« 2022年9月 | トップページ | 2022年11月 »

2022年10月

2022年10月30日 (日)

聖パウロの探究の広がり

★聖パウロ学園は、まずは体験から始まる、あるいは体験を実感させる思考実験から始まる思考型授業(PBLを微分化したシーンイメージ)や探究ゼミが展開しています。

★なぜかというと、私たちはもはや小さくなった地球、つまり宇宙船地球号の乗組員で、山積している問題だらけの宇宙船をなんとかするための才能やテクノロジーや思考力、判断力、行動力を実装する必要があるからです。

★そして、そのためには、身近だけれど、宇宙船地球号の問題体験をして、多角的な問いを見出すことが必要です。体験は、参加者一人ひとりが全く違うものの見方・感じ方・考え方をしますから、そのシェアをすると途端に問いが生まれ、それが興味と関心のモチベーションを生み、そこから研究や未来への道が開けてきます。

Azabu

(本日麻布大学で、大学生と協力して大豆ミートでつくった中華まんを販売しているパウロの生徒)

★この1人ひとり違うものの見方・感じ方・考え方こそ、その背景にその1人ひとりのオリジナルの才能が有ることに気づく糸口でもあります。

★聖パウロは、そのような体験をセッティングはしますが、問いは体験に参加した生徒自身が協力することによってデザインをしていくわけです。それでなければ、主体性は生まれません。

★そんな体験の1つが、麻布大学の食品生命科学科の先生方や学生の皆さんと連携(というよりお世話になりながら)している中華まんをプロダクトする探究ゼミです。

★麻布大学とは昨年から高大連携を結んで、中華まんを通して、マーケティングやプロダクション、SDGsなど多角的な視点を実装する探究ゼミが展開しています。中華まんの作成については、麻布大学のご紹介で東葛食品株式会社のみなさんにお世話になっています。

★売れる中華まんを作ることが目的の1つですが、そのことによって社会貢献がいかにして可能なのか?それが根底に流れるテーマです。

★マーケティングや経営学的な視点だけではなく、人が幸せになるには、フィジカル、メンタル、人間関係など総合的に学際的に探究していく必要があります。

★食の問題は、当然SDGsにもかかわります。探究ゼミの顧問伊東先生(入試広報部部長・企画戦略室室長)によると、今年は大豆ミートで中華まんをつくり、マーケティング的学びと食の問題を解決するきっかけづくりなどを目的にしているということです。とはいえ、まずは、大豆ミート中華まんをつくり、本日行われている麻布大学の文化祭で、学生の皆さんにサポートしていただきながら、販売することから始めています。

★本当に大豆ミートは売れるのか、売れるようにするにはどうしたらよいのか、食の問題を解決する背景があることは理解されるのか、まずは体験。

★ここに到るまでのプロセスは、麻布大学及び東葛食品株式会社でも善き体験をさせていただきながら歩んできました。学校の教科授業ではなかなか得難い体験です。最終的には人生を生きていて行く善き経験値となるでしょう。

★そして、この体験を通して、食品生命科学科の学問的入口に進んでいくようです。直接お世話になっている島津准教授は、人と動物の共生社会における“健康や食のバイオサイエンス”に貢献できるエキスパートの育成を目指しています。

★今回のパンデミックで、公衆衛生の問題が前面に出ています。私たちは、人間が自然と共生できる循環社会を創るのに、健康と食の問題を見逃すことができないことに大いに気づいています。健康と食の問題を見逃すと、健康被害や環境破壊だけではなく貧困格差や教育格差など社会の分断も引き起こしてしまいます。麻布大学との高大接続連携によって学んでいるパウロの生徒はそうならない未来社会をつくるエキスパートになって欲しいと思います。

★そして、今回この探究ゼミに参加しているメンバーは、学内の多くの行事や体験プログラムで大きな巻き込み力を増大させています。

★これは他のゼミ生にも言えることです。それぞれの問題関心を広め深め、それを全体でシェアしていくことで、men for others/with othersというスクールモットーを実現していくわけです。そういうコーディネートをしている先生方に、日々感謝しています。

|

変わる聖パウロ学園の学校説明会

★昨日、10月29日(土)、勤務校聖パウロ学園高等学校は、学校説明会を行いました。清々しい秋晴れの中、多くの受験生・保護者の方が学校説明会にご来校くださいました。心から感謝です。というのも学校で開催する最初の行事だった8月のオープンスクールは、八王子の新型コロナ・ウィルス感染ピークで、9月に延期せざる得なかったため、マーケットの反応が実は読み切れないでいたからです。

Img_2970

(主幹大久保先生のグローバルの意味と英語教育についてインパクトあるわかりやすい説明。英語に対する苦手意識をもっている受験生がモチベーションを燃やすことになるスピーチ。校長の宇宙船地球号の乗組員を受けて、グローバル人材の意味を共有。グローバル=英語教育という先入観を問い返す、目からウロコのトークは、大久保先生の得意とするところ。目からウロコは、聖パウロの生き様そのものです。)

★高校入試の説明会は、中学入試とはかなり戦略・戦術が違います。中学入試だと、試験が終了する2月から開催する学校もたくさあるぐらいですが、高校入試は、はやくても7月でしょう。高校入試の場合は、はやく行っても、実際に受験する生徒の手ごたえはまったくわからないのです。7月までは、学外の説明会を中心にマーケット動向をリサーチし、ニーズに合わせて、広報戦略・戦術を調整していく仕込みの時期です。とはいえ、その仕込みは、1年前の今の時期から行っていくわけですが。そうしないと、仕込みたくても実際にはできないのです。

★そういうわけで、8月に学校で行い、その調整の有効性や手ごたえのチューニングを行います。しかし、今年はそれができなかったので、一月遅れの9月になりました。そのとき手ごたえは感じたのですが、この時期からは、受験生は中学校側の意向も考慮に入れますから、純粋なニーズを突きとめられません。中学入試では、小学校側の意向は考慮することはないので、私立中学と受験生・保護者と塾との関係が形成する市場の動向を探ればよいのです。この市場はかなりオープンですから、市場の反応をストレートに感じます。

★ところが、高校入試は、さらに公立中学の指導がはいります。ここは個別具体的ですから、全体像は見えにくいのです。中学の学校選択情報は、過去の情報・データの積み上げが90%を占めますから、高校側が新しくしても、その情報が、大きく影響することはなかなか難しいのです。

★ですから、中学の学校選択指導が本格的に始まる前に、受験生・保護者の求めるもの(リアリティあるものは、進路を意識する時期のものです)を知っておく必要があるのです。中学側の想いと受験生の想いの差がわかれば、アプローチの方法が見えてきます。ところが、9月以降は、中学側の思いと受験生の思いは、一致してきますから、新しい情報が受け入れられるかどうかはわかりにくいわけです。

★そこで、今回は、勤務校の教員が中学訪問をするときに、新しい情報にちょっとした工夫をしました。中学校の進路指導の先生方が、いつもと違うので、再度パウロを点検することになるような工夫です。しかし、再点検されて受け入れられるかどうかはある意味カケなのです。

★ところが、この中学訪問も、コロナによって、スケジュール変更など余儀なくされ、十分に伝えられない現状に直面もしました。入試広報部が臨機応変に動いていますが、タイミングが少し遅れています。

★そういうこともあって、昨日の学校説明会に受験生・保護者の方がどのくらい集まってくださるか、緊張がはしっていたわけです。今もそれは変わりありませんが、新しい広報戦略・戦術がそんなに外れていなかった手ごたえを感じることができたので、入試広報部長とようやく今年の募集活動の方向性が定まったという感じかなと一瞬確認しました。しかし、その後すぐに、マーケットの反応でいままでと違うところがでてきたので、早急に分析しますと広報部長。さすがです。

★一年前、広報部長と作戦会議をしたときに、新しい広報戦略・戦術の根幹として、小手先の広報活動はしないと話し合いました。生徒指導部長とは、生徒指導部の生徒主体の学校づくりを前面に出していこうという想いを全面的に応援すると対話もし続けました。その生徒の人間力を教師が共にどうやって作っていくのかその学びをPBLという表現から「思考型教育」に変えて、一般的なトレンドに合わせた教育であるというような誤解をされないように、現場で生徒が未来を創っているリアリティを共感して頂こうということを狙っていこうと、教頭とも何度も確認し続けています。エッ!?それが戦略なの?たしかにそう思う方もいらっしゃるでしょう。なるほど無手勝流に見えるかもしれません。

★しかしながら、徹底的に生徒が学んでいる姿、生徒が主体的に学校づくりに参画している生の姿、生徒の思いの表現技術などをストレートに共感していただくには、1年前から仕掛ける必要があったわけです。学内が自己変容することと広報戦略・戦術も変わるということの同期を調整していけるかどうか、毎日入試広報部長とディスカッションしてきたし、今後もそうするわけです。

★この同期をとろうとプランしてから、徐々に学内では、部活やパウロ祭などの行事、探究ゼミ、ボランティア、キャリプロ、授業、大学や企業等の連携活動などあらゆる教育活動で生徒と共に歩みだす雰囲気があふれてきました。もともとあったのですが、一つの大きな雰囲気になることが肝要です。タイミングを見つけては、道具を小出しに共有していきました。1つ目は〇〇、2つ目は★★、3つ目は、◎◎、4つ目は、☆☆、5つ目は♡♡。今回の説明会では、その♡♡が、カチッと音をたてたような気がします。5つの道具については、今年の生徒募集活動が終わってから振り返りたいと思います。いつもこのブログで言っていることなのですが、それが現場で共有されるかどうかはまた別問題ですから。

Img_2979

★さて、プログラムは、3つのパートに分けて実施しました。「全体説明会」「ミニ思考型授業体験」「個別相談」。いずれも在校生がナビゲートするなど大活躍してくれました。私たち教員を手伝うということではなく、いっしょに受験生・保護者の方をご案内し、照明やマイクチェックなども臨機応変に操作してくれました。その姿は、イベント企画運営の同僚という感じでした。

★プログラムにない質問やキャンパスツアーも買って出てくれました。パウロは「体験を重視していますからぜひ」と。すれ違いざまに「すばらしい」と小さく声をかけると、大丈夫ですよ心配しないでとアイコンタクトを返してくる生徒たち。いろいろな局面でこちらは感動ものでした。

★また、全体説明会では、小島綾子教頭といっしょにパウロの教育の魅力について、多角的にプレゼン。スライドも在校生自身が作成。ミニ思考型授業体験でも、チームティーチングさながらのサポートをしていました。生徒の普段のありのままの活動がストレートに伝わり、受験生・保護者も私たちも共感の輪が広がったと思います。

Pul2

★パウロで先輩や先生方といっしょに未来を描いていけるとスイッチが入ってくれることを期待したいと思います。

※パウロのfacebookの速報から、当日のアンケートの声をご紹介します。

<説明会参加アンケートには、次のように共通したコメントをたくさん頂きました。ありがとうございます。>

・在校生がついてサポートしてくれたり、学校の説明をしてくれたのは、すごくよかったです。

・在校生の方が、素敵なプレゼンをされていて、すばらしいと思いました。

・英語が苦手で、不安でしたが、苦手の子でも学べることがわかり、安心しました。英語の体験授業が楽しかったです。

・パウロの授業のすてきな雰囲気を知ることができました。

・生徒さんが礼儀正しく自信にあふれているようすに感動しました。生徒が自分の考えをしっかりと持ち、それを伝えることができ、素晴らしいと思いました。

・先生も生徒もスライドを使い、わかりやすく説明されていました。たくさんの体験ができることもわかりました。

・先生方や生徒さんたちの関係のよさを感じることができました。

・グループに分かれてたくさん案がでた。楽しかった。

|

2022年10月28日 (金)

21世紀型教育研究センター 新結合始まる。

★21世紀型教育センターは、今年8月にクルックフィールズで、新しいプロジェクトを発足するためのフィールドワークセミナーを行いました。その時につどった21会SGT(スーパーグローバルティーチャー)は、その後もミーティングの会を重ねて、プロジェクトの企画を立て、来年8月には実施する動きになっています。この新プロジェクト立ち上げの座長は、聖学院の児浦先生(同センター主席研究員)です。工学院の田中歩先生(同センター主席研究員)、和洋九段女子の新井先生(同センター主任研究員)、文化学園大学杉並の染谷先生(同センター主任研究員)も協働してファシリテーターの役割を果たしています。

20221027-2_20221028090901

★昨日も、オンラインでディスカッションをして、対話を深め、いよいよ2つのプロジェクトが立ち上がります。1つは、21世紀型教育機構の加盟校の社会とのつなりを活性化することを目標にするプロジェクトです。もう一つは、同機構の加盟校の協働による新しい学校説明会などを共につくるプロジェクトです。いずれも、基本的な発想は、新結合です。今まで、それぞれの学校では実施してきたものを、学校間で行うという新結合です。新結合とは、シュンペーター流のイノベーションのことを意味します。

