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2023年2月

2023年2月28日 (火)

2023年大学入試(04)東大の地理の第1問 人新生の新しい問いの立て方 思想の判断中止をさらりと

★さすが東大と言うべきか、やはり東大と言うべきか、それはともかく、人新生を地球システム科学とテクノロジーを掛け合わせた問いの立て方で出題。パンデミック以降、人新生というと、どうも思想が覆いかぶさり、中学入試では出題しにくかったわけですが、これで、中学入試でも思い切って出題できそうですね。今年鴎友学園女子が、ここまではいかなかったですが、思想の枠をとっぱらって論述する問題を出していました。

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★アントロポセン(人新生)という言葉は、大気化学者パウル・クルッツエンの造語で、今世紀になって現れました。気候変動と関連するので、問いが立てやすいのですが、わざわざアントロポセンを噛み合わさなくても、気候変動の問題そのものに拡張子がいっぱいあるので、気候変動だけですてきな問いがいっぱいできてしまうのです。

★もし嚙み合わせようとすると、すぐに思想がからんできて、「人新生と資本論」のような思想が強く影響してしまいます。近代資本主義の影響が気候変動や生態系に影響を与える時代として人新生を捉えるというのが近年の地質学の考え方のようですが、だからといって資本主義という社会現象をすぐに批判するものでもないはずなのですが、世界同時的なパンデミックの困窮する中にいたわたしたちは、「人新生と資本論」の批判的精神に影響されがちになるのもわからないではありません。

★しかし、それだけでは偏ったシナリオプランニングになるので、2050年まで考える問題が最近多いですが、そのシナリオを考えるには、いったん一つの思想はエポケーしておく必要もあるでしょう。

★そのことに対応するような問いの立て方を東大地理の入試問題は見せてくれました。アントロポセンはいつからはじまるのか?3つの説を挙げ、それぞれ説明させるのです。大航海時代、産業革命時代、核の時代。たしかにいずれも自然を破壊する影響を多大に与えました。

★鴎友学園女子は、しかし、もう一つの側面をシステム思考的予測を立てる方程式で考えさせる問いを立てています。まるで、ケインズの2030年予測のような方程式なのですが、負の影響を正の影響にする技術革新や新しい成長。ここにはドネラ・プロジェクトが息吹いていますね。

★今回の東大の問題と鴎友学園女子の問題を結合すると、人新生を思考する基本的枠組みができます。つまり、これはこれからの世界を考えるコンセプトレンズになります。このレンズで、斎藤幸平先生の本を読むと、メタ認知できます。

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2023年大学入試(03)東大の世界史の第1問 通時的で共時的な鳥の眼と虫の目

★今年の世界史の第1問は、いつもの通り、指定キーワードを活用して、600字くらいで論述する問題。この「論述」というのは受験業界では、事実のつながりを論理的にわかりやすく説明するという意味かもしれません。必ずしも、自分の主張と根拠とそのためのデータのつながりを三角ロジックよろしく論じるわけではなさそうです。もしそうなら、論文という用語を受験業界では使うのかもしれません。思考コードでいえば、B軸思考が「論述」にあたり、C軸思考が「論文」にあたるのかもしれません。

★それはともかく、18世紀末から20世紀初めにかけて、世界の君主制、共和制、植民地、憲法などの関係の通時的激変を600字以内でまとめるのは、なかなか大変でしょうし、欧米だけではなく、南アメリカや東アジアまで共時的なダイナミズムを説明するには多少細かい知識も必要になってくるでしょう。もちろん、教科書レベルではありますが。

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★ただ、それらの関係を世界地図に投影している1815年バージョンの図と1914年バージョンの図で比較させているところから、ただ知識を覚えていればよいというわけではないというメッセージは見え隠れします。

★パンデミックやウクライナというキーワードが映し出す社会現象や社会問題のルーツが、この時期にあり、未だに解決していないことを実感せざるを得ない問題です。地政学的と言えば、世界史と地理と政治・経済が交差するというちょっと興味深い問題でもあります。

★この問題をさらに2022年の世界と比べてみたり、2050年の世界のビジョンを考えるように発展させたら、一挙にC軸思考になります。東大の問題は、やはり手堅いですね。B軸の論理的思考をしっかりやってこいというメッセージです。ここが慶應義塾と少し違いますね。慶応はC軸思考を問うてきますから。

★もっとも、知識問題をしっかりやっていないと、C軸だけは、合格できないようになっているのが、東大と慶應の一般選抜の共通点ですね。

★こういう問題は、教科書持ち込みありにし、さらにクリティカルでクリエイティブな問いを投げかけれるとどうなるでしょう。

★記憶と論理と創造と。どこを評価するように2050年はなるのでしょう。

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2023年2月26日 (日)

2023年大学入試(02)偏差値ランキングだけではなく入試問題についてメディアが取り上げる時代 思考力の時代ですね。

★昨日から国公立大学の入試が始まていますから、当然入試問題について話題にはなりますが、従来は圧倒的に偏差値ランキングの情報の露出が多かったですね。それが今年は「問い」の意味を考えたり、勘繰ったり(?)する記事が多くなってきました。思考型問題が増えたので、知識問題とは違って、いくらでも多角的なアプローチで論考できます。それゆえ面白いのでしょう。

★たとえば、東洋経済ONLINE2023/02/25では、こんな記事が掲載されています。<慶大、常識覆す「英語試験で出題文が日本語」の衝撃
受験関係者の間でさまざまな臆測が飛び交う事態に>がそれです。少し引用します。

「今年の入試は、さまざまな大学が従来とは違う傾向の問題を出題しています。共通テストの国語では「同じ漢字の違う意味」を問う問題が出題され、早稲田大学法学部の問題ではレストランの予約メールを書かせる英作文の問題や、不思議な絵の解釈をさせる英作文の問題が出題されました。そんな中で話題になったのが、慶應義塾大学の経済学部の問題です。今までの英語の問題の常識を覆すような内容でした。英語の試験であるにもかかわらず、出題された本文はなんと「日本語」。「Seymour Zimmer氏の論考に対するフクシ・セイタ氏による論評からの抜粋」を日本語で読んだうえで、英語で書かれた設問に解答させるという問題が出題されたのです。 」

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★なるほどと思いつつ、早稲田の政治経済学部の一般選抜の総合型の問題は、すでに課題文は日本語も英語も出題されているので、それほど不思議だとは思わなかったのですが、記事の中では、受験業界での憶測を載せつつ論者の見解も明快に次のように載せています。

「巷では、この問題に対して「帰国子女が合格するのをブロックする目的があるのではないか」「東大受験に若干似ているから、東大志望の受験生に合格してもらうためではないか」といった臆測もあります。

僕は東大生と一緒に問題を解いて、ディスカッションしてみたのですが、その中で1つ、感じたことがありました。慶應義塾大学がこの問題を出題したのは、とあるメッセージを発信しているのではないかと感じたのです。それは、「英語力を鍛えようとするなら、日本語力から鍛えなければならない」ということです。」

★パンデミック、ウクライナ、気候変動というキーワードが映しだしている現象をThink Global, Act Locally.に捉えようとしいる慶應義塾大学がそんな細かい戦術も考えているのかと思うと、どこかおもしろくなりましたし、なるほどと思いました。

★と同時にSeymour Zimmer氏は外国人なのだから原文をまず読み、日本人のフクシ・セイタ氏がその批評を日本語で書いたのだから、それはそのまま読み、二人の主張の三角ロジックを比較対照して、相違点や共通点を考えたり、矛盾を見つけて、受験生自身が自らの三角ロジックを構築するような思考力の一端を問うてみたとも考えられるなと。

★もっとも、こんな考え方は誰でも考えるので、ビジネスとしての文章には確かにならないでしょう。

★思考力問題に消費者が注目するようになるには、このようなアプローチはたしかに必要ですね!

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2023年2月25日 (土)

GLICC Weekly EDU 第117回「工学院大学附属中高の魅力〜2023年度入試成功の理由」

★昨夜、第117回GWEで、工学院大学附属中学校高等学校(以降「工学院」)の教頭奥津先生と教務主任田中歩先生が出演。今年中学入試の出願数、実受験者数が爆増したその理由について語られました。21世紀型教育は定着し、高度な英語教育を行っているとか、PBLが浸透しているとか、探究論文が生徒の関心を広げ深めているとか、他校にないケンブリッジインターだとかラウンドスクエアの環境があるとか、それは学びの環境として学内では当たり前になっていて、とにかく生徒が主体的に自由にクリエイティビティを発揮し、利他主義的活動を企画し実施しているところがポイントだということです。

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(GLICC Weekly EDU 第117回「工学院大学附属中高の魅力〜2023年度入試成功の理由」)

★そして、生徒たちは、そのような環境の中で自分たちがブレークする日々を送っている学校のことを雰囲気がよいと評価しています。雰囲気が良いというのはwell-beingということ。つまり、良い状態ということ。そして良い状態だとウェルビーイングなのです、ハッピーだしなんかいい感じだし、心落ち着くし。。。

★それにしても昨夜のオンエアーは23時間前だが、はやくも308名が視聴しています。さすが人気校ですね。ぜひその理由をご視聴ください。

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2023年2月23日 (木)

2024年中学入試の行方(10)青山学院の社会の入試問題 世界意識を学べる

★2022年は、世界的規模で人間・自然・社会の循環について重要な意識を掘り起こす年でした。私立中高一貫校の中には、中学入試段階で、そこを問い、入学前から高い世界意識を学ぶ機会をつくっている学校も少なくありません。すでに幾つかの学校を話題にしましたが、青山学院もその一つです。

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★毎年ダボス会議で有名な世界経済フォーラムがリサーチして公開しているジェンダーギャップ報告書。青山学院は、そこに注目し、ジェンダーの定義を考える問題を出題しています。各私立中高一貫校は、グローバル教育を当然のように実施していますが、そのグローバルというのは、多様なマイノリティーを含めて互いにウェルビーイングをいかに形成していくのか、つまりダイバーシティの問題を含んでいます。同校の世界意識の高さを示唆しています。

★もう一つは、2022年の刑法改正ですね。刑罰から懲役刑と禁固刑をなくし、拘禁刑を導入するというものです。犯罪学や法社会学などで、懲役刑や禁固刑が再犯率を防ぐことにならないことがリサーチされ続けてきたのでしょう。死刑の問題もそうですが、国内法ですから、世界は関係ないと思われるでしょうが、比較法学などで、世界の動きがリサーチされています。

★やはり、Think Global, Act Locally.の動きは、国内法にも及び始めたということですね。ウクライナの問題もあるし、財政的な問題もあって、かなり多角的に考えないとなかなか結論が見えない領域ですが、青山学院には自由こそ真理なのだという信念があるのでしょう。真理は越境的・普遍的ですから、同校の教育としては世界意識が高くなるのは当然なのでしょう。

★それにしても、2022年の大切な「出来事」をキャッチし、受験生という子供とシェアする試みは、未来とかかわる大事なことです。かつて麻布の創設者江原素六は、「青年即未来」と言いましたが、この言葉は、広く私立中高一貫校にあてはまりそうですね。

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2023年2月22日 (水)

