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2023年1月

2023年1月31日 (火)

2023年首都圏中学入試動向(14)筑駒と工学院 もうひとつの工学院の人気の理由

★首都圏模試センターの出願倍率速報(2023年1月30日)によると、今年の筑駒の出願数の前年対比は、108.9%です。併願校としては、開成、駒東、麻布、海城①が多いはずなので、これらの学校の出願数の前年対比もみてみましょう。

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(2019年の筑駒乳牛風景)

   2023 2022 前年対比
筑駒 627 576 108.9%
開成 1289 1206 106.9%
駒東 611 565 108.1%
麻布 918 934 98.3%
海城 602 545 110.5% 

★開成、駒東も増えているので、その影響は大でしょう。麻布は横ばいなのですが、海城①が増えていますね。もしかしたら、海城の併願者も増えているのかもしれません。

★たしかに、これらの学校は教育産業によって、垂直的序列を生み出すことになってしまっていますが、学校自体の校風は、それと混同しない方がよいでしょう。これらの学校から正しいエリートが生まれてくれることは日本にとって大切です。

★ところで、工学院も好調なのですが、その人気は、前校長の平方先生がグローバル教育を拓き、現校長の中野先生がデジタルによるイノベーティブ教育、理系教育をさらに進化させているところにあると思います。

★しかし、1997年から10年校長を務めた城戸先生による偉業は大きいと思います。城戸校長は実は筑駒の副校長を定年退職してから工学院の校長に就任したのです。開成とか麻布がそうなように、これらの学校は、校長が退職して次の学校に就任したとき、その松明を新しい学校に継承するものです。

★城戸先生もそうでした。共学校にしたのも城戸校長でしたが、何より筑駒の校訓である「挑戦・創造・貢献」を工学院の新しい校訓と位置付けたのです。工学院には、私立大学で工学系の大学第一号という日本の工学に多大なる貢献をしています。その魂は今も中高に継承され、さらに筑駒のマインドも継承されています。そしてグローバルとICTと伝統と革新を統合しているわけです。

★私自身が教育研究所を創って私立学校研究家としてスタートした時期に、薫陶を受けたのが城戸先生で、工学院にはそのときの盟友岡部氏とよく訪れたものでした。

★その岡部氏は、今では、工学院の英語の教員です。知恵者なので、城戸先生がそのころから誘ったものですが、まさか本当にそうなるとは!驚きです。平方先生時代に21世紀型教育改革を行うというので、赴任したようです。きっと同じ英語科でもある教務主任の田中歩先生とよきシナジー効果を出しているでしょう。

★工学院の生徒が、「挑戦・創造・貢献」の大活躍をしているのは、同校のサイトを見れば明らかです。

 

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2023年1月30日 (月)

2023年首都圏中学入試動向(13)工学院 予想通り出願が増加中 その理由は?

昨年12月10日に、工学院の大学院生と高3生が、「八王子市民フォーラム・未来を語る ゼロカーボンシティの実現に向けて」でのパネルディスカッションに登壇し、脱炭素社会の実現に向けた意識の醸成に協力しました。中学1年から八王子プロジェクトというフィールドワークを行っていて、八王子のいろいろな産業について調べ、経済や理工系の学問に興味と関心を広げています。

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(写真は、同校サイトから)

★工学院のグローバル教育(ケンブリッジインターナショナルスクールやラウンドスクエアとの連携など)はもはや有名ですね。ですから経済や教育などの文科系の進学は目覚ましい実績をおあげています。そして今女子生徒が理系を志望するという時代の風が吹き、女子の理系志望者が工学院を目指すようになりました。

★特に工学院のフィールドワークは、社会課題を身近なところから結びつけて発見して解決していくデザイン思考などのPBLを行っています。自ずとSDGsに関係してきます。したがって、その課題解決には、デジタルや工学などの実践的なテクノロジーを実装したものを提案できるほどなのです。

★説明会などで在校生のその姿を見てしまった受験生は、俄然工学院となります。

★田中歩先生とそんな話を先日していたら、たしかに中学受験生は、同日比で昨年を、教頭奥津先生の予測シミュレーション通り増えているというのです。1月28日段階で、昨年1/31時点の実人数を超えたということです。

★すでに、総出願者数も、昨年を超えたようです。昨年は700名強だったのですが、今年の勢いでは、800を超えるのではないかと予想します。2020年400強→2021年500弱→2022年700強→2023年800強という出願総数の成長曲線を描くことでしょう。ちなみに、定員は105名です。

 

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2023年首都圏中学入試動向(12)首都圏模試センター はやくも渋谷教育学園幕張と東邦大東邦の算数を思考コード分析

首都圏模試センターは、2023年度の渋谷教育学園幕張1回目と東邦大東邦前期の算数の中学入試問題を、思考コードによって分析。学校の教育の特徴はやはり入試問題でくっきりその輪郭を隈どることができそうです。

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★上記の分析グラフをみると、はっきりと違いがでています。渋谷教育学園幕張は、B3問題を3割5分も出題しています。しかも年々B3の出題率が多くなっています。

★これはB3問題を重視している表れです。もしB3問題を多めに出さないと、同校が重視している複雑な論理を思考する問題を捨てても、他の問題をとれば、合格点はとれるということを意味してしまいます。

★3割5分出すということは、B3の問題をはじめから捨てる合格戦略は成り立たなくなります。とはいえ、同センターが「息つく間もない問題が並びますが、各大問の⑴は、ルールの理解に関する問題となるため、確実に得点しておきたいです。各大問の⑵以降、どこまでできたかがカギとなります。あくまでも予想ですが、大問1⑵、大問 2⑵、大問 4⑵、大問 5⑶を落としたとしても、およそ 6 割 5 分程度には達することができると考えられます」と書いているように、B3の問題を完璧に解けなくても合格可能というエッジを利かせた作問づくりになっています。今年の結果を見て、来年40%出題することになるかもしれません。

★そうすると、B3の問題を入試準備の段階で、丁寧に学ぶ必要があります。

★一方東邦大東邦では、B3の問題が出題されなくなりました。中途半端に出しても、受験戦略上、捨ててかかる可能性が大です。それであれば、B2までにとどめておいて、基本的な論理的思考がきっちりできる受験生に入って欲しいというメッセージでしょう。

★実は、大学入試のみならず、社会に出てからも、B3のようなハードな論理的な問題を解くシーンというのは実はあまりないのです。

★ただし、B3の問題に挑戦していなければ、B2までの問題を十分に解くことはできません。

★渋幕は、入試問題の準備とB3の学びを一致させたわけですが、東邦大東邦は、入試問題の準備と学びは違いがあるという設定でよいということでしょう。中高に入ってから学ぶということです。これに対して渋幕は、海外大学や東大を人生のステップとしてとらえていますから、ハイスペックな思考力をもった生徒が欲しいのでしょう。

★というのも、入試問題の解法としてB3の問題だったとしても、そのB3の問題を考える際に、実はC軸が必要になるのです。受験テクニック的な解法では、そのC軸である数学的発想法は前提で、解答集には書かれていないのです。

★しかし、東大の数学にあるように、ある解き方の見通しをたてるときに、今ままでの経験値を新しい問題に適用させる置換や変形の発想が必要になります。

★算数におけるB3問題とは実はC3思考が隠れているのです。一般的な受験勉強では目に見えない学びの領域を渋幕の先生は大事にしているのでしょう。

★その学びを先取りしているのが渋幕で、東邦大東邦は中学に入ってからそれはやろうということを暗に示していると言えます。ここらへんの違いは、どちらの学びがいいか悪いかではなく、生徒が進む進路に影響を受けると考えた方がよいかもしれません。

★演繹(デダクション)と帰納(インダクション)のロジックをベースにするのか、アブダクションまで要求するのか。それによって、生徒の進路の選び方は大きく違ってきます。その進路を支える学びを各学校はデザインするわけですから、学びの戦略がその影響を受けるのは自然でしょう。

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2023年1月28日 (土)

第113回GWE 星の杜 チェンジメーカーが生まれる教育環境デザイン

第113回GWEは、2023年から共学化、校名変更、特異点ともいうべき新しい教育カリキュラム及びプログラムを実施するという先進的な教育改革を果たす星の杜中学校高等学校(以降「星の杜」)の校長石塚千恵先生が出演されました。Zoomの背景が星の杜を包み込む美しい豊かな自然を写した写真でした。GWEを主宰する鈴木さんが、その美しい光景について尋ねると、1995年の1月17日に起こった阪神・淡路大震災のことに想いを馳せ学校全体で祈りをささげるその日に撮った写真ということでした。石塚先生は、星の杜の教育環境デザインの真髄をさりげなく語るところから始めたのです。

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(GLICC Weekly EDU 第113回「星の杜中学校高等学校~未来を変える星」)