★かつて21世紀型教育機構が誕生した時は、それ自体が新結合でしたが、今度は同機構の21世紀型教育研究センターが、満を持して新結合を生み出すことになりそうです。

★いずれも小さく始めて大きく育てるレバレッジポイントになるプロジェクトです。

★来年8月には、実施予定です。

★新しい教育は、21会SGTから始まります。教育研究プロジェクトのミッションは、上記写真にある通りです。同機構自体の理念は、「21世紀型教育機構は、ゴールデンルールにのっとり、グローバルゴールズを解決できるグローバルシチズンを育成するクリエイティブスクールを応援する。」です。それをより具現化し、上昇気流を生み出すミッションに進化しています。今後の同センターの活躍に期待がかかります。

|

聖パウロ学園 エンカレ(通信制)の倫理の授業 自分を知る環境をつくる もう一つの探究。

★聖パウロ学園には全日制と通信制の両方の学校があります。通信制のほうはエンカレッジ(以降「エンカレ」)と呼ばれています。エンカレに集う生徒は、自分の才能を内面の奥深くに秘めていて、自分でもその才能に気づかないという場合もあります。中学の時の複合的な人間関係や環境などの要因によって、そうなってしまった可能性が高いわけです。ですから、その自分の才能に気づくところからエンカレの教育は始まります。

1_20221027160801

(エンカレの倫理の授業シーン)

★自分の才能に気づけば、その才能を生かそうと考え、自分を再度見つめ直し、ようやく自分が困っていることが了解できます。様々な複雑な外部のつながりに悩んでいたわけですが、自分が困っていることや悩んでいることがそこではなかったと気づく瞬間がやってきます。これは、エンカレの生徒に限らず、全日制の生徒もそうだし、パウロに限らず、それに高校生に限らず、人間だれしもそういう経験をするでしょう。

★ただ、エンカレの生徒は、あまりに奥に自分のタラントをしまっておきますから、それを開示するには、少しサポートが必要です。

★そこで、エンカレの教師は、フッサールの自分を捉える現象学的還元手法を高校生と高校生、高校生と教師などの相互理解に適合するように研究と実践をしています。日本大学文理学部の教授、准教授、大学院生、学生と連携して、研究会を開いたり、日大からは大学院生や学生がインターンシップに訪れます。もちろん、単位になるものです。また、研究会では、エンカレの教員がグループワークの時にファシリテーターの役割も果たします。

★このようなバックボーンを持っている教師陣が、午前中は、園芸や農業という体験、体育の時間ではアルティメットなど、言語の前に身体脳神経系全体で協力し合う体験を設定しています。私たちは、いつの間にか、言葉でコミュニケーションをとるものだと思いこんでいます。ですから、言語能力の差が、教育格差になることも多いのです。知られざる優勝劣敗の根源がここにあります。

★人間は生まれたときに、いきなり言葉は話しません。身体で、人間関係とか空間や時間の認識を身に付けて、やがて、それを言語に転換します。しかし、そのとき、身体的な体感を言葉のバックグラウンドから忘却し、自分から離れた客観的道具にしてしまうケースが多いのです。そうなると、道具は、常に両義性です。幸せをつかむサポート道具にもなるし、幸せを阻害する凶器にもなります。

★後者の場合、当然人間関係はぐちゃぐちゃになるし、自分を守るために奥に隠れてしまう時もあるでしょう。

★エンカレの教員は、それゆえ、言語を使うことを最初から目的にしないで、無理をせず、いったん括弧に入れます。その状態で、身体脳神経系全体を「自然と人間関係の関係性」の中に浸すわけです。

★そして、すぐにグループワークではなく、自己を見つめる考察を、倫理などの授業で行います。

★幸せって何だろう?ではなく、幸せを捉える「自分の眼鏡」はどんなものかを振り返るわけです。

★基礎知識として、幸せの多様な説を、身近な例でレクチャーし、生徒が信頼している教師の事例を分析する思考実験を行っていきます。教師と生徒の関係の中で、生徒自身、自分が見えてきます。

★自分がいかなるものかは、結局は信頼できる相手とのかかわりの中で見えてくるという体験授業がエンカレの倫理です。探究とは、その出発点である、我と汝の関係性を身をもって知ることであり、その関係性を捉える自分の存在としての眼鏡をまずは意識することでしょう。そして、はじめて、その自分がその関係性の中でどう生きるかがわかってきます。

★そして、その関係性の輪が広がったり、それを阻害するネガティブな関係性が現われて来た時、それが予測不能なわけですが、そこで自分がどう生きるのか判断するときがやってくるでしょう。汝ではない、ネガティブな関係の向こうにいる知らない人が、勝手に捏造した基準やルールという足かせをかけられないように、人生を選択したり、その足かせを粉砕する新しい関係性をつくったりできる、自分の信念、価値観、才能などの「存在としての眼鏡」をまずは探究するというもう一つの「総合的な探究の時間」。

★自己責任論ではなんともならない生徒、いや本当は多くの人びとがそうです。それをなんとかする教育は、未来の教育ですが、小さなエンカレの授業の中にもそのヒントはあるかもしれません。日々1人ひとり違う生徒の才能というかけがえのない存在をあるいは信念を共に探す教師。教師と生徒というより、人間と人間の関係性をいかにつくるか。それはそう簡単ではありません。にもかかわらず、それに挑戦し続ける日々を送っている先生方に頭が下がります。

★エンカレの教員にまだまだ学ばねばならないと思う今日この頃です。

|

2022年10月26日 (水)

VUCAの時代に負けない言語の力 聖パウロ学園の言語学際科

★聖パウロ学園の国語科主任高橋先生と教頭小島綾子先生は、この時期教師や生徒との対話がピークになります。廊下を歩いては生徒と対話し、休み時間には、生徒から呼ばれ、職員室では、同僚から教えを請われています。

Img_2866

(3カ月かけて行ってきたSDGsと気候変動のプロジェクトの最終ワーックショップを行う小島綾子先生)

★志望理由書や小論文、推薦書などのアドバイスを生徒からも教師からも求められているからです。もちろん、全教員がこの時期大学入試プロジェクトで動くのですが、最終的な詰めは二人の先生にとなるわけです。

★そして、それだけではなく、国語の授業におけるプロダクトや探究ゼミにおけるプロダクトのアドバイスにも対応します。

★特に昨今の総合型選抜で要求されるプロダクトは多種多様で、一つ一つに応じるのは、一般には難しいですね。それでも次から次へと対話していけるのは、小島綾子先生は、国語科教諭の免許だけではなく、家庭科の免許、養護教員の免許など知、身体、メンタル、人間関係、SDGs、金融教育など学際的知性を有しているからです。数多くのボランティアプロデュースや探究ワークショップのプロデュースも満開の花が咲いています。

★高橋先生も、国語科教諭のみならず、司書教諭の免許も持っているし、ICT支援委員としての認定もされています。それに哲学対話を企画したり、文学散歩に生徒と出かけたりするわけです。学際知と行動知の両方を兼ね備えています。

★勤務校が少人数だから対話に満ちているのか、二人の教師がそれぞれ学際的で、アクティブだからそれができるのか。両方ではありますが、教師が学際知と行動知の両方を持っていることは得難いということでしょう。

Img_2397

(高橋先生もSDGsと気候変動のプロジェクトをファシリテートしてきました。外部団体との連携もアクティブにプロデュース。)

★このような対話が持続可能なのは、生徒1人ひとりが体験をたくさん行っているからです。どういうことかというと、体験を通じて、生徒は1人ひとり違うものの見方感じ方考え方を生み出すわけです。多くの体験を通して、そのものの見方感じ方考え方が、実は自分の才能の表出であることに気づいていきます。

★ですから、先生方は、1人ひとり違う発想の志望理由書や小論文に対応します。国語の授業でもそうです。大変なんだけれど、文章の要約を添削するような辛さはないのです。要約の添削は、何も難しくないのですが、基本生徒全員同じプロダクトです。もちろん、1人ひとりの要約スキルのレベル差はありますから、それなりに語ることはありますが、こんな発想とか、こんな表現とかいう感動を教員間で共有する盛り上がりはありません。

★もちろん、生徒の成長の感動はありますが、先生方が想いもよらない発想に触れる機会はそう多くはありません。やはり、学びはワクワクしなくては、感動しなくては、そういう意味で面白くなくてはというわけでしょう。

Photo_20221026140201

★そんなわけですから、二人の「国語教育研究」への情熱もすさまじく、国語科の思考コードや思考スキルは「知と情」の両方ができあがっています。おもしろいのは、「覚醒」という自己開示の感情がちゃんとセットされていることです。

★したがって、一般に、文章読解というと、与えられた文章をきっちっり理解することが目的となりながらですが、実際には作者のバックグラウンドまで及びませんから、結局生徒の認識の網の目にひっかかった分しか理解ができません。

★ところが、パウロにおいて文章読解は、文章体験の1シーンにすぎません。ですから、生徒は自分の視野の狭さを広げる覚醒を味わう、つまり身体脳神経全体をつかって、自分の才能を創作物へと転換する過程を体験していくのです。プレゼンの内容は感動的なのは言うまでもありません。

★共感を呼ぶのは、他者の文章を引き受けて自分の言葉や感性と融合して新たなプロダクトとして生み出すからです。文章Aが文章X(transformatin)になるわけです。もはやパウロの国語科は、言語学際科というレベルです。

★新たなプロダクトとして転換されるそれぞれの才能どうしが響き合うからこそ、対話のおもしろさは持続可能になるのだなあと、二人の先生が生徒や教師と対話している様子を眺めて、感じいる今日この頃です。

★12月には、二人は、東京私学研究所の国語関連のセミナーで、ワーックショップを行うということのようです。

|

2022年10月24日 (月)

ドネラ・プロジェクト(04)中村佑子さんと新しい哲学としてのシステム思考

VOGUE2022年9月28日の中村佑子さんの記事「なぜ哲学者は男性ばかりなのか。」を読みました。中村さんは、現在映画監督ですが、大学からずっと哲学を学び生業としてきました。その中村さんの論考がゆえに、迫力があります。私が影響を受けていたフッサールは、実際にはエーディント・シュタインという女性の哲学者が編集プロダクトをしていたのかもしれないと気づき、改めて哲学におけるジェンダー問題に衝撃を受けました。ここのところ新しい哲学が生まれている予感はしていましたが、哲学、文化人類学、社会学、システム思考などがインテグレイトされている動きが話題になっているからですが、明確にドネラのシステム思考の流れこそが哲学の現代化を図るものであり、ドネラ・プロジェクトのますますの重要性に確信を得ました。

51h0o1vddhs

★ところで、中村佑子さんは、桐朋女子出身です。同校出身者は世界で活躍する女性がたくさん輩出されていますが、どの方も共通しているのは、根本的問題に立ち還りクリティカルシンキングを発動し、かつアクションを起こすという真の自由をアイデンティティとして持っている、あるいはメンタルモデルとして確立しているということかなあと。

★いずれにしても、このような発想は、ドネラとも共振します。そして、ドネラの新しい哲学として重要なポイントは、システム思考は図式化としてシステムループを描きますが、最終的には方程式を創出する科学的思考法です。男性の哲学は、20世紀はヴィトゲンシュタインの論理実証主義をベースにするという説もあるようですが、ドネラは、科学的には論理実証主義的要素も包摂していますが、その出発点は寛容性でありゴールデンルールです。

★もしドネラがフッサールの時代に活躍していたら、フッサールのようにシュタインの行く手を阻むことには、真っ向から反対したでしょう。

★女性の新しい哲学をベースにした活躍は、SDGsのフィールドに象徴されています。このSDGsも、ドネラとノルウェーの初の女性大統領グロ・ハーレム・ブルントラントなくしては生まれなかったかもしれません。

★やはりドネラ・プロジェクトはますます重要だと感じました。

|

2022年10月22日 (土)

第100回GWEに和洋九段女子教頭新井誠司が出演。生徒の成長の拠点<Connected School>

昨日、GLICC代表鈴木裕之さんが主宰するGWE(GLICC Weekly EDU)は100回目を迎えました。年末年始と盆休みを除いて毎週金曜日21時から配信されてきました。この記念すべき100回を迎えるにあたり、GLICC広尾教室も立ち上がりました。鈴木さんは、21世紀型教育推進校を応援し、自身、21世紀型教育機構の理事で事務局長も務めています。その同士校和洋九段女子の教頭新井誠司先生が、21世紀型教育の進化/深化/真価を46人の生徒の具体的な成長のインタビューリサーチをもとにコンセプトにまでまとめたお話をされました。エビデンスとコンセプト関数を柔らかくそして鋭く語られました。

