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2022年12月

2022年12月31日 (土)

ドネラ・プロジェクト(25)教育環境デザインはマルチバースに拡張する

★今年は「一般財団法人東京私立中学高等学校協会」の会長である近藤先生及び同協会の教育研究所所長であり「21世紀型教育機構」の理事長である平方先生をはじめとするみなさま、「首都圏模試センター」の山下さん(取締役代表)及び北さん(取締役・教育研究所長)をはじめとするみなさま、「GLICC」の鈴木さん(代表)には大変お世話になり、ありがとうございました。この4つの機関では、多くの私立学校関係者及び識者、企業家とネットワークをつないでいただける機会をいただきました。そして、東京私立中学高等学校協会の11支部のメンバー校の1校である工学院の田中歩先生(同校教務主任)には、勤務校における多様な局面で私が判断する時のものさしのモニタリングの相談にのってくださり、本当に助かりました。ありがとうございました。

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(工学院の生徒がそれぞれのマルチバースで体験を深化させていきますが、それを象徴する天文台がすてきです)

★この4つの機関で広がり深まったネットワークで多くの方々から学び、shuTOMOで「トランジション教育と思考コード」の連載を貫徹できました。7月号・9月号は八雲学園、10月号は和洋九段女子、11月号は工学院大学附属、12月号は聖学院、1月号は成城学園というラインナップで、それぞれの私学の独自のトランジション教育をリサーチさせていただけました。そして、その教育が思考コードのC軸に重きを置いていることがわかり、それぞれのクリエイティブラーニングが教育デザインのコアにしっかりあることを検証できました。

★また、クリエイティブラーニングのようなプロジェクト型学習は、そのベースに体験という生徒が実存的思考や行為ができる土台があることも了解できました。英語やICTなどは、もはやこのクリエイティブラーニングでは欠かせない道具です。

★特に今回のパンデミックで、私たちはICTがなければ感染症対策をするときに乗り越えるのは難しいということを身に染みて体験しました。それに、英語やICTがなければ、衛星を使ってロシアのウクライナ侵攻から市民が脱出する方法も難しかったでしょうし、ロシア市民の中にも多くの方が英語とICTを駆使してウクライナ市民を脱出させることも難しかったでしょう。

★グローバルな世界は終わったとかいう方もいますが、今回のウクライナ問題は、国と国というより政治の問題であることが色濃く、互いの市民はむしろICTと英語を駆使して、国境を越えて危機を回避するボランタリーな多様なコミュニティーを立ち上げています。まさにマルチバースが宇宙にだけではなく、地球上でも広まっています。

★このような越境思考や行為は、まさに未来思考という以外に何か言い方があるでしょうか。そして、国を超えて、危機回避の命がけの関係性を作るのは主体的関係性というほかに何か言い方があるでしょうか。

★2023年を迎えるにあたり、21世紀型教育(広義の意味)が、このようなまさに予想不能な局面で未来思考を作動させ主体的関係性を生み出していく教育環境デザインを積み上げていることがわかりました。

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★この図は、shuTOMO11月号で工学院の教育環境デザインの図をベースに再編集したものです。工学院の場合、コア体験以外にバッファー体験が多様というより、その都度生まれてくる感じです。生徒1人ひとりが、自分の興味と関心を深化させるためにどんどんチャレンジしていくのです。ちょっと他の学校とは違い、学校の教育をはみ出ていくわけですが、それまでも想定して教育環境デザインをしているわけです。

セカオワが“Habit”でレコード大賞を獲得しましたが、そのミュージックビデオは舞台が学校でした。複雑系の主体的関係性を生み出すには、脱慣習。壊して見せろよと歌っているのが印象的でした。

★共感的コミュニケーションをベースにしている田中歩先生。同調性を壊して、次の世界に羽ばたくその勇気とチャレンジングなモチベーションに同期するようなコミュニケーションを大切にしています。未来思考と主体的関係性が生まれる全員で実践するコア体験から、1人ひとりの独自の多様な体験が生まれる教育環境デザイン。グローバル教育というのは、one earth市民=宇宙船地球号の乗組員として主体的関係性をつくりだし、マルチバースをそれぞれが生み出していくことになるわけです。

★来年は、この図を端緒に新プロジェクトを幾つか実施していきたいと思います。すでに、昨年から徐々に始まっているプロジェクトもあります。成城学園の青柳先生、湘南白百合の水尾先生、工学院の鐘ヶ江先生、首都圏模試センターの北さん、ノイタキュードの北岡さんと対話を始めました。そして、歩先生には、その都度アドバイスをもらっています。この契機が、またほかのプロジェクトにつながり、たくさんの方とコラボさせていただことになると思います。来年もよろしくお願いいたします。

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2022年12月30日 (金)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(23)湘南白百合の生徒が創るコミュニティ“SEE” まさにブランドアクティビズム

★12月28日(水)、世の中仕事納め。学校は少しはやめなところもありますが、そうでない学校もあります。頭が下がります。勤務校も高3有志の生徒が担任と31日まで受験勉強しています。頑張れ受験生!そんな年末を迎えていますね。

★さて、その日、本ブログで、「2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(22)帰国生入試動向 データ更新 大妻中野などの凄さの理由」という記事を掲載しました。すると、その夜20時前に、湘南白百合の教頭水尾先生からメールをいただきました。ギリギリまで学校でお仕事をしていたということです。本当に頭が下がります。

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(湘南白百合の“SEE”の活動シーン。写真は同校サイトから)

★その記事に、次のような湘南白百合関連文章を書いたので、わざわざ御礼のメールでした。

「一般生も含めて定員がもともと少ない湘南白百合は、一見すると目立ちませんが、その小規模定員を考慮すると、志願者数も多いし、前年対比も伸びています。湘南白百合の特色は、学校全体が、すでに英語教育という意味ではないグローバルな教育を行っていること。もちろん、英語教育が充実していることは言うまでもありませんが、グローバル教育プログラムが多様でプログレッシブであること。one earthに対するケアリングの精神が必ずある未来のグローバル教育のモデルであることが実感できるプレゼンテーションやパフォーマンスが行われていることです。

 このようなプレゼンテーションやパフォーマンスは、いわゆる広報宣伝用のものではなく、ふだんのありのままの教育そのままを表現しているのです。そこが凄いですね。」

★そして、おそらくone earthに対するケアリング精神としてのグローバル教育について触れたため、タイミングがあったのかもしれません。というのは、ちょうど湘南白百合のサイトにそのことを象徴する同校生徒によるコミュニティ“SEE”の活動が立て続けに掲載されていたからです。

※“SEE”についてはコチラ

★水尾先生は「生徒たちはアクティブです。それを最大限、サポートしていけたらと思っています。今日の記事にあげましたが、生徒がSDGsの啓蒙をしたい!とまずは手始めに小学生への授業を行いました。自分たちでいろいろと企画・行動することが加速しています」と情報を提供してくださいました。ありがとうございます。

★サイトを調べてみると、湘南白百合小学校で、“SEE”のメンバーが、SDGsを学ぶワークショップを実行している記事が掲載されていました。しかも、そのサイトは、“SEE”のメンバーによる編集でもあります。 

★さらに、同校サイトには、“SEE”メンバーが主体的に「片瀬江ノ島のビーチクリーン」活動をしている記事も掲載されていました。

★このようなSDGsをめぐるケアリング精神を実行し、それを発信することは、利益を挙げながらも社会に貢献する新しいブランドを創る動きとして、コトラーらによって提唱されているブランドアクティビズムそのものです。ブランドというとマーケティングとかフィランソロフィーによってつくられてきたのですが、SDGsとパンデミックの経験以降、それだけでは不足していると捉えらるようになり、ブランド創出のパラダイムチェンジの時が到来したといわれています。その象徴がブランドアクティビズムです。まだ日本ではあまり広まていないかもしれません。

★ありのままのケアリング精神の実行そのものが、同時に湘南白百合のブランドを輝かしいものにしているわけです。人気が出るのも当然です。ナチュラルなブランドづくりを水尾先生は仕掛けているのでしょう。見習わなくては!♪

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ドネラ・プロジェクト(24)教育における未来のトレンドハンティング ディビッド・クリスチャンの未来思考

★ディビッド・クリスチャンの新邦訳本<「未来」とは何か:1秒先から宇宙の終わりまでを見通すビッグ・クエスチョン>( NewsPicksパブリッシング 2022/12/21デイビッド・クリスチャン著, 水谷 淳・ 鍛原多惠子 翻訳)の10章あるうち2つの章を読みました。非真面目な読書をする私ですから、目次と注を先に読んで、最終章である10章「遠い未来ーさらに先に」から読みました。驚きました。コンサルティング会社の未来学者ではなく、オーストラリアのマッコーリー大学教授で、同大学のビッグヒストリー研究所所長が数十億年先の宇宙がどうなっているかから宇宙船地球号の話をするのですから。とはいえ、ビル・ゲイツとともに「ビッグヒストリー・プロジェクト」を立ち上げるくらいですからそのぐらいは当然なのかもしれません。

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★そして、もう一つ驚いたのは、「第8章近未来ーこの先100年」を読んだ時のことです。数十億年先の未来のトレンドハンティングを行いながら、21世紀現在から22世紀初頭にかけての近未来をどう読むのか?と興味と関心が湧いてきたので、読んだのです。

★すると、なんと、そこには宇宙船地球号をめぐるドネラ・プロジェクトそのものの着想が書いてあるではないですか。

★リソースは、私とは確かに違います。私はルソーという啓蒙思想家をドネラ・プロジェクトで未来のトレンドハンティングを行う時のコンセプトレンズの1つにしています。ディビッド・クリスチャンは、一世代若いコンドルセをリソースにしています。

★カントやマルサス、アダム・スミスは共通しています。「成長の限界」は共通していますが、ドネラ・メドウズを引用することはありません。SDGsは共通しています。

★どうやらリソースの違いはあるけれど、近未来に関するシナリオプランニングは私の考えと親和性があるということがわかりました。

★それにしても、黄金律が世界共通のルールとして重要になってくるという指摘も私と共通しているのは、ちょっと勇気をもらいました。

★来年4月からは、ドネラ・プロジェクトを少しずつコミュティ化していこうと思っていました。また荒唐無稽なといわれそうな気がして、少しだけ迷いもあったのですが、完全に吹っ切れました!♪

★21世紀型教育のエントロピー増大後、22世紀型教育が誕生するという最近の主張も、ディビッド・クリスチャン教授の未来のトレンドハントに重なるシナリオプランニングでもあります。

★それにしても、歴史観が壮大過ぎて、驚嘆です。しかも未来思考というのは関係性の時間を分析することによって未来トレンドハンティングを行うことだなんて!!面白すぎます。主体的関係性の構築が21世紀だと言い続けている私としてはこれもまた驚きだったのです。

★たしかに、Z世代やα世代には、このような意味での未来思考力が大事であることは間違いないでしょう。

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2022年12月28日 (水)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(22)帰国生入試動向 データ更新 大妻中野などの凄さの理由