2024年中学入試の行方(09)成城学園の社会の入試問題 学際的で探究的な時代を見る目を養える

★今年の成城学園の社会の入試問題は、大きな問題が2つ出題されましたが、どちらも食に関する問題でした。「食」をテーマに、地歴公民・時事問題すべてが関連して出題されています。まさに成城学園の学際的で探究的な教育が反映した、入試問題は学校の顔を体現した問題でした。しかも、1つめは、成城学園の伝統と革新を統合している「自由研究」そのものをベースに問いが創られていました。対話文は、まさに普段からそのようなプロジェクト型の授業を展開しているのだということも了解できました。

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(写真は、同校サイトから)

★そして2つめは、2022 年に行われた「G7臨時農業大臣会合」で出された「ロシア連邦軍によるウクライナ侵攻に関するG7農業大臣声明」にかかわる問題でした。ウクライナのみならず気候変動やパンデミックなどのリスクや脅威を回避するために「連帯」する内容が議論されたわけですが、それについて多角的に問う問題でした。めちゃくちゃ意識が高い問題です。

★でも、知識がなくても考えて解答できる問いが多かったですね。

★このような入試問題に取り組んで中学受験勉強をする生徒は、自然と学際的で探究的な時代を見る目を身に付ける準備学習をするわけです。そして成城学園に入学するとそれが広く深く展開していくのです。成城学園は、中学受験勉強の時から、ウェルビーイングを生み出すエンパワーメントがされているのです。

★「ウェルビーイング」「連帯」「エンパワーメント」というキーワードは、相互に関連して社会変革のシナジー効果を生み出す2020年の世界共通のキーワードでした。身近な食というテーマから、こんなに広がるのですね。

★Think Global, Act Locally.世界に求められる学びの環境です。

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2023年2月21日 (火)

2024年中学入試の行方(08)子供たちの未来を遅らせる言葉の数々に惑わされないで前進する私学

★私立学校は、いまものすごい勢いで前進しています。そうしなければ2050年の世界(日本のみならず)の動きに間に合わないからです。2050年はソサイエティ5.0よりもさらに進みます。すでに大学は動いています。日本の大学を揶揄する人もあります。かつて私もこのままではと言っていましたが、今は違います。各大学は淘汰されないように、2050年に前進しています。7兆円以上の補助金がおそらく使えるからです。

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★2020年大学入試改革もとん挫したかのように見えましたが、水面下でどんどん進んでいます。もちろんもっともっとですが。初等中等教育の改革もどんどん進んでいます。それなのに、それを覆い隠そうとする人々がなんと多いことか。次の言葉をよく使う人の話は、参考程度にとどめ、どんどん進みましょう。効果的利他主義、あるいは大いに稼いで社会貢献しようと、そのためにSDGs、人間の安全保障です。さて、その停滞・後退させる言葉を列挙します。

1)なんちゃって探究ではなく、本物の探究が重要だ。

2)なんちゃって高大連携ではなく、本物の高大連携が重要だ。

3)なんちゃって21世紀型教育ではなくて、本物の21世紀型教育が重要だ。

4)問いの立て方が重要だが、問いの立て方は難しい。

5)大企業や官僚は、大きな改革を進められない。

★などなど自分以外にはできない、だから自分のところの商品を買いなさいという、言葉の背景にある利己主義が問題なんです。

★あらゆるものは、レベルがあります。最初はいきなり高次にはいけません。それを合理的に互いに配慮しサポートするのが効果的利他主義です。

★それに問いの立て方は難しいなどと言う人は、根源的な問いに直面する経験をしていないか、自分では経験していなくても想像力を発揮して共感的な理解ができないかどちらかでしょう。しかし、そんな人はいますか。みな何かしら悩みや壁を感じているはずです。したがって、問いを立てるのは難しいということはないのです。TGAL(Think Global, Act Locally.)の構えを整えれば。これはある意味マインドフルネスの極意でしょう。静かに目を閉じると、宇宙規模の問題とその解決の方法が見えてきます。 

★私はお金を儲けるななどとも言いません。教育は神聖でお金は関係ないなどという馬鹿げたことを言っても仕方がありません。要は循環する経済システムを創ればよいのです。

★みんなで前進しようと希望を信じて声を掛け合い進もうとすればよいのです。そういう人は周りに多いし、世界にたくさんいます。

★ネガティブトークに幻惑されないように、進んでいるのが私立学校です。公立学校ももちろんそれに続くkでしょう。誰でもいいのです。前に進むのは。ただ、現状として私立学校が進みやすい環境にあるのです。その環境を否定せず、認めましょう。だれでも、その環境を創ろうとすれば創れるのです。そのために、ジョブスとアラン・ケイはノートパソコンを生み出したのです。一台のパソコンで相当なことができます。もちろんこれだけで、すべてはできませんが、前に進めます。そして、考えることです。ロジカルシンキングは、当たり前なので、もっと前に進みましょう。感情的になるなロジカルにと言う人は、見落としています。感情は電子的ロジカル現象です。

★今年の慶応義塾大学の小論文は、ロジカルシンキング×クリエイティブシンキング=アブダクションがベースでした。やはり、前進しています。

★ウェルビーイングのビーイング=かけがえのない存在を、ネガティブなメンタルモデルで支配したり支配されたりするのは回避しましょう。

★そのためには、合理的配慮を互いに実行しようということです。ウェルビーイングのきれいな息吹を吸い込み、前進しましょう。ウェルビーイングがゴールではありません。ウェルビーイングはいまここでどんな環境でも生むことができるのですが、現状では一握りの人間です。いまここで全員がウェルビーイングを生み出すシステムを創ることがゴールです。2050年を目指して。

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2023年大学入試(01)慶応義塾大学総合政策の小論文 コンセプトレンズの作り方 探究の根源に迫る

★今年の慶応義塾大学の総合政策学部の小論文問題は、大学の学びとは何か?社会における「知」とは何か?を問う問題でした。古典的と言えば古典的ですが、編集の仕方そのものを問うているところがおもしろいですね。

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(4人の作家の1人がJ.S.ミルでした)

★何か?の答自身は、不思議なことに問題の文章の中に書いてあるのです。慶応義塾大学総合政策学部は、大学や知をどのように考えているかアドミッションポリシーとしてちゃんと示しているわけです。

★解答を示しているわけですから、何を考えるかというと、その「何」を構成する根拠を構成せよということなのでしょう。ですから、時代も国も立場も違う4人の作家の文章を読んで、それらを結び付けながら論を展開していくのです。

★多くの場合、小論文と言えば、与えられた一つの文章を読んで、その作者と同じ考え違う考えを明らかにしながら自分の主張を展開してけばよかったのですが、総合政策学部の場合、4人の作者の目、つまり4つのアプローチを自分なりの見方で編集して大学とは何か?知とは何か?を論じるわけです。

★一見結びつかないような多様なアプローチを新結合するというわけです。これは、あるものの見方考え方感じ方が自分の中になければ結び付けられません。つまりコンセプトレンズが必要です。

★ところが、あらかじめあるコンセプトレンズもよいのですが、それさえなくても、造ればよいのです。ですから、わざわざ問題に、4つのアプローチに同調するのではなく、批判的に検討せよと。この批判的思考は、自分の中にものの考え方の基準が明快にないとうまくいきません。

★ですが、仮におぼろげながらのコンセプトレンズだったとしても、その場で磨き上げていけばよいのです。つまり、今回の総合政策学部の小論文は、このものの見方考え方感じ方というコンセプトレンズそのものをどのように作っていくのかにチャレンジする問題だったのです。

★コンセプトレンズとテーマを混同すると探究はしばしば調べ学習で終わってしまいます。そうならないためのヒントが今回の総合政策の問題にあったわけです。

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2023年2月20日 (月)

2024年中学入試の行方(07)グローバル・アドミッションの時代を語る鈴木裕之氏が主宰するGWEが注目される。

★先週の金曜日、GLICC代表鈴木裕之氏がご自身主宰のGWEで語りました。そのGLICC Weekly EDU 第116回「2023年度中学入試を振り返る③~帰国生・国際生・英語入試」は、3日も経たないうちに視聴者が200名を超えました。このことは何を意味しているのでしょう。もちろん、桜新町教室から広尾教室まで教室展開を広げているGLICCの人気がでてきたということを端的に示しているのは言うまでもありません。

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★そして、その人気は、「受験はグローバル・アドミッションの時代」という鈴木氏の時代認識に共感共鳴共振する受験生・保護者が増えてきたというコトを意味するでしょう。

★英語が堪能な鈴木氏が経営するGLICCは、全員外国人スタッフです。そしてサポートする講師もほとんどが外国人で、それ以外はGLICC卒業の帰国生の大学生です。ですから、GLICCの中では自然と英語が飛び交っています。

★カリキュラムやプログラムは、基本クリエイティーブーラーニングで、ケンブリッジ大学出身の外国人講師による哲学英語授業まで行われています。

★小学生も果敢にというか楽しんで英語で哲学するわけですから、最近難しくなってきた帰国生入試や国際生入試での合格者も年々増えています。

★GLICCは中学受験専門塾ではなく、他に類を見ない中高大のグローバルアドミッションの学習拠点です。ですから中学受験においては、帰国生・国際生入試以外に新タイプ入試における英語入試の受験生をサポートしています。

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★英語入試は、英語だけの入試もありますが、ほとんどが英語と国語か算数というケースです。ですから、GLICCは、国語や算数のサポートもします。したがって、国算で受験する生徒もいますが、基本英語も同時に学んでいます。というわけですから、実は、GLICCが対象としている帰国生などの市場規模は、東京のグローバルアドミッション志向の人口は中学入試と高校入試合わせて1200人くらいです。大学入試も結局そのくらいでしょうから、2400人(1年度)程でしょう。GWE視聴数が200超えるというのは、その市場ではなかなかのものなのです。すでに1000件を超える番組も増えています。今回のGWEもやがてはそうなるでしょう。

★首都圏模試センターのデータによると、英語入試実施校は、今年は少し減少しましたが、首都圏の私立中高一貫校の50%弱が実施しているわけです。多少減るのは、入試問題は学校の顔ですから、英語入試を行っている学校は、英語や国際プログラムがかなり特徴的なのです。このアドミッションとカリキュラムと進路指導のディプロマの3つの一貫した流れが見えていないとなかなか英語入試は成功しないわけですが、逆に言えば、私立中高一貫校の50%弱が英語入試を持続しているということは、グローバルアドミッションが着実に定着しているということでしょう。

 

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2024年中学入試の行方(06)富士見丘 入学者爆増 スーパーウェルビーイング教育実践校

★昨日、21世紀型教育機構の2022年度第2回定例総会が行われました。加盟校の富士見丘の佐藤副教頭先生から中学入試の結果報告がありました。帰国生が自分たちのウェルビーイングな学園生活、及び未来を実感できる学校として発見したところから、徐々に一般生にも人気が伝わった学校です。そして、今春は、中学の入学者は爆増したということです。

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(写真は同校のサイト「グアムフィールドワーク報告(2023/1/11~15)」から)

★ウェルビーイング教育の実践校としての魅力がどんなところにあるのかは、次の動画で、佐藤副教頭先生が語っています。先月の年初当初すでに入学者が爆増する予想も語られています。ぜひご視聴ください。

参照)GLICC Weekly EDU 第111回「2023年中学入試を読む~富士見丘の生徒像に見る未来の教育」

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21世紀型教育機構2022年度第2回定例総会 新たな次元生まれる

