2023年大学入試(04)東大の地理の第1問 人新生の新しい問いの立て方 思想の判断中止をさらりと
★さすが東大と言うべきか、やはり東大と言うべきか、それはともかく、人新生を地球システム科学とテクノロジーを掛け合わせた問いの立て方で出題。パンデミック以降、人新生というと、どうも思想が覆いかぶさり、中学入試では出題しにくかったわけですが、これで、中学入試でも思い切って出題できそうですね。今年鴎友学園女子が、ここまではいかなかったですが、思想の枠をとっぱらって論述する問題を出していました。
★アントロポセン(人新生)という言葉は、大気化学者パウル・クルッツエンの造語で、今世紀になって現れました。気候変動と関連するので、問いが立てやすいのですが、わざわざアントロポセンを噛み合わさなくても、気候変動の問題そのものに拡張子がいっぱいあるので、気候変動だけですてきな問いがいっぱいできてしまうのです。
★もし嚙み合わせようとすると、すぐに思想がからんできて、「人新生と資本論」のような思想が強く影響してしまいます。近代資本主義の影響が気候変動や生態系に影響を与える時代として人新生を捉えるというのが近年の地質学の考え方のようですが、だからといって資本主義という社会現象をすぐに批判するものでもないはずなのですが、世界同時的なパンデミックの困窮する中にいたわたしたちは、「人新生と資本論」の批判的精神に影響されがちになるのもわからないではありません。
★しかし、それだけでは偏ったシナリオプランニングになるので、2050年まで考える問題が最近多いですが、そのシナリオを考えるには、いったん一つの思想はエポケーしておく必要もあるでしょう。
★そのことに対応するような問いの立て方を東大地理の入試問題は見せてくれました。アントロポセンはいつからはじまるのか?3つの説を挙げ、それぞれ説明させるのです。大航海時代、産業革命時代、核の時代。たしかにいずれも自然を破壊する影響を多大に与えました。
★鴎友学園女子は、しかし、もう一つの側面をシステム思考的予測を立てる方程式で考えさせる問いを立てています。まるで、ケインズの2030年予測のような方程式なのですが、負の影響を正の影響にする技術革新や新しい成長。ここにはドネラ・プロジェクトが息吹いていますね。
★今回の東大の問題と鴎友学園女子の問題を結合すると、人新生を思考する基本的枠組みができます。つまり、これはこれからの世界を考えるコンセプトレンズになります。このレンズで、斎藤幸平先生の本を読むと、メタ認知できます。
| 固定リンク
「大学入試」カテゴリの記事
- これからの教育(07)主体的というコト(2025.03.23)
- 共愛学園前橋国際大学の児浦良裕准教授 未来のラボ都市づくりへ奔走(2025.03.21)
- 2025東大合格者発表のシーズン(12)足立学園 4年連続東大合格者輩出(2025.03.21)
- 2025東大合格者発表のシーズン(11)洗足学園の国語の中学入試問題に驚き(2025.03.17)
- 2025東大合格者発表のシーズン(10)麻布82名、日比谷81名、灘77名、桜蔭51名など情報が更新(2025.03.13)
「創造的対話」カテゴリの記事
- これからの教育(11)シンプルな知の循環体験によって自分のものの見方考え方を内蔵化する(2025.03.26)
- これからの教育(07)主体的というコト(2025.03.23)
- これからの教育(06)八雲学園 グローバルリーダー着々(2025.03.22)
- 共愛学園前橋国際大学の児浦良裕准教授 未来のラボ都市づくりへ奔走(2025.03.21)
- 2025東大合格者発表のシーズン(12)足立学園 4年連続東大合格者輩出(2025.03.21)
最近のコメント