円安、32年ぶり150円台の衝撃と総合型選抜
★今朝の日本経済新聞の記事「市場が日本経済の「弱さ」突く 円安、32年ぶり150円台(2022年10月21日 2:00)」は、衝撃的でした。記事の出だしはこうです。
20日の外国為替市場で円相場は32年ぶりに節目の1ドル=150円を超えて下落した。政府・日銀が大規模な円買い介入に踏み切ってから約1カ月、円買い介入後の高値(140円台前半)からは10円ほど円安が進み、効果の限界が見え隠れする。円安が止まらないのは低金利依存から抜け出せない日本経済の弱さを突かれているためで、底の見えない展開となっている。
★要するに32年前バブル崩壊からはじまった経済の空白の30年がさらに延長されているということでしょう。このままいけば、2030年問題は乗り越えられないかもしれません。乗り越えられなければ、ソサイエティ5.0だとか第4次産業の人材クリエイティブクラスの育成はままならないということです。それに向かって、産業も教育も向かっているはずですが、とん挫するということでしょう。
★SDGsの17のゴールデンルールは、それぞれ関係していてある意味循環しています。ですから仮に16うまくいったとしても、1つがダメなら、結局はすべてがダメになるというめちゃくちゃリスキーな話なのです。
★50年前の1972年にドネラ・メドウズは「成長の限界」の中心的著者として、そのことに警鐘を鳴らしていました。もちろん。評論するだけではなく、システム思考を説き、制度改善、メンタルモノデルの改善、環境改善の技術革新など、社会と個人と自然の好循環を生む方法を論じるムーブメントを作ってきました。科学者であるだけではなくジャーナリスト及び教育者として活躍したのはそういうわけでしょう。彼女の思想や技術や人類愛は、国連を動かし、SDGsに到る道を開いたのです。
★32年前の1990年、SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)は日本初のAO入試を開発し、今の総合型選抜の元を作りました。その時の想いは、ドネラとシンクロしています。正解が1つではない予測不能なVUCAの時代を乗り切り、新しい自分、新しい未来社会を描ける未来からの留学生を集め、新しい人材育成、技術革新、未来社会を創ろうとしていたわけです。そういえば、SFCは入試でシステム思考を活用する問題を出題していますね。
★今回の記事の事実性というか、この150円台の円安が映し出す私たちの世界の軋みは、32年前のSFCの想いを蘇らせるものです。そういう意味でも衝撃でした。総合型選抜が増えている現状をそのSFCの流れを汲むものと捉えたいものです。しかし、相変わらず、学生の青田買いの戦術だと揶揄する人も多いですね。成毛さんや冨山さんは、そんな昭和的な発想を早く止めよと言っています。上記の写真の本のあとがきで冨山さんは、こう語っています。少し長いですが引用します。
本書には、政府、会社、学校を問わず、日本で既存のエスタブリッシュなものには頼るな!というメッセージが度々出てくる。これはいわゆる「 自己責任 論」で言っているのではない。あくまでもリアリズムとして、頼りにならないものに頼るのは危険だということ だ。プラグマティックな意味で頼れるものにはどんどん頼れ、かじれる親の脛もかじっていい。しかし頼れないものに頼るとかなりの確率で不幸になってしまう。 誰しも 自分の力だけでは生きていけない。ならばどうするのか。そこで途方 に 暮れずに考えて、好奇心のアンテナを立てていろいろと調べ てみることだ。するともっと頼りになるものがたくさんあること、自分が心から愉快に感じることがあり、世の中にはそれで飯を食う道がいろいろあることが見えてくる。逆 に昭和的な学歴主義(日本の場合、これは合格歴主義に過ぎないのだが)、就職人気神話、終身サラリーマン上がり双六に縛ら れ、そこで自己責任論 で自分を追い詰めると、ほとんどの場合、不愉快な人生になる時代である。本書には読者の皆さんとそのご 家族が昭和的不愉快の罠から逃れ、それぞれに愉快な人生の道筋を見出すヒントがいろいろと登場する。成功や幸福の標準化の時代だった昭和と 決別するための鍵は、自分で基準を決めること、すなわち自己満足だ。今後も昭和の標準幸福モデルの没落 は止まらない。代わりの標準モデルも出てこ ないだろう。ならば、自己満足に基準を置いたほうが、よほど気分がいい。それは自己肯定感にも直結する。日本人の自己肯定感は、世界各国と比較しても顕著に低いそうだ。これは不幸だ。本書を通じて一人でも多くの人々が愉快に人生を過ごせる日本になることを願っている。
成毛 眞; 冨山 和彦. 2025年日本経済再生戦略 国にも組織にも頼らない力が日本を救う (SB新書) (pp.194-195). SBクリエイティブ株式会社. Kindle 版.
★もちろん、ここでいう自己満足は、同書の中では、空気を読まずに、互いに自立した個人どうしのコラボレーションは大前提です。その証拠に、成毛さんと冨山さんは共著を書いているわけです。
★同書は、新刊本ですが、成毛さんの論調は以前から変わっていません。成毛さんはアスキー時代から活躍されていて、イノベーティブな人だなあと21世紀前夜から注目していました。冨山さんの書物との出会いは、3.11以降ですが、お二人のプラグマティックでイノベーティブ、クリエイティブな発想には私も影響を受けました。21世紀型教育機構を2011年に発足したときも、この想いは抱き続けていました。
★最近では、勤務校では、men for others からnew self for othersに成長するというストーリーにしようかという対話をし始めています。生徒1人ひとりの進路は、学歴を基準にするものではなく、new self for othersへの信念と同じような信念をもった信頼コミュニティとして教育環境を創ることではないかというわけです。
★32年前の衝撃は、もう一つ。1990年に出版されたアルビン・トフラーの「パワーシフト」を仲間と夜を徹して読みふけり、21世紀は教育だなと確信をもたっ時のことが蘇ってきたことです。そんな思いで、当時の勤務先で、カリキュラム大改訂に携わり、同時にテストの問いのコード化をコンピューターに読み取らせることなどしていました。
★そして、この歳になった今も、まだまだ、new self for othersへと挑まなくてはと思うわけです。
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