だからといってチャットGPTー4は不正確だとかいうわけではありません。本人は、そうやって学習していくだけですから、大丈夫なのです。

★凄い時代になったわけですが、ICTは当然ながらグローバルです。英語がツールとして必要なのは言うまでもありません。今回は日本語で行っていましたが、本来は鈴木さんは英語でやりとりしています。

★そして、チャットGTPー4は、1人1台のPC環境になっている初等中等教育おいて、当然活用可能なのです。ICTと英語はどんどんカップリングされていきます。ICT無用論は英語無用論にもなり、英語無用論はICT無用論にもなり、もはや両者を拒否することはできない時代です。ですから、哲学者や文化人類学者は、AIにはまだまだかかわりないゼーレ(魂)をもとめ、倫理システムを構築しようとしているわけです。

★そのシステムをAIがディープラーニングすると、ゼーレにはかかわらなくなるはずだと。

★そうすると、WHOがようやく健康概念に加えたゼーレの部分は、人間の専門領域になるわけです。身体のケア、メンタルのケア、人間関係のケアはある程度AIロボティクスで何とかなるかもレれないけれど、ゼーレの部分は人間どうしの領域となる。

★もっとも、いずれはそれすらも突破するでしょう。なぜなら、人類が、このゼーレを健康概念、つまりウェルビーイングに結びつけたのは、2021年12月なのですから、依存とケアの関係を考案し実践するケアリングクラスは、今回のパンでミミックでようやく注目されるようになったのですから。それまでは、アリストテレス以来、依存の鎖から解放されることこそ自律として推奨されてきたのです。人類もようやく長い人間の潜在的な根源を掘り起こし始めたばかりなのです。

★パンデミック前は、ケアは、それがどうしてもできない人々のための特別な活動だったのですが、今回のパンデミックで、その重要性が、市民全体が暗黙の裡に引き受けてきたケア活動全体に広がったのです。

小学校から大学まで、日本語と英語の二刀流でいくことは学びのベースになるという鈴木さんのグローバルアドミッションは、ようやくジェンダー格差をはじめ依存とケアの関係を無視してきた明治以降の日本の近代文化に対し一石を投じることになるでしょう。

|

2023年3月26日 (日)

パウロモデル(01)2022年度最終理事会 パウロモデルを共有

★昨日2023年2月25日、パウロの森は、雨の中、桜は満開でした。午後13時から始まった2022年度最終の評議員会と理事会は、経営の話と教育の話の両輪について報告会以上のビジョンとその具体的実装の話になりました。生徒募集ー教育ー進路指導(トランジション)の循環について対話ができる評議員会と理事会になりましたが、これが進化する学校の1つの姿だなあと。

Img_4124

(雨の日のパウロの桜)

★いかに学校現場がダイナミックに細心の注意を払いながら動いても、それを理解し認め愛する眼差しが理事会、評議員会にないと学校現場の教員も生徒もその才能を十全に発揮できないのです。やはり、システムの循環と学校の教職員と経営陣のシステム及び魂の循環共有は大切です。

★そして、そうなるためには、時代の要請と現場の要請と経営の要請が重なり合う全体システム循環モデルの提案が必要です。この循環モデルは、時代に求められるものであること、現場に求められるものであること、経営陣に求められるものであるかどうか、そして、ちょこっとさりげなく時代を先取りできるものであるかどうか、毎回の会を進めながら、試行錯誤していきます。

★そのつなぎ役になるのは、対話です。各部署の対話とその部署のリーダーが集まる校務会議と理事長・校長・事務長・副校長が集結する運営会議です。これらは毎週最低1回は行います。

★よく会議が多いのは非効率的だといわれますが、それは各会議体が循環していないからでしょう。パウロはそこは生態系よろしく循環しています。リフレクションと改善と具体的な行動計画のシナリオを描く会議は、全体の循環を良い状態にする脳神経系循環、血液循環、ホルモンの循環、筋肉や骨の動きの循環バランスを創るのと同じ働きをします。

Img_4125

★そして人間の体が、実際には、その循環を促すために、臓器同士がメッセージ物質を出して対話するのと同じで、各会議体は、会議の時間以外に、各役割チームが動きながら時間の合間を見て話し合っていきます。

★この全体の流れをできるだけ1枚の図にして、運営会議で詰め、理事会・評議員会に提出していきます。その過程で、この1枚の図を教員とシェアしていきます。そのときにアイデアがまた生まれますから、それを盛り込みます。

★ピクチャ―ライティングよろしく、その一枚の絵が、それを見た仲間が、またそれぞれイメージします。そのイメージのうち共有部分が実は学校全体のアイデンティティで、各人の違いが、次のイノベーションにつながります。

★膨大な資料をなるべく1枚に集約。抽象的だけれど、仲間にとっては高感度なアクションイメージ触発装置です。いろんな図を書きました。図を書いてくれる教師もいました。意外と難しく、何度も試行錯誤・チャレンジしてデザインしてきてくれます。まさにDe-signです。

★それを集約するのが2年間は校長の役目でした。押し付けるのではなく、あくまで、現場の教職員の暗黙知を図としてDe-signする。デザイン思考のスリリングな局面ですね。

★職員会議は、毎週行うのではなく、生徒募集や各行事、成績会議、進路指導の実践など全員がかかわるアクションに合わせて、適宜行っていきます。シナリオは事前に各会議内でそして会議体同士話し合っていますから、職員会議は、目標とそれを実現するための動きの打ち合わせになります。

Img_4122

★何か判断が迫られる時も、やはり職員会議を開きます。議論はあまりしません。意見を出してもらって、校務会議で方向性を出してもらって、最終判断は校長が行いますが、同時に理事長とは相談します。理事長の意向も参考にしながら、最終的には現場は校長が意思決定をします。

★1つの意志決定は、学校は循環しているので、時間割変更、スクールバスの時間変更、給食の量の変更などにまでも影響します。もちろん保護者とのシェアも重要です。そのたびに文書作成や連絡の手順を決めなくてはなりませんが、そこは各部署がどんどん決めて、校長のところにあがってきます。即決しなければ、循環に支障があります。そのためには、日ごろから情報・データ収集分析が必要だったのです。

★学校でありながら、気候変動の影響をダイレクトにうけます。行事や入試の日程変更もそうです。新型コロナのみならずインフルなどの感染症の影響もダイレクトにうけます。生徒指導部と養護教諭が判断ができる健康観察や生徒の行動の観察データを日々サーチし、判断の時に役立てるようにしています。

★広報もそうですね。生徒募集状況や外部の情報を収集分析し、年度初めに決めていた募集方法の軌道修正をしていきます。その軌道修正は、理事会でも共有します。何せ、ここは経済変動や人口動態がダイレクトに影響するからです。

★進路指導も同様です。大学の出願方法のリサーチを進路指導部と学年で共有します。生徒1人ひとりの状況は、実は思考コードが氷山モデルの水面下にあって、その見える化が定期テストや成績のコメントデータとして形になり、めちゃくちゃ参考になります。基礎知識、思考のレベル、行動力のレベル、発想のインパクト、社会貢献への素養などすべて毎回の定期テストの成績判定会議でシェアします。したがって、進路指導は進路指導部と学年の協働が欠かせないのです。

★毎回の定期的なテストやミニテストで、その都度状況がわかれば、当然、次の生徒の成長促進のために学年と教科の教師の動きは変容します。テストの機会は、創意工夫次第で、授業も活性化するし、生徒の人間力もエンパワーメントするエネルギー態になります。定期テスト無用論は、そういうテストを創意工夫していない場合、正解です。でもそれは、何を目標とするかが重要であり、テストの有無が問題なのではありません。

★それはともあれ、この流れはパウロの頭脳教務部長がマネジメントしている教務システムが循環していますから、校長は見守っているだけでよいのですが、大事なところは、担任が毎学期成績スコア以外に書くメッセージコメントをすべて読むということです。

★チェックするわけではないのです。それはある意味生徒に対する形成的評価であると同時に生徒と教師の信頼関係の度合いを肌身で感じることができるセンサーです。コメントが歯に衣着せぬアドバイスをしているか、同時にケアフルであるか、現実的なアクションプランを生徒自身が立てられるアドバイスか、何よりインスパイアーされ主体的に変貌する可能性としてのメッセージになっているかどうか。2年間それを続けてきた結果、担任の言葉は、キリスト教的にはロゴスとなっていることに気づきました。日本文化的には言霊になっていることに気づきました。

★私的には、言葉は存在そのものであるという実感でしょうか。

★もちろん、こんな理屈は先生方と共有しません。先生方が創り上げる、成績表に添付するコメント以外に、多くのコメントがあふれているのが、学校現場です。それを拾って、あの言葉がいいねと共感するだけです。授業を見に行って、あのときの眼差しがよかったとか。成績のコメントも、生徒1人ひとりに語っていることばをマーカーで塗るだけです。本当に1人ひとりの特徴をつかんでいるということがそのマーカー箇所の多さで実感できます。

★学校の循環のクオリティをあげるのは対話なんだけれど、教師一人一人のコメント力というか言霊というかロゴスというか存在の息吹というか、表現は好きなものを使えばよいのですが、エンパワーメントするメッセージ力にヒントがあるなあと。そのメッセージに力があるかどうかは、互いの信頼の絆の強さにかかわってきます。あるときは、そのメッセージは眼力であることもあります。

★そして、ICTを自在に使いこなせる教師であることが、この対話力やメッセージ力のクオリティとパワーを上げることにつながっていますね。臨機応変に動けるかどうか、変化耐性には欠かせないツールです。これは生徒も保護者も同様です。

★2040~2050年のムーンショット目標からバックキャストして、デジタル、ネイチャー、ケア、セルフトランスフォームを循環する対話ベースの教育、それから外部の多様なネットワークをいかに結びつけるかその対話力、現場が、ダイナミックにかつ細心の注意を払って動くには、柔軟な会議体の生態系が必要です。そう実感した2年間でした。

★これらをまとめてパウロモデルの図のバージョンアップをしていく2023年度になるでしょう。2年間対話を共にしてくれた教職員、そして多くの方々に感謝いたします。

★本年度最終日、職員室を出るとき、感謝の言葉をあえて言わず、いつものように「お先に」と語りかけ、「お疲れさまでした」と答えてくれたみんなに本当に感謝しています。4月からは再び新たな次元で対話していくことになります。

|

2023年3月24日 (金)

