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2022年11月

2022年11月30日 (水)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(07)成城学園の真価

★昨日、成城学園の青柳先生(入試広報部長)と首都模試の北さん(取締役・首都圏模試センター教育研究所長)と首都模試の市川さん、そしてノイタキュード代表北岡さんと1時間ほど対話しました。基本は青柳先生と北さんとの対話で、その前後で対話に参加していました。いずれ首都模試チャンネルで公開されると思います。

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★成城学園のカリキュラムを中心に青柳先生がお話され、北さんが質問していくという対話なのですが、今回は、それぞれの学びにおいて、生徒がどのような人間関係をつくっていくのかという具体的な話が広がりました。

★その人間関係作りは、昔からそして今もこれからも人類が求めている人間関係づくりです。

★現在人間関係が崩れていて、いろいろな問題が身近で多発していますし、それは世界的な問題でもあります。105年前に、成城学園では、そうならない人間関係づくりを教育の中で行ってきたのです。

★よく人間力形成という言葉がありますが、成城学園ももちろんそれは追究しています。ただ、人間関係という関係性に着目した人間力形成であるということが改めてわかったのです。

★その人間関係とは何か?SDGsのゴールを達成するためにも極めて重要な関係性です。いずれ公開されるので、お楽しみに。

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ドネラ・プロジェクト(13)2030年に向けて新次元コンセプトで動き始める私立学校

★昨日のロイター通信のゼロコロナ政策に対する中国の抗議参加者についての記事で、中国外務省の次のような言葉が引用されていました。「中国外務省は、権利や自由は法の枠内で行使されなければならないとしている。」あまりにあっさりしていたので、ググってみたのですが、他紙でこの言葉について、詳しく述べているものが見当たらなかったのです。

★探しているうちに、昨日のNHKのWorld-Japan Newsで、"Beijing's science-based prevention and control measures have been proven effective. This is a fact witnessed by the international community. Any rights and freedoms must be exercised within the framework of the law."と掲載されていました。ロイター通信は、この部分の翻訳なわけです。

★この件に関して、ここで何か述べようとは思わないのですが、ここ数日、私学関係者と議論をしている中で、もはや新次元のコンセプトで進まなくてはとなり、その新次元コンセプトの内容が、ラディカルで、この歳になってからやることなのかと多少迷いがあったわけです。

★21世紀型教育を広めたわけだからもうそれでいいではないかと思ったりしている自分もいるのです。

★がしかし、さらになんだと。落合陽一さんも、シンギュラリティは来年きちゃうんだからと。伊藤穰一さんも、Web3.0を広めていて、その波は学校現場に降りてきてもいますし、やはり新次元だよねといわれると、やるしかないかと思うわけですが、この記事をみて、このさりげない「法の枠内」の意味を、今の日本の高校や大学レベルで、どう生徒や学生は捉えるのだろうと少し心配になりました。

★おそらく、中国や欧米の生徒や学生は、この意味や概念いついて、根本的なところから大いに語るでしょう。でも、日本の生徒や学生は、根本的なところから語る知識がありません。能力がないのではないのです。受験知識はなんとかなるでしょうが、歴史と文化として身体化した知識がないだけなのですが、それは教育の責任でもあります。

★社会課題がどうのとか、探究がどうのとか、総合型選抜がどうのとか、まだまだ一般選抜がどうのとか、そういう話をしている間に、世界は「法の枠内」の意味をディスカッションできる知恵をさらに進化させているわけです。

★このギャップが何を意味するのか。その議論に加わらないと日本はどうなるのか。このところの私学関係者は、このギャップに危機感を抱き、何とかしようとしています。

★私学関係者なので、私立学校関係者とそのステークホルダーも含むわけですが、結局本物の議論をしていかなくてはなりません。学習指導要領の議論では、ミッシングリンクはみえないままです。しかも議論と言っても、アクションづきです。

★昨日もZoomで対話をして、なるほどと確信せざるを得ない流れがきていることに気づきました。

★恐ろしいことに、一部の未来論者が言っている学校がなくなるという話ではなく、逆に未来は学校化するしかないわけです。もっというなら、アカデメイアの現代版になるしかないのです。それを維持するシステムがAI人間だからです。。。

★相当クレイジーな話だと思われるでしょうが、2050ムーンショット構想の背後には、そういう動きがあるのでしょう。私立学校は動かざるを得ません。その学校化モデルがIBだったり、インターナショナルスクールだったりしてもいいのですが、そこに私立学校がチャンレンジしないわけにはいかないのです。その理由は、いずれいいましょう。

★今仲間が少しずつ増えています。そこに向けてかつても動いていたのですが、とん挫しているので、再編しながら新しく動き始めています。とはいえ、2050年までは私は生きていないなあ。やはり2030年までになんとかしなくてはと感じる今日この頃です。

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2022年11月29日 (火)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(06)22世紀型教育に移行しつつあるかえつ有明の動向

★かえつ有明の広報主任内山誠至先生から国際生入試などの中間報告の連絡がありました。一部ご紹介します。

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(インスタグラムも人気です)

★「2023年度国際生入試の途中経過」
中学入試 Advanced選考 11月20日(日)AM 出願240 受験228 合格177
中学入試 Regular選考 11月20日(日)PM 出願115 受験103 合格36
高校入試 Regular選考 11月20日(日)PM 出願27 受験26 合格9

中学入試 Honors選考 12月5日(月)AM 出願231(11月27日時点)
高校入試 Honors選考 12月5日(月)AM 出願29(11月27日時点)

★すっかり定着したかえつ有明の国際生入試。すでに学内の帰国生シェアは約30%のようです。すべての学びがプロジェクト型で、自律分散協働系の生徒組織。22世紀型教育へシフトしています。立地がすでに、そのような教育を志向する家庭層が集結していますから、人気上昇はとまりません。

★「今後のイベントのご案内」
 ●中学入試体験会 12月10日(土)8:30~10:45
 ●第2回中学入試説明会 1月14日(土)10:00~11:30 (オンライン実施)
 ●学校見学会 毎月数回実施中

★かえつ有明のようなプログレッシブでマインドフルネスな学校が増えていくことは、日本の教育を変えることになるでしょう。

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2022年11月28日 (月)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(05)学びの変容は避けられない

★前回、教育と授業の二つの軸で、学びの4つのタイプをみました。現状ほとんどの学校は、この4つのタイプの組み合わせで成り立っています。どのタイプの割合が大きいかで、学校の特徴が変わってきますから、図のように書けるかもしれません。あtだ、4つの変容だけではありません。あくまで、典型的なイメージとしてはこんな感じになるのではという仮説です。

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★戦後の授業というのは、指導案型の授業一色だったでしょう。学習指導要領の形成が始まったばかりでしたから、それが1986年ごろから、中学受験の大衆化がおこると、エリート20世紀型教育が主流になったでしょう。多くの私立中高一貫校がミニ開成として、このタイプを目標にしてきました。しかし、ものごとはエントロピーが増大すると、次元を変える動きができます。

★2011年3・11をきっかけに、予測不能な事態に対応する複眼的で柔軟かつ実装的な思考力が求められるようになりました。それが21世紀型教育と呼ばれるものです。

★まだまだエリート20世紀型教育が多いですが、着実に21世紀型教育にシフトしていることは確かです。AIの進化、2050年ムーンショット構想は、それに拍車をかけるでしょう。そして、22世紀は、クリエイティブラーニングが他のタイプを吸収してしてしまう事態が起こるでしょう。

★現状、探究が大流行りです。そのよしあしはともかっく、これで何が起きているかというと、多様な問いが出そろってくるということです。それに伴い、かなりの解決がなされます。もしなされなければ、「成長の限界」でドネラ・メドウズのグループが警鐘をならしたように、宇宙船地球号は崩壊するでしょう。

★そうならないように、世界全体が進みます。するとあとは、創造的な仕事が残ります。AIが日常生活を運営していきます。日常は、人間にとって辛いですからね。創造的な学びや仕事が非日常を生み出し、生活に息吹を与え続けるでしょう。もちろん、人類は宇宙という領域に出ていきますから、またまた新たな問題が発生していることでしょう。

★しかし、それとてクリエイティブラーニングで対応できるし、対応しなければならないでしょう。

★このようなシナリオプランは、私の考えではなく、すでに多くのSF作家が予想し、科学者が実践してきたことです。変わりたくないという人もいるかもしれません。しかし、世界はおせっかいです。1人も残らずという働きかけが起こるのです。現に起きています。効果的な利他主義と遊びの重要性が宇宙船地球号の船内に満ちていることでしょう。

★宇宙船地球号は1つです。格差も境界線もないわけです。とはいえ、ユートピアと捉える人とデストピアと捉える人がでてきて、次の次元に進まなければ解決がつかなくなるでしょう。ここまできたら、悟りの境地というマインドフルネスの修行が待っているかもしれません。。。

★その時学校は?宇宙船地球号自体が学校です。学校も一つになります。22世紀の話ですが。2023年中学入試の動向は、そのような未来を見据えた知恵がある学校が注目を浴びるでしょう。

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2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(04)学び、思考、英語、多重知能などが注目される中高一貫教育

★よく偏差値の時代は終わったという話になります。これはあくまで比喩で、偏差値という統計手法がなくなるというわけではないのはいうまでもないでしょう。学力の結果や大学合格実績だけが重視される時代ではなくなったというくらいの意味でしょう。それはそうでしょうが、大切なことは、では何が大切だと思われるようになったかを考えてみようということです。それは、すでに中学入試市場では現れています。学び、思考、英語、多重知能などが教育の中で語られている学校はどこかというのがそれですね。

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★それらを、教育と授業という2軸でカテゴライズすると、上記の図のようになるでしょうか。独断と偏見ですので、それぞれ考えて頂ければそれでよいと思います。

★4座標にすると、4つの象限に分けられますが、どれか一つの象限しかないという学校は今ではすくないので、どの象限の割合が多いかというイメージで学校を理解しよとしてみるとよいのではないかと思っています。割合に応じて、学校のタイプが4つぐらいになります。もちろん、これは中高一貫校だけではなく、高校だけの学校にも適用できます。(つづく)

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2022年11月27日 (日)

三田国際学園 21世紀の効果的希望を生み出す教育システム確立

★先週の金曜日、GLICC Weekly EDU 第105回「三田国際学園 大橋清貫先生ーグローバル教育の課題とこれからの中等教育」が開催。1日にもたたないうちに、視聴回数125。おそらくあっという間に1000は超えるでしょう。これは三田国際が高人気学校だという証明ですが、その人気の理由が突出した先鋭的な未来の教育をいまここで展開しているからです。

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(GLICC Weekly EDU 第105回「三田国際学園 大橋清貫先生ーグローバル教育の課題とこれからの中等教育」)

★何が突出していて先鋭的なのか?一条校で、<実質>完全インターナショナルスクールであるという見方もできるでしょう。あるいは、海外大学も国大大学も多様な進路選択が実現されているともいえるでしょう。あるいは、29名の専任の外国人講師が集結し、学内の教職員の会議や対話の公用語は英語だということなどなどでしょうか。

★一条校のIB認定校は、学校全体の一部がそうなっているだけですが、三田国際は、すべての生徒がIBレベルの学びの恩恵に浴していますから、

★いろいろな見方があって、大いに三田国際について多様な見方について世の中が湧いてくれれば、そこに希望があるということがよくわかると思います。

★実際、「〇〇国際学園」というのが入試マーケットで増え、人気が急上昇するのは、ここに21世紀型希望があるからです。このいわば21世紀型国際学園の入試市場が2025年までに相当のシェアを増やし、かつての御三家秩序型入試市場と互角になるでしょう。

★そのトップモデルは三田国際学園なのはいうまでもないのですが、なぜトップモデルか。それは資本主義の原理を貫徹しているからです。資本主義の過渡期にある現在は、格差があるわけで、その段階では批判もあるのですが、その原理である、「経済合理性」「計算可能性」「予見可能性」「リスクマネジメント」を徹底すれば、その格差のもたらす絶望感を希望に好転できます。それが21世紀型希望です。

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★中学入試において、21世紀型教育というシステムが生まれたとき、実は、効果的な利他主義=effective altruism=EAというのが拡大していました。この効果的な利他主義の普遍コードは国連も掲げている黄金律(ゴールデンルール:GR)です。それゆえ、21世紀型教育のコンセプトはGRを実現できる教育に設定していました。このEAを全うするGRの実現は、現代の頼りになる哲学者であるウィリアム・マッカスキルによるまでもなく、グローバルな視野がなければみえないのです。

★プラスティックゴミの問題や1ドル寄付など身近なボランティア活動がかなり広まっています。そんなことやっても砂漠に水をまくような話だとしばしば揶揄されますが、これがグローバルな視野でながめると、1人の力が世界を変えるとてつもないインパクトを持っていることが計算できます。つまり、マッカスキルのおもしろいところは、グローバルな経済合理性や計算可能性という資本主義原理を徹底することで、well-beingを生み出せるというパラドクスを示唆しているわけです。