★昨年グリーンスクール(インドネシアにある今世界が注目している学校です)に研修に行った中3生のポテンシャルの大きさやそのポテンシャルを顕在化するパワーに、生徒は自分たちが思っている以上に才能が豊かだというのを改めて知ったというストーリーは、4月からスタートする星の杜の改革が成功する予告編さながらでした。

★4月からPBLやデザイン思考が繰り広げられるということですが、すでに今の在校生が、それを主体的に広げ深めているわけです。

★改革をする学校の先生方のお話は、一般に改革スタート後、どのようなコースにするのか、そこでどんな授業が展開するのか、どんなグローバルでイノベーティブなプログラムを用意しているのかという未来の話が多いわけです。

★なぜなら、まだ実施していないから具体的な生徒の様子は今の段階では話せないのでということなのでしょう。

★ところが、石塚先生の話は、いまここですでにプレ改革がラディカルに実施されているという話です。4月からの星の杜は、このような生徒の活動がもっと深まっていくという期待が高まります。

★それにしても石塚先生の確信を持ったトークには感動です。たとえば、「ふつうの授業をやっていては、まったくみえていない生徒の未来の世界がある」とか「私がもっているものだけを提供していては、生徒の未来をサポートできない」というまさに核心を言い当てる確信を石塚先生はお持ちであることが伝わってきました。その気概が革新的な教育を導いているのだということでしょう。

★その革新的な教育をいかにプロデュースされているのか、多くの外部ディレクターと学内の先生方と生徒のみんさんが見事にコラボレーションされている状況があることも了解できます。これは、これまでの学校ではなかなかうまくできなかった組織デザインです。

★東京の私立中高一貫校は、相対的に先見性・先進性が特徴的で革新的なのですが、星の杜程先進的・革新的かといえば、それはなかなか難しいわけです。

★宇都宮に星の杜という教育の特異点が出現したというイメージを抱きました。具体的なお話は、ぜひご視聴ください。星の杜の先進的で革新的な教育モデルは、東京の私立中高一貫校選択の際に明快な基準になると思います。

 

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2023年1月27日 (金)

「主体的」を考えるヒントの1つか? ジルベール・シモンドンの新装版

★ここ数日、勤務校の通信制高校の先生方と対話していて、自分がカバーしてこなかった重要な視点を頂きました。最近接領域と合理的配慮はサポートのあり方として似ているけれど、合理的配慮は相互理解ではなく相互作用なのだと。勤務校の全日の面倒見がいいというあり方には、最近接領域を超える合理的配慮もあったにもかかわらず、それをも最近接発達領域として理解している自分がいたわけです。

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「個体化の哲学〈新装版〉: 形相と情報の概念を手がかりに (叢書・ウニベルシタス 1083)  2023/1/25」ジルベール・シモンドン (著), 藤井 千佳世 (監修, 編集), 近藤 和敬 (翻訳), その他 

★しかも、合理的配慮(翻訳があまりピンとこないのですが)は、教育用語ではなく、差別撤廃のための新しいコミュニケーションのあり方で、すでに国連が採択し、日本も批准していたわけです。法律にもなっていて、新たな権利を支える国民の責務でもあるわけです。

★勤務校の通信制高校の先生方は、合理的配慮をフッサールの哲学をベースに捉え直していますが、さらにメルロ・ポンティの発想もとり入れている先生もいて、深いのです。とはいえ、日常の学園生活で、哲学用語を使って教育を行っているわけではないのです。

★理念や理想としての合理的配慮ではなく、いまここでナチュラルに生成される合理的配慮なのです。

★そんなわけで、いろいろ調べていくと、メルロ・ポンティにも学んだフランスの哲学者ジルベール・シモンドンの著作に出会いました。

★改装版として、1月25日に出版されたばかりです。ネットを調べていると個体の捉え方を、原子論的実在論でもなく、質料形相論でもない新しい捉え方だとかいうわけです。シンギュラリティやアラグマティックなどという考え方と個性化作用がかかわっていると言われたりしています。

★読んでみないとわかりませんが、何せ分厚いし、kindle版がでていないので、字が小さくて困ります。

★ドゥルーズやガタリに影響を与えているのですから、物象化ではなく、関係性の話だろうとは思いますが、その生成過程に挑んでいるのでしょうから、知りたいという意欲がでてきたわけです。

★ふだん「主体的」とか「対話的」とか簡単に使っていますが、「合理的配慮」をめぐり、もっと多角的だし複雑系だし多次元な領域がそれぞれの背景には広がっています。

★勤務校の通信制の教師の実践を理解するには、先生方の身体図式を理解する必要があります。全日制にも困っている生徒はいます。そこを媒介にすると、通信制も全日制も連続することが明確にわかるはずです。

★今は、制度上境界線があります。その境界線を越えたとき、その制度そのものが壊れます。

★新しい教育改革。しかも意図せずナチュラルに変化が生まれてくるシンギュラリティが生まれてくるかもしれません。

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2023年首都圏中学入試動向(11)工学院 今年も昨年を超える出願数・実人数

★ここのところ八王子エリアだけではなく、埼玉や神奈川の各高校にファックスによる怪文書騒ぎ。勤務校の近隣の学校である工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)の教務主任田中歩先生と状況について何度か情報交換しました。一斉に警察の方々も各学校に足を運んでくれています。頭が下がります。その情報交換の際、今年の中学入試の出願状況についても話題になりました。今年も昨年を超える勢いだそうです。

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 (田中歩先生の工学院の教育の本質と教職員の柔らかくタフな教育デザイン力についての語りがすてきです。GLICC Weekly EDU 第101回「工学院大学附属中学校・高等学校ー世界の学校になる。Becoming a School of the World」)

★出願数のみならず実人数も、昨年同日の比較で、日々増えているということです。昨年はこの時点で1.1次関数くらいの増え方だったようですが、今年は比例関数で邁進している感じだそうです。1月10日の初日出願がすでに昨年より多いので、このまま順調に比例定数0.85くらいで増えていくと、最終的にも昨年を超えることになるでしょう。

★今年から大学入試における女子の理系志望が増えている傾向があるという情報は、メディアで注目されています。これは中学入試や高校入試にも影響を与えています。その証拠に工学院の女子の出願数・実人数は、すでに昨年の最終人数を超えているということです。

★工学院のグローバル教育と理数系教育の2刀流教育(その両方を結ぶのはSTEAM教育)は、文科省や大学人が必要としている未来の教育を先取りしているのでしょう。

★八王子の未来の教育を牽引する工学院。多くのポジティブな刺激を八王子や多摩エリアの仲間の私学に与えると思います。私もいつも学んでいます!

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2023年1月26日 (木)

2023年首都圏中学入試動向(10)1月25日現在 桐朋二回とも出願数前年超える

★桐朋は2回入試を行いますが、1月25日現在(首都圏模試センター出願倍率速報)で、両方とも前年の出願数を超えました。

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★教科の専門性と生徒の興味と関心を大切にする両ベクトルの合力が、自由で生き生きとした学校の雰囲気を伝統的に生み出していますが、今ではこの雰囲気こそ先進的ですね。

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2023年1月25日 (水)

2023年首都圏中学入試動向(09)1月24日現在 東京エリアで出願数の勢いのある私立中高一貫校

★1月24日現在の倍率速報(日能研)を見ていると、すでに出願数が前年を超える勢いがある私立中高一貫校があります。気になる学校を順不同にご紹介します。

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(2019年の海城の入試風景。首都圏模試センターから)

★男子校では、海城、開成、駒東、早稲田が勢いがいいですね。開成と駒東は毎年安定しています。海城は、帰国生入試、第1回、第2回すべての入試で前年を超えています。この高いレベルの学校で、先進的な教育に挑戦し続けるところがすてきです。早稲田中は、幾つかのキャンパスが125周年記念事業の一環で新しくなるので、その影響もあるでしょう。やはり1回目も2回目もすでに前年を超えています。

★女子校は、光塩女子、大妻中野、富士見丘、京華女子、玉川聖学院は、先進的教育環境デザインが評価され勢いがよく、桜蔭、雙葉、東洋英和はすでに前年を超えています。

★共学校は、新設の芝国際、サレジアン国際世田谷は爆発的です。都市大等々力、目白研心、工学院、成城学園、日本工業大学駒場、広尾学園などは、最終的に出願総数は前年を超える勢いです。

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2023年1月24日 (火)

今日は♯Education Day 質の高い教育とは?