★昨日19日(日)、和洋九段女子にて、21世紀型教育機構の2022年度第2回定例総会が開催されました。2011年に発足し、生徒が活躍する未来に責任を引き受けようと集結した私立学校のコミュニティが、何度も次元をあげるシステムを創ってきました。2015年までは、同機構の共通基盤を共創してきました。C1英語、PBL、1人1台ノートパソコン、STEAM教育や哲学対話、リベララルアーツの埋め込み、海外大学準備教育、なんといってもMFO(men for others)。これらの教育環境を、要素還元主義的ではなく、関係総体主義的教育環境デザインとして構築していくことでした。関係という複雑系を適用型にするために、思考コードもいちはやく創りました。それと思考力入試の実施です。

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★その後2つめの次元として、アクレディテーションを構築実施。21世紀型教育の質を保障するために、モニタリングする第三者メンバーを募り、スコア化していきました。毎年、どの学校もそのスコアを向上させていっています。結果、90%は生徒募集は安定かしています。2023年度は100%する予定です。

★3つ目の次元として、SGT(スーパーグローバルティーチャー)育成の機関、21世紀型教育研究センターを設立。上席研究員に児浦先生(聖学院)、田中歩先生(工学院)、主任研究員に新井先生(和洋九段女子)、田代先生(静岡聖光学院)、染谷先生(文化学園大学杉並)が各加盟校のSGTと同機構の象徴的な学校横断型で学際的なPBLを外部環境を舞台につくるにまで到りました。SGTアワードも定着。

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★4つ目の次元は、同機構理事の大橋清貫先生(三田国際)が座長のマネージメント部会です。どんなによい教育を行っていても、私学は市場で評価される経営と教育の両輪を回さなければなりません。教育の理想とそれを現実化し、持続可能にする経営。特にマーケティングベースに学校の管理職もSGT同様学んでいくということです。

★そして、5つ目、新しい次元が生まれます。新たな次元が生まれるには、21世紀型教育機構の時代のニーズに対応する次元を上げ続ける積み重ねがあるからこそなのです。組織はエントロピーが増大すると停滞から衰退にシフトしていきます。同機構もその例外ではありません。ですから、そこを打破するには、時代のニーズを見定めて、その積み重ねの伝統に革新を統合し、変容していく必要があるのです。

★会長の平方先生は、歴史に学び芸術に学びます。自らが彫刻家でもありますからビジョンメーカーです。理事の大橋先生はマーケティングを自在に使いこなし、経営の達人です。理事の石川先生は、21世紀型教育機構を各地に広めるインフルエンサーです。そしてもう一人の理事は、未来の歴史と未来の市場と連綿と続く哲学史に学びます。その言動は予言者的で、はじめのころは、もっとも揶揄された人です。今では、5年経ったらその言説は当たり前になるので、受け入れておくことにすると言う人も現れてきました。そして、理事の鈴木さんは、理事たちのアイデアと21世紀型教育研究センターの統合を図ります。理想と現実と市場拡大の統合。GWEというYouTubeで、21世紀型教育を機構のメンバーだけではなく、それ以外にも21世紀型教育を行っている学校の先生方と未来を共創する情報を発信しています。GWEの視聴者数は回を重ねるごとに多くなっています。21世紀型教育市場の拡大とシンクロしているのでしょう。

★またコミュニティは仲間内だけで完結するとやはり停滞します。そこで、首都圏模試センターの代表取締役山下一さんと取締役・教育研究所長北一成さんに、外部環境の変化の情報を機構が立ち上がり当初から提供していただき、サポートして頂いています。

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★私立学校研究家として、私も同センターが編集・発行している情報誌「しゅとも」に寄稿させていただいていますが、山下さんと対話しながら、時代の精神やニーズを見定め、未来から学んでもいます。伝統と革新を統合してウェルビーイング教育を実践している学校の動向をご紹介し、ロールモデルエフェクトに貢献できればと思っています。

★こうして5つ目の次元は、生まれるべくして生まれるわけです。2023年度をお楽しみに。ああそれから、一つの次元が実行される時、同時に次の次元もすでに見えているものです。それは2025年に始まるでしょう。

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2023年2月19日 (日)

2024年中学入試の行方(05)ウェルビーイング教育 ハイデガーとトマス・アクィナス

★well-beingという言葉、だいぶ前から気になっていたので、今更ながらですが、ハイデガーとトマス・アクイナスが「存在」をどう捉えていたのか、ハオデガーの弟子であり神父でもあるヨハネス・ロッツの著書を読んでみますね。例によって斜め読みですが。

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★この二人は、私学創設時になんらかの影響を与えた哲学者あるいは神学者です。ハイデッガーはカトリックからプロテスタントに改宗し、再びカトリックに還ります。存在の遍歴があったのでしょうか。

★古い話で終わらない、何かがあるでしょう。

★新しいことを創るときには、源泉に立ち寄ることも大切かと。

★二人は、平和と戦争、経済と社会と自然を考える時にも、いうまでも人間の精神を考察する時にも実は今も常に顔を出しているのです。

★それから、ヨハネス・ロッツは、二人を語る時に、さりげなくヘーゲルを持ち出します。PBLを実践している私たちは、デューイが傾倒しのちに批判してプラグマティズムを生むことになるわけですから、これもまた無視できないわけです。

★経験と思想(理論はその部分集合だと思っています)は、結構大事だと思っています。

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2023年2月17日 (金)

2024年中学入試の行方(04)存在のウェルビーイング パウロの長崎修学旅行を通して

★パウロの修学旅行3日目、先生方の周りから生徒がいない瞬間がありました。ハウステンボスのエリアでの話です。生徒たちは、ヨーロッパの街並みを外国人ファシリテーターと英語で対話しながら新しい発見をシミュレーションするミッションフィールドに出かけたのです。ゲートに向かう生徒の後ろ姿を見守りながら送る先生方がそこに残ったときのシーンが次の写真です。

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★2日目の長崎市のフィールドワークも生徒たちはチームで活動したのですが、いくつかのエリアに分けて、先生方は順番にエリア内を巡回していました。しかし、今回は心の眼差しで見守るステージにシフトしました。生徒の主体性と自由。そこに新しい気づきや発想は生まれます。旅は最終的にはアドベンチャーでというわけでしょう。

★偶然撮れた写真ですが、人間の存在を支える土壌とそこに命を与える海の豊かさ、そして旅行代理店の方やミッションフィールドのコーディネーター。今回のプロジェクトのミニコミュニティーがそこにあります。

★生徒1人ひとりのかけがえなのない存在。その存在を支えるには、いろいろな環境設定とそれをデザインする教師と外部の方々とのコミュニケーションが大切であることを示唆しているシーンですね。

★今回の修学旅行は、3つの糸が織りなされています。1つは幾つかのスケールの違う集団の活動の糸、2つめは個人が内省するチャンスの糸、3つめは外部の方や公共的エリアでの活動の糸。個人は少なくともこの3つの糸が織りなす環境デザインから分断されることはないのですが、もし分断されたならそこにはパニックが生まれます。

★そうならないようにマネジメントやデザインするのが教師の役割です。3つの糸がうまく生徒1人ひとりと循環すると、その1人ひとりの存在はウェルビーイングになるでしょう。

★教師は、生徒と内面の信頼関係ができるまでは、その距離はつかず離れずというより、かなり近い距離で調整していきますが、徐々に物理的距離は遠くなっていきます。その分、内面的な信頼関係はゆるぎないものになっていきます。

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★そこに行き着くには、そう簡単なものではないのですが、それに挑戦するのが教師です。もちろんいつも順風満帆ではありません。苦悩もしますが、逃げることはしません。心を開いて対話をしていきます。すぐに生徒も心を開くときもあります。しかし、半年、1年かかる時もあります。

★今回の2年の修学旅行では、1年から積み上げてきた多様な環境デザインとそれぞれ違う環境の中での対話によって、内面の信頼関係がどこまでできたのが確認しながら、生徒を手放していく先生方。それが上記の写真のシーンです。ゲートに向かった生徒の後ろ姿が見えなくなってもしばらくそこに佇んでいる教師。一方校長はさっさと本部デスクに戻って行っているのですが、その後姿を見ながら、クールとホットの適度な感覚が生まれてくるのをしばし待っているかのようでした。

★先生方は、生徒の内面にマインドとアガペーとそれが生まれる息吹であるスピリットに目配り気配り気遣う日々です。そして、言葉で確認するだけではなく、生徒のプロジェクト活動のプロセスや生徒との対話、生徒の多様なプレゼンを見ながら、その内面がどこまで可視化できているのか観察し、傾聴するわけです。

★そこに自信や確信が降りてきたとき、ボランティアや冒険に送り出し、途中で困った時には合理的配慮というサポートにかけつけます。

★生徒は上記のサイクル図のように、いろいろな環境の中で、自ら考え判断し行動しますが、すべての環境でうまくいくわけではないのです。クラスでうまくいっていても、仲間とはうまくいかなかったり、学年になるとまた気持ちや発想や行動は微妙に変わります。それが社会や世界にでたときにもっと不安定になるかもしれません。

★大人だって新しい環境では、不安になるものです。

★かつて学校は国や企業を支える労働力養成の場であったと言われています。それはしかし、20世紀まで残響があったのです。21世紀になってからは、その見直しが続いています。今では、生徒1人ひとりの存在のウェルビーイングが生み出されてこそ、その尊さは守られるのだという考え方が広がっています。教育の機会均等だけでは、必ずしも生徒は幸せでなかったのは、歴史を振り返れば明らかでしょう。もちろん、それがなかった20世紀初頭に比べれば、圧倒的にマシでした。

★しかし、2024年は、マシ程度で済まされない時代なのです。

★パウロの試みは、完ぺきではありません。しかし、先生方は生徒1人ひとりの存在のウェルビーイングを生み出す努力を日々しているのは確かなのです。

★2024年の中学入試の行方を語るシリーズで高校だけでの勤務校の話をしたのは、勤務校は仲間の学校(みな中高一貫校なのです)のそれぞれの良さに学び、それを共有しシンクロしています。中高一貫校も高校段階が言うまでもなくあります。しかし、中学受験の情報の多くは、中学段階の情報なのです。中学入試は、中高一貫校がほとんどですから、高校の教育から見てみるのもたまにはよいのではないかと思ったからです。

★以上のようなことを書いているうちに、生徒たちは、ミッションフィールドを終え、先生方のもとに帰還しました。笑顔で。もちろんパウロの先生方も安どの笑顔を。

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2023年2月16日 (木)

2024年中学入試の行方(03)ウェルビーイング教育座標 パウロの長崎修学旅行を通して

★勤務校聖パウロ学園の長崎修学旅行のサポートに入っています。パウロの先生方は若く、今回の2年生の修学旅行の学年主任・主幹大久保先生も30歳代です。20代から30代の学年団とは思えない程、機敏・熟練した動きなのですから、先生方の歳の2倍から3倍の私は、邪魔にならないように同伴しているわけです。

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(早朝ミーティング。5時30には集まっています。私は予定通り45分に着席(汗)

★今回の修学旅行の目的は、コロナ禍にあって中学時代から宿泊行事に参加できなかった生徒も多く、パウロに入学してからも学年全体の宿泊行事は今回が初めてだったため、学習旅行というより、学内で創ってきた学年・クラス・個人の内面と活動の循環の基盤づくりの実証が目的でした。この旅行でうまくできているところとそうでないところを教師と生徒がお互いに気づき、次に生かしていくということです。