★帰国生入試の志願者数のデータを更新しました。広尾グループとかえつ有明、開智日本橋、都市大グループが著しく志願者を集めています。グローバル教育をある意味教育の中核においていることがはっきり表明されていて、そのマーケティング戦略が引き続き成功しているというわけでしょう。そんな中で大妻中野は、たしかにグローバル教育に力を入れていますが、それを大妻のコア教育として位置付けているわけではありません。にもかかわらず、志望者数も多く、前年対比も伸びています。帰国生入試の保守本道という感じでしょうか。

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★海城学園、洗足学園、聖光学院、攻玉社、山脇も志願者数は多いですが、一見するとこれらの学校は同じカテゴリーにはいっているように見えますが、海城は少し意味合いが違います。グローバルな環境を、自前でプログラムしているという感じです。

★洗足学園は、国際学級以外に、留学制度が完備しています。海城とは少し違います。聖光学院や攻玉社、山脇において、帰国生入試の目的は独自のグローバル教育というより多様性を中心にした教育を重視しているという感じですね。

★いずれにしても、帰国生入試の志願者が多い学校は、そうとう強烈な特色を言語化あるいは見える化しているといえるでしょう。

★一般生も含めて定員がもともと少ない湘南白百合は、一見すると目立ちませんが、その小規模定員を考慮すると、志願者数も多いし、前年対比も伸びています。湘南白百合の特色は、学校全体が、すでに英語教育という意味ではないグローバルな教育を行っていること。もちろん、英語教育が充実していることは言うまでもありませんが、グローバル教育プログラムが多様でプログレッシブであること。one earthに対するケアリングの精神が必ずある未来のグローバル教育のモデルであることが実感できるプレゼンテーションやパフォーマンスが行われていることです。

★このようなプレゼンテーションやパフォーマンスは、いわゆる広報宣伝用のものではなく、ふだんのありのままの教育そのままを表現しているのです。そこが凄いですね。

★さて、本物のグローバル教育とは、海外大学進学実績を競うものではありません。英語教育の凄さでもありません。2030年、2050年のAI未来社会にあって、その未来をディストピアに導くのではなくwell-beingに導けるリーダーシップを発揮して主体的関係性をデザインできる人間力を生み出す誠の道を切り拓くのみです。

★ディストピアに導く可能性の高い人というのは、well-beingに進んでいると信じて疑わない無自覚な人です。2023年の中学入試は、そういうことが議論される時代になるでしょう。

 

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2022年12月27日 (火)

ドネラ・プロジェクト(23)価値自由と脱構造的コミュニケーションの狭間で果敢に活動している教育者たち

★昨夜、久しぶりに対面で、友人と対話をしました。極めて重要な教育活動をしている教育者というか教育コンサルタントです。友人の行っていることは複数の学校によって承認されているし、新しい大学入試を活用する人生を開いていくトランジションキャリアデザインの組み立てもしっかりしています。

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★しかしながら、価値自由な社会にあって、その価値が理論に先行するという実存主義的世間的広がり、それゆえ本来的なコトをああだこうだいう文化を受け付けない20世紀型社会の頑固な壁にぶちあたっていました。

★価値自由ですから、しかもその価値が「善」であれば、そこに構成主義的、あるいは関係主義的理屈はウザイわけです。

★経験主義は重要ですが、実際にはその背景に、理屈を見出す、あるいは普遍的なものも見出すという態度が必要だとするのが21世紀型教育ですが、善なる体験をすればそれでよいのだという傾向としての経験主義は、善なるがゆえに悪に転化する関係性を見えなくする場合があります。

★ウザイとかキモイという言葉は、ディスカッションを停止させ、モニタリングやリフレクションを排除してしまいます。善か否かだけの単純な判断を要求します。関係主義とは、多角的で、当事者では気づかない他の関係性をリサーチする手立てでもあります。いわゆる適正手続きの場でもあります。

★今の政権もそうですが、この適正手続きはウザイとかキモイという話になっていしまいますね。

★学校現場でも、道徳の話のときに、コールバーグやハーバーマスを持ち込むとそういう雰囲気が流れる時があります。こういう状況を作らないのが、マネジメントの1つだと感じているわけですが、学校現場と違い、友人の場は不特定多数のネットワークです。価値自由の波の中に漕ぎ出でています。

★21時に、お店がそろそろ閉店ですと。あっという間の3時間でしたが、来年もよろしくと別れた後、道々やはりコミュニケーションの思考コードが必要だなと考えていました。そしてふと、ハーバーマスは今どうしているのだろうと。アマゾンで調べたら、こんな書籍が今年出版されていました。

「批判的社会理論の今日的可能性」晃洋書房 2022/6/20

《編者》
永井 彰 (東北大学大学院文学研究科教授)
日暮 雅夫(立命館大学産業社会学部教授)
舟場 保之(大阪大学大学院人文学研究科教授)

《執筆者》
田畑 真一(北海道教育大学旭川校准教授)
久高 將晃(琉球大学人文社会学部教授)
小山 裕(東洋大学社会学部准教授)
箭内 任(尚絅学院大学総合人間科学系人文部門教授)
藤井 佳世(横浜国立大学教育学部教授)
小山 花子(盛岡大学文学部教授)
宮本 真也(明治大学情報コミュニケーション学部教授)
水上 英徳(松山大学人文学部教授) 

★ハーバーマスは90歳を過ぎても未だ健在だったのです。この本のおもしろいのは、ハーバーマスの次の世代のホネットについても論考しているところですね。アドルノなどフランクフルト学派の第1世代を批判的継承をしている第2世代のハーバーマスの両者をさらに批判的に継承している第3世代がホネットなのでしょう。第1世代は、ヘーゲル、マルクス、フロイトの統合理論が中心だったせいもあり、現代日本ではフランクフルト学派はどうなのかと。ハーバーマスは、広く多様な現代哲学を検証しながらインテグレートしているので、割と受け入れられてきましたが、それでも、同書の執筆者を見れば、社会科学の主流かどうかはわかりません。しかし、東大を中心とするとその周縁にこそ、未来を拓くカギがありそうですね。

★いずれにしても、主体つまり主観をどうとらえるかはフランクフルト学派でも重要な研究対象です。教育の世界でもっと論じられてもよさそうですが、さてはて。

★おそらく、表立っては論じられないでしょうが、文科省の中では、参考にされているはずです。ディスカッションなどの討議的な判断力育成について語られることもありますが、これはハーバーマスを無視して語れない領域でもありますから。

★しかし、ハーバーマスを持ち出して教育現場で議論をするのは、まず無理でしょう。

★フッサールならまだ一部の大学や教育現場でベースにして生徒理解の方法を考案し、実践しているところもありますが、これとて普通高校では無理ですね。それが日本の教育の現状です。

★こういうことを語ること自体、現場ではウザイしキモイのです。

★では、絶望的なのか?いやドネラ・メドウズなら大丈夫だと思います。実際その継承者ピーター・センゲやそのネットワークの知識人的活動家は人気です。

★ただし、彼らの理屈をいうとウザイとかキモイとなるわけです。したがって、その理論を語るのではなく、感じてもらい、共感してもらい、自然と使いたくなる、考えたくなるような体験、つまりワークショップが重要だということでしょう。

★しかし、これこそが21世紀型主体性の考え方を物語っている可能性があるわけです。

★2023年は、ここが大きなヒントかなと道々寒さを忘れて歩いて帰りました。

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2022年12月26日 (月)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(21)注目の森村学園

★帰国生入試の志願者数の伸びを見て、やはり森村学園はアップグレードしたなと感じました。新校長のマックスウェル先生と学内の先生方のマインドがうまっく一致すれば、とてつもない21世紀型教育を実施できると思っていましたが、どうやらうまく相互適合しているようです。

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(写真は同校サイトから)

★ネイティブスピーカーの教師が多いかどうかというより、校長自身が外国人です。21世紀型教育は、まさにマックスウェル先生の十八番です。実践面も理論面も実績を出す教育方法論も完璧ですし、そもそもマックスウェル先生はもともと凄腕の教育コンサルタントです。

★20世紀型の頑迷固陋な教師とはもしかしたらうまくいかないかもしれないけれど、柔軟でチャレンジ精神旺盛な教師とはケミストリーが起こるなと思っていました。

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★森村学園の教師は、もともとグローバルセンスと言語技術を大事にしています。マックスウェル先生のコンセプトとシンクロしたのでしょう。

★かつて、森村理事と話した時に、彼女は幼い時、英語は家庭で学んだと語っていました。家庭教師がいたわけですね。おそらく外国人だったでしょう。

★元東京女学館の理事長渋沢雅英先生も流ちょうな英語を話していましたが、東大の後、アメリカに留学しています。

★何が言いたいかというと、グローバル教育は、疑似体験ではなく、丸ごとグローバル体験をするに限るということでしょう。

★思考力を育て、あとは外国の方々とダイアローグやディスカッションをする環境を創るというシンプルな教育環境デザインをしている21世紀型教育を行っている学校が注目を浴びていくでしょう。

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2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(20)帰国生入試の動向から見える新しい動き

★2023年度帰国生入試の志願者数が出そろってきました。まだまだ中間澎湖港段階ですが、大まかな傾向は見えます。日能研倍率速報2022年12月23日現在のデータを使って、志願者数順位と前年対比順位を出してみました。志願者数10人以上の学校に絞ってみました。慶應義塾中等部や三田国際など未公開のところもありますから、あくまで中間報告です。

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★常連の学校が45校という感じですが、この45校の志願者総数は、前年より減少しています。なぜでしょう?帰国生乳牛人気が減退というわけではなく、あくまで予想ですが、パンデミックとロシアのウクライナ侵攻などのグローバルクライシスの影響があるのだと思います。

★にもかかわらず、三輪田、湘南白百合、大妻中野、海城、順天など21世紀型教育をしっかり推進している学校は順調ですね。

★森村学園が帰国生の志願者を伸ばしているのは、大胆な体制変更によるものと予測します。注目していきたいと思います。

★かえつ有明は相変わらず志願者は多いですが、前年対比は減っています。これは敬遠されているということもありますが、おそらく帰国生の条件を少し絞っているのだと思います。さらにハイクオリティを静かに目指しているというわけでしょう。

★中央大学付属もグローバル教育に力を入れているのでしょうが、他校と違い、大学で実施しているELSI関連のグローバルプロジェクトが影響しているのかもしれません。ELSIは、医学部で話題になっていますが、倫理と法制度の側面からは、文系も大いに参加できる社会課題解決プロジェクトなのです。

★このプロジェクトは文理問わず全学部で研究できるし、実用的な研究になります。2050年のムーンショット計画にもつながる可能性があります。

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2022年12月25日 (日)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(19)21世紀型教育を実施している私立中高一貫校 とりあえず114校

★前回、鈴木さん(GLICC代表)とGWEで対話した内容を少しお伝えしました。2023年は、首都圏の私立中高一貫校が21世紀型教育にどんどんシフトしていくダイナミズムが起こると。そして、当然21世紀型教育のそれぞれの特色が魅力となって、人気もでてくると。ある意味、21世紀型教育か20世紀型教育かの競争ではなく、21世紀型教育のそれぞれの魅力の競争ということになるのではと仮説をたてているわけです。