★今日は、ユネスコはSDGsのリマインダーとして、♯EducationDayとして設定しているようです。Fasebookで次のような表現をしています。中学入試のこの時期、質の高い教育環境をデザインしている学校はどこかと探していることでしょう。

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★このステッカーには、質の高い教育は、贅沢なんてものではなく、人権なのだと。具体的には、ユネスコは、今回のパンデミック「過去2年間で、1億4,700万人の子どもたちが授業中の半分以上を欠席したと推定されています。この世代の子どもたちは、現在価値で合計17兆円の生涯所得を失う可能性がある。」と語っています。

★現在の私立中学入試で、こんな切実な緊迫感を感じることはないと思いますが、ここには教育の本質があります。つまり、「すべての人に質の高い教育を提供することは、平和で豊かな世界を実現するための基本です。教育は、人々が健康を維持し、仕事に就き、寛容さを育むために必要な知識と技能を提供します。」ということなのだと。

★このことを生徒1人ひとりにシェアできる教育環境が必要だとしたら、パワハラやいじめや垂直的序列価値観などがあってはならないということです。こういうことが1つもない教育環境デザインをしている学校を探すと、クリエイティブダイアローグ、クリエイティブラーニング、言語の多様性、教師や生徒の多様性などの意味でグローバルでイノベーティブな環境があるところだとなるでしょう。

★朝、そんなことを考えて学校についたら、未明に強迫ファックスが送られていました。「300万円送金しないと教師や生徒に危害を加える」というのです。すぐに警察がやってきてくださり、相談した結果、ランチを早めにとる午前授業にして午後速やかに全員下校することにしました。

★ネットを見ると、八王子市、埼玉、神奈川、大阪、奈良、徳島などに同じファックスが送られているということです。うちと同じ対応をとった県や通常授業を注意しながら行ったところもあるようです。

★いずれにしても、教育や学びに集中できないわけです。人権侵害は明白です。

★そして、ウクライナや中東などで戦争が続いている国の子どもたちのことが思い浮かびました。私たちの緊迫感以上の想像を絶する圧迫感や恐怖の中で学びたいという意欲を持ち続けている子どもたち。

★私たちになにができるのだろう。Quality Educationは、その意味でも平和を目指すものであることは言うまでもないということでしょう。教育の改革が、そこに結びつくかどうか、私たちは問われています。

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2023年1月23日 (月)

パウロのクリエイティブダイアローグ 父母の会のワークショップで

★先日父母の会の方と「パウロの対話について」というテーマでワークショップ(WS)を行いました。2カ月ごとに父母の会があります。父母の会の始まる前90分間、毎回テーマを変えてワークショップを行ってきました。毎回順番で9人から12人が順番に参加します。お忙しい中、毎回盛り上げていただいて大感謝です。今回が今年度最後でした。パウロの教育で大事にしているものの1つ黄金律をコアに愛と創造が生徒の内面から湧き出る対話について行いました。

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★WSのメインは「ぐるぐるトーク」です。9人が輪になってすわり、クロス・クエスチョン(多角的な発想が生まれる問い)のうち、今回は、ブラックボックス問題(得体のしれない未知のものを提示)で、感じたことや思いついたこと考えたことをどんどん話していくのです。

★ブラックボックス問題は感じたことや認識したことを直接問うダイレクトクエスチョンとぐるぐる順番に話している様子から感じたことや気づいたことは何かを問うモニタリングクエスチョンの2つのタイプがあります。

★また、ぐるぐるトークの中で、共通して関心のあることについて、この2種類の問いをまたぐるぐるするなど、ずっと続けていくわけです。

★親と子の対話については、参加者みな体験していることです。ですが、同じような体験なのに参加者それぞれ違う感じ方や考え方を知り、結構サプライズです。

★パウロの教育では、体験を大事にしています。生徒は同じ体験をしても、みなそれぞれ違います。その違いを対話することで、また新しいものの見方や感じ方、考え方を発見したりします。

★今回のワークショップは、生徒と同じ感覚をもっていただき、それがパウロの対話教育だという実感をシェアすることが目的でした。それぞれが新しいものの見方や感じ方考えかたを生み続ける、共有し続ける中で、クリエイティビティがぱっと広がるという体験でした。

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★そして、3人ずつに分かれて、対話をします。そのとき、なんらかの道具を用意します。レゴとか粘土とかポストイットとかいろいろですが、今回はカードにしました。もっとも、父母の会のWSでは、各種カードを使う場合が多かったですね。

★そうそう、それからぐるぐるトークのときに、今回は保護者の方の話に対応する生徒のエピソードをこまめに挟みました。解決策とかではなく、エピソードはそれぞれの参加者が自身で考えるきっかけとしてリアリティがあるからです。

★そのようなぐるぐるトークの後、今回は「オープンダイアローグ」という痛みや病を解消する時の対話のコツ30が書かれているカードを使いました。

★ぐるぐるトークで体験した対話を、理屈という視点で眺めてみるセッションです。そして、時間があれば、もう一度ブラックボックス問題で、新たな理解が生まれることを再体験していただきたかったのですが、時間が足りませんでした。しかし、新たな理解ができていることは、チームの対話の時にすでに生まれていましたからある程度目的は達成されたと思います。

★このオープンダイアローグという心の痛みを解消する方法は、ふだんの対話にも重なります。私たちは、程度の差はあれ、みな何らかの痛みを持っています。完全な解決はできませんが、一時的に解消することはできます。ですから、オープンダイアローグ、私はむしろクリエイティブダイアローグだと思うのですが、このような対話を持続可能にし得るチームや組織を創っていくことが大事で、そのためには父母の会の方々の協力が欠かせないのです。

★オープンでクリエイティブなダイアローグは、フリー、フラット、フェアー、フラタニティーな雰囲気をつくれるチームや組織にすることです。そんなことを言えるパウロの先生方の対話力に感謝です。

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2023年首都圏中学入試動向(08)成城学園第1回入試出願数前年を超える

★1月21日現在(日能研倍率速報)、成城学園の第1回入試の出願数前年対比は、103.5%。数日前から100%を超えていました。第2回は78.4%ですが、東京の共学校全体の出願状況は、前年対比63.5%ですから、同校の出願の動きは勢いがあります。直前受付もあるので、第2回も前年を超えるでしょう。

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「shuTOMO 第14号(2023年1月9日発行)」に成城学園の教育について記事を書きました。ご参照ください」

★成城学園は、ご承知の通り、大正自由教育を継承しつつ、ある意味デューイの経験主義やプラグマティズムの現代化を進めています。したがって、フリー、フラット、フェアー、フラタニティな雰囲気の学校です。

★教師と生徒のつながり、生徒同士のつながり、同窓生と在校生とのつながりなどが豊かで、多様な高大連携、自然体験、グローバル体験、アントレ体験など1オンスの体験は10トンの理屈に勝るというデューイの考えそのものを実現しています。

★受験生の男女比は、少し女子の方が多いですから、そういう意味でもデューイが目指した格差のない社会づくりを射程に入れていることもわかります。女子生徒も男子生徒も、それぞれ一人の人間として自分の才能を広げ、発揮していける環境がデザインされています。受験生が魅力を感じないわけがありませんね。

※成城学園の教育についてディープな情報については、次の動画をご参照ください。

① GLICC Weekly EDU 第104回「成城学園中学校高等学校ー探究が開く未来」

② GLICC Weekly EDU 第107回「成城学園の中高大連携プログラムー卒業生と生徒と教員のネットワーク」 

 

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2023年1月22日 (日)

2023年首都圏中学入試動向(07)和洋九段女子 小さくて大きな動き

★和洋九段女子の帰国生入試の出願数の前年対比は300%。出願数自体は、6人(前年2人)で、少ないように感じる人もいるかもしれません。しかし、一般入試(2月1日以降)の受験生が約50,000人なのに対して、東京の帰国生受験生は約900人です。6人というのは決して少なくないのです。

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★大事なことは、前年対比が300%ということです。このことは何を意味するのか。それは帰国生が和洋九段女子を見つけ始めたということなのです。

★和洋九段女子の教育が帰国生にとって居心地が良い環境であることが伝わり始めたということなのです。たとえば、和洋九段女子のPBL入試(SDGs型)などは、教師と生徒がいっしょになって作っています(動画参照)。

★このような生徒がいっしょに学校づくりに参加できるという雰囲気は、帰国生は共感するものです。フリーで、フェアーで、フラットで、それでいてフラタニティ―がいっぱいという雰囲気は何より大切なのです。

★もちろん、これは国内生にとっても同じはずです。ところが、実際には、国内ではまだまだ、学校は校則が厳しかったり、ランキングや序列競争に疑問を持たれなかったり、様々な問題があるにもかかわらず、なかなかみな感じなくなっています。

★しかし、最近の帰国生の多くは、そのことに敏感に反応するのです。かつては、英語を話すと、ひかれるなんて現象もあったりして、「帰国生外来」などという帰国生の心の痛みのカウンセリングがメディアで取り上げられたことも多かったのです。