2024年高校入試の行方(01)成城学園の魅力

★2023年の成城学園の高校入試は、推薦入試も併願入試もその出願数は前年を上回りました。2回実施した中学入試も同様でした。この人気の秘密は、簡単にいうと、受験生が、同校の伝統と革新の絶妙の統合を感じ、安心と希望と自由への期待値を高めるからでしょう。

Photo_20230324073201

(写真は同校サイトから)

★具体的には、たとえば、サイトにこんな記事があるのですが、ここにも伝統と革新の絶妙の統合が映し出されています。その記事は「メディア委員会がSTREAMチャレンジ2023で優秀賞を受賞!」です。ぜひ読んで欲しいです。

★メディア委員会がソフトバンクロボティクス株式会社主催「STREAMチャレンジ2023」に出場し、見事Pepper部門の優秀賞を獲得したわけです。これは何を意味しているのか?まず委員会というコミュニティシップやプロジェクト活動がハイパフォーマンスだということでしょう。これだけで、ワクワクするでしょう。自分の好きなことを実践する場があるし、学内だけの活動ではなく、他流試合に挑戦することもできるのです。同校の場合は、同じような活動が多様にあるのですから、それぞれの受験生にとって期待が高まります。

★そして、そのコンテンツですが、「STREAMチャレンジ」(※)という実に革新的な挑戦です。ワクワクしないわけがありません。次世代を担う人材たちがロボットやAIなどの最先端テクノロジーを活用して社会課題に取り組み、社会実装に挑戦する探究的アクションだということです。素敵ですね。メディア委員会メンバーはPepperを使った「本や雑誌のRe活用」というテーマで課題解決に取り組んだとあります。本とロボティクス。伝統と革新のマッチングです。

※「STREAM」とはSTEAM教育に(Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Mathematics(数学)Arts(リベラル・アーツ)を統合的に学習する教育)にRobotics(ロボット工学)、Reality(現実性)、Reviewing(評価)の観点を入れ、頭文字のRを加えたものです。(同サイト記事から)

★学校で毎年約300冊も本・雑誌が廃棄されているという課題に目を向けたというところは、普段から探究やアクティブラーニングで、デザイン思考を実施していますから、身近なところにある一見小さな問題からグローバルな問題解決につながる発想<Think global, Act locally>が彷彿としているのが了解できます。

★プロジェクトA(古本の回収)、プロジェクトB(古本市の開催)、プロジェクトC(実施報告と次年度協力のお願い)という3つのプロジェクトを10か月以上かけて実践し、古本回収への興味を喚起させるクイズの出題(プロジェクトA)や古本市当日の呼び込み(プロジェクトB)などプロジェクトごとにPepperのプログラミングを行ったとサイトにはあります。

★本という紙を有効活用することにもなり、SDGsの活動にもつながるし、何より本の文化を継承することにもつながります。本は古くて新しいネットワークを開発する拠点ですから、デジタルの世界になっても重要です。アナログかデジタルか、そんな議論も活動の過程で当然されたでしょう。

★そして、有識者からのフィードバックでは、古本市を開催し売り上げを寄付するという実際の行動につながっている点が評価されたと。社会貢献への寄与度も高いわけです。これはとても大事なことを意味します。自分の好きなこと関心があることを探究活動していくことが、結果的に他者や社会に役に立つと実感した時、自分の存在であるbeingはwell-beingに変容します。

★Z世代は、ウェルビイング経営を行っている会社かどうかチェックするのが65%だと「学情」がデータ分析しているわけですが、それは学校選びも同じだと思います。

★成城学園のこのウェルビーイング教育は、メディア委員会にとどまらずあらゆる同校の活動に浸透しているのです。

参考)同窓生が語る成城学園の魅力→<GLICC Weekly EDU 第107回「成城学園の中高大連携プログラムー卒業生と生徒と教員のネットワーク」>

|

2023年3月23日 (木)

2024年大学入試(02)「探究学習評価型」 千葉商科大学 給費生総合型選抜に新設 高大連携と高大接続がかなり重なってくる時代か?

大学ジャーナルON LINE2023/02/22で、千葉商科大学が「探究学習評価型」を新設という情報が掲載。学費が半額減免となる給費生総合型選抜の中に設置するようです。同記事によると、その理由は、「千葉商科大学では、高等学校の探究学習は、大学入学後の学びとの親和性が高いと考えている。
なぜなら、創立以来、変化する社会に対応しうる人材を輩出するため実学教育を理念としているからだ。アドミッション・ポリシーにおいても、探究学習で重視される要素が見て取れる。」ということです。

415jvovynl_sx350_bo1204203200_

★同大学が想定している探究は、プロジェクト型で、調べ学習型以上の探究活動を想定しています。そして、実学志向がゆえに、SDGsに取り組む組織、エシカルエコノミーに取り組む組織、ウェルビーイング経済に取り組む組織が増えてきていますから、いかなる予測不能な事態にも対応できる思考力・判断力・表現力のみならず、「倫理観」も素養として必要だとアドミッションポリシーでは明快に設定されています。

★総合型選抜と探究学習のつながりがさらに明確になってくる時代ですね。

★受験勉強と大学の学びや研究は別という時代から、受験勉強と大学の学びや研究が連携する時代へという傾向が濃厚になるのでしょう。高大連携活動と高大接続の動きが1つになってくる可能性も見えてきました。

|

2023年3月22日 (水)

2024年大学入試(01)「女子枠」が示唆するコト

毎日新聞2023年2月21日の記事<「偏差値下がる」批判も一蹴 大学入試の「女子枠」なぜ必要?>の上野千鶴子さんのコメントは極めて重要です。同記事は、こう始まります。「大学入試で「女子枠」を設ける動きが広がっている。背景には、理工学系に進む女子学生が少ないことや、日本の産業界が抱える危機感があるが、女子学生をいわば“優先的”に入学させようという取り組みには「不平等」との声も一部で聞かれる。なぜ今、入試の「女子枠」が必要なのか。」

E4a

★ジェンダー問題を解決しようという背景とテクノロジー分野などにおけるイノベーティブな高度人材不足という背景があるということですね。産業におけるエシカルな問題と技術革新能力問題があって、この両方を解決しようとすると、能力主義的エンハンスメントのジレンマが当然出てくるし、アファーマティブアクションは当然逆差別問題が起こる。

★こういったジレンマは、本当は想定内のはずなのに、なかなか議論が進まないのが日本の「文化」にあるアンコンシャスバイアスだということでしょう。

★上野千鶴子さんは、次のようにコメントしています。

 ジェンダー研究の専門家はどう見ているのか。社会学者の上野千鶴子・東大名誉教授は「アメリカの大学では、選考する学生の出身階層、人種、国籍、ジェンダーなどのバランスを勘案して多様性のあるキャンパスを意図的に作り出している。それによって大学のパフォーマンスが下がったということはなく、むしろ上がっている」と指摘する。

 また、子どもの学力は親の経済力に大きく影響されることがデータで実証されており、上野名誉教授は偏差値競争の公平性自体にも疑問を投げかける。

 上野名誉教授は「女子枠は時限的な取り組みで、その間に受験した男子生徒は相対的に不利にはなる。ただ、女性たちが長年、相対的に不利な状況に置かれてきたことも見逃すべきではない。女子学生たちも、『この時期に女で生まれてラッキー』と開き直るくらいの気持ちを持ってほしい」と呼び掛けている。

★国際的な解決策をちゃんとエビデンスとして持ち出しているし、レトリックはともかく、過渡期における相対的な不利を共時的にではなく、通時的に解決しようという説得もおもしろいですね。

★しかし何より、偏差値競争という垂直的序列主義こそがアンフェアではないかと指摘。

★ジェンダー問題の根本には、基本的な公平性の問題があるのだけれど、「女子枠」だけ論じていると背景にあるアンフェアーの意識を見えなくし、あたかも解決する希望の1つとして映し出してしまところに警鐘を鳴らすあたりが上野さんらしいですね。

★しかしこの問題は、WHOや人間の安全保障を保守する各機関では、すでに論じられていて、さらに次のステージに進んでいます。昨年は、1972年にローマクラブが発刊した「成長の限界」の出版50周年でしたから、当時の世界モデルをアップデートして、5つの領域の劇的な解決アクションで「Earth for All:万人のための地球」はなんとか救われるのではないかと提唱。

★その5つの項目のうちの1つがエンパワーメントで、エンパワーメントする主語の1つがジェンダー問題です。女性をエンパワーメントすることによって男性も取り残されないようにする社会的関係性にもちゃんと目配りしています。

★システムダイナミクスによる科学的計算予測とそれを想定するシステム思考によって、解決する思考プロセスは、「女子枠」と「その背景にまだ依然として残る偏差値主義」の矛盾を解決するヒントを提示してくれています。

★このローマクラブをはじめとする国際機関の提案は、すべてSDGsに直結しています。日本の産業界や教育界は、SDGsを大いに取り扱っています。しかし、「女子枠」を考える際にそこに結びつけることをまだまだしていませんね。

★PBLなどで社会構成主義だとか語っているのですから、国際社会が邁進している新しい地平に共に迎えるはずです。

★超「女子枠」にするにはどうしたらよいのか?たとえば、知のエンパワメントとして、すべての高校卒業生に大学入学が可能な制度に変えてしまえばよいわけです。「小出し」政策ではなく、「劇的=ムーンショット計画」である必要があると思います。少子化問題も解決です。

★たしかに、偏差値は下がりますよね。でもそれは能力ではないでしょう。母集団の規模の問題にすぎないでしょう。それに偏差値以外の多様な基準が当然必要です。一般選抜もやめてしまえばよいのでは?偏差値は客観的だから公平だなんていう偏見はそろそろ変えたほうがよいでしょうね。

|

2023年3月21日 (火)

2024年中学入試の行方(13)5月21日 東京私立中学DISCOVER私立一貫教育合同相談会

★東京私立中学が、2024年生徒募集に向けて動き始めています。すでに各私学が学校説明会を対面またはオンラインで実施しています。そして5月21日、東京国際フォーラムで実施される「東京私立中学DISCOVER私立一貫教育合同相談会」に向けて、私学と私学関係者が連携して準備を開始しています。

