« 2023年首都圏中学入試動向(22)成城学園 2回目の入試も出願数前年対比100%超える | トップページ | 2023年首都圏中学入試動向(24)かえつ有明 人気高め安定の意味 成熟期に突入した21世紀型名門中学の持続可能な教育戦略の時代 »

2023年2月 4日 (土)

2023年首都圏中学入試動向(23)筑駒の詩 どこか傾向が変わる?

★昨日実施された筑駒の中学入試。いつも国語の問題でどんな詩を出題するのか注目しています。なぜなら、詩という情報量が少ない言葉にたいして問われるその問いは、受験生それぞれが違うイメージを表現する問いだからです。つまり、思考コードでいえば、批判・創造のC軸の問題が出題されるわけです。

★今回はクマのパディントンの翻訳者でもある木村涼さんの詩「花時計」でした。問いは、詩だから当然なのですが、メタファー(隠喩)の表現部の内容を説明する問題で、それは例年そうなのです。

★たしかにかなり自由度が高いのですが、それでも身近な周りのものをモチーフにしたものが多かったり、個人的な人生観を想い浮かべるものだったり、イメージの広がりもある枠が存在していました。もちろん、全く違う発想も、詩ですからできます。かつて塾の教室で生徒とい解いていた時、麻布ー筑駒、開成ー筑駒という併願組は、想いきっり枠を外してきたものです。でも、彼らは、入試本番ではその枠組みの中で書いていたのです。駒東ー筑駒は、準備段階でも丁寧に枠組みの中で書いていました。彼らの中で、当然遊びと学びの違いと共通点の議論が巻き起こるのですが、それはそれでクリエイティブでした。もちろんもう30年以上前の話です。

★その当時は1クラスの中から麻布や駒東が10人以上、開成、筑駒が2人くらい合格する時代でしたから、何か特徴が見えてきたものです。

★しかし、それらの学校の入試傾向がほとんど変わっていないというのが、凄いですね。入試問題は学校の顔と言われていますが、ある意味、入試問題はその学校の建学の精神をベースにした知性と感性の塊だと思います。ですから、傾向がそれほど変わらないというのは当たり前であると同時に私学の魂の凄まじさですね。

★今年の筑駒の問題の話に戻ります。今回は、メタファーの表現部からイメージする範囲は、個人的な話というより社会課題的な問題に広がるので、受験生の創造志向性は多様です。枠組みがかなり広いというのが今までのと少し違うなあと。テーマが違うと言えばそれまでなのですが、灘の詩と同じように社会派と言っていよいのか詩のコミュニティのことはよくわからないのですが、自然と人間あるいは自然と社会システムのジレンマを柔らかく表現しているメタファーをさらりと問うているのが形式は変わらないけれど、内容というかその質料が違うなあと。

★従来は、言語と言語の関係の枠内でした。一方今回、言語と自然と社会の関係性に気づくかどうか感性を明快に問うているのがおもしろかったですね。もちろん、受験生はそんなことを考えず、受験準備の経験値をそのままぶつければよいので、そんなことはどうでもよいのですが。

★ただ、灘が入試問題に社会科がないので、詩で社会と人間の関係という社会科の学びの本質的部分を問うという明快な方針が(といってもこれも30年以上前に当時の日置先生にインタビューした時の話ですが。とはいえ、傾向が変わらないということは、日置先生の精神は受け継がれているのでしょう)があるように、詩の出題は、学びの本質のその学校のコンセプトレンズの輪郭が見えるものです。

★麻布が物語しか出題しないというのも実は同じようななんらかのコンセプトレンスがあるのです。

★文学というのは、おそらく社会と人間と自然のパラドクスやダブルバインド、トレードオフなどの嵐の中で、何が起こっているのかその予兆が、しかも作者の意図をさらに超えて潜んでいるものです。それをそれぞれの読み手の創造力や想像力で暗号解読さながら紐解いていくのがスリリングなわけですね。これも30年以上前の話ですが、カリタスの森本先生の国語の授業のコンセプトをお聴きした時の話でした。

★かつて東大の言語学の教授だった池上嘉彦先生も、本間くん論理論理って、そんなことを考えさせるテキストや教材はいっぱいあるじゃないか、想像力を開発するテキスト作成や授業開発をやってくださいと言われたのもずっと心の中で響き続けています。思考コードにC軸を追加したのも、先生のその言葉を反映させているつもりなのです。そのインタビューは池上先生の最終講義が行われる年でした。

★池上先生の最終講義のその日同じ時間に、別の教室で廣松渉先生の最終講義も行われていました。私が法哲学を研究していた時、要素還元主義から関係総体主義へというパラダイム転換のコンセプトレンズを装着するようになった影響を強く与えてくれたのが廣松先生でした。当時河合塾も廣松先生を支援していたので、一度開成の橋本先生が河合塾の開発部隊に引き合わせて頂いたこともありました。

★そんなこともあって、どちらの最終講義に参加するのか一瞬迷いましたが、小学校3年のテキストを想像力を開発することを目的にとして作る構想などを組み立てようとしていたので、池上先生の最終講義にでました。すると、文化人類学や民俗学と言語学の接点をシンデレラの日本の民話に遷移したルーツをたどるケース(もちろん仮説だとおしゃっていました)で講義してくださったのです。30年以上前の話ですが、そのころから、クリエイティブラーニングの構想を立ち上げていたのです。こちらもしつこいですね(汗)。

|

« 2023年首都圏中学入試動向(22)成城学園 2回目の入試も出願数前年対比100%超える | トップページ | 2023年首都圏中学入試動向(24)かえつ有明 人気高め安定の意味 成熟期に突入した21世紀型名門中学の持続可能な教育戦略の時代 »

21世紀型教育」カテゴリの記事

中学入試」カテゴリの記事

PBL」カテゴリの記事