★ところが、最近では、私立中高一貫校のグローバルな意識が高まり、帰国生にとって過ごしやすい環境ができつつあります。

★その環境の一番大事なところは、ディスカッションやオープンダイアローグがあることです。それに言うまでもなく主体的関係性がある環境ですね。そして、このような環境があると国内生もまた、世界に通じる思考力と行動力を身に付けられます。

★和洋九段女子の生徒のSDGsに対する取り組みは、その仕組みを知るだけではなく、自分たちにできることは何かを話し合い、行動に移すところまで実施されているのです。そして、その過程で多くの外部ネットワークと結び付き、SDGsへのアクションを共に行っていくインパクトを与えているのです。

★もちろん、タイをはじめ多くの海外の同年代の生徒と交流もします。高大連携でフィールドワークにも繰り出します。要するに年中行事以外に多様なアクティビティが生まれています。

★そんなことが和洋九段女子の生徒にとっては、当たり前なわけですが、帰国生が外から色々な学校を視て比較した場合、とても得難い環境のように見えるわけです。

★とはいえ、和洋九段女子は海外にまで出張して帰国生に説明会活動を頻繁に行っているわけではないので、かなりアクティブな帰国生でなければ、和洋九段女子の帰国生入試にたどりつかないということもあるでしょう。

★だからこそ、前年対比300%は小さくて大きな動きを示しているのです。今後が楽しみです。

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2023年1月21日 (土)

2023年首都圏中学入試動向(06)東京エリアの帰国生入試出願状況 工学院と大妻中野 基盤つくる

★1月20現在、東京エリアの帰国生入試の出願状況が概ね確定しました。前年対比順ベスト15位、出願数順ベスト15位を並べました。

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★すると、両方の順位に入っているのは、工学院と大妻中野でした。

★両校ともグローバル教育を極めているので、当然の結果となったのでしょう。両校がいかにグローバル教育の確固たる基盤をつくっているのかについては、次の動画が参考になると思います。

GLICC Weekly EDU 第101回「工学院大学附属中学校・高等学校ー世界の学校になる。Becoming a School of the World」

GLICC Weekly EDU 第75回「大妻中野 諸橋教頭先生との対話ーArts for Humankindとグローバルリーダーズ」

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GWE112回 工学院の知られざるすごさについて鈴木さん語る

<GLICC Weekly EDU 第112回「2023年中学入試~出願状況から見えるコト」>は、鈴木さんと結構突っ込んだ対話ができたと思います。私のfacebookでは、予告として次のようなことを書き込んでいました。

「2023年の私立中学受験は、2030年、2050年の社会がどうなっているかバックキャストして教育をデザインしている学校が選ばれています。受験生の保護者の選択の眼が眩しいですね。さて、その教育のデザインのタイプが、千葉エリアと埼玉エリアと東京・神奈川エリアでまず大きく3つに分けられます。そして、東京エリアは、さらに細かく3つのタイプに分かれます。巧まれたわけではなく、そうなっているのは、各エリアの中学市場の状況が違うからで、それぞれのエリアの学校は、見事にその市場の具体的状況に対応する動きをしています。その中で、東京の2タイプが、具体的状況に適合させつつ一歩先を照らすデザインをしています。」

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★この目的はかなり達成されたと思いますので、ぜひご視聴ください。ライブ中にチャットで質問も頂き、その場で回答しながら対話が進む、スリリングな刺激も受けました。すべての方にお答えできなかったことをお詫びいたいます。そして質問を頂いた方々に、感謝申し上げます。

★さて、この対話の1:03:05あたりから、鈴木さんがちょうど20日の日に工学院の授業の取材にいってきたというわけで、工学院の授業のすごさについて語っています。AIと英語とクリエイティブが浸透している今まで見たことがないシーンについて語っています。

おそらく、この凄さについてはまだまだ知られざる貴重な最新鋭の授業の情報だと思います。ぜひご視聴ください。

★それにしても、2050年のムーンショット構想や未来人材ビジョンなど内閣府や経産省、文科省が描いている日本経済社会の新たなカタチは、ずいぶん新学習指導要領やそれをさらに超えるクオリティの私学の教育にマッチングし始めています。

★それらの構想が私学に影響を与えていることもあるし、同時に私学が世界的多角的視野に基づいてデザインしている教育環境が政財官に影響を与えているのか証明の使用がありませんが、相互影響があることは間違いないでしょう。

★進めるところから進み、その恩恵を日本のみならず世界でシェアする効果的利他主義の教育のダイナミズムが起こっているのが、2023年の中学入試の真骨頂かもしれません。

工学院のみならず、50校くらいについて語っています。中学受験生にとってまだまだ学校選択で迷っている方々に何かの参考になれば幸いです。

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2023年1月20日 (金)

2023年首都圏中学入試動向(05)本日から千葉エリアの中学入試本格化

★本日20日から、千葉エリアの中学入試が本格的に始まりました。1月20日から23日で、千葉エリアの全貌がみえてくるはずです。1月19日現在の前年対比と出願数、それぞれのベスト15位を表にしました。

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★前年対比と出願数の両方とも好調な学校は、10校になります。五十音順でご紹介します。

市川
渋谷教育学園幕張
昭和学院
昭和学院秀英
千葉日本大学第一  
千葉明徳
専修大学松戸  
東邦大学付属東邦
二松学舎柏
麗澤
 

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2023年首都圏中学入試動向(04)大妻中野のラテラルシンキング教育の成果 高1生が金融と経済を考える小論文で金融担当大臣賞

★大妻中野の高1生が、「金融と経済を考える小論文」で金融担当大臣賞を受賞しました。全国の高等学校から2,255点の応募が寄せられ、審査の結果20点が入賞作品に選ばれたのですが、その中で最優秀賞です。(主催:金融広報中央委員会 後援:金融庁、文部科学省、日本銀行、全国公民科・社会科教育研究会、公益財団法人全国商業高等学校協会、全国家庭科教育協会、日本私立中学高等学校連合会)

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受賞作品のタイトルは「紅茶から考える自分の将来」で、<紅茶を飲んでいるとき、ペットボトルのラベルに目がいった。ラベルには、「本
商品の1本につき3.9円が熊本の復興応援のために活用されます。」と書かれてあった。>から始まります。

★身近なだれでもが手にとたtことのあるペットボトルの飲料水。そこから思考がどんどん広がって、次元も大きく変化していきます。大妻中野では、ラテラルシンキングを学ぶ機会があります。まさに何気ない日常うから、どんどんいろいろな事象や現象が結びつき、そこから多様な問いを発見します。そして、その問いがまた新たな問いに結びつき、このペットボトルのプロジェクトが世界規模の問題に行き着きます。

★この企業の試みは、ビジネスであるのだけれど、気候変動やSDGsが扱っている諸問題の解決に貢献することになるという発見。金融や経済が、グローバルな問題を解決する好循環を生み出す。まさに効果的利他主義の発想にいきついています。

★大妻中野のグローバル教育やラテラルシンキングという思考力育成プログラムの1つの見事な結晶ですね。

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2023年1月19日 (木)

第111回 GWE 富士見丘の教育の成果

★教育の成果とは何でしょう?大学合格実績でしょうか?英語検定試験のような資格試験合格率でしょうか?様々な教育系のコンテストで優秀な成績を収めることでしょうか?ボランティア活動で社会貢献する生徒を輩出することでしょうか?未来社会や世界を平和に導くリーダーを生み出すことでしょうか?このうちのどれかと言われれば、選択するのは難しいですが、どれを選んでも、その他の選択肢と相互関連していて、実はここに挙げた成果すべてだというのが回答になりそうです。

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(GLICC Weekly EDU 第111回「2023年中学入試を読む~富士見丘の生徒像に見る未来の教育」 )

★しかしながら、本当のところは、それら多様な成果を生み出す人間力の核を形成することが教育の成果でしょう。そのことが今回の富士見丘の副教頭佐藤先生のお話から実によく了解できました。

★そのような人間の核の密度を高くする教育だからこそ、富士見丘のすべての生徒が世界の人びととコミュニケーションをとり、互いの感じ方や考え方を受容しながら、新しいアイデアを生むことができるのです。

★1月と2月は、その人間力の核から生まれた様々なアイデアを世界に向けて発信する富士見丘グローバルシーズンです。

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★学内だけのプレゼンテーションで閉じるのではなく、世間一般に開かれた発表をする機会を創っています。参加してみてはいかがでしょうか。

★もちろん、大学合格実績も毎年高成果を上げていますから、人気も上々です。

★2月1日から始まる中学入試の出願も順調です。帰国生入試と2月1日のWill入試はすでに前年を超えています。出願総数は、現段階で2年前の出願総数を超えています。123.1%です。前年対比だと現段階で80%弱まで行っていますから、当日までには100%を超える勢いです。