★もちろん、学習の側面もあるのですが、一つのテーマをプロジェクトチームで長崎の街をフィールドワークするというより、グローバルの本質的な学びの視座をどのくらいの広さで身に付けられるかがポイントです。

★世界でも例のない原爆が落とされた2つの都市のうちの1つ長崎です。江戸時代までは、日本の唯一の国際都市だったかもしれません。港、金融業、エンターテイメント、権力の中枢などがダイレクトに機能する都市。地政学、地経学の交差する都市です。

★そして、明治以来、欧米に追い付け追い越せとばかりに進められてきた近代化の光と影の凝集した都市です。

★まずは受容するところから、感じることから、仲間と共感することから始めるわけです。

★内面に火がともれば、学びはなんとかなります。

★先生方や生徒の動きをみていると、パウロのウェルビーイング教育座標はこんな感じになっていました。

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★第1象限のウェルビーイングポジショニングに持っていくには、知識や技術はもちろん必要なのですが、その基盤となる内面の質料と形式化の循環層は、パウロの場合は新しい世界標準です。特に巧んだわけではなく、先生方のスクールモットー黄金律に常に還る日々の教育の積み重ねが生み出したものです。若い先生方ですが、黄金律<men for others, with others>を大切にするハートが私のような年寄よりも豊かな経験値を積み上げています。私たち戦後経済成長期を生き抜いてきた個人主義世代とは大違いなのです。(つづく)

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2023年2月15日 (水)

2024年中学入試の行方(02)ウェルビーイング教育実践校が続々増える。高校だけのパウロ学園も。

★ここのところ教育関係者や勤務校の先生方と新年度のコンセプトレンズについて対話をしていて思ったのは、インクルーシブ教育を含みながらグローバル教育はダイバーシティー教育として発展していくだろうということです。そしてそうなってくるとウェルビーイングへの道が開けるなあと。そういう意味ではウェルビーイング教育実践校がどんどん増えていくということです。

★もちろん、今までも行っていたという学校はほとんどでしょう。そうなのだと思います。しかし、私も含めてまだまだアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)があって、それを謙虚に捉え直し(エポケーして)、そのような偏見や眼鏡を解消していくというプログラムがが校全体で自覚的に実践されている必要はあるなあと。

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★少なくとも、2022年出版されてから50年を迎えた「成長の限界」をさらに現代化した上記の2冊は共通認識として学び直しをしたいと思っています。

★両書の共通点は、one earthをすべての人類のコモンズとして認識し、環境破壊の源が生み出している差別や格差を撤廃し、差別を受けている人々すべてにエンパワーメントするシステムを作り直そうということです。

★まさにこれはウェルビーイングの基盤ですね。

★SDGsや人類の安全保障などを探究する多様なプロジェクトが、各学校で実践されています。この流れは当然ウェルビーイング教育実践だと思います。これをもっと加速させること・拡大させること・深化させることです。

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★私の独断と偏見ですが、ウェルビーイング実践校は、少なくとも上記の7つの項目について学内で議論され実践されています。そして、どんどん7つの項目は関係を濃くしていきます。もともと分けられるものでもないのでしょう。アンコンシャスバイアスを解消するには、このような努力が必要で、学内で、教職員のみならず生徒とも保護者とも共創できる教育環境デザインをいかに創っていくかです。

★もちろん地域との連携も必要ですが、その地域貢献は、学内と地域連携からスタートすると、やがて全地球に関係していることに気づきます。かくしてウェルビーイング教育実践校は、「地球貢献」をしていることになると勤務校の教頭と話しているところです。

★中学は併設していませんが、勤務校も、この地球貢献をパウロの森の教室プロジェクトで、もっと可視化して実践していこうと。もちろん、教師と生徒と保護者と地域の方々と大学の方々と。小さく静かに地球規模で!

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2023年2月13日 (月)

2024年中学入試の行方(01)工学院、八雲、成城学園、かえつ有明、湘南白百合にみる ウェrビーイングとクリエイティブテンション

★2023年首都圏中学入試は、パンデミック、戦争やテロ、気候変動という世界の自然・社会・人間の関係が矛盾だらけの中で、しかも少子高齢化の中で、受験生は増加しました。この現象を、どのように捉えるのか。難関校の復権とか、建学の精神と伝統、ビジョンを明快に表現しているシングルスクールの復権とかも言われています。それに対し、でもよくみると、結局は伝統と革新を統合している共学もきっちり生徒を集めているのはどう説明するのかというクリティカルシンキングもあります。

【図Ⅰ】

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★そのようなものの見方は、従来の中学受験市場分析の枠組です。それに対し、WHOや人類の安全保障、万人のための地球などの感染症や戦争、気候変動、ダイバーシティー(異文化、宗教の違いだけではなくLGBTQも含むマイノリティーの尊厳やインクルーシブな考え方も含む)、貧困などの角度からウェルビーイングを求める受験生・保護者と学校のマッチングが増えてきたという主張もあります。

★たしかに、偏差値や学力競争などが学校と生徒の関係を抑圧的な緊張に変質させる場合、つまり、隠蔽的で保守的で閉鎖的で生徒のみならず教員のウェルビーイングを阻害する関係はパニックを生み出します(図Ⅰ)。もちろん、そうならないように、学力を向上させる過程において1人ひとりの才能が生まれるほどよいクリエイティブテンションにもどそうとする作用が働く学校がほとんどです。

★ただし、そのクリエイティブテンションが持続可能になる学校はなかなかなかったのです。しかし、伝統と革新を統合させる21世紀型教育を進めている学校は、そこに気遣うあるいはケアフルな配慮を教育のデザインの中に埋め込みます。

【図Ⅱ】

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★すると、図Ⅱのように、ウェルビーイン促進曲線と関係性の緊張が解けて、クリエイティブテンションを生み出し続けます。

★このような学校がウェルビーイングを求める受験生・保護者と共感し合い人気がでてきたわけです。この人気は出願総数増という基準だけでは見ることができません。出願総数爆増の理由は、必ずしもウェルビーイング促進曲線を持続可能にするからとは限らないからです。

★もちろん、工学院、成城学園、かえつ有明、湘南白百合の爆増しているその理由は、ウェルビーイング促進曲線の持続可能性を実現しているからです。一方、八雲学園は出願数が爆増はしていませんが、きっちり定員は確保しています。

★したがって、大事なことは定員を満たすことと、その理由がウェルビーイング促進曲線が持続可能になる教育環境デザインによっていることでしょう。

★2024年は、このようなウネリが大きくなっていくでしょう。2022年は、1972年の「成長の限界」が発刊されて50年でした。そのこともあって、昨年、この魂を継承して、それを現代化した研究が2つ出ました。「人新生における人間の安全保障スペシャルレポート」と「万人の地球」です。両方とも人類、地球、社会の関係性がウェルビーイングを生み出す循環をデザインするにはどうするかをテーマにしています。

★工学院、八雲、成城学園、かえつ有明、湘南白百合は、ウェルビーイング教育の実践校です。

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2023年2月12日 (日)

2023年首都圏中学入試動向(36)ホンマノオト21のアクセス数から

★昨日2月11日で首都圏中学入試はだいたい終結に向かっていると思います。招集日がこの土日であるでしょうから、多少の動きはあるかもしれませんが。首都圏中学入試のピークは終わったとみていいでしょう。この2月1日から2月11日の期間に、ホンマノオト21のアクセスランキング30位までをご紹介します。最近の記事だけではないので、検索してアクセスされていることがわかります。そのような記事の学校は、それだけ関心が集まっているということでしょう。

1:2023年首都圏中学入試動向(18)今年も麻布の社会は傑出!
2:2022年中学入試 三田国際の「超人気」の意味。
3:2021年中学入試情報(38)工学院大学附属 応募者数 前年を上回る勢い...
4:2023年首都圏中学入試動向(24)かえつ有明 人気高め安定の意味 成熟...
5:2023年首都圏中学入試動向(27)成熟期を迎えた多くの私立中高一貫校の...
6:2022年教育動向(12)聖学院の人気の理由の質が変わった
7:2023年首都圏中学入試動向(25)八雲学園 はやくも21世紀型名門中学...
8:2023年首都圏中学入試動向(21)2月1日 湘南白百合 破格の人気: ...
9:2023年首都圏中学入試動向(22)成城学園 2回目の入試も出願数前年対...
10:2023年首都圏中学入試動向(15)2月1日、東京・神奈川の中学入試始ま...
11:2023年首都圏中学入試動向(16)2月1日東京は男子校出願数増加か: ...
12:2023年首都圏中学入試動向(29)首都圏私立中学入試の出願総数から: ...
13:2023年首都圏中学入試動向(32)首都圏私立中高一貫校の中学入試 出願...
14:2023年首都圏中学入試動向(19)工学院2月1日の受験率が高い。特に女...
15:2023年首都圏中学入試動向(23)筑駒の詩 どこか傾向が変わる?: ホ...
16:2023年首都圏中学入試動向(30)ノイタキュード代表北岡優希さんの新し...
17:2023年首都圏中学入試動向(20)駒東の社会 探究的かつ学際的問い作り...
18:2023年首都圏中学入試動向(17)順天 前年の出願総数を超えるだけでは...
19:2023年首都圏中学入試動向(09)1月24日現在 東京エリアで出願数の...
20:2023年首都圏中学入試動向(14)筑駒と工学院 もうひとつの工学院の人...
21:2023年首都圏中学入試動向(26)首都圏模試センター 栄光の算数の入試...
22:2022年教育動向(13)大妻中野 中学入試の段階から多様性
23:2023年首都圏中学入試動向(34)麻布、駒東、鴎友学園女子の社会の入試...
24:2021年中学入試情報(22)新渡戸文化学園の存在の意味が広がる。新しい...
25:2023年首都圏中学入試動向(08)成城学園第1回入試出願数前年を超える...
26:2023年首都圏中学入試動向(28)工学院中学入試 最終試験も90名が挑...
27:2023年首都圏中学入試動向(31)鴎友学園女子の社会の入試問題から映し...
28:2023年首都圏中学入試動向(33)明日のGWE115回でノイタキュード...
29:2021年私学展(5)八雲学園 近藤彰郎理事長・校長を支える教師の意味の...
30:【速報】富士見丘 第1位 6年間で伸びる進学校ランキング

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2023年2月11日 (土)

2023年首都圏中学入試動向(35)北岡優希さん はやくも2024年の中学入試問題の傾向を予想

★昨日の<GLICC Weekly EDU 第115回「2023年度中学入試を振り返る②~ノイタキュード代表 北岡優希先生との対話」>で、北岡さんは、2023年社会科の中学入試問題のある傾向法則を分析し、その法則に従って2024年の中学入試を予測しました。速いですね。

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★北岡さんは、分析で終わらずに、対策も提案。テレビやインターネットなどメディアミックスの情報を楽しく入手したり、スーパーマーケットなどで身近な経済現象をフィールドワークすることで、知識を覚えることの楽しさを語りました。中学入試の一般入試の社会科では、60%から80%が知識問題です。この知識をただ暗記するだけではなく、メディアを見たり、フィールドワークを行うことで、知識をt血肉にしていけるすてきな提案です。

