2023年首都圏中学入試動向(12)首都圏模試センター はやくも渋谷教育学園幕張と東邦大東邦の算数を思考コード分析
★首都圏模試センターは、2023年度の渋谷教育学園幕張1回目と東邦大東邦前期の算数の中学入試問題を、思考コードによって分析。学校の教育の特徴はやはり入試問題でくっきりその輪郭を隈どることができそうです。
★上記の分析グラフをみると、はっきりと違いがでています。渋谷教育学園幕張は、B3問題を3割5分も出題しています。しかも年々B3の出題率が多くなっています。
★これはB3問題を重視している表れです。もしB3問題を多めに出さないと、同校が重視している複雑な論理を思考する問題を捨てても、他の問題をとれば、合格点はとれるということを意味してしまいます。
★3割5分出すということは、B3の問題をはじめから捨てる合格戦略は成り立たなくなります。とはいえ、同センターが「息つく間もない問題が並びますが、各大問の⑴は、ルールの理解に関する問題となるため、確実に得点しておきたいです。各大問の⑵以降、どこまでできたかがカギとなります。あくまでも予想ですが、大問1⑵、大問 2⑵、大問 4⑵、大問 5⑶を落としたとしても、およそ 6 割 5 分程度には達することができると考えられます」と書いているように、B3の問題を完璧に解けなくても合格可能というエッジを利かせた作問づくりになっています。今年の結果を見て、来年40%出題することになるかもしれません。
★そうすると、B3の問題を入試準備の段階で、丁寧に学ぶ必要があります。
★一方東邦大東邦では、B3の問題が出題されなくなりました。中途半端に出しても、受験戦略上、捨ててかかる可能性が大です。それであれば、B2までにとどめておいて、基本的な論理的思考がきっちりできる受験生に入って欲しいというメッセージでしょう。
★実は、大学入試のみならず、社会に出てからも、B3のようなハードな論理的な問題を解くシーンというのは実はあまりないのです。
★ただし、B3の問題に挑戦していなければ、B2までの問題を十分に解くことはできません。
★渋幕は、入試問題の準備とB3の学びを一致させたわけですが、東邦大東邦は、入試問題の準備と学びは違いがあるという設定でよいということでしょう。中高に入ってから学ぶということです。これに対して渋幕は、海外大学や東大を人生のステップとしてとらえていますから、ハイスペックな思考力をもった生徒が欲しいのでしょう。
★というのも、入試問題の解法としてB3の問題だったとしても、そのB3の問題を考える際に、実はC軸が必要になるのです。受験テクニック的な解法では、そのC軸である数学的発想法は前提で、解答集には書かれていないのです。
★しかし、東大の数学にあるように、ある解き方の見通しをたてるときに、今ままでの経験値を新しい問題に適用させる置換や変形の発想が必要になります。
★算数におけるB3問題とは実はC3思考が隠れているのです。一般的な受験勉強では目に見えない学びの領域を渋幕の先生は大事にしているのでしょう。
★その学びを先取りしているのが渋幕で、東邦大東邦は中学に入ってからそれはやろうということを暗に示していると言えます。ここらへんの違いは、どちらの学びがいいか悪いかではなく、生徒が進む進路に影響を受けると考えた方がよいかもしれません。
★演繹(デダクション)と帰納(インダクション)のロジックをベースにするのか、アブダクションまで要求するのか。それによって、生徒の進路の選び方は大きく違ってきます。その進路を支える学びを各学校はデザインするわけですから、学びの戦略がその影響を受けるのは自然でしょう。
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