総合型選抜は増えているのに、増えていないというイメージがあるわけ
★文部科学省の「令和5年度国公立大学入学者選抜の概要」によると、国公立における総合型選抜・学校推薦型選抜は、徐々に増えています。しかし、一方では、これからは総合型選抜より一般選抜だというイメージもあります。なぜでしょう。
★1つ目は、経済的な要因です。だんだん厳しい環境になると、目の前の問題をできるだけ速くクリアすることが重要だと思ってしまいます。急がば回れということばがあるのは、もともと人間とは目の前のことが大事だと思う傾向にあるのでしょう。ですから、じっくり深く仕上げるより、できるだけ合理的にスピーディーにということになります。すると、知識を暗記して対応できるのがよいわけです。
★2つ目は、総合型選抜では、本当に受験生の才能を見出せるのかという懐疑心が作動するからです。アドミッションポリシーに合わせることは当然ですが、才能をマッチングさせることではないというケースが多いということですね。そもそも、学問的な内容は、大学に入ってからでよいのではという前提のズレもあります。総合型選抜に真面目に挑戦する生徒には、かなり学問の領域にはまっている生徒もいます。それはすばらしいことです。しかし、だからといって、総合型選抜は学問の入口だとするのは、現代の大学の役割とはズレがあります。というより、学問に対する考え方が変わってきたことを論じていないがゆえに、総合型選抜に対するイメージが重ならない人が多いということも総合型選抜を敬遠する傾向にあるのでしょう。
★3つ目は、上記の図にあるように、東大は圧倒的に一般選抜で合格者を出します。世の中というより、ジャーナリストや入試情報センターのスタッフは、ほとんどが東大を基準に物事を考える習慣がついています。そもそもそこに係る人々が東大出身だったり、東大を落ちて難関私大に入学した経験者で占められているため、東大を基準にすることに疑いを持たないわけです。
★そんなわけで、勝者の論理として一般選抜、敗者の論理として総合型選抜というイメージがあるのだと思います。
★おそらく、東大の成り立ちの中で、明治政府には、武士をどう回収するかという問題解決の1つとして東大を活用したこともあったのでしょう。そのため、近代に対する武士のトラウマのような発想が根付いたのかもしれません。カタチは変わっても武士の道を基準として後世に残そうという。もちろん、私の妄想です。日本史の専門家にいつか聞いてみたいと思います。
★しかし、今の世の中において、それを基準にするかどうか考えたとたん、いやいや違うとなります。意識の中では、わかっているのですが、無意識の中に、西郷隆盛のメンタルモデルは生きているのかもしれません。勝者なのに、あえてそれを持続させなかった。
★だからといって、勝者であり続けるために、なりふり構わないという姿勢にも、福沢諭吉は組することはできなかった。
★勝者でも敗者でもない道をひたすら歩くやせ我慢の説ですね。
★勝者も敗者も、結局は同じ基準で勝ち負けが決まっているのですから、その基準をとらないよというのは、彼らから見れば福沢諭吉の正義は痩せ我慢に見えるのでしょう。慶應義塾大学が最初に総合型選抜の道を拓いたのはそういうわけがあるのかもしれません。
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