★また、残りの20%から40%は、思考型問題です。

★この思考型問題と、北岡さんが取材した聖学院の思考力入試、鈴木さんが取材したかえつ荒明の思考力入試の話を照らし合わせながら、思考型問題の濃淡を語りました。

★「思考型」とはよく言われるのですが、一般入試と思考力入試では、思考の前提、広さ、深さが違うところまでは、一般には語られることはほとんどありません。今回は、そこをメタ認知する(これを「ノイタキュードする」と今後呼びます)ところまで、対話しているので、とても参考になると思います。

★大事なことは、北岡さんが勧めるテレビ番組の幾つかは、この思考型問題にどうアプローチするのかがわかるものもあり、今回の北岡さんの語りのベースのスライドは、知識問題と思考型問題を楽しく学ぶ対策までカバーしているのです。ぜひご視聴ください。

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2023年2月 9日 (木)

2023年首都圏中学入試動向(34)麻布、駒東、鴎友学園女子の社会の入試問題の共通したコンセプトレンズ

★今年の麻布の社会の入試問題では、個人と公共の統合をいかにするかジレンマの解決を問うていました。駒東と鴎友学園女子は2021年に発行された核兵器禁止条約に日本が参加しないことについて、駒東は、日本が参加しない理由の根拠である核兵器の他の兵器と違う点を問うてました。鴎友学園女子はなぜ日本は参加しないかという理由と反対に参加すべきだという主張の理由を説明する問いが投げかけられていました。

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(2023年駒東社会)

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(2023年鴎友学園女子社会第1回)

★実は、いずれも共通しているのは、One Earthをいかにwell-beingにするかという国際的な高い意識に対する見識があります。万民のための地球は、人類すべての市民の共有財、つまりコモンズであるということなのです。

★これは昔からコモンズの悲劇という難問にぶつかってきました。J.J.ルソーが「人間不平等起源論」で語った有名な「鹿狩りの寓話」問題ですね。

★このジレンマ、特に駒東は囚人のジレンマをどう解決するかという知の地平があります。

★このように、麻布も駒東も鴎友学園女子も、ジレンマ問題を発見し問い返すメタコンセプトとしてのコンセプトレンズを身に付けているかどうか問うているという点で共通した学習観があります。思考コードでいうB3・C3の領域に属する問いというわけです。

★探究で、「問い」創りが大切だが、難しいという現場の声をよく耳にしますが、このような学校の社会の中学入試問題は問いの宝庫です。しかもいきなり難しい問題を生徒にぶつけるのではなく、最終的なジレンマ問題を考える足場づくりの問いから始まっているので、授業やプログラム作りの最適のマニュアルでもあります。

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2023年首都圏中学入試動向(33)明日のGWE115回でノイタキュード代表北岡さんと<ノイタキュード>する時、内生的成長の一般化をしてみます

★明日、第115回GWEで、主宰の鈴木さんと、ゲストの北岡さん(ノイタキュード代表)と、今年の中学入試問題から私学について<ノイタキュード>する対話をします。私は、学校の頭脳とハートを見るのは、学校説明会やパンフやサイトではなかなか気づかないと思います。説明会の半分以上を生徒自ら主体的に説明し表現してくれれば、それはまた別ですが。やらされてる感満載では、見えにくいですね。

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(明日のGLICC Weekly EDU 第115回「2023年度中学入試を振り返る②~ノイタキュード代表 北岡優希先生との対話」をぜひご視聴ください。) 

★その点、かえつ有明の生徒は、主体的に説明会のみならずいろいろな企画を立て世のため人のためアントレしてしまいますから、このレベルであるかどうかが1つの基準だと思います。

★これからは、そういうダイナミズムが生まれてくると思いますが、それがなくても、入試問題を見ると、すぐにその学校の頭脳やハートの魅力がわかります。

★特に社会科ですね。社会の入試問題は、その学校の頭脳やハーとの真髄がわかります。知識集積型か世界の痛みを課題解決する深い学びや調べ学習を超えた探究活動が行われている学際型かがわかります。

★灘のように、社会科の入試問題がそもそもないという場合は、国語の文学的文章、特に詩の問題ですね。ここには教育や学びの真髄が見え隠れしています。

★麻布や武蔵のように全教科にその真髄がすべて反映している学校は稀です。

★この両校は、思考コードのB3やC軸の問いが創られています。生徒が未来をどう形づくっていくのか、その問いの中に才能を開く仕掛けがあります。過去問を学びながら、その才能が花開きかけた状態で、入試に臨み、6年間で開花していくわけです。そして社会で実を結ぶのでしょう。落合陽一さんのように仮にうまくいかなくても、その中学入試の学びは、おそらく今の落合さんを生み出す要因の1つではありましょう。

★そのような学びを昨年私はトランジション教育と呼んできたわけです。

★そのトランジション教育について、shuTOMOで7回連続で書く機会を頂きました。全部で約5万字ですから、まだまだ語り足りないのですが、その過程で、このトランジション教育の根っこには、ドネラ・メドウズのミーム(文化遺伝子)があるなと感じました。

★すると、鴎友学園女子の今年の社会の入試問題(第1回)で、ドネラが中心になって執筆した「成長の限界」出版50年目にして、そのミームを継承するレポートが2つ世に出たのすが、そのうちの一つ「人間の安全保障についての特別レポート」を素材に問いを創発されていたのに遭遇しました。

★そんなわけで、ドネラ・プロジェクトが50年かけてしっかり潜在的に広がっていることを改めて感じた次第です。

★明日は、私は入試問題を<ノイタキュード>して見えてくる「ドネラ・プロジェクト型学校」という内生的成長を果たしている学校の1つのモデルをお二人に話してみようと思います。

参照①)GLICC Weekly EDU 第114回「2023年度中学入試を振り返る①~ノイタキュード代表 北岡優希先生との対話」

参照②)GLICC Weekly EDU 第112回「2023年中学入試~出願状況から見えるコト」

 

 

 

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2023年首都圏中学入試動向(32)首都圏私立中高一貫校の中学入試 出願総数 女子校、男子校、共学校すべてで昨年を超える が意味するコト

★2023年2月8日現在(日能研倍率速報)首都圏私立中高一貫校の出願総数は、すべてのエリアの女子校、男子校、共学校で、昨年の出願数を超えました。もちろん、個別には超えないところもありましたが、それは隔年現象ということもあり、来年度はまた増える可能性大です。

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★エリア別には、東京は男子校が勢いがよく、神奈川は女子校が勢いがよく、埼玉は共学校が勢いがよいといえそうです。千葉・茨城は、特に茨城が、公立中高一貫校の大量立ち上げの時期が続き、その影響を受けた形ですが、最終的には全体としては死守したということでしょうか。

★東京の共学校は2013年以降、21世紀型教育などプログレッシブな教育を掲げ、偏差値による学校選び以外の基準を創出し、新タイプ入試市場を創出。大学入試における総合型選抜の先駆けともなり、アドバルーンをあげるだけではなく、実体経済も作り出したという評価は定着しつつあります。2020年に、2013年から開成が海外大学進学準備で成功しているところが注目を浴びる中、この21世紀型教育などのプログレッシブな教育を実施した学校からも、海外大学進学実績がドーンとでて、進路指導の転換ビジョンもリアルに示しました。

★しかしながら、そのような学校は東大や京大はまだまだです。10年経ち革新的教育草創期は成熟期に入りました。ここで停滞するか内生的成長を果たすかは、国内外の大学すべてに道を開くことでしょう。東京の共学校の次なる進化に期待しましょう。何せ、このスーパーロールモデルはすでに洗足学園が道を開いています。

★一方東京の男子校、神奈川の女子校、埼玉の共学校は、まずは手堅く東大を頂点とする国内大学の垂直的序列で優位に立っていました。しかし、さすがにパンデミック以降、この垂直的序列を保守するだけでは、グローバルな舞台で活躍している保護者は満足しなくなってきたというニーズ臨界点を見て取ったのでしょう。開成と海城はいちはやく、伝統に革新的な発想やプログラムを結合しました。その新結合をシュンペーターはイノベーションというのですが。そういう意味では、これらの学校は部分的にですが、イノベーションを起こしました。垂直的序列がある限り、そこを無視できないわけですから、そこを手堅く保守し、イノベーションも起こす。中学入試市場で、これ以上の魅力はないでしょう。

★東京の男子校でいえば、高輪がその象徴だったと思います。また同エリアの共学校ではやくも革新的教育で内生的飛躍を成し遂げつつあり、出願爆増しているのが工学院大学附属中学です。定員が105人なので、実数では目立たないのですが、ここ3年でその勢いは止まりません。大学進学実績も国内外で成果を上げ始めています。なんといっても女子の理系志望が増えているというのは、時代の精神とマッチングしているのでしょう。

★また、成城学園は、大正自由教育の拠点で、その意味では100年を超える内生的成長の持続可能性というイノベーションを続けている学校ですが、デューイに代表されるプログレッシブな教育を現代化し続け、その評判が持続可能的に続いています。そしてこの民主主義の危機の時代に、同窓生と大学と小中高が連携してグローバルな視野で探究プロジェクトを展開するという、独自の学びの環境デザインにチャレンジしています。成城学園ファンの心をつかむ無形資産をまた創りました。

★神奈川の女子校湘南白百合は、いま世界が必要としている痛みの共有とその解決の知恵と技術と寛容性を備える教育環境デザインを次々と創出し、東大のみならずハーバードや医学部に、ミッションを引き受けて突き進む女性を育成することが大評判になりました。毎年出願数は爆増。多角的な才能者を受け入れるアドミッションのイノベーションも起こし、成功しています。低迷するカトリック学校に勇気をあたえるだけではなく、神奈川の女子校の垂直的序列を水平的多様化にシフトし、神奈川の女子校すべてにエールを与えることになるのしょう。そして、それは聖セシリアも同様です。

★埼玉の栄東は、明快に東大とアクティブラーニングという伝統的進学志向と革新的教育をいちはやく統合し、埼玉の共学校のスーパーロールモデルになった功績は市場が大いに評価しています。埼玉エリアには帰国生が東京や千葉、神奈川に比べ少ないのですが、少ないながらも20人集めることができたら、さらなる飛躍へ向かうでしょう。この共学タイプは、千葉の渋谷教育学園幕張です。埼玉では栄東となるでしょう。東京、神奈川では、この共学タイプは実はまだないのです。東京の共学校は、このタイプに続くのか、さらに新たなタイプになるのか、まだまだ次なるチャンスがありますね。

★首都圏の私立中学に通う生徒は、全国の中学生人口の3%強です。この3%が、日本の教育の未来を創る先駆けにならざるを得ない日本の教育システムの問題があります。公立vs私立という明治以来続いている官学vs私学という学歴トラウマを制度的改革では間に合わないので、入試市場で学びの創造的破壊をしていくことによってシステム転換を図るダイナミズムに期待をかけましょう。

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2023年2月 8日 (水)

2023年首都圏中学入試動向(31)鴎友学園女子の社会の入試問題から映し出される教育の真髄

★鴎友学園女子の今年の社会の入試問題には感心させられました。昨年2月に国連開発計画(UNDP)は、パンデミック、ウクライナ、気候変動などの複雑多岐な問題に直面して脅かされる人間の安全保障の新たなアプローチに関して特別報告書を公開しました。これまでの国家どうしで解決しようとしてきたこの安全保障が、もはやNGOや民間企業、市民などのレベルでも考えていかなければならない時代にはいったことを痛感している私たちですが、そのことこそがまさにグローバルという意味であることを問い返すような問題を出題したのです。