★大橋先生が、学内でロジカルシンキングについて広く深い議論がなされ、その結果、中1の三田国際生から考える習慣を確立しているというお話をしている箇所があります。そのときに一言「MECE」という単語がでてきます。これを聞き逃さないでください。この「MECE」がなぜ重要なのか?それをぜひ推論していただければ、三田国際が経済合理性、予見可能性、計算可能性、リスクマネジメントを徹底的にロジカルに思考しアクションにつなげていることがはっきりわかるでしょう。

★それから、これも国内だけ見ているとわからないのですが、大橋先生はこれからは「MFA(マスター・ファインアート)」の重要性についても語っています。MECEとMFA。まさに現代のリベラルアーツと置き換えることもできます。

★しかし、決定的に大事なことは「発想の自由人」として学究的アクションを起こそうという話です。

★マックス・ウェーバーの理解社会学がここにきて実現するのかと、大橋先生のお話を聴きながら心の中で驚嘆していました。個人の主観である発想の自由が徹底されれば、資本主義の過渡期としての非合理的・理不尽な状況が一変していくという希望の話です。客観主義(偏差値はその一つですね)が非合理なあるいは理不尽な格差を生み出すパラドクスを解くカギは、発想の自由人としての学究的アクションの貫徹だというわけです。

★三田国際学園が、21世紀型国際学園市場のトップモデルである理由は、そのようなところにあると勝手に思っています。独断と偏見ですから、大橋先生にそれは違うといわれるかもしれませんが、あくまでも私の発想の自由ですからお許しいただけると思います。

★ダボス会議をはじめ、私たちの国も、新しい資本主義を模索しています。21世紀型国際学園市場に、その希望の種(Seed of Hope)はあったのです。ぜひご視聴ください。

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2022年11月24日 (木)

体験思考 PBLの前提

★今朝1時間くらい電話で、工学院大学附属中高の教務主任田中歩先生と対話しました。PBLのコンテンツや具体的なモデルはたくさん実践されているし、理論と生徒の才能を開くリアリティとはかなりギャップがあるし・・・などなど。そして何が足りないのかねと。すると、コンセプトの意味を難しく考えすぎて、それがないのでは?と。ビジョンや目的とコンセプトは違いますよねと。なるほど。

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★そういいながら、田中歩先生は、市川力さんのコンセプトの考え方がなんかいいなあと。カジュアルでかつ本質的な感覚。共感力を大切にする歩先生らしい着想。

★その後、パウロの先生方対象の高1生の企画提案のプレゼンを見学、そしてフィードバックもしたりしていました。

★すると、上記の図のようなループ図が湧いてきました。

★未完成ですが、記憶するためにここに書き込んでおきます。

★PBLの前提には、上記の図のような体験思考を回しておく必要があるかもしれません。

★ざっくりした着想ですが、対話によって投影された図です。市川力さんによると、みんなでざっくりとしたそれでいて本質を射抜く着想を生み出すというのがコンセプトのようでありますし。

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女子教育の新次元コンセプトレンズ パウロの生徒 エリフ・シャファク Inner Paul Woods intellectual nomads etc.

★先日高2生のPNP(パウロ・ネーチャー・プログラム)がありました。見学に行くと、生徒に呼びかけられ、「今までは、身体で感じるプログラムでしたが、今回は身体と脳神経を全部使うプログラムでした、さらに楽しいですよ!」と。ちょうど芸術科目で、美術や陶芸をやっている生徒にとっては、今回のテーブルづくり、草木染、タープ張りは、感性と知性の接点を手で感じ知り創る感覚だったようです。あっ!あるサイトで読んだエリフ・シャファクの言葉“most creative people are often boundary crossers.”を想い出しました。

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(草木染の媒錬湯を煮込んでいる風景)

★そして女子生徒が、何やら考えごとをしているようなので、何か見つけたのと聞いたところ、「はい、クラフトとアートは接点があるなあと。それは何だろうと、ふと」と。なるほど“boundary crossers”じゃないかとピンときました。それで、振り返りで何人かと簡単に書いてみたらと言ってみると、そうですねと。結果的には、彼女のクラス全員が、学年主任で主幹の大久保先生がみんなで共有しようよということで、書くことになったそうです。

★トルコ出身の今世界中で注目を浴びている作家でありフェミニストであるエリフ・シャファクは、書くことは重荷になることも苦しめらることもあるけれど、自分がそうしていることを愛しているならば、前進できると語っています。

★それで、つい書いてみたらと出会う度に声をかけてしまう自分のルーティンがあります。でも、そのシンキング・ルーティンは結構共有されています。しかも15秒スピーチとか2分間スピーチの原稿ぐらいを想定していますから、ルーティンになると自然と鉛筆やキーボードが動くようです。

★エリフ・シャファクは、そんなルーティンを行為するには、“inner garden”が必要なのだと。そして、そのような内なる庭を維持しているからこそ、創造性を生み出す“boundary crossers”になれるし、彼女のもう一つの新次元コンセプトレンズ“intellectual nomads”になれるわけです。

★パウロの生徒にとっては、パウロの森での体験が“inner Paul woods”になるのでしょうか。いずれにしても“intellectual nomads”としての種が蒔かれていることは確かなようだと思いました。

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(日本語の字幕やスクリプトを見ることができるので便利です)

★それにしても、女子生徒が語りかけてきたことが、エリフ・シャファクに結びつくとは!人間関係や、内面の自分の信じることを大切にしているパウロの教育は、共学校でありながら女子教育の新次元コンセプトレンズである<intellectual nomads>や<boundary crossers>を踏み出しているのだと気づきました。

★ちょうど、首都圏模試センター取締役・教育研究所長北一成さんやいくつかの学校の先生方と女子校教育だけではなく、共学校や男子校における女子教育について語り合うカンファランスを始める準備をしようと対話をするところでもありましたから、パウロの生徒の言動を新たに受けとめることができたのかもしれません。

★2030年問題を解決し、2050年のムーンショット構想を実現するには、SDGsのグローバルゴールとしてのジェンダー問題を解決することは必須ですし。

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2022年11月22日 (火)

聖パウロ学園のエンカレッジの哲学授業 メンタルモデルとコンセプトレンズのコペルニクス的転回(CR)

★聖パウロ学園高等学校には全日と通信制の2つの学校があります。通信制の方はエンカレッジスクールと呼んでいます。中学の時になかなか学校になじめない複合的な理由があった生徒がエンカレッジスクールに入学してきます。毎年問い合わせが増えています。しかし、少人数制なのですべてを受け入れることは難しくなってきました。隔週コースとか放送視聴コースもありますが、基本は通学コースにおいて丁寧に「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実し、「主体的・対話的で深い学び」の実現を以前から行っています。

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★ただ、それぞれのメンタルモデルが大きく違うし、コンセプトレンズも様々です。全日もそうですが、その振れ幅が違います。それだけ個性的です。欧米だと受け入れる体制がありますが、日本だと難しいのでしょう。そこにパウロは挑んでいるわけです。

★個性とはいっても、そのメンタルモデルやコンセプトレンズが自分の才能を引き出すのに壁になっている場合、コペルニクス的転回(CR:Coperunican Revolution)が生まれるような環境をデザインする必要があります。それいよって、個性が湧き出てくるわけです。あるいは、せっかく多くの人と共有して共感し合えるメンタルモデルやコンセプトレンズを持っているのに気づいていないという場合、それに気づいてもらえるような環境をデザインする必要があります。そうすることで、個性が際立ってきます。

★個性というのは、ありのままとわいうけれど、今表現されている姿がありのままであるとは限らないので、その見極めは難しいのです。先生方は早朝から、1人ひとりの様子をどう捉えるか話し合います。自分の眼鏡が偏っているかもしれないので、同僚同士の対話は重要です。

★そうして、1人ひとりの才能や個性を解放する仕掛けを作っていくわけです。その仕掛けは、やはり対話なのですが、はじめから狭義の意味での言語での対話はなかなかできません。ここはパウロに限らず、全日と通信制の違いです。とはいえ、全日に通っている生徒も、実は狭義の意味での言語による対話が得意でない生徒もいます。でも、言語を開きながら、置換ながら、メタファーを使いながら、言語操作を学ぶことによって得意になる場合もあるし、そもそも言語操作が難しい場合もあります。その場合、スライド作りや他のパフォーマンスで対話を行うことによって、狭義の意味での言語による対話が開けてくる生徒もいます。

★しかし、暗記が学びだと信じている場合、それが開けてきません。今までは、大学の一般選抜で大学に入っていきますから、そのような生徒のメンタルモデルやコンセプトレンズの生徒と教師の相互理解がなくても進めました。しかし、その場合、大学に入ってから、社会に出てから進めなくなる生徒もいるのです。これはパウロの生徒ということではなく、従来の全日制の見落としてきた点です。

★パウロの場合、そこを見極めながら全日とエンカレスクールの教育の違いを生徒と確認しながら教育環境デザインを仕掛けます。

★さて、エンカレの場合は、狭義の意味での言語による対話をはじめから飛ばして行いません。まずは、自然と対話する園芸や農業の体験、アルティメットの体育の授業で、身体的体験による広義の意味での言語で対話をしていきます。先生方は、生徒の反応を克明に記録していきます。体育の場合は動画をとり、生徒と共有しながら、自分の身体をどう活用するか、同時にどんな感情が生まれたのか、どう作戦を考えたのかなど身体の動きに即しながらリフレクションしていきます。グーグルクラスルームによる共有ができるので、自分をメタ認知する体験がしやすいですね。

★こうして、ようやく、自己理解への道が開けてきたところで、哲学授業としての倫理の授業などで、自分のメンタルモデルとコンセプトレンズに気づいていくわけです。コペルニクス的転回的な再生成をする生徒もでてくるし、自分のメンタルモデルやコンセプトレンズの強みを意識できる生徒もでてきます。

★そのように再生成したり、気づきを得たりした生徒同士は、互いにものの見方考え方であるコンセプトレンズやものの感じ方であるメンタルモデルの違いをリスペクトできるようになります。

★そこまで来ると、ディスカッションができるようになり、それができれば、全日の生徒同様、個人ワーク→ディスカッション→リフレクション→クリエイティブパフォーマンス→個人ワーク→・・・というマルチスパイラルな思考回路が回転し始めます。

★再生成したり覚醒したりしたメンタルモデルとコンセプトレンズが作動していき、自分の才能が開花していきます。

★もちろん、自己理解にもっと時間が必要な生徒もいます。それゆえ、そのような場合、もっと個別最適な環境デザインを作るという意味で、隔週コースや放送視聴コース、あるいは選択体験授業があります。

★エンカレッジスクールの場合、全日も実は同じなのですが(全面的に展開するのはエンカレの方ですが)、内面の教育環境デザインが必要です。それには哲学授業がどうしても必要です。倫理の時間にアートと哲学の造詣に深い教師が二人授業を行います。エンカレの教師は、全員現象学的教授法を定期的に大学・大学院の研究者と学び合い、その大学の学生がインターンシップにパウロに研究に来るシステムが出来上がっています。

★通信制高校の教師を育成する機関は、日本には実は公的にはないのです。したがって、大学と協力して通信制高校のエクキスパート育成を行っているのです。パウロのエンカレの教師は、今では、その大学主催のセミナーで学んでいる学生のファシリテーターまで行うように成長しています。まさに人間教育のエキスパートなのです。

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2022年11月21日 (月)

国際バカロレアの普及促進に向けた検討に係る有識者会議 第1回の資料公開される

★令和4年10月17日(月曜日)16時00分~19時00分、Web会議で開催された第1回めの「国際バカロレアの普及促進に向けた検討に係る有識者会議」の資料が公開されています。政府には、本年度までにIB校を200校にするという目的があるために、有識者会議を開いてそれを加速させようというねらいがあるのでしょう。

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★現在184校とはいえ、DPは65校です。全国の高等学校は、全日、定時制、通信制合わせると5000校強ですから、全国のDP校シェアは1%強です。もしDP校が200校になったとしたら、3%ですから教育改革ムーンショットになるでしょう。

★とはいえ、校数は3%だとしても、DPを取得できる人数は、まだまだ少ないわけですから、実はムーンショットにはなりません。

★ですから、地道に、PYPやMYPの体験を増やす方がよいというような議論がおこっているようです。また高等学校は、TOKという認識論的なというか哲学的な素養をDP認定がされていなくても浸透させたいと。

★IBにこだわらなくても、PBLやグローバルリーダー教育はできます。しかし、それは教師力や自由度の高いカリキュラムマネジメントが必要になるので、現状の教育学部での学びは、まだまだ対応できません。それゆえ、強烈な21世紀型教育推進校のようなところでなければ難しいですね。

★その点は、IBはフレームがしっかりしているので、DP以外は、現状勢力でなんとかなるでしょう。もちろん日本語IBレベルですが。

そのような多様な問題を克服して成果を上げているのが大阪府立水都国際中学校&水都国際高等学校です。教頭の太田晃介先生の話は実に参考になります。

★IB認定校や21世紀型推進校はSDGs人材も作るカリキュラムを実現していますから、SGDs教育助成金の予算を立ち上げて欲しいと思います。IBのDP認定校が200校+21世紀型教育推進校が300校で、500校。全国の高校のシェアおよそ10%。1校2億円で1000億円の予算です。