★具体的にどれくらい21世紀型教育にシフトしているのかというと、GWEで私が典型例として挙げた40校強と首都圏模試センターが下記の写真の冊子で紹介している90校強の学校です。114校(両者で重なてっている学校もあるため、そこは調整をしました)となりました。とりあえず、その学校を五十音順に並べてみます。

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跡見
市川
上野学園
浦和実業学園
江戸川女子
桜美林
鷗友学園女子
大妻
大妻多摩
大妻中野
大妻嵐山
海城学園
開智日本橋
かえつ有明
川村
神田女学園
関東学院六浦
北鎌倉女子学園
北豊島
共立女子
共立女子第二
京華
京華女子
啓明学園
麹町学園女子
光英VERITAS
工学院大学附属
国府台女子学院
國學院大學久我山
駒込
駒場東邦
相模女子
桜丘
サレジアン国際学園
サレジアン国際世田谷
静岡聖光学院
実践学園
品川翔英
品川女子学院
芝浦工大附属
渋谷教育学園グループ
十文字
淑徳
順天
城西大学城西
聖徳学園
湘南学園
湘南白百合
昭和学院
昭和女子大附属昭和
女子聖学院
白梅学園清修
水都国際
巣鴨
聖学院
聖光学院
成城学園
聖セシリア女子
聖ドミニコ学園
西武学園文理
聖ヨゼフ学園
成立
聖和学院
世田谷学園
専修大学松戸
洗足学園
創価
瀧野川女子学園
玉川学園
多摩大学附属聖ヶ丘
多摩大学目黒
鶴見大学附属
田園調布学園
東京家政学院
東京純心女子
東京女子学院
東京成徳
東京電機大学
桐朋女子
東洋大学京北
豊島岡女子学園
ドルトン東京学園
中村
南山女子部
二松学舎大学附属柏
日本大学第二
日本学園
日本工業大学駒場
日本大学豊山女子
八王子学園八王子
八王子実践
日出学園
広尾学園グループ
富士見丘
藤村女子
文化学園大学杉並
文京学院大学女子
宝仙理数インター
聖園女学院
三田国際学園
武蔵野東
目黒日本大学
目白研心
八雲学園
山脇学園
横須賀学院
横浜女学院
横浜翠陵
立正大付属立正
麗澤
和洋九段女子
和洋国府台女子 

★しかし、桐朋や武蔵は、入っているべきです。前回のGWEで22世紀型教育を先取りしていると位置付けた麻布や女子学院もとりあえずいれると、118校になります。まだまだ入れることができますが、これらの学校がことさら21世紀型教育や22世紀型教育を標榜しているわけではありません。114校は、あくまで首都圏模試センターのコンセプトレンズや私のコンセプトレンズで眺めたらというわけです。

★そして、首都圏模試センターや私と対話の中で、21世紀型教育を行っていると語っても違和感がほとんどないという暗黙の了解が取れている学校ということもあります。とはいえ、外から観察してその学校が21世紀型教育のカテゴリーはいるかはいらないかを判断することは、自由ですから、114校以外も見ていきたいわけです。

★なぜかというと、私立中高一貫校は、日本の教育のモデルであるし、そのモデルが21世紀型教育を行い、2030年SDGs問題や2050年ムーンショット構想問題で活躍する人間力を生み出すことは、日本にとって世界にとって重要な教育モデルになるからです。

★教育モデルができると、数学的思考が働き、世に広まっていくわけです。文科省も同じようなことを考えていますが、公立学校の現場の具体的多様な状況に配慮し、実現のシナリオを描くのは、なかなか困難なのです。やはり、自由度が相対的に高い私立学校がまず21世紀型教育モデルを作る方がはやいでしょう。

★となると、そのコンセプトレンズで眺める21世紀型教育の定義はしておかなければなりません。それで、前回のように定義というか指標をご紹介したのです。これについては、動画をご覧になっていただけると幸いです。 

★それから、私は、配信時、あとで語りますと言って時間がなかったため語れなかった、21世紀型教育の4つのタイプに対応する思考コード領域について補足しようと思います。

★首都圏模試センターと私のコンセプトレンズの共通点は、21世紀型教育はC3の領域の授業をなんらかの形で行っているという点です。

★そこは外せないわけですが、そこをコアに私はもう少し具体的に(抽象的なのですが)述べてみたいと思います。ちょうど年末年始は時間がありますから。(つづく)

 

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2022年12月24日 (土)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(18)私立中高一貫校が21世紀型教育にどんどんシフトしている

★21世紀型教育は2011年に発足した21世紀型教育機構(当時は「21世紀型教育を創る会」)の加盟校の動きから始まりましたが、今では私立中高一貫校はどんどん21世紀型教育にシフトしています。まだまだ公立学校は1部ですから、私立中高一貫校の21世紀型教育のシフトは着実に日本の教育を変えていきます。もちろん、私立中高一貫校が同機構の加盟校になるというのではなく、それぞれ独自の21世紀型教育を展開しています。それをどのようにカテゴライズするか?それについて、昨日GLICC代表鈴木裕之さんが主宰するGWEで対話をしました。

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(GLICC Weekly EDU 第109回「2023年中学入試が拓く未来~4つの21世紀型教育のダイナミズム」)

★21世紀型教育の定義は定まってはいないようですが、概ね次の点は共通しています。

❶2030年、2050年の未来社会を見据えて、さらには2089年あたりの22世紀型教育の準備段階が始まる未来社会を見据えて、そこで活躍できる人間像を想定しながら教育環境デザインをしている。

❷20世紀を貫く、実存主義的な主体性概念を主体的関係性にアップデートして生徒指導と教科指導、探究指導などを統合している。

➌その際の授業は「主体的・対話的で深い学び」をそれぞれに捉えて独自の展開をしている。

★❶と❷は、すでに2030年SDGs問題や2050年ムーンショット構想問題が広く展開されているので、予測不能でありながら、イメージはかなり世間に共有されています。これを否定して、20世紀型の社会を維持しようと考える私立中高一貫校はないと思います。

★GWEでは、最近メディアが取り上げないムーンショット構想2050を少し解説しました。、メディアが取り上げないので、陰謀説みたいなネガティブな発信がSNSではありますが、そこは冷静に見たほうがよいですね。すでにこの様々な開発プロジェクトに2000億円は投入されています。内閣府のサイトにはいれば、詳しくしかもアニメーションなども使って説明されています。内閣府のメンバーに進捗を聴くこともできます。

★そんな話をして、結構驚くべき大変化について鈴木さんと対話しました。ご視聴していただければ幸いです。

★そのうえで、そのような未来にマッチングする人材育成はどうするのかというと、それは今回の新学習指導要領で、やはり未来を見据えた授業「主体的・対話的で深い学び」が源泉になります。

★それはなぜか?についても少し話しています。

★そして、この「主体的・対話的で深い学び」のデザインの仕方が4タイプあります。これによって、21世紀型教育を4つのカテゴリーに分けました。

1.21世紀型教育機構タイプ

2.プログレッシブ教育タイプ

3.グローバル教育タイプ

4.DH型コミュニティタイプ

★このタイプは、「主体的・対話的で深い学び」をさらに4つに分けて、その組み合わせで定義づけています。それについて、具体的に40校強の学校を例に鈴木さんと対話しました。最終的には22世紀型教育にいちはやく到達するであろう学校についても語っています。

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★詳細は、ぜひ第109回GWEをご視聴ください。

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2022年12月23日 (金)

生徒指導提要(改訂版)公表される(2)主体的・対話的で深い学びが必要なわけ 見えないゆらぎに気づく

★今回の生徒指導提要改訂版で記述されている生徒指導と教科指導の一体化、あるいは相互補完関係づくりなどが進むことは生徒1人ひとりの成長を生み出す最強のサポートになると思います。そのとき、「主体的・対話的で深い学び」を生徒自身が主体的にできるようになる環境づくりを教師がするのは、もはや説明するまでもないでしょう。

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★提要の図にあるように、まずは生徒全員が主体的・対話的で深い学びを経験し、そこで成長の兆しがみえれば、ファシリテートしていくわけです。そのとき、しかし、成長の兆しとは反対の不安や鬱屈した気持ちや安定しない行動が目立ち始めると、逆成長につながる可能性がありますから、図にあるように課題未然防止教育を行います。

★しかし、これは必ずしも主体的・対話的で深い学びを行わなくても目に見える形なので、教師は対応できます。おそらく提要が改訂される前からこのことは行ってきたでしょう。ところが、うまくいかないことが多かったわけですね。なぜでしょう。

★それは気づいていても対応が遅れるということがあったからとされることが多いですね。ですから学校組織を隠ぺい体質からオープンに情報を共有できるようにしようという話が多かったですね。これは確かにそうなのです。とても大事なことです。

★ただ、この図の課題予防的生徒や困難課題対応的生徒は、どんなにオープンな組織にしたとしても、主体的・対話的で深い学びの環境をつくっていない環境が、実は生み出していたということが見過ごされているかもしれません。

★しかも、それは生徒が通っている学校だけの話ではなくて、世の中がずっと主体的・対話的で深い学びの環境をつくってこなかったために、大人もまたそのような生徒を生み出してしまう危険性をもってきた可能性があります。

★提要には、未然に防ぐ対応について、こう書いてあります。

課題早期発見対応では、課題の予兆行動が見られたり、問題行動のリスクが高まったりするなど、気になる一部の児童生徒を対象に、深刻な問題に発展しないように、初期の段階で諸課題を発見し、対応します。例えば、ある時期に成績が急落する、遅刻・早退・欠席が増える、身だしなみに変化が生じたりする児童生徒に対して、いじめや不登校、自殺などの深刻な事態に至らないように、早期に教育相談や家庭訪問などを行い、実態に応じて迅速に対応します。
特に、早期発見では、いじめアンケートのような質問紙に基づくスクリーニングテストや、SC やスクールソーシャルワーカー(以下「SSW」という。)を交えたスクリーニング会議によって気になる児童生徒を早期に見いだして、指導・援助につなげます。
また、早期対応では、主に、学級・ホームルーム担任が生徒指導主事等と協力して、機動的に課題解決を行う機動的連携型支援チームで対応することとなります。しかし、問題によっては、生徒指導主事や生徒指導担当、教育相談コーディネーター(教育相談担当主任等)や教育相談担当、学年主任、特別支援教育コーディネーター、養護教諭、SC、SSW 等の教職員が協働して校内連携型支援チームを編成し、組織的なチーム支援によって早期に対応することが望まれます。

★これは基本的にはそうだと思います。しかし、予兆行動の前に見えない生徒の心のゆらぎを見つけるところが、もう一つ加われば最強だと思います。それには、一方通行的な授業ではなかなか見つけることができません。

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★では、主体的・対話的で深い学びの環境を創れば見つけられるかというと、実はそうではない場合もあります。むしろ、現状の主体的・対話的で深い学びは、スタイルとしてはペアワークやディスカッション、プレゼンテーションを行っているかもしれませんが、意外と主体的に生徒は行動していなかったり、対話も誘導的だったり、深さも問題の難しさだったり、一方通行より生徒の見えないゆらぎが見える確率はあがるかもしれませんが、なかなか。。。

★生徒が主体的になり、多様で複眼的な思考をしながら対話ができたり、難しいのではなく、本質的なところに目が向くような深い学びの環境を創ることはいかにしたら可能なのでしょうか?