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★もちろん、問いは、グローバルとは何かを問うわけではないのですが、一般にグローバル教育というのが英語教育や異文化交流や留学や海外大学進学準備という狭い領域で意識されがちなのに対し、グローバル教育を標榜してきた鴎友学園女子は、教養や見識に裏付けられた本質的なグローバル教育の真髄を世に問うような問題を出題したのです。

★問い自体も、感染症から人間を保護するために、薬品を届けるだけでは本当の意味での人間の安全保障にはならない。その理由を説明し、さらにどのような解決策を付け加えたらよいのか考えをしめしなさいというような趣旨の問いでした。主張とそれを示すエビデンスデータとそこから読み取れる主張をサポートする根拠を記述する問題です。主張と根拠だけでは終わらない三角ロジックまで要求しているという点で難度は高いですが、次の図をヒントに人間の安全保障がいかに多面的多角的なアプローチが必要かを考える本質的な良問だと思います。そして、どんな具体的なデータがありそこからどんな根拠を推理するのか探究の構えを入試問題を考えながら身に付けられる素晴らしい問題ですね。

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(2023年の鴎友学園女子の一回目の社会の入試問題から)

★この図を見るとすぐに了解できるように、2022年のスペシャルレポートは、SDGsも当然念頭にあります。したがって、この問題はSDGsにも関連する問題であり、SDGsウォッシュになりがちな昨今の学びに対し、同校は根源的なところからSDGsも生徒が捉える教育環境をデザインしていることを示唆している問題でもありましょう。

★2001年1月に創設された「人間の安全保障委員会」の共同議長に、緒方貞子国連難民高等弁務官(当時)とアマルティア・セン・ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ学長(当時)が就任しています。鴎友学園女子のグローバル教育の目線は、緒方さんやアマルティア・センと同じ目線なのでしょう。

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2023年2月 7日 (火)

2023年首都圏中学入試動向(30)ノイタキュード代表北岡優希さんの新しい中学入試動向分析

★ノイタキュード代表の北岡優希さんは、埼玉から始まった首都圏中学入試の取材を毎日のようにしています。その最も新しい情報について、GLICC Weekly EDU 第114回「2023年度中学入試を振り返る①~ノイタキュード代表 北岡優希先生との対話」で語ってくれました。今までのメディアで語られてきた切り口とは全く違い、目からうろこの連続です。

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★withコロナから少しだけアフターコロナに動き始めた今回の中学入試。栄東と大妻中野の入試風景の写真を比較して、そこから何が読みとれるか興味深い対話がありました。

★Web申し込みが当たり前になったのだが、ある落とし穴があったという今後の受験生にとって貴重なお話もありました。

★受験者数は過去最大。しかし・・・と見逃しがちな話もありました。

★いくつかの学校は志願者爆増!しかし・・・とスリリングな話も。

★とにかく、北岡さんはノイタキュードの代表です。教育を他の人とは真逆(別角度)から見るのをモットーとしています。educationを後ろから読んでみてください。noitacude、そう!ノイタキュードなんです。

このモットーに従って、中学入試をみていくと、これまた新しい見方に行き着きます。ぜひご視聴ください。

★今週は、後編で、北岡さんと中学入試問題について対話します。新たな気づきにご期待ください。

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2023年首都圏中学入試動向(29)首都圏私立中学入試の出願総数から

★2月6日現在の首都圏中学入試の出願総数(日能研倍率速報による)をみると、やはり同エリアの中学受験者数は昨年より増えていると推理できます。千葉・茨城の総数は少し減っていますが、おそらくこれは、たとえば東京の私立中学に通う生徒の5分の1弱が千葉・茨城の私立中学通学生であることを考慮すると、茨城県の公立中高一貫校の数の多さは同エリアの私学に影響を与えるのは当然です。もっとも、来年あたりから、首都圏全体の公立中高一貫校の志願者の数も落ち着いてくるでしょう。茨城の公立中高一貫校はまだ草創期的な雰囲気がありますが、それも来年からは首都圏全体の公立中高一貫校の雰囲気に吸収されていくと思います。

★そうなると、千葉・茨城の私立中学入試の市場は増えていくでしょう。ただ、定員ということに限れば、今も順調な学校が増えているでしょう。

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★東京は男子校の勢いがやはりよかったという結果になっていると思います。東京の男子校の最先端を走っていたのは聖学院です。今もそうですが、他の男子校も、伝統を基調にしながらも、何かしら新しい学びの創意工夫をしています。成熟期に入っている男子校が内生的成長を仕掛けてきたわけです。昨年まで草創期的な雰囲気の共学校がいったん成熟期にはいり、落ち着いたタイミングで、男子校が動き出していたのかもしれません。今後の共学校のさらなる内生的成長を楽しみです。

★神奈川県は、湘南白百合を筆頭に女子校が勢いがよいわけです。改革草創期的な雰囲気がある女子校が女子校市場を活性化させているのでしょう。

★しかし、全体を見れば、私立中学自身がどの学校も成熟期に入り、パッケージ教育や目玉商品教育、特効薬やカンフル剤的な教育の立ち上げではなく、教育の質の密度を高めていく教育プログラムが、各学校で創意工夫されてきた感があります。

★首都圏の私立学校で、思考力の前にまず知識が大事だという言い方はもはやなくなっているでしょう。ルーブリックなんていらんというのもないでしょう。一方通行的な講義でいいんだという学校もないでしょう。英語ではなく日本語がまず大事なんだという言い方もしないでしょう。英語さえよければなんとかなるという言い方もしないでしょう。

★新タイプ入試を露骨に否定する人も少なくなったでしょう。総合型選抜を受けている生徒を一般選抜受験から逃げているという学校も少なくなっているでしょう。

★このような物言いは、偏向主義的な根をもっていて、市場の活性化を妨げるネガティブ発想です。そもそも公平性に欠けるものの見方考え方ですね。

★このような偏向主義がはびこっているうちは、狂信的な受験雰囲気をつくるものですが、もはやそのような雰囲気は消失しつつあります。もちろん、まだまだそうではないという方もいますが、そうならないように多くの塾の先生方がカウンセリングしているのも現状です。

★逆に言えば、そのようなケアやカウンセリングが行われない塾や学校は危ないと言えるのです。合理的配慮という支援は、一般の生徒にも行われなければならりません。それは国民の責務と法律でも文言化されています。

★この合理的配慮という側面から見れば、垂直的序列により、心を痛める生徒が出てくることは、そのシステムが合理的配慮を欠いていることになるわけですが、まだまだ日本全体の教育の世界ではその認識が弱いですね。

★ところが私立中学の教育は、そのようなケアやカウンセリングが実行されるようになっているのです。授業の中に対話やディスカッションを活用するのは、オープンダイアローグ的なカウンセリングのバリエーションでもあると考えることもできます。

★これはどういうことかというと、教師が心理的安全性を設定して、そこで生徒が発想の自由を楽しむという教育ではなく、混迷の状況の中で、あるいは混迷な状況に直面した時に、生徒が自らそして仲間と協働して心理的安心安全な足場づくりをして、創造的な思考ができる状況文脈を張り巡らし、その混迷な状況を解消していく利他主義的な行動をとれる人材づくりをするということです。これが内生的成長の真骨頂なのです。

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2023年2月 6日 (月)

2023年首都圏中学入試動向(28)工学院中学入試 最終試験も90名が挑戦 学校の内生的飛躍が証明

★本日、工学院大学附属中学校の最終入試に90名の受験生がチャレンジしました。同校の定員は105名だというのに、最終試験で90名というのは凄いことです。同校の教務主任田中歩先生から、身が引き締まる思いですというメールが届きました。すでに手続きも前年を超える速度で伸びているそうです。

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★このような良好な事態が起きたのは、2013年から21世紀型教育推進校として革新的な教育の草創期を経て、2020年ころから成熟期に入った同校が、いよいよ内生的成長、いや内生的飛躍が成し遂げられているからでしょう。

★内生的飛躍とは、思考コードではC3領域の授業やプロジェクトが学内に完全に浸透しているということを示唆しています。C3が広がるには、学習者中心主義を支える共感的コミュニケーションが行われていて、1人ひとりが輝きつつもチームプレーがうまくいく学習する組織になっているということです。

具体的には、同校サイトの日々更新されるブログをご覧ください。2月24日(金)GWEで、教頭の奥津先生と教務主任の歩先生が出演し、今年の工学院の中学入試について詳しくトークしてくださいます。ご期待ください!

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2023年2月 5日 (日)

2023年首都圏中学入試動向(27)成熟期を迎えた多くの私立中高一貫校の内生的成長が目立ったのではないか

★今年は、首都圏の私立中学受験生は、昨年より増えたようです。いずれ各中学受験シンクタンクが詳細を発表するでしょう。この時期、私は、今後の教育を考えるためのヒントを探すべく、出願動向と学校の魅力の相関があるかどうか独断と偏見で眺めているのですが、2013年から立ち上がった21世紀型教育校もその多くは2020年あたりに一つの成果を出し、成熟期にはいりました。それ以前からたとえば男女御三家と呼ばれている学校は、久しい間成熟期を持続可能にしてきたわけですから、21世紀型教育推進校のような新興の学校も成熟期にはいると、多くの私立中高一貫校がその具体的状況は違うものの全体として成熟期に入っていると言えそうです。

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★したがって、私立中学入試市場は、成熟市場として成長しているといえそうです。学校の成長サイクルは、上記のような図で表せると思います。生徒募集が苦境に立たされ衰退期を超えても、蘇生戦略にでるか清算処理にでるかによって、学校の運命は変わります。

★ここ数年新興の学校の中には、すでに衰退期にはいっていた学校が今では難関校になるほど蘇生しているというケースがありました。

★今年もそのような学校はあります。ある意味蘇生後、このような学校は改革草創期に突入しますから、飛躍的成長をするか失速するかどちらかです。

★改革草創期の学校が飛躍的成長をずっと続けることはできません。資金や外部コンサルタントを投入して飛躍した後、実は、内部の教員による内生的成長を仕掛けないと成熟期は停滞し、戦略不全に陥りかねません。

★今年は、中学受験者が増えたということは、多くの学校が成熟期に入り、内生的成長を仕掛けたということでしょう。

★内生的成長とは、学内が学習する組織になることです。授業が学習者中心型になることです。学際的な探究が教科の授業の中にも浸透していることです。保守主義の消失、情報隠蔽体質の無化、偏向主義から多様性、無気力から効果的他者主義などの柔軟でチャレンジングな学習する組織に変容し続けることです。

★従来の名門中学という一握りの学校を頂点とする垂直的序列を破壊し、すべての私立中学が成熟期に入った後、内生的成長を果たすのが、私学が日本の教育の多様な問題や壁を撤廃していくことになるでしょう。そういう時代が到来したのです。2023年は各私学の内生的成長が一斉に花開くエポックなのかもしれません。

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2023年首都圏中学入試動向(26)首都圏模試センター 栄光の算数の入試問題の思考コード分析 栄光の頭脳と感性が見える