★これで、成功すれば、すべての高校で実施します。すべての学校に2億円。1兆円予算です。全然余裕です。この投資で日本経済は復活間違いなし。それに、日本経済だけではなく、世界の経済を救うことになるでしょう。1兆円でムーンショット計画を実行できるなんて、安いものでしょう。国民の税金をいまここで子どもたちに効果的に活用したいものです。さすれば、高校改革もあっという間です。量は質を作ります。

★もちろん、そのような高校生が入学すれば大学も大助かりでしょう。大学入試も変わりますね。

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新しい自分に向き合う生徒

★窓の外をふと眺めると、朝の雨模様はいつの間にか快晴に変わっていました。朝礼で司会の主幹が、パウロの雨は雨で大好きですと語っていましたが、私もそう思います。しかし、快晴の空は空でまたいいですね。しかし、そんな快晴を目にしてすべて世はこともなしみたいに何も悩まない私は、いつのまにか歳をとり過ぎたのかもしれません。

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★というのも、しばしばパウロの生徒に話しかけられますが、生徒たちの眼の奥には、もどかしい自分を何とかしたいという炎が見え隠れしているからです。

★そんな生徒に出会うと、たしかに、私も若い頃は、青空を眺めて、かえって不安を感じていことを思い出しました。谷川俊太郎さんの詩に「もどかしい自分」というのがあります。谷川俊太郎さんの詩は、常に光と影の両方が混在していますが、最終的にはふっ切る何かがあって若い時代は勇気をもらっていました。この詩もその一つです。一連だけご紹介しましょう。

自分が無限の青空に吸い取られて

からっぽになっていく

何かに誰かにしがみつきたいのだけれど

分からない どこに手をかければいいのか

子どこのころとは違うさびしさ

置いてけぼりの頼りなさ

でもかすかな楽しさもひそんでいる

これは新しい自分かもしれない

(「たったいま」講談社青い鳥文庫)

★得体のしれない不安を抱きながらも、見つけたものに挑んでいる生徒。それぞれに苦悩しながらも、踏ん張っているけれど、ときとして、弱音を吐いたり、パニックになったり、そんなとき仲間や教師がいてくれる。いっしょに走ってくれる。そんな中にあって、高3の今ごろ、ようやく自分に正面から向き合えるようになって、未来の自分がいるかもしれないと目の奥に星の輝きを魅せる生徒がでてきます。

★もちろん、不安はまだまだ続くでしょう。でも、不安だけではなく、不安の中にありながらも希望の光を灯し続けられる自分の存在の重さを感じとって、卒業して欲しいと思うし、そうなるように先生方は対話を続けるでしょう。

 

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2022年11月20日 (日)

成城学園 革新的伝統を誇る私立学校 多様な体験プロジェクトをアップデートし続ける

★105年前の大正自由教育を牽引した成城学園。今のインストラクショニズムにつながる近代国家形成のための教育であるヘルバルト主義と創造的民主主義を生み出し続けるためのデューイやドルトンのような教育進歩主義の合力を生み出し、独自の革新的伝統を土台とする教育を今もアップデートし続けています。その意味では、東京において私立中学の数も在籍数も最も多い世田谷区で異彩を放つ普遍主義的教育の現代化にチャレンジしている学校です。

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(GLICC Weekly EDU 第104回「成城学園中学校高等学校ー探究が開く未来」)

★先週金曜日、第104回GWEで、成城学園の入試広報部長の青柳圭子先生と対話をする機会を得ました。GWEには、昨年から3度目の出演ですが、毎回毎回新しい体験プロジェクトが立ち上がっている情報をお聴きすることができます。そして、そのたびに成城学園は進化し続けるのです。この進化し続けることが成城学園の伝統です。新しいパッケージ教育を導入し、古くなると捨ててしまう斬新教育とは全く違います。

★1つひとつのプログラムを常に現代化しつつ、同時に新しいプログラムを創造していくのが成城学園です。「探究」とか「PBL」という言葉は、もはや一般化していますが、同校ではそれを105年前から行い、60年くらい前に、さらに「自由研究講座」として結晶化しています。土曜講座というのが20世紀末に多くの学校で生まれました。それをもって探究はうちはすでにやってきたとアピールする学校も少なくありませんが、成城学園は、105年前から行っているし、現代においても先鋭化したプログラムとして60年以上前に結晶化していたのです。

★そして、現在、DX人材やGX人材育成のために必要なデザイン思考やグローバルコンピテンシーを育成する「探究」がアップデートされているのです。グローバルキャリアデザインという壮大なプロジェクトも実践されています。「成城学園が世界一になるために」中1から高3、同窓生、大学生などが集結しているのです。

★大学や同窓生、その他のステークホルダーと共創するプロジェクトなわけです。幼稚園から大学院までの総合学園だから、ネットワークも充実し、その質がとても高いですね。

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★もうこれで十分だ。素晴らしいと思っていたら、最後に青柳先生は、来年度から「自由研究講座」をさらに発展させる「ゼミナール」を開講するという新プランを公開してくれました。

革新的伝統の真骨頂ですね。詳しくは、GWEの動画をぜひご視聴ください。目からうろこの教育とは何か、共感していただけると確信しています。

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2022年11月18日 (金)

2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(03)港区広尾学園の衝撃がもたらしたこと

★港区は、千代田区に次いで公立中学対比で私立中学の在籍者数が多い都市です(前回の表参照)。そして、2008年ころからこのエリアは私立中学が多いだけではなく、先進的な教育を実施する私立中学校の集積地となりました。もともと女子校だった順心女子が、共学化して「広尾学園」と名称を変更、コンピューターサイエンスとグローバル教育に破格の力を注ぎ、みるみるうちに偏差値もあがり、大学進学実績も激増、なんといっても海外大学合格実績の圧倒的な数は、他の追随を許しません。

★港区には、次のような私立中高一貫校があります。

麻布中学校
慶應義塾中等部
芝中学校
頌栄女子学院中学校
聖心女子学院中等科
高輪中学校
芝国際学園中学校
東海大学付属高輪台高等学校中等部
東洋英和女学院中学部
広尾学園中学校
普連土学園中学校
山脇学園中学校 

★こうして眺めると、どの学校もユニークで、独自の良質の質を有し、視野が世界に宇宙に広がっている生徒がたくさん育っています。

★この高水準の私立中高一貫が集まったのは、広尾学園が順心女子からの大転換を果たした影響を受けたからということは否めません。

★2008年以前までは、麻布、慶應中等部、芝がダントツのイメージだったのが、広尾学園の誕生は、山脇学園の改革、東京女子学園(来年から芝国際)の改革へ間接的に影響を与えるきっかけになったでしょう。それ以外の学校も、大きな改革ではないかもしれませんが、内部のクオリティを充実する変容はあったと思います。

★こうして港区の私立中学は、偏差値競争というより、教育の質の競争のステージにシフトしました。いずれもすばらしい教育を備え、港区というエリアの価値をあげることに貢献しているでしょう。

★都市と経済と教育の好循環の1つのモデルです。これによって、港区の公立中学にも良い影響を与えることにもなると思います。一定水準を土台にそれぞれ独自の教育を展開する都市。魅力的です。このようにソーシャルジャスティスを目標とする都市がどんどん生まれていけばよいですね。

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2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(02)東京における私立中の集積エリア

★東京都のエリアは、23区と市町村に区分けされています。それぞれの区と市町村における私立中学と公立中学に通う在籍数の割合をみると、東京という都市がそもそも私立学校の文化が根付いていることがわかります。とはいえ、23区と市町村では、かなりの差があります。

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(各区や市町村の公立中の在籍者数に対する私立中学の在籍者対比)

★千代田区、港区、文京区など都心の区は、私立中学の在籍者が破格に多いですね。日本の政治、経済、教育の中心地に私立中の在籍者は集積しているということです。それに比べ、市町村エリア、特に西の都八王子市は、少ないわけです。それでも、公立対比約20%ですから、市立の文化がないわけではありません。高校になると100%超えますから、私立の文化は根づいているといえます。

★したがって、私立学校が、ソーシャルジャスティスとして新次元のコンセプトレンズを身に付ける教育を一斉に行えば、かなりのインパクトがあるはずです。

★まずは千代田区の学校がそれを行えば、日本の教育も経済も好循環を生む方向に動き出すでしょう。千代田区の私立中学を列挙してみます。

大妻中学校
神田女学園中学校
共立女子中学校
暁星中学校
麹町学園女子中学校
白百合学園中学校
女子学院中学校
千代田国際中学校
東京家政学院中学校
雙葉中学校
三輪田学園中学校
和洋九段女子中学校

★いずれも部活、行事、そして大学合格実績をきちんと出している学校ばかりです。

★公立中と差別化はできています。そして、私学同士特徴があって、教育の質の競争も盛り上げっています。

★あとは、2030年問題に対応できる教科学習以外の体験プロジェクトや新しい学びに挑戦し、ソーシャルジャスティスという新次元コンセプトレンズを実装し、アクションを生み出しているかです。

★そこについて、私立中が議論をして、展開していけば、千代田区は新しい都市創りへ移行できるでしょう。

★そして、それがモデルになって、一気呵成に広がっていくことでしょう。

★そうなることを期待しています。

 

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2023中学入試の役割 ソーシャルジャスティスを求めて(01)学歴社会とか塾歴社会とかを超えて新次元コンセプトレンズを実装する動き

★2030年問題—―50年前ドネラ・メドウズらが「成長の限界」でこのままいけば2030年に地球は最悪の状態になると警鐘を鳴らした。それがSDGsに受け継がれなんとかしようとなっている――を解決すべく人材輩出に挑む教育に転換しようという流れが生まれています。もちろん温度差はあるでしょう。しかし、進められるところから進むしかないわけですね。したがって、先見性・先進性に富んだ私立中高一貫校がファーストペンギンとして突き進めばよいのです。

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(「2023年度 和洋九段女子中学校 PBL入試(SDGs型) 説明動画」。生徒と教師が共創する画期的入試。Web3.0時代の先駆けともいえる。ソーシャルジャスティス入試と呼びたいぐらいだ)

★とはいえ、昨今の経済格差はものすごいわけですから、アッパー層の子弟が通う私立学校がけん引するのでは格差を広めるだけではないのかと批判する方もいるでしょう。たしかに、学歴社会や塾歴社会という教育格差を生み出してきた歴史的な経緯もあるかもしれません。日本のGDPを牽引するのか、平等を作るのか、どちらも行いたいわけですが、トレードオフ問題がずっと続いてきたし、今もあるでしょう。

★このトレードオフを解決するためには、次元を変えるコンセプトレンズを装着する必要があります。それは、世界の教育格差を無くし、世界の新しい経済社会をつくる。自然と社会と技術と精神の好循環社会を創る。究極のSDGs社会を創るというコンセプトレンズです。この新次元コンセプトレンズを実装するには、ドネラのシステム思考が役立ちます。

★このシステム思考を発動させれば、学歴社会をなんとかしようとか塾歴社会をなんとかしようとかいう段階で安穏と留まっているだけではいられなくなります。以前私自身がこの段階にいることで良しとしていました。しかし、それは間違いだったと今は猛省しています。この新次元コンセプトレンズからみれば、それも当然解決するのですが、それを解決して終わりではないし、そこに集中していると、目標に向かって進む過程は、問題を抱えながら進むので、その過程でその問題を批判されているだけでは足踏みしてしまうわけです。優先順位をみんなで考えながら進む気概を共有したいのです。

★産経新聞2022/11/15 16:33<「円安倒産」が急増 二極化鮮明に共倒れ懸念も>の記事にこうあります。

円安で苦しむ中小の姿が際立つ一方、円安の恩恵で記録的な好業績を達成する大企業も目立っている。SMBC日興証券の集計によると、10日までに発表を終えた東京証券取引所旧1部上場1048社(金融除く)の令和4年9月中間決算の最終利益は前年同期比14・2%増の18兆3054億円で、中間期として過去最高となる見通しだ。

円安は輸出競争力が高まり、海外事業の利益も円換算では膨らむため、輸出や海外事業比率が高い企業の収益を押し上げる要因になる。中間決算では、円安や資源高を追い風に三菱商事など大手商社や、日本郵船など海運大手が最高益を更新。任天堂やソニーグループも営業や最終利益で最高を記録するなど幅広い業種で好業績が相次いだ。

とはいえ、円安による原材料高で苦戦する大企業も多く、この集計では減益または赤字の企業も全体の4割強を占める。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「このままでは高い技術力をもつ中小企業まで倒産が波及し、共倒れしかねない」と指摘。「中小が大企業に対して適正な価格転嫁ができるよう、政府主導の仕組み作りが急務だ」と警鐘を鳴らす。

★相変わらず円安・円高の構造は変わらないように見えますが、この状況は、大手も中小企業も失速するという予想が見え隠れしていますね。構造が破壊されるだけではなく、社会そのものの危機が生まれます。なるほど2030年問題の1つの兆候です。この円安背景には、産業エネルギーと食料エネルギーという両方のエネルギー問題がありますから。

★したがって、商工中金は今SDGsに取り組んでいる中小企業を支援活動する段階に進んでいるし、大手企業も自前でそこは何とかしようとしているわけです。現状格差はあるでしょうが、SDGsというソーシャルジャスティスをそれぞれ実現しようと動いています。これは新次元コンセプトレンズを実装し始めているということでしょう。