2023ds_1200_500_

★その準備は、企画から始まって広報、参加者募集、配布資料制作、会場運営シナリオ多様なのはいうまでもありませんが、氷山モデルでいえば、そこは目に見えないバックヤードですが深イイバックヤードがさらにその深層にあります。

★それは、歴史に学びながら私学の現代的意義を再度明らかにし、それを当日どのようにシェアするのかという、最難関の挑戦です。ここは小難しい議論がこのような企画をするときに並行進化しますが、まずダイレクトに舞台に現れることはありません。

★インダイレクトににじみ出るようなシェアの方法を創意工夫することが大切です。

★私学の教育は、人間存在の本質部分を建学の精神で忘却しないようにマインドセットされています。そして、ブランドアクティビズムの手法を行うことによって、形骸化したり風化したりするのを防いでいます。

★東京私学のブランドアクティビズムとはいかなるものか、少し考えていきたいと思います。

|

2023年3月19日 (日)

GLICC Weekly EDU 第120回「聖学院ー『創造と貢献』が切り拓く未来」 児浦先生聖学院の豊かな教育の質をしみじみ語る

GWE120回は、120周年を迎えた聖学院の広報部長であり、教育デザインリーダーであり、高校新クラスであるGICの統括部長であり・・・と多様なリーダーの役割を果たしている児浦先生が出演してくださいました。気づくと約90分が経過し、あっという間でした。聖学院がどんなことをやっているかという話が前面にでてくるのではなく、生き生きとした生徒の姿が前面にでて、その姿がどういう教育環境デザインで生成されるのかというお話でした。生徒のタラント(才能)とそれが生まれる器の進化や広がり・多様性が話されました。アリストテレス的には質料と形相の相乗効果が現実態を生み出していくプロセス。このような相乗効果というか化学変化そのものが聖学院のウェルビーイング教育の泉だということだったと思います。

Gwe_20230319070701

(GLICC Weekly EDU 第120回「聖学院ー『創造と貢献』が切り拓く未来」)

★もちろん、その根源的なエネルギーは、オンリーワン・フォー・アザーズの質の話がつねにかかわっているというのが児浦先生の話です。いったいそれはどういうことかは、ぜひYouTubeをご視聴ください。

★それにしても、毎年この時期に児浦先生の話をお聴きすると、必ずそのときそのときの卒業生に聖学院生のスーパーモデルが生まれていることがわかります。今回も2人のモデルの話で大いに盛り上がりました。ロールモデル効果が持続可能になっているというのが、聖学院の教育の伝統と革新を生み出しているということでしょう。

202205206287392b929891000x850

(GIC:グローバル・イノベーティブ・クラスのコンセプト図)

★それから、GIC効果の話もでました。とくにSTEAM教育やプロジェクトの事例の話は秀逸でしたが、驚いたことに、生徒はその土壌にリベラルアーツ教育があることの重要性について実感しているというのです。GICは30名クラスですが、そのうち10人が海外大学を志向し、その他は、芸術系と哲学の領域を研究したいとなっているそうです。

★海外、特に米国だとリベラルアーツ大学も人気だし、芸術や哲学はまさにリベラルアーツ。もともと聖学院の教育にはキリスト教というベースがあるので、リベラルアーツ的発想があったということも改めて確認できました。

★今も昔も未来も希望の学校「聖学院」。大事な話が語られました。ぜひご視聴ください。

|

2023年3月18日 (土)

2023年大学入試(07)筑駒を追加 東大合格者数ランキング50位までの学校

★筑駒が自身の公式サイトで、2023年大学入試結果を公開していたので、3月26日号のサンデー毎日のデータに追加しました。

23_20230318191601

★ますます垂直的序列が鮮明になりましたね。このことがダメだとかダメでないとかということではないのです。垂直的序列という事態が孫たちの未来の日本にどういう影響を与えるのか与えないのか仮説を立てたほうが良いということなのです。

★私立と公立のバランスとかそういう話になりがちですが、そういうことでもなさそうですね。公立復権とかそうでないとかよくメディアは語りますが、売り上げに貢献する以外に何かメリットがあるのであれば、それはそれでよいのでしょうが、恒例のこの記事が何十年続いているのかしりませんが、毎年同じトーンですね。

★それがあたかも常識で、大学入試のファクトを読む慣習的レンスになっているわけです。

★そのレンスをどう見直すか、見直さなければリスクは高くなるのか、見直すとしてその方法は。。。。。。

★国民的議論は必要なのかどうか。。。。

★自分は東大を受験しないから、あるいは出身じゃないから関係ないということではありませんね。

★財務事務次官がほぼ東大出身者、しかも経済畑ではなく、文Ⅰ出身者が多いわけです。

★それでよいのかどうかではなく、このことが何を示唆しているのか、答えのない問題だからこそ、重要な何かが横たわっている可能性が高いですよと。

★おまえはどうするのか?と問われるかもしれません。私自身は、とにかく垂直的序列は偏向主義を生むことが多いので、そこは緩和策が必要だと思っているということです。しかし、現状いきなりというわけには、いかないかもしれないし、思い切って一般選抜をやめてしまうという考えもあるなあと。

★そんなわけで、自分なりに仲間とプロジェクトベースの新しいプログラムを地道に共有していっているわけです。

★幸い、「主体的・対話的で深い学び」とか「探究」などという時間が設けられたし、「総合型選抜」も増えてきているのですから、ここをうまく活用すればよいと思っています。制度を変えるのは、とてつもなく時間がかかるので、逆利用するということです。

★そんなマイナーチェンジで大丈夫か?といわれそうですが、高校はまだ1学年100万人いるのです。フィンランド教育がすばらしいと憧れるのはよいのですが、フィンランドの総人口は600万人いないでしょう。

★日本の中高生600万人のふだんの学びが、やれば現行制度を変えずしてフィンランド教育レベルになるわけです。ただ、それと大学入試の一般選抜に合うあわないはあるかもしれません。

★しかし、記憶はきわめて重要なのです。暗記と記憶の違いはありますが、記憶はとにかく大事で、したがって、知識やパターンや構造は記憶しなくてはプロジェクト学習も成立しないのです。

★思考するには知識が必要だということは、思考するには知識を記憶することは必要だということを言っているのであって、思考するには暗記が必要だということではないのです。

★暗記と記憶の違いは、身体能力の活用方法の違いですね。暗記の時に活用する身体能力は、必ずしも自然との循環は必要ないのです。記憶には自然界と良好な循環を持続可能にしておかないと脳と神経系が順調に機能しませんから。

★思考と記憶の循環は、人間の条件でもありますから、それを垂直的序列で格差をつけることは、本来人権にかかわる問題でもあるのです。ハラスメントにかかわることです。AIの進化が、それをはっきりさせていくことでしょう(汗)。

★すでにある倫理的問いを投げかけたとき、AIツールがだした回答が、人間以上の倫理観を披露したと聞き及んでいます。大学入試制度と偏差値格差についてAIツールがどう回答をだすのでしょうか。。。。

|

2023年3月17日 (金)

2023年度東京の高校入試(04)国学院久我山 生徒が新しいイメージを生み出す

★2023年の国学院久我山の高校入試の出願状況は、推薦入試も一般入試も前年を大幅に上回りました。どうしてだと思いますか?国学院久我山と言えば、大学進学入試は強烈によいし、毎年、弓道部、高校バスケットボール部、高校サッカー部、高校ラグビー部、中学ラグビー部などが、全国大会に進みます。「女子CCクラス」のグローバル教育は、オンラインでもリアルでも、世界との相互理解を進め、広い視野を培って、思考を深めることで評判を呼んでいます。

2021kokugakuinkugayama08

(写真は首都圏模試の記事「オンラインでの国際交流で得られた、大きな気づきと学び」から)

★たしかに、このような実質があるから人気なのでしょうが、すでにある程度確固たる出願数を確保していますから、高め安定というのが通常なのですが。今年はさらに伸びたのです。なぜなのか?非常に興味深いと思っていたところ、首都圏模試センターの記事「国学院大学久我山中学高等学校2022 リアルな学校生活を垣間見られる、待望の公式SNSが始動」に行き着きました。目に入るや、ああこれだなと思ったのです。

★どうやら、入試広報用SNSチームのメンバーを募集したところ、中学生が11名、高校生が6名の合計17名が参加することになっているようです。生徒自身が、自分たちの目線で、学内モニタリングをして、生き生きした学園生活を発信するわけです。これは高校受験生には、共感を呼ぶはずです。

★そしてこのようなアイデアを実現する力を発揮したのは、同校の3人の女性の先生だということです。同記事にはこうあります。「中心となって動いているのは、女子部の理科教諭の大熊 萌先生、数学科教諭の関口佳代先生、芸術科教諭の林 七海先生の3名です」とあります。理数系と芸術系で女性が活躍している国学院久我山です。

★ジェンダーギャップ指数ランキングで、日本はいつも先進諸国の中で最低レベルであると批判されています。しかし、同校ではそれを払拭するような環境になっていて、女性へのエンパワーメントができていると推測します。

★そして、生徒が主体的に自分の学校とは何者かを発見していくのです。それは同時に自分とは何かの発見でもあります。

★自分を発見したり創発できる環境はまさにウェルビーイングです。国学院久我山の新しいイメージが受験マーケットにできつつあるのではないでしょうか。

|

2023年3月16日 (木)

2023年度東京の高校入試(03)京華女子が注目されることの意味

★2023年度の京華女子の高校入試の出願数は、推薦入試、一般入試の両方ともに前年対比を上回りました。細かく見ると推薦入試の芸術・スポーツ選抜は減少したのですが、それを他の入試がカバーしていますから問題ないのです。普通だったら、この入試を実施しない方向もあるでしょうが、同校はそうしないのです。ここが京華女子の本質的なものを大事にするコアの部分だと思います。

Keikaj

(写真は同校サイトから)

★同校の探究や言語教科を中心に、生徒1人ひとりの才能と共感力を豊かにしていく実践とその実績が人気の大きな理由です。なぜ豊かになるのかは、あまり広報されていません。緻密な1人ひとりの状況に適合したルーブリックが編集されていて、これをみるとなるほど豊かになると感じるのですが、専門的で膨大な情報が集積しているので、広報活動には適さないと判断されているのでしょう。