多様な結果を生み出す人間力の核を形成する富士見丘の教育について、詳しくはGWEをご視聴ください。

 

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2023年1月17日 (火)

2023年首都圏中学入試動向(03)1月20日~22日の千葉入試出願動向 17日現在

★千葉エリアの中学入試は、1月20日から本格的に始まります。本日17日現在(日能研倍率速報による)で、20日から22日の入試のうち、前年対比100%以上で、出願数15位内の学校は、次の7校です。五十音順で並べます。

 市川
渋谷教育学園幕張
昭和学院
昭和学院秀英
千葉日本大学第一
千葉明徳
東邦大学付属東邦

★グローバル教育や探究に力を入れている学校が並んでいます。

★今年4月開校する流通経済大付属柏も、出願数15位以内に入っています。先進的な教育環境をつくり、大学合格実績も出すことを明快に目的としているようです。すでに高校がありますから、その目的は達成される期待は高いですね。

★20日過ぎには、千葉エリアの中学入試の出願動向はかなりはっきりしてくるでしょう。引き続きウォッチしていきます。

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2023年1月16日 (月)

【速報】湘南白百合 すべての試験で前年の出願数を超える

★本日16日の15時現在、湘南白百合のサイトで出願状況が更新されました。出願総数はすでに前年を超えていましたが、本日の次の数字は、すべての試験で前年の出願数を超えることを示しています。

算数1教科入試:125
国語1教科入試:226 
4教科入試:264 
英語資格入試:19   
合計:634 

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(写真は、同校の公式facebookから。探究の授業シーン)

★出願総数の前年対比は、127.3%です。日々出願数は更新されていますから、締め切りの30日にはどこまで伸びているのでしょうか。

★一方で、少人数サイズの学校ですから、今までにない数の受験生に対応するのは、もしかしたら先生方にとっては大変かもしれません。

★ともあれ、湘南白百合の教育の魅力に気づいた受験生が激増していることは間違いありません。

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2023年1月15日 (日)

2023年首都圏中学入試動向(02)1月10日~12日の埼玉入試出願動向から見えるコト 転換激しい埼玉エリア

★本日は大学入学共通テスト2日目。受験列島ピークに向かっている日本。首都圏中学入試も10日から埼玉エリアから始まっています。同エリアでは、1月10日から12日までが中学入試の数が多いので、その出願状況を見てみましょう。前年対比順と出願人数順ベスト20位の表を並べてみました。

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★両方にランクインしている学校を五十音順に並べると、次のようになります。

1浦和実業学園
2栄東
3開智
4埼玉栄
5昌平
6星野学園
7西武台新座
8大宮開成
9武南
10獨協埼玉

★50%が、前年対比も高く、出願者数も多いということですから、埼玉エリアで安定した人気を獲得しているのでしょう。80%は、大学進学実績を出すためのカリキュラム以上の革新的な教育をプラスアルファーして話題になっている学校です。

★出願数として1000人以上集めるわけではないですが、前年対比が飛躍的に伸びている細田学園などは、革新的教育改革を行って埼玉エリアでその評価を得始めています。

★このような革新的教育を総称して21世紀型教育と私は呼んでいるわけですが、埼玉エリアの私立中高一貫校は大きく21世紀型教育に舵をきっていると言えるでしょう。東大を頂点とする大学合格実績を出すことが第一義的なパーパスだった埼玉の教育が、その伝統を継承しつつ21世紀型教育に変わることは、首都圏においてのみならず日本の教育において、極めてポジティブに衝撃的なのです。

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大学入学共通テスト 社会の問いの背景 効果的な利他主義は有効か

★昨日、今日と大学入学共通テストが行われています。がんばれ受験生!と私に限らず多くの人が祈っているでしょう。彼らがどんな問題に挑戦しているのか?速報のニュースをみると、「思考型問題」が定着したとあるから、記憶と発想の両方をフル回転して頑張っているに違いありません。結果はともかく、このようなテストに向かって学び合うことは、人生にとって意義があることは間違いないでしょう。

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★政治経済とか倫理の問題をちらっとみて驚きました。資本主義とかSDGsとか正義とか自由について考える問題が出題されていました。資本主義については、このシステムの結構要である生産手段は私有か否かがいきなり問1から。産業革命時代から、インダストリー4.0とかソサイエティ―5.0とかの現在にいたる資本主義の進化系の話の時に、ここをどう捉えるかで、経済の仕組みは転換します。

★このことは、マックス・ウェバーがすでに見抜いていたわけですから、伝統的な問いであると同時に、AI時代のノマドにとってどうなるのか大事なところです。問題自体は簡単ですが、このような視点や背景をもって問いが創られているのはすごいなあと。

★そして、SDGsの探究メタファー問題も出題されていました。SDGsの扱いは、サプライチェーンやトレードオフの関係問題を問うたりしているので、従来の道徳問題としてではなく、おそらく効果的な利他主義(EA)を提唱したウィリアム・マッカスキルの影響が背景にはあるんだろうなあと。

★他者を救うために稼げというこのEA。昨年アメリカの中間選挙のときに、民主党を後押ししていたはずのFTXの破綻がありました。そのCEOであるSBF(サム・バンクマン=フリード)は姿を消していました。

★この通称SBFと呼ばれていた人物のアドバイザーがマッカスキルだったようです。発想はよいけれど、その方法が問題だった。とはいえ、このFTXを運営するメンバーは、みなスタンフォードやMITなどの出身者。そもそもマッカスキルはオックスフォード大学の准教授。

★効果的な利他主義であるEAは、黄金律を実用的に実現するかのようにみえたけれど、なかなか難しいようですね。

★しかしながら、発想は間違いではないでしょう。それゆえ、共通テストの背景にこのような発想も考慮する要素としていたとしても問題はないと思います。

★しかし、これは、あの当時の政権とハイデッガーの関係に対する批判的な検証が今も続いているように、今後同じようなことが議論されるかもしれませんね。

★思考型問題は、大切だけれど、その善なる思考をAIなどで増幅させると、必ずしも善が増幅するわけでもないというクリティカルシンキングが重要なわけです。

★共通テストの倫理の問題の中に、シェリングの善と悪の両方を内包する人間だからこそ自由が問題なのだということについての対話文を通して考える問題がでていました。実にリーズナブルというか、バランスの良い発想を求めているというのが見え隠れしています。

★今回の新学習指導要領や高大接続改革はいろいろな問題もあったでしょうが、このような問いを創る機関が機能しだしたというのは、希望があります。

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2023年1月14日 (土)

【速報】湘南白百合 早くも昨年度最終出願数を超える!

★1月13日現在湘南白百合のサイトによると、


 算数1教科入試:112
 国語1教科入試:205 
 4教科入試:243 
 英語資格入試:17 


★この結果は、現状で早くも昨年度最終出願総数を超えていることを示しています。今年の出願総数は現状で577名。昨年度の出願総数は498名ですから、すでに前年対比116%!出願締め切りは、1月30日(月)23:00までですから、まだまだ伸びるでしょう。ちなみに、前々年対比では、219%です!!(前年、前々年のデータは首都圏模試センター「出願倍率速報」から)

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(写真は、湘南白百合サイトから)

★湘南白百合のこの快進撃は、グローバルでクリエイティブで愛ある深い学びが希求されていることの証でもありましょう。湘南白百合は、4つの21世紀型教育のうちプログレッシブ教育のカテゴリーに私は分類しています。このカテゴリーに属するのは、海城学園や聖光学院などです。

★教育への期待と子供たちの未来を諦めない21世紀型教育の真骨頂を感じます。

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2023年1月 9日 (月)

新春GWE第110回 石川一郎先生の粋な未来の教育展望

新春GWE(GLICC Weekly EDU 第110回)は、「私立中高 新しい教育の動き~石川一郎先生 2023年度の展望」。石川一郎先生の快刀乱麻のごときトーク。痛快丸かじりだけれど、人気がでるあるいはサバイブできる学校とは何か?確信1歩手前の粋な配慮がおもしろかったですね。新春GWEにふさわしいお話でした。

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★石川一郎先生は、久しい間現場で教師経験を積み上げ、理事・校長まで経験。私立学校は、教育の論理と経営の倫理の両輪が最低限必要ですが、その両輪を回すマインドとスキルを有しています。

★しかし、今回のGWEでのお話からもわかるように、これからの私立学校のガバナンスは、理事がそれぞれの役割を果たせる専門知・技術をもっていなければならにということを、石川先生がかかわっている学校の1つ星の杜で示唆されていました。

