★パウロの修学旅行3日目、先生方の周りから生徒がいない瞬間がありました。ハウステンボスのエリアでの話です。生徒たちは、ヨーロッパの街並みを外国人ファシリテーターと英語で対話しながら新しい発見をシミュレーションするミッションフィールドに出かけたのです。ゲートに向かう生徒の後ろ姿を見守りながら送る先生方がそこに残ったときのシーンが次の写真です。
★2日目の長崎市のフィールドワークも生徒たちはチームで活動したのですが、いくつかのエリアに分けて、先生方は順番にエリア内を巡回していました。しかし、今回は心の眼差しで見守るステージにシフトしました。生徒の主体性と自由。そこに新しい気づきや発想は生まれます。旅は最終的にはアドベンチャーでというわけでしょう。
★偶然撮れた写真ですが、人間の存在を支える土壌とそこに命を与える海の豊かさ、そして旅行代理店の方やミッションフィールドのコーディネーター。今回のプロジェクトのミニコミュニティーがそこにあります。
★生徒1人ひとりのかけがえなのない存在。その存在を支えるには、いろいろな環境設定とそれをデザインする教師と外部の方々とのコミュニケーションが大切であることを示唆しているシーンですね。
★今回の修学旅行は、3つの糸が織りなされています。1つは幾つかのスケールの違う集団の活動の糸、2つめは個人が内省するチャンスの糸、3つめは外部の方や公共的エリアでの活動の糸。個人は少なくともこの3つの糸が織りなす環境デザインから分断されることはないのですが、もし分断されたならそこにはパニックが生まれます。
★そうならないようにマネジメントやデザインするのが教師の役割です。3つの糸がうまく生徒1人ひとりと循環すると、その1人ひとりの存在はウェルビーイングになるでしょう。
★教師は、生徒と内面の信頼関係ができるまでは、その距離はつかず離れずというより、かなり近い距離で調整していきますが、徐々に物理的距離は遠くなっていきます。その分、内面的な信頼関係はゆるぎないものになっていきます。
★そこに行き着くには、そう簡単なものではないのですが、それに挑戦するのが教師です。もちろんいつも順風満帆ではありません。苦悩もしますが、逃げることはしません。心を開いて対話をしていきます。すぐに生徒も心を開くときもあります。しかし、半年、1年かかる時もあります。
★今回の2年の修学旅行では、1年から積み上げてきた多様な環境デザインとそれぞれ違う環境の中での対話によって、内面の信頼関係がどこまでできたのが確認しながら、生徒を手放していく先生方。それが上記の写真のシーンです。ゲートに向かった生徒の後ろ姿が見えなくなってもしばらくそこに佇んでいる教師。一方校長はさっさと本部デスクに戻って行っているのですが、その後姿を見ながら、クールとホットの適度な感覚が生まれてくるのをしばし待っているかのようでした。
★先生方は、生徒の内面にマインドとアガペーとそれが生まれる息吹であるスピリットに目配り気配り気遣う日々です。そして、言葉で確認するだけではなく、生徒のプロジェクト活動のプロセスや生徒との対話、生徒の多様なプレゼンを見ながら、その内面がどこまで可視化できているのか観察し、傾聴するわけです。
★そこに自信や確信が降りてきたとき、ボランティアや冒険に送り出し、途中で困った時には合理的配慮というサポートにかけつけます。
★生徒は上記のサイクル図のように、いろいろな環境の中で、自ら考え判断し行動しますが、すべての環境でうまくいくわけではないのです。クラスでうまくいっていても、仲間とはうまくいかなかったり、学年になるとまた気持ちや発想や行動は微妙に変わります。それが社会や世界にでたときにもっと不安定になるかもしれません。
★大人だって新しい環境では、不安になるものです。
★かつて学校は国や企業を支える労働力養成の場であったと言われています。それはしかし、20世紀まで残響があったのです。21世紀になってからは、その見直しが続いています。今では、生徒1人ひとりの存在のウェルビーイングが生み出されてこそ、その尊さは守られるのだという考え方が広がっています。教育の機会均等だけでは、必ずしも生徒は幸せでなかったのは、歴史を振り返れば明らかでしょう。もちろん、それがなかった20世紀初頭に比べれば、圧倒的にマシでした。
★しかし、2024年は、マシ程度で済まされない時代なのです。
★パウロの試みは、完ぺきではありません。しかし、先生方は生徒1人ひとりの存在のウェルビーイングを生み出す努力を日々しているのは確かなのです。
★2024年の中学入試の行方を語るシリーズで高校だけでの勤務校の話をしたのは、勤務校は仲間の学校(みな中高一貫校なのです)のそれぞれの良さに学び、それを共有しシンクロしています。中高一貫校も高校段階が言うまでもなくあります。しかし、中学受験の情報の多くは、中学段階の情報なのです。中学入試は、中高一貫校がほとんどですから、高校の教育から見てみるのもたまにはよいのではないかと思ったからです。
★以上のようなことを書いているうちに、生徒たちは、ミッションフィールドを終え、先生方のもとに帰還しました。笑顔で。もちろんパウロの先生方も安どの笑顔を。
最近のコメント