★ですから、そこは外から見て見えない部分です。見えない部分こそが実は重要ですが、そのルーブリックが活発な探究活動を生み出し、実績をだしているのですから、あえて見せる必要もないのかもしれません。

★シンプルで美しいあの会社のスマホも、中身は複雑な装置で、それを広報で見せることはないのと同じでしょう。

2022112132604

(写真は同校サイトから)

★さて、この知恵の教育環境を盛り上げるのが、実は同校のアート活動なのです。たとえば、マーチングバンド部ですが、他校と比べると少人数チームですが、各大会で金賞などを獲得してくる感性溢れるパフォーマンスは有名です。

★日常のアート活動。なかでもマーチングバンドのようにそのアートの練習が、在校生の視覚と聴覚からしみこんでいくのは、気づかないうちに知の覚醒、アイデアの創発がそれぞれの生徒の内なる躍動となります。そのようなエネルギーは、心身に入り込むアートです。

★そのアート活動の使命を全員が持つ必要はありません。少人数でも入学持続可能な状態になっているのがポイントなのです。

★芸術のない知性は脆いものです。知性のない芸術は空虚です。

★京華女子の魅力は、知性と芸術のケミストリーにあると私は個人的に思っています。一般選抜の大学受験勉強の落とし穴はこういうところにあるのですね。京華女子の教育環境がいかに重要か、もっと注目されるとよいですね。

|

2023年度東京の高校入試(02)推薦入試を実施しない開成とかえつ有明

★東京の高校入試は、一般的には、推薦と併願(一般入試)の両方を行いますが、開成とかえつ有明は、一般入試しか行いません。開成の場合は、募集定員100名のところ毎年5倍は超えることが多いですね。推薦入試をしなくても、一般入試という高校入試においても市場の原理が働く領域で十分に定員を確保できるからです。一方かえつ有明は、一般入試の募集定員は30名で、国際生入試は10名です。中学入試が高人気の学校ですから、口コミで集まってきます。受験市場の競争原理ではなく、ウェルビーイングな学びや人間関係や利他主義的プロジェクト活動のネットワークの中で評判が浸透しています。

Photo_20230316084301

(写真は同校サイトから)

★大学受験知識ではなく、国際的知性の拠点のケンブリッジ原体験から始まる高校新クラス。8年目にして、推薦入試をやめて、一般入試一本にしました。そして、2023年度の出願数は、国際生入試同様上回ったのです。

★多くの大学受験生に総合型選抜のチャンスが開かれた今、探究やプロジェクト、アントレプレナーシップ、海外での活躍土壌、対話中心の学びなどなど世界標準でケンブリッジやIB、MITなどの様々な教育セオリーを先生方自身が生徒と共に学びながら独自のそれいて世界に通じる教育環境をデザインしていますから、同校は得難い高校生活の場となっているのです。

★同校の一般入試はチームビルディングができる可能性、自分とは何かの「現時点での自己への気づき」をプレゼンする入試ですから、この段階から総合型選抜にも十分に通用する素養を準備することになります。

★推薦入試は、競争原理が働く学校以外は、多くの場合、合格する可能性が高いのです。それが一般入試との決定的な違いです。東京の中学入試ではない制度です。その他の地域では採用されたりもしていますが。大学入試には指定校推薦というのがあって、これもよほどのことがない限り合格できないということはありません。

★かえつ有明は、その制度を使わないわけです。中学である程度教育経営基盤ができているので、本当にかえつ有明の教育を受け入れる生徒に入学してもらいたいという意志がメッセージです。

★そのような学校と生徒の意志が合力になるわけですから、高校新クラスの成長ぶりは、頻繁にメディアでも取り上げられています。

★もちろん、中学から入学している生徒は、高校新クラスで行うことをすでに3年間かけて成長してきていますから、その相乗効果は凄まじいのです。

★それに加えて全体の25%は国際生ですから、中学入学カテゴリーと高校新クラスカテゴリーと国際生カテゴリーの生み出すケミストリーは、生徒のインスピレーションやアイデアのインスパイアーを創発します。そのエネルギーは凄まじいのです。

★開成に行って東大や海外大学をはじめ、名だたる有名大学に進むのも良し、かえつ有明に行って、自分の研究したい探究したい学部学科プロジェクトがある大学が東大の場合もあるし海外の大学の場合もあるし、その他の名だたる大学である場合もあるし、そこが目標ではなく、自己変容物語のプロセスを優先して進路選択するもよし。

★いわゆる偏差値が高い高校受験生の中に、開成かかえつ有明かそれが問題だという問いを投げかける時代がやってきたということは、高校入試において小さなそして大きな地殻変動が起き始めているのではないでしょうか。

 

|

2023年3月15日 (水)

2023年度東京の高校入試(01)小さくて大きな変動が起きている 新渡戸文化

★高校入試というのは、中学入試と大学入試と性格が全く違います。たしかに制度が違うのですが、大前提として、高校入試の受験者はほぼ中学卒業生全員なのです。中学入試は、私立と国公立合わせて全国の小学生の10%しか受験生にならないわけです。大学入試は60%弱ですよね。

Photo_20230315162301

(写真は同校サイトから)

★したがって、競争原理が激しくなるのは、中学入試と大学入試で、高校入試は相対的に競争原理は緩和されるのです。偏差値の高いところに集中して、振るい落とされても、中学入試の場合、公立中学の道があるし、大学入試の場合は、浪人という道もあるのです。ところが、高校入試は、道が複数あるわけではなく、ほぼ偏差値順に輪切りになる配分が中心的な選抜方法になります。

★したがって、いったん学校の偏差値が定着すると流れが決まってしまいます。全員がどこかの高校に収まるわけですから、倍率が激しく高くなるような現象がたくさん出てくるということは考えにくいのです。

★2023年度の高校入試も全体としてはそうでした。ところが、推薦入試も併願入試も両方とも前年比が増という学校がでてきました。偏差値などのペーパーテストの得点によって自分以外の誰かが作成した基準に従うのではなく、自分に合った学校を探して、そこにチャレンジしようという自分基準で選ぶ流れです。

★その象徴的な動きをした学校の1つが、新渡戸文化です。両方の入試で前年の出願数を上回ったのです。

★教えない授業をベースにした学校ですから、生徒が主体的に動き、自分たちでプロジェクトを創出していくエージェンシーの役割を生み出していく雰囲気。進路も偏差値に基づいた大学受験勉強ではなく、多様な進路チャンスを社会の人びとと協働するプロジェクトの中から見つけていく。そういうエンパワーメントのエネルギーにみなぎっている教えない授業という学びの環境に触れた受験生は、この学校でウェルビーイングな価値ある自分を見出したいとなるのでしょう。

★新渡戸文化のような学校が、やはり推薦も併願も出願を増やしているというのが2023年度の流れだと思います。もちろん、進学実績で人気の学校もあります。一気に変わりはしないでしょうが、新たな学校選択の通奏低音が響き始めたのです。

|

2023年3月14日 (火)

2023年大学入試(06)東大合格者数ランキング50位までの学校をみてわかること

★サンデー毎日の2023年3月26日号の恒例の東大合格者数ランキングから50位までを抽出してみました。これはいったい何を示しているのでしょうか?

2350_20230318190501

★上記の表に掲載されている50位までの学校だけで、1,769人です。前期試験の合格者は2,997人に対して、59.0%シェアです。全国の高等学校の数は、5,116校です。1%の学校で、約6割の東大合格者数を出しているということです。

★このことをすごいと一般には思うのでしょうが、もしこの1%が超富裕層に重なるというのなら、また別でしょうが、そうではないのですから、ただ東大に入るためだけに、受験勉強をするのは、あまり意味がないでしょう。

★挑戦する選択肢がないならまだしも、世界にはたくさん選択肢があります。ですから、進学したい人で、無理なく合格できる人は進めばよいし、そうでない人は、東大に入るためだけにがんばるのは、あまりハッピーではないですね。

★どのみち自分の興味と関心を深めてオリジンリティがあれば、どこの大学でも同じです。東大に行きたければ、大学院で東大にいけばよいわけで、いわゆる受験勉強のみに時間を費やすのは、得策ではないと思います。

★東大がどうのこうのではなく、この確率の低さに挑戦するには、それ相当の理由が必要だということです。

★その必要性が、野心的なものであっても、全く問題がありません。でも、東大でなければ達成できない野心は、今日あるでしょうか。将来絶対に財務事務次官になりたいというのであれば、おそらく東大に入る必要性はかなり高いですが、それ以外は、今や東大でなければ乗り越えられない野心はないでしょう。本人次第です。

★それなのに、実際には、東大合格のために費やす受験勉強が無駄と思える生徒がたくさんいます。合格者人数は、高校卒業生全体の0.3%です。そんなに苦労しなくても、東大の前期試験のような問題が解けてしまう生徒に東大は任せて、かなり難しいという生徒は、さっさと違う選択肢を探せばよいのではと思います。

★東大に行けそうな人は行けばよいけれど、そうでない場合は、別の選択肢を探しましょう。受験にクリエイティブテンションを高めるのはよいですが、無理なストレスは、どうなんでしょう。

★こんな考えだと、日本の国が滅んでしまうという方もいるかもしれません。でも、ちょっと考えれば、日本の国や世界は、東大受験勉強で動いているわけでもなんでもないでしょう。

★でも、こうしてサンデー毎日を買っている私のような消費者もいるわけですから、東大受験を特別扱いしないと、経済が成立しないということでしょうか。市場の自由ですから、まあよいのですが、違う自由を創るのは、私たちのミッションでもあります。垂直的序列主義を崩していくことの大切さ。この50位までの学校、つまり1%の高校による東大合格者の寡占状態の放置、多様性の排除は、孫たちの未来にとって有益とはあまり思えません。

|

ケアの時代(01)ケアの視座

★21世紀になって、急に自己肯定感、自閉症、メンタルモデル、ウェルビーイング、ケアなどのキーワードが照射する具体的状況が可視化され、意識が焦点化されています。高校教育では、全日と通信制高校のあり方の見直しも議論されてきています。

★特に、今回のパンデミック、ウクライナ、気候変動というキーワードが遠くの話ではなく身近な生活にもその影響を可視化しています。そして、当然困難にみな直面します。DXとかGXとかがその局面を解消するテクノロジーとしてあるいはイノベーションとして盛り上がっています。倫理的資本主義など資本主義の新しいカタチが求められ、あたかも1930年にあのケインズが「孫たちの経済的可能性」という予言書さながらのエッセイで書いているのと同じような状況が生まれています。