★教育分野でも、卒業した生徒が、そのような新次元コンセプトレンズを装着して大学に進んだり、社会に進んだりできるように動く必要があります。ソーシャルジャスティスを生み出すのは、倫理観というマインドと実現するテクノロジーの両方の実装が要です。新次元コンセプトレンズの教育=シン・リベラルアーツを日本だけではなく、世界中で実施していくダイナミズムを生み出したいわけです。

★それが可能なのは、世界でも東京なのですね。一極集中だとか格差を生む拠点だとかいう側面も確かにあるでしょう。しかし、この拠点を新次元コンセプトレンズへのティッピングポイントを生み出すレバレッジポイントとして活用するアプローチをする逆転の発想はアリだと思います。

★なぜ東京(首都圏という拡張的意味を含む)かというと、世界でも一つの都市にこれほど私立中高一貫校が集結しているところはないのです。しかも、世界から見れば、私立中高一貫校の生徒は、アッパー層出身ばかりではなく、むしろ庶民ががんばって通わせている、地球市民クラスの知の集積地でもあります。

★「地球市民クラスの知の集積地=ソーシャルジャスティス教育の基盤」という観点から、まずは2023年中学入試を見ていきます。その後高校入試についても論考します。

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2022年11月17日 (木)

情報の教員が学校組織の質をアップデートする 時代の変容シナリオをつかんでいるから

★勤務校聖パウロ学園は、組織を教師一人ひとりが変えクオリティをあげています。そう実感するのは、朝イチで出勤し、学校日誌を読み、生徒の出席状況、教師の勤務状況を確認し、一日のスケジュールを理事会の動きも含めてホワイトボードに書き込み(タブレットやデスクトップにすべてデータははいっていてるのですが、マッピング思考には俯瞰できるシンプルなものが必要、スクールバスの運行状況の変化は書き込むのが速いですね)一日のアクションスケジュールを共有できる準備をするだけで、あとは私は何もすることがないからです。

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(WEB3.0に向かう過渡期のキーワード)

★朝の会はもはや私ではなく主幹が司会をしながら、連絡事項の合間に、先生方の30秒スピーチを入れていきます。そして若き主幹は学年主任でもあるので、現場の具体的状況を理解しています。その状況のリフレクションを前日から気づいた先生方としておいて、そのことを共有します。日々改善しながら生徒の未来を創ろうよとエールをおくります。

★そこから学年会が始まり、朝礼や授業が動いていきます。毎日どこかの部署のミーティングがあって、アクションプランの実行の最適化と実施後のリフレクションを行っています。ランチの時間の三分の一は、各行事やボランティア活動ごとに生徒が集まったり、生徒会などが動いています。体験重視とは主体性重視だと生徒は理解して動いています。もちろん、先輩たちの姿をみてそれがストレートに総合型選抜のリソースになるという実益の部分も意識しているのでしょう。でもその実益は、受験勉強も社会正義が通用するという意識なのです。

★午後は一気に授業が展開し、終礼を迎えます。掃除は教師も生徒もいっしょに行います。次の日に向けて学びの準備をするという意味での掃除です。自分たちがやるのは当然ですね。

★終礼後は、部活、ヴェリタス(高度な学び)、カリタス(補習)、100分学習(自学自習)という流れになり、賑わっています。

★というわけで、朝の会が終われば、私はお客さんとのミーティングや先生方の相談にのるだけの時間です。先生方は、このセミナーにいきたいんですけどとか、あと一歩で説明会は満席になります、この時間塾訪問に行ってきま~すとか、この会議の資料はタブレットでいきますがいかがですかとか、来年の修学旅行思い切ってここに変えたいんですけどとか、ユニバーサルデザインとSDGsの関係のワークショップを授業でやりたいんですけど、こうしたらよいかなと思いますが、ほかにアイデアありませんか、アドバイスくださいとか、職員会議で、この話共有したいんですけどとか、調査書の印鑑おしてくださいとか、パラグフライティングと国語の小論文の接点がここにありますよと情報共有しますとか、瞬間的ですがみな三角ロジックで対話をしにきてくれます。とはいえ、この役割、すべて教育関連法規に規定されていることが実行されているだけなんです。

★でも、このような組織の雰囲気をみて何かを感じた情報の教師が、職員会議で、この資料でWEB3.0 の情報共有したいのですがいかがですかと。もちろんというわけで、現状のパウロの組織や教師、生徒の動きが、来るべきWEB3.0に接続する動きになっていると、時代と具体的状況のマッチングの状況をマッピング思考よろしく語ってくれたわけです。

★簡明な図をスライドに書いて説明していました。時代の流れ図、現状のWEB2.0 とWEB3.0の比較図、時代のキーワードとそれにつづくパウロで行われている重要な実践のキーワード化など5分間スピーチでした。終了後拍手はもちろんです。自分たちのアクションが、時代の流れのどこに位置づけられるのかマッピング思考を共有した瞬間でした。

★≪Z世代≫教師が多いということもありますが、タブレットとワークショップで学びの環境デザインができる教師の支援をしているのは情報の教師と教育イノベーションチームであることは確かです。生徒もいつでもどこでもタブレット型PCを持ち歩いているわけです。

★私は、ルールオブローの中でのアクションであるかどうかのリフレクションと三角ロジック対話に応じるだけの仕事になりました。

★ビジョンは、情報の教師がフラットに共有してくれますから、私が声高に言う必要はまったくありません。もちろん学校のビジョンについて語ることはありますが、理事会で話すぐらいです。あとは教頭・副教頭・主幹がいろいろなミーティングで共感を得る表現方法は何か日々考えては実践しています。

★ルールオブローに反する時は権力は発動せざるを得ませんが、それ以外は、フラット、フェアー、フリー、フラタニティ―、ファシリテーションの質が充満してきました。もちろん、学校内の問題ではなく、社会から押し寄せるいいろいろな問題、パンミックや円安経済の影響などにどう対応するかは、スクラムを組んで乗り越えるしかないわけです。スクールバスのスケジュールが乱れるのも、毎日電車が遅れる心配な事態がおきているからです。そこは祈るより仕方がないのですが、日々社会問題が、つまり生徒が取り組んでいるSDGsの問題が肌感覚で伝わってくるいまここです。未来社会を生徒と共にどうしていったらよいのか、2030年問題はすぐそこです。

★そんな状況を好循環に変換する未来シナリオを描くマッピング思考を常にしているのが情報の教師です。しかも限られたリソースやコストでそのアイデアを実現する技術を実装してもいます。情報の教師が活躍できる学校組織は、間違いなく教育クオリティをアップデートしていけるでしょう。

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2022年11月16日 (水)

12月12日 聖パウロ学園の国語科教員が授業実践を報告します。東京私学教育研究所 文系教科研究会(国語)にて。

★12月12日(月)、東京私学教育研究所の文系教科研究会(国語)の「授業実践報告会」で、聖パウロ学園の教頭小島綾子先生と国語科主任高橋祐佳先生が、実践報告をします。同会のタイトルは「パフォーマンス課題に挑戦しよう」です。

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(左から小島教頭、高橋先生)

★新学習指導要領で、「主体的・対話的で深い学び」と称されるアクティブラーニングでは、読み解き、考え、判断し、表現していく授業が展開してくわけですが、聖パウロ学園では、インプットとアウトプットのバランスをとりながら、授業デザインをしています。アウトプットは、自分が得意な表現方法や表現手段を活用すること(今回の報告会ではwifiにつながるデバイスを持参するようにということになっています)によって内発的モチベーションは燃え上がるし、聴衆や観衆を世界に巻き込めるかどうかその反応がスリリングです。

★パウロの2人の先生方は、教科書や資料集、書籍などなどを媒介に対話をしますが、生徒自身の手による作品を媒介に生徒同士が対話する時の知のエネルギーの生成に感動し、自分たちもその対話の中に没入していきます。

★この行為する側と受けとめる側という境界線が崩れて、共感し、互いに新たな何ものかを生成し、多方面に影響が広がっていく過程がパフォーマンスそのものなのでしょう。

★授業=感動の知のパフォーマンスであると、見学しにいくたびに感じます。

★このパフォーマンスデザイン力は、教師の授業デザイン力にとどまらず、生徒が様々な企画—―行事やボランティア、探究ゼミなど――をするときに、すでに実装している状態になっていきます。ある意味生徒の成長や自己変容は、多様な体験の中で、パフォーマンスデザイン力を実装する過程であるのかもしれません。

★学校説明会や外の会場でボランタリーに活動している生徒の姿をみて、実感しています。

★そのように生徒が活動しだす内発的モチベーションを生み出す仕掛けをパウロの二人の教師がつくりだします。パフォーマンス課題デザイン力旺盛な二人ということでしょう。実にアクティブなのです!

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2022年11月15日 (火)

中教審の義務教育の在り方WGに期待するコト

★今年10月に立ち上がった「義務教育の在り方WG」。不登校児童生徒や特別な支援を必要とする子供、特異な才能のある子供を含め、全ての子供たちの可能性を引き出す学びの実現について、どのように考えるべきか?というビッグクエスチョンに応えようとしているのがいいですね。

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★その他にも上記のスライドにあるようなビッグクエスチョンが設定されています。とはいえ、これをまともに受けとめてはたぶんいけません。いつも不思議なのは、このビッグクエスチョンにすでにある回答を出し、実践している学校や学びの場があるにもかかわらず、そこはスルーして、別のケースが取り上げられるのが常だからです。

★今回も、結局1人1台のPCを配布しているから、それで個別最適化することが目的なような気がします。それはそれでよいけれど、そのときこの1人1台のPC配布がもたらすリスクをトレードオフクエスチョンとして問いを設定することは文科省がつくる資料にはないのです。

★委員のやり取りの中で、そのようなトレードオフクエスチョンが投げかけられているはずなのですが、その種のビッグクエスチョンは表に出ないのですね。

★それはなぜかというのもまたビッグクエスチョンなはずです。

★解決できる実践が山ほどあるのに、それをスルーする。多くの子どもたちの可能性を引き出す実践など山ほど事例があるのに、勿体付ける。なぜか?

★その回答は滅茶苦茶簡単です。でも、それを実現するのは、困難です。でも、不可能ではありません。ケネディーがムーンショットを決断した時のような意思決定がなされればできるかもしれないし、Web3.0のブロックチェーン内では可能かもしれません。

★まあしかし、それを待っていては遅すぎるので、さっさっと進めていきたいと思います。

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関東地区カトリック小中高連盟東京地区 大司教様を囲む会 第2バチカン公会議60周年のカトリック教会の改革とカトリック学校

★今年は第2バチカン公会議60周年。そんなときに、関東地区カトリック小中高連盟東京地区のカトリック学校が、18校集まりました。「大司教様を囲む会」をカテドラル(関口教会)で行うためです。教皇フランシスコは、昨年10月10日、バチカン聖ペトロ大聖堂で、「世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会」の開幕ミサを、自らの司式によって行いました。

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★教会の危機、それは第二バチカン公会議の理念が現実の中で薄れていく危機であり、それは世界の人びとの危機でもあると教皇フランシスコは認識し、シノドスを定期的に頻繁に開催していくようです。危機とは何か?大司教様によると、第二バチカン公会議で共有したシノドス的教会への方向性の喪失です。

★シノドス的教会は、福音を告げながら、「ともに旅をする」のですが、この「ともに旅をする」ということについて、どのような形で行うか、わたしたちが「ともに旅をする」中で成長するために、どうしたらよいのか、そこに聖霊の導きがあるようにするにはどうしたらよいのかなどが、世界の教会で果たして大きな一つのベクトルとして共有できているのかという問題のようです。そのために、次のポイントについて、シノドスを開いて、対話を続けようというのが教皇フランシスコの考えであり、実践のようです。

・霊の呼びかけを思い起こす。
・すべての人の声を聞く、参加型の教会プロセスを生きる。
・カリスマの多様性を認識する。
・福音宣教のための参加型の方法を見つける。
・反福音的な動きを見極める。
・社会の癒しや和解のために信頼できる教会となる。
・キリスト教諸派、他の宗教、市民団体との連携を強める。
・教会内のシノドス的な動きを促進する。 

★ところが、世界代表司教が集まったときに、保守勢力がいて、第二バチカン公会議以前に戻るべきだという反論がでるくらいで、カトリック教会内でも分断が起こるのではないかという現実もあるのだと大司教様は語りました。もちろん、そうならないように全力を尽くしているし、尽くしていくと。それには、宣教の共同体、交わりの共同体、命を大切にする共同体のあり方について、こうして対話を持続可能にしていくのだと。静かなそれでいて情熱的な語りの中に大司教様の気概を参加者は感じたようでした。

★そのため、そのあとの各学校の近況報告の分かち合いは、パンデミックへの向かい合い方、宗教性を教職員と生徒に浸透させることはいかに可能か、ポストコロナあるいはwithコロナで増えているかもしれない家庭の危機の影響を受ける生徒たちへの寄り添い方、そしてカトリック学校の経営の危機など、本質的な分かち合いが行われました。