W1_20221022084201

★まず一枚目のスライドは、上記の表紙から始まりました。46人の在校生の<Stories>を新井先生は、1人ひとり2時間弱かけてインタビューし、10時間かけて書き起こし編集されてきました。その膨大な時間を惜しげもなく生徒1人ひとりの才能開花のきっかけからはじまり、その成長ぶりを言語化するべく捧げてきたのです。もちろん、これからもまだまだ続きます。PBLをベースにしている和洋九段女子ならではのインタビューリサーチです。対話やディスカッション、メタローグのないPBLは考えられませんから、新井先生と生徒の対話は、自然なことでもあります。

★このスライドは、和洋九段女子のアート感性の象徴でもあります。ルネサンス期のダ・ビンチの「最後の晩餐」は、12使徒の表情が1人ひとり違うわけですが、このスライドも46通りの表情が溢れています。またポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルの「キャンベルのスープ缶」や有名人のシルクスクリーンなどを思い浮かべました。

★そして、この46人は、和洋九段女子生徒がみなSDGsを多角的にアプローチし深めているバックグラウンドを示しているものでもあります。この1枚のスライドには、語っても語っても語り尽くせない価値が広く深くあるのです。

W2_20221022090101

★このように新井先生の愛情と鋭い編集能力がわかる、46人の生徒の具体的なインタビューから各学年の成長を示すコンセプトに仕立て上げたトークに移りました。非常に具体的に生徒1人ひとりの内的連関を深めていく成長が了解できました。詳しくはご視聴していただきたいです。

W3_20221022090401

★和洋九段女子の学びの中核は、PBLなのはとても有名です。そのPBLデザインには、必ずルーブリックが活用されているのですが、そのルーブリックを活用して、46人の生徒の成長を、新井先生はたどっていきました。すると、一般に、環境順応型マインド→自己主導型マインド→自己変容型マインドと成長する仮説が語られるものですし、結局は自己主導型マインドまでいけばよいというのが世の常でありますが、なんと和洋九段女子は初めから自己変容型マインド素養から出発しているということが判明しました。詳しくはやはりご視聴ください。

W4

★そして、新井先生は、この成長を横軸にPBLの発達軸でも描いて語りました。これは20世紀型教育における成長曲線とは全く違います。21世紀型教育を中1から高3まで貫徹した経験から語られる21世紀型教育における成長曲線だったのです。なぜこれが大事なのか?ぜひご視聴ください。

W5

★それから、この生徒の成長の刺激を与えながらも居場所である安心安全な信頼関係のネットワークが学内から地域、日本、世界へと広がっていることを新井先生は語りました。このネットワークは拡大し続けますが、生徒が大切にしているキーワードの1つ「信頼」のネットワークです。和洋九段女子は、このような状況を自ら<Connected School>と呼んでいます。

★まるで安心安全な信頼ネットワークを一つの地球に広げようとしているかのようです。50年前に「成長の限界」を中心的に執筆したドネラ・メドウズ博士の夢でもありました。その夢を国連は引き受けSDGsに結実しているのですが、今そのバトンは和洋九段女子の生徒全員にも渡されました。その素晴らしい和洋九段女子の教育クオリティーを感じて頂きたいと思います。

|

2022年10月21日 (金)

なぜ「体験」をまず大事にするのか。

★ここのところ、学校の教育活動を「体験」から見ているのですが、ある先生に、なぜ「体験」?と問われたので、そういう問いがなるほど出るのだなあと妙に感心しました。ふだん丁寧に知識や情報などをレクチャーしていると、「経験」となるようなのです。たしかに、経験値とはよく使いますが、体験値とはあまり使いません。PBL型授業をやっていると、「まずやってみよう!」となります。まず体験しようとはいいますが、まず経験しようとはあまり言いません。経験はまずではなく、積み上げていく感じですから瞬間的な時間より持続的な時間のイメージがあります。

Photo_20221021155901

★それに、体験は、「体」とあるように、リアルな空間で身体を使って行う感じがします。一方経験は、「経る」という字が使われていることもあるからでしょうか、積み上げていって後からじっくり振り返ることができるように内面化されていくイメージがあります。PBLだと、最初はまず体験。それが繰り返されて経験値が高くなっていく感じなのでしょう。書物や文献、図表などから読み取る授業だと、たしかにまずやってみようとはなりませんね。でも、経験値は高くなります。ですから、PBLのように体験から出発すると主観性が大いに入り込む経験値ですが、講義型の場合は、客観的な捉え方の経験値が積み上げられます。

★体験の場合も、最終的には客観的な捉え方になるわけですが、そこに到達する過程には、主観が入り、ディスカッションやワークショップなどで、主観同士が精査し合って、客観性が生まれてくるシーンに立ち会えます。客観的と思われているものは、実は創出されたものであり、それがフェイクではなくアイデンティティがいかに保証されるのかそれこそ経験値を積んでいきます。こうしてはじめてようやくクリティカルシンキングを体得できるようになります。この過程がないと客観的ということばをいつの間にか科学的に絶対正しいと錯覚を抱く可能性があります。

★PBLだからこそ、体験から経験値をアップデートしていくことができ、その過程で、クリティカルシンキングや客観性を創造することができるわけです。VUCAの時代には、客観性も変わり得るわけですね。なおさらPBLは重要です。

★英語で、体験と経験をどう使い分けしているのか?単語でいえば、Experienceです。しかし、翻訳サイトReversoで類義語をサーチするとおもしろい結果になりました。

❶ And there's the chance to go on wildlife safaris and guided hikes too.

❷ This process is essential in helping you adjust to the physical changes that you are shortly to encounter.

➌ Combine your visit with a Delft Blue painting workshop.

❹ I worked in main dining for nearly two years.

➎ I have also lived in Kenya, Cambodia and the Philippines.

➏ Their life stories are the messages of love.

➐ I originally come from a background in Fine Arts and Graphics.

➑ KDDI Hong Kong has expertise in integrating solutions into our global network.

★❶~➌までの下線部の単語は、deepl翻訳では、「チャンス」「遭遇」「ワークショップ」と訳されるのですが、Reversoでは、いずれも「体験」と訳されます。

★❹~➑の下線部も、deeplでは、それぞれ皆さんが知っている単語の意味が使われるのですが、Reversoでは、いずれも「経験」です。

★ワークショップは「体験」で、ワークは「経験」としているのが、なんかおもしろいですね。

★Rversoの翻訳を使うと、先に私が妄想を抱いた「体験」と「経験」の違いは、完全に的を外しているわけでもないと自己満足した次第です。

|

変わる富士見丘(2)「2つの体験と先進的教育施設」というコンセプトレンズでサーチする

★富士見丘の教育の質は、同校が実施している「SGH」「WWL」「英語教育」「海外留学」「プロジェクト学習」「探究学習」「進学実績」「高大連携プログラム」などなど多様な教育活動を紹介するだけで、そのスケールの大きさ奥行きの深さが伝わると思います。ただ、他校と比べて富士見丘の教育の質がどれほど豊かなのかということは、なかなか伝わりません。そんな比較はいらないと言われるかもしれませんが、偏差値垂直序列ではなく、教育の質という水平的多様性を表現することは、互いに質の向上を果たそうとする推進力になる可能性があります。そこで、その水平的多様性を見るコンセプトレンズとして「2つの体験と先進的教育施設」を活用してみたいと思います。

3_20221021113001

★その場合、部活と文化祭をあえて体験の中から外します。富士見丘の部活や文化祭はとても活発で、グローバルレベルのものもありますが、それをあえて、このコンセプトレンズから除きます。するとある学校だったら、この2つを除くと、教科学習と進路指導しか残らないところもあります。富士見丘はこの2つを括弧に入れても、豊かな「コア体験(全員参加型体験)」と「バッファー体験(個別最適化体験)」がたくさんあるのが明快になります。

★また、「先進的教育施設」があるのに気づくでしょう。この施設は、たんに校舎という意味ではありません。学際的学びや探究的学びの拠点だったり、教育理念のマインド育成の場だったりします。それに、施設は、リアルスペースだけではなく、webでつながるサイバースペース上にもあるのです。富士見丘はもちろん両方存在しています。

★それから「体験」にこだわったのは、新学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び」と表現されるアクティブラーニングあるいはプロジェクト学習で、体験のないものもあるからです。

★今、18歳成年の時代を迎えています。それまでにSTM(Self Transforming Mind)を育てなければ、未来社会の進化を持続可能にする人材が足りなくなるといわれています。富士見丘では、このSTMのことをグローバルコンピテンシーと呼んでいます。

★このSTMとしてのグローバルコンピテンシーが育つには、プロジェクト型学習や探究学習などが必要ですが、その背景にはリアルな体験が必要です。体験なきプロジェクト学習や探究学習は、文献リサーチで終わりがちです。

★その場合、気づきは文献の枠内に限られます。気づきは疑問や問いという形で生まれてきますが、文献リサーチは、すでに誰かに発見された既存の問いを見つけるというよりは、文献の中から抜き取って終わる場合が多いのです。結局先人たちが気づいた問いを並べることになりがちです。

★それでは、Aをインプットし、記憶し、またAをアウトプットするという学びになってしまいます。ところが、体験をベースにすると、Aをインプットして、ディスカッションし、論文編集をし、プレゼンするという探究過程を通過することによって新しい見方Xがアウトプとされることが多いのです。つまりA→Xという自己変容を生み出すことができるのです。

★もちろん、体験をDoするだけでは、おもしろかったとかつまらなかった程度の反応で終わることもあります。生徒は、体験したら、探究型あるいはプロジェクト型のプロセスを通過することで、ワクワクするようなアイデアとスリリングな実現方法を生み出すわけです。

★富士耳丘の生徒は、この知のトランスフォームを生み出す学びを行う環境が緻密にかつ大胆に用意されています。

|

円安、32年ぶり150円台の衝撃と総合型選抜

★今朝の日本経済新聞の記事「市場が日本経済の「弱さ」突く 円安、32年ぶり150円台(2022年10月21日 2:00)」は、衝撃的でした。記事の出だしはこうです。

20日の外国為替市場で円相場は32年ぶりに節目の1ドル=150円を超えて下落した。政府・日銀が大規模な円買い介入に踏み切ってから約1カ月、円買い介入後の高値(140円台前半)からは10円ほど円安が進み、効果の限界が見え隠れする。円安が止まらないのは低金利依存から抜け出せない日本経済の弱さを突かれているためで、底の見えない展開となっている。

51vbqlbzsnl_sy346_

★要するに32年前バブル崩壊からはじまった経済の空白の30年がさらに延長されているということでしょう。このままいけば、2030年問題は乗り越えられないかもしれません。乗り越えられなければ、ソサイエティ5.0だとか第4次産業の人材クリエイティブクラスの育成はままならないということです。それに向かって、産業も教育も向かっているはずですが、とん挫するということでしょう。

★SDGsの17のゴールデンルールは、それぞれ関係していてある意味循環しています。ですから仮に16うまくいったとしても、1つがダメなら、結局はすべてがダメになるというめちゃくちゃリスキーな話なのです。

★50年前の1972年にドネラ・メドウズは「成長の限界」の中心的著者として、そのことに警鐘を鳴らしていました。もちろん。評論するだけではなく、システム思考を説き、制度改善、メンタルモノデルの改善、環境改善の技術革新など、社会と個人と自然の好循環を生む方法を論じるムーブメントを作ってきました。科学者であるだけではなくジャーナリスト及び教育者として活躍したのはそういうわけでしょう。彼女の思想や技術や人類愛は、国連を動かし、SDGsに到る道を開いたのです。

★32年前の1990年、SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)は日本初のAO入試を開発し、今の総合型選抜の元を作りました。その時の想いは、ドネラとシンクロしています。正解が1つではない予測不能なVUCAの時代を乗り切り、新しい自分、新しい未来社会を描ける未来からの留学生を集め、新しい人材育成、技術革新、未来社会を創ろうとしていたわけです。そういえば、SFCは入試でシステム思考を活用する問題を出題していますね。

★今回の記事の事実性というか、この150円台の円安が映し出す私たちの世界の軋みは、32年前のSFCの想いを蘇らせるものです。そういう意味でも衝撃でした。総合型選抜が増えている現状をそのSFCの流れを汲むものと捉えたいものです。しかし、相変わらず、学生の青田買いの戦術だと揶揄する人も多いですね。成毛さんや冨山さんは、そんな昭和的な発想を早く止めよと言っています。上記の写真の本のあとがきで冨山さんは、こう語っています。少し長いですが引用します。