★実はみえないゆらぎは、そういう環境ができない場合に生まれてきます。生まれてくるというより、教師が見ることができないマスクがかかってしまっているのです。

★そのことに気づくのが、本来の主体的・対話的で深い学びなのです。なんか堂々巡りですね。

★しかし、ここをなんとかする教師のマインドとスキルをトレーニングするチームが日大文理学部にあります。いずれご紹介したいと思いますが、このことに格闘してきたのが、キエルケゴールをルーツとする実存主義者、とくにウィトゲンシュタインだったりするのでしょう。またフッサールに代表される現象学派でしょう。しかし、なかなか乗り越えることができなかったわけです。結局はデューイの系譜に立ち戻るのかもしれません。いずれにしても、これらの人びとの発想だけではなく、もっと多くの発想をいかに統合するかが問われているのかもしれません。

★今のところ、ドネラ・メドウズーピーター・センゲの系譜に期待したいとは思っています。

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2022年12月22日 (木)

生徒指導提要(改訂版)公表される(1)主体的・対話的で深い学びが生徒指導と一体化

★今月、生徒指導提要(改訂版)が公開されました。文科省のサイトによると、

<「生徒指導提要」とは、小学校段階から高等学校段階までの生徒指導の理論・考え方や実際の指導方法等について、時代の変化に即して網羅的にまとめ、生徒指導の実践に際し教職員間や学校間で共通理解を図り、組織的・体系的な取組を進めることができるよう、生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書として作成したものです。
 平成22年に始めて作成して以降、いじめ防止対策推進法等の関係法規の成立など学校・生徒指導を取り巻く環境は大きく変化するとともに、生徒指導上の課題がより一層深刻化している状況にあります。
 こうしたことを踏まえ、生徒指導の基本的な考え方や取組の方向性等を再整理し、今日的な課題に対応していくため、12年ぶりの改訂を行い、令和4年12月に公表しました。>

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★その目的は、「生徒指導は、児童生徒一人一人の個性の発見とよさや可能性の伸長と社会的資質・能力の発達を支えると同時に、自己の幸福追求と社会に受け入れられる自己実現を支えることを目的とする。」とあります。

★これは、まさに「主体的・対話的で深い学び」がベースになっているということがすぐにわかります。提要を読み進んでいくと、生徒指導と教科指導は一体化が肝心ですから、当然、その文言に「主体的・対話的で深い学び」との関係が明快に記述されています。

★そして、生徒指導の分類図は次の通りです。

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① 発達支持的生徒指導
全ての児童生徒の発達を支えます。
② 課題予防的生徒指導
全ての児童生徒を対象とした課題の未然防止教育と、課題の前兆行動が見られる一
部の児童生徒を対象とした課題の早期発見と対応を含みます。
③ 困難課題対応的生徒指導
深刻な課題を抱えている特定の児童生徒への指導・援助を行います。

★前提として、すべての児童生徒の発達を支えるわけです。発達というのは、知育・徳育・体育ですが、提要では、生徒指導の組織とか生徒児童のチームなども入っているし、なんといっても児童の権利に関する条約を重視することも記述されているぐらいですから、人間関係やコミュニケーション能力などの発達に関しても想定されています。

★だから、このような発達がうまくいっていない兆候に日ごろから気遣い、何かあるなと気づいたら、「課題予防的生徒指導」を行い、明らかにリスクがあるなと思う生徒には「困難課題対応的生徒指導」ということにんるわけです。

★いずれにしても、人権ベースに指導されることは言うまでもありません。

★人権ベースということは、児童生徒1人ひとりの「存在」とは何かに焦点が当たっています。ともすると、指導というと教師のものの見方・感じ方・考え方のシステムに偏りがちですが、それは生徒の「存在」のwell-beingを生み出し、守る環境を創るシステムであることが最重要だということでしょう。

★そのシステムは、実は「主体的・対話的で深い学び」というシステムがコアになるはずです。なぜでしょう?(つづく)

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ドネラ・プロジェクト(22)世界構築としてのSDGs 「ペタッとSDGs」を使って

★今多くの領域で、SDGsのグローバルゴールを達成するために、自分たちが何ができるのか主体的に考え行動するということが展開しています。主体的にそんなことをするなんて、近代的自我の「主観」の概念をガラリと変える事態だと思います。そのような活動をする際、どのような社会や世界が生まれてくるのか、そんなことも考えると、SDGsをきっかけに主体的に考え判断し行動することが、未来の好循環社会やwell-beingな世界を創ることにつながっていきます。

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★そんなわけで、勤務校の伊東先生と生徒1人ひとりの世界認識を広げるにはいかにしたら可能かについて対話をしたのです。伊東先生が担当している探究ゼミは、SDGsを踏まえた中華まんづくりへのチャレンジなのですが、その活動の背景にある生徒1人ひとりの世界認識を明らかにするにはいかにしたら可能かなど対話が深まっていったわけです。

★下記の2冊の本と出遭いながら、中華まんをめぐるSDGsの多様性について考えたり、ヨハン・ロックストロームのウェディングケーキモデルを見ながら、これを自分なりに主体的に再構築出来たらよいなあなどと話し合いました。

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★ウェディングケーキモデルを見た伊東先生は、すぐにこれですねと閃き、朝日新聞社が作成している「ペタッとSDGs」という付箋(写真参照)を購入し、これで、SDGsによる世界認識の図を生徒1人ひとりが、あるいはチームで再編集してみるのが第一歩ですねとなりました。

★ウエディングケーキモデルは、社会圏や自然圏、経済圏などの関連性をSDGsの17のゴールを当てはめて関連付けて世界認識がなされているのです。

★その世界認識のモデルを生徒が主体的にまず考えるところから始めてみようというわけです。1月3学期が開始したら、探究ゼミの中で行っていくというので、いまから楽しみにしています。

★ところで、こういう話をすると、そんな認識モデルをつくっても、現実に役に立たないという方もいますね。しかし、モデル作りは、メタローグの次元の話で、この次元でできたモデルは、現実界のダイアローグで、実存的ダイナミズムを生み出すエネルギー態なのです。

★リアルな動きはダイアローグという対話だけではなく、メタローグという対話によって生み出されるというわけです。

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2022年12月21日 (水)

ドネラ・プロジェクト(21)「主体的」の意味のアップデート キェルケゴールとウィトゲンシュタインとデューイを超えて

★「主体的・対話的で深い学び」の「主体的」という言葉は、極めて重要です。対話は、主体的でなければできないし、深く考え学び表現していくには、主体的な構えが必要なのはいうまでもありません。がしかし、受動的に対し能動的ぐらいの意味ぐらいしかなかなかピンとこないのが、「主体的」という意味です。学習指導要領では、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体化の充実とか述べられています。いずれも「主体的」であることが求められます。今更ですが、今なぜ「主体的」なのでしょう。

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★鈴木佑丞さんの「<実存哲学>の系譜」は、そのことを考えるヒントになります。この本を読んで、ヘーゲルというのは社会や世界を考える時のキーパーソンなのだということがよくわかりました。ヘーゲルこそが、キェルケゴールがヘーゲルを批判することによって展開した<実存哲学>を生む実存主義者だったということに気づきました。

★ヘーゲルは主観と客観を乗り越えるあるいは統合する着想を描いたわけです。弁証法と訳されるダイアローグを打ち立てたわけです。要するに対話です。「主体的・対話的で深い学び」はまるで、精神現象学的対話の上昇気流をひっくり返したような考え方ですから、ここにもヘーゲルはちゃんといるわけです。

★そのヘーゲルは、しかし、主観を大切にしていましたから、ドイツ法学界からは捨てられます。サヴィニーが法実証主義的展開をしていきます。法学界ではヘーゲル派は一掃されます。

★一方教育界でも、その主観は堅固な教育学体系を組み立てる知識で抑圧されるようになっていきます。ヘルバルト主義の台頭です。これに対して、ヘーゲルもヘルバルトも批判してプロジェクト学習のような経験主義的かつ民主主義的教育をデューイが展開していきます。

★ヘーゲルは、その当時はそれほど権威があるといった感じの哲学者ではなかったのではないかと。結構苦労の連続の人生で、まさに実存的でだったと思います。今では大哲学者のカテゴリーに入っていますが。

★だからこそ当時一世を風靡したのかもしれません。でもそのヘーゲルをキェルケゴールは批判をし、その批判が<実存哲学>ではない実存哲学の系譜として20世紀の哲学をカタチづくっていったというわけです。ヘーゲルは主観と客観を統合しようとしたけれど、結局客観的な制度という物質主義を生み出してしまったわけです。その危険性を察知したのかキェルケゴールは、ヘーゲルから主観を取り戻すべく「主体的」な思考を展開していったのかもしれません。

★その「主体的」思考をウィトゲンシュタインはさらに発展させた。そういえばウィトゲンシュタインの仲間であるラッセルは、ヘーゲルを徹底的に批判しているし、そこらへんからイギリスの分析哲学もヘーゲルを批判して展開していますよね。

★ルソーカントーヘーゲルの流れが、そこから3つに批判的に枝分かれするのです。デューイのプラグマティズム、キエルケゴールの系譜実存主義、サヴィニー&ヘルバルトという近代国家主義。いずれも「主観」をどう捉えるかが重要だったわけです。

★主観を才能とみるか、主体とみるか、個人ととらえるか。

★しかし、ヘーゲルとかの影響はあまりない科学の世界からシステム思考が50年前に大きく広がりました。この思考はメンタルモデルを包摂していますから、ある意味主観と客観を統合しています。

★主観は精神で、客観はシステムという二元論ではなくて、主観と客観をつなぐのがシステム思考というのでしょう。ドネラ・プロジェクトは、「主観」をアップデートすることも役割ということがわかりました。

★こんなふうに、鈴木佑丞さんの本は、20世紀の教育は「主観」をめぐる話だったということに改めて気づく重要な補助線でした。そしてそれゆえ、「主観」のアップデートとして「主体的」という言葉もまたアプデートされつつあるのが現状だというのこともはっきり見えてきました。

★なぜなら、キエルケゴールの時代と決定的には違うのは、地球環境の限界がみえているということです。その限界がみえていない時代は、世の中がどんなにひどい状態であろうが、自分がどう誠実に生きるかでサバイブできたわけです。しかし、現状は自分がどんなに誠実に生きる主体的思考を発揮しても、地球環境の限界を乗り越えることはできません。

★主体的というのは、個人の主観の問題ではなく、もちろん、この地球環境の限界を生み出した制度の問題でもなく、関係性の問題なのです。主体的な関係性をどうつくるか。主体的に関係性をつくるのではなく、関係性そのものが主体的なのです。個人の枠内をはみ出るのが「主体的」なのでしょう。