★多くの学校の理事会は、経営能力の高い理事長と会計や法律の専門家、教育の専門家、同窓会などで占められていますが、教育の専門家が校長だけではなく、探究、リベラルアーツ、情報など21世紀型の教育について見識の在るディレクター集団を抱えることの重要性についてさらりと話されています。直接話すと野暮ですが、そこは石川先生ですから、粋なトークで示唆していました。

★もちろん、理事の数は限りがあるので、理事長や教育専門の理事の直轄部隊があればよいわけです。

★星の杜は、その理想に近いガバナンス形態をとっているようです。理想と現実の一致をしかけるのが同校の理事でありチーフカリキュラムディレクターである石川先生の役割なのでしょう。それについては、石塚校長と石川先生が対話している記事が同校サイトに掲載されているので必見です。

★そして、石川先生の本領発揮は、ようやく21世紀型教育を望む保護者が増えてきたという動向や、まだまだ21世紀型教育に飛べない日本の高校現場の課題とそれを解決する飛ばす方法を少々、生徒自身は教師の21世紀型教育手法によって、いくらでも主体性が引き出されるのだという可能性などについて広く深くはなされたことです。

★いずれにしても、21世紀型教育への道は、もはや夢でも理想でもなく、現実にどんどん開かれていくという動向について多くを語られました。2030年くらいまでに21世紀型の私立中高一貫校は拡大し、主流となるでしょう。

★もちろん、石川先生はさらりとなんちゃっても含めてねとクリティカルな面も。それから小規模大学で、現状偏差値も高くないけれど、改革を行っている大学の情報発信ももっとしていくのが使命だとも語っています。先生自身の教育コンサル事業の幅がまた広がっているという予告もされていました。

★インフルエンサー石川一郎先生が活躍するということは、日本の教育の未来も同時に広がっていくということを示唆するバロメーターでもあります。さて、ユートピアかディストピアか。どちらのシナリオプランニングを描きますか?

★石川先生なら、第3の道ですねと語るかもしれません。プラグマティックなリアリスト。教育にかかわるマインドとして大事ですね。2023年の光をありがとうございました!

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2023年1月 7日 (土)

2023年首都圏中学入試動向(01)1月10日埼玉入試出願者数増

★1月10日首都圏の中学入試は、埼玉から本格的にスタート。当日の出願者数(全36入試校)は、18, 328人で、前年対比101.9%(日能研倍率速報1月6日現在)。出願締め切り校は、まだ22%がゆえに、当日はもっと増えるでしょう。

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★それにしても、1月10日の栄東の志願者は5000人を超える圧巻。高い大学合格実績とAL(アクティブラーニング)という学びの徹底。この2つのベクトルの合力がすっかり同校の特徴となり、この21世紀型の中高一貫校の教育は、埼玉エリアにおいてもロールモデルになりました。

★ALの徹底度の違いによって、その魅力の大きさも相関するようです。栄東は、各教科の授業においても、キャリアデザインにおいても、探究の時間においても、行事においても、国内外の研修旅行においても、およそあらゆる教育活動においてALはコアラーニングシステムになっています。

★ある意味、IBのコアラーニングの発想に近いかもしれません。とはいえ、教科とALはなかなか結合しないというのが、一般的な現状です。またALと大学合格実績が結合するというのもなかなか難しいのが普通です。

★しかし、上記の一覧に載っている学校は、なんらかの形でALを行っているのは確かでしょう。

★学習指導要領でも「主体的・対話的で深い学び」と「総合的な探究の時間」を行うことはマストですから、2025年までには、埼玉エリアは栄東モデルに接近することでしょう。開智グループは、IBのエッセンスをすでに共有しているし、昌平もIBコースを設けています。ますます、栄東モデルは浸透しますね。

★埼玉エリアは、帰国生入試がまだ盛り上がっていないので、グローバル教育よりALが目立つカリキュラム構造になっています。

★1月20日から中学入試が本格化する千葉エリアの私立中高一貫校は、逆に渋谷幕張が帰国生入試で牽引しています。東邦大東邦や市川も力を入れていますから、グローバル教育に力点を置いた21世紀型教育のカリキュラム構造になっていくのでしょう。

★東京・神奈川エリアは、ALやグローバル教育のバランスがいいんですね。というのもその両方を望む保護者が多いからです。もちろん、意識というより保護者がどのような仕事についているかだと思います。

★ALやグローバル教育より、東大を中心とする超難関大学や医療系大学の実績が大事だという保護者の仕事は、おそらく医者などそのほか国家資格を取得して仕事をしている家庭層だと思います。あるいはその仕事を望んでいるか。

★とはいえ、そこだけに特化して高い大学実績を出しているところは、実はかなり限られていて、今では特異点という様相を示しています。

★開成などは、グローバル教育というかグローバルな視野も大いに重視しています。たしかに東大合格実績は凄まじいですが、どうやらそれだけではないことは2013年以降明らかになっています。

★家庭のサバイバル意識の高さ、首都圏のサバイバル意識、日本のサバイバル意識、世界のサバイバル意識、それぞれ直接関係ないように思われますが、その意識をもって仕事をしているプレイヤーは確実に重なっています。経済的には、それは富の偏在だと批判する学者もいます。

★政治的には、リーダーを生む拠点づくりということをほのめかす見識者もいます。

★教育的には公平性に疑問を投げかける人もいます。しかし、私立学校の実存的問題解決には、善きリーダーシップを輩出する教育環境システム作りということになります。その善なる基準である建学の精神は、各学校によって表現は違いますが、みな一人一人の能力の開花とそれが社会貢献につながるという黄金律と親和性があります。

★そして、時代の精神は、この個別最適な学びと協働的な学びの一体化が求められているのは、パンデミック、ウクライナ、気候変動がもたらすクライシスが身近に迫っていることから、多くの人が気づいてもいます。

★この混迷の時代に、なぜ中学入試が魅力的なのか?一面的なものの見方をしているとバイアスの罠に陥ります。多面的に議論する必要がありますが、それは実はまだまだ不十分ですね。それがゆえ、2023年は、そこを多面的に議論する機会が生まれるような気がします。

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2023年1月 5日 (木)

2023年 日本の近未来や世界のコトを多くの市民が考えることが日常になる(4)中等教育の学びと社会課題の結合の質がアップデート

★2023年の問題というか社会課題についてネット上や書籍ですでに多様に多角的に論じられています。思いつくままスライドに書き出してみました。これらは、かつては、ビジネスチャンスとして社会で働く人にとっての情報でしたが、今や中高生も考える時代になっています。新学習指導要領以前は、それらの社会課題を考えるうえで、基礎学力が大事だとあたかも嘯かれていました。パンデミックやロシアのウクライナ侵攻、気候変動などの問題が身近な生活に迫ってくる実感がある現在、それは一面の真理でしかないことはみな了解済みです。それでもあえて、そんなことを言っているとしたら、目の前の問題から逃げていると思われるでしょう。

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★とはいえ、中高生が実際に現場に行って社会課題を解決できるのか?しなければいけないのか?といわれたら、回答に窮するのも事実ですね。社会課題は、社会が組織的に解決していく必要があります。教育は、その解決者の育成機関でもあります。

★日本は、まだその育成機関をもてる環境があります。この環境を持続可能にするには、中等教育機関での学びが、社会課題とどのように結合できるようにするのかプランニングする必要があります。

★その一つが、「主体的・対話的で深い学び」であり、「総合的な探究の時間」です。基礎学力は必要なのですが、それが社会課題を解決する時にどのように結合するのかシミュレーションするのが、「主体的・対話的で深い学び」です。このシミュレーションが行われず、知識のインプットだけしていてもどうにもならないことは、もはや当たり前の感覚になっています。

★そして、社会課題は山ほどありますが、そのどれにも共通している問題=共問題があります。それを見つけて、そこを解決する構想を立てるのが早道です。そのような共問題の問いの構造を見出すクリティカルシンキングとはいかなるものでしょうか。

★これについても、昔から気づかれています。ダブルバインドとかトレードオフとかパラドクスとかジレンマとかいう共問題のシンプルな構造をモニタリングする思考です。これは解決不能のように錯覚されがちですが、解けなければ、地球そのものが消滅してしまうでしょう。そうなっていないのですから、まだまだ解決の希望はあります。ただ、たしかに限界はあります。

★そこに達する前に解決する必要はあります。

★もしかしたら、時間はないかもしれません。2023年はこの切迫感が広まる年かもしれません。よって、中等教育の学びと社会課題の結合は、その共問題の問いの構造を見破るという思考ソフトの育成をコアにして結合することが当たり前になります。

★社会課題の現象面を調べて、いま取られている解決方法を並べるだけでは、解決していないという確認をするだけであるという段階から、問いの構造を明らかにする知性を育成する段階に進む必要があります。

★しかし、今までの解決では解決できないという確認ができる学びが完成しているわけですから、ようやく次のステップに進めるわけですね。

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2023年1月 4日 (水)

2023年 日本の近未来や世界のコトを多くの市民が考えることが日常になる(3)日本経済が安定的になる可能性もある 情けは人のためならずマインドがゆえ

★年末、日本銀行は金融政策の一部を修正しました。経済ニュースでは、金利は上昇しやすくなったため、これまでに比べると、外国為替市場で主要投資家は円売りを仕掛けづらくなるのでないか。それゆえ、徐々に円高に向かうのではないかと報道していました。

★すると、大発会では、株は落ち込んだが、円高に。

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★経済界や金融界の予想が当たったというより、巧みなコントロールがまだきいているということでしょう。株価が安くなれば、円が高くなり、株価が上がれば、円は安くなるという相互作用があるから、なんとか安定しているという感じ?