★大学合格実績のような話は直接には出てきませんでしたが、参加したカトリック学校の合格実績を補完しながら、分かち合いの内容をカテゴライズするとこんな感じです。大司教様が語る、第2バチカン公会議以前に戻りたいという考え方は、共同体に力点を置くのではなく、個人の救済の場でよいという考え方らしく、まるで政治におけるコンサバです。それに対し、カトリック的理念に基づいて、世界の諸問題、市民の生活の諸問題から乖離せず、それに対応できる共同体をもう一度という意識が今の教皇フランシスコを中心とするシノドス的教会で、まるで政治におけるコミュニタリアニズムのような感じです。それはともかく、参加したカトリック学校は共同体型カトリック教会が理想なのだという点では一致していました。

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★しかし、現実は、それを正しく追求すると経営難(実際に日本全国のカトリック校の中には幼稚園や小学校を廃止したり、統廃合をしているところが増えてきました)になり、ともすると、個人救済の場となってしまう流れが生まれてしまう。実際経営がうまくいっているカトリック学校は、その流れがあり、それに抗いながら正しき共同体型カトリック校を持続可能にするにはいかにしたら可能かについて模索しているということです。

★カトリック共同体であれ、私立学校共同体であれ、世界の政治共同体であれ、リバタリアンパターナリズムとリベラリズムとコミュタリアニズムという価値観の神々の争いは昔からあります。諦めずに対話していくという「ともに旅をする」教会であり学校という意志の共有がなされた会となりました。

★それにしても、かつて経営がうまくいっていなかったカトリック学校が、対話の方法を現代化して復活している学校も出てきていることも確かです。カトリック学校が共同体型カトリック校の理想を実現するためには、現代化対話が必要だということでしょう。そして、教皇フランシスコの営みこそ、現代化対話の渦を起こすことになると思います。このことについては、分かち合いではあえて触れられていませんでしたが、近況報告を通して、その点について確信を抱いているカトリック学校が3校ほどあると確認できました。

★私は、カトリック学校だけではなく、私立学校全体で、現代化対話が起こりつつある響きを耳にしています。それをドネラ・プロジェクトとして来年4月以降は動いていくことにします。今はその下準備を始めています。12使徒の中で、イエスの側にもっとも近いところにいながら、仲間からはあまり尊敬されていなかったとされている使徒トマス。

★トマスは、当時から別次元の共同体型教会を指摘していました。ちょっと内村鑑三的でもあるかなあと。私学の系譜の中で、カトリック、プロテスタントなどを問わず、内村鑑三や新渡戸稲造、田中耕太郎、南原繁らの思想の現代化実装とSDGsのルーツであるドネラ・メドウズの系譜をインテグレイトするのがドネラ・プロジェクトです。

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2022年11月13日 (日)

神田女学園 あらゆる教育活動において圧倒的多様性と選択肢をデザイン

★先週金曜日、第103回GWEにおいて、神田女学園中学校高等学校(以降「神田女学園」)の校長芦澤康宏先生と対話ができました。芦澤先生とはもう20年くらい前から出会っていますが、その当時からシンプルで現実の中での本物教育を追究していた姿勢がますます広がりと深さを拡張されているなあと感じました。とにかく、ネイティブスピーカの先生方の人数、多言語教育の言語の数、高大連携を提携している大学の数、ダブルディプロマを提携している海外の学校の数、英検2級以上の取得人数など他の追随を許さない圧倒的な多様性と選択肢を教育環境デザインをしています。

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(GLICC Weekly EDU 第103回「神田女学園中学校高等学校ー革新的女子校『品格ある個人の育成』」)

★どのくらい多様なのかは、ぜひご視聴していただきたいと思います。

★同校の2本の柱は、グローバル教育と探究です。両方に共通しているのは、「体験」ベースのPBLです。芦澤先生とは、2泊3日の宿泊型の「発見体験型」学習プログラムをともにデザインするのが出会いの始まりでした。そのときの発想は、今も生きているだけではなく、世界への広がりや生徒の探究活動の豊かさがますます拡大しているのに驚嘆しました。

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★そして、このような学びの環境は、総合型選抜や海外大学にストレートに進める力を養っているということが伝わってきました。

★それにしても、これだけの数の多様性あるカリキュラムのマネジメントをするには、相当のプロデュース力ある教師陣が必要です。教育は、授業や行事、部活などの表舞台を支えるのには、想像を超えるバックヤードの教師一人ひとりのパワーとチームワークが必須です。それを実現しているという話もでてきます。芦澤先生は控えめに語っていますが、それをマネジメントする校長の力量はすさまじいものがあります。

教育と経営の両面の学びができるすてきな対話になりました。芦澤校長先生、お忙しい中、本当にありがとうございました!

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ドネラ・プロジェクト(12)対話はメンタルモデル同士のやりとりで、言葉はその媒介項の1つ➌

★これまで。対話について語る時、高校時代プロテスタントの信者の友人、大学時代、上智大のカトリック信者の友人たちと語り合ったマルティン・ブーバーの「我と汝」が心の片隅から語りかけてくるのを感じていながら、ヘーゲルやボームの対話について及びドネラ・メドウズやピーターセンゲなどの対話についてぐらいしか言及してきませんでした。しかし、コンパッションつきの対話を語るとなると、「我と汝」の声が心の前面に現れてきたたので、読み返してみようと。私の書庫は、段ボールの山になっているので、岩波文庫を探すのには時間がかかります。そこで、kindle版がないかどうかサーチしてみました。

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★すると、植田重雄訳の岩波文庫は、kindle版はなく、野口啓佑訳の「我と汝」と出会いました。2021年に発刊とあるので、エッ!?世界で読み継がれている書とはいえ、昨年また訳されたのかと浅学ぶりを発揮してしまいました。岩波文庫よりも9年前に、創文社で「孤独と愛ー我と汝の問題」というタイトルで発刊されていたものを、昨年講談社の学術文庫である意味復刻されたようです。

★末巻の解説は、聖学院大学で博士号をとって現在北海学園大学で准教授として研究されている佐藤貴史准教授が書かれていて、聖学院といい、北海道といい、何か縁があるなあと思ったので、ポチっと購入しました。

★再び、読み始めると、高校時代や大学時代の理解は、文字面をなぞっただけで、ブーバーの置かれていた歴史的背景や宗教観など全く意識していなかったことに気づきました。そして、そのブーバーの置かれていた第一次世界大戦という世界大戦の長く続く時代と今の時代の共通性に気づき、なるほど昨年再び講談社が刊行した理由もわかりました。

★しかも、来年「我と汝」発刊100周年を前に、セミナーが行われているという情報についてもサーチしていたら出てきました。

★佐藤貴史准教授の解説の中の次のことばは、特に気にいりました。

「われわれが絶望して、なおかつ、ひとりの人のもとにおもむく場合、われわれは何を期待しているのだろうか」と、彼は自問する。「例外、離脱、脱出、脱我」に身をゆだねる宗教的歓喜だろうか。そうではない。重要なことは、生の連関から離れて、「実体なき人」に変貌することではなく、他者とその場にいることである。絶望のなかにいる 人間が他者を求めて訪れたとき、その人は「現に居合わせること」、つまり「それにもかかわらず、なお意味があるということが、それを通してわれわれに語りかけられる、 その現に居合わせること」を期待しているのである。ブーバーは、この青年との出会いを「ある裁きの出来事」と呼んでいる。裁きは回心をブーバーに引き起こし、これを機 に彼にとって宗教とは「単純にすべて」を、すなわち「対話の可能性のなかで素朴に生きられることすべて」を意味するようになっ た。

マルティンブーバー. 我と汝 (講談社学術文庫) (pp.208-209).  Kindle 版.  

★ブーバー自身、コペ転をする契機をある青年との出会いから得たようだということと、それによって政治的な情熱的な運動から離れ、国や組織ではなく、1人ひとりの人間と我と汝という関係を見出すある意味ユートピアの境地に達していることに感じ入りました。

★ブーバーは、「われーなんじ」と「われーそれ」という根源語の関係を巡る話をわかりやすく展開していくのですが、今読めば、ハイデガーの「存在と現存在」の関係や当時の実存主義や現象学などに影響を与えていたでしょうし、影響を受けていたであろうことも了解できます。

★「コンパッションつき対話」と「コンパッションなし対話」という着想は、「われーなんじ」と「われーそれ」という根源語どうしの関係に無意識のうちに重ねていたのかもしれないということもリフレクションできました。

★ただ、私は「汝」には、ブーバーのように神を重ねることはしていませんでしたし、それは今もそうです。なぜなら、勤務校でもそうですが、生徒たちも一般の市民の方も、宗教を信仰という視角から語ると、ほとんどが未信者ですから、理解が困難になります。

★神に出会うかどうかは、本人たち個人の問題で、人類共通の普遍的な大切なものを引き受ける自分と汝の関係性が大事であり、それがコンパッションだと思っています。

★勤務校の生徒がボランティアに行ったとき、そのような決定的な意味を理解して帰って来る時がよくあります。それは聖学院の生徒がタイ研修で感じて帰ってくることと似ていると思います。無力な自分という存在に思い知らされ、新たな自分として再挑戦する構えを整えるのです。

★このような決定的な体験を積み重ね、果敢にそれぞれ挑戦する生徒にとって、総合型選抜はストレートに進路実現する道でもあります。その決定的な体験は、必ずしも上智大の神学部に道を開くわけではありません。ここのところ3人ぐらい神学部にも進んでいますが、全体としては少ないのは言うまでもありません。ロボット工学になぜ進むのか、経営学科になぜ進むのか、デザイン思考への道になぜ進むのか、医療従事者の道へなぜ進むのか・・・。ここに決定的な体験が関係することは歓迎です。

★もちろん、その「われーなんじ」の関係は、ともすれば「われーそれ」にシフトすることも大ありですが、50年を経て再び「われーなんじ」の関係性の大切さに還ってくるということもあるわけです。私も高校生と日々コミュニケ―ションをとるようになって、還ってきたような気がします。

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2022年11月12日 (土)

ドネラ・プロジェクト(11)対話はメンタルモデル同士のやりとりで、言葉はその媒介項の1つ❷

★対話は、コンパッションなしでは、不安定で、つらいわけです。ところが、コンパッションつき対話だと心理的安全な足場ができますから、心地よいし、互いのメンタルモデルの差異を開示できますから、調整適合しながら、心を通わせられるし、推論の梯子における前提を相互リフレクション出来ます。

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★とはいえ、このコンパッションをどのようにま生み出すのでしょうか?

★それがなかなか難しいのです。生まれながらにして持っているわけではないのは、言うまでもありません。もしそうだったら、こんなに人間関係で私たちは苦しまないで済むでしょう。

★つまり、経験を積みながらコンパッションを培っていくのです。

★学びとか教育が必要なのは言うまでもありません。

★それゆえ、人間同士の対話は、1人ひとりのコンパッションつき対話の成長によって影響されます。ネガティブケイパビリティが必要なのは、対話は必ずしも心地よく創造の泉ではないからですね。

★しかも、この不安定な対話をなんとかしようとなったのは、遠い昔の話ではなく、1989年ベルリン壁が崩壊してからでしょう。それまでは、気づいていても、なかなか解消する社会的、文化的広がりがなかったのです。パターナリズムで強制的に安定させられてきたわけですね。

★この権威主義やパターナリズムが1989年以降、徐々にゆらいでいっているわけです。

★それゆえ、急にゆらいでも、コンパッションがそもそも育っていないので、混迷の時代が広がっているということなのかもしれません。

★ロジカルシンキングやクリティカルシンキング、クリエイティブシンキングは当然必要ですが、コンパッションがないと、たとえばマッドサイエンティストのような狂気がはびこるわけです。

★ステークホルダー資本主義とか倫理的資本主義というシステム再構築が提唱されているのは、そういう流れもあるでしょうね。

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2022年11月11日 (金)

ドネラ・プロジェクト(10)対話はメンタルモデル同士のやりとりで、言葉はその媒介項の1つ

★対話という行為は、互いの思いを伝える、あるいは伝わるようにやりとりする際にとても大切なのは、言うまでもありません。ところが、対話というと音声、文字などに物象しているものがすべてだと私たちは思いがちです。ですから、最近「~すべき」「~してはいけない」という音声や文字を使ってはいけないみたいな研修が多いですね。概ね間違いはないのですが、その気遣いに支配されて、身動きがとれないケースも実は多いのです。経験上学校では10%の生徒がその可能性が高いです。ある特別な学校では、100%という場合もあります。

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★そのような音声言語や文字言語は、入試では当たり前なので、あたかもそれらが言葉であると思ってしまっていますね、私たちは。ところが、実際には、メンタルモデルを構成する意味は多様だし、身体的体験も不安定だし、いつのまにかルールや習慣、文化に囲まれ、メンタルモデルが必ずしもアイデンティティと一致しないという場合もあります。要するに互いに不確実なことを対話でやりとりしています。

★まして、ことばを音声言語や文字言語に限定してしまうと、身体的体験やそこで経験しているコンパッション(慈愛)が斬り捨てられる可能性が大です。

★コンパッションなし言語で対話すると、それはメンタル的には、不安定だし、不確実だし、変化に耐えられないし、曖昧な感覚でまいってしまうし、複雑で迷路にはまったりします。

★こんな状態で、「~すべきだ」とか「~してはいけない」と言われたら、やりきれないですね。ふだんは不安定な対話なので、そのような決めつけ的な言葉を使わないというのは、たしかにそうだと思います。

