生徒指導提要(改訂版)公表される(2)主体的・対話的で深い学びが必要なわけ 見えないゆらぎに気づく
★今回の生徒指導提要改訂版で記述されている生徒指導と教科指導の一体化、あるいは相互補完関係づくりなどが進むことは生徒1人ひとりの成長を生み出す最強のサポートになると思います。そのとき、「主体的・対話的で深い学び」を生徒自身が主体的にできるようになる環境づくりを教師がするのは、もはや説明するまでもないでしょう。
★提要の図にあるように、まずは生徒全員が主体的・対話的で深い学びを経験し、そこで成長の兆しがみえれば、ファシリテートしていくわけです。そのとき、しかし、成長の兆しとは反対の不安や鬱屈した気持ちや安定しない行動が目立ち始めると、逆成長につながる可能性がありますから、図にあるように課題未然防止教育を行います。
★しかし、これは必ずしも主体的・対話的で深い学びを行わなくても目に見える形なので、教師は対応できます。おそらく提要が改訂される前からこのことは行ってきたでしょう。ところが、うまくいかないことが多かったわけですね。なぜでしょう。
★それは気づいていても対応が遅れるということがあったからとされることが多いですね。ですから学校組織を隠ぺい体質からオープンに情報を共有できるようにしようという話が多かったですね。これは確かにそうなのです。とても大事なことです。
★ただ、この図の課題予防的生徒や困難課題対応的生徒は、どんなにオープンな組織にしたとしても、主体的・対話的で深い学びの環境をつくっていない環境が、実は生み出していたということが見過ごされているかもしれません。
★しかも、それは生徒が通っている学校だけの話ではなくて、世の中がずっと主体的・対話的で深い学びの環境をつくってこなかったために、大人もまたそのような生徒を生み出してしまう危険性をもってきた可能性があります。
★提要には、未然に防ぐ対応について、こう書いてあります。
課題早期発見対応では、課題の予兆行動が見られたり、問題行動のリスクが高まったりするなど、気になる一部の児童生徒を対象に、深刻な問題に発展しないように、初期の段階で諸課題を発見し、対応します。例えば、ある時期に成績が急落する、遅刻・早退・欠席が増える、身だしなみに変化が生じたりする児童生徒に対して、いじめや不登校、自殺などの深刻な事態に至らないように、早期に教育相談や家庭訪問などを行い、実態に応じて迅速に対応します。
特に、早期発見では、いじめアンケートのような質問紙に基づくスクリーニングテストや、SC やスクールソーシャルワーカー(以下「SSW」という。)を交えたスクリーニング会議によって気になる児童生徒を早期に見いだして、指導・援助につなげます。
また、早期対応では、主に、学級・ホームルーム担任が生徒指導主事等と協力して、機動的に課題解決を行う機動的連携型支援チームで対応することとなります。しかし、問題によっては、生徒指導主事や生徒指導担当、教育相談コーディネーター(教育相談担当主任等)や教育相談担当、学年主任、特別支援教育コーディネーター、養護教諭、SC、SSW 等の教職員が協働して校内連携型支援チームを編成し、組織的なチーム支援によって早期に対応することが望まれます。
★これは基本的にはそうだと思います。しかし、予兆行動の前に見えない生徒の心のゆらぎを見つけるところが、もう一つ加われば最強だと思います。それには、一方通行的な授業ではなかなか見つけることができません。
★では、主体的・対話的で深い学びの環境を創れば見つけられるかというと、実はそうではない場合もあります。むしろ、現状の主体的・対話的で深い学びは、スタイルとしてはペアワークやディスカッション、プレゼンテーションを行っているかもしれませんが、意外と主体的に生徒は行動していなかったり、対話も誘導的だったり、深さも問題の難しさだったり、一方通行より生徒の見えないゆらぎが見える確率はあがるかもしれませんが、なかなか。。。
★生徒が主体的になり、多様で複眼的な思考をしながら対話ができたり、難しいのではなく、本質的なところに目が向くような深い学びの環境を創ることはいかにしたら可能なのでしょうか?
★実はみえないゆらぎは、そういう環境ができない場合に生まれてきます。生まれてくるというより、教師が見ることができないマスクがかかってしまっているのです。
★そのことに気づくのが、本来の主体的・対話的で深い学びなのです。なんか堂々巡りですね。
★しかし、ここをなんとかする教師のマインドとスキルをトレーニングするチームが日大文理学部にあります。いずれご紹介したいと思いますが、このことに格闘してきたのが、キエルケゴールをルーツとする実存主義者、とくにウィトゲンシュタインだったりするのでしょう。またフッサールに代表される現象学派でしょう。しかし、なかなか乗り越えることができなかったわけです。結局はデューイの系譜に立ち戻るのかもしれません。いずれにしても、これらの人びとの発想だけではなく、もっと多くの発想をいかに統合するかが問われているのかもしれません。
★今のところ、ドネラ・メドウズーピーター・センゲの系譜に期待したいとは思っています。
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