★独断と偏見ですが、同書を読んで、気づいたことはそんな感じです。

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2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(17)東京共学校 人気5校

★今年12月に開催された首都圏模試センターの合判テストの志望校登録データから、東京共学校を調べてみました。前年と比較してどのくらい増えたかの割合のベスト20及び志望校登録数のベスト20を出してみました。

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★そのうえで、両方にランクインしている学校を抽出してみると、五十音順で、次の5校に絞られました。

国学院大学久我山
芝国際
淑徳巣鴨
順天
文教大学付属

★国学院久我山は、確かな学力に基づいた大学合格高実績とプレゼンやグローバルベースのワークショップなどプログレッシブな学びを展開しています。芝国際は、サレジアン国際(赤羽と世田谷両方)にみられるように期待値が大で、初年度ということもあり話題を呼んでいます。

★淑徳巣鴨、文教大附属も国学院久我山同様、進路指導とプログレッシブな学びの両立が受験生には魅力なのでしょう。

★順天は、スーパー21世紀型教育を展開し、高度な英語力、グローバルな学問的深さを追究する学び、STEAM教育など充実していて、高い大学合格実績は以前から定評があります。順天は理想を突き抜ける勢いが実在している学校ですね。

★共通した人気の条件は、どうやら大学合格実績となんらかの新しいそして魅力的な学びの両立が展開されていること、もしくは、その期待値が高いということでしょう。大学に入って終わりではなく、入学後も社会に出てからも主体的に活動し、みなを巻き込んでいくリーダーシップを発揮できるようになるトランジション教育は、これから多くの受験生が求めるようになるでしょう。

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2022年12月19日 (月)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(16)東京女子校 人気6校

★今年12月に開催された首都圏模試センターの合判テストの志望校登録データから、東京女子校を調べてみました。前年と比較してどのくらい増えたかの割合のベスト20及び志望校登録数のベスト20を出してみました。

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★そのうえで、両方にランクインしている学校を抽出してみると、五十音順で、次の6校に絞られました。

実践女子学園
十文字
女子聖学院
玉川聖学院
日本大学豊山女子
三輪田学園

★上記の表に並んでいる女子校も人気がある学校ですが、上記6校は、人気があって志望者数も多いという両方の条件を満たしている女子校です。

★いずれも、新しい学びとグローバル教育に力を入れている学校です。生徒による広報部がある十文字に代表されるように、学習者を尊重するコミュニケーションが満ちている雰囲気の学校ですね。

★そのような雰囲気の環の広がりの大きさと人気には相関があるかもしれません。

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2022年12月18日 (日)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(15)成城学園 新しい教育の在り方を開く

GLICC Weekly EDU 第107回「成城学園の中高大連携プログラムー卒業生と生徒と教員のネットワーク」では、成城学園の新しい挑戦について語られているとともに、今までにありそうでなかった全く新しい教育の在り方が語られています。

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(GLICC Weekly EDU 第107回「成城学園の中高大連携プログラムー卒業生と生徒と教員のネットワーク」)

★青柳先生(成城学園中高入試広報部部長)とは、何回かGWEで対話をする機会をいただいたり、そのGWEに向けてチャットさせて頂いたりしながら、成城学園のトランジション教育(受験指導で大学に入ったら終わりではなく、大学及び社会において活躍できるキャリア教育)について発信させていただいています。1月には、これまでの対話をまとめる意味で、shuTOMO2023年1月号で6ページで記事を書くこともできました。

★しかし、脱稿しするや、実は新しいチャレンジが行われている最中なのだと青柳先生から教えていただきました。それが「グローバル視点のライフデザインワークショップ」です。実は脱稿したあとで、GWEだったので、そんなすばらしいプログラムだったのかあ、これは何とかしたいと思ったわけです。初校で、ほんの少し紹介できるように編集しましたが、とても内容を紹介できるものではなかったのです。

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★そこで、今回同プログラムのプロデューサーである高木生太さんとプログラムの企画・運営のメインファシリテーターである穴本玲奈さんに出演していただき、青柳先生と共に、大いに語っていただいたのです。

★高木さんも穴本さんも成城同窓生で、同じ母校出身の社会人や大学生、中高生が繋がるためのwebサイトやイベントを運営するRootin'というコミュニティも運営しています。高木さんは外資コンサルタント会社に勤務しながら、同コミュニティの創設者・代表として、後輩の未来を先生方といっしょにつくる企画運営を、穴本さんと実施ているのです。

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★同窓生と言えば、お金を寄付したり、講演会などで語ったりということは、よくある話ですが、PBL型のプログラムやワークショップを先生方や大学生、生徒などみんなで創り上げるプロデュースをするというのは全く新しい同窓生の活動です。

★具体的な中身や参加した生徒がどれほど成長するのか、その様子についてはぜひご視聴ください。高木さんと穴本さんの学校の教員とはまた違う視角からのトークや言葉に、今回の新たなプログラムのあり方のみならず、これからの新しい教育の在り方のヒントを得ることができます。必見です!

★私は、自分の感想を忘れないために、GWE直後に、次のような文をfacebookにメモしました。

「成城学園の同窓生でグローバルに活躍している方々と対話。その教養と未来性に感動。優しさを弱さだと誤解し、突いてくる自称グローバルリーダーは多いがそれとは真逆。教養あるグローバルリーダーシップ。これだな。」

★成城学園の創設者澤柳政太郎の魂は、同窓生の中で、さらに進化しているなあと感じたわけですが、感じるだけではなく、私学全体でも共有していける普遍化・現代化を考案するアクションを起こしていきたいと思っています。

 

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2022年12月17日 (土)

八雲学園のグローバル教育の新たな意味を発見

★昨日、第108回GWEに八雲学園の副校長菅原先生、数学科の豆塚先生、英語科のボッサム先生が出演。八雲学園のグローバル教育の原点である八雲レジデンスでの生徒の経験とその超進化系であるROUND SQUARE(RS)での生徒の経験についてじっくりお聴きすることができました。

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(GLICC Weekly EDU 第108回「八雲学園ーオックスフォードでのRS国際会議」)

★カリフォルニア州サンタバーバラにある八雲学園所有のレジデンス。高級ホテル並みの建物であり、同時にロケーションが壮大なパースペクティブの中にあります。ドローンで撮影したその映像を流していただいたので、これは必見です。

★そして、サンタバーバラには、姉妹校ケイトスクールがあります。中3が高1になる直前2週間サンタバーバラで丸ごとグローバル経験をするわけですが、そこで自分たちとものの見方が違うそれでいて根本的なところで対話ができる異文化のケイトスクールの生徒とコミュニケーションを行うわけです。ケイトスクールもRSの加盟校ですから、中3の段階で全員がRSの加盟校と交流するわけです。

★RSは年に一度加盟校約200校(50か国から)が一堂に会する国際会議を行っています。八雲学園もRSの加盟校です。ということは、中3の生徒全員が、ある意味八雲レジデンスでミニRS国際会議の体験をしてくるといえるのです。

★パンデミックがあったので、RS国際会議は、今年は3年ぶりにオックスフォード大学で行われました。八雲学園から選ばれし6人の生徒が参加しました。World problemsについて、アドベンチャーやサービス(奉仕)の体験をしたり、チームで対話したりしながら、RSの理念IDEALsを体現していきます。

★オックスフォードスタンダードですから、世界コミュニケションのレベルは相当チャレンジングだったと思います(参加した生徒のインタビュー動画もご覧いただけます)。

★しかし、レジデンスでの中3段階で全員が体験するミニRS国際会議がまずあるわけです。RS国際会議に参加する生徒にとっては心強い経験です。こうして考えると八雲学園の中高一貫の多角的なグローバル教育は、一貫性あるつながりがあることが了解できます。

★豆塚先生とボッサム先生は実はOGかつ同級生です。その当時からレジデンス体験はありました。たしかに、その当時はまだ八雲学園はRS加盟校ではなかったのですが、ケイトスクールとの交流はあったわけです。当時は気づいていなかったでしょうが、実はレジデンス体験は、八雲生全員が体験するミニRS国際会議だったわけです。

★八雲学園のグローバル教育における、中学でのさまざまな活動は、中3のレジデンス体験のある意味準備と捉えることができます。そして全員がそこでミニRS国際会議を共体験することになるのです。その共通基盤から、多様なグローバル教育活動が広がっていきます。RSの国際会議は、このような八雲学園のグローバル教育の象徴的な活動です。

★今回、菅原先生、豆塚先生、ボッサム先生のお話をお聴きして、八雲学園のグローバル教育の新たな全貌を発見できました。それだけ、八雲学園が日々進化しているということでもありましょう。ここでは到底書くことができないほどの濃い内容が話されています。ぜひご視聴ください。

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2022年12月15日 (木)

パウロの形成的評価

★この時期は、どこの学校でも、期末試験や卒業試験のシーズン。聖パウロ学園も例外ではありません。職員室は成績処理と教科の会議、最終的な成績会議と生徒1人ひとりにエンパワーメントできるエバリュエーションをどう編集するのかクリエイティブなコミュニケーションで溢れています。最近では定期試験をやらないということが注目を浴びているようですが、それは目に見える部分ですね。大事なことは目に見えない領域です。それは生徒とエンパワーメントエバリューエーションをいかに共有できるかという教師の行為が本質的なことなのです。

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★パウロの場合、総括的評価といういわゆるスコア成績と学期ごとの生徒の学習状況や心理的状況、学習の方法などどのように成長しているか、今後どうしたらよいかの提案など800字から1000字くらいのコメントを併記します。つまり、ここは形成的評価の部分です。

★総括的評価は、定期テストのスコアだけではなく、各教科のミニテストのスコア、自主学習の状況なども評価の対象になっています。知識・技能、思考・判断、主体的な学びの経験値などが1人ひとりモニタリングできるようにしています。

★そして、形成的評価としてコメントが添えられます。自分が一体何者で、自分はどう人に役立つ価値を持っているのか、思いやりは発揮しているのかどうかなど、パウロのスクールモットー(理念)をどのように具体化しているかというコンセプトレンズを共有してもいます。

★そんなことは絵に描いた餅だろうと思われるかもしれません。しかし、パウロの主幹であり高2の学年主任で、担任でもある大久保先生のコメントを分析すると上記の写真のようになるのです。ちゃんとそうなっているのです。

★私の役目は、先生方の授業ーテストー評価の一連の怒涛の過程の最後の部分のコメントを確認することぐらいなのですが、これが実に楽しいのです。なぜなら、そのコメントには、先生方が生徒と毎日どのように共に学校づくりをしているのか人間作りをしているのかイメージできる脳内空間がバーンと広がるからです。

★大久保先生に読んでくださいと手渡されたコメント集を読みながら、1人ひとり生徒の具体的状況について記述しているところをマーカーでチェックしていきます。そして、そのチェックした場所を抽象的な言葉に置換えてポストイットに書き込んでいきます。この作業はちょっと負い目があります。というのも、分析というのは、生き生きとした大久保先生の息吹までは汲み取れないからです。

