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2022年11月10日 (木)

2025年度大学入学共通テストの試作問題公開される。

★昨日、大学入試センターは、「令和7年度試験の問題作成の方向性,試作問題等」の記事を掲載。試作問題と回答、概要などが掲載されています。ゆっくり眺めてみたいのですが、新教科である「公共」が気になったので、まず解いてみました。人権の問題は当然扱うので、自然法に関する定番の問題が出題されていました。自然法と実定法の関係を踏まえている選択肢を重ね合わせるというか置換できるスキルがあれば、自然法とは何かがわかっていなくても解けます。

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★たしかに考える問題ですが、どこか暗記で解くのではなく推理で解くことが考えることだとなっているのは、なにか本意でないような気がします。良い問題ではありますが、考える対象というか問題が違うのではないかなあと。自然法論と法実証主義については簡単な文章で示し、そのうえで両者が葛藤を起こすようなケースについて、その問題解決について考えるような問題にできるといいですね。

★同じことはアリストテレスの正義論の問題にも言えます。アリストテレスを出してきたということは、その背景には、サンデル教授やロールズの正義論があるはずです。新教科書でも扱われていたような。だとしたら、これもいろいろな思考実験問題が活用できるでしょう。

★SDGs関連の問題もでていましたが、これは中学入試でも出題されるもので、もう少し深めて欲しいなあと。。。

★さて、上記のニーチェ問題は、「公共、倫理」の問題からです。倫理の範囲だと思いますが、ニーチェがニヒリズムについて書いた文章を読み、選択肢の中からニヒリズムの生成過程にあたるケースをすべて選びなさいと。センターの概要説明ではこうなっています。

「資料(ニーチェの遺稿)から読み取った内容と,ニヒリズムに関する既有の知識とを結び付け,科学時代にニヒリズムが発生する具体的なプロセスを考察できるかを問う。 」

★意図は汲めますが、結局は読解問題です。そうはいえ、選択肢は一見紛らわしいし、すべて選びなさいは、正答率は低くなるでしょう。しかし、これもまた本意ではない思考力問題です。

★ただ、選択肢がどれも素晴らしいのです。こんなにすばらしい選択肢を並べて、一瞬にして消費されてしまうのはあまりにももったいないと感じます。むしろ、この選択肢をカテゴライズする問いに変え、そこからニヒリズムが生まれる問いのデザインはどれなのかと、この選択肢を逆利用して、ミニワークショップができます。

★それにしても、勝手に解不能な問題を設定して、懸命にがんばって考える過程をぐるぐる回ったけれど、結局は解けず焦燥感や喪失感に苛まれる(設定がそもそも梯子の推理ですね)というニヒリズムは、まるで昨今の教育改革のお話に対するアイロニーなのではと勘繰ったり。。。

★まあ、深読みは誤読に通じるというお話もありますから、今回は、この辺で。

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