2023年首都圏中学入試動向(01)1月10日埼玉入試出願者数増
★1月10日首都圏の中学入試は、埼玉から本格的にスタート。当日の出願者数(全36入試校)は、18, 328人で、前年対比101.9%(日能研倍率速報1月6日現在)。出願締め切り校は、まだ22%がゆえに、当日はもっと増えるでしょう。
★それにしても、1月10日の栄東の志願者は5000人を超える圧巻。高い大学合格実績とAL(アクティブラーニング)という学びの徹底。この2つのベクトルの合力がすっかり同校の特徴となり、この21世紀型の中高一貫校の教育は、埼玉エリアにおいてもロールモデルになりました。
★ALの徹底度の違いによって、その魅力の大きさも相関するようです。栄東は、各教科の授業においても、キャリアデザインにおいても、探究の時間においても、行事においても、国内外の研修旅行においても、およそあらゆる教育活動においてALはコアラーニングシステムになっています。
★ある意味、IBのコアラーニングの発想に近いかもしれません。とはいえ、教科とALはなかなか結合しないというのが、一般的な現状です。またALと大学合格実績が結合するというのもなかなか難しいのが普通です。
★しかし、上記の一覧に載っている学校は、なんらかの形でALを行っているのは確かでしょう。
★学習指導要領でも「主体的・対話的で深い学び」と「総合的な探究の時間」を行うことはマストですから、2025年までには、埼玉エリアは栄東モデルに接近することでしょう。開智グループは、IBのエッセンスをすでに共有しているし、昌平もIBコースを設けています。ますます、栄東モデルは浸透しますね。
★埼玉エリアは、帰国生入試がまだ盛り上がっていないので、グローバル教育よりALが目立つカリキュラム構造になっています。
★1月20日から中学入試が本格化する千葉エリアの私立中高一貫校は、逆に渋谷幕張が帰国生入試で牽引しています。東邦大東邦や市川も力を入れていますから、グローバル教育に力点を置いた21世紀型教育のカリキュラム構造になっていくのでしょう。
★東京・神奈川エリアは、ALやグローバル教育のバランスがいいんですね。というのもその両方を望む保護者が多いからです。もちろん、意識というより保護者がどのような仕事についているかだと思います。
★ALやグローバル教育より、東大を中心とする超難関大学や医療系大学の実績が大事だという保護者の仕事は、おそらく医者などそのほか国家資格を取得して仕事をしている家庭層だと思います。あるいはその仕事を望んでいるか。
★とはいえ、そこだけに特化して高い大学実績を出しているところは、実はかなり限られていて、今では特異点という様相を示しています。
★開成などは、グローバル教育というかグローバルな視野も大いに重視しています。たしかに東大合格実績は凄まじいですが、どうやらそれだけではないことは2013年以降明らかになっています。
★家庭のサバイバル意識の高さ、首都圏のサバイバル意識、日本のサバイバル意識、世界のサバイバル意識、それぞれ直接関係ないように思われますが、その意識をもって仕事をしているプレイヤーは確実に重なっています。経済的には、それは富の偏在だと批判する学者もいます。
★政治的には、リーダーを生む拠点づくりということをほのめかす見識者もいます。
★教育的には公平性に疑問を投げかける人もいます。しかし、私立学校の実存的問題解決には、善きリーダーシップを輩出する教育環境システム作りということになります。その善なる基準である建学の精神は、各学校によって表現は違いますが、みな一人一人の能力の開花とそれが社会貢献につながるという黄金律と親和性があります。
★そして、時代の精神は、この個別最適な学びと協働的な学びの一体化が求められているのは、パンデミック、ウクライナ、気候変動がもたらすクライシスが身近に迫っていることから、多くの人が気づいてもいます。
★この混迷の時代に、なぜ中学入試が魅力的なのか?一面的なものの見方をしているとバイアスの罠に陥ります。多面的に議論する必要がありますが、それは実はまだまだ不十分ですね。それがゆえ、2023年は、そこを多面的に議論する機会が生まれるような気がします。
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