★しかし、生徒が自己変容していく環境デザインの達人である大久保先生は、どんな視点でエンパワーメントエバリュエーションを創り上げるのか知りたいという欲求を抑えられませんでした。

★ポストイットを整理していくとたくさんの視点がでてきました。それらを大きく3つくらいにわけて並べてみました。そして、それを図式化してみました。

★生徒と共にどんなポテンシャルがあるのか共同認識し、それを現実化するために多角的な視点から生徒の具体的状況を言語化しています。これを読んだ生徒は、自分の価値をこれからどのように意味づけ直すことができるのか、自己変容していけるのか実感を抱くことができるでしょう。もちろん、最も大事なことは、上記の図にあるような多角的な視点(もちろんまだまだあります)で、日々生徒と対話をし授業をしているのだということです。それが成績表のコメントによって逆照射されているわけです。

★実際、卒業する時、生徒は自分がこんなに変わったのはなぜかを語り合う時間を担任の先生と過ごすわけです。人生から見れば瞬間かもしれませんが、パウロの3年間は、永遠の3年間です。大久保先生をはじめ、パウロの先生方の日々の言葉、行いからそう感じることができるのです。

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2022年12月14日 (水)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(14)東京男子校 人気5校にみる魅力の作り方

★今年12月に開催された首都圏模試センターの合判テストの志望校登録データから、東京男子校を調べていました。前年と比較してどのくらい増えたかの割合のベスト10及び志望校登録数のベスト10を出してみました。

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★そのうえで、両方にランクインしている学校を抽出してみると、五十音順で、次の5校に絞られました。

足立学園
聖学院
成城
世田谷学園
日本学園

★こうして眺めると、それぞれユニークな魅力を放っています。

★海外大学も含め新しい教育環境をデザインしている学校。先進的21世紀型教育を実施し、世界の学校と肩を並べる学校。新校舎建設を果たし、大学合格実績も毎年良好な学校。精神性と学力向上の両立を果たす教育の基盤をずいぶん前から確立している学校。近い将来明治大学の系列校になり共学化する大胆な改革をする学校。

★それぞれ特色がはっきりしています。と同時に、大学合格実績を伸ばし続けるところは共通しています。

★もちろん、大学合格実績を出すことを第一義の目的にしているのではなく、それぞれの特色ある教育環境をデザインしているからこそ、当然合格実績は出るという教育になっています。

★大学全入時代です。また海外大学という選択肢も現実的になっている時代でもあります。

★どんな価値ある自分を創っていけるのか、そしてその価値を実現できる研究や仕事を果たせる大学を見つけることができるのか、つまり効果的かつ独自のトランジション教育をデザインしている学校に、受験生・保護者は魅力を感じるということを上記の5校は示唆しているのではないでしょうか。

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2022年12月13日 (火)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(13)工学院 グローバルプロジェクト始まる。

★4年前から、工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)は画期的なプロジェクトを行っています。高2の修学旅行をアップデートしGP(グローバルプロジェクト)に転換しました。国内外いくつかのチームに分かれてフィールドワークをし、SDGsの目標を達成するために具体的な社会課題を見つけるリサーチツアーです。その課題を見つけることによって、そこの地域市民と協力ができます。具体的かつ実践的、すなわち実存的な解決の方向性を見つけるとか起業までしてしまうとか、工学院の体験ベースのPBLの集大成が開発されました。ここ2年は、今回のパンデミックの影響でオンラインなどで創意工夫されてきたようですが、今年は再会。今ちょうど沖縄、熊本、熱海、オーストラリア、ルーマニアという国内外のフィールドワーク&リサーチへ旅立っています。

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(写真は工学院のサイトの公式ブログから)

★同時に中学生は、八王子や鎌倉、京都などにフィールドワークをしに行っています。高2のGPにつながる貴重な体験をしています。

★体験というのは、10人同じ体験をしても、10人それぞれ感じ方や考え方、ものの見方は違います。その違いがスクランブルして、それぞれの中にコンセプトレンズができます。体験を積んでいくことによって、このレンズは磨きあげられ、精度があがっていきます。

★このコンセプトレンズこそ、1人ひとりのバリューを映し出します。

★知識を覚えることも大切ですが、そればかりやっていると、知識量や知識を引き出すスピードや正確さばかり評価する偏差値が、あたかも一人一人の価値であるという錯覚を生み出す危険性があります。それはそれで、自分の価値を構成する1要素ではありますが、それが全体だという幻想がうまれかねません。いや実際生まれています。

★そうなると、階層構造が固定化して、それぞれの生徒のバリューをフラットに尊重することが難しくなります。

★それでは、予測不能な現状、乗り越えられません。たとえば、今日本は40ナノの半導体までしか作っておらず、20年世界に遅れていると言われています。そこでIBMと連携しながら2ナノの半導体という前人未到の次元に挑戦するわけです。その場合、アイデアや技術は、既存の知識だけでは生まれません。どう応用するか、足りないものはどう創造するのか?既存の知識の集積だけ競争している教育ではそんなことができないのはちょっと考えればすぐにわかります。

★よって、工学院のように、グローバルな体験ベースのPBLをとにかくたくさん行うということが、未来を拓く教育だということは了解できると思います。

★そして、1人ひとりのバリューを生み出すわけですから、学習者中心主義的なPBLであることもとても大切ですね。

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(shuTOMO 第11号 2022年10月2日発行)

★そのことについて、GPも含め、shuTOMO11月号で、記事を書きました。受験学力のみならず、大学や社会でグローバルリーダーとして、クリエイティビティとコンパッションというケアの精神の両方を有して社会課題をクリアし、未来社会を創っていけるそれぞれのバリューを生み出す工学院のトランジション教育は、日本のこれからの教育の1つの有効なモデルです。

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2022年12月12日 (月)

ドネラ・プロジェクト(20)「主体的・対話的で深い学び」をダイアローグとメタローグで考える

★居郁領域では「主体的・対話的で深い学び」について議論が続いています。どれも豊かな対話がなされています。しかしながら、大切なことはその学びを通してすべての生徒が自分の才能や価値を見出せるか、いや創れるかということです。たしかに、<誰一人取り残すことのない「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~多様な子供たちの資質・能力を育成するための,個別最適な学びと,社会とつながる協働的な学びの実現~ (中間まとめ)【素案】>には、こんな文章があります。「一人一人の児童生徒が,自分のよさや可能性を認識するとともに,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え,豊かな人生を切り拓き,持続可能な社会の創り手となることができるよう,その資質・能力を育成することが求められている。」

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★とはいえ、このような「資質・能力」は誰一人も取り残すことなく、体得できるのかどうか?今のところアクティブラーニングをやったところでPBLをやったところでそのような気配はありません。ただ、一方通行型講義よりも、こんな才能や素養がある生徒がいたのかあと感動するシーンは増えました。

★問題は、誰一人も取り残すことなくそんな才能を体得できる方法は何かです。

★IBやAレベル、APを研究している多くの学校があります。たいへん興味深いしいろいろな啓発を受けます。しかしこれらの教育プログラムは、誰一人も取り残すことなく才能を見出せるプログラムではないのは説明するまでもないでしょう。

★PBLやアクティブラーニングは、たしかに偏差値にかかわりなく才能を開花する生徒が多くなります。しかし、全員がそうなるわけではないのですが、だからといって効果がない授業ではないのです。

★逆なのです。偏差値では見えなかった才能者が生まれるのはなぜかという視角から洞察することが必要なだけです。

★PBLなどで才能を見出した生徒は、ダイアローグというレベルの対話から、メタローグという対話ができるなんらかのきっかけがあったようです。

★そのきっかけは何か?そしてそのメタローグとは何か?

★この2点の洞察を深めていくと、おそらく誰一人も取り残すことなく資質・能力とか才能とか価値とか、いろいろな言葉で表現されている1人ひとりのバリューを生み出すそれぞれの知の循環を見つけることができるはずです。

★欧米のような階級格差と日本のような学歴階層格差は似て非なるものです。前者は階級を超えるのは未だにシンドイですが、日本の学歴階層格差は、たしかに資格制度の領域では厳然として立ちはだかりますが、アントレプレナーシップ領域においては、機能しません。

★欧米でもそうでしょうが、やはりそこではアトレプレナーシップを発揮するにも階級格差は影響します。もちろん、IT分野は越境的ですが、果たしてどうでしょうか。。。

★日本は、中小企業が90%ですから、大企業と中小企業の経済格差はたしかにありますが、中小企業のスタッフが収入という点で乗り越える機会は欧米に比べてあるでしょう。

★とはいえ、ここのところ地政学、地経学的には分が悪い情況で、どこまでそれが続くのかわかりません。

★しかし、2030年まではまだ執行猶予はあるでしょう。この間に、全員がメタローグを実装できる学びを生み出す戦略を実行すべきです。ダイアローグを行う環境はどんどん整っています。メタローグを洞察するティッピングポイントをなんとかつくりたいものです。

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2022年12月10日 (土)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(12)期待される湘南白百合 帰国生の出願者数また増える

★本日11日、湘南白百合は、入試直前説明会を開催しました。同校facebookにはこうあります。

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(写真は、同校facebookから)

 今日は入試直前説明会を実施しました。小学校6年生限定のイベントで、入試当日のことや採点基準など、詳細をお伝えしました。対面版・オンデマンド版ともに12/13(火)に本日のプレゼンの録画や資料をまとめた特設サイトをお送りします。1月一杯ご確認できますので、ぜひ直前期の準備にお役立てください。
入試前に施設を確認できる機会とあって、多くの方が校舎見学や個別相談をされました。個別相談でいただいた内容を含め、入試までの間にお知らせできる事があれば、ホームページ等でお伝えして参ります。受験本番まであと僅か。どうぞ体調に気を付けて、皆さんの学んできたことが存分に発揮されますよう、お祈りしています。本校も皆さんが安心して受験に臨めるよう、準備をしていきます。

★12月13日から1月いっぱい、本日の内容を動画などで確認できるというのですから、安心です。また、新たなにお知らせすることやニーズが生まれればその都度発信していくというきめの細やかさ。心遣いが身に染みます。

★それから、昨日帰国生の応募が締め切られました。入試広報部部長水尾先生(教頭)によると、一昨年34→去年38→今年44と出願数が増えているということです。おそらく一般入試も増えるでしょう。

★その理由は、女子生徒の進路が理数系に傾むき始めているという現状があるからです。それから医歯薬系に進路の舵をきる女子生徒も世の中増えてきました。経済的に女性が社会進出することは前々から推奨されてきましたが、未来は理数系と医療従事者の仕事がますます重要になってきます。未来を牽引する領域で女性がリーダーシップを発揮する新しい次元が生まれています。

★湘南白百合は、女子校で、理数系や医学部に強いし、海外大学進学準備も万全。1人ひとりの未来への自分の価値を見出し確固たるものにしていく学びの方法論を体得できる環境がデザインされています。

★時代の精神と湘南白百合の教育が共振していることに気づいている受験生。保護者が多くなってきたということですね。湘南白百合を選択するということは、共に未来社会の希望を生み出していくことにもなります。いまここでの受験勉強が未来に生きる学校なのです。