★しかし、だからといって、不安定な気持ちや曖昧な気持ちが晴れるわけではないのです。ではどうしたらよいのか?(つづく)

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ドネラ・プロジェクト(09)アースショット構想を実現するための教育 成城学園に学ぶ理由

★今回のパンデミックは、世界システムを変容させる衝撃を与えています。最初の頃は世界のガバナーは一過性のもので元に戻ると思っていた節がありますが、現状は、地政学の危機、地経学の危機が押し寄せ、政治の転換、経済の転換、ICT技術の転換、なんといってもSDGsの最重要性への転換などの局面にぶちあたっています。そしてその転換を好循環のシナリオとして描けるCLIC(Concept Lens,Innovation,Compassion)人材を生み出すのは教育ということになっています。

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(SDGsウェディングケーキモデルをヒントに作成。たぶんヨハン・ロックストーン博士が、ストックホルム・レジリエンス・センターを創設した所長時代に作成したモデルだと思います。)

★では、どんな教育が必要なのでしょう。この教育モデルの1つが成城学園です。成城学園は大正自由教育から生まれた学校の1つです。今騒がれているPBLだとかドルトンプランだとかは、創設当初から実験的に導入しつつ、インテグレートして成城学園独自のそれでいて普遍的な教育を行っています。

★大正自由教育の影響を与えた人物は、デューイであろうと思いますが、デューイ自身、体験主義、道具主義で、社会の変化は学校にも及ぶわけだから、変化にどのように対応していくかプログレッシブな教育を提唱しました。

★ですから、成城学園も、創立当初の政府のヘルバルト主義的な教育とどう折り合いをつけるか模索し、独自の路線を最初から歩み始めます。戦後は、スプートニクショックで冷戦時代ですから、それを乗り越える教育学者の1人ブルーナーが認知心理学という新しい学問を教育に結びつけます。

★これによって、生徒の学びの内面的なというか認知的な構造の研究が進みました。これを教育で実施すると、ヘルバルト主義とデューイ的なプラグマティズムは統合できるかもしれないと言われていましたが、なかなかな生徒の学びの内的連関過程にまでは、現実はうまくいきませんでしたし、今もいかないのですが、成城学園は適用できたと思います。

★そして1970年代はオイルショックで、成長の限界という今のSDGsの核になるものの見方が生まれます。ドネラ・メドウズのシステム思考やメンタルモデル、協働主義、ビジョン共有などの発想で、それがピーター・センゲの学習する組織にウケうがれます。そして、この学習する組織の周辺で、SELとかMITメディアラボとかハーバードのプロジェクトゼロが生まれ相乗効果を生んでいきます。

★つまり、現在の学習指導要領や高大接続改革がその背景で意識している学びの環境デザインです。

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(アースショット構想は、ウィリアム王子がアースショット賞を設立していまから、おそらくそれとも関係あると思いますが、気候変動や環境問題に詳しく、NHKにも出演しているヨハン・ロックストーン博士のアイデアでもあります)

★20世紀初頭は、近代国家構築と民主主義の構築の葛藤と調整を背景とした教育でした。次は冷戦におけるケネディ大統領が決断実行したムーンショット計画に象徴される、市場経済と科学の時代です。そしてそれへの警鐘の時代の教育でした。3つ目は冷戦終焉後のイノベーションが前面に出る教育です。4つ目は、21世紀に入って、どうやら自然と経済は循環しなくてはならないという時代の要請を背景にした教育です。

★そして5つ目、つまり現在は、自然と社会、経済、生活、心などがすべて循環するアースショット時代です。これには、CLIC人材の育成教育が必要になってきます。この5つの時代のダイナミズムを引き受けて適用し、独自の教育を構築し、それぞれの社会の要請に対応してきた学校の1つが成城学園です。アースショット時代を牽引する生徒が誕生しています。

★昨年から同校の広報部長青柳圭子先生と定期的に対話をしていますが、その過程で、どんどんその実践が増えています。

★今週から来週にかけて、そこら辺を研究したいと考えているところです。

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2022年11月10日 (木)

2025年度大学入学共通テストの試作問題公開される。

★昨日、大学入試センターは、「令和7年度試験の問題作成の方向性,試作問題等」の記事を掲載。試作問題と回答、概要などが掲載されています。ゆっくり眺めてみたいのですが、新教科である「公共」が気になったので、まず解いてみました。人権の問題は当然扱うので、自然法に関する定番の問題が出題されていました。自然法と実定法の関係を踏まえている選択肢を重ね合わせるというか置換できるスキルがあれば、自然法とは何かがわかっていなくても解けます。

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★たしかに考える問題ですが、どこか暗記で解くのではなく推理で解くことが考えることだとなっているのは、なにか本意でないような気がします。良い問題ではありますが、考える対象というか問題が違うのではないかなあと。自然法論と法実証主義については簡単な文章で示し、そのうえで両者が葛藤を起こすようなケースについて、その問題解決について考えるような問題にできるといいですね。

★同じことはアリストテレスの正義論の問題にも言えます。アリストテレスを出してきたということは、その背景には、サンデル教授やロールズの正義論があるはずです。新教科書でも扱われていたような。だとしたら、これもいろいろな思考実験問題が活用できるでしょう。

★SDGs関連の問題もでていましたが、これは中学入試でも出題されるもので、もう少し深めて欲しいなあと。。。

★さて、上記のニーチェ問題は、「公共、倫理」の問題からです。倫理の範囲だと思いますが、ニーチェがニヒリズムについて書いた文章を読み、選択肢の中からニヒリズムの生成過程にあたるケースをすべて選びなさいと。センターの概要説明ではこうなっています。

「資料(ニーチェの遺稿)から読み取った内容と,ニヒリズムに関する既有の知識とを結び付け,科学時代にニヒリズムが発生する具体的なプロセスを考察できるかを問う。 」

★意図は汲めますが、結局は読解問題です。そうはいえ、選択肢は一見紛らわしいし、すべて選びなさいは、正答率は低くなるでしょう。しかし、これもまた本意ではない思考力問題です。

★ただ、選択肢がどれも素晴らしいのです。こんなにすばらしい選択肢を並べて、一瞬にして消費されてしまうのはあまりにももったいないと感じます。むしろ、この選択肢をカテゴライズする問いに変え、そこからニヒリズムが生まれる問いのデザインはどれなのかと、この選択肢を逆利用して、ミニワークショップができます。

★それにしても、勝手に解不能な問題を設定して、懸命にがんばって考える過程をぐるぐる回ったけれど、結局は解けず焦燥感や喪失感に苛まれる(設定がそもそも梯子の推理ですね)というニヒリズムは、まるで昨今の教育改革のお話に対するアイロニーなのではと勘繰ったり。。。

★まあ、深読みは誤読に通じるというお話もありますから、今回は、この辺で。

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ドネラ・プロジェクト(08)女子校の期待される役割 無意識のパターナリズムをクリティカルシンキングするコンセプトレンズを身に付ける。

★日テレNEWS 11/8(火) 22:59配信によると、「バレーボール元日本代表の大山加奈さんが、双子用ベビーカーと都営バスに乗ろうとして乗車拒否されたなどと明らかにしたことに対し、8日夜、東京都は、一部の対応が不十分だったと謝罪しました。」同記事にはさらに「東京都交通局は調査結果を明らかにし、1台目の乗務員はバス停の看板に隠れ気づかなかったとしたものの、2台目の乗務員は、ベビーカーを置くために座席をたたむという所定の対応を取らなかったと認めました。」とあります。

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★この大山さんの行動に対し、賛否両論のコメントがSNSにあるようです。平成25年度「家族と地域における子育てに関する意識調査」の次の質問に対する結果は上記の図のようになっています。

Q:街中や電車・バスなどの公共の場で、ベビーカーや子ども連れの親が困っている場面を見かけたら、あなたは手助けをしたり、話しかけたりすると思いますか。

★応援するよという意識が圧倒的に多いのですが、実際には、今回のようなケースは少なくないのです。具体的な状況によって、いろいろ争点は変わると思いますが、男子と女性を比較すると男子の方がやや意識が低いわけです。この差は大したことないとみなすか、パターナリズムが背景には残存しているとみなすかは、不明ですが、感覚としては、いろいろなところにパターナリズムは存在しているように感じます。

★道徳的に善いことをしてあげるねという権威者が押し付けていることに気づかない父権主義的なメンタルモデル。現代社会の男性は無意識のうちにもっているわけです。パターナリズムは、権威者に対し弱い立場に立たざるを得ない人に私事の自己決定権を控えさせるものですから、実はかなりのリスクがあります。

★権威者や専門家の言動には、本人は正義のつもりでパターナリズムを遂行していることはしばしばあります。おそらくこう言っている私もそうでしょう。特に日本の江戸文化への憧憬などの1つ武士道への憧れなどは、意識して歴史を眺めなければ、無意識のパターナリズムに陥ってしまう可能性があります。あくまで歴史の中の武士道としてとらえることが重要で、歴史を超えてそのまま現代にも適用するのはいったん括弧に入れるメタ認知の稼働が望まれます。

★桐朋女子が、桐朋の男子生徒とジェンダー問題について対話をする機会を設けています。湘南白百合が、栄光や鎌倉学園などと協働プロジェクトを行っています。

★男子生徒が、自分の内面に日本社会の文化として無意識の層にあるかもしれないパターナリズムに気づく良い機会になっている可能性があります。

★和洋九段女子や冨士見丘は、筋金入りのSDGsの探究活動を行っています。大学や企業、海外のステークホルダーとの対話も行っています。日本の外部の組織はまだまだパターナリズムがあると言われています。世界はそういうことに対し敏感に権利の問題として議論する機会がたくさんあります。

★女子校の新しい役割が明快にあらわれる時代が今なのかもしれません。

★もちろん、八雲学園のように女子校から共学校にシフトした場合、女子生徒がそういうことに芽生え、男子生徒がそれにきちんと対応するような雰囲気が生まれているケースもあります。女子校ならではのそのような時代を創るコンセプトレンズを伝統として持続可能にして新しい共学校の道を切り拓いていると感じます。

★また成城学園のように、もともと大正自由教育において、パターナリズムと対決する民主主義を支える教育づくりをしてきた伝統を今も継承している学校もあります。そこまで遡ると、当時大正自由教育に影響を与えたPBLが、今もこのような権威主義や父権主義をクリティカルシンキングするプロジェクトであることが浮き彫りになってきます。

★逆に言えば、PBLのような探究活動を拒絶する場合、そこにはパターナリズムが潜んでいる可能性があります。

★100年前のデューイに還ることもことももちろん重要ですが、50年前のドネラのシステム思考をPBLにとりいれて、PBLの現代化を図っているという学校が、上記に挙げた学校であることにも注視したいと思うわけです。

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2022年11月 9日 (水)

ドネラ・プロジェクト(07)Creative Learningを行っている学校増加。

★PBL型授業とかIBL型授業、探究の時間、探究論文編集など問いを発見して、問題解決の見通しを提案するにとどまらず、実際にルール作りや製品まで創ってしまうCreative Learningに取り組んでいる学校が増えています。

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★説明会に参加したりホームページをサーチしたりすると、すぐにわかります。大事なことは、生徒全員に機会が設定されているかということではあります。

★これによって、総合型選抜などにダイレクトに役立つ実益もありますが、何より大学に入ってからあるいは社会に出てから、クリエイティブなワークで活躍できるようになるでしょう。

★生徒全員がCreative Learningの経験を積める学校はどこでしょう。おもいつくまま順不同で幾つか挙げてみましょう。八雲学園、工学院、成城学園、聖学院、文化学園大学杉並、和洋九段女子、富士見丘、湘南白百合、昭和女子大昭和、女子美、三田国際、順天、静岡聖光学院、武蔵、逗子開成、かえつ有明など。挙げていけばきりがないですね。

★今挙げた学校は、問いの発見のポイントが、トレードオフやジレンマ、解不能です。不足や過剰のポイントで見つけた問いも創意工夫で解決できますが、トレードオフはバランス調整の仕組みを創造しなくてはならないし、ジレンマや解不能は、次元を変えて創造的思考を発揮する必要があります。

★シンプルに素晴らしい創作物と次元が違う困難な創造物を比べてもできあがりに差はありませんが、学びのプロセスの深さの違いはありますね。

★先に挙げた学校は、❶から➎のすべての問いの発見ポイントを経験できます。

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2022年11月 8日 (火)

ドネラ・プロジェクト(06)学びの内的連関 システム思考風に 思考力入試や総合型選抜の学びの深さを了解するために

★探究やPBLなどの学びの外的連関については多く語られています。学習ツールや学習空間などデノテーション的なループ図はいっぱいあります。このデノテーションの見える化は大切です。というのも、この外的な環境は、学習者の内的な反応が想定されているからです。しかしながら、どのような内的連関が学習者の中に起こっているかデノテーションとコノテーションの関係性を観察したり仮定したりしておかないと、結局は結果主義に陥ってしまったりします。