【インプットケアループ】

Photo_20230314030501

★もちろん、2030年は、ケインズの予言通り、先進諸国は、イノベーションによって経済は発展し、1930年の世界恐慌当時とは比べ物にならない程生産性はあがっているでしょう。ケインズは、だから2030年は、当時の4分の1程度の労働で、よくなるのだともいっているわけです。そして、時間を持て余すから、人間はその余暇を本質的ななにかを追究するようになるしかないのだと。

★当時の4分の1程度の労働というわけにはいきませんが、毎年低成長かもしれませんが、先進諸国はなんとか成長し、1930年当時に比べるとたしかにすさまじい成長です。たとえばGDP成長率というのは、前年比ですから、複利計算で、たしかに資本蓄積は着々ですね。

★そういう意味では、経済に関するケインズの予言は半分はあたり、半分は外れたのかもしれません。しかし、ここで重要なことは、経済はあくまでも手段であって、人生の目的である人間にとって大切な本質的なことをみなが探究するようになるのだという指摘はあたっていたようです。

★もともとケインズは、このことを主張するためのでデータや根拠として経済成長の曲線を描いたにすぎず、それがあたろうがあたるまえが、人々が、世界恐慌に直面して、パニックになり自信喪失し、落胆し、自殺までしてしまう恐怖の恐慌時代に対し、100年先を見よ、孫即未来の価値を生み出せとエールを贈るのが本意だったのでしょう。

★そして、パンデミック、ウクライナ、気候変動の時代の悲痛さは、1930年時代よりも凄まじいかもしれません。51年前にドネラ・メドウズらが「成長の限界」で予言した2030年はまさに起こりつつあるのです。しかし、ドネラは、ケインズと同様に、メンタルモデルの変容を提唱します。自然と社会と精神の循環を取り戻そうよと。その動きがSDGsに結実し、日本の2050ムーンショット計画につながっているわけです。そして、それはケインズの孫たちのための2030年予言とシンクロしているわけです。

★すべての人のタレントを開花し、テクノロジーによるイノベーションを進化/深化させると同時に、人間のメンタルをウェルビーイング状態にすることこそケインズのいう人間の本質的なことでしょうし、ドネラのいうメンタルモデルの変容でしょう。

★では、そこはどうするか?私は、いよいよ21世紀はケアリングトランスフォーメンション(CX)の時代であると思っています。気遣いの時代といってもよいのですが、「気遣い」という日本語は、少しケアとニュアンスが違うので、ケアとかケアリングという言葉を今のところ使っておきましょう。

★ケアの視座は、上記のインプットケアループを理解し、内なる光と外交性を統合循環する精神・自然・社会の関係性を生み出すポジティブメンタルモデルを形成していき、孤立化や無気力、怨念の悪循環を生み出すネガティブメンタルモデルに陥らないように精神と自然と社会の環境をデザインするスキルの実装ということになります。

【アウトプットケアループ】

Photo_20230314033601

★そして、この実装は、同時にインプットの逆照射につながります。ケアの視座は、インプットケアループとアウトプットケアループの相互関係性でなりたつわけです。

★しかしながら、インプットのときに、物理的・精神的抑圧を与えないようにすると、アウトプットのときに、物理的・精神的抑圧がでてこないかというと必ずしもそういうわけではありません。もし、外壁センサーと内壁センサーの関係性がポジティブメンタルモデルになっていない場合は、そうならないのです。

★したがって、インプット情報とその流れがポジティブメンタルモデルになるようにケアリングする必要があるのです。

★21世紀になって、私は多くの学校とPBL開発をしてきました。特に3.11以降は21世紀型教育機構のメンバー校の先生方と先鋭的PBLモデルを追究してきました。そして今、勤務校聖パウロ学園で全日制の先生方と通信制の先生方と毎日対話をし、気づきを得ています。もはや生産年齢を超えてしまった私ですから、これからも多くの先生方と対話しながら、今までそしてこれからの気づきと実践をシェアしていければと思っています。年寄りの冷や水かもしれませんが、あるいは大きなお世話かもしれませんが。。。。。

★しかし、私もケインズやドネラのならって、100年後を見据えて残りの人生を終えたいと思うのです。「孫たちの教育的可能性」「孫たちのウェルビーイングの可能性」について考察と実践をしていきたいと思います。そういう想いで、このシリーズを細々と続けたいと思います。

|

2023年3月12日 (日)

GLICC Weekly EDU 第119回「かえつ有明〜『多様な学び』をプロデュースする」 先生方のブッククラブがおもしろい

先週金曜日、<GLICC Weekly EDU 第119回「かえつ有明〜『多様な学び』をプロデュースする」>が開催されました。紹介するまでもないほど有名な佐野先生と金井先生が登壇され、お二人のマインドフルネストークが、YouTube空間に広がりました。日々子供の勉強に悩んでいる保護者の方、教育に格闘しながら疲れているなあという先生方などは、ぜひご視聴ください。癒されるし、ウェルビーイングってこういう感じかあとなるでしょう。

Photo_20230312054101

★同校は、先生方全員が、生徒と共に多様なプロジェクト宇宙を創出しています。どのプロジェクトも学内のネットワークでとどまるのではなく、学外のネットワークも広がっています。巧んで・探して・頼んで、そのネットワークがつながるのではなく、ネットワークそのものがかえつ有明の生徒や教師のアクションを求めているという関係性がコンコンと生まれているのです。

★それは、心理的安心安全性の土壌があるからです。

★とにかく、話はいつものように拡散しつつ深まっていきました。実は、佐野先生と金井先生との出会いは、12年前の3・11だったのすが、その時から明確に外部環境は危機的な状況でした、7年前お二人がかえつ有明に赴任されたときも、学校経営危機の環境下にありました。そのような脅威・恐怖・危機的状況下で、心理的安心安全性を学内に生み出し広げて持続可能にしていくのは奇跡的です。その極意は?という感じで話が進んでいきました。

★それを生み出すには、とにかく先生方がコミュニケーションチャンスを授業や校務以外の時間を有効に活用してつくっていくエージェンシーが動いているようです。なぜそのようなことができるのか?そんな話にもなりました。その話の中で、コミュニケーションチャンスを生み出す自由な空間を支えている一つの小さくて無限のエンパワーメントを生み出すブッククラブというのがあるという話にもなりました。

★ある一人の学者の理論を振り回すのではなく、多様なジャンルの本を読み合って、自分たちの具体的な状況にアレンジしていく世界が広がっているそうです。一冊の本は、実は10人以上の、もしかしたら100人以上のネットワークがしっかり結びついているわけです。そのような本を何冊もシェアしていく小宇宙があるわけです。

★この危機的な状況下において多様なネットワークを生み出していく、しかもその都度新しい変化が生まれるアクションを起こすプロジェクトが立ち上がるエージェンシーがブレークスルーしていく活動態。それはその危機的な状況において心理的安心安全性を生み出し、物理的環境的な危機を解消することになるだろう希望の精神的なエネルギーが生み出されていきます。

★もはや社会構成主義的なプロジェクトではなく、おそらくANT的な関係性が生まれているのでしょう。もっとも、佐野先生と金井先生は、そんなANT(アクターネットワークセオリー)という理論にはまったくこだわらないでしょうが(笑)。ぜひご視聴ください!

 

|

2023年3月11日 (土)

2023年大学入試(05)東大合格者数ランキング 固定した垂直的序列は水平的多様化になるのか?

★昨日東大の合格発表がありました。毎年のように合格者数多い順高校のランキングがでます。そして相変わらず、intereduによると、1位は、開成です。多少減りましたが、浪人が来年受かるので、元に戻ります。そんな山あり谷ありの繰り返しです。2位は、筑駒かもしれませんが、公開されていないので、今のところ灘です。そして3位が麻布と聖光学院です。聖光学院はすっかりこのポジショニングを固めました。

Dsc08050_20230311142301

★麻布は、昨年70名を割って、建学の精神か偏差値かという受験業界のジレンマが影響したのかと不安の声もありましたが、やはり元に戻りました。80名前後受かればよいという麻布の伝統は続いています。

★駒東や浅野が昨年より増やしましたが、たぶん、ここも山あり谷ありでしょう。海城はもっと伸びても良さそうなのですが、もしかして、海外大学志向が聖光学院や駒東よりも大きくなっているのでしょうか?だとしたら、それは良い傾向です。東大一軸主義ではなく、多軸主義であるマインドが大切だからです。東大がどうのこうのではなく、選択多様性がなくなることが、あまりよいことではないのです。

★閉鎖主義や偏向主義は、多様性が機能しないところに生まれる可能性が大きく。それ自体、日本にとってリスクです。

★洗足学園のように昨年20名、今年22名と伸びてきて、なおかつ海外大学進学もあるというのは、多様性があって、学びの広がりがあるし、ダイバーシティを視野に入れているわけで、重要な教育モデルですね。

★今年の開成の東大合格者減少の理由が、ポストコロナに向けて海外大学進学志向が増大したからというのであれば、それは海城学園や洗足学園同様なんかいい感じです。

★東大合格者ランキングが一見固定されているかのようですが、開成や海城、洗足がそのような多様性を持ち込めば、水平的多様化が日本の大学進学へのあり方に影響を与えるかもしれません。

★もはや東大出身だからないからどうのこうのという価値観は薄くなりつつありますが、問題は、世界とディスカッションする人材がまだまだ限られているということなのです。

★固定的な偏向は、分断を生み、それぞれの領域間の比較優位に目が向いてしまい、全体の危機の問題に目がいかないのが常です。フィクションの安心安全とやはりフィクションの無気力の雰囲気が蔓延するのです。そんなものは捨ててしまえばよいのですが、固執と諦念。そこからルサンチマンが発酵し人知れず闇を生みだしてしまいます。

★たかが大学入試かもしれませんが、入試制度の柔軟化がないとそうなります。柔軟化とは、もう一般選抜を思い切ってやめたほうが良いということです。この選抜方法が偏向主義を生み出している大きな一因だからです。柔軟化を阻止しようという人は毎度でてきますが、そのような人は、この偏向主義の利得を享受している人でしょう。

|

2023年3月10日 (金)