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2022年12月 8日 (木)

ドネラ・プロジェクト(19)「主体的・対話的で深い学び」のイメージ

★PBLとかアクティブラーニングとかEBLとかいろいろな表現がありますが、学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」と表現されています。限定的過ぎて、学びとしてイメージを飛ばすのには、なかなか難しいかなと思っていました。しかし、現場では、PBLというより具体的限定性があったほうが、動きがでるということもわかってきました。

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★部活や行事、学校説明会、プロジェクトプログラムなど、いずれも主体的に生徒が活動している様子をみていると、この主体性は、自律しながら、いやしているから、先入見や権威などに「こだわらずに、脱中心という分散化ができるようになっていきます。それでいて、個人主義的に行動するのではなく、仲間を互いに巻き込む動きをしていきます。同調性ではなく、協働性です。

★このような自律分散協働系型の主体性ができあがるには、体験の中で多次元の葛藤を処理していく学びを通過します。この過程を通して葛藤を乗り越えるという知恵という技術ができあがっていきます。知恵は、マインドだけではなくスキルも両立していなくてはなりません。

★その過程で身に付ける知恵は、生徒自身は気づかなくても、心理学的技術や社会学的技術、法学的知識、経済的センス、健康に関する関心など多様です。

★葛藤を解決するエピソードや方法をプレゼンすることにより、それは同時にモニタリングになりますから、自分を圧迫していた壁が見えるようになります。だからこそ、この壁を取り除く解決策を考えようとします。それには、対話をする必要もあるでしょう。無意識かもしれませんが、心理学や社会学の手法は有効です。

★そして、協力する必要もあるでしょう。なんといっても、脱中心化した視点が必要です。

★知識については、データでモニタリングができますが、知恵については、自己表現というかパフォーマンスによってモニタリングすることができます。知識のモニタリングで大事なことは、知恵に基づいているかですが、そこはデータではなかなか分析できません。知識をどのように活用しているかパフォーマンスを見るしかないでしょう。ルーブリックや思考コードが必要となるわけです。

★このようなモニタリングを自分でも行い、他者からも行ってもらうことによって、目に見えない3つの境界線が見えてきます。あるいは気づくことになります。

★この境界線を越境することができるかどうか?深い学びへの挑戦です。かなり学際的なコンセプトレンズを結晶させないと、越境できません。チャレンジングな学びになるのです。

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ドネラ・プロジェクト(18)工学院大学附属多様性の拡張 多次元の学びが満載

★昨日、工学院大学附属中学校高等学校(以降「工学院」)の鐘ヶ江暢子先生(進路指導部主任)と首都模試の北さん(取締役・首都圏模試センター教育研究所長)、そしてノイタキュード代表北岡さんと1時間ほど対話しました。成城学園の青柳先生、湘南白百合の水尾先生との対話と同様のテーマで行われました。シリーズ対話になってきました。

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★工学院は、もともと男子校で、2002年に共学校になりました。そして2015年から本格的な21世紀型教育を実施し、グローバル教育、STEAM教育、多様な国内外の外部団体との連携プロジェクトの拡張が加速度的に広がっています。

★その過程で、文化的社会的なジェンダーの無意識の問題を抱えて入学してきた生徒(これはどこの学校でもそうです。大事なことは学園生活で、この問題が解消されていけるかどうかです)が、その壁を崩して、良好な関係性を生み出しているという学園生活=教育環境デザインが詳細に語られました。

★その関係性が同調性ではなく、共感性であるのですが、それはおそらく理系でもSTEAMという学際的な視点が生まれているし、グローバルなプロジェクトのプログラムでは多様性の感覚が生まれているからのようです。

★このシリーズで3人の先生が共通して話されているのは、関係性の構築ということかもしれません。関係性とは、理数系的な知識技術の関係性と文系的な人間関係やコミュニケ―ション、社会構造のシステム理解などの両面を創り上げているということです。文理融合の肝はここかもしれませんね。

★このようなトータルな関係性を作れる人間ばかりになると、世界はwell-beingを生み出せるようになるかもしれません。

★来年度2月までには、3人の先生方と、北さん、北岡さんが対話します。私も参加します。そこで、各学校の女子教育の違いと共通点などが語られ、女子教育の中に内包されている教育の本質が何か、その本質を3つの学校がそれぞれどのように教育に反映しているかなどが明快になると思います。

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2022年12月 7日 (水)

ドネラ・プロジェクト(17)PBLの授業を実施していることが感動を生むわけ 1億総孤独とは真逆のリアリティがあるから

★PBL型の授業を体験すると、受験生・保護者はこれだと感じます。ところが、PBLとはこうですよと語ってもピンとこないのです。なぜでしょう。そして、そこにPBL授業体験を設定することが極めて重要な時代になったヒントがあります。

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★かつては、PBLの説明は、リサーチ→個人ワーク→グループワーク→プレゼンテーションの循環を動画などで示すものが多かったですね。それはそれで目新しかったので、興味と関心を引きました。しかし、そのようなワークショップは結構いろいろな領域で行われていてすっかり日常化しました。

★それゆえ、話だけでは、差別化できないわけです。それで、体験を設定するわけですが、そのときアクターネットワークやシステム思考の感覚をセットすることが大切です。

★それがそもそもないワークショップはPBL型ではないわけです。幾つかのアクティビティを組み合わせただけで、それはそれで楽しいのですが、自分の内面にエネルギーが広がる感覚があまり生まれないのです。

★そのような感覚が生まれるようにするには、アクターネットワーク理論やシステム思考を組み込みます。このような仕掛けは、内面に関係性の大切さ、クールなはずの知性に温かみが生まれます。

★いったい、これは何でしょう。それは関係性への自覚が芽生えるわけですね。自覚こそリアリティの現われです。

★東洋経済が、一億総孤独という特集をしています。まさにそういう社会現象は起きていますが、そうならないようにアクターネットワークやシステム思考という関係性(関数的であり同時に愛でもある)を思考するPBLを展開していくことが重要です。

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2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(11)2050年の教育をデザインするキーワード集 北岡さんの挑戦

★先日、神田の首都圏模試センターの会議室で、ノイタキュード代表の北岡さんと2050年までに進化する教育の過程を表現するキーワード集について対話しました。

 

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★2050年くらいまでに、このような図で表現される時代になっているけれど、これを表現するキーワードは何か?

★20個くらいのキーワードの思いみづけや順序づけの話をしながら対話していくと、なるほど未来が見えてくる画期的な北岡さんの編集技術。動画や写真と同じように、モメントを大事にする編集視点は新しいですね。

★自在に動くけれど、重心はしっかりしている。だから未来も見えてくる。そんな感覚でした。

★首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さんや取締役代表の山下一さんとも対話していますが、お二人の情報編集作業は、最終的には教育の世界を編集してしまう勢いです。

★2023年度の編集予定も目白押しですが、その編集成果物は、世界の変容を映し出すでしょう。それは北岡さんのキーワード集も同様です。世界を編集する媒介ツールをオリジナルで創る作業。これが今着々と進んでいます。

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2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(10)学校選択座標をもとに教育の進化を考える

★2023年入試というより、はやくも2024年に向けて学校関係者及び教育関係者は、新しい企画をすり合わせ予算立てをして活動準備を着々と進めています。教育は、デノテートな環境はシンプルにコンパクトになっていきます。小さくてインパクトがあるものになっていくのは、働き方改革と相関があります。大きいことはいいことだは、デノテートな分野ではなく、コノテートな領域で起きています。内面は、無限に広がります。

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★ですから、学校選択基準もよりコノテートな分け方になります。こうわけると、22世紀型教育がどうなるのかその進化が予想できます。詳しくはいずれ述べますが、ここではイメージだけ載せておきます。12月23日のGWEで少し説明しようと思っています。

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★4つの象限のそれぞれの大きさが4つのステップの進化を生んでいきます。2030年問題の解決の行方や2050年のムーンショット構想の行方によって、この進化の速度は早まったり、遅くなったりするでしょうが、AIの稼働を無視できないとしたら、未来の教育はこんな感じになるでしょう。

★首都圏の私立中高一貫校において、20世紀型教育校は、今やとても少ないですね。エリート20世紀型教育が70%くらいかもしれません。そしての他の30%が21世紀型教育だと思います。そして、22世紀型教育のモデルになるだろう学校が5つくらいすでにあります。

★エリート20世紀型教育校は、大学合格実績ランキングで、すでに選択すべき学校は分かっているので、本ブログで説明するまでもないでしょう。

★21世紀型教育については、ランキングではなく、各象限の大きさがどう違っているのかの違いがポイントです。どのような大きさの分布に興味があるかによって選択が決まっていきます。ですから21世紀型教育といっても、4つのタイプに分けられます。

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★どの象限に力を入れているのか?それを分析すれば、ベストマッチングできるかもしれません。具体的な学校名は、23日に公表しようと思います。21世紀型教育校の中で、かなり充実した活動を行っている学校40選をお伝えしたいと思います。もちろん、22世紀型教育校も。

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2022年12月 5日 (月)

ドネラ・プロジェクト(16)生徒の主体性 恐れのない組織づくりが生み出す

★勤務校は、学校説明会のストーリーを今までとはガラッと変えました。完全に生徒と共にストーリーを創るというコト。おもてなしをする生徒のパフォーマンス、ミニ体験授業のアシスタンとをする生徒、授業のためのスライドを作成するデザイン思考する生徒、全体会で自分の学校の説明をする生徒のパフォーマンス。参加した受験生や保護者は、驚嘆し感動します。

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★みんなで創っているから、先生方が生徒にありがとう、感動したよと声をかけるだけではありません。生徒が、スピーチ頑張ってください。先生かっこよかったですなど生徒が先生方に声をかけているのです。

★期末の勉強があるから、もしだれもいなかったら協力しに行きますとか、大学合格したから、卒業試験はなんとかしますから、協力しますよ、ぜひとか。

★アントレ精神が満ちていて、まるで大学や企業のプロジェクトチームなのです。朝の会で、主幹が3年生のスピーチを聴いて、感動しました。あんなに聴衆をひきつけ感動の渦を創れるなんて、いつの間に。。。今の2年生もこの1年で、そうなるような環境創っていきますと。

★ほかの先生も、数学でもプレゼンの機会をもっといれていきますよとか連鎖する。

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★その様子を見ていて、恐れのない組織そのものではないかと心の中で微笑んでいる私。この本にはこんな言葉があります。

次のことをはっきりさせておきたい。リーダーになるのに、上司である必要はない、と。リーダーの仕事は、最高の仕事をするためにすべての人が必要とする文化をつくり育てることだ。そのため、その役割を果たしているときは常に、あなたはリーダーシップを実践しているのである。

エイミー・C・エドモンドソン; 村瀬俊朗. 恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす (Kindle の位置No.3742-3744). 英治出版株式会社. Kindle 版. 

