2023年大学入試(03)東大の世界史の第1問 通時的で共時的な鳥の眼と虫の目
★今年の世界史の第1問は、いつもの通り、指定キーワードを活用して、600字くらいで論述する問題。この「論述」というのは受験業界では、事実のつながりを論理的にわかりやすく説明するという意味かもしれません。必ずしも、自分の主張と根拠とそのためのデータのつながりを三角ロジックよろしく論じるわけではなさそうです。もしそうなら、論文という用語を受験業界では使うのかもしれません。思考コードでいえば、B軸思考が「論述」にあたり、C軸思考が「論文」にあたるのかもしれません。
★それはともかく、18世紀末から20世紀初めにかけて、世界の君主制、共和制、植民地、憲法などの関係の通時的激変を600字以内でまとめるのは、なかなか大変でしょうし、欧米だけではなく、南アメリカや東アジアまで共時的なダイナミズムを説明するには多少細かい知識も必要になってくるでしょう。もちろん、教科書レベルではありますが。
★ただ、それらの関係を世界地図に投影している1815年バージョンの図と1914年バージョンの図で比較させているところから、ただ知識を覚えていればよいというわけではないというメッセージは見え隠れします。
★パンデミックやウクライナというキーワードが映し出す社会現象や社会問題のルーツが、この時期にあり、未だに解決していないことを実感せざるを得ない問題です。地政学的と言えば、世界史と地理と政治・経済が交差するというちょっと興味深い問題でもあります。
★この問題をさらに2022年の世界と比べてみたり、2050年の世界のビジョンを考えるように発展させたら、一挙にC軸思考になります。東大の問題は、やはり手堅いですね。B軸の論理的思考をしっかりやってこいというメッセージです。ここが慶應義塾と少し違いますね。慶応はC軸思考を問うてきますから。
★もっとも、知識問題をしっかりやっていないと、C軸だけは、合格できないようになっているのが、東大と慶應の一般選抜の共通点ですね。
★こういう問題は、教科書持ち込みありにし、さらにクリティカルでクリエイティブな問いを投げかけれるとどうなるでしょう。
★記憶と論理と創造と。どこを評価するように2050年はなるのでしょう。
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