【速報】湘南白百合 東大理Ⅲ 現役合格

★湘南白百合学園の教頭・広報部長の水尾純子先生から、次のようなお知らせがありました。「今年は東大理Ⅲ、京大、横浜市大医学部、医科歯科、東北大医学部、慶應医学部、千葉大薬、お茶大などなど、生徒たちは最後まで皆、頑張りました。のびのびと、羽ばたいていった子たちでした。」と。京大以外は現役合格だそうです。医学部に強い同校ですが、その動機がカトリックミッションを引き受けてですから、すてきです。

1242_2_1_20221221164743

(「冬期探究講座 医学部講座」 現役の医学部生による講座。バトンはこうしてつながっています。)

★ほかの私立大学の医学部もたくさん合格しているということです。詳しくは同校サイトで最終的に発表されるでしょう。まずは、速報ということで!シェアいたしました!

|

2024年中学入試の行方(12)大妻の「探究」で、システム思考

NEWS PICKS Educations 2023/2/27で<未来も人間関係も、自分の力で変えられるとわかった。「システム思考」を学んで変化した高校1年生たちの日常>という記事で、大妻中学高等学校(以降「大妻」)の生徒のインタビューが掲載されていました。

51acnd07cyl_sx324_bo1204203200__20230310095701

★どうやら、大妻では、2022年夏から秋にかけて、「総合的な探究の時間」で、NEWS PICKSと連携して「ニュース×システム思考」という講座を行ったようです。高校1年生全員が、6時間かけて学んだようです。

同校サイトによると、「ループ図」「氷山モデル」「推論のはしご」「クリエイティブ・テンション」などを活用したということですから、たしかにものの見方ががらりと変わったことでしょう。メンタルモデルの変容を生徒自身が感じているようですから、システム思考の醍醐味を味わったことでしょう。

★何より、対話の4つのレベルである「①儀礼的な対話→②討論→③内省的な対話→④生成的な対話」を通過したとありますから、対話によってシステム思考をさらに広げ深めていったのでしょう。

★「主体的・対話的で深い学び」と学習指導要領で称されているアクティブラーニングやPBLでは、ダイアローグやディスカッションが行われるのが常ですが、その質がメタローグまで深まるというか上昇するというかそういう感覚は現場ではなかなか難しいのです。

★現状では、深まる生徒もいるし、浅いままで終わる生徒もいるしというのが一般的でしょう。

★でも、外から見ていると形式的には対話やディスカッションが行われているわけです。

★そのクオリティをモニタリングすることはなかなか難しいですね。

★しかし、大妻の実践のように対話の段階、つまりルーブリックができていれば、少なくともセルフリフレクションはできます。

★2013年ごろと違って、あれから10年経った今、アクティブラーニングやPBLをやらない学校はないでしょう。これからは、そこで行われている対話やディスカッションの質の時代でしょう。海外の生徒とディスカッションしたときに、そのクオリティははっきりします。

★英語力もいよいよシステム思考的な多角的で関数的(システム思考は最終的にはシミュレーション方程式を創ることになります)な思考を英語で対話したりディスカッションできるかまで要求されるようになるでしょう。それは文科省が求めているというより、私立中高一貫校が世界に求められているということだと思います。そのモデルケースとして大妻の取り組みは参考になりますね。

|

2023年3月 9日 (木)

通信制高校の卒業式の局面で贈る言葉 全日との差異に根源的社会の問題があらわれる

★勤務校の聖パウロ学園は通信制と全日制の2つの学校があります。体育館やサロン、パウロの森など共有使用部分はありますが、校舎は別棟です。2つの学校が同じキャンパス内にありますし、法人としては一つですから、校長は通信制も全日も同じです。毎朝、通信制と全日の両方の学校日誌を見ながら生徒の状況の理解に務めます。朝会は別々にやっていますから、全日は出席し、通信制は教頭と主幹、それぞれの教員が日々具体的状況を伝えてくれます。耳を傾け生徒と教師やインターンの学生の様子を理解します。通信制は、午前中は農業や園芸など外で活動していますから、実際にそっと様子を見に出かけたりします。校長は、基本生徒が本当に困ったときにようやく出番が回ってきます。それまでは、通信制であれ、全日制であれ先生方が生徒理解に務め、生徒自身が納得のいく学園生活を送れるようにサポートします。

5167k374b2l_sx352_bo1204203200_

★全日の卒業式だと、3年間で自分がこんなに変わったと生徒自身が認識していて、卒業後ももっと進化したいチャレンジしたいという人生進化論と躓いたときあるいは壁にぶつかった時どうするかどんな判断をするかおっせかいにも語るわけです。60%以上は、実際に直接ダイレクトにかかわっているので語る言葉も自然にでてきます。

★一方、通信制は、全日制の生徒以上に心傷ついて入学してきますから、それをまず温かく見守る先生方の配慮やサポートが決定的です。校長のお気楽な声掛けなんてのは、逆効果だったりしますから、先生方はチェックしてくれます。

★そのような通信制の先生方の配慮やサポートによって、卒業する時までにその傷はかなり癒され、生徒によっては全日の生徒と変わらない状況に復帰し、大学も難しいところに進学したりします。しかし、通信制は直線的な時間ゴールをデザインしません。それはいまここで「ある」ことがかけがえのないことだということに気づくことが大切だからです。

★一般的な発達心理学が当てはまらない生徒もいるのです。その発達理論に沿った基準に当てはめようとすることが、抑圧的になるということもあるのだということを2年間勤務して痛いほど思い知らされました。

★ニーチェのらくだのように忍耐し、やがてその忍耐せしめているシステムを乗り越えようとライオンのように吠え、闘うようになり、しかし、らくだでもなくらいおんでもないかけがえのない存在として最終的に子供になるという3段階の変化は、通信制の生徒には耐えられないわけです。一気に昇華してかけがえのない存在である生き様になるということがあるのに、らくだになれとかライオンになれとかは、当たり前の社会ではもしかしたらないのではないかと。

★ダイバーシティとかインクルーシブとかは、実は全日と通信制という分け方を再構築しなくてはならない時代がやってきたことを示唆しているのではないかとふと思ったわけです。

★1年目で、うすうすそれは感じたので、2年目からは通信制と全日制の風通しをよくしようと動き始めましたが、まだまだ足りません。2023年度のパウロの新体制として、ここをさらに推し進める構想を通信制の教頭と全日制の教頭と対話を続けてきました。

★ホンマノオト21を4日間くらい珍しく書いていなかったのは、花粉症があまりにひどく全く頭が回らなかったからでもありますが、通信制と全日制の背景にある日本の教育の根源的問題点をどう把握し、解決するか考えていたからでもあります。

★まずは隗より始めよで、パウロからやってみるしかないと学内で合意形成も出来、あとは理事会にかけるだけとなったので、少し心が穏やかになったわけです。この2日間は、午後は学校を休み、ずっと本を読んでいました。めずらしく斜め読みしなかった本があります。すごく共感するけれど、認識論的にも実行論的にも同意はできませんでした。それほど、現実の生徒は1人ひとり生き様が本当に違うのです。

★定型的発達と非定型的発達。でも、定型的発達の生徒も、その中に埋め込められているだけで、本当はみな非定型的発達なのかもしれません。それを見えなくするのが、偏差値基準とか垂直的序列主義ですね。でも当面社会にそれは在り続けています。パウロの生徒が社会に出たとき、ふたたびらくだやライオンにならなければならないのでしょうか。いやそうならない方法があるよということです。

★それはコミュニティをつくることだよと。それができたらはじめからそうしているよと。そうなんですよね。実はコミュニティをつくつトレーニングをしていないのが、日本の教育です。友人とか恋人とか集団行動とか利益獲得組織とかは前からあるのですが、そういうつながりではありません。新しいコミュニティシップの作り方。実は通信制高校の教師がやっていることはそういうことだったのです。

★通信制高校、パウロの場合は、エンカレッジコースで、エンカレと呼んでいますが、エンカレの教員は、心理学と哲学などをベースに現場のいまここに集中して生徒のサポートをしています。ものすごい現場を大切にしているのだけれど、その背景に心理学や哲学などの理論がちゃんとあるのです。ふだん自分たちも研鑽するコミュニティにも所属しています。そこから学生がインターンシップにやってきもします。

★進学実績がゴールでないのに、成立する学校です。実践と理論が統合されて成り立っています。日本の学校では珍しく、フィンランドやカナダの学校のような感じです。実はここに日本の教育の根源的な問題を解決する学校モデルがあるのではないかと思っています。

|

2023年3月 5日 (日)

高校現場の2月・3月 卒業式、入学式、外部研修旅行などを通じて、目標到達度と改善と次年度・中期アクションプランを集約するシーズン

★勤務校の今年の2月・3月は、制約付きというものの新型コロナ感染対策を状況に応じて部分的に緩和しました。昨年秋までは行事がなかなかできなかったため、2月3月に延期した行事やチャレンジングな新しい行事などを行ったため、卒業旅行、卒業式、入学式準備と重なり、クリエイティブテンションが高まったシーズンとなりました。これは勤務校に限らずどこの高校もそうだったでしょう。

Img_3959

★勤務校の校長としてこの2年間教員と共に立ち向かったのは、目に見えないパウロの教育のリソースを全開することでした。ですから、外から眺めているとなかなか気づかなかったと思いますが、説明会に参加した受験生・保護者は、その様子を肌で感じて、その場で、決めましたと語ってくれるケース多かったのです。3月2日に都立高校の合否が判明し、併願の合格者の入学人数がはっきりし、目標人数の新入生を迎えることが決まりました。

★そして、その日は、勤務校の全日制の卒業式でした。新入生の人数は予定通りの目標をクリアし、入学式の準備もしながらですが、その日ばかりは卒業生と共に3年間の学校生活のプロセスをそれぞれ思い起こし、未来へのエールを贈りました。

★それにしても、新入生を迎えるにも、卒業生を送るにも、共通していることは教育アクションの質であったことは言うまでもありません。新入生は、このような教育なら、教師がいるなら、先輩がいるなら、輝いて学園生活を送れると期待を持ってくれるし、卒業生は、3年前と今の自分を比べて、大きく変わった成長したという実感を抱きながら、巣立っていきます。