首都圏模試センターは。今年の栄光学園の算数の入試問題の思考コード分析を公開しています。思考コード分析をすることにより、分野の割合とか難易度分布以外に読み取れるものがあります。つまり思考コードを活用しないとそれはできないのです。それは何かというと、その学校の先生が思考の過程のタイプとそこにアプローチする時の感性というか感情が見え隠れしてくるのです。もちろん、定量的というより定性的な分析視点がはいってくるので、同センターの教務陣のように長年思考コード分析に熟達していないとなかなか難しいかもしれません。

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詳しくは、同センターのサイトを読んで欲しいのですが、リード文だけでも栄光学園の教師の頭脳と感性を感じ取れます。そして、この問題をクリアする受験生の頭脳と感性も教師とシンクロするわけです。アドミッションポリシーとかいうことなのですが、それにしても入学する際にすでに栄光学園独自の診断評価がなされているわけです。緻密ですね。

★A軸問題が少ないので、公式や解き方を当てはめて解いていく演繹的推理は、基本的なことができればあとは入学してからという教師陣の感性を感じますね。

★そして、具体的状況の変化を丁寧に追いながら最終的に一般化していく思考のタイプは、B軸思考の1つの特徴ですから、これが90%以上出題ということは、一般の受験生には、なるほど「重たい問題」です。

★しかし、この問題をクリアして入学している栄光学園の生徒は、帰納的推理という理数的なタフなGRIT精神に優れているということでしょう。そのことは経験的に了解できます。

★この思考過程のタイプは、栄光の場合は他教科でも同様です。

★そして、B3問題においては、実は解き方の見通しを立てる際に、いろいろ迷ったり試行錯誤しようというよりは、多角的に推理してほぼ見通しが立つ仮説的推理を行わないと時間内に解くのは無理でしょう。この仮説的推理はC軸思考過程の特徴の一つです。

★ただ、入試問題の解答を作成する場合は、そこは織り込み済みというか前提として処理されるので、創造的な数学的発想は隠れてしまっています。

★栄光の問題は、ふだん取り組むとき、この数学的発想を楽しむトレーニングが必要ですね。

★そして、これこそが探究の肝であることも。A1・2・3,B1・2では、調べ学習とか課題提示型小論文をクリアすることはできますが、探究には飛躍できないのです。

★ですから、中学に入学しても、教師の頭脳と感性が栄光の教師陣のような頭脳と感性にないと、高校卒業時でも探究という時間はやってはいるけれど、その中身は調べ学習で終わるということはしばしばです。

★探究で大事なことは、思考過程のタイプがC軸思考でないとなかなかうまくいかないということですね。しかし、もし教師陣がA1・A2・A3・B1・B2の思考コード眼鏡しか装着していないと、数学的発想の必要性などそもそも見えないのです。

★偏差値にかかわりなく、新タイプ入試を行っている学校は、教師陣はC軸眼鏡を持っているけれど、受験生がその眼鏡を装着していない場合があり、一般選抜では、どうしても思考コードの領域が狭いところで問題を出さざるを得ません。そこで、新タイプ入試です。C軸思考を展開できる素養があるかどうかをみるわけです。今持っていなくても、6年間で持てるかどうかを判断するわけですね。

★このような学校は、事前に対策セミナーを数回やりますから、実はそれに参加することにより、C軸眼鏡を装着するようになるわけです。経営の倫理と教育の論理のバランス上、そのような戦略を立てているのです。

★こんなことまで、了解できるのが首都圏模試センターの思考コード分析です。日本の将来に目を向けると、ここに希望がすでにあるのは了解できると思います。

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2023年2月 4日 (土)

2023年首都圏中学入試動向(25)八雲学園 はやくも21世紀型名門中学の成熟期に突入。

★私立中高一貫校は創立時や改革期は、草創期なので、出願数などガンと跳ね上がることが多いのは、周知の事実です。大事なことは、成熟期に入ってからその持続可能な教育環境デザインを新たに仕掛けていくことがポイントです。八雲学園は21世紀型教育推進校として、共学化し5年目を迎え、はやくも成熟期に突入しています。この成熟期にはいる仕掛けは、2020年から始まりました。中学入試市場における競争からラウンドスクエア加盟校として世界の学校となった八雲学園の破格の教育に協賛してくれる受験生・保護者を獲得するという戦略です。

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(昨年オックスフォードを中心に国際会議を行ったラウンドスクエア。八雲学園も加盟校として参加)

★それは、ラウンドスクエアという世界のエスタブリッシュ私立学校コミュニティの一員として世界の学校として教育展開していることを丁寧に少人数申込制の説明会を定期的に開いていくという戦略です。毎回すぐに満席になっています。

★このことが何を意味しているかは、まだ受験市場ではあまり知られていません。2030年ころか始まる中学入試市場の激変に備えているのです。

★2030年は、高度経済成長の名残で空白の経済を久しく続けた日本の終焉です。日本がなくなるのではなく、新たな日本への変貌がようやく始まる年です。当然市場のあり方は変わります。テレビもそうですが、視聴率を競う時代ではないのです。

★市場というB2Bではなく、C2Cの時代になります。教育においてはBが存在しなくなるわけです。

★つまり教育産業の終焉です。もちろん。教育産業がなくなるわけではないのです。今までのように垂直的序列という階層構造を作ることが人間の合理的配慮を欠く人権侵害として提訴されていきます。それに対し、教育産業は理不尽な差別をしないSDGsを全うする教育産業を形成していきます。

★その産業はしかし、組織ではなく、コミュニティになり、個人が組織と同じ機能を果たすようになります。AIの力は凄まじいのです。

★そのような学習塾はすでに生まれ始めています。

★本間はまた何を言っているのかわからんというでしょう。web3.0や2050ムーンショット構想から考えてみてください。ネットを調べれば、すぐにわかります。そこから考えるとそうなるのです。

★八雲の動きに気づいていない方は、次のサイトを見て、判断してみてください。八雲学園のサイト内のRound Squareレポートです。そして、行きたいと思ったら、明日の≪未来発見≫入試は、本日2月 4日(土)23:59までweb出願可能です。

★毎年、多くの受験生が、こんな凄い学校があるなんて知りませんでしたと受験します。そりゃそうです。みなさんが見ている名門中学は20世紀のものです。八雲学園は21世紀型名門中学なのですから。

参照動画)GLICC Weekly EDU 第108回「八雲学園ーオックスフォードでのRS国際会議」

 

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2023年首都圏中学入試動向(24)かえつ有明 人気高め安定の意味 成熟期に突入した21世紀型名門中学の持続可能な教育戦略の時代

★かえつ有明中・高等学校(以降「かえつ有明」)の広報主任内山誠至先生から教育関係者の方々に2023年の同校入試情報の速報が送られています。その詳細のデータから出願総数と実受験者数の推移データを次のグラフのように加工しました。人気は高め安定していると言えましょう。

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★今後は、この安定を持続するのか、実受験者数に対し出願総数を3倍近くに持っていくのかは、広報戦術ではなく学校の教育力の見直しにかかっています。

★昨日のGWEで鈴木さんは、その兆しが新しい思考力入試への移行に現れているのではないかということでした。

★かえつ有明と言えば、コンフォートゾーンをまず形成するということで有名です。心理的安全性を確保するからこそ、自由に対話ができ、自由な発想が生まれてくるわけです。

★それで十分ですが、国際生が満足するには、クリエイティブテンションも必要です。パニックにならないように相互セルフマネジメントは必要ですが、それがコンフォートゾーンだけで調整していると学校雰囲気がプラトー状態になります。

★もちろんそうならないように学内では議論されていることでしょう。

★学校進化論的には、2016年の苦しい時期を乗り越える改革草創期の時期は2020年くらいで収まり、今は成熟期です。これを持続可能にする段階にはいったわけです。

★今のままでいいと思った瞬間に、学校進化論的には、衰退期にはいり、右往左往してどうにもあならなくなり死滅期にはいります。

★かえつ有明は、今までは草創期のいろいろな仕掛けが注目されたわけですが、今後は成熟期の持続可能な仕掛けが注目されるでしょう。そして、これは実は、21世紀型教育先進校すべてに言えることである。

★つまり、かえつ有明は、同時期に多くの学校が21世紀型教育推進校になったわけですから、同じく一斉に成熟期に突入したのです。それが2023年のもう一つの潮流です。成熟期に入った21世紀型教育校の新たな教育環境デザインのあり方が注目される時代です。かえつ有明はそのロールモデルの1つとなるでしょう。

★21世紀型名門中学の持続可能な教育戦略が話題になる時代の到来です。

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2023年首都圏中学入試動向(23)筑駒の詩 どこか傾向が変わる?

★昨日実施された筑駒の中学入試。いつも国語の問題でどんな詩を出題するのか注目しています。なぜなら、詩という情報量が少ない言葉にたいして問われるその問いは、受験生それぞれが違うイメージを表現する問いだからです。つまり、思考コードでいえば、批判・創造のC軸の問題が出題されるわけです。

★今回はクマのパディントンの翻訳者でもある木村涼さんの詩「花時計」でした。問いは、詩だから当然なのですが、メタファー(隠喩)の表現部の内容を説明する問題で、それは例年そうなのです。

★たしかにかなり自由度が高いのですが、それでも身近な周りのものをモチーフにしたものが多かったり、個人的な人生観を想い浮かべるものだったり、イメージの広がりもある枠が存在していました。もちろん、全く違う発想も、詩ですからできます。かつて塾の教室で生徒とい解いていた時、麻布ー筑駒、開成ー筑駒という併願組は、想いきっり枠を外してきたものです。でも、彼らは、入試本番ではその枠組みの中で書いていたのです。駒東ー筑駒は、準備段階でも丁寧に枠組みの中で書いていました。彼らの中で、当然遊びと学びの違いと共通点の議論が巻き起こるのですが、それはそれでクリエイティブでした。もちろんもう30年以上前の話です。

★その当時は1クラスの中から麻布や駒東が10人以上、開成、筑駒が2人くらい合格する時代でしたから、何か特徴が見えてきたものです。

★しかし、それらの学校の入試傾向がほとんど変わっていないというのが、凄いですね。入試問題は学校の顔と言われていますが、ある意味、入試問題はその学校の建学の精神をベースにした知性と感性の塊だと思います。ですから、傾向がそれほど変わらないというのは当たり前であると同時に私学の魂の凄まじさですね。

★今年の筑駒の問題の話に戻ります。今回は、メタファーの表現部からイメージする範囲は、個人的な話というより社会課題的な問題に広がるので、受験生の創造志向性は多様です。枠組みがかなり広いというのが今までのと少し違うなあと。テーマが違うと言えばそれまでなのですが、灘の詩と同じように社会派と言っていよいのか詩のコミュニティのことはよくわからないのですが、自然と人間あるいは自然と社会システムのジレンマを柔らかく表現しているメタファーをさらりと問うているのが形式は変わらないけれど、内容というかその質料が違うなあと。

★従来は、言語と言語の関係の枠内でした。一方今回、言語と自然と社会の関係性に気づくかどうか感性を明快に問うているのがおもしろかったですね。もちろん、受験生はそんなことを考えず、受験準備の経験値をそのままぶつければよいので、そんなことはどうでもよいのですが。

