パウロの形成的評価
★この時期は、どこの学校でも、期末試験や卒業試験のシーズン。聖パウロ学園も例外ではありません。職員室は成績処理と教科の会議、最終的な成績会議と生徒1人ひとりにエンパワーメントできるエバリュエーションをどう編集するのかクリエイティブなコミュニケーションで溢れています。最近では定期試験をやらないということが注目を浴びているようですが、それは目に見える部分ですね。大事なことは目に見えない領域です。それは生徒とエンパワーメントエバリューエーションをいかに共有できるかという教師の行為が本質的なことなのです。
★パウロの場合、総括的評価といういわゆるスコア成績と学期ごとの生徒の学習状況や心理的状況、学習の方法などどのように成長しているか、今後どうしたらよいかの提案など800字から1000字くらいのコメントを併記します。つまり、ここは形成的評価の部分です。
★総括的評価は、定期テストのスコアだけではなく、各教科のミニテストのスコア、自主学習の状況なども評価の対象になっています。知識・技能、思考・判断、主体的な学びの経験値などが1人ひとりモニタリングできるようにしています。
★そして、形成的評価としてコメントが添えられます。自分が一体何者で、自分はどう人に役立つ価値を持っているのか、思いやりは発揮しているのかどうかなど、パウロのスクールモットー(理念)をどのように具体化しているかというコンセプトレンズを共有してもいます。
★そんなことは絵に描いた餅だろうと思われるかもしれません。しかし、パウロの主幹であり高2の学年主任で、担任でもある大久保先生のコメントを分析すると上記の写真のようになるのです。ちゃんとそうなっているのです。
★私の役目は、先生方の授業ーテストー評価の一連の怒涛の過程の最後の部分のコメントを確認することぐらいなのですが、これが実に楽しいのです。なぜなら、そのコメントには、先生方が生徒と毎日どのように共に学校づくりをしているのか人間作りをしているのかイメージできる脳内空間がバーンと広がるからです。
★大久保先生に読んでくださいと手渡されたコメント集を読みながら、1人ひとり生徒の具体的状況について記述しているところをマーカーでチェックしていきます。そして、そのチェックした場所を抽象的な言葉に置換えてポストイットに書き込んでいきます。この作業はちょっと負い目があります。というのも、分析というのは、生き生きとした大久保先生の息吹までは汲み取れないからです。
★しかし、生徒が自己変容していく環境デザインの達人である大久保先生は、どんな視点でエンパワーメントエバリュエーションを創り上げるのか知りたいという欲求を抑えられませんでした。
★ポストイットを整理していくとたくさんの視点がでてきました。それらを大きく3つくらいにわけて並べてみました。そして、それを図式化してみました。
★生徒と共にどんなポテンシャルがあるのか共同認識し、それを現実化するために多角的な視点から生徒の具体的状況を言語化しています。これを読んだ生徒は、自分の価値をこれからどのように意味づけ直すことができるのか、自己変容していけるのか実感を抱くことができるでしょう。もちろん、最も大事なことは、上記の図にあるような多角的な視点(もちろんまだまだあります)で、日々生徒と対話をし授業をしているのだということです。それが成績表のコメントによって逆照射されているわけです。
★実際、卒業する時、生徒は自分がこんなに変わったのはなぜかを語り合う時間を担任の先生と過ごすわけです。人生から見れば瞬間かもしれませんが、パウロの3年間は、永遠の3年間です。大久保先生をはじめ、パウロの先生方の日々の言葉、行いからそう感じることができるのです。
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