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2022年11月22日 (火)

聖パウロ学園のエンカレッジの哲学授業 メンタルモデルとコンセプトレンズのコペルニクス的転回(CR)

★聖パウロ学園高等学校には全日と通信制の2つの学校があります。通信制の方はエンカレッジスクールと呼んでいます。中学の時になかなか学校になじめない複合的な理由があった生徒がエンカレッジスクールに入学してきます。毎年問い合わせが増えています。しかし、少人数制なのですべてを受け入れることは難しくなってきました。隔週コースとか放送視聴コースもありますが、基本は通学コースにおいて丁寧に「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実し、「主体的・対話的で深い学び」の実現を以前から行っています。

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★ただ、それぞれのメンタルモデルが大きく違うし、コンセプトレンズも様々です。全日もそうですが、その振れ幅が違います。それだけ個性的です。欧米だと受け入れる体制がありますが、日本だと難しいのでしょう。そこにパウロは挑んでいるわけです。

★個性とはいっても、そのメンタルモデルやコンセプトレンズが自分の才能を引き出すのに壁になっている場合、コペルニクス的転回(CR:Coperunican Revolution)が生まれるような環境をデザインする必要があります。それいよって、個性が湧き出てくるわけです。あるいは、せっかく多くの人と共有して共感し合えるメンタルモデルやコンセプトレンズを持っているのに気づいていないという場合、それに気づいてもらえるような環境をデザインする必要があります。そうすることで、個性が際立ってきます。

★個性というのは、ありのままとわいうけれど、今表現されている姿がありのままであるとは限らないので、その見極めは難しいのです。先生方は早朝から、1人ひとりの様子をどう捉えるか話し合います。自分の眼鏡が偏っているかもしれないので、同僚同士の対話は重要です。

★そうして、1人ひとりの才能や個性を解放する仕掛けを作っていくわけです。その仕掛けは、やはり対話なのですが、はじめから狭義の意味での言語での対話はなかなかできません。ここはパウロに限らず、全日と通信制の違いです。とはいえ、全日に通っている生徒も、実は狭義の意味での言語による対話が得意でない生徒もいます。でも、言語を開きながら、置換ながら、メタファーを使いながら、言語操作を学ぶことによって得意になる場合もあるし、そもそも言語操作が難しい場合もあります。その場合、スライド作りや他のパフォーマンスで対話を行うことによって、狭義の意味での言語による対話が開けてくる生徒もいます。

★しかし、暗記が学びだと信じている場合、それが開けてきません。今までは、大学の一般選抜で大学に入っていきますから、そのような生徒のメンタルモデルやコンセプトレンズの生徒と教師の相互理解がなくても進めました。しかし、その場合、大学に入ってから、社会に出てから進めなくなる生徒もいるのです。これはパウロの生徒ということではなく、従来の全日制の見落としてきた点です。

★パウロの場合、そこを見極めながら全日とエンカレスクールの教育の違いを生徒と確認しながら教育環境デザインを仕掛けます。

★さて、エンカレの場合は、狭義の意味での言語による対話をはじめから飛ばして行いません。まずは、自然と対話する園芸や農業の体験、アルティメットの体育の授業で、身体的体験による広義の意味での言語で対話をしていきます。先生方は、生徒の反応を克明に記録していきます。体育の場合は動画をとり、生徒と共有しながら、自分の身体をどう活用するか、同時にどんな感情が生まれたのか、どう作戦を考えたのかなど身体の動きに即しながらリフレクションしていきます。グーグルクラスルームによる共有ができるので、自分をメタ認知する体験がしやすいですね。

★こうして、ようやく、自己理解への道が開けてきたところで、哲学授業としての倫理の授業などで、自分のメンタルモデルとコンセプトレンズに気づいていくわけです。コペルニクス的転回的な再生成をする生徒もでてくるし、自分のメンタルモデルやコンセプトレンズの強みを意識できる生徒もでてきます。

★そのように再生成したり、気づきを得たりした生徒同士は、互いにものの見方考え方であるコンセプトレンズやものの感じ方であるメンタルモデルの違いをリスペクトできるようになります。

★そこまで来ると、ディスカッションができるようになり、それができれば、全日の生徒同様、個人ワーク→ディスカッション→リフレクション→クリエイティブパフォーマンス→個人ワーク→・・・というマルチスパイラルな思考回路が回転し始めます。

★再生成したり覚醒したりしたメンタルモデルとコンセプトレンズが作動していき、自分の才能が開花していきます。

★もちろん、自己理解にもっと時間が必要な生徒もいます。それゆえ、そのような場合、もっと個別最適な環境デザインを作るという意味で、隔週コースや放送視聴コース、あるいは選択体験授業があります。

★エンカレッジスクールの場合、全日も実は同じなのですが(全面的に展開するのはエンカレの方ですが)、内面の教育環境デザインが必要です。それには哲学授業がどうしても必要です。倫理の時間にアートと哲学の造詣に深い教師が二人授業を行います。エンカレの教師は、全員現象学的教授法を定期的に大学・大学院の研究者と学び合い、その大学の学生がインターンシップにパウロに研究に来るシステムが出来上がっています。

★通信制高校の教師を育成する機関は、日本には実は公的にはないのです。したがって、大学と協力して通信制高校のエクキスパート育成を行っているのです。パウロのエンカレの教師は、今では、その大学主催のセミナーで学んでいる学生のファシリテーターまで行うように成長しています。まさに人間教育のエキスパートなのです。

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