 本書には、政府、会社、学校を問わず、日本で既存のエスタブリッシュなものには頼るな!というメッセージが度々出てくる。これはいわゆる「 自己責任 論」で言っているのではない。あくまでもリアリズムとして、頼りにならないものに頼るのは危険だということ だ。プラグマティックな意味で頼れるものにはどんどん頼れ、かじれる親の脛もかじっていい。しかし頼れないものに頼るとかなりの確率で不幸になってしまう。   誰しも 自分の力だけでは生きていけない。ならばどうするのか。そこで途方 に 暮れずに考えて、好奇心のアンテナを立てていろいろと調べ てみることだ。するともっと頼りになるものがたくさんあること、自分が心から愉快に感じることがあり、世の中にはそれで飯を食う道がいろいろあることが見えてくる。逆 に昭和的な学歴主義(日本の場合、これは合格歴主義に過ぎないのだが)、就職人気神話、終身サラリーマン上がり双六に縛ら れ、そこで自己責任論 で自分を追い詰めると、ほとんどの場合、不愉快な人生になる時代である。本書には読者の皆さんとそのご 家族が昭和的不愉快の罠から逃れ、それぞれに愉快な人生の道筋を見出すヒントがいろいろと登場する。成功や幸福の標準化の時代だった昭和と 決別するための鍵は、自分で基準を決めること、すなわち自己満足だ。今後も昭和の標準幸福モデルの没落 は止まらない。代わりの標準モデルも出てこ ないだろう。ならば、自己満足に基準を置いたほうが、よほど気分がいい。それは自己肯定感にも直結する。日本人の自己肯定感は、世界各国と比較しても顕著に低いそうだ。これは不幸だ。本書を通じて一人でも多くの人々が愉快に人生を過ごせる日本になることを願っている。

 成毛 眞; 冨山 和彦. 2025年日本経済再生戦略 国にも組織にも頼らない力が日本を救う (SB新書) (pp.194-195). SBクリエイティブ株式会社. Kindle 版.

★もちろん、ここでいう自己満足は、同書の中では、空気を読まずに、互いに自立した個人どうしのコラボレーションは大前提です。その証拠に、成毛さんと冨山さんは共著を書いているわけです。

★同書は、新刊本ですが、成毛さんの論調は以前から変わっていません。成毛さんはアスキー時代から活躍されていて、イノベーティブな人だなあと21世紀前夜から注目していました。冨山さんの書物との出会いは、3.11以降ですが、お二人のプラグマティックでイノベーティブ、クリエイティブな発想には私も影響を受けました。21世紀型教育機構を2011年に発足したときも、この想いは抱き続けていました。

★最近では、勤務校では、men for others からnew self for othersに成長するというストーリーにしようかという対話をし始めています。生徒1人ひとりの進路は、学歴を基準にするものではなく、new self for othersへの信念と同じような信念をもった信頼コミュニティとして教育環境を創ることではないかというわけです。

★32年前の衝撃は、もう一つ。1990年に出版されたアルビン・トフラーの「パワーシフト」を仲間と夜を徹して読みふけり、21世紀は教育だなと確信をもたっ時のことが蘇ってきたことです。そんな思いで、当時の勤務先で、カリキュラム大改訂に携わり、同時にテストの問いのコード化をコンピューターに読み取らせることなどしていました。

★そして、この歳になった今も、まだまだ、new self for othersへと挑まなくてはと思うわけです。

|

2022年10月20日 (木)

変わる富士見丘(1)帰国生だけでなく、一般受験生にも人気

★ドネラ・プロジェクトを開始して、すぐに富士見丘こそドネラ・メドウズの文化遺伝子を引き受けている女子生徒ばかりであると思っていました。しかしながら、少人数学校でありながら、多様なプログラムが溢れていて、簡単には記述できません。GWEで佐藤先生や田中先生と対話するとますます奥が深く動画で紹介するのが一番だと思っていました。

2022fujimigaokatop01

(写真は首都圏模試センターの学校特集<富士見丘中学高等学校2022「自分はできる」自信をもつことで、世界を変えられる力を培う>から)

★今でもそう思っていますが、富士見丘の教育の質が他校とどう違うのかをいかに表現するか、あるいは論じるかについて考案するのは、富士見丘の先生方は行わないでしょう。富士見丘の先生に限らず、一般に、学校の先生は、他校と比べてうちは優れているというような考え方や表現はしないものです。

★それは第三者が勝手に行うものだという認識だと思います。ですから、私には、私立学校研究家としての立場からそれを考えていくことは許されるでしょう。もちろん、他の学校を貶めるようなことはいたしません。富士見丘の教育の質という、なかなか見えにくいものを見やすくするにはどうしたらよいかということを考えたいと思います。

★どうしてそんなおっせかいをと言われるかもしれません。確かにそうかもしれませんが、生徒にとって、自己変容でき、自分の才能を豊かにし、結果的に社会を善い方向に変えられるグローバルコンピテンシーを身に付けることができる学校があるのであれば紹介しないわけにはいかないし、ましてそのクオリティーが高いとなればなおさらでしょう。

★とはいえ、私が紹介するまでもなく、多くの受験生・保護者が気づき始めていますから、やはりおせっかいにすぎないかもしれません。

★10月の首都圏模試主催の合判模試の同校の志望者数をみて、それを確信しました。合判模試受験生のうち、富士見丘を2科目で受験したいという生徒は、同月前年対比で、147.2%(昨年89名、今年は131名)でした。

★今まで富士見丘は、帰国生にとって超人気校でした。もちろん、今もそうです。しかし、この147.2%という数字は、今や一般生にとっても人気校になったということを示しています。

★なぜこのように人気が高くなってきたのか?言うまでもなく、教育の中身が魅力的だからです。どうです。その魅力を生みだしている教育とは何か気になりませんか?気になるはずです。ということで、少しずついっしょに考えていきましょう。

|

教育の質の高い中身を選択する時代(17)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の希望の私学⑤工学院大学附属中学校・高等学校 写真が映し出す特色!

★高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の希望の私学セレクト20の学校を五十音順に紹介しています。今回は工学院大学附属中学校・高等学校(以降「工学院」)について。詳細は、同誌をお読みいただければと思いますが、ここでは、同誌で掲載されている写真のインパクトについて気づいたことを書きとめておきます。

96bb92bc53c9dda81ace9ebd2a25978a_1

写真は、首都圏模試センターから

★この写真は、授業中の一瞬を撮ったものです。ハッとしませんか?教師も生徒も希望と自信に輝く眼差し。その向こうには未来があるという感じです。しかもその未来は遠くにあるのではなく、工学院のPBL型授業といういまここから生まれている。おそらくプロジェクターで投影しているのでしょう。

★この一枚の写真を撮り、選択したライターの目利きは凄いなあと感動してしまいました。

★同誌は、半分は紙媒体で記事になり、続きはQRコードから首都圏模試センターのサイトに飛ぶしかけになっています。限られた紙片に収まり切れない部分は、サイトでいうICT社会ならではのリアルとサイバースペースをインテグレイートした編集です。

★そのサイバースペースの方に、こういう記事があります。中野校長の言葉が印象的です。

中野校長先生は、「工学院は、目標に向かって目をキラキラさせている生徒が1番の自慢ですが、次いでそれを支え伴走している教職員も自慢です。工学院の教員は、決して教え込んだり、引っ張ったりするのではなく、生徒を励ましたり、やる気にさせたりする伴走者です。その伴走者がワクワクしながらそれぞれの専門科目の楽しさを伝えていくことで、そのワクワクが生徒へ伝わり、『先生が楽しそうだからやってみよう』と考える生徒が出てくると思うのです。だからこそ教職員にも生徒と同じように”挑戦”してほしいと思っています。」と語る。工学院の教職員がワクワクしながら、日々生徒たちと接することが、生徒たちの挑戦するエネルギーに自然となっているのだろう。自ら考えて失敗を恐れず積極的に挑戦し、仲間と連携して新しい価値を創造し、人間性豊かな社会の構築へ主体的に貢献することができる、工学院大学附属中学校・高等学校の教育に是非とも注目してほしい。 

★この一枚の写真の意味が、ここには記述されているではないですか!この意味が確かに伝わってくる写真です。何というインパクトでしょう。工学院の特色を一瞬にして丸ごと映し出しているのですから!

|

2022年10月19日 (水)

教育の質の高い中身を選択する時代(16)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の希望の私学④京華女子中学・高等学校

★京華女子中学・高等学校(以降「京華女子」)が目指すのは、知を高め、視野を広げ、共感力をそなえた、21世紀型の「賢い女性」の育成です。ですから、これからの時代に必要な「グローバル力」「学力」「共感力」の3つの柱を中心に様々な取り組みを行っています。下記の写真をみればわかるように、この3本柱を実践していく授業のスタイルはアクティブラーニングです。

Keikagirls

(写真は、首都圏模試センターから)

★アクティブラーニングとは、文部科学省の新学習指導要領によれば、「主体的・対話的で深い学び」ということになりますが、これがなかなか実践できないで四苦八苦している学校がまだまだあります。京華女子がアクティブラーニングを実践できるのには、理由があります。

Img_2945

★というのも、アクティブラーニングには、ディスカッションやプレゼンテーション、論文編集などのワークショップあるいはパフォーマンスが頻繁に行われます。そのため、従来のペーパーテストのスコアだけで評価することは難しく、どうしてもルーブリックが必要です。

★その点、京華女子は、新学習指導要領が実施される前から、ルーブリックを作成し、生徒も自己評価できるようにしてきました。学びは、明快なテーマに関する目標や思考のレベル設定、コミュニケーションレベルの設定などを見据えることができれば、学びながらリフレクションができるので、生徒は自分で成長の手ごたえを感じることができます。

★それだけでも十分に、教育的に価値のあることを実践しているのですが、同校の二俣潤也教諭は、日本学校教育学会年報第4号において、「高等学校におけるカリキュラム・ルーブリック活用の有効性と課題 生徒の自己評価に焦点をあてて」という論文を発表しています。

★学問的、教育実践エビデンス分析をして、ルーブリック評価と生徒の自己評価の有意な関係を検証しています。

★今後、多くの学校や文部科学省が注目することでしょう。

★実践と理論の統合が行われている京華女子。得難い学校です。

|

ドネラ・プロジェクト(03)中村桂子さんとイノベーション・ジャパン2022と総合型選抜

★学問する人のポータルサイト「トイ人」は、総合型選抜に挑戦する高校生には参考になるサイトです。どいう点で参考になるかというと、専門的な学問の役割が変わってきたということがイメージできるし、総合型選抜の時点で、学問そのものについて入り込む必要はまだなく、その新しい役割を担っている学問の前提を自分の生き方の視座とすることの重要性に気づくことです。たとえば、ドネラ・メドウズと同時代人の中村桂子さんの連載は、文系理系関係なく読んでみてはどうだろうと思います。

Photo_20221019021101

★それから、今実施されている「イノベーション・ジャパン2022~大学見本市&ビジネスマッチング~Online」(主催:国立研究開発法人科学技術振興機構、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)」もとても参考になります。

★中村さんの連載もイノベーション・ジャパン2022も、ドネラの文脈であるSDGsという発想を受け入れていますから、2030年問題に直面する今の高校生・大学生にとって身構え、クリアする発想とアクションを洞察する貴重なリソースになります。

★中村さんの連載は読むことができるし、イノベーション・ジャパン2022年は無料で視聴できます。もちろんこのイベント自体は、かなり専門的なので参加者の研究内容や、大学の研究とマッチングさせたいと企図して参加している産業の事業内容の一覧を読み解くだけでも大切な気づきを得るでしょう。

★中村さんの発想やイノベーション・ジャパン2022で行われている研究の根っこには、「リアルな問題発見」があります。その問題解決のためには、才能と技術と寛容性が欠かせません。寛容性があると、リアルな生活者の問題に気づくものです。その気づきは、自己の根っこにある才能を気づかせてくれるでしょう。そして、その才能を生かすには多角的な技術が必要になります。

★それから、中村さんが語る「世界観」が大事ですね。中村さんは、人間というものは、古代から現代、未来にあって、生き方という物語を創っていくものだと。現代にあって、その物語を紡ぐことは、「世界観」という言葉に置換えてもよいと。そして、哲学者大森荘蔵の言葉を引用しながら、次のように語っています。

「自然をどう見るか、生活をどう見るか、そしてどう生活し、行動するかである。宗教、道徳、政治、商売、性、教育、司法、儀式、習俗、スポーツと人間生活のあらゆる面が含まれている」と哲学者の大森荘蔵先生から教えていただきました。生き方を組み立てると言えばよいでしょうか。 