★ただ、灘が入試問題に社会科がないので、詩で社会と人間の関係という社会科の学びの本質的部分を問うという明快な方針が(といってもこれも30年以上前に当時の日置先生にインタビューした時の話ですが。とはいえ、傾向が変わらないということは、日置先生の精神は受け継がれているのでしょう)があるように、詩の出題は、学びの本質のその学校のコンセプトレンズの輪郭が見えるものです。

★麻布が物語しか出題しないというのも実は同じようななんらかのコンセプトレンスがあるのです。

★文学というのは、おそらく社会と人間と自然のパラドクスやダブルバインド、トレードオフなどの嵐の中で、何が起こっているのかその予兆が、しかも作者の意図をさらに超えて潜んでいるものです。それをそれぞれの読み手の創造力や想像力で暗号解読さながら紐解いていくのがスリリングなわけですね。これも30年以上前の話ですが、カリタスの森本先生の国語の授業のコンセプトをお聴きした時の話でした。

★かつて東大の言語学の教授だった池上嘉彦先生も、本間くん論理論理って、そんなことを考えさせるテキストや教材はいっぱいあるじゃないか、想像力を開発するテキスト作成や授業開発をやってくださいと言われたのもずっと心の中で響き続けています。思考コードにC軸を追加したのも、先生のその言葉を反映させているつもりなのです。そのインタビューは池上先生の最終講義が行われる年でした。

★池上先生の最終講義のその日同じ時間に、別の教室で廣松渉先生の最終講義も行われていました。私が法哲学を研究していた時、要素還元主義から関係総体主義へというパラダイム転換のコンセプトレンズを装着するようになった影響を強く与えてくれたのが廣松先生でした。当時河合塾も廣松先生を支援していたので、一度開成の橋本先生が河合塾の開発部隊に引き合わせて頂いたこともありました。

★そんなこともあって、どちらの最終講義に参加するのか一瞬迷いましたが、小学校3年のテキストを想像力を開発することを目的にとして作る構想などを組み立てようとしていたので、池上先生の最終講義にでました。すると、文化人類学や民俗学と言語学の接点をシンデレラの日本の民話に遷移したルーツをたどるケース(もちろん仮説だとおしゃっていました)で講義してくださったのです。30年以上前の話ですが、そのころから、クリエイティブラーニングの構想を立ち上げていたのです。こちらもしつこいですね(汗)。

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2023年2月 3日 (金)

2023年首都圏中学入試動向(22)成城学園 2回目の入試も出願数前年対比100%超える

★2023年2月2日現在の日能研倍率速報によると、成城学園の中学入試の出願数は1回目も2回目も昨年を上回っています。このことの重要性は何でしょう。それは、現在の新学習指導要領が意図してはいるもののなかなか現場では難しい学習者中心の体験ベースの思考型教育を実践している成城学園に多くの受験生が魅了されているということです。

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★昨年上智大学の上野正道教授による上記の写真の本が出版されました。まさに大正自由教育の拠点である成城学園の教育の核心と重なる本でした。21世紀型教育の1つの流れに、デューイ・ルネサンスがあることを、成城学園の人気は示唆しているのでしょう。

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★また、成城学園は男子にも女子にも人気があることも上記の表からわかります。2023年の共学人気の特徴も示しています。

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2023年首都圏中学入試動向(21)2月1日 湘南白百合 破格の人気

★中学入試が始まってからあっという間に3日目に進んでいます。さて、2月1日の神奈川エリアの女子校のん総出願数の前年対比は、104.1%。やはり女子校は勢いがあります。そんな中で湘南白百合の人気は破格ともいうべき勢いです。

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★そして2月2日、4教科入試も英語資格入試も昨年の出願総数を超えました。特に4教科入試の出願数は、これまた破格でした。2月2日の神奈川県の女子校において、前年対比100%を超える学校で、出願数の多い10位まで出してみました。

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★ここ一年湘南白百合をウォッチしてきましたが、やはり同校の愛ある教育環境デザインの豊かさが多くの受験生に伝わっていると確信を得ました。

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2023年2月 2日 (木)

2023年首都圏中学入試動向(20)駒東の社会 探究的かつ学際的問い作り

★今年の駒東の社会の入試問題は、歴史は戦争や紛争の歴史であったという仮説から出発して、時代を超えて様々な戦争や紛争の起こった理由をくし刺しにしていく問いの連鎖でした。

★核問題については、核の矛盾の上の平和をどう考えるのか論述する問題も出題されました。

★武器の神聖さと恐怖の矛盾なんてのは文化人類的な問いの立て方だし、紛争も戦争も結局市民の不満をどうコントロールするかという点で共通していたりと駒東の歴史観の面目躍如といった問題でした。

★このような批判的・創造的思考に中学受験生は挑戦してきたしこれからも挑戦していきます。

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2023年首都圏中学入試動向(19)工学院2月1日の受験率が高い。特に女子の受験率は100%。

★昨日から東京・神奈川エリアの中学入試がスタートしています。今年は男子校と女子校の勢いがよく、共学校は男子と女子の両方に人気があるところが勢いがよいという仮説を立てています。それで、工学院の教務主任田中歩先生から、その仮説はうちの場合にはあてはまりますと連絡を頂きました。

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(入試のシーズンにもかかわらず、いや、だからこそ新しいプロジェクトが生まれている工学院)

★昨日の一回目午前の入試の受験率は96%を超えていたそうです。特に女子の受験率は、すべてのタイプの入試で100%だったということです。

★女子の出願数が増えているというのも驚きですが、その女子の受験生は、工学院を第一に志向しているということでしょう。

★勢いがあるときだからこそ、全く新しいプロジェクトが立ちあがっています。国語科の臼井先生が呼びかけたら、チャレンジすることがまず楽しいと生徒が参加してきたようです。

★プロジェクトは足場づくりが大事なのですが、その足場が支えられる基盤が必要です。工学院にはこの基盤があります。これは、なかなか得難いもので、世の先生方が探究をやりたくてもなかなかうまくいかないというのは、この足場の基盤がないからです。

★工学院にはこの基盤があるわけですが、受験生は学校説明会などで、ここからだったら自分の未来を創ることができると強く共感するのでしょう。

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2023年2月 1日 (水)

2023年首都圏中学入試動向(18)今年も麻布の社会は傑出!

★中学入試問題と言えば、麻布。今年も社会は最終問題にいたる考える過程の問いの配置が素敵でした。探究のモデルでもありましょう。

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★社会問題とはそもそも公共的な関係性が崩れているところにあるわけです。したがって、社会課題を解決するには、自己責任にするのではなく公共的な関係性をいかに回復するかにあるわけでしょう。

★個人で抱えなければならにように見える問題も多くの人が多角的なアプローチで支え合うことはできるはずだという仮説を立てることになる問いを配列していますね。

★そして、君だったらそのような公共的な関係性をどう創っていくのか?具体的な例を挙げるケーススタディーの問題が最終問題です。

★SDGsの社会課題は、たいていこのようなアプローチですから、受験生にとっては未知の問題というわけではないですが、コモンズの悲劇をコモンズのwell-beingに転換するのは、やはり、そう簡単ではないし、人間にとってとても大事な視座です。

★中学受験生が学んでいることは、このような人間として何が大切で何ができるのか、そして君はいかにして生きるのかを問う問題を学んでいるのです。偏差値とか垂直的序列とか、そもそも公共的な関係性を分断するような受験現象に対し、入試問題でクリティカルに投げかけているのです。

★現代の教育はこの問題をどう捉え返すのでしょうか。学校、塾、家庭、企業、NPO,大学、官僚、政府。。。どうしますか?もちろん、私も考えます。

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2023年首都圏中学入試動向(17)順天 前年の出願総数を超えるだけではなく、新たな潮流生まれる

★出願倍率速報(首都圏模試センター2023年2月1日現在)によると、順天の出願総数の前年対比は102%。最終的にはもっと増えるでしょう。

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★しかも、もっと大事な潮流は、おそらく女子受験生が増えていることでしょう。

★Sクラス(サイエンス)、Eクラス(英語)、特進クラス(超進学)の3つと、グローバルウイークに代表される大学レベルの講座など実に明快な教育環境デザインを構築しています。

★女子生徒はEクラス志望傾向と思われがちですが、今の時代は女子の理系志向が増えています。それにプレゼン能力の高い傾向にある女子生徒は、総合型選抜や学校推薦型入試を活用できる探究型の授業がベースの順天は、理想的なのです。多様な進路が女子に受け入れられたのだと思います。

★男子にも女子にも人気がある共学校として確固たる座標軸を確立したのだと思います。

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2023年首都圏中学入試動向(16)2月1日東京は男子校出願数増加か

★本日東京では中学入試が行われていますが、本日2月1日の男子校の出願数が前年対比で約110%です(日能研倍率速報2023年1月31日現在)。女子は約101%。共学校が約98%です。全体では約103%です。

★女子校が復活しているのは、女子の未来は、グローバル、DX、医療関連、バイオなどの分野でしっかり専門性を身に付けるかどうかにかかっているという世の中の動きが反映しているのかもしれません。

★共学校に女子がなだれ込んでいるのもそうでしょう。

★その分、男子は共学校から男子校にややシフトしているのかもしれません。

★共学校で、男子にも女子にも人気がある学校を探すと、人気の秘密や魅力の秘密のヒントが見つかるかもしれません。

★2023年の中学入試の流れは、男子校、女子校シングルスクールの復権と男子にも女子にも人気がある共学校が人気ということになるかもしれません。

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2023年首都圏中学入試動向(15)2月1日、東京・神奈川の中学入試始まる。灘中の詩の問題 中学受験生に贈る言葉

★本日2月1日、東京・千葉エリアの一般受験生対象の中学入試始まる。各情報シンクタンクは、今年も受験生は増えると予測しています。本日の夜即日発表によって、明日からの併願が動きます。寒暖差が激しかったり、2日、3日はまた寒い日が続くという予報が出ています。防寒対策とインフルなどの対策をして頑張って欲しいと思います。世間は中学受験生に対し温かい目もその逆の目も注ぎますが、一足先に実施された灘の2日目の国語の詩を読んで欲しいと思います。目からウロコだと思います。

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(世界を変える教育を創設した私学人たち)

★その詩は、秋村宏さんの「あなたに」(詩集「生きものたち」所収)です。第四〇回壺井繁治賞 秋村宏詩集『生きものたち』のサイトから読むことができます。

★詩人が年とって、カドがとれてしまったがにもかかわらずという自己内省の詩です。若者の特徴である尖ったマインドをうらやみつつも、その物質主義的価値観を追究する姿勢に批判の眼を向けつつ、その価値観を転倒させるエネルギーがあることも若者の特権なのだと。

★中学受験生は、このような詩を学びつつ本日を迎えているわけです。

★夢と希望とwell-beingのマインドが微笑み呼びかけ続けているのを忘れないように。多様な凄惨な社会の問題が溢れているいまここ。そこで自分は何ができるのか考えて行動してほしいと。

★その生きる意味を考える批判的精神を大事にねと。カドがとれたとはいえ、自分自身もまだまだ「憤りに満ちた世界を変えること」はできるはずだと。「あなたに」というのは、中学受験生のことであり、中学受験生が生きる意味を考える際の正しき理想や信念や基準だったりするのでしょう。

★中学受験について語る時、生徒が何を学んできたのか、何を学び続けるのか、入試問題にそのヒントはあります。今年も「憤りに満ちた世界を変えること」を深く考える問題が続々出題されるでしょう。

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