★先生方は、あらゆる機会で、生徒が主体的に活躍できる機会をデサインしています。主体的になるには自由が必要ですが、その自由が独りよがりのものではなく、利他主義も満たすものであることは、勤務校のカトリック精神でもあります。

★ですから、自由なんだけれど、規制ではなく、その自由をより強固で真理に近づくものにするためにハードル設定のデザインを先生方としてきました。企画を生徒が協働して行うのは当然ですが、それがカトリック精神に従うものであることは、生徒はみな知っています。しかし、意外とリーガルチェックのリサーチが足りないので、部分的にはねのけられることもしばしばありました。その最終判断は私がするのですが。

★18歳成人ですから、リーガルマインドはトレーニングする必要がありますが、机上の勉強ではなく、チームでアクションを起こす時に、必ず起こる葛藤をいかに解決していくかは、単純にコミュニケーションをうまくとったり、ホウレンソウをしっかりしたりしただけでは、まだまだ不足なのです。

★起業家的な探究活動も、「リーガルチェック」と「資金調達の方法と経営の仕方」については、ちゃんとやる必要があります。先生方や生徒会のメンバーが相談に来るのは、その2点がほとんどです。組織マネジメントや人材育成の話も当然議論になります。

★そして、カトリック学校ですから、リーガルチェックは、実定法上のチェック以外に自然法論的なチェックもするのです。自然法論まで考えるようになると、すごいけれど、そう簡単ではありません。勤務校の生徒が国立大学の法学部などを受験しようとすると逆にここは問われるので、アドバンテージは高いのですが、現状の勤務校から東大や京大はまだ受験しないでしょうから、進路選択には直接役立つことはないでしょう。

★資金調達や経営に関しては、国公立私立大学どこの経済学部経営学科を受験しようと、市場の原理における配分問題にぶつかります。規制か規制緩和か、その理屈を自分なりに形成するところは先生方はサポートしてきました。

★建築家になりたいという場合は、コルビジェやミース・ファン・デル・ローエやフランク・ロイド・ライトや日本の茶室や庭園などの近代建築における影響などについて対話します。もちろん、スマート・シティなどの都市計画の自分なりのアイデアをどこまで持っているかも対話になります。

★医療関係の場合は、日本にはないけれど欧米にはあるサマリア法について比較法学的な対話をしたり。

★探究などで視野を広め考えを深めるということは当然するのですが、9月以降は、高3生は、自分の専門領域で関心のあることについて深めていくわけです。私たちができるのは、ひたすら対話です。何か解決するというより、理想と希望を膨らましながらも、プラグマティックチェックも対話するわけです。

★哲学やカトリック系の大学を志望する生徒とは、宗教社会学と文化人類学、ケアの側面から心理学など多角的なアプローチをしますが、そのアプローチの前に、クロスクエスチョンで、思考のエンジンをふかします。未信者の生徒がほぼすべてですから、効果的な利他主義やリバタリアンとコミュニタリアンの比較などをしたり、カイヨワの戦争論をヒントに平和について対話をします。夏期5日間の集中講座ですが、クリエイティブテンションは持続可能なままです。

★問題解決というより、根源的な問題に気づくことを重視しています。学問的な専門領域にはいるというより、専門領域にはいって探究し続けられる問いのデザインができる素養は、根源的な問題に自分なりに気づけるかです。システム思考を通してメンタルモデルの転換を企てるわけです。

★もちろん、現段階での根源的問題の気づきは、まだまだ根源的ではないのですが、それでよいのだと思います。

★3月2日の卒業式、最後まで一人残って訪れてくれた生徒がいました。スクールバスはもうないよ、どうするのと尋ねると、パウロ坂を歩いてローカルバスで帰るから大丈夫ですと。僕との出会いは、正解のない問いをどう捉え返し、自分なりの仮説や主張、根拠を見出すか、それとパウロのビジョンを生徒側からどう捉えるのかという対話からでした。

★そして、毎夏、講習で伊東先生と私とでコラボしたWSに参加もしてくれました。最初のころは、違う進路でした。そのうちいろいろ迷ったらしいのです。その都度、ちょっと話したいとやってきていました。最終的には、いろいろ悩んでいる自分は、哲学的考察をしているのではないかと気づいて哲学の道に進むとディシジョンしたようです。

★私たちができるのは、専門領域の話ではありません。専門領域の最先端の成果を知ること等できないからです。しかし、そのような専門領域やその領域の最先端の研究に挑む素養をトレーニングすることは可能です。これはコンピテンシーやキーコンピテンシーでは、とらえきれない意識層です。

★欧米の私立学校の教育は、ここまで迫ります。ここまで洞察して対話するので、そのディスカッションもダイナミックです。日本の教育で、そこまで生徒自身が世界を深堀する学校は、少ないでしょう。

★勤務校もそこまでたどりつくように共に生徒と歩みますが、生徒が独り立ちしてその深層に光をあてながらディスカッションできるかというとなかなか難しいですね。毎週2時間くらい授業ができれば可能ですが。ただ、日本の大学入試がそこまでは求めていないので、よしとしようという言い訳をしていますが。

★しかし、その挑戦は2年前から始まっているのが勤務校です。理論的なことはあまり必要ないのです。教育理論は後付的なものが多いので、それより生徒と共に協力して新たな体験に挑戦することのほうが肝要です。そこで、根源的な問題や世界の痛みを体感したほうがよいのです。

★理論は大学で大いに学べばよいのです。中高段階では、デューイではないですが、1オンスの体験は、10トンの理論に勝るわけです。

★大学では、無限トンの理論が待っているので、そうなってくると体験だけでは新しい地平は開かれないのです。高等学校でできるのは、「対話」体験によって、根源的な淵に向かって洞窟を奥へ奥へ探索していくスリリングな知の冒険なのです。

★生徒自身が根源的な問題を発見したり、世界の痛みを引き受けたりする瞬間に立ち会うのが「対話」です。すぐに解決策など実務的な話をするのは、小論文の課題を解決するときには必要ですが、クリエイティブテンションを高め持続可能にするには、根源的な問題を発見したり世界の痛みを引き受ける覚悟をシェアできるという意味での心理的安全性が形成できるかにかかっています。

★オープンマインドでフェアでフリーな状況を創ることが心理的安全性を生み出すことに必ずしもならないのは、根源性への眼差しや引き受ける覚悟が生まれてこない限りは、不安は解消できないものだからです。

★1月末から、1学年のスキー教室に付き添いました。2月には2学年の修学旅行に付き添いました。そこで学年の教員チームが、生徒と共に根源的な問題発見や引き受ける覚悟を体現していく構えを見ることができました。

★そして、3学年に対し、学年を超えて生徒や教員が共にサプライズ企画を立て、愛されるより愛する行為を体現している姿に立ち会えました。パウロの森には鹿もいます。イノシシもキツネもハクビシンもタヌキも野ウサギや野ネズミもいます。生態系の循環を持続可能にする役割を引き受けながら生息しています。しかし、パウロの森に入り、キャンプでもしなければ、彼らに会うことはできません。

★それと同じようにパウロの森に囲まれたパウロの教育は、静かな情熱があふれるウェルビーイングの泉がコンコンと湧き出ています。2024年以降は、この泉をシェアできるようにプランニングしていきたいのですが、コモンズの悲劇にはしたくないので、ゆっくりと歩んでいくことになると思います。

|

2024年中学入試の行方(12)大妻中野 はやくも帰国生入試日を公開

★大妻中野は、言うまでなく、2023年度中学入試も絶好調でした。魅力的なグローバル教育を実践し絵ちますから、帰国生もたくさん集まってきているのです。帰国生入試日は、一般入試よりも2カ月以上前ですから、期待に応えて、はやめにスケジュールを公開する配慮をしたのでしょう。

Photo_20230305095801

同校サイトによると、令和6(2024)年度 海外帰国生入試の日程は下記のとおりです。

【国内(本校)会場】

・第1回海外帰国生入試:2023年11月10日(金)

・第2回海外帰国生入試:2023年12月21日(木)

【海外(シンガポール)会場】

・海外帰国生入試(シンガポール会場):10月21日(土)

★「ニューヨーク会場入試」「海外在留者対象オンライン入試」は現在調整中だそうです。

★世界各地に居住している帰国生にとっては、エリアも期日もバラエティに富んでいて、受験機会を得ることができるのですから、このような情報は大いに役立つでしょう。

★同校の人気の秘密は、間口が広く、奥行きが深いので、受験しやすく、多様性を大事にしながら豊かな探究の道を歩んでいけることに尽きる思いますが、具体的な大妻中野物語は、3月31日(金)GLICC Weekly EDU(GWE)に同校教頭の諸橋先生が出演され、お話しくださいます。乞うご期待!です。

|

GLICC Weekly EDU 第118回「湘南白百合学園の魅力〜2023年度入試分析とその教育の中身」 エンパワーメントの拡張

★先週の金曜日、ちょうど3月3日に、湘南白百合学園の教頭・広報部部長の水尾純子先生のお話を聴くことができました。2023年度の首都圏中学入試において、出願数が爆増したということで注目を浴びている神奈川エリアの私立女子校の湘南白百合学園です。巧みな広報戦略とアクティブな知のコミュニティを創る愛あるプロデューサーとしての水尾先生の力が発揮されました。湘南白百合が人気がでた理由の一つには、水尾先生と生徒たちのコラボレーションの効果がありました。

Photo_20230305081601

ご視聴いただければ詳しいことはわかりますが、生徒自身が湘南白百合を広報したいと名のり出てくるその人数が破格です。全校生徒の25%のおよそ250名もいるそうです。もちろん、この人数の多さに圧倒されるわけですが、この人数の多さは、あるダイナミズムを生み出します。

★生徒たちは、湘南白百合の教育の中身や生徒の様子を自らの経験を通して温かく柔らかく、それでいてプライドを持って語ります。これは、生徒が同校でエンパワーメントされているということです。湘南白百合の教育の質の伝道は、カトリックの真理の伝導だし、何よりそのような自分を確認し、内面から愛ある行為を支える力がコンコンと湧き出てきているのです。