【学びの内的連関のループ図】

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★学習者が本当に自由にフェアーに偏らないでフラットに考え、協働し、判断し、アクションを起こすFree Iquiryの状態になっているデノテートな状況の内面でどんな学びのループが生まれているのか?それは、日ごろ言われているように問いのループです。ところが、この問いのループは、Free Inquiryの状態では、内面からふつふつと湧いているのであって、言語化された問いだけが問いのストーリーをつくっているわけではないのです。

★インストラクショニズムの問いのストーリーの言語化は、学習者のためのものではなく、教える側の道具で、学習ツールになってしまっている可能性があります。もちろん、それでよいのですが、学習ツールとしての問いであるという自覚がないと、学習者に問題発見はできません。

★学習者が自らの内面からふつふつと問いが湧いている時、対話ができるし、自分と向き合って自問自答ができます。実はこのような問いがふつふつと湧いている自分と向き合うのがリフレクションで、学習ツールとしての問いを解決しようといしている段階では、まだ深いリフレクションにはなっていません。

★ある意味、この浅いリフレクション段階では、対話や自問自答をスルーしているのと変わらないかもしれません。すると、せっかく体験(リアルと思考実験の両方を含みます)しても学習が深まらず、調べ学習や暗記学習で済ませてしまうということも起こります。それでも、体験をしていれば、自ら学びのデノテーションは回るので、いずれ、深い学びのループにシフトする状態を見守ったり、フィードバックするというデノテートなアフォーダンスを仕掛けられるわけです。

★中学受験の教科入試で200字くらいの論述問題が出ますが、これはこれで、限られた時間内で行われるので、ファクト→オピニオンレベルの、つまり上記図でいえば、「想定」ループ内です。このループを回すことができれば、次の複眼的な問いや深層思考を進める可能性や潜在的能力があると判断されるわけです。

★ところが中学受験の思考力入試や大学入試の総合型選抜では、この複眼的な問いや深層思考の段階まで展開しているかがカギです。そこから根源的な問いを自ら発見して解決に挑むというのは、もはや研究の入口に立つわけです。プロジェクトが措定される入口に立つわけです。

★この入口に立っていると思われる受験生が、総合型選抜で大学側が、共にプロジェクトを展開していこうとなるわけです。つまり、合格するわけです。

★ただ、大学がそこまで要求するかどうかは、大学によって違います。複眼的な問いや深層思考のループ段階でよしとするところもあれば、根源的問題解決ループまで要求するところもあります。

★中学受験の思考力入試はあくまで、潜在的能力としてその可能性まで要求します。だから、教科入試で合格してきた生徒と比べて中高段階で学びの翼を大きく広げることになるケースが多いのは、当然です。

★なぜかというと、上記の図のループの矢印のコノテーションは、GRIT精神が内包されているからです。

★自分が対処療法的な学びしかやっていないと気づいて、根源的問題解決ループまでたどりつこうとするとき、それはGRIT精神が必要です。それから対話のパワーですね。

★ファシリテーターやプロデューサーとしての教師がデノテーションとしての学習環境をデザインするのは、このGRIT精神と対話力を学習者の内側から湧いてくるその持続可能性を見守るからです。このループ全てを試行錯誤して、失敗して原点回帰を繰り返すなどする中高6年間なり高校3年間を経ると、この自己変容の内的連関ループの回転が持続可能になるでしょう。

★そして、このループ図の回転の仕方や道のりの歩み方で、メンタルモデルがわかるし、メンタルモデルのパラダイムチェンジが起こっているかどうかもわかります。内的レバレッジポイントやティッピングポイントも了解できるようになります。

★しかし、それは、学習者一人一人によって違います。どんなコンセプトレンズ(複眼的な問いや深層思考の段階に生まれる場合が多いです)を形成するかは学習者によって違うのです。だからこそFree Inquiry状態になれるわけです。

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2022年11月 6日 (日)

ドネラ・プロジェクト(05)レバレッジポイントとティッピングポイント

★ドネラ・メドウズのシステム思考の考え方の中に、レバレッジポイントとティッピングポイントというのがあります。SDGsや組織変容、自己変容成長論などの話でも活用されていますから説明するまでもないかもしれません。自然の変化、社会の変化、精神の変化。この3つが好循環をうむためのティッピングポイントやそれを生み出す有効なレバレッジポイントを求めて、世の中は議論し続けているわけです。

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★教育改革は、人材育成も目標の1つですが、その人材は、今ギシギシきしみ音を出している宇宙船地球号を修復してアップデートできる才能者をたくさん生み出そうとしています。上記の図のように、どこの力点が有効な作用を生み出すか、レバレッジポイントはどこか探しているわけです。才能者がたくさん生まれるには、才能者が自らコンセプトレンスを有する学びの環境が必要です。

★その環境は、力点が右上に行くほど効果的というのが、上記の図です。コンセプトレンズとは、現状をつくっているパラダイムを洞察し、そこから生まれる問題を解決する根本的なアイデアを生み出すパラダイム転換の視点のことです。

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★才能の発達には、ざっくり三段階あります。そのステップをあるとき次のステップに急激にシフトする転換点がティッピングポイントです。三段階ごとにコンセプトレンズの倍率をアップデートしなくてはなりません。

★それは何か?残念ながら教科書や参考書には書いていないのです。体験の中から自ら発見するしかないのです。ただし、1人でではなく、協働ししてですから、ご安心ください。

★コンセプトレンズがアップデートする瞬間は、ジレンマやトレードオフを実感するときです。それはシンボル操作だけではピンときません。やはり体験が重要になってきます。もちろん、体験をしながらシンボル操作をしなくては、解決策は生まれてきません。よくクリティカルシンキングと言われますが、この思考は、まさにこのジレンマやトレードオフの状況をモニタリングするときに稼働します。

★問題解決はクリエイティブシンキング、そしてその検証はロジカルシンキング。ロジカルシンキングの時には専門的な知識を活用し、足りない知識を発見します。すると再びクリエイティブシンキングが稼働し、新しい知識=概念を生み出します。

★この多様なフェーズで現われる思考の循環が広がっていくには、レバレッジポイントとティッピングポイントが見える化される必要があります。体験を通して「気づく」とは、このポイントの発見のことを示唆しています。この気づきのプロセスは、いろいろな感情や価値観が蠢きます。感情を抑圧したり、価値自由を拒絶することで、このポイントに気づかないということもあるのです。

★それゆえ、ドネラは、メンタルモデルのサーチをシステム思考に含んでいるわけですね。

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2022年11月 5日 (土)

学びの内的連関を見抜く太田晃介先生のフレームワーク

★昨日、大阪府立水都国際中学校&水都国際高等学校の教頭太田晃介先生が勤務校聖パウロ学園に来校してくださいました。出会ってから10年近くになります。PBLや思考コードなどの研修を工学院の教務主任田中歩先生ともいっしょに創り、運営していった盟友です。5年前に大阪に旅たち、私も一度お邪魔しました。そこから、今春、卒業1期生(高校入学生)を旅立たせ、実績も好調。開設準備から始まって、IBのデザインやIBのエッセンスを学内全体に広めつつ、経営の業務もこなすという強靭なマインドと企画実行力を身に付ける過程を経たのでしょう。今回お会いして、ますます未来の教師モデルになったなと感じました。

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★「未来の教師モデル」の高クオリティとは何か?それが今回実感できました。離れていても、ときどきオンラインで対話はしてきましたが、実際に勤務校の授業を視察していただき、フィードバックをもらったときに、エッジの利いたフィードバックに思わず「オオー!」っと心の中で叫んだわけです。

★どういうことかというと、太田先生自身が自らをメタ認知できていて、TOKをはじめとするIBのフレームワークやタキソノミーを自在につかえるので、よく見えるのだと語ってくれたのです。

★このフレームワーク(私はコンセプトレンズとよんでいるのですが)は、生徒の学びの内的連関のシステムが見えるのです。今回通常の授業を見て頂きました。単元によって講義形式の授業になったり、PBL型授業になっているのですが、今回は保健体育の授業と英語の授業と国語の授業がPBL型授業でした。

★これらを見学していただき、廊下を歩きながらフィードバックをもらいました。それは、内的連関を評価していただいた上で、その連関のシステム環を広げる、ティッピングポイントは何かについてコメントを頂いたのです。

★太田先生自身、ワークショップの達人なので、レゴやICT、多様な学習道具、各種実験道具を組み合わせてPBL型授業をデザインしますが、実はこのデノテーションデザインは、生徒の学びの内的連関を生成するコノテーションデザインとの相関をしっかり計算しているわけです。

★デノテーションデザインだけでは、学びの内的連関のシステム環を広げる生徒もいるし、変容しない生徒もでてきます。それを出来る限りすべての生徒がシステム環を広げるようになるには、現状の生徒の内的連関のシステム環を見抜くことが必要です。

★これを見抜くのに必要なのが、IBのような強烈な緻密なフレームワークです。世界標準でありながら、太田先生のオリジナルのフレームワークが、確立していたのでした。もちろん、太田先生自身TOKのメソッドを自分にも適用しますから、今のフレームワークでいいのかとセルフリフレクションはいつもしているので、今後もますます「未来の教師モデル」のスペックをアップデートしていくでしょう。

★老いては子に従えということわざ通り、太田先生の語りに耳を傾けられる雰囲気は心地よかったですし、自己変容し続ける教師がここにもいると確信を抱けたのは、最高にハッピーでした。

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西武学園文理 Inquiry based Learningの構築が学内に浸透

昨夜、第102回GWEで、西武学園文理中学・高等学校(以降「文理」)の加藤潤先生と対話しました。2020年、2021年とパラダイム転換を進めているという話に驚きました。文理と言えば、埼玉の私学の中で有名な3つの学校のうちの1つです。何も変容する必要はないという先入観を持っていましたが、それは砕かれました。生徒の進路の複線クラスを設定し個別最適化を図る一方で、共通の学びとして「文理探究 Bunri Inquiry」を学内浸透させているのです。この緻密な学びのデザインについて、加藤潤先生は、ご自身も開発にかかわっていたので、納得のいく話をされました。

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GLICC Weekly EDU 第102回「西武学園文理中学・高等学校ー多様な仲間と協働できるリーダーを育成する」

★つまり、PBLとかアクティブラーニングとかICEモデルとか、探究の学びのスタイルはいろいろあるのですが、文理はIBL(Inquiry based Learning)を導入しているということでしょう。このIBLは、まさにIB(国際バカロレア)でも活用されているスタイルです。PBLともいわれていますが、明快に探究に焦点をあてたとき、IBLというのが教師と生徒には共有しやすいということもあります。なぜなら、学びの目標が明快に提示されるからです。PBLは、どちらかというと、大学での「研究」という言い合いがあって、そもそも何が研究の対象なのか生徒自らが迷路にはまる可能性もあります。大学では、そこを乗り越えるレジリエンスが大事ですが、限られた学び時間の中で行う時は、たしかにIBLは有益だと感じました。

★IBLについては、いろいろな考え方があるのですが、インストラクション型のIBLの学びのデザインをしているTrevor MacKenzieの4ステップアプローチの話が簡明、明快にまとめられています。次の図のようになります。

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★問いー答、問いー資料ー答、教師生徒の協働による問いの生成ー調べるー答は多様、生徒による問のデザインー探究活動ー問いは多様ー多様な問題解決という感じにEBLのデザイン進化が予定されているわけです。

★文理の探究は、中1から高1、高2と進むにつれ、最終段階のFree Inquiryに進んでいくということが、加藤潤先生のお話からわかります。高入生は、2021年から一貫生と混合しているので、一貫生の刺激を受けて、すぐに追いつく仕掛けがあるのだと思います。

★さて、大学実績に関してですが、文理も総合型選抜で進路を開いていく生徒が増えていて、文理探究がそのエンジンになりうる可能性を感じているということです。来年文理探究はある意味集大成の時期を迎えるので、その成果が楽しみです。

★なぜ、その手ごたえを感じるかというと、それは加藤先生が多用するキーワードに反映されています。「クリティカルシンキング」「多様性」「仮説をまず立てる」がそれですが、これはEBLのステップが最終段階に達しているからこそ、確信をもって自然に語られるキーワードです。

★中学入試も、実にシンプルです。教科入試、適性検査型入試、英語だけ入試の3つのタイプが設定されています。

明快、簡明だからこそ、生徒は近未来の見通しを立てながら、マイルストーンを1つひとつクリアすると、確実にその見通しをたてたゴールをクリアできるという自信が生まれてくるわけです。そのような生徒の内面の成長モデルが確立しているのが文理の教育だなと感じ入りました。

※参考)首都圏模試センターのサイト「西武学園文理中学・高等学校2022『世界を見つめ、人を想い、未来を創る。』」及び同センター発刊の高校受験情報誌にも記事が掲載されています。

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2022年11月 4日 (金)

大学入試システムの逆手活用で才能を開く

★この時期、総合型選抜に続き、公募推薦及び指定校推薦などの学校推薦型入試が始まります。一般選抜は、1月半ばころから私立大学、2月から国公立大学が始まります。この時期から小学校から大学まで、日本は受験列島になるわけです。

★さて、高大接続改革で、一般選抜の定員の割合は、まだ多いですが、総合型選抜や学校推薦型が増えています。塾や予備校によっては、一般選抜が本道だとか、これからは総合型選抜だとか議論が多いですが、学校は、生徒1人ひとりにあった大学入試制度を生徒と一緒に考え選択のサポートをします。ですから、どの制度がどうのこうのとかということはないのです。

