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2023年2月 9日 (木)

2023年首都圏中学入試動向(32)首都圏私立中高一貫校の中学入試 出願総数 女子校、男子校、共学校すべてで昨年を超える が意味するコト

★2023年2月8日現在(日能研倍率速報)首都圏私立中高一貫校の出願総数は、すべてのエリアの女子校、男子校、共学校で、昨年の出願数を超えました。もちろん、個別には超えないところもありましたが、それは隔年現象ということもあり、来年度はまた増える可能性大です。

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★エリア別には、東京は男子校が勢いがよく、神奈川は女子校が勢いがよく、埼玉は共学校が勢いがよいといえそうです。千葉・茨城は、特に茨城が、公立中高一貫校の大量立ち上げの時期が続き、その影響を受けた形ですが、最終的には全体としては死守したということでしょうか。

★東京の共学校は2013年以降、21世紀型教育などプログレッシブな教育を掲げ、偏差値による学校選び以外の基準を創出し、新タイプ入試市場を創出。大学入試における総合型選抜の先駆けともなり、アドバルーンをあげるだけではなく、実体経済も作り出したという評価は定着しつつあります。2020年に、2013年から開成が海外大学進学準備で成功しているところが注目を浴びる中、この21世紀型教育などのプログレッシブな教育を実施した学校からも、海外大学進学実績がドーンとでて、進路指導の転換ビジョンもリアルに示しました。

★しかしながら、そのような学校は東大や京大はまだまだです。10年経ち革新的教育草創期は成熟期に入りました。ここで停滞するか内生的成長を果たすかは、国内外の大学すべてに道を開くことでしょう。東京の共学校の次なる進化に期待しましょう。何せ、このスーパーロールモデルはすでに洗足学園が道を開いています。

★一方東京の男子校、神奈川の女子校、埼玉の共学校は、まずは手堅く東大を頂点とする国内大学の垂直的序列で優位に立っていました。しかし、さすがにパンデミック以降、この垂直的序列を保守するだけでは、グローバルな舞台で活躍している保護者は満足しなくなってきたというニーズ臨界点を見て取ったのでしょう。開成と海城はいちはやく、伝統に革新的な発想やプログラムを結合しました。その新結合をシュンペーターはイノベーションというのですが。そういう意味では、これらの学校は部分的にですが、イノベーションを起こしました。垂直的序列がある限り、そこを無視できないわけですから、そこを手堅く保守し、イノベーションも起こす。中学入試市場で、これ以上の魅力はないでしょう。

★東京の男子校でいえば、高輪がその象徴だったと思います。また同エリアの共学校ではやくも革新的教育で内生的飛躍を成し遂げつつあり、出願爆増しているのが工学院大学附属中学です。定員が105人なので、実数では目立たないのですが、ここ3年でその勢いは止まりません。大学進学実績も国内外で成果を上げ始めています。なんといっても女子の理系志望が増えているというのは、時代の精神とマッチングしているのでしょう。

★また、成城学園は、大正自由教育の拠点で、その意味では100年を超える内生的成長の持続可能性というイノベーションを続けている学校ですが、デューイに代表されるプログレッシブな教育を現代化し続け、その評判が持続可能的に続いています。そしてこの民主主義の危機の時代に、同窓生と大学と小中高が連携してグローバルな視野で探究プロジェクトを展開するという、独自の学びの環境デザインにチャレンジしています。成城学園ファンの心をつかむ無形資産をまた創りました。

★神奈川の女子校湘南白百合は、いま世界が必要としている痛みの共有とその解決の知恵と技術と寛容性を備える教育環境デザインを次々と創出し、東大のみならずハーバードや医学部に、ミッションを引き受けて突き進む女性を育成することが大評判になりました。毎年出願数は爆増。多角的な才能者を受け入れるアドミッションのイノベーションも起こし、成功しています。低迷するカトリック学校に勇気をあたえるだけではなく、神奈川の女子校の垂直的序列を水平的多様化にシフトし、神奈川の女子校すべてにエールを与えることになるのしょう。そして、それは聖セシリアも同様です。

★埼玉の栄東は、明快に東大とアクティブラーニングという伝統的進学志向と革新的教育をいちはやく統合し、埼玉の共学校のスーパーロールモデルになった功績は市場が大いに評価しています。埼玉エリアには帰国生が東京や千葉、神奈川に比べ少ないのですが、少ないながらも20人集めることができたら、さらなる飛躍へ向かうでしょう。この共学タイプは、千葉の渋谷教育学園幕張です。埼玉では栄東となるでしょう。東京、神奈川では、この共学タイプは実はまだないのです。東京の共学校は、このタイプに続くのか、さらに新たなタイプになるのか、まだまだ次なるチャンスがありますね。

★首都圏の私立中学に通う生徒は、全国の中学生人口の3%強です。この3%が、日本の教育の未来を創る先駆けにならざるを得ない日本の教育システムの問題があります。公立vs私立という明治以来続いている官学vs私学という学歴トラウマを制度的改革では間に合わないので、入試市場で学びの創造的破壊をしていくことによってシステム転換を図るダイナミズムに期待をかけましょう。

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