★お話をお聴きしているだけでも、その様子が目に浮かび、聴いている私も何か元気をもらえるのです。受験生・保護者であればなおさらです。水尾先生の広報活動は、湘南白百合のブランドをマーケティングだけでつくるではなく、在校生のみならず受験生もエンパワーメントされ、ウェルビーイングに満たされるブランドアクティビズムの手法で生み出されます。

★ウェルビーイングの世界に迎え入れる準備がすでに学校説明会などの広報活動においてなされているのです。人気が出るのは当然です。

Oecd_20230305082501

★しかも、その広報活動では、「OECDのラーニングコンパス2030」というキー・コンポテンシーやチェンジメーカーのエンジンであるエージェンシーなどを育てるシステムを各教員が実装しているというのですから、さすがです。

★PISAという国際学力調査を行ってきたOECDですから、思考コードと同じように、知識・情報の取り出し、知識情報の背景にあるジレンマ現象の発見とそれを解決しようというコンパッションを大切にしたロジカルシンキング、その解決のためのクリティカル・クリエイティブシンキングが湘南白百合の教育のベースにあるわけです。

★そして、「2030」という数字が意味しているのは、SDGsの目標の1つである「教育の質」を豊かにしウェルビーイングを生み続けていこうという意志を表明しているわけです。同校もそのビジョンに同意しているわけですね。

Photo_20230305083601

★さらに、この最終的な創造的なアクションを生み出すには、実は深い洞察力を必要とする「問い」を立てなければ、探究活動は浅いものになってしまいます。そこもちゃんと緻密に計算されていて、水尾先生は、生徒たちが自ら「深イイ問い」を立てるコミュニティもプロデュースしているのです。

★学芸大学の先生と日本OECD共同研究が、湘南白百合、逗子開成、サレジオ学院、山手学院の教師、生徒とコラボして「問い」づくりを行う探究活動が始動しているのです。

★なぜコラボか?「深イイ問い」には、多様性がゆえに根源的な問題が投影されるケースが多いからです。

★世界の痛みを強烈に引き受けたり、世界に新地平が生まれる驚愕に直面したりしたときに愛が生まれます。だからこそ「深イイ問い」に気づくのだと思います。

★その「深イイ問い」を引き受けると、生徒は自分のそれぞれの道でミッションを感じとることになります。自分は何ができるのか思い巡らすことになります。生徒の成長曲線が指数関数的になっていくのです。神奈川県の入試市場のプレイヤーである受験生・保護者の洞察力と見識に頭が下がります。そのような本物教育にニーズを感じる方が多いということを、2023年神奈川エリアの中学入試は示唆しているのですから。

★男子校は聖光学院、共学校は横浜創英が、湘南白百合と同じく、男子校、共学校の中で受験者増加数ナンバー1だったのです。

★この3校が中学入試において憧れの学校になるということは、ウェルビーイング教育実践校としてのロールモデルエフェクトは絶大です。私の独断と偏見の話より、まずは水尾先生のトークをぜひご視聴ください!

|

2024年中学入試の行方(11)受験市場と入試市場の葛藤を乗り越え第三の学びの市場へシフト

★一般に受験市場と入試市場は同じものだと思われています。というより、その差異は意識しないでどちらも同じような意味で使われています。ところが、それぞれの市場ではプロデュースするプレイヤーが違います。受験市場は塾という企業が主導して創出した市場です。入試市場は学校が主導で創った市場です。こういうと、すぐにしたり顔で相互に影響しているのではないかという人もでてきます。それはそうでしょう。問題は、その相互関係とその構造なのです。相互に影響し合うというのは、学校が受験市場の情報を鵜呑みにするケース、学校が受験市場の情報を適切に活用するケース、学校が受験市場に関心を持たないケース。いろいろな相互関係のケースがあるでしょう。

334016718_644666207374789_32369253867704

(八雲学園中3の海外研修。サンタバーバラのレジデンスで。八雲学園は生徒のウェルビーイングを気遣う代表格です。)

★しかしながら、どのケースも、偏差値という受験市場が作った基準を意識している限りは、偏差値を巡る受験言語空間の中にすっぽり入ってしまう構造があるわけです。ところが、ここ数年、偏差値基準以外の入試言語空間を学校側も創ろうとしてきました。たとえば新タイプ入試などは偏差値基準は実際には使えないのです。

★首都圏模試センターは偏差値以外に思考コードを組み合わせた新基準を、実は学校の先生方と協働して市場創出をしています。こうなってくると、受験市場か入試市場かという二者択一ではなく、新たな学びの言語空間ができるわけです。受験市場と入試市場をあえて分けて考えうことによって、受験市場の中あるいは、入試市場の中に新タイプ入試が位置づけられるのではなく、第3の道という新次元での出来事なのだという認識が成り立つ可能性があります。

★なぜ第3の道が必要なのか。

★実は学校側が困るような行き過ぎた受験言語空間も今まではありましたし、結構そのような暴言はSNS上でまだまだ飛んでいます。表現の自由だからと言ってなかなか削除されません。弁護士に頼めば別ですが。たとえば、新タイプ入試批判は、偏差値が高くない受験生を傷つけるような発言になてちるものもあります。そんなことに気づかずに権威主義的な垂直的序列主義の発言が多かったですよね。

★今は、SDGsなどの学びが広がったこともあって、表立ってはでてきません。行き過ぎるとリーガルな問題になるからです。

★一方、学校側も偏差値主義のところがあって、それが行き過ぎると同じようなことが起こり得ます。昨日3月4日の読売新聞によると、「神戸大は3日、学生に不適切な発言を繰り返した男性准教授(50歳代)を停職4か月の懲戒処分としたと発表した。」とありました。不適切な発言とは具体的には、たとえば「お前みたいな成績悪いやつが研究を楽しめるわけがない」(同新聞)のようなものです。

★このような暴言は、大学だけの話ではなく、中高の学校だって、塾だってあり得ます。つまり、垂直的偏差値主義とか能力主義の言語空間は、20世紀型教育がつくりあげてきたものです。これは乗り越えたいよねと語ると、上から目線で柔らかいかどうかは違いはありますが暴言が、塾だけではなく学校側からもでてきたものです。最近はさすがに表面的には目立たなくなっています。

★しかし、世の中が学力不振や不登校という状況や発達障害などであたかも自己責任であるかのように扱われ困っている生徒のためには「合理的配慮」をするようにという気遣いがうまれてきました。そして、このような生徒が困ってしまう根源的問題は、偏差値主義に代表される垂直的序列主義の重圧であることは、およそ想像がつくと思います。

★私はこの「合理的配慮」を保護者の方がは知っておいた方がよいと思います。大学や学校や塾だけではなく家庭もこの「合理的配慮」というサポートをすべての子どもたちや学生にしなければならにというのは、国民の責務として法律になっています。

★垂直的序列主義の組織は、「合理的配慮」を巡りリーガルな問題に発展するリスクがあります。

★そもそも垂直的序列主義的な言語空間は、「合理的配慮」がない言語空間です。言語空間はそこに所属している子供にとっては世界の限界です。その世界の中から抜け出ることができなくて、抑圧され続けたら、体調不良、メンタルのネガティブ化、人間関係不全症候群になるのは当然です。

★たしかに言語の限界は世界の限界なのですが、自分の所属している言語空間だけが唯一の空間ではありません。合理的配慮のある言語空間。水平的多様性を基調にしている言語空間。これが第3の道です。この道を開発している大学、中高、塾、予備校を探すのも自分の子どもを守るすべです。

★もちろん、探せないという場合、そのような言語空間にあっても、つまり垂直的序列主義の組織の中にあっても、水平的多様性を基調とする友人や仲間とスクラムを組むスキルをトレーニングしておいた方がよいでしょう。

★ただ、2024年以降の受験市場は、第3の道を開拓する学校と塾がたくさんでてきます。「ウェルビーイング(WB)」という言葉は、垂直的序列主義の言語空間に対し武装解除させるキーワードだと思います。このWBという言葉を追究している学校や塾が第3の道を開拓している学びの空間があるところです。

|

2023年3月 1日 (水)

2023ドネラ・プロジェクト(01)今年の入試の特徴から見える2030年以降の通奏低音

★2022年は、主執筆者ドネラ・メドウズの「成長の限界」が出版されて50周年。同書は100年後には地球はどうにかなってしまうと警鐘をならしました。システムダイナミクスの手法で、経済の崩壊と資源の枯渇を多次元・多面的に予測しました。放置していたら2030年にもピークに達するよと。この警鐘が、国連にSDGsにいたるまでの道のりを歩ませたのは言うまでもありません。このことは多くのシンクタンクや省庁で語りつないでいることです。

51cctb7ntel_sx298_bo1204203200_

★ですから、中学入試や大学入試でも、SDGsのみならず、地球規模と地域規模の交差する自然と社会と精神の分断が起きているポイントを問うてくる問題が多かったような気がします。

★人新生に関する問題も、当然環境問題や気候変動がかかわってくるわけですから、ドネラの継承を引き継ぐものです。

★意識しようとしまいと、SDGsや人間の安全保障、WHOの関心、人新生に関する問題を取り扱えば、それはドネラのビジョンを映し出します。ドネラは、だからといって、資本主義をやめようとか、産業活動をやめようなどとはいっていないのです。

★ですから、経産省や農林水産省や環境省や内閣府なども、そして今年の入試もだいたい2030年から2050年の未来の問題、もちろん脅威やリスクを解消するポジティブな問題を扱っているのでしょう。

★成長には限界があるけれど、愛には限界がないとドネラは語るわけですが、そのコンセプトレンズをのぞくと、新たな解決策が見えてくるというわけです。「成長の限界」の中で、ドネラは、私たちにとって必要なことは、次の5つだと語っています。

❶ビジョンを描くこと

❷ネットワークを作ること

➌真実を語ること

❹学ぶこと

➎愛すること

★めちゃくちゃシンプルですが、どれも実践するのは難しいことですね。でも、仲間と行動すればそうでもありません。

★そして、この5つのことをきっちり実践してる学校こそウェルビーイング教育実践校なのです。しかもどんどん増えています。

★無意識のドネラ・プロジェクト。世の中、無意識というと、トラウマとかネガティブなメンタル・モデルに偏りがちですが、ポジティブなドネラ・プロジェクトという普遍的遺伝子が動き始めていると考えてみてもよいのではないか。そう思える2023年の中学入試や大学入試でした。

|

« 2023年2月 | トップページ | 2023年4月 »