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2023年2月 8日 (水)

2023年首都圏中学入試動向(31)鴎友学園女子の社会の入試問題から映し出される教育の真髄

★鴎友学園女子の今年の社会の入試問題には感心させられました。昨年2月に国連開発計画(UNDP)は、パンデミック、ウクライナ、気候変動などの複雑多岐な問題に直面して脅かされる人間の安全保障の新たなアプローチに関して特別報告書を公開しました。これまでの国家どうしで解決しようとしてきたこの安全保障が、もはやNGOや民間企業、市民などのレベルでも考えていかなければならない時代にはいったことを痛感している私たちですが、そのことこそがまさにグローバルという意味であることを問い返すような問題を出題したのです。

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★もちろん、問いは、グローバルとは何かを問うわけではないのですが、一般にグローバル教育というのが英語教育や異文化交流や留学や海外大学進学準備という狭い領域で意識されがちなのに対し、グローバル教育を標榜してきた鴎友学園女子は、教養や見識に裏付けられた本質的なグローバル教育の真髄を世に問うような問題を出題したのです。

★問い自体も、感染症から人間を保護するために、薬品を届けるだけでは本当の意味での人間の安全保障にはならない。その理由を説明し、さらにどのような解決策を付け加えたらよいのか考えをしめしなさいというような趣旨の問いでした。主張とそれを示すエビデンスデータとそこから読み取れる主張をサポートする根拠を記述する問題です。主張と根拠だけでは終わらない三角ロジックまで要求しているという点で難度は高いですが、次の図をヒントに人間の安全保障がいかに多面的多角的なアプローチが必要かを考える本質的な良問だと思います。そして、どんな具体的なデータがありそこからどんな根拠を推理するのか探究の構えを入試問題を考えながら身に付けられる素晴らしい問題ですね。

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(2023年の鴎友学園女子の一回目の社会の入試問題から)

★この図を見るとすぐに了解できるように、2022年のスペシャルレポートは、SDGsも当然念頭にあります。したがって、この問題はSDGsにも関連する問題であり、SDGsウォッシュになりがちな昨今の学びに対し、同校は根源的なところからSDGsも生徒が捉える教育環境をデザインしていることを示唆している問題でもありましょう。

★2001年1月に創設された「人間の安全保障委員会」の共同議長に、緒方貞子国連難民高等弁務官(当時)とアマルティア・セン・ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ学長(当時)が就任しています。鴎友学園女子のグローバル教育の目線は、緒方さんやアマルティア・センと同じ目線なのでしょう。

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