★やはり、ドネラ・メドウズとシンクロしていますね。大森荘蔵の考え方は要素還元主義ではなく、関係総体主義で、ドネラのシステム思考と響き合います。

★このような世界観を才能と技術と寛容性を有した生徒が紡いでいく。生徒1人ひとりの才能が注がれる関心事は、違いますから、多様な新しいイノベーションが生まれる。ただし、それをキャッチできる産業がないとアクションを実現できない。

★だから、どのような産業があるのかリサーチすることは大事。なければ、新しく創る。そうすると産業構造自体も変わっていく。学問の役割はここまで広がっています。

★そんな人間育成の出発点が「総合型選抜」だといいなあと思います。かりにそうでなくても、「総合型選抜」という場をそのような人間力形成の場として活用すればよいわけですが。こうなって欲しいなあと発信していくうちに、そのような動きは当然だという大学がたくさん出てくるような気がします。実際そういう動きになっていると思いますが。

★ドネラ・プロジェクトとは、そんな人間力を育成することにパッションとコンパッションを抱いている方々(本ブログでは初等中等教育の先生方が中心ですか)を探して、ここにメモしていこうという目的も一つです。

|

2022年10月18日 (火)

総合型選抜は増えているのに、増えていないというイメージがあるわけ

★文部科学省の「令和5年度国公立大学入学者選抜の概要」によると、国公立における総合型選抜・学校推薦型選抜は、徐々に増えています。しかし、一方では、これからは総合型選抜より一般選抜だというイメージもあります。なぜでしょう。

Photo_20221017165001

★1つ目は、経済的な要因です。だんだん厳しい環境になると、目の前の問題をできるだけ速くクリアすることが重要だと思ってしまいます。急がば回れということばがあるのは、もともと人間とは目の前のことが大事だと思う傾向にあるのでしょう。ですから、じっくり深く仕上げるより、できるだけ合理的にスピーディーにということになります。すると、知識を暗記して対応できるのがよいわけです。

★2つ目は、総合型選抜では、本当に受験生の才能を見出せるのかという懐疑心が作動するからです。アドミッションポリシーに合わせることは当然ですが、才能をマッチングさせることではないというケースが多いということですね。そもそも、学問的な内容は、大学に入ってからでよいのではという前提のズレもあります。総合型選抜に真面目に挑戦する生徒には、かなり学問の領域にはまっている生徒もいます。それはすばらしいことです。しかし、だからといって、総合型選抜は学問の入口だとするのは、現代の大学の役割とはズレがあります。というより、学問に対する考え方が変わってきたことを論じていないがゆえに、総合型選抜に対するイメージが重ならない人が多いということも総合型選抜を敬遠する傾向にあるのでしょう。

★3つ目は、上記の図にあるように、東大は圧倒的に一般選抜で合格者を出します。世の中というより、ジャーナリストや入試情報センターのスタッフは、ほとんどが東大を基準に物事を考える習慣がついています。そもそもそこに係る人々が東大出身だったり、東大を落ちて難関私大に入学した経験者で占められているため、東大を基準にすることに疑いを持たないわけです。

★そんなわけで、勝者の論理として一般選抜、敗者の論理として総合型選抜というイメージがあるのだと思います。

★おそらく、東大の成り立ちの中で、明治政府には、武士をどう回収するかという問題解決の1つとして東大を活用したこともあったのでしょう。そのため、近代に対する武士のトラウマのような発想が根付いたのかもしれません。カタチは変わっても武士の道を基準として後世に残そうという。もちろん、私の妄想です。日本史の専門家にいつか聞いてみたいと思います。

★しかし、今の世の中において、それを基準にするかどうか考えたとたん、いやいや違うとなります。意識の中では、わかっているのですが、無意識の中に、西郷隆盛のメンタルモデルは生きているのかもしれません。勝者なのに、あえてそれを持続させなかった。

★だからといって、勝者であり続けるために、なりふり構わないという姿勢にも、福沢諭吉は組することはできなかった。

★勝者でも敗者でもない道をひたすら歩くやせ我慢の説ですね。

★勝者も敗者も、結局は同じ基準で勝ち負けが決まっているのですから、その基準をとらないよというのは、彼らから見れば福沢諭吉の正義は痩せ我慢に見えるのでしょう。慶應義塾大学が最初に総合型選抜の道を拓いたのはそういうわけがあるのかもしれません。

 

|

2022年10月16日 (日)

世界大学ランキングの考え方

★大学ジャーナル(2022年10月15日)では、毎年恒例の世界大学ランキングの記事が掲載されていました。<「THE世界大学ランキング2023」発表、東京大学が4ランクダウンで39位に>がそれです。この世界大学ランキングは、日本の大学のランクの上下で一喜一憂するために活用するのではなく、日本の学生が、one earthの視点で進路選択ができるようになるための参考データとして活用する方がポジティブだし、生産的です。

Photo_20221016042001

★記事には、10位以内の大学が並んでいます。

1位オックスフォード大学(イギリス)
2位ハーバード大学(アメリカ)
3位ケンブリッジ大学(イギリス)
3位スタンフォード大学(アメリカ)
5位マサチューセッツ工科大学(アメリカ)
6位カリフォルニア工科大学(アメリカ)
7位プリンストン大学(アメリカ)
8位カリフォルニア大学バークレー校(アメリカ)
9位イェール大学(アメリカ)
10位インペリアル・カレッジ・ロンドン大学(イギリス)

★そして、日本の大学については、こうあります。

 
日本では、世界39位の東京大学、68位の京都大学に続き、201–250位に東北大学が前年と同じく上位3校となった。これに251-300位の大阪大学 (前年301–350位) 、301-350位の名古屋大学 (前年351–400位)が続き」、それぞれ2021年から1バンドランクアップした。

★つまり、この大学の入学者数は、ざっくり15000人として、2022年の日本の大学入学者総数のシェアは2.4%。

★この5大学に入ろうとすると、狭き門なのは当然。

★そこで、世界大学ランキング350位くらいを射程にすると、選択肢が増え、かつ5大学よりも世界大学ランキングが上位の大学に入学することも可能です。

★日本の大学が788校(2021年現在)だから、その約44%に占めるのが、世界大学ランキング350位までの大学。

★ランキングがよいかわるかは、ここでは論じないとして、日本の5大学に行けない場合、世界の350大学に射程を広げてみれば、世界で活躍できるモチベーションが高くなるし、5大学に行くより、ずっと世界で活躍する可能性は高い。グローバル時代あるいはユニバーサル時代。日本の大学788位のどこかではなく、世界の大学の350校のどこかを選ぼうと考えると気が楽になるでしょう。

★そして、そのための学びも楽しくなります。

★世界大学ランキング100位以内だと、英語は英検で1級レベルが当然だけれど、それ以外だと準1級または2級でもなんとかなる。もちろん、TOEFLやIELTSなど必要なスコアはとらなくてはならないから、そのための勉強は厳しいけれど、高2までに2級ないしは準1級を取得していれば、高3からなんとかなるはずです。

★そして、何より大事なのは、ボランティアの体験ですね。大学入学のためにボランティアをやるのは、動機がよろしくないという人もいるけれど、海外の大学や日本の総合型選抜で大学を選ぶ場合、必ずしも動機がよろしくないとはいえません。

★自分の進路がかなり確定している場合、その自己実現のためには、ボランティアが必要であれば、やるでしょう。

★しかもボランティアは、自分の意志が行動の駆動力になるわけですから、入学のためだとしてもその動機がよろしくないなどということは実はないのです。その価値観を否定するのは、別の価値観によって立っているからという理由にすぎないでしょう。

★英語と体験、しかも英語でも体験でも深い学びやクリティカル&クリエイティブシンキングは必要です。

★自己開示と自己変容型マインドを豊かにしながら学ぶ進路準備であれば、そのためにボランティアをやるのは全く問題ありません。

★すると、日本の生徒すべてにそのような学びは開かれています。

★それに、5大学に行く進路準備では、世界の大学への道は簡単には開かれないのに、その準備とは違う、英語と体験ベースの学びで、世界の大学は開かれてしまいます。もちろん学校の評定はある程度大事ですが、それはやる気になれば大丈夫です。

★そんな甘いものではないという方もいるかもしれません。どこが甘いのか私にはよくわかりません。教科学習の方がはるかにやりやすいし、レールが敷かれていますから安全ですが、VUCAの事態に対応できるのは、どちらかを考えれば、どちらが厳しく甘いかなどという比較発想があまり意味のないことが了解できるはずです。

|

水都国際モデル いまここで必要な教育の完成間近 思考コードで見える。

先週金曜日、GLICC代表鈴木裕之さんが主宰するGWEで、大阪府立水都国際中学校&水都国際高等学校(以降「水都国際」)の教頭太田晃介先生と対話しました。新校舎もほぼ完成し、今春1期生も輝かしい成果を出して卒業しました。太田先生は、高偏差値の生徒が必ずしも入学しているわけではないにもかかわらず、そんな基準はおかまいなしに、生徒1人ひとりが豊かに成長する教育について大いに語られました。

Suito1

GLICC Weekly EDU 第99回「水都国際ー課題探究型授業の進化」 

★もっとも、人気校になってしまったので、偏差値も上昇してしまうのが、痛しかゆしですが。

★それはともかく、新校舎は、とてもユニークで、個別最適な学びと協働的な学びの両方ができるようにデザインされています。お話をお聴きしていると、かなり余白があって、自己を見つめ、深く思考する空間や、ホワイトボードウォールが随所にあって、まるでGAFAなどの空間にある創造的思考やインスピレーションを協働で刺激するアフォーダンスが埋め込まれているようです。

Suito0

★GWEの番組の中では、時間がなくて整理できなかったのですが、部活と文化祭をかっこにいれても、豊かな体験活動が満載という感じです。もともと入学時から、自己変容型マインドの素養をもっている生徒ということですから、生徒の皆さんは、下記のような一般論的な発達段階を示していないようです。

Photo_20221016023101

★太田先生によると、高校2年次より、①グローバルコミュニケーションコース、②グローバルサイエンスコース、③国際バカロレアコース、に分かれるということですから、それまでは、IBのエッセンスを21世紀型教育で、全生徒が共有しているわけです。

★ですから、IBの10の学習者像は共有しているはずです。その学習者像を了解して入学検査準備をするわけです。なるほど、はじめから自己変容型マインドの素養をもっている生徒が集結するはずです。ただ、はじめから完成しているわけではありません。6年間かけて完成していくわけです。あくまでイメージですが、水都国際の場合、次のような自己変容型マインドの成長過程を経るのでしょう。

3_20221016024501

★最初から自己変容型マインドの素養がある生徒は、思考コードのA軸がそれほど充実しているわけではありません。偏差値は、このA軸の充実度ですから、B軸とC軸の素養があるにもかかわらず、偏差値では測られないために、このような才能者が無視される文化が、今までの大学入試にはありました。それゆえ、そこから逆算して、高校入試や中学入試が作成されてきました。

★入試に向けて、カリキュラムが作成されがちなので、教育がA軸育成に偏ってきたことは否めません。

★今回の高大接続改革や学習指導要領改訂は、B軸C軸の学びの過程を重視しています。それゆえ、大学入試では総合型選抜が増え、中学入試では新タイプ入試が増えています。

★高校入試は、高校進学率が97%以上である今日、水都国際のように自己変容型マインドの素養をもった生徒ばかりではありませんから、一般論的な発達段階を活用するのが王道です。

★しかし、これだと、18歳までにすべての生徒が自己変容型マインドを完成させることができません。

★どうしたらよいのか?実は、本当は、すべての生徒がはじめから自己変容型マインドの素養をもっているのです。ただ、偏差値という尺度に物象化されたA軸教育が習慣化してしまったために、最初の入口の段階で、A軸レベル差で、振り分けられてしまい、自分は自己変容型マインドなどもっていないという幻想が物象化あるいは凍てついてしまって、本来の自分ではないメンタルモデルが造られてしまったのです。

★すべての公立学校が水都国際のモデルを受け入れるならそのようなA軸教育によって格差をつけられた自分を解除できるでしょう。

★そんなことをいっても、IBをすべての学校が導入することなどできないといわれるかもしれません。

★そりゃそうです。しかし、IBのエッセンスを英語のレベルを英検2級に設定して行うことはできます。そして、総合型選抜で問われる創造的思考能力は、多くの体験プログラムで育成することができます。もちろん、TOKもできます。哲学対話を総探に導入すればよいし、国語では小論文、英語ではエッセイを、他の教科ではミニ探究型論文を書く機会を入れます。

