2023年大学入試(02)偏差値ランキングだけではなく入試問題についてメディアが取り上げる時代 思考力の時代ですね。
★昨日から国公立大学の入試が始まていますから、当然入試問題について話題にはなりますが、従来は圧倒的に偏差値ランキングの情報の露出が多かったですね。それが今年は「問い」の意味を考えたり、勘繰ったり(?)する記事が多くなってきました。思考型問題が増えたので、知識問題とは違って、いくらでも多角的なアプローチで論考できます。それゆえ面白いのでしょう。
★たとえば、東洋経済ONLINE2023/02/25では、こんな記事が掲載されています。<慶大、常識覆す「英語試験で出題文が日本語」の衝撃
受験関係者の間でさまざまな臆測が飛び交う事態に>がそれです。少し引用します。
「今年の入試は、さまざまな大学が従来とは違う傾向の問題を出題しています。共通テストの国語では「同じ漢字の違う意味」を問う問題が出題され、早稲田大学法学部の問題ではレストランの予約メールを書かせる英作文の問題や、不思議な絵の解釈をさせる英作文の問題が出題されました。そんな中で話題になったのが、慶應義塾大学の経済学部の問題です。今までの英語の問題の常識を覆すような内容でした。英語の試験であるにもかかわらず、出題された本文はなんと「日本語」。「Seymour Zimmer氏の論考に対するフクシ・セイタ氏による論評からの抜粋」を日本語で読んだうえで、英語で書かれた設問に解答させるという問題が出題されたのです。 」
★なるほどと思いつつ、早稲田の政治経済学部の一般選抜の総合型の問題は、すでに課題文は日本語も英語も出題されているので、それほど不思議だとは思わなかったのですが、記事の中では、受験業界での憶測を載せつつ論者の見解も明快に次のように載せています。
「巷では、この問題に対して「帰国子女が合格するのをブロックする目的があるのではないか」「東大受験に若干似ているから、東大志望の受験生に合格してもらうためではないか」といった臆測もあります。
僕は東大生と一緒に問題を解いて、ディスカッションしてみたのですが、その中で1つ、感じたことがありました。慶應義塾大学がこの問題を出題したのは、とあるメッセージを発信しているのではないかと感じたのです。それは、「英語力を鍛えようとするなら、日本語力から鍛えなければならない」ということです。」
★パンデミック、ウクライナ、気候変動というキーワードが映しだしている現象をThink Global, Act Locally.に捉えようとしいる慶應義塾大学がそんな細かい戦術も考えているのかと思うと、どこかおもしろくなりましたし、なるほどと思いました。
★と同時にSeymour Zimmer氏は外国人なのだから原文をまず読み、日本人のフクシ・セイタ氏がその批評を日本語で書いたのだから、それはそのまま読み、二人の主張の三角ロジックを比較対照して、相違点や共通点を考えたり、矛盾を見つけて、受験生自身が自らの三角ロジックを構築するような思考力の一端を問うてみたとも考えられるなと。
★もっとも、こんな考え方は誰でも考えるので、ビジネスとしての文章には確かにならないでしょう。
★思考力問題に消費者が注目するようになるには、このようなアプローチはたしかに必要ですね!
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