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★この大学入試制度の選択と対策は、学校によって違います。生徒人数が多いところは、一般選抜を基本にして、それに合わない生徒は総合型選抜や指定校推薦などでサポートします。この場合、一般選抜対策は、講義形式が多くなります。総合型選抜は、生徒が自分の興味と関心を深める独自の活動をしている場合が多いですね。学校の学びとは違う機会を自ら見つけてきます。

★勤務校のようにスモールスクールの場合は、総合型選抜が40%、指定校推薦が30%、一般選抜が30%です。それぞれの入試制度に合わせた進路準備は、高校3年からで、高1から高2までは、「体験×志望理由書×面接・口頭試問×小論文×プレゼン×20%思考型授業評定×英検2級」をトータルに行っていきます。「体験」は「リアルな体験」と「思考実験型体験」と「ボランティア体験」と「黄金律体験」がメインのプロジェクトになります。

★それゆえ、「愛ある思考型教育」を行っているといっても言い過ぎではないでしょう。この愛ある思考型教育は、総合型選抜にも、指定校推薦にも、一般選抜にも通じます。もちろん、英検1級の取り出し授業をすれば、海外大学準備にも適応できます。

★その結果、勤務校のように入学時偏差値50未満の生徒が多くても、卒業時には「宇宙船地球号のレジリエンスを可能にする地球市民として活躍できる進路を開きます。偏差値でいえば、20は飛躍するわけです。

★もしこれが、一般選抜しかない大学入試システムであったなら、わざわざ「愛ある思考型教育」を実施しようとしても中途半端になっていることでしょう。

★今回の高大接続改革の賛否はいろいろあるかもしれませんが、逆手活用する、あるいはレバレッジポイントとして活用して、受験学力以上の才能を開花することが可能だと、2年目にはいってようやく確信できました。

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2022年11月 3日 (木)

今年の総合型選抜を通して見えたこと

★11月1日・2日、総合型選抜の第一弾の結果がドーンとでる日程でした。勤務校は、一学年の定員が80名です。ですからその40%が総合型選抜の結果がでる時でもありました。ですから、7月から10月にかけて、志望理由書ー面接ー口頭試問ー小論文をセットで準備する日々が続きます。小さなキャンパスは、朝から夜(放課後20:20まで100分学習などがあるので)まで、授業以外の時間は、哲学的な対話で満たされます。

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★①「志望理由書」の書き方とか、②「面接や口頭試問」の臨み方、③「小論文」の書き方とか別々にも行いますが、やはり、一貫性や循環を生み出すためには、セットで行うことが肝要です。ですから、勤務校では、セットで生徒と向かい合うのは担任です。そして、①、②、③の強み弱みを分析して、弱みのセクションは、生徒の大学での学びや研究の分野に合わせて他の教員がサポートする体制になっています。

★それゆえ、毎年、7月から10月は、実は11月は指定校推薦が同じように行われるし、5月6月は準備段階に入っているので、半年以上は、対話に満ちているのが勤務校なのです。もちろん、定期テストの時は質問対話が行われているので、一年中対話で満ちている学校です。

★ですが、総合型選抜や指定校推薦に立ち臨むときの対話は、定期テストの時の対話とは差異があるのは、ご想像の通りです。

★その差異が生まれるのは、総合型選抜や指定校推薦の対策対話は「①×②×③×体験」というのが、本当のセットだからです。この体験の意義や価値について学内では、常に議論になりますが、概ね学びのスキルや未来や自らの世界をつくるときのコアになる信念というマインド(ガイストという意味でのマインドですが)を生成するのに必要なのが体験だというのは共通認識ができています。

★この共通認識があるので、部活や行事、授業、学校説明会、課外活動などすべてにわたって生徒が主体的に考え、判断し、アクションを起こすことになる決定的な体験環境をセットするべく教師はプロデュースやコーディネートを行っているわけです。

★授業や探究ゼミは、全員が参加する体験だと読み替えてコア体験としていますし、それぞれの興味関心を進化させる有志が集まるプロジェクト体験は、バッファー体験として行っています。そして、「志望理由書×面接・口頭試問×小論文×体験」をワンセットで循環させるので、コア体験とバッファー体験は有機的に結合します。この結合は、教師や生徒によっても強度やアプローチに当然違いが生まれるので、多様なミニイノベーションが生まれるのです。

★したがって、「体験」は、今目の前のファクト的な体験を楽しむ「現在体験=da体験」ではなく、パラダイム転換に将来繋がる可能性のあるコペルニクス的転回「的」な決定的な体験をするという意味での「源体験=ソース体験」をコーディネートすることが大切です。

★もっとも、実はこのコーディネートは、どこか場所を用意するとか、外部の専門家を呼ぶとかではないのです。もちろん、時間や場所、人、もの、情報、カネは結合しますが、その結合のプロセスが内的PBLになっていることが肝要です。この内的PBLは、生徒自らが問いを設定し、その問いの探究を広め深めていくマインドとスキルと寛容性のシステム思考でできています。

★教育としては、ここまで到達しているので、そのクオリティはなかなかだと勤務校の先生方はすごいなあと実感しています。

★しかし、さらに合格を勝ち得るためには、「志望理由書×面接・口頭試問×小論文×源体験×B1英語」が必要になります。B1英語というのは、英検2級をとれる英語力環境というわけです。この環境があれば、カトリック特別入試である総合型選抜バージョンの試験に十分対応できます。つまり、上智などカトリック系の大学の実績は80名定員で10%以上合格してしまうのです。

★今年勤務校でも、6人上智を受験し、6人合格しています。来年以降はB1英語をB2英語にアップグレードします。大学全入時代の波もあるので、実績としては、さらに伸びると思います。しかし、一般に、「志望理由書×面接・口頭試問×小論文×体験×B1英語」をワンセットで循環できる学びは、受験だけ考えればやりすぎだと思います。たとえば、塾だと体験や英語まで具体的に結びつけるには特別プログラムででもなければコスパからいってやらないでしょう。むしろ、生徒は、この循環の中の弱みを強みに変えるために、弱みの部分を選択してそこを塾で鍛えてもらうパターンが多いでしょう。実際、そうやって、再び勤務校の教師と対話するという生徒も中にはいます。塾の機能としては、そういう弱みを強みに変える場として重要ですね。ただ、学校教育では、ワンセット循環環境をつくり、受験勉強以上の学びになっているわけです。

★でも、それが教育の本意だし、塾と違うということは学校当局が意識したほうが経済合理性を生み出せると思います。それはともかく、生徒が英検2級から英検準1級以上の英語の能力にシフトすると、これだけで、世界大学ランキング250位以上の海外大学の道も拓けてしまうのです。「総合型選抜」や「指定校推薦」の入試制度を逆手にとって、生徒の潜在的能力である1人ひとりの才能が開花するプロデュースあるいはコーディネートをすることが教師次第でできてしまうのです。

★ちなみに勤務校の外部団体が出している高校入試の偏差値は50です。ということは、中学段階の5教科の内申平均が3(5段階)の生徒が大多数です。でも、それは生徒の潜在的能力の評価スコアではなく、中学時点で行っていた受験勉強の結果にすぎません。勤務校の3年間で、その潜在的才能は、<源>体験をベースにしたコペ転的対話で、開花します。中学時点での内申5教科平均が3を切っている生徒も、上智大学に実は多数合格しているのです。

★しかし、カトリック的な意味合いで、愛の導者である教師の存在はおそらく最も重要だと思います。対話というマインドとスキルとビジョンを共有する教師陣。言語能力を日本語だけではなく、英語にも挑戦する教師。数学科と国語科の教師などは、生徒がやるならと自分たちもいっしょに2級に挑戦しゲットしています。そして、2級では、必ずしも英語で思考する力が未熟でも取得できる程度の経験値であることを身をもって理解しています。だから、もっともっととなります。このような教師が生徒とかかわれば、生徒もあるときはフラットな関係ですが、あるときはまた謙虚に耳を傾けるリスペクトする存在にもなるわけです。高校生は、もう大人です。そのくらいの使い分けができる社会性はもっているものです。

★教師がマインド、スキル、ビジョンを豊かにしていける環境は、研修よりもある仕掛けが重要です。それは工学院や聖学院、かえつ有明などはオリジナルの仕掛けを持っています。聖パウロ学園もオリジナルの仕掛けを持っています。それはオープンになっていますが、まさか、教師のマインド、スキル、ビジョン、もちろん、アクションを豊かにする仕掛けだとはなかなか気づかないでしょう。それに気づけば、すばらしい学校教育が開かれます。そして、その気づきは自ら実感しなければ、人から聞いていたとしても、なんだそんなことととなります。そう言った途端、そこで、コペ転的視点が喪失します。

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2022年11月 2日 (水)

聖パウロ学園 親子イベント<Smile Charge Park!!>で 梅干し出品。

★明日11月3日、聖パウロ学園の「梅干し探究ゼミ」のメンバーが、親子イベント<Smile Charge Park!!で、自分たちが作った梅干しを出品。場所は、富士森公園のフットボールセンターでです。

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★梅干し探究ゼミは、麻布大学の生命・環境科学部との連携の中で生まれました。麻布大学の先生方とは、食と健康と社会と環境の関係性をテーマにしています。以前ご紹介した中華まんゼミもそのテーマの探究の一環として活動しています。一方梅干し探究ゼミは、かつて里山であったパウロの森の裾野の農家の人とも連携し、昔懐かしい日本の文化の味を梅干し作りを通して再発見する活動をしています。

★梅干しの成分分析は麻布大学の研究室で行い、梅干しづくりの方法は、里山の知恵にサポートしていただいています。

★聖パウロ学園は、給食を調理する設備がありますから、調理にあたって、そして将来生産販売をしていくための準備にあたって、八王子市の条例や食品衛生法などにのっとって探究ゼミの座長である教頭小島綾子先生が食品衛生責任者の資格を取ったり営業許可書を取得しています。

★そういうわけで、この梅干し探究ゼミは、ついに「漬物製造業」の部門も稼働させることになったのです。

★ゼミのメンバーは、プロダクトするだけではなく、マーケティングや広報企画、PR活動、パッケージ制作などちょっとした起業家精神を醸し出しています。

★八王子市の自然や文化を再発見し、未来の八王子をどう創っていくのか、自然と経済と文化と市民精神の循環=SDGs的循環を見出していく発展の可能性があると教師陣は期待をかけています。

★さて、明日は自分たちの考案した商品が、マーケットでどう評価されるのか、未知の体験に挑みます。多くの気づきや問いを抱いて帰ってくることでしょう。学際的な起業家精神という世界作り。企業活動が経済と自然の循環をつくるだけではなく、個々人が人間としての根本的な幸せを再発見していくことになるという意味での社会貢献。それは伝統的な梅の酸っぱい味にありました。これもまた探究ではないでしょうか。

★すでに、ハンドベルクワイア―は、響きによって八王子市の未来を創る提案をして賞をもらっています。実際、11月から来年の3月にかけて、公開演奏が15回予定されています。ちょっとしたスターです(笑み)。

★ふだん八王子市にお世話になっているパウロ生です。八王子市の未来の都市づくりのために、アイデアとアクションをどんどん提案していくことになるのを期待しています。

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工学院大学附属中高が世界の学校である理由

★先週10月28日(金)、101回目のGWEに工学院大学附属中学校高等学校(以降「工学院」)の教務主任田中歩先生が出演。工学院の教育がなるほどもはや世界の学校であるということが伝わってくるお話を聴くことができました。初等中等教育学校レベルで、学校全体が丸ごと世界で通じる学校というのは、日本には数少ない貴重な存在です。その一つが工学院であるのです。2時間弱に及ぶトークをここでまとめるのは私の力では難しいです。ぜひご視聴ください。配信して4日も経たないにもかかわらず、すでに多くの方がご視聴されています。それだけ工学院は注目されているということです。

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GLICC Weekly EDU 第101回「工学院大学附属中学校・高等学校ー世界の学校になる。Becoming a School of the World」

★今回、歩先生のトークをお聴きして、改めて気づいたことは、工学院の教育と従来型教育の決定的な違いでした。従来の暗記型教育では、VUCAの壁にはねのけられてしまう。つまり、世界に通じない教育を行ってしまう。それでは、Z世代の未来は開かれない。さてどうするのか?

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★そのスーパーモデルが、実は工学院の教育であるということが納得のいく歩先生のトークでした。工学院の教育の凄いところは、VUCAの壁を突き抜けるのは、一部の生徒ではなく、すべての在校生が突き抜ける才能を開き、未来を拓く力や技術を実装してしまうという点です。

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★では、その具体的な仕掛けやマインドは何か?そのことについて歩先生は詳細に語っています。ぜひご視聴いただきたいと思います。また、明日の首都圏模試主催の合判模試で配布される情報誌「syuTOMO11月号」でも、この仕掛けの一端を6ページでご紹介させていただいています。歩先生の今回の話は、その6ページで紹介した内容をはるかに超えてしまう内容があります。

★ですから、今回のGWEの内容のナビゲートになるかもしれません。合わせてご購読いただければと思います。

 

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