★そのためには、膨大なデータや情報が必要です。文献だけではなく、インターネットで研究論文を読むことができます。データは、山ほどダウンロードできます。

★高校生にkindleなどで購入できるクーポンを1人10000円/年を文科省や教育委員会が配布すれば、高校時代に最低限必要な思考力を育成する土壌をつくることができるでしょう。学校や自治体の図書館が電子図書を備えれば、さらに才能を進化させることができます。

★水都国際のようにスーパーハイスペックでなくても、以上のような教育環境を整えれば、日本の生徒は、世界大学ランキング300位くらいまでの大学に入学できる自己変容型マインドⅡは身に付けられます。A3ワンピース足りないですが、それは大学に行けば自ずと埋められます。

★水都国際モデルの自己変容型Ⅲに近い自己変容型Ⅱに成長する学校モデルは、未来型教育ではなく、いまここで必要な教育です。日本の経済成長の再生ができるだけではなく、日本の生徒が、未来世界において叡智と寛容性で牽引できるでしょう。牽引というより、世界を物心両面でサポートする人材の宝庫となるでしょう。

★太田先生との対話を通して、未来をいまここから生み出す希望を見出した気持になりました。ぜひご覧ください。

|

2022年10月11日 (火)

ドネラ・プロジェクト(02) SEL・心理的安全・マインドフルネス・メンタルモデル・PBLは、当面安全性をつくることではない

★ドネラ・メドウズは、システム思考によって善なる世界を創ろうとはしているが、そこに到る過程である今及び当面はまだまだ艱難辛苦というわけでしょう。心理的安全というのも、決して平和や安全性を作ることが直接的な目的ではありません。いまだ世界は平和でも安全でもないのに、どうして心理的安全が維持できるのでしょう。

51j6l8k3wnl_sx343_bo1204203200_

★もちろん、心理的安全がなければ、自分の心が誰かに乗っ取られていて、自分を見失っているメンタルモデルをリフレクションすることができません。ですから、心理的安全の状態を作るというのは、自分が自分だと思っていることが、だれかがつくった常識や思い込みを信じている自分というメンタルモデルかどうかをモニタリングする状況をつくるということだとドネラはいうのでしょう。

★リラックスすることは大事なのですが、それは自分を常識や慣習や思い込みから解き放つための準備にすぎません。

★マインドフルネスも同様ですね。

★SELが大切なのは、情動と知性は必ずしも結びついていないということを知ることができるからですね。

★そもそも情動と知性が、相関しているのか、全く別ものなのかなどまだ誰もわかっていないはずです。情動とか知性は、神経伝達物質の流れでしかないのかもしれないのだし。。。

★ただ経験的に言えることは、情動は知性に、知性は情動に影響することは確かなようです。しかし、互いにコントロールできる関係にはなさそうです。

★したがって、自己マネジメントができる柔軟な情動と高度な思考ができる知性をそれぞれ養うことが必要だということです。情動が知性よりも優位だということも知性が情動よりも優位だということも、おそらくないでしょう。

★むしろわからないことだらけだということが、PBLでわかるのが本意でしょう。

★無理矢理誰かの問題解決を押し付けるのではなく、わからないのだというところからPBLは始まるのです。したがって、今の探究や総合型選抜のあり方は、もしかしたらパラダイムを変える必要があるのかもしれません。

★方法という器は新しいけれど、パラダイムという酒は古いままということもあるかもしれませんね。

★ドネラのパラダイム論は、なかなかおもしろく、パラダイムを変えるだけではだめで、パラダイムを超えることが必要なのだと。そのとき仏教的悟りを比喩として引用しています。なるほど、親友のピーター・センゲがダライラマをリスペクとしているわけですね。

|

2022年10月10日 (月)

ドネラ・プロジェクト(01) 和洋九段女子

★1972年、ローマクラブは「成長の限界」を著わし、2030年の世界が壊滅的な状況になると警鐘をならしました。そうならないために、国連を中心に持続可能な開発を定期的に国際会議を開き、軌道修正してきたわけです。今年は、その「成長の限界」が世に出て50周年です。今の中高生は大学を出るころには、SDGsがゴール設定している2030年に直面します。あらためて、未来を自分たちで考え、判断し、意思決定し、好循環型社会に変容させる必要性をリフレクションし、アクションプランを創出する必要があります。もはや受験学力を学ぶだけが中高生の役割ではないわけです。このような好循環型社会を生み出す自己変容型マインドを生み出す学校として、今回は和洋九段女子を紹介しました。

Img_2907

★前回は八雲学園で、来月号では工学院を紹介します。12月号は聖学院の予定です。

★もちろん、まだまだたくさんの学校を紹介したいと思いますが、月刊誌ですから、すべてをご紹介するには限りがあります。そこで、いずれ、好循環型社会を生み出す自己変容型マインドを育成するトランジション教育(と私は呼んでいます)を行っている学校の先生や生徒さんを紹介するページにしようと思います。それだと、一回に一校ではなく、多くの学校を紹介できるからです。

★今年度は、この好循環型社会を生み出す自己変容型マインドを育成するトランジション教育のモデルを見出すために、「しゅとも」で、一校ずつ取り上げていく機会をいただいています。本当にありがとうございます。

Img_2904

★この好循環型社会とは何か?それを生み出す自己変容型マインドとは何か?そのような社会を生み出すにはいかにしたら可能か?自己変容型マインドを生み出す学びの過程はいかにしたら可能か?などについてリサーチし、アクションを生み出していく教育出動を、50年前に「成長の限界」を書いた中心人物ドネラ・メドウズをリスペクトする意味を込めて、「ドネラ・プロジェクト」と呼びたいと思います。

このドネラのビジョンを遂行している学校として八雲学園につづき、和洋九段女子について書きました。ぜひお読みいただければ幸いです。

|

2022年10月 9日 (日)

サレジアン国際学園中学校高等学校 カトリック学校としての21世紀型教育

★今年、赤羽にある星美学園は、サレジアン国際学園と名称を変更し、共学校になりました。カリキュラムポリシーは、21世紀型教育を行うことを宣言。定員120名の生徒が入学しました。クラスは2種類ありますが、120名のうちインターナショナルクラスは62名、本科クラスは58名です。驚くべきは、インターナショナルクラスのアドバンストクラスはすでに35名入学し、英語力=思考力を発揮するレベルなのです。

Photo_20221008234301

(写真は、首都圏模試センターのサイトから)

★首都圏模試センターが創刊した<高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」>の特集「希望の私学セレクト20」でも紹介されています。今回GLICC代表鈴木さんが主宰するYouTube番組GWE(GLICC Weekly EDU)で、同校の募集広報部部長の川上武彦先生と本科クラス推進部部長の尾崎正靖先生にお話を伺うことができました。

★私がかかわってきたいくつかの真正21世紀型教育校では、C1英語×PBL型授業×STEAM教育×現代化リベラルアーツ教育は、共通教育基盤です。この基盤の上にさらに各校独自の教育が展開しています。

★今や「21世紀型教育」は一般名詞になっています。ですから、一般的に、グローバル教育とSTEAM教育を教科学習にオプション的にプラスしているレベルで、21世紀型教育だと言われています。21世紀スキルというのは、たしかに、ICTの枠組のなかで確立されてきていますから、そのようにイメージされるのも当然ですし、私が特許「21世紀型教育」を申請したわけでもないので、それはそれで時の流れだと思ってきました。

★しかし、川上先生と尾崎先生のお話をお聴きして、再び<真正>21世紀型教育校が誕生したと歓喜しました。しかも同校は、<新生>21世紀型教育校でもあると感じ入りました。新しく生まれるというのは、カトリック学校の面目躍如なのですが、どこが新しいと思いますか?

★真正21世紀型教育校は、キリスト教主義であろうとなかろうと、ゴールデンルールを共通理念としています。もともとゴールデンルールは、聖書の言葉なのですが、NY国連では、宗教や民族、性別などすべてを超えて共通するルールだとしていることもあって、人類共通のグローバル市民ルールだと認識しているわけです。

★サレジアン国際学園は、カトリック学校ですから、このゴールデンルールを果たすのは自然なことです。そして、もちろん、そのゴールデンルールは、同校にとってはあくまでマタイやルカの福音で語られている意味が込められていて、国連のいう意味と共通してもいますが、隣人愛と人類愛とでは、微妙な差異があります。

★そして、その微妙な差異は、越えがたい差異でもあるのです。その意味で、サレジアン国際学園は、新生/真正21世紀型教育だと感じ入りました。

★今日的な問題を象徴する言葉は、パンデミック・ウクライナ・気候変動であることは今や世界の人びとが身に染みて了解していることですが、その問題の背景に、人類誕生以来連綿と続いている世界の痛みがあることまでは、なかなか気づきません。

★しかし、エッセンシャルワーカーと呼ばれている人々の仕事の現場は、まさに世界の痛みに向かい合い、必死に癒すべく尽力されている拠点です。ここでは欧米ではサマリア法が適用される場です。残念ながら日本の法律には、このサマリア法は法律にはなっていません。

★それゆえ、現段階では、教育によって生徒がそのことに気づく環境を設定する必要があります。それがサレジアン国際学園では設定されているのです。

Photo_20221009003301

★本科クラスでもB2英語力をつけるのだそうです。探究ゼミナールをベースにする骨太の思考力や発信力が培われていきますから、インターナショナルクラスのみならず、本科クラスからも海外大学に進学することが可能です。

★海外で学ぶことの本意は、文化を支えている普遍的な法(キリスト教では、黄金律と律法を分けています)と日本の法の違いを感じ取ることでもあります。欧米では、法とは、法律を含む、思考や判断、行動などのクライテリア・マインドです。

★このクライテリア・マインドを認識できるからこそ同校が掲げる世界市民が育成されるのです。英語力があればグローバル市民になれるわけではないのです。まして、世界市民の育成には、遠い道のりです。

★それゆえ、サレジアン国際学園が引き受けたミッションに希望を感じました。

|

2022年10月 7日 (金)

改めて英語力=思考力の重要性 壁を突き抜けることができる。

★偏差値にこだわらないで、高等学校の自前の評定(内申点)と英語力=思考力と多様な体験で、垂直的な序列の学歴社会の壁を突き抜けることができます。自前の評定と言っても、甘いものでも厳しいものでもありません。ちゃんと知識と論理と創造性のバランスのよい教科学習をPBL型授業でやっていればよいわけです。1人1台の環境を整え、ペーパーレスで、グーグルフォームやグーグルクラスルームで、やりとりしながら、リアルに対話もするあるいはディスカッションする授業を展開していればよいのです。

Toa

★英語も英検2級あるいはIELTS5.0ぐらいでもまったく構いません。ただ、10秒で自分の意見と理由と対比的な考えを英語でスピーチするトレーニングは当然必要です。それがやがて1分スピーチになるわけですが、めちゃくちゃ思考力や創造力を養えます。

★このレベルの英文だって、パンデミック、戦争と平和、気候変動について多角的に考えるコンテンツは満載です。

★当然ディスカッションにも発展します。

★体験は重要です。日本語ができない外国人の子どもたちの学習をサポートする喫緊の問題を解決するようなボランティアに進んで参加すると、身近なところに世界の深い問題が横たわり、自分ができることは何か悩み、寄り添うことしかできない、でもそれをしないわけにはいかないという人間の存在の本質に気づく経験に心を開くことは、ユニバーサルリーダーへの第一歩です。

★このような学びは、もしかしたらリベラルアーツをどこか基礎にしているのかもしれません。

★そうして、自分は映像で映画で、そのことを訴え、稼いでなんとか救済できないかと考え、それが実現できる今や世界ナンバー1と言われているようなマレーシアの大学ザ・ワン・アカデミーなんかに進むわけです。

★学費も日本に比べてかなり安いけれど、プロがプロを育てる本格的なアートカレッジ。なぜ日本でなく、マレーシアか。それは東南アジアには、日本以上のアート市場があるからです。

★日本の芸術領域は、まだまだ権威主義ですから、アート市場が育たたないのです。

★自分の作品が市場に出るチャンスの多い芸術大学を選ぶのは当然です。

★担任の教師がそんな対話をしながら面談するわけです。

★推薦書は、日本語で書いたものをdeepl翻訳と英語の教師にチェックしてもらうことができます。

★ザ・ワン・アカデミーには2500人の学生がいます。そのうち日本人学生はまだまだ0.3%くらいしかいないそうです。

★3%の穴どころではありません。世界は広いのです。生徒自身の興味関心を実現できる環境を国内外の範囲でいっしょに探す進路指導を担任がすれば、その環境は見つかる可能性が大です。

★その可能性を開くには、まずは英語力です。とはいえ、皆が英検1級をとる必要はありません。IELTS5.0くらいで、仮に世界で№1の芸術大学ザ・ワン・アカデミーにはいれば、そこから英語力はさらに伸びます。