★とにかく、経済界や金融界は、グローバルな範囲で、膨大な人が仕掛けているからわかりにくいけれど、基本は人気投票。でもそれは表面的現象ではない。視聴率や偏差値がよいかわるいは、かっこにいれておくとして、このシステムが成立するには、長い歴史と人間的なしがらみが複雑。その根底にあるものは、やはり人間の感情。この感情の重層トレンドを作り出すシステムが広告代理店だったり、経営戦略だったり、それに影響を与えるあるいは与えられる経済ポリシーが絡んでいます。

★魅力づくりやブランドづくり。まさに人気や評判作りだけれど、そこに最近は社会貢献やSDGsが絡んできています。

★表面的だろうが、本質的だろうが、人々が心地よい感情をもちたいというトレンド作りを抑圧しないシステム(そういう暗躍なのかもしれませんが)がある限り、良し悪しは別として日本社会は安定する可能性があるでしょう。

★もちろん、行き過ぎた軍事大国路線は、戦争に向かうので、そうなったら安定もクソもないけれど、限界線はどこかを探りながら、良好な感情を持続したいという感情は日本人は強いと思います。

★哲学がない日本、宗教教義のない日本、ほとんどのおとなが中学生レベル(ひろゆきさんの言説)の日本(義務教育が行き届いているということでしょう)。そうよくいわれています。当たらずともいえども遠からずでしょう。

★だからこそ、もののあわれ、わび、さび、キレイさび。。。繊細な感情かどうかはともかく、感情を大切にするのですね。

★しかも、地政学的にいっても、不安定の中の安定性が意外と評価されるのが日本。

★もし日本が危機に陥ったときは、世界のネットワークで生きている日本ですから、そのネットワークが切れた先が危なくなっているということです。

★そうならないようにする日本人。なぜなら、わたしたちは「情けは人のためならず」という感情を大切にしているからです。キリスト教の黄金律とはだいぶ違いますが、行為としては共通点がいっぱいですね。

★たぶん、愛知県や三重県あたりの経済界には、近江商人の三方よしというマインドがあります。黄金律というより、情けは人のためならずに近いマインドだと思います。

★戦国の不安定の中で安定を求めるマインドは、意外と普遍的価値を持つのかもしれません。

★落合父子のグローバルな観点とは真逆な日本ですが、そういう日本だから落合父子のような魅力的なアイデアが生まれるという考え方もあります。

★そうそう、テレ朝 1/4(水) 8:09配信で、こんな配信がありました。<日本は今月から2年間、国連安全保障理事会の非常任理事国となり、今月は議長国も務めます。石兼国連大使は「理事国の責任はこれまで以上に大きくなっている」と述べました>と。

★落合陽一さんの先輩たちは、そうはいっても世界のリーダーシップを発揮するという知性はもっているのです。ただ、それは黄金律によるものではないでしょう。たぶん「新しい自然」というマインド。情けは人のためならずは、まさに日本的な自然情緒の象徴だと思います。落合さんの新しい自然システムは、まさに彼らの考えるムーンショット構想2050のベースになっていると思われます。

★麻布マインドではなく開成マインドですね。数学的思考の行き着く先。

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2023年 日本の近未来や世界のコトを多くの市民が考えることが日常になる(2)吉田麻也選手 子供たちに英語の学びのすすめ

★未だに英語社内公用語批判がある日本です。4技能英語を大学入試に適用することも批判される日本です。英語を強調すると、本質的ではないと批判する見識者もまだいます。そういう方々が、何を理想としているのかわかりません。実存的な現象はたしかに、本質に先行するわけですから、それを批判されても。そう思っていたら、今回のサッカーのワールドカップで、サッカー選手が世界で活躍するのは必須で、そのためにスポーツ能力だけではなく、英語が大事だというのが当たり前になっているではないですか。

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★特にあの吉田麻也選手は久しい間、小学生から「サッカー選手になりたいんですけど、何をしたらいいですか」と聞かれたら、「英語を勉強したほうがいいよ。」と。しばらく、これは意外な答えだと語り継がれてきましたが、もはや意外でも何でもなくなりました。

★ワールドカップの番組は、バックヤードも見せてくれます。すると、試合に向けてのミーティングや試合前のロッカールームでの様子では、コミュニケーションがいかに重要かということが公開されていました。

★日本の選手が海外のチームで活躍するには、同じようにミーティングやディスカッションに参加しなくてはならないわけです。ですから、あの川島選手などは、英語以外に、イタリア語やオランダ語も堪能だという話ですね。

★もちろん、大学入試と違い、英検準1級以上が必要だという話ではありません。

★しかし、サッカー選手は、ディスカッションなどは、資格試験の基準を「振り蹴っている」可能性があります。

★もはや、そのようなサッカー選手の英語力は、使える英語力とか意思の疎通をはかる英語というレベルを超えているからです。エネルギッシュで賢い人間力としての英語力なのでしょう。

★言語道具論から言語存在論への転換をサッカー選手をはじめ、グローバルな地平で活躍しているアスリートは語っているような気がします。そして、グローバルな世界は終わったとかいう人は、それは現状の世界経済の懸念の話であり、ひと・もの・かね・情報・文化・心がone earthになるダイナミズムは止められないわけです。

★そんなのは、表面的な現象に過ぎないという人もまあいるでしょうね。でもだいたい表面的な見方しかしないと語る人の多くは、自分は安全地帯にいて、高みの見物をしているということに気づいていないのです。

★それはともかく、グローバルな視野を養う教育は当たり前になったということですね。そのときに、英語ぐらいは使うでしょうというのも当たり前になっているわけです。

★2020年から小学校高学年では、英語は教科になっています。その前から移行措置が行われていますから。2030年には、確実に当たり前になっていますね。昔から中学以上で行われていたわけですが、授業が主体的・対話的で深い学びだったわけではなかったですが、今回の英語の教科化は、授業の転換とも同期しているのです。

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2023年 日本の近未来や世界のコトを多くの市民が考えることが日常になる(1)探究活動の国民的定式化

★正月三が日、ニュースや本を読んでいました。いつもの年とは違い、日本全体が冷静に物事をみて、確実に未来をつくっていく肯定的な動向が静かに進んでいると感じました。たとえば、孫とおかあさんといっしょなどEテレを見てすごしていたので、ずっと2チャンネルを流していたら、NHK高校講座の総合的な探究の時間の再放送が流されているのに遭遇。しばらく見ると、標準化されていていい感じだなあと。

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★新しい探究ではなく、よくある探究を定式化していました。しかし、リサーチや観察の動機、探究のプラン、実行体験、気づきや仮説、再度体験、リフレクション、そして仮説の検証の結論、次に繋がる課題の設定など、探究活動の組織化ができていました。サイトをみると、やはり、すべての回が、この組織化にしたがっています。いわば探究のルーチンですね。それができあがっていました。

★テーマや社会課題はよくあるもので教科書的知識を超える者は少ないようですが、そこはNHK講座ですからそうなるのは当然です。この組織化は、指導案型というよりインストラクショニズム型であり、多少enquiry based learningにもなっていました。

★たしかに、テーマや問題の設定はストレオタイプですが、この探究の組織化が生徒のものになれば、自分で問題を発見し、解決する活動をしていくでしょう。そうなれば、生徒自身が自らPBLに移行していけます。そのために、知識・理解の段階から適用の段階に移れるように、ワークショップ型の授業構成になっていました。

★NHK高校講座で、定式化されているのですから、これは特別な組織化ではなく、広く全国の高校生が扱えるし、学校の教師が参考にできます。

★そういえば、子どものための哲学対話もNHKで扱われていました。多くの学校で、取り入れられています。

★ただ、哲学の方は時間割以外で設定しなければならないので、公立学校ではなかなか難しいですね。学校の働き方改革問題は、時間割外の哲学対話には消極的になるでしょう。

★しかし、総合的な探究の時間は、少ないと言えども時間割の中でできます。このような仮説を立てて、インタビューや実験をして、検証する学びのプロセスを日本の高校生がみな習得すると、すごいことになります。