★そうなんです。タイトルリーダーは、職場上あるのですが、みんなナチュラルリーダーになれるのです。教師も生徒もそういう意味で、全員がリーダーです。これが主体性だし、グローバル人材の真骨頂です。

★今組織の中で、多く耳にするのは、これをやってくださいではなく、これどうだろうか・いかがでしょうか?ありがとうございます。間違いましたごめんなさい。

★なかなか言えない言葉の環です。

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2022年12月 3日 (土)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(09)グローバル教育を捉え返す shuTOMO12月号特集記事から

★昨日は、GLICC代表鈴木裕之さんからグローバル教育を中学入試という視点から捉え返すアイデアを聴くことができました。「shuTOMO 第12号(2022年11月3日発行) 」の特集記事「グローバル教育3.0」を鈴木さんが丁寧に取材し執筆していたこともあり、その記事に沿って対話をすることができました。グローバル教育の意義とかグローバルとは何かという話ではなく、世界をone earthとして越境しながら生きていくためのマインドとスキルを身に付けざるを得ないリアリティを「記述」するような対話でした。

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( GLICC Weekly EDU 第106回「2023年中学入試のポイントー中等教育のグローバル教育の質について考える」)

★かつてグローバル教育というと、ネイティブスピーカーの先生が多いとか、英検1級取得者何人とか、英検ではなくIELTSだTOEFLEだとかいう話題がメインでした。しかし、鈴木さんが取材した学校のグローバル教育は、そのような話は、日常化していて、その日常の中で、世界の学校とつながっているという話がメインストリームです。

★たとえば、八雲学園は、たしかに目黒区にありますが、もしもそのままカリフォルニア州のサンタバーバラに移動したとしても通用してしまうというレベルがグローバル教育3.0なのだということでしょう。

★それぞれ特徴がありますが、one earthで<boundary crosser>としての知と愛とスキルと言語力を身に付けられるようになる教育がグローバル教育だということでしょう。鈴木さんは、海城学園、八雲学園、三田国際、順天、工学院、富士見丘、文化学園大学杉並、広尾学園、開智日本橋などのグローバル教育について語ってっくれました。本当にそれぞれ特徴があり、グローバル教育の満開の花が私立中高一貫校でも咲き始めた動きが了解できます。

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★そして、私の方で、これは12月23日に詳しく話しますが、そのなグローバル教育を行っている21世紀型教育のカテゴライズをして、それぞれどんな学校があるのか少し紹介しました。40校強あるので、詳しくは23日にしたいと思います。人気の進学重視校が40校くらいありますから、それを合わせると、首都圏私立中高一貫校の30%シェアです。

★進学重視校については、この番組で話さなくても、皆さん熟知しているでしょうから、この番組の話と合わせると、結局人気校すべての情報をゲットできるということになります。グローバル教育について、ここまで俯瞰した話ができるのは、鈴木さんしかいないので、ぜひご視聴ください。

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ドネラ・プロジェクト(15)星の杜高校一期生の出願前年対比197%!それが示唆する時代背景に思いを馳せる。

★今年、北関東で唯一のカトリック校で、女子校から共学校に大転換した星の杜。来年度第1期生の出願が締めきられたようです。この改革のディレクターの1人に21世紀型教育機構理事の石川一郎先生がいます。その石川先生が同じくディレクターの小野田一樹さんのSNSをシェアしていました。

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(写真は同校サイトから)

★その内容は、次年度の 星の杜高校 第1期生の願書受付が終了し、前年比 197%となったということです。素晴らしいですね。全く新しい学校を作ろうと、構想から2年、その過程は、ブレークスルー会議が頻発していたことでしょう。ここらへんは、いずれ石川先生にお聞きしようと思います。

本ブログでも、星の杜の勢いについて6月にご紹介していました。その勢いが幾何級数的に高まったのでしょう。石川先生がお忙しく、なかなかお会いできなかったというのは、そういうことなのでしょう(笑み)。

★東京でも、今年から赤羽の星美がサレジアン国際になり、来年度から世田谷の目黒星美がサレジアン国際世田谷としてスタートします。両者とも高人気です。カトリック女子校が共学になり、20世紀型教育とは全く違う21世紀型教育(21世紀型教育機構が意味している概念ではなく、20世紀の教育に対する意味。ただし、重なるところは多い)に真剣に取り組むと、復活するというのがカトリック学校の傾向かもしれません。

★クリスマスシーズンです。どこのご家庭でも、街々でもクリスマスツリーが設置されています。ほとんどの場合、ツリーのてっぺんには五芒星(ペンタゴン型の星)が飾られています。

★黄金比でデザインされた美しい星ですね。カトリックでは、その星はキリストの身体を意味します。カトリック校の星の杜の「星」にはそういう意味もおそらくあるのでしょう。もちろん、そういう意味は、全面にはでてきていませんが、創造と貢献というビジョンやチェンジメーカーというストラテージには、それを思わせるものがあります。

★キリスト自身チェンジメーカーですから(笑み)。

★しかも国連でも、世界共通の最上位のルールとしてゴールデンルールを認めています。カトリックの意味する五芒星が象徴するものと同じです。

★21世紀型教育機構の理念も国連が使う意味でのゴールデンルール(文言はマタイの福音からです。クリエイティブクラスとケアリングクラスの象徴です)を設定しています。サレジアン国際のシスターは、21世紀型教育はカトリックと親和性があると言っているくらいです。カトリック学校は、これまで超進学校としてのカトリック学校以外はなかなか苦戦しているのですが、それぞれの21世紀型教育へのトランスフォーメーション(この言葉もカトリック的ですね。「新しい人を着る」と言います)によって、超進学校化しなくてもサバイバルできるカトリック校が誕生する波が確実に生まれてきました。

★なお、一般財団法人東京私立中学高等学校協会は東京の私学が一丸となってそれぞれの21世紀型教育を押し進めていくことを今年宣言しています。昨年から構想されていました。私も21世紀型教育機構の理事として、同機構の同盟校以外にそれぞれの21世紀型教育が拡張されていくことは、Z世代、α世代にとって善きことであると歓迎します。

★何せ、ムーンショット構想2050やWeb3.0の動きは加速しています。VUCAと呼ばれていますが、実はかなり予測可能な事態になってきています。VUCAを乗り越える新次元の21世紀型教育、それはもはや22世紀型教育に突入するということでしょう。

★私の越境的な仲間では、今新次元プロジェクトが5つ立ち上がり、結局、多次元言語×数学×システム思考あるいはアクターネットワーク×アート(もちろん大学受験のイメージではなくシン・リベラルアーツのイメージです)なんだという話になっています。英語とICT(AIで一本化されつつあります)はそれを22世紀に適用し社会実装する必須の道具です。結局100年以上前に、J.デューイが生み出したプラグマティズムやPBL、道具主義、経験主義などの現代化をしているだけのことなのかもしれませんが。

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2022年12月 2日 (金)

ドネラ・プロジェクト(14)進化する教師の条件

勤務校の伊東教諭が、ノイタキュード代表北岡優希さんが編集している「進化する授業 進化する教師」で取材されています。日ごろなぜ私が伊東先生を頼りにしているかを改めてモニタリングできる貴重なデータです。そして、このモニタリングというかリフレクションによって、「進化する教師の条件」を一般化できるかもしれないと思いつきました。

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★思いつきなので、もう少し私が信頼している歩先生とかとか対話しなければと思いますが、とりあえず、こんなマトリクス表を思いつきました。

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★私は、とても恵まれているのは、私が親しくしている先生方は、教養に満ちているし、外部とのコラボというかプロデュースが得意で、経営的視点というよりもっと制度的設計知識を持ったうえで、経営的アイデアを出せるし、教科の専門性も高いし、文句ではなく批判的精神も発揮できます。よって不平不満はまず言いません。舞台で光り輝くこともするけれど、それ以上にバックヤードでの働きぶりがすごいですね。

★だから、外部とコラボするとき、相手のニーズを洞察できますね。

★こういう教師が未来の教師だし、進化し続ける教師だと思います。

★僕が外で話をすると、ときどき、そんな理想的なとかまた分けの分からないこといっているよという表情をしたり、ときには面と向かって現場を知らないですよと言われたりします。ウム。サラリーをもらって生きてこなかった年数が長い私にとって、現場とは何かを軽視するはずがないのですが、どうやら現場の意味が互いに違うのですね。

★僕にとって現場は、現象ではないのです。現象を生んでいる実存そのものです。胃袋で教養を考えるということですね。

★モーツアルトだってヘーゲルだって、生きることに汲々としながら教養という美を生んできたわけです。

★教養を軽視する人は、実存を軽視する人です。

★幸い、体験を重視する学びを協力して創っている勤務校の先生方は、みな実存という意味での現場を大事にしています。進化の原点は体験という実存です。

★進化する教師のいる学校を選ぶことがますます重要になってくると思います。

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2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(08)湘南白百合の真価

★先日、湘南白百合の水尾純子先生(教頭・入試広報部長)と首都模試の北さん(取締役・首都圏模試センター教育研究所長)と首都模試の市川さん、そしてノイタキュード代表北岡さんと1時間ほど対話しました。成城学園の青柳先生との対話と同様のテーマで行われました。青柳先生のときと同様、基本は水尾先生と北さんとの対話で、その前後で私は対話に参加させていただきました。いずれ首都模試チャンネルで公開されると思います。詳しい話は、そのときぜひご視聴ください。

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★ここでは、1つ気づいたことについてコメントしておきます。今回は参与的観察者としての立場に近いので、また新しい角度から湘南白百合の教育について感じ取ることができました。

★これまでだと、教育と成長という視点で見ていると、生徒1人ひとりの成長だったりアイデンティティの形成ということに目が行きがちだったのですが、今回改めて、私と他者という関係性を前提とした生徒1人ひとりの成長なのだと感じたのです。

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★湘南白百合の場合、プロジェクト学習や探究の活動が多様です。在校生同士の対話やディスカッションや協働作業によって、自分と他者の関係性を自覚して学び合っているわけです。さらに、栄光学園とか鎌倉学園、サレジオ学園など他校とのプロジェクト学習も数多く企画・実施されています。この関係性は、在校生とはまた異なる関係性でしょう。

★考えてみれば、関係性が成り立つには、互いに全く違うアイデンティティを形成していてはうまくいきません。ところが、湘南白百合の場合は、いずれのプログラムも成果をあげていると水尾先生は検証していきます。しかも、それぞれが大学進学実績にもひもづいているわけです。

★ということは、独自性を維持しながらも互いに共通性もあると了解できるわけですが、その共通点とは何かが問題です。

★仲間内だけの共通点なのか、公共性に担保された共通点なのか、普遍主義的な性格を帯びているのか、あるいはカトリック的な真理がそこにあるのか。

★湘南白百合の場合は、どうやらまた違う共通点があるのです。もちろん、最終的には、真理は自由にするというカトリック的な意味での「真理」を共有するのでしょうが、それは神のみぞ知るあまりに深い「真理」なので、いきなりそこにいく共通性ではありません。独りよがりな共通点でないことは水尾先生のお話からは明らかです。公共性や普遍性を帯びています。

★しかし、それだけではないのです。そこらへんは、今後話し合っていくテーマだなと感じたわけです。

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