★英検の級やIELTSのスコアは必要ですが、英語=思考力という設定がまず必要です。10秒英語で思考する。スピーチする。PBL授業もICTもこれに絡めます。

★このシンキング・ルーチンの種をつくり、水や養分を対話で吸収していける環境をつくる。対話やスピーチは、信頼関係が前提だし、信頼関係をつくるのには、それぞれの才能を尊重する必要があります。信頼や相互尊重を実現するには道具が必要です。したがって、才能は開くし、テクノロジーも身に付けられるし、他者への配慮や関心を抱くことにもなります。

★改めて英語力=思考力は大切です。もちろん、英語力のところは日本語力とかドイツ語力とかフランス語力とかに置換えることもできますが、現状世界でもっとも使われている共通言語を学ぶことは理に適っています。

|

3%の微差異に真理あり。学校説明会で見抜く3%の差異ポイント

★時代の精神の真理(本質というぐらいの意味)を見抜けるかは、従来と3%くらいの差異の領域に気づけるかにあります。受験市場において分かりやすい例は、開成の海外大学合格実績のうち3%は海外大学だということなのです。同校では、2013年から急にこの微差異の領域が開かれました。そこから、あっという間に各学校が、偏差値の高低にかかわらず海外大学進学を拡張しました。最初は、3%の穴だったのですが、そこが未来を拓くわけです。

Photo_20221007044201

(20世紀型教育から21世紀型教育のパラダイムチェンジを聖パウロ学園は図のように考えている)

★未来を拓くと、THEの世界大学ランキングで250位くらいまでの海外大学に偏差値にかかわらず各学校から合格者がどんどん輩出されていくのです。東大ピラミッド型序列の日本の大学の合格は、私立中高一貫校の偏差値と相関があるのに、地球規模になるとその相関は消失してしまう。学校の偏差値ではなく、生徒1人ひとりの才能(資質能力とか表現はいろいろ)とスキルと信念によって、いきたいところに行ける時代です。これが20世紀型教育から21世紀型教育にパラダイムチェンジした意味をあらわす象徴的現象です。

★そして、その才能やスキル、信念を開発するには、思考力が大事なことはいうまでもないのですが、学校説明会で、きちんと上記の図のような知識と思考の関係をさらりと語っている学校は、3%くらいしかないと思いますが、そこに真理があります。そのような学校は、偏差値が高かろうが低かろうが、地球規模のユニバーサルリーダーが育つ環境があります。

★解なき世界だとかいう話は、あくまでレトリック(表現技法)で、本当に解がないわけではないのです。解決策は多様だけれど、VUCAの時代にあって、一般論ではなく、目の前の諸現象のファクトを見定め、その具体的状況にあったそれでいて世界に通じる最適解を創ろうというわけです。

★知識がなくては思考はできないとよくいわれますが、これも部分で全体を語るレトリックにすぎません。思考力が大事だよ程度です。私たちの身体を構成する大事な要素の一つは脳神経系です。前頭葉や海馬などどちらが重要だなどということはないのです。知識と思考は一方通行関係ではなく、相互関係で循環しているわけです。

★ただ小難しい話になるので、レトリックを使っているいすぎません。

★ところが、そのレトリックが実態だとショートしてしまうことは少なくありません。学校当局もそうなる場合がままあります。

★ですから、いつのまにか、一般選抜は知識型、総合型選抜は思考型、指定校推薦は内申型とステレオタイプな受験対策をやるという、人間の脳神経循環を分断する受験勉強がなされる場合があるのです。

★まったく馬鹿げています。教科学習なんていらない、探究だけでよいのだとか、探究なんか曖昧でわからないから教科学習重視でよいのだというような議論をしているところもあります。

★受験生・保護者は、そこはファクトチェックしてください。

★人間の身体脳神経系全体の循環は、自然と社会とマインドの関係総体の中でバランスをとる適合的複雑系でできているのです。それができていないからSDGsが立ちあがっているわけです。知識なんていらない思考力だとか思考力なんて知識がなくてはできないとか、AIが人間にとって代わるんだとかいうような循環やバランスを破壊するような言動は要注意です。

★とはいえ、レトリックとしてはありなのです。でも実態は違うのです。その真理をさりげなく表現している3%の学校を見抜く微差異に気づく視点が大切です。その視点を身に付けるのは難しいのでは?そうでもありません。自分の身体脳神経系全体の循環を切断するかどうかという感覚基準で見てみることで、ファクトチェックできる可能性があります。もちろん、この基準づくりの方法も1つの方法にすぎません。方法は多様です。

|

教育の質の高い中身を選択する時代(15)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の希望の私学③京華中学・高等学校

★京華中学・高等学校は、「学習塾がすすめる中高一貫校」のアンケート(大学通信)で、「面倒見が良い」「入学後に伸ばしてくれる」「満足度が高い」等で、毎年首都圏No.1の高い評価を受けています。ひとりひとりにふさわしい未来を生徒と共に創れるように、きめ細かいコース分けと授業にしっかり取り組めるシステムが組み立てられ、マインドセットがなされているからでしょう。つまり、大事なことは創られたものに魂を入れているということです。

5g

(写真は、首都圏模試センターの同校の記事から)

★そして、私が感心するのは、その魂は当然建学の精神や校訓を意味するわけですが、そのマインドを現代化しているということです。「5G」という結晶体がそれです。同記事には、こうあります。

 グローバル社会のリーダーたるに必要な“実行力”を身につけ、世界を舞台に活躍するたくましい男子の育成を目指しているのは、京華中学・高等学校だ。新しい世代を生き抜くための力を、「Gentleman:紳士たれ」「Genuine:本質に迫る」「Generate:創造性を引き出す」「Grit:やり抜く力」「Global:世界を見通す」の頭文字をとって「5G」と定義し、どの時代においても常に先を見据え、リーダーシップの発揮できるような人間育成している。

★同校が大切にしている不屈の精神を表現してきた「ネバーダイ」や「ジェントルマン」などを、時代の精神とマッチングさせた「5G」に凝結させているところがシンプルで密度の高い表現になっています。

★このような自分たちの信念を新しい表現にトランスフォーメーションするあるいはリフレーミングする多角的視点を持っている教師陣がいるということ自体が、同校の最大の強みでしょう。

★GenerateとGritは未来志向の人材育成には欠かせない要素ですが、新感覚の用語でもあると思います。先見性・先進性が伝わてきます。

|

2022年10月 2日 (日)

教育の質の高い中身を選択する時代(14)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の希望の私学②北豊島中学校高等学校

★北豊島中学校高等学校は、女子校。1人ひとりの才能を見出し、世界で活躍する女性が羽ばたいていきます。2030年問題を解決する人材が育成されているといっても過言ではないでしょう。というのも、ホームベースである先進的教育環境にリベラルアーツ教育があるからです。リベラルアーツ的な発想を各教科や探究に埋め込むということだけではなく、学校全体の教育環境のベースに「リベラルアーツ教育」をセットするというのは、なかなか真似ができません。

Tnk1154_1

(写真は、首都圏模試サイトから)

★リベラルアーツがホームベースになっていますから、どのコースにも当然そのエッセンスが染みわたっています。高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の記事から、各コースのエッセンスを抜き出してみましょう。

国際英語コースは、英語とリベラルアーツを主に取り入れています。

特進コースは、 少人数なので、 生徒 一人一人の 将来に向けた アドバイスや指導・サポートが充実をしています。 

総合コースは、‘学び方を学ぶ’を実践しています。

★詳しくは同誌をお読みいただきたいのですが、上記のそれぞれのコースの特徴を読み比べてみてっください。国際英語コースはずばりリベラルアーツを行うと書いてあります。特進コースは少人数なので生徒1人ひとりと対話ができているということが伝わってきます。対話はリベラルアーツを学ぶときの自然な姿です。総合コースでは学び方を学ぶとありますが、これはリベラルアーツの思考法の真骨頂ですね。それから、総合コースでは芸術科目を3年間学ぶことも可能だとあります。アートはリベラルアーツの大事な要素です。

★かくして、「先進的教育環境」と「コア教育機能」が連動しているということがわかります。

Tnk1228_1

(写真は、首都圏模試サイトから)

★さらに、多様な留学制度や土曜講座が充実しています。「バッファー教育機能」が拡充していて、エンリッチメント教育がなされていることがわかります。上記写真の進路指導室は「夢探し工房」と呼ばれているようです。受験学力以上の人間力を身に付ける場所ですね。多くのセミナーも実施されているようです。このように、生徒1人ひとりの興味関心を深堀していくそれぞれの体験プログラムが展開していることでしょう。

★海外大学合格者の数がまた圧巻です。

Photo_20221002151701

Photo_20221002151702

2_20221002151701

(写真は、同校サイトから)

★上記の表を見て頂ければわかりますが、70校以上の合格者のうち、37名は、THEランキングで250位以内の海外大学に合格しています。THEランキングで250位以内に入っている日本の大学は、東大、京大、東北大だけです。

★日本の大学受験勉強だけでは、このような海外大学を受験することすらできません。北豊島の英語教育とリベラルアーツ教育の深化/真価が証明されているエビデンスの1つです。2030年問題を解決する人材を生み出す希望の女子私学ですね!

|

教育の質の高い中身を選択する時代(13)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の希望の私学①かえつ有明中・高等学校

★かえつ有明といえば、国際生、グローバル、ダイバーシティ、アクティブラーニング(学内ではディープラーニングと呼ばれている)、サイエンス科、プロジェクト科などのキーワードがすぐにでてくるほどの人気校です。

86e76070d4936f00e40ef337f4246727

(写真は、同誌の記事に掲載されたもの。同記事の続きがアップされている首都圏センターのサイトから使用)

★そして2015年から、シン・クラスとして、1クラスだけ「プロジェクト科」という高校入試で入学できる体制を整えています。ある意味、このプロジェクト科が刺激的でかえつ有明の教育の雰囲気を大きく変えていく契機にもなったそうです。

★心理的安全な環境、共感的コミュニケーション、信頼ベースがあるから自由に互いに意見を語ることができる状態などを広げていきました。

★そして、中1から高3まで、与えられたことを積極的に行うという意味での主体性ではなく、自分たちで課題を見出だし、解決するプロジェクトを創ってアクティブに学んでいくという主体性が発揮されているようです。

このへんのお話は、「受験生の担任」と呼ばれている広報部長宇野先生と広報部室長の内山先生が語っている動画がとても参考になります。

★偏差値とか内申とか従来型の進路相談はいっさいなしで、かえつの教育環境に参加したいと思う受験生に教科試験とワークショップ型体験、つまりプロジェクト科の教育そのままの入試を新たに設定したそうです。

★最高にラディカルなかえつの広報戦略ですね。いろいろ高校入試の壁はあるけれど、ダイレクトに受験生と学校がつながれば、その壁はすべて突破できるという考え方です。かえつの魅力教育に手ごたえを感じているからこそ決断できる取り組みです。

★たしかに、お二人の先生と対話した動画を配信したところ、すぐに多くの方々がアクセスし、私もかえつに入学したかつての教え子の保護者からメールをいただくという瞬時の反応がありました。なるほど、受験生の担任をセットできるかえつ有明の共感的コミュニケーションのパワーは凄まじいと感じました。

★上記の写真には、そのようなかえつの魅力が象徴されています。

|

教育の質の高い中身を選択する時代(12)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の希望の私学の位置づけ

★高校受験情報誌「my SPECIAL ONE 創刊号」では、高校入試に新風を吹き込む「希望の私学セレクト20」という特集ページがあります。この特集の冒頭ページには、希望の私学の位置づけについてナビゲートする記事が掲載されています。それを読んで、私なりに座標に整理してみました。

Photo_20221002075301

★同ページでは、希望の私学を次の3つの視点で位置付けています。

❶教育の大きな変化の節目に、私学は自ら教育をアップデート

❷習熟度や学力別編成よりも、「学びのスタイル」を多様化

➌私学の学びは、個々の生徒の自主性・主体性を引き出す教育へと進化

★アップデートとか進化という意味合いは、「プログレッシブ」という言葉を当てはめました。

★多様性や自主性・主体性という意味合いは、「実質的平等」という言葉を当てはめました。

★「自由」は、「プログレッシブ」に内包されています。「博愛」は、「実質的」という言葉の意味に内包されています。

★以上のことを座標に整理すると上記のような感じになったわけです。

★第1象限は、前回ご紹介した7つの壁すべてをクリするように挑戦している「希望の私学」の位置づけになります。

★第2象限と第4象限は、プログレッシブだったり実質的平等にチャレンジんしているのですが、どちらも偏差値の壁をなかなかクリアできません。

★第3象限は、7つの壁が集積して、身動きがとれない状態を示しています。

★私たちは、生徒が第3象限の領域に陥らないように、教育出動するのは当然です。ですが、なかなか難しいことも確かです。

★それゆえ、希望の私学の「魅力教育情報」を共有することによって、生徒自身がプログレッシブに思考し活動することで1人ひとりの才能を解放し輝き、その輝きを協働のワークに注げる準備教育(プレップスクールの本当の意味)を創出していけるようにしていきたいものです。