★主体的・対話的で深い学びもこの探究の時間と相互作用を果たすことになるでしょう。

★このような深い学びの授業や探究の授業を通して各生徒がそれぞれの思考過程ルーチンをつくるようになると、学校の教師が過小評価しても、生徒の方はそんなのは関係なく、自分の未来を拓くでしょう。自分の未来は、善き教師に遭遇した時、開かれることもありますが、そうでない教師に出会ったときこそ、予測不能に対応する探究する思考のルーチンが役に立ちます。自分で乗り越えていけばよいのです。

★深い学びや探究は、真を自ら追究できるようにする思考過程を身に付けることですから、レッテル張りする教師(良い悪いにかかわらず、人の意見はその人のものの見方に依存している)のそのレッテルを自らぶち破っていけばよいわけです。

★NHKを協力者にする文部科学省恐るべしですね。

★もちろん、それでみんながそのレベルの探究を体験するかどうかは、ちゃんとリサーチしなくてはなりません。おそらく文科省はアンケート調査やヒアリングをするでしょう。

★しかし、それは時間がかかります。効果的なPBLや探究はいかにしたら可能か?そこは問題です。しかし、主体的・対話的で深い学びや総合的な探究の時間が行われるのが当たり前となることは、対話やディスカッションが当たり前になるということです。

★これを抑圧することは反動的とみなされる時代がやってきたことは確かだし、対話やディスカッションが必要だとする市民性は、世界のリーダーシップを発揮できます。地政学上、日本のデモクラシーの質の向上やもっと転換することに期待がかかるので、こうした教育は世界にとっても歓迎されるでしょう。

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2023年1月 2日 (月)

ドネラ・プロジェクト(27)ウサギアヒル 未来思考のC‐Question

★2023年はウサギ年。干支がウサギですから、除夜の鐘がなるや、低迷した政治経済、そして生活世界が飛躍すること・転換することが願われていますね。次の図は、ウィトゲンシュタインが「哲学探究」で、心理学者ジャストローの図版から引用したウサギアヒルを書き写したものです(もとはなめらかな曲線なんですが、書き写したので、ぶれています 汗)。ものの見方・考え方・感じ方を変えることについてウィトゲンシュタインが考察する契機とした幾つかの図版を使っているのですが、ウサギ年の2023年には、こちらがよいかと。

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★未来思考や主体的関係性を生み出す体験のうちの1つC-Question体験として年始にはなかなかよい問題かと。新学習指導要領で「探究」が騒がれていますが、このトリックアートを使っているウィトゲンシュタインの「哲学探究」を読むのもいいかもしれませんね。もちろん、哲学ではなくて、「錯視」を扱う心理学に興味を持つのもよいですね。

★しかし、未来思考や主体的関係性は、要するにものの見方・考え方・感じ方を多角的に多義的に考察する場であり、そこから主体的関係性がその関係性を持続可能にするwell-beingな状況を創るアクションを起こせるとよいわけです。

★このウサギアヒルは、この図にこだわるのではなく、森を歩いていても、渋谷を歩いていても、共に体験する者どうしが語り合うと、ものの見方・考え方・感じ方が違うという日常経験を言語化・記号化・象徴化・・・なんでもよいのですが、ハッと気づかせてくれるCross Boundaryな問題だし、Critical Thinkingを刺激する問題だし、Criativityを開放する問題です。思考コードでいう、C軸問題です。

★このようなC-Questionは世の中には山ほどあります。それを集積し、あるいは新たに創り、未来思考×主体的関係性WSをやろうと今年は仲間とプロジェクトをつくりはじめています。

★このウサギアヒルから、子どもたちは、うさぎとかめのイソップ童話を連想するかもしれません。こどもたちは、STEAM体験も並行して体験していきますから、そもそもなぜウサギカメなのかと。ウサギアヒルと同様にものの見方・考え方・感じ方に変化が起こります。ウィトゲンシュタインにならってアスペクトの変化(アスペクトトランスフォーメンションだとしてATと呼びましょう)が起こります。

★いろいろな角度から考えるわけです。文化人類学的記号論的に考えれば、イソップ物語の世界中への伝播の痕跡を巡る壮大な旅に想いを馳せるかもしれません。その前に、日本文化に根づく資料がありますから、それをたどってみるのもよいかもしれませんね。

★あるいは、うさぎとかめのアルゴリズムについて考察するかもしれません。すでにプログラミングの世界にはあるわけですから、そこから自分もやってみてもよいかもしれません。テクノロジーやエンジニアリングの前に、それは数学だとなってもおもしろいかもしれません。中学受験では速さの交差問題でもよく出題されています。

★あるいは、その速度の違いが、生存年数の違いに結びつくと気づくかもしれません。ネットで調べると、すでにカメが長生きすることを研究しているバイオロジー世界が広がっています。AIによる計算はすごいですね。

★当然遺伝子というかゲノムの解析ですから、分子や原子や陽子や電子などなどの話になるわけですが、もし数学的発想が発動すれば、つまり分解と統合と変形という思考が発動すれば、あらゆるものは分解でき統合できるのではないかと。

★ただ、それにはエネルギーが関係しています。そして、そのエネルギーが、気候変動に関連するような話に飛ぶし、そのエネルギー源の1つ光合成の解析もしたくなるでしょう。

★もっとも、そういう先行研究はすでにあります。とはいえこれらの先行研究はまだまだ成功はしていません。みんなで研究したいものです。

★しかし、いずれにしてもこうして眺めていくと、世界はすでに未来をよくしようとして進む未来思考が作動し、そこからうまれた発想を協働して主体的関係性を作りながら、進めているということが見えてきます。

★でも、まだまだみながそのことに気づいているわけではないのです。新しいものというより、すでに生まれている、いや人類とは誕生以来、未来思考と主体的関係性を作ってきたからこれだけサバイブしてきたし、それを一握りの人間だけが稼働させていたから、持続可能を破壊するような事態が起きてもいるわけです。

★ルソーのいう自然状態は仮説的論理の問題ではなく、実存的問題としてすでにあったし、今もあるわけです。ただ、それを阻害する実利的問題がやはりあるのですね。ルソーが人間不平等起源論で示したC-Question「鹿狩りの寓話」にまたまた戻ってしまいます。

★C-Questionは始まりであり終わりでもあるのかもしれません。興味と関心から始まる探究とかPBLとか未来思考。1人ひとりがC-Questionの響きを奏でるアートなのかもしれません。

★そうそう、「鹿狩りの寓話」にはうさぎが登場します。ウサギシカ問題だったわけですね。。。まったく世界は不思議の国のアリスです。

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2023年1月 1日 (日)

ドネラ・プロジェクト(26)個人の主体的システム思考を生む教育環境デザイン

★昨年は教育環境デザインのモデルを追ってきました。それについては昨日少し触れました。いろいろな図をぐるぐる書き直してきたわけです。昨日それなりの一般化というかモデルの図を書いたら、昨夜寝られなくなり、うとうとしていたら、次のようなシンプル(?)な図が浮かびました。忘れないうちにメモしました。

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★これまで、幾つもの図がぐるぐる頭の中にでてきては、書き留めてきました。しかし、主語が学校という教育環境デザインでした。たとえば、次のような図をぐるぐる回していたわけです。

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★ぐるぐるというWSは、結構気に入っていて、20年以上使っているのですが、自分ひとりでも頭の中でよくやるのですが、するとオッ♬という感じで新しいイメージが浮かびます。

★今回は、そもそもそのような学校の教育環境デザインが、生徒1人ひとりに内化するというかシンクロするのでなくては、学校卒業後意味がないと思い、主語を生徒というより、一生ものだから個人にしてみようと思ったわけです。

★すると、STEAMとか4XとかELSIをバラバラに記述していたことに改めて気づきました。未来思考とか主体的関係性を生み出すインターサブジェクトなプロジェクトの教育環境には、これらは全部関係しているし、学校の先進的環境も関連しているし、もちろんマルチバースも。

★これで、個人と社会が主体的関係性として統合されるというかメビウスの輪になるのかと思ったのですが、この1年またひとりぐるぐるしたり、仲間とWSぐるぐるしたりしているうちに変わるでしょう。トランスフォーメンションということで。なお、この個人の主体的システム思考を生み出す教育環境を創っていく段取りを昨年していました。名称も決まっていますが、そのうち東京私学教育研究所の所長平方先生から出てくると思います。すでに理事長校長会では、予告編を公開したようです。

★私は、仲間を募って、発想やコンテンツ、プログラムをつくって平方先生を通して私学全体を応援していきたい(たんなるおせっかいですが^^;)と思っています。どうなるかは予測不能ですが(汗)。

★今年もよろしくお願いいたします。

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