★ですから、同誌で、紹介されている20の希望の私学の記事を眺めていきたいと思うのです。

|

教育の質の高い中身を選択する時代(11)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の巻頭座談会の意味➓7つの壁をクリアする希望の私学

★高校受験情報誌創刊プロジェクトは、勉強会や高校進学フェアなど多彩な活動を通して、今後クリアしていく目標となる高校入試の課題を見出しました。それについて、同誌の巻頭座談会で、北一成さん(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)が7つくらいにまとめて論じています。それを簡単に箇条書きにして紹介します。

Photo_20221002063901

★高校入試の7つの壁

⒈形式的平等の壁:収容の観点

⒉併願のパターンの固定化の壁

⒊時代認識のズレの壁:過去のデータと未来の情報のギャップ

⒋世代の壁:保護者の高校入試に対する固定観念

⒌評価方法の壁:内申書の共通基準が確立されていない

⒍教育制度改革の壁:大学入試改革、学習指導要領などの制度改革が自分事にならない

⒎経済の壁

★この7つの壁をクリアするためにどうするのか?北さんはこう語ります。

「模試と偏差値と従来の進路指導に頼らない志望校選択を!」

★そして、この文脈の背景には、「そのためには、私立学校全体が希望の私学になることだ」という、私たちに私学に対するエールがこめられているのです。

★受験生や保護者、中学校の先生方の中に、パラダイム転換しようと思う方が現われてきたときに、その転換パラダイムに対応する希望の私学が偏差値の高低にかかわらず存在していないと、行き場がない。それでは本末転倒だということでしょう。

★時代の流れに遅れないように、襟を正して今回のプロジェクトのエールを受けとめ、教育出動をしていこうと思います。

|

教育の質の高い中身を選択する時代(10)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の巻頭座談会の意味⑨希望の私学論

★今回の巻頭座談会で、北一成さん(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)が8番目に振ったのは、北さんご自身でした。北さんは、首都圏の私立中高一貫校をリサーチし、数々の情報誌を手掛けてもうすぐ40年になります。個々の私立学校の3ポリシーの取材、インタビューを積み重ねてきました。同時に明治維新以来の教育制度の研究もし、その日本の教育の歴史的経緯を目配りしながら、現代的教育課題を見出しています。そして、その課題を私学の先生方に寄り添い、いっしょにクリアする支援をしてきました。だからこそ心の底から「希望の私学論」を提唱し続けてこれたのだと思います。

Img_2844

★今回も私立中高一貫校の先生方と対話する中で、完全中高一貫校ではなく、高校入試も行っている一貫校の悩みに耳を傾けたわけです。中学受験において、保護者は偏差値と大学合格実績だけではなく、3ポリシーをよく比較考量して学校を選択するし、今回の高大接続改革や近未来社会のダイナミズムを見据えて学校選びをするようになりました。

★そのようなある意味パラダイム転換を促進したのは、北さんと山下さんによる未来社会に必要な資質能力を見出す働きもする新タイプ入試支援という仕掛けが大きな要因だったというのは、中学受験史に刻まれるほどなのです。多くの学校や受験業界を巻き込んだのですから。

★その一方で、高校入試においては、保護者は、中学受験の保護者と同じような発想で学校選択する心づもりはあるけれど、実際には偏差値や内申点という枠が、その向こうにある各私学の教育の魅力情報を見えにくくしている現実もあり、そこをなんとかしたいという先生方の思いに強く共感し、希望の私学論の新たな課題を見出したのだと思います。

★そこで北さんは山下さんといっしょに高校受験情報誌創刊プロジェクトを立ち上げ、その高校入試の悩みのリサーチを始めました。そのうちの一つが毎週行われた勉強会です。多くの学校や学校のステークホルダーが参加しましたから、そこでインタビューリサーチが行われていったのです。

★また、北さんのところには、多くの学校の先生方のみならず受験生の保護者、受験業界人の悩みが集まります。そして、耳を傾けカウンセリング、コンサルエーションを何十年も続けてきたのです。それゆえ、根本問題を心の中に秘め、それをどう私学と解決していくか考え、企画し、アクションを生み出してきたわけです。今回も勉強会と同じくらい多くの方々と対話を積み上げてきたと思います。

★そして、高校入試の課題を7つぐらいにまとめ、それをクリアするチャレンジングな私学の魅力教育情報を発信し、「希望の私学論」のバージョンアップを創出しつつあります。

★北さんのこのような編集者魂はどこから来るのでしょう。その大きな源の1つには、北さんの拠り所であるバレーボールという部活で培われたチームワークをベースにした個の輝きを尊重するスポーツマンシップにあるのではないかと私は感じ入っているのです。

★7つの高校入試の壁については、本誌を手に取ってぜひお読みいただきたいと思いますが、次回簡単にご紹介しようと思います。

|

2022年10月 1日 (土)

教育の質の高い中身を選択する時代(09)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の巻頭座談会の意味⑧

★今回の巻頭座談会で、北一成さん(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)が7番目に振ったのは、北岡優希さん(ノイタキュード代表)。北岡さんは、塾経営の経験もあるし、複数のカメラで撮影しながら取材をするスタイルなので、メタ認知的なものの見方考え方をします。適切な距離を調整ながら物事を把握したり、取材対象の背景に何があるかを洞察する優れた能力をお持ちです。したがって、どうやら高校入試におけるパンドラの箱を空けてしまったようです。

Img_2843

★というのも、今回、通信制高校と親の役割について言及しているからです。

★明治維新以降、政府の教育観は優勝劣敗主義で、それはやがて学歴社会を生み、その修正を幾度しても、教育は経済社会に紐づいているために、どうしても比較優位や競争社会の観念から解放されることは難しかったわけです。

★難しいわけですから、当然そのような高ストレス、濃厚な権威主義的な社会からスケープゴートにされる人々がでてくるわけです。そのよな明治維新以来100年以上沈澱してきたゆがみを引き受けているのが通信制高校であり、核家族化してしまった現状では、そこを引き受けるのは親ということになります。

★そして、その引き受け方が多様で、少人数で1人ひとりの生徒と真剣に向き合い、ゆがみの中で産出された複合的な心の壁を、一つ一つ生徒といっしょに取り除いていく引き受け方もあります。また、そこには触れず、卒後資格をほとんど通学せずに取得させることだけに専念する引き受け方もあります。

★現状の社会では、高校卒業資格がなければ、人生の進路の選択肢はたいへん狭いものになってしまいますから、それはそれで重要な意味があります。

★さらに、全日制に通えるのに、あえて通信制に通い、自分の好きなことや現行の高校では教えられない学びに専念したいという生徒を引き受けるという方法もあります。もちろん、最小限の勉強で高校卒業に必要な単位を取得しなければなりませんが、全日の生徒に比べ、圧倒的に自分のやりたいことに時間を割けるのです。

★アスリートやタレントの方々が利用するのは、その格好の例です。

★親の対応も本当に多様です。核家族化しているわけですから、知り合いや学校の教師などのネットワークを活用できる親は、いくつもの悩みをクリアして進みます。

★ところが、そうでないケースもあるし、その種類は多様です。追い詰められる親もいるわけです。

★通信制高校や親の引き受け方については、現場にいなければわからない本当に辛い問題が存在しています。

★メディアやジャーナリストが、そこを開いているのは見たことがありません。なぜなら、できない理由が厳然としてあるからです。ここの問題を解決するのを国や自治体は放置しているわけではありません。むしろ、エッセンシャルワーカーがサポートする部署が多角的にあるのです。

★人権問題が横たわっているので、そこは各エッセンシャルワーカーと学校、教師は守秘義務を担いながら協働します。

★北岡さんは、そこに解決する問題があると直感したのでしょう。スーパー難問が横たわっています。まさにパンドラの箱です。

★しかし、すべての災いが箱からでていったときに、最後に希望が残ったという説があります。

★通信制高校や親が引き受けている難問に日々現場で向き合っている現場の教師の姿こそ希望です。

★働き方改革とかブラックだとか校則批判だとか部活批判とかあります。ICTやAI、メタバースなどを使って個別最適化だとか語る人もいます。もちろん、一理あります。しかし、そのような論考に北岡さんが洞察した問題をしっかり見て、引き受けようという人はあまり見たことがありません。

★通信制高校と全日制の現場に毎日かかわっている私は、改めてそれを真剣に引き受けるにはいかにしたら可能か見直さなければならないのだと確信しました。北岡さん、ありがとうございます。

|

教育の質の高い中身を選択する時代(08)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の巻頭座談会の意味⑦

★今回の巻頭座談会で、北一成さん(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)が6番目に振ったのは、野尻幸義さん(首都圏模試センター教材開発ディレクター)。野尻さんは、公立中高一貫校の適性検査や高校入試の推薦入試の問いの構造を熟知しています。そして、その問いの構造が高大接続改革で求められている探究的な問いの立て方にストレートにつながっていることを見抜いています。Img_2842

★さらに、菅原さん同様、2030年問題やソサイエティ5.0に対応できるマインドやスキル、思考力などにもつながっていくことに気づいて欲しいのだと語るわけです。

★生徒がそのようなマインド、スキル、思考力を身に付けることができる高校選びが重要なのだと。

★とはいえ、そのような情報を生徒が自らリサーチすることはまだまだ難しいのが現状です。

★それゆえ、高校受験情報誌創刊プロジェクトの出番だというわけでしょう。

|

教育の質の高い中身を選択する時代(07)高校受験情報誌「my SPECIAL ONE」の巻頭座談会の意味⑥

★今回の巻頭座談会で、北一成さん(首都圏模試センター取締役・教育研究所長)が5番目に振ったのは、菅原祐二さん(ミライクリエ代表)。菅原さんは、7月の高校進学相談フェアの企画運営の座長も務めました。

Img_2841

★学校選びのポイントは、事実をしっかりと見据えること、つまりカリキュラムポリシーを理解することが大事だと。もちろん、他の2つのポリシーも同様です。そして、どの学校のカリキュラムポリシーが、高大接続改革やソサイエティ5.0の未来のダイナミズムに適合するのか俯瞰する視点が大事だと語ります。

★とはいえ、保護者が、まして中3の生徒が、事実分析がバックキャスティング発想によって適合しているかどうかの判断はなかなか難しいわけです。ですから、そのような虫の眼と鳥の眼を統合した情報収集と未来予測の情報を高校受験情報誌で発信することが重要になるということでしょう。

★菅原さんは、教育コンサルタントの切り口で語っています。

★ふだん学校現場にいると、頭の片隅ではわかってはいるものの、とかく目の前のことに対処するのに追われ、2030年や2050年からバックキャスティングするのをおろそかにします。猛反省です。今後は精進したいと改めて思いました。

|

かえつ有明 リアルとビジョンを一致させるユートピア 

昨日、鈴木裕之さんが主宰するGWEで、かえつ有明中・高等学校の広報部長宇野先生と広報主任内山先生と対話しました。とても柔らかでフラットで、広がりのある内面的な話がさわやかな風に乗って展開していきました。お二人の裏も表も率直に明朗に話される姿には、なるほど「受験生の担任」と呼ばれている理由が伝わってきました。

Kaetsu_20221001054801

 GLICC Weekly EDU 第97回「かえつ有明のDiversityー生徒の成長と変容を支える環境」

★かえつ有明が人気の秘密は、宇野先生が何人かの生徒にインタビューした動画にもありました。お二人のトークにももちろんそれは染み入っています。

★この人気の秘密を私が語るには力不足です。ですから動画をぜひご覧ください。

★かえつ有明といえば、グローバル教育とかマインドフルネスとかアクティブラーニングとか多様性とか特徴的なキーワードがあるのですが、お二人は、そのようなキーワードは特別なものではなく、世界に共通するシチズンシップの素養として自然なことなのだという雰囲気で語っています。

★ですからお二人は多くの場合、きっちりかっちりした学校の特徴の表現のような固定観念をあっさりひっくり返す目からウロコの柔らかいことばで語っています。生徒と保護者と教師が自然と信頼関係を生み出していることがわかるトークでした。

★その信頼関係をベースに生徒は、それぞれビジョンを見つけ、それを現実化するリアリティが学内に広がっていることも伝わってきます。どこまでも続く草原にさわやかな風が吹いている感じをうけました。ぜひご視聴ください!

|

« 2022年9月 | トップページ | 2022年11月 »